特許第6867570号(P6867570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867570
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】地下管路状構造物
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/06 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   H02G9/06
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-232287(P2017-232287)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-103256(P2019-103256A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 淳
(72)【発明者】
【氏名】大川内 稔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−121893(JP,A)
【文献】 特開2015−048657(JP,A)
【文献】 特開2016−084615(JP,A)
【文献】 実開昭56−130096(JP,U)
【文献】 特開2001−107687(JP,A)
【文献】 特開平10−061392(JP,A)
【文献】 特開昭59−048599(JP,A)
【文献】 特開2005−147206(JP,A)
【文献】 実開昭62−021150(JP,U)
【文献】 特開2001−317069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/00
H02G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の底板と、該底板の両側より立ち上げた一対の側壁とを備えた複数の管路部材が長手方向に地中に連続して配置され、該複数の管路部材が止水された状態で互いに接合されて管路状を成す地下管路状構造物において、
前記各管路部材は、互いに止水材を介して突き合わされるとともに、接合端部の内縁に配置された複数の継手部によって連結され、
前記継手部は、前記各管路部材の接合端部内縁に内面側及び端面側に開口して形成された接合凹部の底部に固定され、互いに突き合わされる一対の被連結具と、該両被連結具に跨って嵌合される締結具とを備え、
前記各被連結具が前記各接合凹部の底部の内縁周方向の一方に片寄せて配置され、内縁周方向の他方側に締結具挿入空隙が形成され、前記締結具が前記接合凹部の底部に沿ってスライド移動することにより前記両被連結具に跨って嵌合されるようにしたことを特徴とする地下管路状構造物。
【請求項2】
前記両被連結具は、互いに突き合わされて蟻ほぞ状を成す請求項1に記載の地下管路状構造物。
【請求項3】
前記両被連結具は、互いに突き合わされてスライド移動方向手前側が狭い楔状を成す請求項1又は2に記載の地下管路状構造物。
【請求項4】
前記止水材は、高弾性樹脂材からなる請求項1〜3の何れか一に記載の地下管路状構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に埋設される地下管路状構造物及びその構築方法に関し、特に、送電用ケーブルや通信用ケーブル等の電線類を収容する電線共同溝として使用される地下管路状構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市街地の景観向上等の観点から送電用ケーブル、通信用ケーブル、光ファイバーケーブル等の電線類を歩道や道路等の地下に埋設する電線地中化が推進されている。
【0003】
電線地中化は、地震等の災害時における電柱の転倒による二次災害を防止でき、道路や歩道のバリアフリー化、交通事故における死亡率低減等にも寄与することからさらなる推進が望まれている。
【0004】
従来、電線地中化に供される地下管路状構造物には、歩道や道路側部等の地表を開削し、そこに断面U字状の複数のプレキャストコンクリート製の管路部材を並べて設置し、各管路部材間に形成された凹凸部を嵌合させた状態或いはセメントモルタル等を介して強固に接合させ、その上面開口部を同じくプレキャストコンクリート製の蓋体で閉鎖したものが広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、近年では、プレキャストコンクリートブロックに替えて硬質合成樹脂製の管路部材を用いたものも知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61 −157211号公報
【特許文献2】特開2000−055240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、管路部材間の接合に手間が掛かり、設置作業に要する工期が長期化し、工費が嵩むという問題があり、このような工期及び工費の課題は、電線地中化の促進を阻害する大きな要因となっている。
【0008】
