特許第6867580号(P6867580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867580
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】カップ部付き上半身衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/08 20060101AFI20210419BHJP
   A41C 3/10 20060101ALI20210419BHJP
   A41C 3/12 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   A41C3/08
   A41C3/10 A
   A41C3/12 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-3415(P2017-3415)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-186717(P2017-186717A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-71072(P2016-71072)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 勝
(72)【発明者】
【氏名】北川 由香
(72)【発明者】
【氏名】立入 めぐみ
【審査官】 住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3137385(JP,U)
【文献】 特開2001−316907(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3111510(JP,U)
【文献】 特開2005−307390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C1/00−5/00
A41B9/00−9/16
A41D13/00
A41D13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のカップが一体に形成されたカップ部を有するカップ部付き上半身衣類であって、
胸部及び当該胸部の背面側に位置する背部上部を含むバスト部を備え、
前記バスト部は、二重の伸縮性生地によって構成され、
前記カップ部は、前記バスト部において前記二重の伸縮性生地の間に配置され、
前記カップ部の前中心側が、前記二重の伸縮性生地における肌側の方の生地に対して縫着されているカップ部付き上半身衣類。
【請求項2】
前記胸部及び前記背部上部に繋がるように前記バスト部の下側に設けられた胴部を更に備え、
前記胴部は、一重の伸縮性生地によって構成されている請求項1記載のカップ部付き上半身衣類。
【請求項3】
前記二重の伸縮性生地と前記一重の伸縮性生地との境界ラインは、衣類の横方向に沿って一直線状をなしており、
前記二重の伸縮性生地内において、前記カップ部の下縁部の少なくとも一部は、前記境界ラインに沿った一直線状をなしている請求項2記載のカップ部付き上半身衣類。
【請求項4】
前記バスト部の上側には、前記二重の伸縮性生地によって構成された左右一対の肩ストラップ部が設けられており、
前記カップ部は、前記二重の伸縮性生地における外側の方の生地に対して非結合となっている請求項1〜3のいずれか一項記載のカップ部付き上半身衣類。
【請求項5】
前記カップ部の下縁側及び脇縁側の少なくとも一部が、前記二重の伸縮性生地における前記肌側の方の生地に対して更に結合されている請求項1〜4のいずれか一項記載のカップ部付き上半身衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部付き上半身衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカップ部付き上半身衣類として、例えば特許文献1に記載のカップ付き女性用衣類がある。この従来のカップ付き女性用衣類は、バストの整形機能を有するものであり、カップ部の表布と裏布との間に介在するホルダと、裏布の肌側に設けられた乳房押上部材とを有している。このカップ付き女性用衣類では、乳房押上部材の配置により、着用者のバストのボリュームが前中心側の上方に寄せられるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に記載のブラジャーの製造方法では、上端縁を袋編みにした前面カップ部及び裏面カップ部と、前面カップ部及び裏面カップ部の下方側に袋編みによって形成したアンダーバスト部とを備えたブラジャーが記載されている。このブラジャーは、前面カップ部とアンダーバスト部との境界から縫着線を無くすことで、着用者に下着としての感覚を感じさせないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−101284号公報
