特許第6867639号(P6867639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867639
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】非イオン性ヨード造影剤の結合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   A61K49/04 210
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-200419(P2016-200419)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-62475(P2018-62475A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 平成28年4月26日 掲載アドレス https://projectdb.jst.go.jp/grant/JST−PROJECT−13412132/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 掲載年月日 平成28年5月27日 掲載アドレス https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI−PROJECT−26670388/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 掲載年月日 平成28年5月9日 掲載アドレス http://www.jes1950.jp/J_MEETING/67th_meeting/program_160801.pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 掲載年月日 平成28年8月25日 掲載アドレス https://www.jstage.jst.go.jp/article/electroph/60/Suppl/60_s28/_pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 開催年月日 平成28年8月27日 集会名 第67回日本電気泳動学会総会 開催場所 釧路市観光国際交流センター(北海道釧路市幸町3−3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 発行年月日 平成28年8月26日(頒布日) 刊行物名 第27回日本消化器癌発生学会総会 プロクラム・抄録集 133頁 事務局(鹿児島大学大学院消化器・乳腺甲状腺外科) (刊行物等) 開催年月日 平成28年9月16日 集会名 第27回日本消化器癌発生学会総会 開催場所 城山観光ホテル(鹿児島県鹿児島市新照院町41番1号)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 掲載年月日 平成28年9月14日 掲載アドレス https://www.congre.co.jp/jca2016/common/files/program_1008.pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 発行年月日 平成28年9月22日 掲載アドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.miceone.myschedule.jca2016
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物等) 発行年月日 平成28年9月22日 掲載アドレス http://www.apple.com/jp/itunes/affiliates/downlo
(73)【特許権者】
【識別番号】596165589
【氏名又は名称】学校法人 聖マリアンナ医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】508374520
【氏名又は名称】学校法人獨協学園獨協医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸行
(72)【発明者】
【氏名】安西 尚彦
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−106673(JP,A)
【文献】 特開平03−215457(JP,A)
【文献】 特開2007−277143(JP,A)
【文献】 特表平10−501528(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121285(WO,A1)
【文献】 特開平06−199754(JP,A)
【文献】 特表平08−506829(JP,A)
【文献】 国際公開第01/082977(WO,A1)
【文献】 特表2000−504334(JP,A)
【文献】 Journal of Hepatology,2012年 4月13日,Vol. 57, No. 2,p. 421-429
【文献】 造影剤腎症,全国循環器撮影研究会誌,2007年,Vol. 19,p. 64-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性ヨード造影剤と、エトキシベンジル基又はウルソデオキシコール酸に由来する基と結合体であって、
非イオン性ヨード造影剤が、イオヘキソール、イオパミドール、イオブロミド、イオペントール、イオビトリオール、イオベルソール、イオキシラン、及びイオメプロールからなる群から選択される、結合体。
