(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867692
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】シートカバー
(51)【国際特許分類】
B60N 2/60 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
B60N2/60
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-83765(P2018-83765)
(22)【出願日】2018年4月25日
(65)【公開番号】特開2019-189008(P2019-189008A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591162136
【氏名又は名称】サンショウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅弘
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第08454085(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0224563(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3115059(JP,U)
【文献】
実開平05−010069(JP,U)
【文献】
実開平06−066412(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに脱着可能に取り付けられるシートカバーであって、
前記シートの座部を覆う座部カバー体と、
前記座部カバー体に設けられ、前記シートの座部とこの座部に対向する対向部との間の間隙を閉鎖する間隙閉鎖体とを備え、
前記座部カバー体は、前記シートの座部の側面を覆う側面部を有し、
前記間隙閉鎖体は、
前記座部カバー体の側面部との間に収納空間を形成する被覆部材と、
前記収納空間に収納された弾性変形可能な弾性部材とを有する
ことを特徴とするシートカバー。
【請求項2】
間隙閉鎖体は、弾性部材が圧縮弾性変形した状態で間隙を閉鎖する
ことを特徴とする請求項1記載のシートカバー。
【請求項3】
間隙閉鎖体の被覆部材は、座部カバー体の側面部の外面に取り付けられ、当該座部カバー体の側面部の外面との間に収納空間を形成する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のシートカバー。
【請求項4】
間隙閉鎖体の被覆部材は、座部カバー体の側面部の内面に取り付けられ、当該座部カバー体の側面部の内面との間に収納空間を形成する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のシートカバー。
【請求項5】
間隙閉鎖体は、
弾性部材を内側に有する前後方向長手状の棒状部分と、
前記棒状部分の後端に設けられ、シートベルト用のバックルを通すためのバックル用孔部が形成された板状部分とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載のシートカバー。
【請求項6】
間隙閉鎖体の棒状部分は、平面視で前端に向かって幅寸法が徐々に減少する幅減少部を前端側に有する
ことを特徴とする請求項5記載のシートカバー。
【請求項7】
間隙閉鎖体の被覆部材のうち少なくとも上面側は、座部カバー体と同じ素材で構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載のシートカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに脱着可能に取り付けられるシートカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された自動車用装備品が知られている。
【0003】
この自動車用装備品は、所望の長さの弾性体パッドからなる本体と、この本体の周囲を覆うカバーとを備え、前記本体は、上部の幅に対して下部の幅が漸次狭くなるように形成されている。
【0004】