【特許文献2】特開平5−247702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のカップ部付き上半身衣類では、カップ部が生地の肌側に取り付けられているため、カップ部の形状の凹凸によってバスト部の肌触りの良さを確保しにくいという課題があった。このような課題に対し、バスト部において生地を袋状に形成し、袋状の生地の内部にカップ部を配置することが考えられる。しかしながら、このような構成を実現するにあたっては、袋状の生地の内部でのカップ部の安定性とカップ部による着用者のバストの保持機能とを両立させる必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、バスト部における肌触りの良さ、及びカップ部の安定性とカップ部による着用者のバストの保持機能との両立を実現できるカップ部付き上半身衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るカップ部付き上半身衣類は、カップ部を有するカップ部付き上半身衣類であって、胸部及び当該胸部の背面側に位置する背部上部を含むバスト部とを備え、バスト部は、二重の伸縮性生地によって構成され、カップ部は、バスト部において二重の伸縮性生地の間に配置され、カップ部の前中心側が、二重の伸縮性生地における肌側の方の生地に対して結合されている。
【0008】
このカップ部付き上半身衣類では、バスト部が二重の伸縮性生地によって構成され、カップ部は、二重の伸縮性生地の間に配置されている。したがって、着用者の肌には、二重の伸縮性生地における肌側の方の生地を介してカップ部が宛がわれるので、カップ部の形状の凹凸が緩和され、バスト部の肌触りの良さが高められる。また、カップ部付き上半身衣類では、このカップ部の前中心側が二重の伸縮性生地における肌側の方の生地に対して結合されている。動きの比較的少ない前中心側でカップ部を肌側の方の生地に対して結合することで、締め付けを強めることなく二重の伸縮性生地の内部におけるカップ部の安定性が高められる。また、相対的に伸縮パワーが高く且つ伸度が低い二重の伸縮性生地が背部上部をも構成しているので、着用時に背部上部からの引っ張り力が胸部に作用し、カップ部による着用者のバストの保持機能も十分に確保できる。
【0009】
また、胸部及び背部上部に繋がるようにバスト部の下側に設けられた胴部を更に備え、胴部は、一重の伸縮性生地によって構成されていてもよい。この構成によれば、相対的に伸縮パワーが低く且つ伸度が高い一重の伸縮性生地で胴部が構成されるので、着用者の胴回りの動き易さを確保できる。
【0010】
また、二重の伸縮性生地と一重の伸縮性生地との境界ラインは、衣類の横方向に沿って一直線状をなしており、二重の伸縮性生地内において、カップ部の下縁部の少なくとも一部は、境界ラインに沿った一直線状をなしていてもよい。二重の伸縮性生地と一重の伸縮性生地との境界ラインにカップ部の下縁部の直線部分を沿わせることで、カップ部の安定性の更なる向上が図られる。
【0011】
また、バスト部の上側には、二重の伸縮性生地によって構成された左右一対の肩ストラップ部が設けられており、カップ部は、二重の伸縮性生地における外側の方の生地に対して非結合となっていてもよい。この場合、二重の伸縮性生地においてカップ部に対して非結合となっている外側の方の生地が、着用時に肩ストラップ部からの引っ張り力を受けてカップ部を支えるように作用する。したがって、カップ部による着用者のバストの保持機能を一層十分に確保できる。
【0012】
また、カップ部の下縁側及び脇縁側の少なくとも一部が、二重の伸縮性生地における肌側の方の生地に対して更に結合されていてもよい。この場合、二重の伸縮性生地の内部におけるカップ部の安定性が一層高められる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バスト部における肌触りの良さ、及びカップ部の安定性とカップ部による着用者のバストの保持機能との両立を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】カップ部付き上半身衣類の正面図である。
