特許第6867726号(P6867726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6867726皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6867726
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20210426BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20210426BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210426BHJP
   A23L 33/28 20160101ALI20210426BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20210426BHJP
【FI】
   A61K35/28
   A61P17/00
   A61P17/02
   A61K8/98
   A61Q19/00
   A23L33/28
   !C12N5/0775
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-167939(P2020-167939)
(22)【出願日】2020年10月2日
【審査請求日】2020年10月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501048930
【氏名又は名称】株式会社 バイオミメティクスシンパシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓介
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−062486(JP,A)
【文献】 特開2012−157263(JP,A)
【文献】 特開2016−210727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/28
A23L 33/28
A61K 8/98
A61P 17/00
A61P 17/02
A61Q 19/00
C12N 5/0775
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物であって、前記組成物は、ヒアルロン酸を添加した無血清培地で間葉系幹細胞を培養することによって得られる幹細胞、培養上清、及び/又は細胞分泌物を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物であって、前記ヒアルロン酸の重量平均分子量が、5,000以下である、組成物。
【請求項3】
請求項1または2の組成物であって、前記ヒアルロン酸の濃度が、20μg/ml以上、1000μg/ml以下である、組成物。
【請求項4】
化粧品用組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
健康食品用組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
創傷治癒用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物は、間葉系幹細胞をヒアルロン酸を添加した培地で培養することによって得られる培養上清及び/又はこれらの加工物を含む、組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で培養した間葉系幹細胞を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は成体内に存在する幹細胞(ステムセル)の一つであり、そして、中胚葉由来の組織(例えば、骨、軟骨、血管、心筋細胞等)に分化できる能力をもつ。間葉系幹細胞の例として、骨髄由来の間葉系幹細胞、脂肪組織由来の間葉系幹細胞等が挙げられる。
【0003】
近年、間葉系幹細胞は、美容への効果が期待されており、特に、当該細胞の培養上清は、スキンケアに利用されている。例えば、非特許文献1では、間葉系幹細胞の培養上清、及びコラーゲン等を配合した化粧品が開示されている。培養上清とは、細胞を培地で培養した際に得られる、培地自体と細胞から分泌された種々の分泌物を含む組成物である。
【0004】
特許文献1では、脂肪由来幹細胞の遊走付与剤を皮膚に塗布することにより、脂肪由来幹細胞を真皮層に遊走させ、皮膚状態を向上させることが開示されている。特許文献2では、ヒアルロン酸を含む幹細胞用培地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/194760号