そして、この自動車用装備品が自動車の隣り合う両シート間の間隙に挿入されることにより、その間隙への小物(例えば硬貨、筆記具、携帯電話等)の落下が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−220957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の自動車用装備品は、隣り合う両シート間の間隙への挿入だけで所定位置に配置されるものであるから、例えばシートの前後位置の調整や自動車の走行時の振動等によって、所定位置からの位置ズレが生じ、その結果、自動車用装備品が間隙から抜け出てしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、間隙閉鎖体が間隙から抜け出ることがなく、間隙への小物の落下を適切に防止できるシートカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシートカバーは、車両のシートに脱着可能に取り付けられるシートカバーであって、前記シート
の座部を覆う
座部カバー体と、
前記座部カバー体に設けられ、前記シートの座部とこの座部に対向する対向部との間の間隙を閉鎖する間隙閉鎖体とを備え
、前記座部カバー体は、前記シートの座部の側面を覆う側面部を有し、前記間隙閉鎖体は、前記座部カバー体の側面部との間に収納空間を形成する被覆部材と、前記収納空間に収納された弾性変形可能な弾性部材とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、間隙閉鎖体が間隙から抜け出ることがなく、間隙への小物の落下を適切に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るシートカバーと車両のシートを示す斜視図である。
【
図4】間隙閉鎖体が間隙に装着された状態を示す平面図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態に係るシートカバーの要部断面図である。
【
図6】本発明の更に他の実施の形態に係るシートカバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態について
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は車両である自動車のシート(座席)で、2はそのシート1に後付けにより脱着可能に取り付けられるシートカバーである。
【0013】
シート1は、図示しない車体のフロアに設けられたシート支持部によって前後方向に移動可能に支持され、着座者の体格等に応じてその前後位置が調整可能となっている。
【0014】
シート1は、着座者の臀部を支持する座部(シートクッション)5と、この座部5に前後方向に回動可能に設けられ、着座者の背中を支持する背凭れ部(シートバック)6とを備えている。
【0015】
また、シート1は、座部5の側方近傍に位置する上方へ突出状のバックル装置、すなわちシートベルト用のバックル7を備えている。このバックル7は、着座者の身体をシート1に拘束するためのシートベルトに取り付けられたタングプレートを保持するとともに、解除ボタン7aの押し操作によってその保持を解除するものである。
【0016】
さらに、
図1中の二点鎖線で示すように、シート1の座部5の側方には、その座部5と離間対向する箱状の対向部であるコンソールボックス(センターコンソール)8が配置され、これら座部5の側面とコンソールボックス8の側面との間には前後方向長手状の間隙(隙間)10が存在している。この間隙10は、手のひらが通過する程度の比較的狭い空間であり、この間隙10に硬貨等の小物が落下すればそれを探し出すのは困難となる。
【0017】
次いで、シートカバー(後付け車両用シートカバー)2は、可撓性を有する素材(例えば合成皮革等)からなるもので、
図1に図示した例では、シート1の座部5に脱着可能に取り付けられてその座部5を覆う座部シートカバー11と、シート1の背凭れ部6に脱着可能に取り付けられてその背凭れ部(ヘッドレストを含む)6を覆う背凭れ部シートカバー12とによって構成されている。つまり、このシートカバー2は、2つに分離可能な分離型のものである。
【0018】
まず、座部シートカバー11は、シート1の座部5を覆うカバー体である座部カバー体16と、この座部カバー体16に側方(対向部側)に向かって突設され、座部5及びコンソールボックス8間の間隙(隙間)10を閉鎖する前後方向長手状の間隙閉鎖体(隙間埋め体)17とを備えている。
【0019】
また、座部シートカバー11は、座部カバー体16をシート1の座部5に脱着可能に取り付けるための複数本の取付紐(取付手段)18を備えている。なお、図示しないが、取付紐18の先端側には留め具が取り付けられている。
【0020】