図2】カップ部付き上半身衣類の背面図である。
図3】カップ部付き上半身衣類を裏返して示す正面図である。
図4】(a)〜(c)は、カップ部付き上半身衣類の縫製工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係るカップ部付き上半身衣類の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、カップ部付き上半身衣類の着用状態を想定して「上」「下」等の用語を使用する。
【0016】
図1は、カップ部付き上半身衣類の正面図である。また、図2は、その背面図である。図1及び図2に示すカップ部付き上半身衣類1は、例えばカップ付きキャミソールとして構成されている。カップ部付き上半身衣類1は、バスト部2と、胴部3と、左右一対の肩ストラップ部4,4とを備えている。
【0017】
バスト部2は、着用者の胸部に宛がわれる胸部11と、着用者の背部上部に宛がわれる背部上部12と、を含んで構成されている。衣類正面側の胸部11と、衣類背面側の背部上部12とは、衣類両脇側で連続し、着用者の胸周りを包囲するように筒状をなしている。
【0018】
衣類正面側におけるバスト部2の上縁部2a(図1参照)、及び衣類背面側におけるバスト部2の上縁部2b(図2参照)は、カップ部付き上半身衣類1の首刳りに相当し、いずれも下方に向かって緩やかな凹状をなしている。また、バスト部2の左右の脇側上部2c,2cは、カップ部付き上半身衣類1の袖刳りに相当し、いずれも中心側に向かって緩やかな凹状をなしている。
【0019】
バスト部2には、着用者のバストを保持するカップ部21が内蔵されている。カップ部21は、図1に示すように、左右一対のカップ22,22と、カップ22,22の下縁側を支持する土台部23とによって構成されている。カップ22,22と土台部23とは、例えばウレタンなどの弾性材料を用いたモールド成型により一体に形成されている。
【0020】
カップ22は、全体として着用者のバスト形状に対応する椀形状をなしている。カップ22の上縁部22aは、着用者のバスト上部の形状に沿うように、中心側に向かって上方に緩やかな凸状をなしている。また、カップ22の下縁部22bは、着用者のバストのバージスラインに沿うように、下方に向かって緩やかな凸状をなしている。カップ22の脇縁部22cは、着用者の腕の動きを阻害しないように、バスト部2の脇側上部2cと略同一の曲率で中心側に向かって緩やかな凹状をなしている。
【0021】
土台部23の上縁部23aは、左右のカップ22,22の下縁部22bに沿うように凹状に湾曲している。土台部23の下縁部23bは、カップ部21の下縁部21aを構成している。土台部23の下縁部23bは、左右のカップ22,22の下方に位置し、左右の脇側ではカップ22の下縁部22bの形状に沿って緩やかに凸状に湾曲し、前中心位置では上方に向かって緩やかに凸状に湾曲している。また、土台部23の下縁部23bは、脇側と前中心側との間では横方向(水平方向)に一直線状に形成されている。
【0022】
土台部23の左右の脇縁部23c,23cは、土台部23の下縁部23bにおける一直線状の部分に対して略直角に形成され、バスト部2の左右の脇側下部2d,2dに沿って直線状に形成されている。また、土台部23の前中心部23eは、カップ部付き上半身衣類1の前中心に沿って、カップ22,22間に張り出している。
【0023】
胴部3は、胸部11及び背部上部12に繋がるようにバスト部2の下側に設けられている。胴部3は、着用者の胸部下部から腹部にかけて宛がわれる腹部31と、着用者の背部下部から腰部にかけて宛がわれる腰部32とを含んで構成されている。衣類正面側の胸部11と、衣類背面側の背部上部12とは、衣類両脇側で連続し、着用者の胴周りを包囲するように筒状をなしている。
【0024】
肩ストラップ部4は、胸部11の上脇部分と背部上部12の上脇部分とを繋ぐように帯状に設けられている。肩ストラップ部4は、着用者の両肩にそれぞれ正面から背面にかけて掛け渡され、カップ部付き上半身衣類1の装着をサポートする。
【0025】
次に、上述したバスト部2及び胴部3の生地構成について説明する。
【0026】