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0002678号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】https://beauty.hotpepper.jp/kr/slnH000455287/blog/bidA031357383.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように間葉系幹細胞は、化粧品への応用が期待されているが、適用対象の組織(例えば、皮膚)への効果を更に向上させることが望まれている。そこで、本開示は、皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者が鋭意検討したところ、培養上清を得る際に、培地にヒアルロン酸を添加してから間葉系幹細胞を培養することで、培養上清の性質に大きな変化が起こることを見出した。具体的には、当該培養上清で皮膚線維芽細胞を培養したところ、皮膚線維芽細胞の遺伝子の発現に大きな影響を及ぼすことが見出された。このメカニズムは明らかではないが、ヒアルロン酸が創傷治療等の皮膚状態の改善を促進することが知られており、幹細胞をヒアルロン酸含有培地で培養することで幹細胞が刺激され、皮膚状態を整えるための物質を生成する、などといった可能性が考えられる。
【0009】
本開示の発明は、上記知見に基づいて完成され、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物であって、前記組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で間葉系幹細胞を培養することによって得られる幹細胞、培養上清、及び/又は細胞分泌物を含む、組成物。
(発明2)
発明1の組成物であって、前記ヒアルロン酸の重量平均分子量が、5,000以下である、組成物。
(発明3)
発明1または2の組成物であって、前記ヒアルロン酸の濃度が、20μg/ml以上、1000μg/ml以下である、組成物。
(発明4)
化粧品用組成物である、発明1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
(発明5)
健康食品用組成物である、発明1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
(発明6)
アトピー治療用組成物である、発明1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
(発明7)
以下のいずれか1種以上の遺伝子に関連する皮膚疾患治療用である、発明1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
(a)Col3A1、
(b)Meprin−α、
(c)Elastin、
(d)p16INK4a、及び、
(e)HAS1
(発明8)
創傷治癒用である、発明1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
(発明9)
発毛及び/又は育毛促進剤である、発明1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
(発明10)
発明1〜9のいずれか1つに記載の組成物であって、前記組成物は、間葉系幹細胞をヒアルロン酸を添加した培地で培養することによって得られる培養上清及び/又はこれらの加工物を含む、組成物。
(発明11)
発明1〜10のいずれか1つに記載の組成物であって、前記組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で培養した間葉系幹細胞を含む、組成物。
【発明の効果】
【0010】
一側面において、本開示の組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で間葉系幹細胞を培養することによって得られる。これによって、皮膚の細胞(特に、皮膚線維芽細胞、表皮角化細胞等)の遺伝子の発現に影響を及ぼす成分が間葉系幹細胞から分泌される。そして、当該成分によって、皮膚の健康状態を増進及び/又は改善に関与する遺伝子の発現量を増減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】定量的PCRによる各遺伝子の発現量を相対化したグラフである。
図2】定量的PCRによる各遺伝子の発現量を相対化したグラフである。
図3】定量的PCRによる各遺伝子の発現量を相対化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0013】
1.皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物
一実施形態において、本開示は、皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物に関する。こうした組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で間葉系幹細胞を培養することによって得られる。より具体的には、前記組成物は、間葉系幹細胞を培養することによって得られる培養上清及び/又はこれらの加工物を含むことができる。別の具体例としては、前記組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で培養した間葉系幹細胞及び/又は当該細胞の分泌物を含む。或いは、前記組成物は、これら幹細胞、培養上清、及び/又は細胞分泌物の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0014】
