特許第6867733号(P6867733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867733
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】レーザスキャナ
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20210426BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20210426BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20210426BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G01S17/89
   G01C15/00 103A
   G01S17/10
   G01C3/06 120Q
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-72628(P2016-72628)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181429(P2017-181429A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】桐生 徳康
(72)【発明者】
【氏名】江野 泰造
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−341031(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0226853(US,A1)
【文献】 特開平09−199781(JP,A)
【文献】 特開2015−152831(JP,A)
【文献】 特開2011−257192(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51,
G01S 17/00−17/95,
G01C 3/00− 3/32,
G01C 15/00,
CSDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光としてパルスレーザを射出する光源部と、反射測距光を受光する受光部と、該受光部からの信号に基づき測距を行う測距部と、測距光の射出方向を検出する方向角検出器の検出結果に基づき測角を行う測角部と、前記光源部、前記受光部、前記測距部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部と、該望遠鏡部を回転させる回転駆動部と、パルスレーザの方向角を検出する前記方向角検出器と、パルスレーザを所要の範囲で回転照射し、パルスレーザ毎の測距結果と、方向角検出結果に基づき3次元点群データを作成する制御演算部とを具備し、
前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、発振器制御回路と、主発振器と、光増幅器とを有し、該発振器制御回路は、測定モード設定部と、繰返し周波数設定部と、パルス幅設定部と、パルスピーク出力設定部と、増幅率計算部とを有し、測距距離に対応した、繰返し周波数、パルス幅で前記主発振器を発振させ、
前記繰返し周波数、パルス幅に基づきパルスピーク出力設定部によりパルスピーク出力が設定され、前記増幅率計算部は設定されたパルスピーク出力に基づき増幅率を演算し、演算された増幅率によって前記光増幅器が増幅される様構成したレーザスキャナ。
【請求項2】
前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、サブ光増幅器を有し、
該サブ光増幅器は、光増幅要素として希土類添加の光ファイバが用いられ、2段階増幅となり、光路結合部材としてWDMカプラ、励起用レーザ光源を備えており、1つの励起用レーザ光源から励起光が第1のWDMカプラを介して第1段の光ファイバに入射され、3つの励起用レーザ光源から励起光が第2のWDMカプラを介して第2段の光ファイバに入射される構成を有する請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項3】
前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、サブ光増幅器を有し、
該サブ光増幅器の光増幅要素として、希土類添加の光ファイバが用いられ、2段階増幅となり、1つの励起用レーザ光源が用いられ、ビームスプリッタにより前記励起用レーザ光源から射出される励起光を1:3に分割して、1/4の光量の励起光を第1のWDMカプラを介して第1段の光ファイバに入射し、3/4の光量の励起光を第2のWDMカプラを介して第2段の光ファイバに入射する構成を備えた請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項4】