カップ部付き上半身衣類1では、バスト部2は、二重の伸縮性生地41によって構成され、胴部3は、一重の伸縮性生地42によって構成されている。すなわち、カップ部付き上半身衣類1では、胸部11及び背部上部12がいずれも二重の伸縮性生地41によって構成され、腹部31及び腰部32がいずれも一重の伸縮性生地42によって構成されている。
【0027】
本実施形態では、二重の伸縮性生地41及び一重の伸縮性生地42は、同一の生地となっている。一重の伸縮性生地42及び二重の伸縮性生地41に用いる生地としては、例えば、緯編機によって編成される天竺、フライス等の横編地、丸編地、経編機によって編成されるトリコット等の経編地が挙げられる。
【0028】
二重の伸縮性生地41は、衣類正面側から衣類背面側にかけて連続する袋状となっている。本実施形態では、バスト部2だけでなく、肩ストラップ部4も二重の伸縮性生地41によって構成されている。バスト部2及び肩ストラップ部4は、例えば袋状の二重の伸縮性生地41の上部を裁断することによって形成される。
【0029】
肩ストラップ部4の幅方向の一端部4aでは、バスト部2の上縁部2a及び上縁部2b(首刳り)と一体にテープ始末(パイピング)を施すことにより、二重の伸縮性生地41の衣類正面側と衣類背面側とが結合されている。また、肩ストラップ部4における幅方向の他端部4bでは、バスト部2の脇側上部2c(袖刳り)と一体にテープ始末(パイピング)を施すことにより、二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41aと外側の方の生地41bとが結合されている。二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41a及び外側の方の生地41b(図4参照)は、これらのテープ始末が施された部位と、二重の伸縮性生地41と一重の伸縮性生地42との境界ラインLが延在する部位とを除いて互いにフリーな状態となっている。
【0030】
カップ部付き上半身衣類1では、図1及び図2に示すように、一重の伸縮性生地42及び二重の伸縮性生地41の境界ラインLは、衣類正面側及び衣類背面側のいずれにおいても、衣類の横方向(水平方向)に一直線状となっている。境界ラインLの上下方向の位置は、カップ部21(土台部23)の形状にもよるが、着用時において、着用者のバージスライン(胸と体の境界線、すなわちバストの輪郭)の最下点よりやや下方の位置となる。
【0031】
上述したカップ部21は、図1に示すように、衣類正面側において、二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41aと外側の方の生地41bとの間に配置されている。二重の伸縮性生地41内において、カップ部21の下縁部21aにおける一直線状の部分は、一直線状をなす境界ラインLに沿って配置されている。また、二重の伸縮性生地41内において、カップ22の脇縁部22cは、バスト部2の脇側上部2cに沿って配置され、土台部23の脇縁部23cは、バスト部2の脇側下部2dに沿って配置されている。
【0032】
図3は、カップ部付き上半身衣類を裏返して示す正面図である。同図に示すように、二重の伸縮性生地41に対するカップ部21の結合にあたって、カップ部21は、二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41aのみに対して結合されている。より具体的には、カップ部21は、前中心側の縫着部W1と、脇側の縫着部W2とによって肌側の方の生地41aのみに結合されている。これらの縫着部W1,W2は、衣類正面側からは視認されないようになっている(図1参照)。
【0033】
縫着部W1は、カップ部21の前中心側を肌側の方の生地41aに縫着する部分である。縫着部W1は、土台部23の前中心部23eの中心に沿って縦方向(上下方向)に延びている。また、縫着部W2は、カップ部21の下縁側及び脇縁側の少なくとも一部を肌側の方の生地41aに縫着する部分である。縫着部W2は、カップ22の最下点の真下となる位置と土台部23の脇縁部23cとを結ぶように、カップ部21の下縁部21aに沿って緩やかに湾曲して延びている。
【0034】
このようなカップ部付き上半身衣類1を製造する場合、例えば図4(a)に示すように、まず、境界ラインLが一直線状となるように一重の伸縮性生地42と袋状の二重の伸縮性生地41とを連続して編成する。次に、図4(b)に示すように、首刳り及び袖刳りの形状に合わせて袋状の二重の伸縮性生地41の上部を裁断し、裁断によって形成された開口から二重の伸縮性生地41内にカップ部21を配置する。
【0035】