1−1.定義
本明細書で記載される用語「皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するため」は、皮膚に関する特定の疾患を改善するという目的を包含する。更には、当該用語は、治療目的に限定されない。例えば、当該用語は、特定の疾患を有さないとしても、皮膚の見た目の向上(つや、はり等)させる目的を包含する。
【0015】
また、本明細書で記載される「増進及び/又は改善」という用語は、外観上の増進及び/又は改善だけでなく、現状を維持することも含まれる。例えば、本明細書で記載される「増進及び/又は改善」という用語は、本来なら加齢により衰える特徴を維持することも含む(例えば、しわ、シミの増加などを防止すること)。
【0016】
更に、本明細書で記載される「ヒアルロン酸を添加した培地で間葉系幹細胞を培養することによって得られる」とは、直接的に得られる物に限定されず、間接的に得られる物も含む。前者の例としては、間葉系幹細胞を培養した後の培養上清、及び、間葉系幹細胞が挙げられる。後者の例としては、培養上清を加工した物、例えば、他の成分を添加した物、及び、更なる処理を行ったものが挙げられる。更なる処理の例としては、例えば、培養上清を、フィルター処理した物、水分除去して濃縮した物、当該上清から特定の成分(例えば、細胞分泌物)を抽出した物などが挙げられる。
【0017】
1−2.成分
一実施形態において、本開示の組成物は、以下(1)〜(2)のうち少なくともいずれか一方を含むことができる。
(1)間葉系幹細胞又はこれらの分泌物
(2)培養上清又はこれらの加工物
製品化する際の取扱いの簡便さ等を考慮すると、(2)の方が好ましい。
【0018】
また、上記成分に加えて、他の成分を必要に応じて添加してもよい。例えば、他の成分として、賦形剤、抗生物質、pHバッファ等が挙げられる。更には、他の成分として、皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するため更なる成分(例えば、抗酸化剤、香料、美白成分、保湿成分、美白成分等)が挙げられる。
【0019】
1−3.製造方法
一実施形態において、本開示は、皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物の製造方法に関する。
前記製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。
・培地にヒアルロン酸を添加する。
・添加後の培地で、間葉系幹細胞を培養する。
・培養後の培養上清及び/又は細胞を回収する。
【0020】
1−3−1.間葉系幹細胞(脂肪由来 骨髄由来)
間葉系幹細胞は、特定の組織由来の物に限定されず、任意の組織に由来する物であってもよい。例えば、骨髄由来、臍帯血由来、胎盤由来、脂肪組織由来等が挙げられる。典型的には、骨髄由来、及び/又は脂肪組織由来の間葉系幹細胞を使用することができる。
【0021】
1−3−2.ヒアルロン酸
培地に添加するヒアルロン酸は、特に限定されないが、低分子量のヒアルロン酸が好ましい。より具体的には、重量平均分子量が5,000以下であり、好ましくは2,000以下であり、更に好ましくは、1,500以下であり、最も好ましくは、1,000以下である。また好ましい使用濃度は20〜1000μg/mlである。ヒアルロン酸の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーと光散乱検出器を組み合わせた手法(SEC-LS)で算出されるものをいう。
【0022】
1−3−3.培地
培地は、特に限定されず、当分野で公知の培地(例えば、DMEM、F12、RPMI等)を使用することができる。培地の例としては、インビトロジェン製の間葉系幹細胞基礎培地、三光純薬製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、バイオミメティクスシンパシーズ社のsf−DOT(登録商標)等が挙げられる。
【0023】
1−3−4.培養条件
培養条件は、特に限定されず、当分野で公知の条件であればよい。例えば、温度は、35℃〜40℃、典型的には37℃であってもよい。適宜、CO2が5%になるようインキュベータを制御してもよい。培養期間は、特に限定されないが、少なくとも24h、好ましくは48h以上培養することが好ましい。上限は特に限定されないが、168h以下である。以下の説明は、発明の範囲を限定することを意図するものではないが、ヒアルロン酸の刺激によって、間葉系幹細胞が変化し、何かしらの有用な成分を分泌すると考えられる。従って、ヒアルロン酸の刺激後、間葉系幹細胞が変化するまで、一定時間を要するという理由から、ある程度の培養期間は必要となる。
【0024】