前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、サブ光増幅器を有し、
該サブ光増幅器の光増幅要素として、希土類添加の光ファイバが用いられ、2段階増幅となり、メインアンプについて、双方向励起型とした構成となっており、第1の励起用レーザ光源から射出される励起光は第1のWDMカプラを介して第1段の光ファイバに入射され、第2の励起用レーザ光源から射出される励起光は第2のWDMカプラを介して第2段の光ファイバに入射され、第3の励起用レーザ光源から射出される励起光は第3のWDMカプラを介して第2段の光ファイバに入射される構成を備えた請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項5】
前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、サブ光増幅器を有し、
該サブ光増幅器の光増幅要素として、レーザ結晶が用いられ、2段階増幅となり、光路結合部材としてのダイクロイックミラーを有し、各レーザ結晶共に双方向励起型とした構成であり、第1の励起用レーザ光源からの励起光は、第1のダイクロイックミラーを介して第1のレーザ結晶に入射され、第2の励起用レーザ光源からの励起光は、第2のダイクロイックミラーを介して前記第1のレーザ結晶に入射され、第3の励起用レーザ光源からの励起光は、第3のダイクロイックミラーを介して第2のレーザ結晶に入射され、第4の励起用レーザ光源からの励起光は、第4のダイクロイックミラーを介して前記第2のレーザ結晶に入射される様に構成した請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項6】
前記光増幅器は、複数のサブ光増幅器を有し、前記主発振器から出力される光パルスを複段階に増幅させる請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項7】
前記光増幅器は、光増幅要素として希土類添加の光ファイバを含む請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項8】
前記光増幅器は、光増幅要素としてレーザ結晶を含む請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項9】
前記発振器制御回路は、距離に対応した測定モードを設定する測定モード設定部を具備し、前記発振器制御回路は、設定された測定モードに対応して、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅で前記主発振器を発振させ、又設定された測定モードに対応して、増幅率によって前記光増幅器を増幅させる請求項1に記載のレーザスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス測距光を回転照射し、3次元点群データを取得するレーザスキャナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を射出し、測定対象物からの反射光を受光して測距を行うレーザ測量機の内、測距光としてパルス光を射出し、パルス光の往復の時間を求めて距離を測定するTOF(Time of Flight)方式の測量機がある。
【0003】
斯かる測量機では、パルス光を連続して射出しつつ、測定範囲を走査し、パルス光毎に測距、測角を行うことで3次元の点群データを取得することができる。
【0004】
又、測定の信頼性、測定の安定性を保証する為、測定条件、例えば測定距離によって要求されるパルス光の品質を満足する必要があり、更に、各パルス光毎の品質が安定していることが要求される。
【0005】
従来では、測量機が使用される条件に合致したパルス品質が得られる様、レーザ光源を選定し、更にパルス幅、パルス繰返し周波数、パルスピーク出力を有するパルス光を発する様に、レーザ光源の発光条件を設定している。
【0006】
この為、測定条件が異なる測定を行う場合、例えば長距離測定、短距離測定では、同一のレーザ光源の発光条件では対応できないので、長距離用の測量機と短距離用の測量機を用意しなければならず、設備コストが蒿む。更に、長距離測定と短距離測定では、異なる測量機を準備する必要がある等、作業性も悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−82782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レーザ光源のパルス品質の選択の自由度を有し、一台の測量機での測定範囲を拡大し、設備コスト、測定作業の利便性を向上させたレーザスキャナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測距光としてパルスレーザを射出する光源部と、反射測距光を受光する受光部と、該受光部からの信号に基づき測距を行う測距部と、測距光の射出方向を検出する方向角検出器の検出結果に基づき測角を行う