【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、地盤Eに埋設される場所打ち杭用ケーシング21の杭芯を測位するための杭芯測位装置Sである。
【0025】
具体的には、この杭芯測位装置Sは、GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)移動局2が設けられた基体1と、この基体1の下部に放射状に設けられる複数の脚体3とを有している。
【0026】
このGNSS移動局2は、このGNSS移動局2に対してデータ通信可能なGNSS衛星10及びGNSS固定局11(基地局)との通信を利用して杭芯位置を測位するものである。
【0027】
また、本実施例では、GNSS移動局2及びGNSS固定局11で測位された測位情報は通信回線を利用して情報管理用端末12(PC)へ送られ、この情報管理端末12のモニター12aで測位情報が表示される。符号13はwifiルータ、14はデータ送受信機である。
【0028】
尚、本実施例では、実際に現場に設置されるGNSS固定局11(基地局)の補正情報等を利用してGNSS移動局2で測位する構成としたが、ネットワークを介して得られる電子基準点の補正情報等を利用してGNSS移動局2で測位する構成でも良いなど、本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜採用し得るものである。
【0029】
基体1は、
図2に図示したように適宜な金属製の部材で形成された板状体であり、上面部中心位置に前述したGNSS移動局2が設けられている。
【0030】
また、基体1の周面部には、周方向等間隔の三箇所に後述する脚体3を枢着する枢着連結部1aが設けられている。
【0031】
脚体3は、
図2に図示したように適宜な金属製の部材で形成された長尺体であり、本実施例では伸縮させても同一長さに設定可能な脚体3を三本設けている。
【0032】
具体的には、基体1の枢着連結部1aに連結される角筒状形状の第一脚部材3aと、この第一脚部材3aにスライド自在に挿入連結する第二脚部材3bとで構成されている。
【0033】
従って、各脚体3は、伸縮して長さ調整自在であり、しかも、基体1に対して上下方向に擺動自在である。尚、脚体3の数は適宜変更し得るものであるが、三本であると水平据付がし易く安定的な設置状態が可能となり測位精度が向上する。
【0034】
また、脚体3の下端部には、場所打ち杭用ケーシング21の上端開口部に係止する係止部4が設けられている。
【0035】
この係止部4は、
図2,3に図示したように脚体3の下端部に側面視V字状の二股形状体を設けて構成され、この各係止部4を場所打ち杭用ケーシング21の上端開口部に係止させた場合、基体1(GNSS移動局2)が上端開口部の上方中心位置に配置されるように構成されている。
【0036】
また、係止部4には場所打ち杭用ケーシング21の上端開口縁部21aに当接するローラー部5が設けられている。
【0037】
従って、係止部4を場所打ち杭用ケーシング21の上端開口部に係止させた際、ローラー部5が上端開口縁部21aに対して可及的に少ない接触面積で当接(点接触)することになり、場所打ち杭用ケーシング21の表面形状(微妙な凹凸)の影響を受けにくく、この点においても安定的な設置状態が可能となり測位精度が向上し、しかも、このローラー5が転動することで位置調整や水平角度調整が良好に行える。
【0038】
また、本実施例では、GNSS固定局11は、下部に複数(3本)の脚体3’が放射状に設けられた基体1’に設けられている。尚、脚体3’の下端部には棒状の接地部を設けているが、前述した係止部を設けても良い。
【0039】
以上の構成から成る杭芯測位装置Sを用いた、場所打ち杭用ケーシング21の埋設方法及び場所打ち杭20の形成方法及び構造物の構築方法について説明する。尚、本実施例で使用される場所打ち杭用ケーシング21は、互いに継合連結される複数の管材21’で構成されており、最下段となる管材21’の下端部には掘削刃22が設けられている。
【0040】