好ましい実施形態において、間葉系幹細胞を最初にディッシュ上に増殖させ、その後で、ヒアルロン酸を添加した培地で培養を行う。例えば、セミコンフルエント(例えば、顕微鏡視野にて80%以上細胞が占める状態)からコンフルエントに到達させ、その後で、ヒアルロン酸を添加した培地で培養を行う。この場合、ヒアルロン酸は、細胞とディッシュとの間に存在する足場としての役割を果たすというよりは、間葉系幹細胞に生理的な刺激を与える役割を果たす。こうした観点から、細胞の足場としてヒアルロン酸を使用する特許文献2と比べると、好ましい実施形態にかかる本発明は、技術思想において異なる。
【0025】
更に好ましい実施形態において、培地に添加するヒアルロン酸は、低分子量のヒアルロン酸である。一般的に、細胞の足場となる細胞外マトリックスは、コラーゲン、ファイブロネクチン等、ポリマー化した高分子であることが多い。ヒアルロン酸についても、例外ではなく、足場として使用する場合には高分子のヒアルロン酸を使用することが一般的である。こうした観点から、細胞の足場としてヒアルロン酸を使用する特許文献2と比べると、更に好ましい実施形態にかかる本発明は、技術思想において異なる。
【0026】
また、低分子のヒアルロン酸は、細胞死の抑制機能が高く、そして、シグナル伝達のトリガーとしての役割を果たす傾向が、高分子のヒアルロン酸と比べると強いと考えられる。そして、有益なシグナル伝達のトリガーとなることで、有益な物質を細胞外に分泌していると考えられる。好ましい実施形態に係る本発明は、細胞外に分泌される有益な物質を利用するものであり、細胞内成分を利用しようとする特許文献2とは、技術思想が異なる。
【0027】
更に好ましい実施形態において、特許文献2で使用している細胞の破砕抽出物(extract)ではなく、細胞から分泌される因子を多く含んだ培養上清(培養液とも言う)を用いる。細胞の破砕抽出物を用いてしまうと、例えば、その含有物を皮膚に塗布した場合、普段細胞外に放出されることのない多くのタンパク質・核酸などが皮膚に暴露されてしまうことが予想される。このタンパク質や核酸に対する抗体が作られてしまうと、自己免疫疾患に繋がる恐れがある。具体的には、抗DNA二重鎖抗体や抗ヒストン抗体は全身性エリテマトーデス発症患者で多く産生され、抗セントロメア抗体は全身性強皮症の発症患者で多く産生されていることが既に知られており、こうした抗体が全身の細胞に攻撃することで自己免疫疾患が発症してしまうと考えられている。従って、細胞の破砕抽出物を用いてしまうと、皮膚に裂傷などがあった場合に細胞内成分が血管内まで浸透し、その成分に対する抗体が産生されてしまう危険性を内包するため、培養上清を使用することが望ましく、更に好ましい実施形態にかかる本発明は、技術思想において特許文献2とは異なる。
【0028】
1−3−5.その他の処理(フィルターなど)
培養後は、培養上清及び/又は細胞を回収し、更なる処理に供してもよい。例えば、培養上清の場合には、フィルターで処理したり、濃縮処理したりしてもよい。細胞の場合には、凍結保存のためにDMSO添加の培地に移してもよい。
【0029】
1−3−6.剤型への加工
また、一実施形態において、本開示の組成物は、特定の用途の製品用に特定の形状に加工されてもよい。例えば、組成物は、固体であってもよいし、液体であってもよいし、半固体(ゲル状)であってもよい。固体の場合には、粉末状に加工してもよいし、タブレット状に加工してもよい。組成物の成分が細胞である場合には、保存液などに細胞を懸濁した状態であってもよい。
【0030】
2.用途
一実施形態において、本開示の組成物は、様々な用途に利用することができる。例えば、本開示の組成物は、化粧品、健康食品、治療薬等に応用することができる。上述したように、ヒアルロン酸の刺激によって、間葉系幹細胞が変化し、何かしらの有用な成分を分泌すると考えられる。従って、培養上清及び培養後の細胞のうち少なくともいずれか一方が組成物に含まれていれば、有用な成分が含まれていることになる。また、培養後の細胞の場合には、細胞外に有用な成分を分泌することができる。そして、当該有用な成分が、肌等の組織(例えば、皮膚線維芽細胞、表皮角化細胞等)に良好な影響を及ぼすことができる。
【0031】
2−1.化粧品用組成物
一実施形態において、本開示の組成物は、化粧品に応用することができ、特に、肌の化粧品に好適である。投与形態は、特に限定されないが、肌の化粧品用途の場合には、肌に塗るのに適した形態が好ましい。例えば、本開示の組成物は、ペースト状、液体状、又はゲル状が好ましい。
【0032】
従って、一実施形態において、本開示の組成物は、投与形態に応じて、適切な追加成分を配合してもよい。例えば、本開示の組成物は、肌の化粧品に一般的に含まれる成分を含んでもよい。当該成分の例として、保湿成分、界面活性剤、エモリエント成分、バリア改善成分、抗老化成分、美白成分、細胞賦活成分、抗炎症(刺激緩和,抗アレルギー)成分、抗酸化成分、紫外線防御成分、抗菌成分、血行促進成分、収れん成分、角質剥離成分、安定化成分(防腐,キレート,pH調整等)、温冷感成分、香料、着色剤、溶剤、帯電防止剤、表面処理剤、スクラブ剤、植物油脂、植物エキスなどが挙げられる。