測角部と、前記光源部、前記受光部、前記測距部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部と、該望遠鏡部を回転させる回転駆動部と、パルスレーザの方向角を検出する前記方向角検出器と、パルスレーザを所要の範囲で回転照射し、パルスレーザ毎の測距結果と、方向角検出結果に基づき3次元点群データを作成する制御演算部とを具備し、前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、発振器制御回路と、主発振器と、光増幅器とを有し、該発振器制御回路は、繰返し周波数設定部と、パルスピーク出力設定部と、パルス幅設定部と、増幅率計算部とを有し、測距距離に対応した、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅で前記主発振器を発振させ、又前記増幅率計算部は、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅に基づき増幅率を演算し、演算された増幅率によって前記光増幅器を増幅させるレーザスキャナに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記光増幅器は、複数のサブ光増幅器を有し、前記主発振器から出力される光パルスを複段階に増幅させるレーザスキャナに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記光増幅器は、光増幅要素として希土類添加の光ファイバを含むレーザスキャナに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記光増幅器は、光増幅要素としてレーザ結晶を含むレーザスキャナに係るものである。
【0013】
更に又本発明は、前記発振器制御回路は、距離に対応した測定モードを設定する測定モード設定部を具備し、前記発振器制御回路は、設定された測定モードに対応して、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅で前記主発振器を発振させ、又設定された測定モードに対応して、増幅率によって前記光増幅器を増幅させるレーザスキャナに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測距光としてパルスレーザを射出する光源部と、反射測距光を受光する受光部と、該受光部からの信号に基づき測距を行う測距部と、測距光の射出方向を検出する方向角検出器の検出結果に基づき測角を行う測角部と、前記光源部、前記受光部、前記測距部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部と、該望遠鏡部を回転させる回転駆動部と、パルスレーザの方向角を検出する前記方向角検出器と、パルスレーザを所要の範囲で回転照射し、パルスレーザ毎の測距結果と、方向角検出結果に基づき3次元点群データを作成する制御演算部とを具備し、前記光源部はMOPA型レーザ光源であり、発振器制御回路と、主発振器と、光増幅器とを有し、該発振器制御回路は、繰返し周波数設定部と、パルスピーク出力設定部と、パルス幅設定部と、増幅率計算部とを有し、測距距離に対応した、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅で前記主発振器を発振させ、又前記増幅率計算部は、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅に基づき増幅率を演算し、演算された増幅率によって前記光増幅器を増幅させるので、レーザ光源のパルス品質の選択の自由度が生じ、一台の測量機での測定範囲を拡大し、設備コスト、測定作業の利便性を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係るレーザスキャナの概略図である。
図2】該レーザスキャナの概略構成図である。
図3】本実施例で用いられる光増幅器の概略構成図である。
図4】該光増幅器の発振器制御回路の一例の概略構成図である。
図5】(A)(B)は該光増幅器でパルスレーザを長距離測定モードと短距離測定モードに調整した場合の測距光と反射測距光との関係を示す説明図であり、(A)は長距離測定モード、(B)は短距離測定モードを示している。
図6】本実施例で用いられる第1の例のMOPA型レーザ光源を示す説明図である。
図7】本実施例で用いられる第2の例のMOPA型レーザ光源を示す説明図である。
図8】本実施例で用いられる第3の例のMOPA型レーザ光源を示す説明図である。
図9】本実施例で用いられる第4の例のMOPA型レーザ光源を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
図1により、レーザスキャナ1の概略を説明する。
【0018】
3脚2に整準部3が設けられ、該整準部3に基盤部4が設けられている。該基盤部4に水平回転駆動部5が収納されている。該水平回転駆動部5は鉛直に延びる水平回転軸6を有し、該水平回転軸6の上端に水平回転部である托架部7が取付けられている。