また、災害等による一部破損、設計変更等の要因で一部の管路部材を交換する必要が生じた場合、上述の如き従来の技術では、管路部材間が強固に固定されているため、該当する管路部材の撤去に伴い当該管路部材及び隣接する管路部材も破損してしまうため、一部の管路部材のみを撤去し、交換すること及び撤去した管路部材の再利用が困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、施工性に優れ、管路部材の交換も容易な地下管路状構造物の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、平板状の底板と、該底板の両側より立ち上げた一対の側壁とを備えた複数の管路部材が長手方向に地中に連続して配置され、該複数の管路部材が止水された状態で互いに接合されて管路状を成す地下管路状構造物において、前記各管路部材は、互いに止水材を介して突き合わされるとともに、接合端部の内縁に配置された複数の継手部によって連結され、前記継手部は、前記各管路部材の接合端部内縁に内面側及び端面側に開口して形成された接合凹部の底部に固定され、互いに突き合わされる一対の被連結具と、該両被連結具に跨って嵌合される締結具とを備え、前記各被連結具が前記各接合凹部の底部の内縁周方向の一方に片寄せて配置され、内縁周方向の他方側に締結具挿入空隙が形成され、前記締結具が前記接合凹部の底部に沿ってスライド移動することにより前記両被連結具に跨って嵌合されるようにしたことにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記両被連結具は、互いに突き合わされて蟻ほぞ状を成すことにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記両被連結具は、互いに突き合わされてスライド移動方向手前側が狭い楔状を成すことにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか一の構成に加え、前記止水材は、高弾性樹脂材からなることにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る地下管路構造物は、請求項1に記載の構成を具備することによって、管路部材間を容易に連結することができ、敷設作業の施工性が向上し、工期の短縮を図ることができる。また、締結具を取り外すことによって管路部材間の連結を容易に解除することができ、隣接する他の管路部材を破損させることなく、管路部材の交換や地下管路構造物自体の敷設換えを効率よく行うことができる。
【0015】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、被連結部材と締結具とを強固に締結することができる。
【0016】
更に、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、被連結部材と締結具との締結作業を円滑に行えるとともに、強固に締結することができる。
【0017】
さらにまた、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、管路部材間を好適に止水できるとともに、一部の管路部材を交換する場合等に止水材を容易に管路部材より剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る地下管路構造物の一例を示す縦断面図である。
図2】同上のA−A線矢視断面図である。
図3図1中の管路部材を示す斜視図である。
図4図1中の継手部を示す拡大平面図である。
図5】同上のB−B線矢視断面図である。
図6】同上の被連結具及びその取付け状態を示す分解斜視図である。
図7】同上の管路部材を接合させた際の被連結具の状態を示す部分拡大平面図である。
図8】同上のB−B線矢視断面図である。
図9】同上の締結具を示す斜視図である。
図10】同上の継手部の締結作業の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る地下構造物の実施態様を図1図10に示した実施例に基づいて説明する。図中符号1は電線共同溝等の地下管路状構造物、符号2は送電用ケーブル等の電線類である。
【0020】
地下管路状構造物1は、図1図2に示すように、歩道下又は道路の側部下等の地中において、複数の管路部材3,3…が連続して接合され、その上面がプレキャストコンクリート製の蓋体4,4…によって閉鎖されて管路状を成している。また、この地下管路状構造物1には、内側面部の長手方向に沿って架台5が設置され、送電用ケーブルや通信用ケーブル等の電線類2がそれぞれ分類されて架設されるようになっている。
【0021】
各管路部材3,3…は、図3に示すように、平板状の底板6と、底板6の両側より立ち上げた形状の一対の側壁7,7とを備えてなる断面U字状のプレキャストコンクリート製のブロックであって、互いに止水材8を介して突き合わされるとともに、接合端部の内縁に配置された複数の継手部9,9…によって連結されている。
【0022】
継手部9は、図4図5に示すように、管路部材3の内縁部に形成された接合凹部10内に固定され、互いに突き合わされる被連結具11,11と、被連結具11,11に跨って嵌合される締結具12とを備え、両被連結具11,11を締結具12で把持することによって隣り合う管路部材3,3間を接合できるようになっている。
【0023】
各接合凹部10は、管路部材3の内面側及び端面側に開口した矩形穴状に形成され、管路部材3の接合側端部内縁に周方向に間隔をおいて配置されている。
【0024】
また、各接合凹部10には、図6に示すように、端面側開口に面して被連結具11,11が内縁周方向の一方に片寄せてそれぞれ固定され、他方側に締結作業に適した締結具挿入用空隙13が形成されるようになっている。
【0025】