【0033】
2−2.健康食品用組成物(投与形態、他の成分)
一実施形態において、本開示の組成物は、健康食品に応用することができ、特に、肌への有用な効果を有する健康食品用組成物であってもよい。投与形態は、特に限定されないが、消化器官での消化及び吸収を考慮して、適切なカプセル・腸溶カプセルなどに内包させてもよい。健康食品用組成物の場合には、投与形態は経口摂取となる。従って、例えば、本開示の組成物は、固体状、液体状、又はゲル状が好ましい。より具体的には、組成物は咀嚼及び/又は嚥下によって摂取可能な形態であればよい。従って、組成物は、サプリメントのタブレット、ビスケット等の固形物のみならず、ゼリー、飲料などの液体状又はゲル状であってもよい。
【0034】
従って、一実施形態において、本開示の組成物は、投与形態に応じて、適切な追加成分を配合してもよい。例えば、本開示の組成物は、健康食品に一般的に含まれる成分を含んでもよい。当該成分の例として、保存料、防腐剤、香料、pH調整剤、酸化防止剤、防カビ剤、甘味料、着色料などが挙げられる。
【0035】
2−3.アトピー治療用組成物
一実施形態において、本開示の組成物は、アトピー治療に応用することができ、特に、肌への有用な効果を有するアトピー治療用組成物であってもよい。投与形態は、特に限定されないが、例えば、塗布、皮下注射、経口投与等が挙げられる。従って、例えば、本開示の組成物は、固体状、液体状、ペースト状、又はゲル状が好ましい。
【0036】
従って、一実施形態において、本開示の組成物は、投与形態に応じて、適切な追加成分を配合してもよい。当該成分の例として、賦形剤、キャリア、pHバッファ、トランスフェクション促進剤、他のアトピー治療薬等が挙げられる。
【0037】
2−4.その他の用途の組成物
一実施形態において、本開示の組成物は、他の用途(例、創傷治癒用、皮膚疾患治療用、発毛及び/又は育毛促進剤用等)に応用することができる。特に、本開示の組成物は、以下から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現の増減に関連する疾患に有用となる可能性がある。
(a)Col3A1、
(b)Meprin−α、
(c)Elastin、
(d)p16INK4a、及び、
(e)HAS1
【0038】
(a)Col3A1は、III型コラーゲンのアルファ1とも呼ばれ、コラーゲン繊維の三重らせんの構成要素の一つであり、そして、組織学的には、皮膚を構成するタンパク質である。当該タンパク質の減少は、肌の老化兆候へ寄与することが知られている。また、これ以外に、Col3A1は、創傷治癒(手術創の治癒含む)にも関与することができる。
【0039】
(b)Meprin−αは、Znプロテアーゼのサブユニットである。そして、III型コラーゲンのプロペプチドを切断する機能を有する。加齢とともにIII型コラーゲン/I型コラーゲンの比率が減少することが知られており、そして、Meprinも加齢とともに減少することが知られている。更には、加齢によるmeprinの減少を防ぐことでIII型コラーゲン/I型コラーゲンの比率の減少を抑制するという知見が報告されている(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/47/4/47_278/_article/-char/ja/)。
【0040】
(c)Elastinは、コラーゲンの繊維を支える役割を持つ繊維である。そして、Elastinは、加齢とともに共に減少し、当該現象が皺の原因となる。また、化粧品、及び/又はサプリメントの成分としても配合されることが知られている。また、これ以外に、Elastinは、創傷治癒(手術創の治癒含む)にも関与することができる。さらに、発毛及び/又は育毛剤にはエラスチン成分が配合されていることがあり、エラスチンは育毛に関与することができる。
【0041】
(d)p16INK4aは、細胞周期を阻害する機能を有することが知られており、更には、このタンパク質の発現量が増加すると老化が進行することが知られている。
【0042】
(e)HAS1は、ヒアルロン酸合成酵素1(Hyaluronan Synthase 1)と呼ばれ、ヒアルロン酸を合成する機能を有する酵素の一つである。アトピー患者の皮膚においてHAS1の発現量及びヒアルロン酸が減少していることが知られている。このヒアルロン酸は化粧品、及び/又はサプリメントの成分としても配合されることが知られている。また、これ以外に、HAS1は、合成したヒアルロン酸を介して創傷治癒(手術創の治癒含む)にも関与することができる。さらに、HAS1は、合成したヒアルロン酸を介して発毛及び/又は育毛にも関与することができる。
【実施例】
【0043】
3.実施例
3−1.実施例1(間葉系幹細胞の初代培養)
はじめに、脂肪組織由来間葉系幹細胞を準備した。具体的には、脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた再生医療を受ける予定の患者より、皮下脂肪組織を分取した。当該皮下脂肪組織は、投与用細胞の調製に必要な原料となる。当該皮下脂肪組織を分取した後の剰余を、初代培養に供した。なお、予め、患者から研究利用に関する同意を取得しておいた。