【0019】
該托架部7は凹部8を有し、該凹部8には鉛直回転部である望遠鏡部9が収納され、該望遠鏡部9は鉛直回転軸10を介して前記托架部7に回転自在に支持されている。前記望遠鏡部9には測距光軸を有する望遠鏡11が設けられ、又前記望遠鏡部9には測距部22(図2参照)が収納されている。
【0020】
前記托架部7には鉛直回転駆動部12が収納され、該鉛直回転駆動部12は前記鉛直回転軸10に連結されている。前記鉛直回転駆動部12によって前記望遠鏡部9が全周回転される様になっている。前記鉛直回転軸10には鉛直角検出器13が設けられ、該鉛直角検出器13により前記鉛直回転軸10の回転角が検出され、更に前記鉛直回転軸10の鉛直角が検出される様になっている。
【0021】
前記水平回転駆動部5は、前記水平回転軸6に連結され、前記托架部7は前記水平回転駆動部5によって全周回転される様になっている。又、前記水平回転軸6には水平角検出器14が設けられ、該水平角検出器14により前記托架部7の回転角が検出され、更に前記托架部7の水平角が検出される様になっている。
【0022】
而して、前記水平回転駆動部5、前記鉛直回転駆動部12が構成する回転駆動部により、前記望遠鏡部9が所要の状態で回転され、又該望遠鏡部9の方向角は、前記鉛直角検出器13、前記水平角検出器14によって構成される方向角検出器によって、リアルタイムで検出される。
【0023】
図2により、前記レーザスキャナ1の概略の構成を説明する。尚、図2中では、前記望遠鏡11等の光学系について図示を省略している。
【0024】
図2中、16は制御演算部、17は測角部、18は記憶部、19は操作部、20は表示部を示している。
【0025】
前記望遠鏡部9には前記測距部22、測距光26を発する光源部23、反射測距光27を受光する受光部24が含まれる。前記測距部22は前記光源部23の発光を制御し、前記受光部24から発せられる受光信号に基づき、測定点の測距を行う。又、前記測角部17は、測定対象物を再帰反射体(例えばプリズム)としたプリズム測定、或は測定対象物を自然物としたノンプリズム測定が可能となっている。又、前記測距部22が前記光源部23にパルス発光させ、1パルス毎に測距を行う。
【0026】
前記鉛直角検出器13からの鉛直角検出信号は前記測角部17に入力され、該測角部17は鉛直角検出信号に基づき鉛直角を演算する。又、前記水平角検出器14からの水平角検出信号は前記測角部17に入力され、該測角部17は、水平角検出信号に基づき水平角を演算する。パルス光による測距毎に鉛直角、水平角が求められ、鉛直角、水平角によって、レーザスキャナ1を基準とした各測定点毎の方向角が求められる。
【0027】
前記制御演算部16は、前記鉛直回転駆動部12により前記望遠鏡部9を所定の速度で且つ定速回転で、鉛直方向に全周回転させ、更に、前記水平回転駆動部5により前記鉛直回転駆動部12による全周回転に同期させ、所定の速度で水平回転させることで、所要範囲のレーザスキャンが実行され、所要範囲の3次元の点群データが取得できる。更に、前記制御演算部16は、スキャン速度及びパルス発光の繰返し周波数を設定することで測定ピッチ(測定点間の間隔)を設定できる。
【0028】
前記記憶部18には、前記レーザスキャナ1を作動させる為の各種プログラムが格納されている。例えば、測距、測角を実行する為の測定プログラム、前記水平回転駆動部5、前記鉛直回転駆動部12の駆動を制御する為の駆動制御プログラム、前記光源部23の発光を制御する為の発光制御プログラム、測定ピッチを設定する測定ピッチ設定プログラム、前記表示部20に各種情報を表示させる為の表示プログラム等が格納されている。
【0029】
又、前記記憶部18には、測定データを格納する為のデータ格納領域が設けられている。
【0030】
前記操作部19からは測定範囲、測定密度等の測定条件が入力され、或は測定開始、測定停止等の指令が入力される。
【0031】
前記表示部20には、測定範囲等の測定条件、測定状態が表示され、或は測定結果等が表示される。
【0032】
前記光源部23は、長距離測定モードと短距離測定モードとを切替える回路、パルス特性を調整可能な回路、励起用レーザ光源の励起パワー出力を調整する回路、パルス繰返し周波数、測定ピッチを制御する回路等の制御回路を含み、前記発光制御プログラムが実行されることで、上記した回路の作動によって、光パルスの発光状態が制御される。
【0033】
尚、長距離測定モードに於ける測距距離は、例えば、20m〜500mであり、短距離測定モードに於ける測距距離は、例えば、0.2m〜30mである。又、測定モードとしては、長距離測定モード、短距離測定モードの他に中距離測定モードが設定されてもよい。
【0034】
本実施例に係る前記レーザスキャナ1に於いて、前記光源部23としてMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)型レーザ光源が使用される。
【0035】