そして、座部カバー体16は、シート1の座部5の前面を覆う前面部21と、シート1の座部5の上面を覆う上面部22と、シート1の座部5の後面を覆う後面部23と、シート1の座部5の側面を覆う左右の側面部24とを有している。そして、座部カバー体16の両側面部24のうちの左側の側面部24には、長手状の間隙閉鎖体17がその全長(略全長を含む)にわたって固定されている。
【0021】
間隙閉鎖体17は、
図2にも示すように、シートベルト用のバックル7を通すための長孔状のバックル用孔部31を後側に有している。つまり、この間隙閉鎖体17の後側には、前後方向長手状のバックル用孔部31が上下面に貫通して形成されている。
【0022】
そして、間隙閉鎖体17は、そのバックル用孔部31が形成されていない部分(少なくとも前側半部を含む部分)の内側に位置する前後方向長手状の弾性変形可能な弾性部材(弾性体パット)33を有し、この弾性部材33は、可撓性のある前後方向長手状の被覆部材34で覆い隠されている。
【0023】
すなわち、この間隙閉鎖体17は、例えば発砲ウレタンからなる柔軟な丸棒状の弾性部材33と、この弾性部材33を覆い隠すように座部カバー体16の左側の側面部24に縫い付けにより固定された細長いシート状の被覆部材34とを有している。なお、弾性部材33の素材は、発砲ウレタンには限定されず、例えば発砲ポリエチレン等の他の樹脂材料や、合成ゴム等のゴム材料でもよく、弾性変形可能な弾性材料であれば任意である。
【0024】
ここで、被覆部材34は、
図3に示すように、座部カバー体16と同じ素材(例えば天然皮革、合成皮革、人工皮革等の皮革)からなる上側の第1シート材36と、座部カバー体16とは異なる素材(例えば織物、編み物、不織布、フェルト等の布)からなる下側の第2シート材37とによって構成されている。
【0025】
これら2枚の両シート材36,37は、縫い糸38で互いに縫い付けられて連結され、かつ、座部カバー体16の左側の側面部24の外面に対して縫い糸39,40でそれぞれ縫い付けられて固定されている。そして、これら両シート材36,37からなる被覆部材34の内面と座部カバー体16の側面部24の外面との間には弾性部材33と略同じ大きさの細長い密閉状の収納空間41が形成され、この収納空間41に弾性部材33が収納されている。
【0026】
こうして、間隙閉鎖体17は、弾性部材33を内側(内部)に有する略丸棒状の棒状部分42と、この棒状部分42の後端に連設され貫通孔状のバックル用孔部31が形成された略板状の板状部分43とによって構成されている。そして、棒状部分42は、平面視で先端に向かって幅寸法が徐々に減少する幅減少部44を先端側に有し、この幅減少部44には、外側方に向かって凸の湾曲状の湾曲面45が形成されている(
図4参照)。
【0027】
なお、
図3に図示した例では、被覆部材34は、材質の異なる2枚のシート材36,37からなるものであるが、例えば両シート材36,37とも座部カバー体16と同じ素材で構成してもよく、また、例えば座部カバー体16と同じ素材からなる1枚のシート材で被覆部材34を構成してもよい。
【0028】
また、背凭れ部シートカバー(背部シートカバー)12は、
図1に示すように、シート1の背凭れ部(ヘッドレストを含む)6を覆う背凭れ部カバー体51と、この背凭れ部カバー体51をシート1の背凭れ部6に脱着可能に取り付けるための複数本の取付紐(取付手段)52とを備えている。
【0029】
なお、図示しないが、取付紐52の先端側には留め具が取り付けられている。また、背凭れ部カバー体51は、図示したものには限定されず、例えばヘッドレストを覆うヘッドレストカバー部を別体とした構成等でもよい。
【0030】
次に、上記シートカバー2の作用等を説明する。
【0031】
図4は、シートカバー2をシート(車両シート)1に取り付けた状態の図であり、この
図4から分かるように、座部シートカバー11がシート1の座部5に後付けにより取り付けられると、当該座部5は、座部シートカバー11の座部カバー体16によって覆い隠されるが、このとき、当該座部5とコンソールボックス8との間の間隙10は、座部シートカバー11の間隙閉鎖体17によって埋められて閉鎖される。
【0032】
すなわち、間隙閉鎖体17は、間隙10に対して上方から押し込まれるように挿入(嵌入)されることにより、弾性部材33が圧縮弾性変形した状態となってその間隙10に装着され、その結果、コンソールボックス8の側面8aに密着(圧着)した間隙閉鎖体17によって間隙10が閉鎖(閉塞)される。
【0033】
また、この間隙閉鎖体17の間隙10への挿入装着の際に、この間隙閉鎖体17のバックル用孔部31には、シートベルト用のバックル7が下方から挿通され、このバックル7によって間隙閉鎖体17が保持される。
【0034】