【0044】
皮下脂肪組織を遠心分離(400×gで5分間)に供し、3層に分離した。具体的には、上層から順に脂質画分、脂肪組織画分、及び水性画分の3層に分離した。中層の脂肪組織画分を残して、上層と下層を破棄した。残した脂肪組織画分に対して、組織重量当たり4倍量の0.15%コラゲナーゼ酵素溶液を添加した。37℃で1時間浸透させ、酵素処理を行った。脂肪組織が酵素処理によって分散された後、当該脂肪組織を、遠心分離(400×gで5分間)に供した。間葉系幹細胞を含む間質血管細胞画分として、沈殿画分を30mLのPBS(−)溶液で懸濁した。その後、セルストレーナー(メッシュサイズ70μm径)に懸濁液を通液し、セルストレーナーに捕捉された組織残渣等は破棄した。そして、通液画分を再度遠心分離(400×gで5分間)に供し、沈殿画分を6mLの無血清培養液sf−DOT(バイオミメティクスシンパシーズ社)で懸濁した。細胞懸濁液全量を、T25フラスコ(CellBIND;Corning,3289)に播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して初代培養を開始した。
【0045】
3−2.実施例2(継代培養、P0⇒P1⇒P2)
3日に1回の頻度で培地全交換を実施した。上澄みは破棄して、フラスコ底面上で増殖する細胞を選択的に増殖させた。セミコンフルエントまで増殖したT−25フラスコ内の細胞に対して、2mLの酵素溶液(TrypLE Express;Thermo Fisher Scientific,12604021)を添加し、細胞をフラスコの底面から剥離した(37℃、5分間静置)。細胞をPBS(−)で希釈し、遠心分離(400×gで5分間)に供した。沈殿した細胞を培養液sf−DOTで懸濁し、一部を分取してトリパンブルー染色法による細胞数計測を行った。新たなT75フラスコ(CellBIND;Corning,3290)にsf−DOTで懸濁した細胞を播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して継代培養を行った(P0→P1)。その後も同様の手順で継代培養を行い、必要な細胞数を得た(P1→P2)。
【0046】
3−3.実施例3(培養上清の調製)
まず脂肪組織由来間葉系幹細胞を上述の通りsf−DOTで培養した。同培地で脂肪組織由来間葉系幹細胞をT75フラスコ1枚当たり3000cells/cm2で播種した。セミコンフルエントに到達した3日目に、PBS(−)で一回洗浄した。その後、培養上清用に、以下の2つの培地を用意した。
(i) 基本培地(DMEM/F12;SIGMA,D8900)、
(ii)基本培地(DMEM/F12;SIGMA,D8900)+低分子量ヒアルロン酸HA4(100μg/ml 添加)
【0047】
これら(i)及び(ii)の培地で更に3日間培養し、各々の上清を回収した。回収した培養上清は0.2μmのPESシリンジフィルター(25mm GD/Xシリンジフィルター(PES 0.2μm滅菌済);6896−2502;GEヘルスケア・ジャパン)でろ過した。ろ過後の培養上清は、解析に使用するまで−28℃で冷凍保管した。
【0048】
上記で得られた培養上清を使用して、以下の3種類の培養上清を調製した。
CM1: 上記(i)に由来する培養上清
H−CM:上記(ii)に由来する培養上清
CM2: 上記(i)に由来する培養上清に、低分子量ヒアルロン酸HA4(100μg/ml)を添加した物
【0049】
3−4.実施例4(培養上清を用いた皮膚線維芽細胞の処理)
正常ヒト皮膚線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibroblast(NHDF);Takara,C−12302)を準備した。当該細胞は、Fibroblast medium(Sciencell,2301)で継代及び維持した。NHDFを12 well plate(Corning,3336)の各ウェルに3000cells/cm2で播種し、一晩培養した。
【0050】
3−5.実施例5(培養上清を用いた表皮角化細胞の処理)
正常ヒト表皮角化細胞(Normal Human Epidermal Keratinocyte(NHEK);Takara,C−12006)を準備した。当該細胞は、Keratinocyte−SFM(ThermoFisher Scientific,17005042)で継代及び維持した。NHEKを12 well plate(Corning,3336)の各ウェルに10000cells/cm2で播種し、一晩培養した。
【0051】
翌日(播種後16〜24時間)、各種上清(CM1、CM2、H−CM)に培地交換し、さらに3日間培養した(約72時間)。培養後、ReliaPrep RNA Miniprep system(Promega,Z6012)を用いてNHDF及びNHEKからTotal RNAを抽出した。抽出後、500ngのRNAを用いてcDNA合成(PrimeScript RT Master Mix;Takara,RR036A)を行い、更に、定量的PCR(Thunderbird Sybr qPCR Mix;TOYOBO,QPS−201X5)を行った。