MOPA型レーザ光源は、励起光発生用の主発振器(例えばレーザダイオード:LD)と光増幅器とに分けて、それぞれを独立して制御可能である。従って、MOPA型レーザ光源では、パルス幅、パルス繰返し周波数及びパルスピーク出力が任意に変更可能であり、高品質、高安定なパルス光を発光させることができる。
【0036】
図3に於いて、MOPA型レーザ光源(以下、光源部23)の概略構成を説明する。
【0037】
発振器制御回路31は、主発振器32に励起信号を印加し、該主発振器32にレーザ光を発振させるものである。該主発振器32からパルス光が発せられ、パルス光は光増幅器33で測定距離に対応したパルスレーザ光に増幅され、出力される。
【0038】
図3に示される前記光増幅器33は、3段のサブ光増幅器33a,33b,33cを有し、3段階で増幅する様になっている。尚、図3中、34a,34b,34cは、光増幅器内でのレーザの反射による発振を防止する為のアイソレータ、35a,35b,35cはそれぞれ光増幅要素を示している。
【0039】
一般に、主発振器32は、高出力程ビーム品質が悪く、低出力ではビーム品質がよいという傾向がある。又、ビーム品質は、増幅しても損われないという性質も有している。従って、低出力、高品質の主発振器32を選択し、前記光増幅器33で増幅することで、高出力でビーム品質のよいパルスレーザが得られる。更に、前記光増幅器33を複段階の前記サブ光増幅器33a,33b,33cで構成し、複段階(3段階)に増幅しているので、容易に高出力のパルスレーザが得られる。
【0040】
尚、増幅する段階は、3段階に限らず、2段階、4段階等要求されるビーム出力に対応して選択すればよい。
【0041】
図4は、前記発振器制御回路31の概略構成を示している。
【0042】
前記発振器制御回路31は、測定モード設定部37、パルスレーザの繰返し周波数を設定する繰返し周波数設定部38、パルスレーザのピーク出力を設定するパルスピーク出力設定部39、パルスレーザのパルス幅を設定するパルス幅設定部40、パルス発振回路41を有し、更に増幅率計算部42、励起用レーザ光源出力設定部43、励起用レーザ光源駆動回路44を有する。
【0043】
前記測定モード設定部37は、測定点、測定対象物迄の距離に応じて長距離測定モード又は短距離測定モードを設定する。測定モードが設定されると、繰返し周波数が設定される。更に、測定モードの設定と共に測定ピッチが設定される。繰返し周波数は前記制御演算部16に入力され、該制御演算部16は繰返し周波数に基づき設定された測定ピッチとなる様スキャン速度を制御する。
【0044】
尚、測定対象物迄の距離は、適宜なパルス射出条件を設定し、その設定での予備測定を行い概略測定し、概略測定値で測定モードが設定されるか、或は大体の距離が分っている場合は、その距離により測定モードを設定する。
【0045】
繰返し周波数は、前記繰返し周波数設定部38から前記パルスピーク出力設定部39及び前記パルス発振回路41に入力される。該パルス発振回路41は、繰返し周波数に対応したパルス信号を生成し、前記主発振器32に出力する。
【0046】
又、前記パルスピーク出力設定部39は、繰返し周波数及びパルス幅に対応し、且つ前記発振器制御回路31の負荷率を超えない範囲でパルスピーク出力値を設定する。
【0047】
パルスピーク出力値は前記増幅率計算部42に入力され、該増幅率計算部42では前記パルス発振回路41から出力されるパルス光に対する増幅率が計算され、増幅率は前記励起用レーザ光源出力設定部43に入力される。該励起用レーザ光源出力設定部43では、この増幅率となる様な、前記光増幅器33に入射させる励起用レーザの出力(強度)を演算し、前記励起用レーザ光源駆動回路44は演算された励起用レーザの出力となる様、励起用レーザ光源(図示せず)を発光させる。
【0048】
前記発振器制御回路31では、短距離測定モード、長距離測定モードの選択により、パルス発光状態を測定距離に合致する様に変更することができる。
【0049】
先ず、短距離測定モード又は長距離測定モードに合致する様、パルス発光の繰返し周波数、測定ピッチが設定される。TOF方式の距離測定では、パルス光の往復時間で距離測定を行うので、パルス光の発光間隔の時間が、パルス光の往復時間より長い必要がある。
【0050】
図5(A)は、長距離測定を行う場合の射出パルス光(測距光)61と反射パルス光(反射測距光)61′の関係を示している。パルス光発光間隔は、パルス光の往復時間Δtよりも長く設定される。
【0051】
又、長距離である反射パルス光61′の減衰が大きいので、前記受光部24での受光光量を適正とするには、パルスピーク値を大きくする必要がある。前記パルスピーク出力設定部39は、前記受光部24での受光光量を適正となる様に、パルスピーク出力を設定する。又、受光光量は、パルス幅によっても変更されるので、パルス幅の設定をすることでも、受光光量の適正化が図れる。尚、繰返し周波数、パルスピーク出力、パルス幅は、前記主発振器32の負荷率の制限を越えない様に設定される。
【0052】