二重の伸縮性生地41内にカップ部21を配置した後、図4(c)に示すように、図3に示した縫着部W1,W2(図4(c)ではWで示す)によってカップ部21を肌側の方の生地41aに縫着する。その後、二重の伸縮性生地41の上端において、肌側の方の生地41aの端部と外側の方の生地41bの端部とをテープ始末(パイピング)によって結合することにより、首刳り、袖刳り、及び肩ストラップ部4を形成する。以上により、二重の伸縮性生地41で構成されたバスト部2と、一重の伸縮性生地42で構成された胴部3とを備えたカップ部付き上半身衣類1が得られる。
【0036】
以上説明したように、カップ部付き上半身衣類1では、バスト部2が二重の伸縮性生地41によって構成され、カップ部21は、二重の伸縮性生地41の間に配置されている。したがって、着用者の肌には、二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41aを介してカップ部21が宛がわれるので、カップ部21の形状の凹凸が緩和され、バスト部2の肌触りの良さが高められる。
【0037】
また、カップ部付き上半身衣類1では、このカップ部21の前中心側が縫着部L1によって二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41aに対して結合されている。動きの比較的少ない前中心側でカップ部21を肌側の方の生地41aに対して結合することで、締め付けを強めることなく二重の伸縮性生地41の内部におけるカップ部21の安定性が高められる。さらに、カップ部付き上半身衣類1では、相対的に伸縮パワーが高く且つ伸度が低い二重の伸縮性生地41が背部上部12をも構成しているので、着用時に背部上部12からの引っ張り力が胸部11に作用し、カップ部21による着用者のバストの保持機能も十分に確保できる。
【0038】
また、カップ部付き上半身衣類1では、胸部11及び背部上部12に繋がるようにバスト部2の下側に設けられた胴部3が更に設けられ、胴部3は、一重の伸縮性生地42によって構成されている。この構成によれば、相対的に伸縮パワーが低く且つ伸度が高い一重の伸縮性生地42で胴部3が構成されるので、着用者の胴回りの動き易さを確保できる。
【0039】
また、カップ部付き上半身衣類1では、二重の伸縮性生地41と一重の伸縮性生地42との境界ラインLは、衣類の横方向に沿って一直線状をなしている。そして、二重の伸縮性生地41内のカップ部21の下縁部21aの少なくとも一部は、境界ラインLに沿った一直線状をなしている。二重の伸縮性生地41と一重の伸縮性生地42との境界ラインLにカップ部21の下縁部21aにおける一直線状の部分を沿わせることで、カップ部21の安定性の更なる向上が図られる。
【0040】
また、カップ部付き上半身衣類1では、二重の伸縮性生地41によって構成された左右一対の肩ストラップ部4がバスト部2の上側に設けられている。そして、カップ部21は、二重の伸縮性生地41における外側の方の生地41bに対して非結合となっている。この場合、二重の伸縮性生地41においてカップ部21に対して非結合となっている外側の方の生地41bが、着用時に肩ストラップ部4からの引っ張り力を受けてカップ部21を支えるように作用する。したがって、カップ部21による着用者のバストの保持機能を一層十分に確保できる。
【0041】
また、カップ部付き上半身衣類1では、カップ部21の脇側の一部が、縫着部W2によって二重の伸縮性生地41における肌側の方の生地41aに対して結合されている。これにより二重の伸縮性生地41の内部におけるカップ部21の安定性が一層高められる。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、前中心側の縫着部W1と脇側の縫着部W2とによってカップ部21が肌側の方の生地41aに縫着されているが、縫着部W2を設けず、縫着部W1のみによってカップ部21が肌側の方の生地41aに縫着されていてもよい。
【0043】
このような構成であっても、動きの比較的少ない前中心側でカップ部21が肌側の方の生地41aに対して結合されるので、締め付けを強めることなく二重の伸縮性生地41の内部におけるカップ部21の安定性が高められる。また、縫着部W2を設けないことで、縫製の手間を省くことができる。
【0044】
また、二重の伸縮性生地41の内部に配置するカップ部の形状についても、種々の変形を採用し得る。例えば上記実施形態では、カップ22,22と土台部23とを一体成型し、カップ部21の下縁部21aの一部を一直線状としているが、カップ部21の下縁部21aの全体が一直線状であってもよく、カップ部21の下縁部21aの全体がカップ22の下縁部22bの形状に応じた緩やかな湾曲形状であってもよい。