【0052】
cDNA合成のためのミクスチャは以下の組成に従って調製した。
5xPrimeScript RT Master Mix 2μl(最終濃度 1 x)
Total RNA 500ng
RNase free H2O 合計10μlに調整
【0053】
上記ミクスチャを、Applied Biosystems社のVeriti 96 well Thermal Cyclerを用いて、以下の条件で処理した。
37℃ 15分

85℃ 5秒

4℃ ∞
【0054】
合成したcDNA(10μl)は90μlのTE(10mM Tris−HCl pH8.0+1mM EDTA pH8.0)を用いて10倍に希釈した。当該希釈物を、定量PCRに供した。
【0055】
3−6.実施例6(皮膚線維芽細胞及び表皮角化細胞の遺伝子の発現の解析)
より具体的には、当該希釈物を、以下の条件で混合した。
2×THUNDERBIRD Probe qPCR Mix 10μl
5mM Forward Primer 0.4μl
5mM Reverse Primer 0.4μl
2O 8.2μl
cDNA(10倍希釈) 1μl
【0056】
上記混合物を、Bio−Rad社のCFX−Connectを用いて、cDNAを増幅させた。PCRサイクルの条件は以下の通りであった。
1.95℃ 1分 (初期変性)
2.95℃ 15秒 (変性)
3.60℃ 30秒 (伸長)
(2〜3のステップを40回繰り返し、ステップ3が終わるたびに蛍光シグナルを検出)
4.65℃〜95℃まで0.5℃刻みで温度を上昇させ、5秒ずつ温度を保持してから蛍光シグナルを検出
【0057】
上記サイクルにて、PCR産物の検出を行い、併せて、Melting curveによるPCR産物の単一性の確認を行った。
【0058】
内部標準(すべての細胞・条件において同じ発現をしているハウスキーピング遺伝子)として、GAPDH(lycerldehyde 3−hosphate ydrogenase)を用いた。
各遺伝子を検出するためのプライマー配列は以下の通りであった。
GAPDH Forward primer: 5’ - agccacatcgctcagacac - 3’
GAPDH Reverse primer: 5’ - gcctaatacgaccaaatcc - 3’
Col3A1 Forward primer: 5’ - ctggaccccagggtcttc - 3’
Col3A1 Reverse primer: 5’ - gaccatctgatccagggtttc - 3’
Meprin-α Forward primer: 5’ - gcaccacaactcacactctttt - 3’
Meprin-α Reverse primer: 5’ - ttccacagatgtttgccttc - 3’
Elastin Forward primer: 5’ - ggaggtgttcccggagtc - 3’
Elastin Reverse primer: 5’ - ggtccccactccgtacttg - 3’
p16INK4a Forward primer: 5’ - gtggacctggctgaggag - 3’
p16INK4a Reverse primer: 5’ - ctttcaatcggggatgtctg - 3’
HAS1 Forward Primer: 5’ - acgtgcggatccttaaccc - 3’
HAS1 Reverse Primer: 3’ - aggcctagaggaccgctgat - 3’
【0059】
全てのプライマーは株式会社ファスマックから購入した(逆相カラム精製グレード)。
各遺伝子の発現量は、定量PCRで得られた各遺伝子の発現量を、さらにGAPDHの発現量で割って標準化したものを示している。さらに、上清を処理していないコントロール条件での発現量を「1」になるように標準化している。以上のプライマーを用いて増幅したPCR産物は全て単一のものであること(つまり、同一のプライマーで、複数種類の配列が増幅されていないこと)をMelting curveによって確認した。
【0060】
結果を図1及び図2に示す。H−CMで処理した皮膚線維芽細胞においては、検証した遺伝子の発現量は、良好な方向に変化していることが確認された。即ち、増加することが望ましいと考えられる遺伝子(Col3A1、Meprin−α、Elastin)の発現量は増加した。一方で、減少することが望ましいと考えられる遺伝子(p16INK4a)の発現量は減少した。また、H−CMで処理した表皮角化細胞においても、検証した遺伝子の発現量(具体的には、HAS1の発現量)は、良好な方向に変化していることが確認された。
【0061】
特筆すべき点として、こうしたH−CM処理による遺伝子の発現量の変化は、CM2処理による遺伝子の発現量の変化よりも顕著であった。上述したように、CM2は、脂肪組織由来間葉系幹細胞を培地で処理した後からHA4を培地に添加した条件である。一方で、H−CMは、脂肪組織由来間葉系幹細胞を培地で処理する前にHA4を培地に添加した条件である。