【請求項2】
非イオン性ヨード造影剤と、エトキシベンジル基と、の結合体であって、
非イオン性ヨード造影剤が、イオヘキソール、イオパミドール、イオブロミド、イオペントール、イオビトリオール、イオベルソール、イオキシラン、及びイオメプロールからなる群から選択される、結合体。
【請求項3】
非イオン性ヨード造影剤と、ウルソデオキシコール酸に由来する基と、の結合体であって、
非イオン性ヨード造影剤が、イオヘキソール、イオパミドール、イオブロミド、イオペントール、イオビトリオール、イオベルソール、イオキシラン、及びイオメプロールからなる群から選択される、結合体
【請求項4】
非イオン性ヨード造影剤が、イオヘキソールである、請求項1から3のいずれか1項に記載の結合体。
【請求項5】
下記いずれかの式で表される結合体。
【化1】
【請求項6】
下記いずれかの式で表される結合体。
【化2】
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の結合体を含む、造影剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性ヨード造影剤の結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨード造影剤を用いた造影X線検査は、X線画像の診断能を大きく高め、多くの診療科で重要な位置を占める診断方法となっている。
しかしながら、ヨード造影剤は、その副作用として造影剤腎症が存在しており、近年大きな問題となっている。
加えて、肝細胞癌のX線診断においては、癌そのものの診断ではなく、血流の変化に依拠しているため、早期肝細胞癌の診断では感度が低いという問題もあった。
【0003】
特許文献1には、MRI造影剤であるGd−DTPAにエトキシベンジル(EOB)基を導入したGd−EOB−DTPAが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、腎毒性軽減を図ることのできる新規ヨード造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、非イオン性ヨード造影剤に肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基を結合させた結合体が、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)
非イオン性ヨード造影剤と肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基との結合体。
(2)
非イオン性ヨード造影剤が、イオヘキソール、イオパミドール、イオブロミド、イオペントール、イオビトリオール、イオベルソール、イオキシラン、及びイオメプロールからなる群から選択される、(1)に記載の結合体。
(3)
肝細胞特異的トランスポーターが、OATP又はMRPである、(1)又は(2)に記載の結合体。
(4)
肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基が、エトキシベンジル基又はウルソデオキシコール酸に由来する基である、(1)から(3)のいずれかに記載の結合体。
(5)
下記いずれかの式で表される、(1)から(4)のいずれかに記載の結合体。
【化1】
(6)
下記いずれかの式で表される、(1)から(4)のいずれかに記載の結合体。
【化2】
(7)
(1)から(6)のいずれかに記載の結合体を含む、造影剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、腎毒性軽減を図ることのできる新規ヨード造影剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】isomer1及びisomer2の逆相クロマトグラフィーの測定結果を示す。クロマト条件は、流速1.0mL、アセトニトリル/水=25/75、カラム温度40℃にて、UV254nmで検出した。
図2】isomer1の400MHz(D2O)の測定結果を示す。
図3】isomer2の400MHz(D2O)の測定結果を示す。
図4】isomer1のTOF−MSの測定結果を示す。
図5】isomer2のTOF−MSの測定結果を示す。
図6】イオヘキソール−UDCA(7)の400MHz(D2O)の測定結果を示す。
図7】イオヘキソール−UDCA(7)のTOF−MSの測定結果を示す。
図8】(A)OATP1B1に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール、isomer1及びisomer2を用いたESの取り込み阻害結果を示す。(B)OATP1B1に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール、isomer1及びisomer2を用いたE217βGの取り込み阻害結果を示す。(C)OATP1B3に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール、isomer1及びisomer2を用いたE217βGの取り込み阻害結果を示す。(D)OATP2B1に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール、isomer1及びisomer2を用いたE217βGの取り込み阻害結果を示す。各結果は、N=5であり、コントロールに対して、*は、P<0.05を、**は、P<0.01を意味する。
図9】isomer1を用いたE217βGの取り込み阻害実験におけるIC50を示す。