【0045】
また、右側のカップと右側の土台部とを一体に形成したパーツと、及び左側のカップと左側の土台部とを一体に形成したパーツとを用意し、左右のパーツを前中心側で接合したカップ部を用いてもよい。カップと土台部とは、互いに異なる素材を用いてもよい。
【0046】
また、カップ部は、必ずしも土台部を有していなくてもよく、左右のカップのみでカップ部を構成していてもよい。この場合、左右のカップを一体成型してもよく、左右のカップをそれぞれ成型してもよい。左右のカップが別体である場合、テープ等の別部材を用いて左右のカップを前中心側で連結してもよい。カップは、成型のほか、接ぎやダーツなどによって構成してもよい。左右のカップ同士が分離している場合、それぞれのカップの前中心側を肌側の方の生地41aに対して結合すればよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、肩ストラップ部4を二重の伸縮性生地41によってバスト部2と一体に構成しているが、肩ストラップ部の構成はこれに限られない。例えば二重の伸縮性生地によって肩ストラップ部を構成するのではなく、首刳りの端始末であるパイピングと、袖刳りの端始末であるパイピングとを結合して肩ストラップ部を構成してもよい。また、首刳りの端始末であるパイピングや、袖刳りの端始末であるパイピングに別のテープ部材を結合して肩ストラップ部を構成してもよい。
【0048】
衣類背面側において、肩ストラップ部4の接続先であるバスト部2の上縁部2bは、横方向(水平方向)に一直線状としてもよい。肩ストラップ部4は、必ずしも設けなくともよい。また、カップ部付き上半身衣類1の製造にあたっては、図4(a)〜(c)に示した方法に限られず、バスト部2の形状に裁断された部分と胴部3とを有する一重の伸縮性生地42に、バスト部2の形状に裁断された別の一重の伸縮性生地を結合して二重の伸縮性生地41を構成してもよい。
【0049】
このほか、一重の伸縮性生地42を上方側で肌側に折り返し、一重の伸縮性生地42の折り返し部分の先端を境界ラインLの位置で一重の伸縮性生地42に結合して二重の伸縮性生地41を構成してもよい。この場合、境界ラインLにおける一重の伸縮性生地42の折り返し部分の先端と一重の伸縮性生地42とをニットインし、一体編み構造とすることが好適である。
【0050】
ニットインとは、本体の編地と結合させる場合に、表面に縫い糸が目立たぬように縫う処理を編み糸を用いて行なうものであり、「すくい縫い」のように編地をすくいながら留め合わせる方法である。このような編み構造を採用することで、肌側の方の生地41aと外側の方の生地41bとの間に結合の融通性を持たせることができる。このため、着用者に対するカップ部21の追従性が求められる肌側の方の生地41aと、アウターウェアに対する追従性が求められる外側の方の生地41bとを、それぞれ着用者の動作に対して良好に追従させることが可能となる。また、ニットインでは、境界ラインLに沿って隙間を形成することもできるため、カップ部21が配置される二重の伸縮性生地41内の通気性を高めることも可能となる。
【0051】
さらに、一重の伸縮性生地42の折り返し部分の先端周辺において、境界ラインL(ニットイン部分)の手前側(上方側)をリブ編み等の編み構造に変更してもよい。また、二重の伸縮性生地41全体をリブ編み等の編み構造に変更してもよい。これらの場合、リブ編み等によって当該部分の伸長回復性が高められる。これにより、二重の伸縮性生地41内に配置されるカップ部21の安定性を高めることができる。また、バスト部2の下部或いはバスト部2全体の耐久性を向上できる。
【0052】
また、上記実施形態では、カップ部付き上半身衣類としてカップ付きキャミソールを例示したが、本発明を適用するカップ部付き上半身衣類としては、カップ付きキャミソールの他に、カップ付きタンクトップ、カップ付きハーフトップなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0053】
1…カップ部付き上半身衣類、2…バスト部、3…胴部、4…肩ストラップ部、11…胸部、12…背部上部、21…カップ部、21a…下縁部、41…二重の伸縮性生地、41a…肌側の方の生地、41b…外側の方の生地、42…一重の伸縮性生地、L…境界ライン。
図1
図2
図3
図4