そして、このようなシートカバー2によれば、例えばシート1の前後位置の調整(上下位置も調整可能なシートもある)や自動車の走行時の振動等によって、間隙閉鎖体17が座部カバー体16の側面部24から取れて離れることはないから、間隙10に挿入装着された間隙閉鎖体17がその間隙10から抜け出ることはなく、その装着状態を確実に維持でき、よって、間隙閉鎖体17で間隙10への小物(例えば硬貨、筆記具、携帯電話等)の落下を適切に防止できる。
【0035】
また、間隙閉鎖体17を有した座部シートカバー11をシート1の座部5に取り付けるだけで、間隙10への小物の落下を防止できるため、従来からある別部品(自動車用装備品)を後から別途購入して装着する必要がなく、極めて便利である。
【0036】
さらに、間隙閉鎖体17は、車両前後方向に沿った方向に長手方向を有する長手状に形成され、その全長にわたって座部カバー体16の側面部24に固定されているため、間隙閉鎖体17が座部カバー体16の側面部24から分離することがなく、間隙閉鎖体17が間隙10から抜け出るのを確実に防止できる。
【0037】
また、間隙閉鎖体17は、バックル用孔部31が形成されていない部分の内側に位置する弾性部材33を有し、この弾性部材33は、バックル用孔部31が形成された板状部分43には延在していないため、弾性部材33の長さをその分短くでき、コスト低減を図ることができる。
【0038】
さらに、間隙閉鎖体17のうち、少なくとも上面側(例えば上側の第1シート材36)は、座部カバー体16と同じ素材で構成されていることから、間隙閉鎖体17が間隙10に装着された状態時には、座部シートカバー11で覆われた座部5の一部分(側方への突出部分)で間隙10が閉鎖されているように見えるため、見て目も良好であり、意匠性に優れている。
【0039】
なお、上記実施の形態では、間隙閉鎖体17は、被覆部材34が表側に位置するように座部カバー体16の側面部24の外面側に設けられた構成について説明したが、これには限定されず、
図5に示すように、例えば布製の1枚のシート材55からなる被覆部材34が裏側に位置するように座部カバー体16の側面部24の内面側に設けられた構成でもよい。
【0040】
この
図5に図示した構成では、シート材55は、座部カバー体16の側面部24の内面に対して縫い糸56,57で縫い付けられて固定されている。そして、そのシート材55からなる被覆部材34の外面と座部カバー体16の側面部24の内面との間には弾性部材33と略同じ大きさの細長い密閉状の収納空間41が形成され、この収納空間41に弾性部材33が収納されている。
【0041】
また、上記実施の形態では、間隙閉鎖体17は、弾性変形可能な弾性部材33を有する構成について説明したが、これには限定されず、
図6に示すように、例えば座部カバー体16の側面部24に縫い付けにより固定された皮革製(例えば座部カバー体16と同じ素材である合成皮革等)の1枚のシート材60のみで突出状の間隙閉鎖体17を構成してもよい。なお、この図示した座部カバー体16の側面部24の後端側には、シートベルト用のバックルを通すための切欠部59が形成されている。
【0042】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、シートカバー2は、互いに分離した座部シートカバー11と背凭れ部シートカバー12とからなる分離型には限定されず、両者が一体化された一体型でもよく、また、座部シートカバー及び背凭れ部シートカバーのいずれか一方のみからなる構成でもよい。
【0043】
また、間隙閉鎖体は、座部カバー体に設けられた構成には限定されず、例えば間隙閉鎖体が背凭れ部カバー体の下端側に設けられた構成等でもよい。
【0044】
さらに、間隙閉鎖体は、座部カバー体や背凭れ部カバー体等のカバー体に一体的に固設された構成には限定されず、例えば間隙閉鎖体がファスナー等によってカバー体に脱着可能に設けられた構成等でもよい。
【0045】
また、間隙閉鎖体は、例えば携帯電話等の小物を収納可能な小物収納部を有するもの等でもよい。
【0046】
なお、本発明のいくつかの実施の形態およびその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施の形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 シート
2 シートカバー
5 座部
7 バックル
8 対向部であるコンソールボックス
10 間隙
16 カバー体である座部カバー体
17 間隙閉鎖体
24 側面部
31 バックル用孔部
33 弾性部材
34 被覆部材
41 収納空間
42 棒状部分
43 板状部分
44 幅減少部