図10】isomer2を用いたE217βGの取り込み阻害実験におけるIC50を示す。
図11】(A)OATP1B1に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール及び結合体(7)を用いたESの取り込み阻害結果を示す。(B)OATP1B1に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール及び結合体(7)を用いたE217βGの取り込み阻害結果を示す。(C)OATP1B3に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール及び結合体(7)を用いたE217βGの取り込み阻害結果を示す。(D)OATP2B1に対するコントロール、EOB−primovist、イオヘキソール及び結合体(7)を用いたE217βGの取り込み阻害結果を示す。各結果は、N=5であり、コントロールに対して、**は、P<0.01を、***は、P<0.001を意味する。
図12】結合体(7)を用いた取り込み阻害実験におけるIC50を示す。
図13】STAMマウスにイオヘキソールを投与した造影結果を示す。
図14】STAMマウスにisomer1を投与した造影結果を示す。
図15】肝腫瘍での造影結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本発明の結合体は、非イオン性ヨード造影剤と肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基とが結合した構造を有する。
本発明において、造影剤とは、画像診断において、撮像する画像にコントラストをつけたり特定の組織を強調するために患者に投与される医薬品を意味する。
非イオン性ヨード造影剤とは、造影剤の中でも、その化学構造中に、ヨード(I)を含有し、イオン性造影剤におけるカルボキシル基が親水性の置換基に代わっている造影剤であって、水溶液中でイオンに解離しない。
一般に、非イオン性ヨード造影剤は、以下の構造を有する。
【0012】
【化3】
上記構造において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水溶液中でイオンに解離しない親水性の基を意味する。
【0013】
非イオン性ヨード造影剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、イオヘキソール、イオパミドール、イオブロミド、イオペントール、イオビトリオール、イオベルソール、イオキシラン、及びイオメプロール等が挙げられる。
中では、イオヘキソールが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の結合体においては、非イオン性ヨード造影剤のR1、R2及びR3における親水性の基に対して、肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基が結合している。
非イオン性ヨード造影剤と肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基との結合は好適には共有結合である。
非イオン性ヨード造影剤のR1、R2及びR3における親水性の基中の水酸基に対して、肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基が共有結合していることが好適である。
【0015】
肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基における肝細胞特異的トランスポーターとは、肝細胞に特異的に発現しているトランスポーターを意味する。
肝細胞特的トランスポーターにより認識される基を結合体が有していることにより、結合体が肝細胞にトランスポーターの基質となり取り込まれたり、肝細胞からトランスポーターの基質となり排泄される。
結合体が、トランスポーターの基質となることにより、結合体は、肝細胞に取り込まれていくため、あるいは、肝細胞から排泄されていくため、腎排泄の一部が胆汁排泄されることとなり、腎毒性軽減を図ることができる。
【0016】
肝細胞特異的トランスポーターとしては、特に限定されるものではないが、例えば、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)及び多剤耐性関連タンパク質(MRP)等が挙げられる。
OATPとしては、OATP1B1、OATP1B3及びOATP2B1等が挙げられる。
MRPとしては、MRP3、MRP4及びMRP6等が挙げられる。
【0017】
肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基としては、特に限定されるものではないが、例えば、エトキシベンジル基又はウルソデオキシコール酸に由来する基等が挙げられる。
【0018】
エトキシベンジル基とは、以下の構造を有する基である。
【化4】
具体的には、エトキシベンジル基とは、p−エトキシベンジル基が挙げられる。
【化5】
上記構造で示すエトキシベンジル基における、波線部分は、非イオン性ヨード造影剤との結合手を意味しており、非イオン性ヨード造影剤の水酸基が、エトキシベンジル基で置換されている構造であることが好適である。
【0019】
ウルソデオキシコール酸に由来する基とは、下記構造を有するウルソデオキシコール酸が非イオン性ヨード造影剤と結合することにより生じる基を意味する。
【化6】
例えば、ウルソデオキシコール酸のカルボキシル基において、非イオン性ヨード造影剤と結合する場合には、下記構造がウルソデオキシコール酸に由来する基となる。