【0062】
従って、脂肪組織由来間葉系幹細胞がHA4の刺激を受けて、何かしらの有用な物質を、細胞外に分泌したものと考えられる。そして、その有用な物質の存在により、皮膚線維芽細胞及び表皮角化細胞の遺伝子の発現量を、良好に変化させたものと考えられる。
【0063】
皮膚線維芽細胞及び表皮角化細胞は、皮膚組織に存在する細胞である。従って、こうした遺伝子の発現量の変化は、皮膚の健康状態に良好な影響を及ぼすと考えられる。
【0064】
また、H−CMとCM2の条件の違い及びもたらす結果の違いを考えると、H−CMで処理した細胞を、例えば、皮膚線維芽細胞及び表皮角化細胞のいずれか1つと共培養した場合であっても、同様の効果が得られることが推認される。従って、H−CMの条件で処理した場合には、培養上清だけでなく、培養後の細胞自体も、皮膚の健康状態にとって良好な影響を及ぼすことが推認される。こうした点を検証すべく、次に示すように、実施例7の実験を行った。
【0065】
3−7.実施例7(皮膚線維芽細胞と間葉系幹細胞の共培養)
実施例1〜2と同じ手順にて、脂肪組織由来間葉系幹細胞を準備した。脂肪組織由来間葉系幹細胞をT75フラスコ1枚当たり3000cells/cm2で播種した。セミコンフルエントに到達した3日目に、PBS(−)で一回洗浄した。その後、培養上清用に、以下の2つの培地を用意した。
(i) 基本培地(DMEM/F12;SIGMA,D8900)、
(ii)基本培地(DMEM/F12;SIGMA,D8900)+低分子量ヒアルロン酸HA4(100μg/ml 添加)
【0066】
これら(i)及び(ii)の培地で更に3日間培養し、各々の細胞を回収した(それぞれを、MSC、及びMSC−H)。
【0067】
上記と並行して、正常ヒト皮膚線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibroblast(NHDF);Takara,C−12302)を準備した。当該細胞は、Fibroblast medium(Sciencell,2301)で継代及び維持した。NHDFを6 well plate(CellBIND;Corning,3335)の各ウェルに100,000個の細胞を播種した。そこに、トランスウェル(6 well plate用24mmインサート,0.4μm poreサイズ;Corning,3412)を載せた。トランスウェル内にもFibroblast medium(Sciencell,2301)を適量注ぎ、さらにそこに何も細胞を播種しないコントロール(NHDFのみ)、MSCを播種(NHDF−MSC)、及びMSC−Hを播種した(NHDF−MSC−H)ものを用意した。播種したMSC及びMSC−Hの数はともに100,000個である。尚、用いたトランスウェルはあらかじめPLL(Poly−L−Lysine;Cultrex,3438−100−01)でコーティングすることで、間葉系幹細胞がトランスウェルに張り付くことを可能にしている。コーティングは一晩かけて37℃で行った。そして余分なPLLは滅菌水で洗浄・除去した。
【0068】
脂肪組織由来間葉系幹細胞と正常ヒト皮膚線維芽細胞を3日間共培養した。正常ヒト皮膚線維芽細胞を下側に配置し、脂肪組織由来間葉系幹細胞を上側に配置した。そして、トランスウェルには0.4μmの、細胞より遥かに小さな穴が多数存在しているため、トランスウェル上部の脂肪組織由来間葉系幹細胞が下部に移動し、直接正常ヒト皮膚線維芽細胞と接触して効果を発揮するというより、0.4μmの小さな穴を介して、脂肪組織由来間葉系幹細胞の分泌物が、正常ヒト皮膚線維芽細胞に作用できるようにした。
【0069】
その後、正常ヒト皮膚線維芽細胞のRNAを回収し、上記実施例6と同様の手法で、発現量を確認した。結果を、図3に示す。MSCとの共培養、及びMSC−Hとの共培養の結果を比較すると、MSC−Hとの共培養の結果の方が、遺伝子の発現に関して良好な方向に変化していることが確認された。即ち、正常ヒト皮膚線維芽細胞において増加することが望ましいと考えられる遺伝子(Col3A1、Elastin)の発現量は増加した。一方で、減少することが望ましいと考えられる遺伝子(p16INK4a)の発現量は減少した。こうした結果から、培養上清だけでなく、幹細胞自体も、皮膚の健康状態にとって良好な影響を及ぼすことが示された。
【0070】
以上、具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【要約】
【課題】皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物を提供すること。
【解決手段】皮膚の健康状態を増進及び/又は改善するための組成物であって、前記組成物は、ヒアルロン酸を添加した培地で間葉系幹細胞を培養することによって得られる幹細胞、培養上清、及び/又は細胞分泌物を含む、組成物。
【選択図】なし
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]