各被連結具11,11は、突き合わせ側に切り立った接合面14と、接合面14の反対側に底側内向きに傾斜した係合面15とを備えたブロック状に形成され、図7図8に示すように、互いに突き合わされて蟻ほぞ状を成すようになっている。
【0026】
また、各被連結具11の係合面15は、スライド方向手前側が狭いテーパ状に形成され、突き合わされた両被連結具11,11が対称な台形状を成すようにしている。
【0027】
この各被連結具11,11は、上下に貫通したボルト挿通孔16,16を備え、接合凹部10の底部に埋設されたアンカーナット17にボルト挿通孔16に通したボルト18を螺合させることにより接合凹部10の底面部の一方に片寄せて固定されている。
【0028】
締結具12は、図9に示すように、鋼材等の高剛性材料をもって形成され、平板状の天板部19と、天板部19の両側部に支持された側壁部20,20とを備え、両側壁部20,20間に前後及び下面が開口した嵌合溝21が形成されている。
【0029】
両側壁部20,20は、下側内向きに傾斜した内側面20a,20aを有し、嵌合溝21は、下面開口側が狭い蟻穴状を成している。また、両側壁部20,20の内側面19a,19aは、前側内向きにも傾斜し、嵌合溝21が突き合わされた両被連結具11,11と整合した楔穴状を成している。
【0030】
この締結具12は、互い突き合わされた両被連結具11,11が嵌合溝21に嵌合されることによって、両被連結具11,11を把持し、互いに接合面14,14を突き合わせた状態に保持するようになっている。
【0031】
止水材8は、水膨張性ウレタン材又は高弾性樹脂材によって構成され、管路部材3,3…間の隙間を止水できるとともに、カッター等を用いて容易に剥離可能になっている。
【0032】
次に、この地下管路状構造物の構築方法について説明する。
【0033】
この地下管路状構造物1の構築は、設置先となる歩道や道路側部等(以下、道路という)の地表を開削し、底部に栗石等を敷設して土台を形成した後、土台上に管路部材3,3…を順次設置するとともに隣り合う管路部材3,3を継手部9によって連結する。
【0034】
具体的には、隣り合う管路部材3,3を設置し、止水材8を介して突き合わせると、図7図8に示すように、管路部材3,3…の内縁部に配置された接合凹部10,10同士が組み合わされ、接合凹部10,10内に固定された対応する両被連結具11,11が互いに突き合わされて蟻ほぞ状を成す。
【0035】
次に、図10に示すように、締結具12を接合凹部10の片側に形成された締結具挿入用空隙13内に挿入し、接合凹部10の底面に沿って被連結具11,11側にスライド移動させ、両被連結具11,11に跨らせて締結具12を嵌合させる。
【0036】
その際、突き合わされた両被連結具11,11は、係合面15,15をスライド方向手前側が狭いテーパ状に形成しているので、締結具12の内側面が両被連結具11,11の係合面15に案内されて楔状に嵌合する。
【0037】
また、両被連結具11,11は、互いに突き合わされて蟻ほぞ状を成しているので、締結具の嵌合溝21と係合することによって締結具12に互いに押し付けられた状態で把持され、それに伴い介在される止水材8が圧縮された状態で両管路部材3,3…が接合される。
【0038】
この締結作業を各継手部9において順次繰り返し、複数の管路部材3,3…が連なる地下管路を構築し、地下管路の上面をプレキャストコンクリート製の蓋体4,4…で閉鎖する。
【0039】
一方、この地下管路状構造物1は、締結具12を取り外すこと、即ち、締結具12を被連結具11,11から離脱する方向にスライド移動させることにより、各被連結具11,11が把持された状態から解除されるので、それに伴い管路部材3,3…間の連結が解除され、各管路部材3,3…が独立した状態となる。
【0040】
また、止水材8が剥離可能な高弾性樹脂材によって構成されているので、カッター等で止水材8を管路部材3,3…から容易に剥離させることができ、隣接する他の管路部材3,3…が破損させることなく対象の管路部材3,3…毎に撤去することができる。
【0041】
よって、撤去した管路部材3,3…は、そのまま再利用に供することができ、敷設換えにも容易に対応することができる。
【0042】
このように構成された地下管路状構造物1は、モルタル等によって接合させる必要がなく、管路部材3,3…間を継手部9によって容易に接合することができるので、構築作業に要する手間及び工期を大幅に軽減することができる。
【0043】
尚、上述の実施例では、管路部材3,3…を断面U字状のプレキャストコンクリート製ブロックによって構成した例について説明したが、管路部材3,3…の態様、即ち、材質や形状等は上記実施例に限定されず、例えば、管路部材3,3…は、硬質合成樹脂(FRP)等で構成してもよく、角筒状に形成してもよい。
【0044】
また、上述の実施例では、被連結具11,11が互いに突き合わされて蟻ほぞ状を成す場合について説明したが、被連結具11,11の態様は、これに限定されず、例えば、垂直に切り立った外側面より外向きに張り出したリブ状の係合凸条を備え、互いに突き合わされて断面T字状を成すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 地下管路状構造物
2 電線類
3 管路部材
4 蓋体
5 架台
6 底板
7 側壁
8 止水材
9 継手部
10 接合凹部
11 被連結具
12 締結具
13 締結具挿入用空隙
14 接合面
15 係合面
16 ボルト挿通孔
17 アンカーナット
18 ボルト
19 天板部
20 側壁部
21 嵌合溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10