【化7】
上記構造で示すウルソデオキシコール酸に由来する基における、波線部分は、非イオン性ヨード造影剤との結合手を意味しており、非イオン性ヨード造影剤の水酸基が、ウルソデオキシコール酸に由来する基で置換されている構造であることが好適である。
【0020】
本発明の結合体としては、下記いずれかの式で表される化合物であることが好適である。
【化8】
本発明の結合体としては、上記A又はBで表される化合物であることがより好適である。
【0021】
また、本発明の結合体としては、下記いずれかの式で表される化合物であることが好適である。
【化9】
本発明の結合体としては、上記F又はGで表される化合物であることがより好適である。
【0022】
本発明の結合体は、造影剤として用いることができる。
本発明の結合体は、非イオン性ヨード造影剤に、肝細胞特異的トランスポーターにより認識される基が結合していることにより、肝細胞特異的トランスポーターから細胞内に取り込まれ、胆汁からも排泄される機能を付与されるため、二系統の排泄経路を有することとなり腎毒性を軽減することができる。
また、肝細胞特異的トランスポーターにより取り込まれることにより、肝細胞造影を可能とする。
ヨ―ド造影剤を用いたダイナミックCTによる肝細胞癌(HCC)診断はHCC特異的な血流支配を明らかにすることによってなされる。しかし早期HCCでは血流の変化は認められず、CTでの診断が難しいことが知られている。また、肝細胞特異的トランスポーターOATP1B1及びOATP1B3の発現はHCCで低下していることが知られている。そこで、本発明においては、肝細胞特異的トランスポーターにより結合体が取り込まれることにより、動脈と門脈の肝臓における血流支配を画像化することができ、肝細胞癌(HCC)診断に用いることができる。
【0023】
本発明の結合体は、造影剤として公知の医薬組成物の形態で使用することができる。医薬組成物は、造影剤として従来公知の方法により製造することができる。
本発明の結合体は、一種で用いてもよく、二種以上の混合物として用いてもよい。
医薬組成物として、特に限定されるものではなく、安定化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、矯味剤、着色剤、香料その他の薬剤学的に許容される添加剤を含有させることができる。
【0024】
医薬組成物は、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入等も含む)、経皮及び経粘膜への投与を含み、治療上適切な投与経路に適合するように製剤化されるが、好適には静脈内注射される。
【0025】
本発明の結合剤の投与量は、投与される患者の状態、投与方法等により適宜決定される。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例において示される測定方法は以下のとおりである。
【0027】
(製造例1)ヨウ化p-エトキシベンジル(3)の合成
化合物2の合成
【化10】
【0028】
アルゴン気流下、p−エトキシベンジルアルコール(1)(6.509,42.7mmol)の無水塩化メチレン(90mL),無水N,N−ジメチルホルムアミド(70L)混合溶液を氷冷し、塩化チオニル(4.0mL,55.7mmol)を加え、30分間撹枠した。反応液を濃縮したのちテトラヒドロフラン(30mL)に溶かし、氷水(150mL)に滴下した。
塩化メチレン(50mL)で2回抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮することにより、化合物2(7.66g)を淡い黄色液体として得た。
【0029】
ヨウ化p-エトキシベンジル(3)の合成
【化11】
【0030】
化合物2(2.06g,11.7mmol)のアセトン溶液(20mL)にヨウ化ナトリウム(5.30g,35.4mmol)を加え、室温で2時間撹枠した。
反応液を減圧下濃縮したのち塩化メチレンに溶かし、セライトろ過した。ろ液を減圧下濃縮することにより、化合物3(3.08g)を褐色液体として得た。
【0031】
(実施例1)結合体5の合成
【化12】
【0032】
イオヘキソール(4)(2.01g,2.44mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド溶液(20mL)を氷冷し、ヨウ化p−エトキシベンジル(1.00g,3.85mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド溶液(5mL)を加えた。さらに、へキサメチルジシラザンリチウム(1.3Mテトラヒドロフラン溶液,3.0mL,3.90mmol)を加え、室温で3時間撹枠した。再び反応液を氷冷し、ヨウ化p−エトキシベンジル(1.00g,3.85mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド溶液(4.0mL)を加え、室温で1時間半撹枠した。反応終了後、反応液を氷冷し、水(20mL)を加えたのち、1M塩酸(2mL)を加えて中和し、酢酸エチルで洗浄した。水相を減圧下濃縮することで榿色オイルを得た。
得られた榿色オイルをODSパックドカラム(mRIAN社製,C18,10g)を用いて精製することにより結合体5を無色オイル(600mg)として得た。得られた結合体5を逆相カラムクロマトグラフィー(カラム:TSK−gel ODS−80Tb,移動相:水/アセトニトリル=8/2)にて精製することで、白色アモルファス(isomer1:136mg)及び白色アモルファス(isomer2:190mg)を得た(図1)。得られたisomer1及びisomer2を併せた収率は14%であった。