先ず、測量により得た杭芯位置Pに孔部25aの中心が位置するように芯出しプレート25を地表面に配設し、この芯出しプレート25の孔部25aに脚体3の係止部4を係止させて杭芯測位装置S(GNSS移動局2)を該孔部25aの上方中心位置に設けて芯出しプレート25の位置を確認する。
【0041】
続いて、芯出しプレート25上にケーシング埋設装置26を配置して、このケーシング埋設装置26で最下段となる管材21’を把持した状態で回転降下させて埋設する。
【0042】
続いて、最下段となる管材21’の上端開口部に脚体3の係止部4を係止させて杭芯測位装置S(GNSS移動局2)を該上部開口部の上方中心位置に設けて該最下段となる管材21’の杭芯を測位する(
図5参照)。尚、本実施例では、各管材21’を連結する毎に該各管材21’を回転降下させて埋設させている。
【0043】
続いて、最下段となる管材21’に任意の数の管材21’を連結して埋設し、最下段となる管材21’と後に最上段となる管材21’との間に配される途中段の管材21’の上端開口部に脚体3の係止部4を係止させて、杭芯測位装置S(GNSS移動局2)を該上部開口部の上方中心位置に設けて該途中段の管材21’の杭芯を測位する(
図6参照)。
【0044】
続いて、杭芯の測位に使用された途中段の管材21’に任意の数の管材21’を連結して埋設し、最上段となる管材21’の上端開口部に脚体3の係止部4を係止させて杭芯測位装置S(GNSS移動局2)を該上部開口部の上方中心位置に設けて該最上段となる管材21’の杭芯を測位し、場所打ち杭用ケーシング21の埋設を完了させる(
図7参照)。
【0045】
続いて、場所打ち杭用ケーシング21内の土を排出することで設けられる掘削孔23に鉄筋24(通称:鉄筋カゴ)を設け、続いて、掘削孔23にコンクリート打設装置27でコンクリートCを打設し、続いて、場所打ち杭用ケーシング21を引き抜いて場所打ち杭20を形成する(
図8,9参照)。
【0046】
続いて、前述のように形成された場所打ち杭20の上端部のコンクリート(余盛部位)を斫り、この場所打ち杭20の上端部に連設状態で構造物Xを構築する(
図10参照)。
【0047】
本実施例は上述のように構成したから、ケーシング21の埋設初期時,埋設途中及び埋設完了時など、任意のタイミングで、本実施例に係る杭芯測位装置Sを場所打ち杭用ケーシング21に設けるだけで該場所打ち杭用ケーシング21の杭芯測位が簡易且つ精度良く行えることになる。
【0048】
また、本実施例は、脚体3は、基体1に枢着され上下方向に擺動自在に設けられているから、種々のサイズの場所打ち杭用ケーシング21に対応して使用することができる。
【0049】
また、本実施例は、係止部4には場所打ち杭用ケーシング21の上端開口縁部21aに当接するローラー部5が設けられているから、簡易に良好な設置状態が得られることになる。
【0050】
また、本実施例は、場所打ち杭用ケーシング21を構成する最下段となる管材21’を地盤Eに埋設し、続いて、この最下段となる管材21’の上端部にGNSS移動局2を設けて該管材21’の杭芯を測位し、続いて、最下段となる管材21’に任意の数の管材21’を連結して埋設し、その後、最上段となる管材21’の上端部にGNSS移動局2を設けて該管材21’の杭芯を測位し、場所打ち杭用ケーシング21の埋設を完了させることになるから、極めて精度の高い杭芯測位が行われる。
【0051】
また、本実施例は、最下段となる管材21’と最上段となる管材21’との間に配される途中段の管材21’の上端部にGNSS移動局2を設けて該途中段の管材21’の杭芯を測位するから、より一層精度の高い杭芯測位が行われる。
【0052】
また、本実施例は、前述した場所打ち杭用ケーシングの埋設方法により地盤Eに場所打ち杭用ケーシング21を埋設し、続いて、場所打ち杭用ケーシング21内の土を排出することで設けられる掘削孔23に鉄筋24を設け、続いて、場所打ち杭用ケーシング21を引き抜くと共に掘削孔23にコンクリートを打設して場所打ち杭20を形成するから、杭芯位置のずれのない(杭芯位置のずれが可及的に少ない)良好な場所打ち杭20を形成することができる。
【0053】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。