又、安全の為、パルスピーク出力最大値は制限されているので、前記パルスピーク出力設定部39が設定するパルスピーク出力は、前記励起用レーザ光源出力設定部43、前記励起用レーザ光源駆動回路44で増幅された後のパルスレーザの強度が最大値を超えない様になっている。
【0053】
図5(B)は、短距離測定を行う場合の射出パルス光(測距光)61と反射パルス光(反射測距光)61′の関係を示している。短距離測定では、パルス光の往復時間Δtが短いので、パルス光発光間隔は短く設定される。
【0054】
又、短距離である反射パルス光61′の減衰が小さいので、パルスピーク出力値が小さくても前記受光部24で適正な光量を受光することができる。即ち、繰返し周波数は大きく、パルスピーク出力値は小さく設定される。
【0055】
図6図9はそれぞれ、MOPA型レーザ光源の構成例を示している。
【0056】
図6は、第1の例を示している。光増幅器33はサブ光増幅器33a,33bを有し、更に該サブ光増幅器33a,33bは、光増幅要素として、希土類添加の光ファイバ46a,46bが用いられ、2段階増幅となっている。又、図中45a,45bは、光路結合部材としてのWDMカプラ(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重方式カプラ)を示している。又、47〜50は励起用レーザ光源を示している。
【0057】
第1の例では、1つの励起用レーザ光源47から励起光が前記WDMカプラ45aを介して前記光ファイバ46a(サブ光増幅器33a)に入射され、3つの前記励起用レーザ光源48,49,50から励起光がWDMカプラ45bを介して前記光ファイバ46b(サブ光増幅器33b)に入射される構成を示している。
【0058】
図7は、第2の例を示している。第1の例と同様、サブ光増幅器33a,33bの光増幅要素として、希土類添加の光ファイバ46a,46bが用いられ、2段階増幅となっている。第2の例では、1つの励起用レーザ光源47が用いられた場合を示している。
【0059】
第2の例では、ビームスプリッタ55により前記励起用レーザ光源47から射出される励起光を例えば1:3に分割して、1/4の光量の励起光をWDMカプラ45aを介して光ファイバ46a(サブ光増幅器33a)に入射し、3/4の光量の励起光をWDMカプラ45bを介して光ファイバ46b(サブ光増幅器33b)に入射する構成を示している。
【0060】
図8は、第3の例を示している。第1の例と同様、サブ光増幅器33a,33bの光増幅要素として、希土類添加の光ファイバ46a,46bが用いられ、2段階増幅となっている。第3の例では、メインアンプ(光ファイバ46b(サブ光増幅器33b))について、双方向励起型とした構成となっている。
【0061】
第3の例では、励起用レーザ光源47から射出される励起光はWDMカプラ45aを介して光ファイバ46a(サブ光増幅器33a)に入射され、励起用レーザ光源48から射出される励起光はWDMカプラ45bを介して光ファイバ46b(サブ光増幅器33b)に入射され、励起用レーザ光源49から射出される励起光はWDMカプラ45cを介して光ファイバ46bに入射される構成を示している。
【0062】
図9は、第4の例を示している。第4の例では、サブ光増幅器33a,33bの光増幅要素として、レーザ結晶52,54が用いられた場合を示している。又、第4の例では2段階増幅となっている。又、図9中、51a,51b,53a,53bは、光路結合部材としてのダイクロイックミラーを示している。
【0063】
第4の例では、各レーザ結晶52,54共に双方向励起型とした構成となっている。
【0064】
励起用レーザ光源47からの励起光は、前記ダイクロイックミラー51aを介して前記レーザ結晶52に入射され、励起用レーザ光源48からの励起光は、前記ダイクロイックミラー51bを介して前記レーザ結晶52に入射される。
【0065】
励起用レーザ光源49からの励起光は、前記ダイクロイックミラー53aを介して前記レーザ結晶54に入射され、励起用レーザ光源50からの励起光は、前記ダイクロイックミラー53bを介して前記レーザ結晶54に入射される。
【0066】
尚、上記したMOPA型レーザ光源の構成は、一部の例を示しており、その他種々の構成が考えられることは言う迄もない。
【符号の説明】
【0067】
1 レーザスキャナ
2 3脚
3 整準部
4 基盤部
5 水平回転駆動部
9 望遠鏡部
11 望遠鏡
12 鉛直回転駆動部
13 鉛直角検出器
14 水平角検出器
16 制御演算部
17 測角部
18 記憶部
22 測距部
23 光源部
24 受光部
31 発振器制御回路
32 主発振器
33 光増幅器
33a サブ光増幅器
33b サブ光増幅器
37 測定モード設定部
38 繰返し周波数設定部
39 パルスピーク出力設定部
40 パルス幅設定部
42 増幅率計算部
46a 光ファイバ
46b 光ファイバ
52 レーザ結晶
54 レーザ結晶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9