図2及び図3に、isomer1及びisomer2の400MHz(D2O)の測定結果を示す。また、図4及び図5に、isomer1及びisomer2のTOF−MSの測定結果を示す。
isomer1及びisomer2の構造として、以下の5種の異性体が考えられるが、isomer1及びisomer2の構造は、構造A及び構造Bであると推察している。
【0033】
【化13】
【0034】
(実施例2)結合体7の合成
【化14】
【0035】
ウルソデオキシコール酸(6)(1.99g,5.07mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド溶液(20mL)を氷冷し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(559mg,2.92mmol)、ジメチルアミノピリジン(601mg,4.87mmol)、イオヘキソール(4)(1.99g,2.44mmol)を加え、50℃で3時間加熱撹枠した。続いてウルソデオキシコール酸(1.00g,2.55mmol)、ジメチルアミノピリジン(300mg,2.46mmol)を加え、再び50℃で2時間加熱を行った。
反応終了後、反応液を氷冷し、水を加え、酢酸エチルで洗浄したのち水相を減圧下濃縮することで粗製品を得た。得られた粗製品を少量のメタノールに溶かし、酢酸エチル(200mL)に滴下した。析出した固体を濾取し、再びメタノールに溶かしたのち減圧留去することにより白色固体(3.73g)を得た。得られた白色固体(3.73g)を液体クロマトグラフィー(カラム:TSK−gel ODS−80Tb,移動相:水/アセトニトリル=6/4)にて精製することで、白色固体としてイオヘキソール−UDCA(7)(460mg)を得た。
図6に、イオヘキソール−UDCA(7)の400MHz(D2O)の測定結果を示す。また、図7に、イオヘキソール−UDCA(7)のTOF−MSの測定結果を示す。
イオヘキソール−UDCA(7)の構造として、以下の5種の異性体が考えられるが、イオヘキソール−UDCA(7)は、構造F及び構造Gの混合物であると推察される。
【0036】
【化15】
【0037】
(試験例1)OATPトランスポーターによる結合体の細胞内輸送実験
J Pharmacol Exp Ther. 2005 Nov;315(2):534-44を参考にして、OATPトランスポーターによる結合体の細胞内輸送実験を行った。
OATP1B1又はOATP1B3を安定発現させたヒト胎児腎細胞由来HEK293細胞(1x105 cells)を、24穴プレートで2日間培養した。その後、培養液を除去し、細胞の単層を5.5mM D−グルコースで富栄養化したダルベッコ修飾リン酸緩衝食塩水(D−PBS,137mM NaCl,3mM KCl,8mM Na2HPO4,1mM KH2PO4,1mM CaCl2,0.5mM MgCl2,pH 7.4)で2度洗浄し、次いで、10分間の前培養をした。
細胞の単層を、OATPトランスポーターの輸送基質として、[3H]Estrone−Sulfate(ES)又は[3H]Estradiol−D−17β−glucuronide(E217βG)を含む500μLのD−PBSを用いて、室温で60分間培養した。
細胞を3度氷冷したD−PBSで洗浄した後、0.1N NaOH水溶液(0.5mL)に溶解した。細胞内に蓄積した基質の量を、放射性同位体のカウントとして測定することにより、OATPトランスポーターにより取り込まれた基質の量を測定して、結合体によるOATPトランスポーターの基質取り込み阻害活性を測定した。
結果を図8図12に示す。
【0038】
(試験例2)造影実験
NASHモデルである、STAMマウスは、Med Mol Morphol. 2013 Sep; 46(3):141-52.に記載の方法により作成した。得られたSTAMマウスをペントバルビタールで麻酔し、イオヘキソール(4)又は結合体(5)をゆっくりと尾静脈から注射投与した。イオヘキソール(4)の投与量は876mg/animalとし、結合体(5)の投与量は150mg/animalとした。
CT画像を、投与前、投与中、投与20分後に撮影した。胸から下腹部までの画像データは、96×96ボクセルとして得、得られたデータを用いてDICOMファイルを産生させ、分析した。
癌性と非癌性の領域中に3つスポットを無作為に選択し、各ポイントのHounsfield Unitの測定を、画像分析(Onis,DigitalCore.Co.Ltd)により行った。
結果を図13図15に示す。
図13図15の結果から、肝細胞に取り込まれることのないイオヘキソールで造影を行った場合、肝臓の腫瘍部と非腫瘍部で造影効果には違いが全く観察されなかった。一方、結合体(5)のisomer1で造影を行うと、腫瘍部の造影効果は非腫瘍部において低下していた。肝細胞癌では血流の変化が認められるよりも前からOATPの発現低下を来すことが知られており、本造影剤が血流異常のない早期肝細胞癌の陰性造影剤として使用できる可能性を示した。
【0039】
本発明のイオヘキソールの結合剤は、イオヘキソールの肝細胞特異的トランスポーターからの細胞取り込みを可能とした。また、本結果を踏まえると、これまでの血流情報に加え、肝細胞機能を指標とした肝細胞癌(HCC)診断の新たなX線造影診断が可能となると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、非イオン性ヨード造影剤の新規結合体は、新規画像診断において産業上の利用可能性を有する。
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