(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本開示の技術は実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示の表示装置及び電子機器、全般に関する説明
2.アクティブマトリックス型有機EL表示装置
2−1.システム構成
2−2.画素回路
2−3.基本的な回路動作
2−4.配線間の寄生容量
2−4−1.隣接するゲート配線を同じ配線層に形成した例
2−4−2.実施例1(スイッチングトランジスタのゲート配線を、他のトランジスタのゲート配線と異なる配線層に形成する例)
2−4−3.実施例2(実施例1の変形例:スイッチングトランジスタのゲート配線の上層に電源配線を形成する例)
2−4−4.実施例3(実施例2の変形例:スイッチングトランジスタのゲート配線の下層に電源配線を形成する例)
3.変形例
4.本開示の電子機器
4−1.具体例1(デジタルスチルカメラの例)
4−2.具体例2(ヘッドマウントディスプレイの例)
5.本開示がとることができる構成
【0014】
<本開示の表示装置及び電子機器、全般に関する説明>
本開示の表示装置及び電子機器にあっては、スイッチングトランジスタについて、発光部のアノード電極の電位を制御することによって発光部を非発光状態にする構成とすることができる。
【0015】
上述した好ましい構成を含む本開示の表示装置及び電子機器にあっては、スイッチングトランジスタのゲート配線の上層又は下層には、固定電位の電源配線が形成されている構成とすることができる。
【0016】
更に、上述した好ましい構成を含む本開示の表示装置及び電子機器にあっては、他のトランジスタについて、発光部を駆動する駆動トランジスタのゲート電極に対して、映像信号を書き込む書込みトランジスタである構成とすることができる。また、画素では、スイッチングトランジスタが導通状態となる発光部の非発光期間に、駆動トランジスタの特性のバラツキを補正するための処理が行われる構成とすることができる。
【0017】
更に、上述した好ましい構成を含む本開示の表示装置及び電子機器にあっては、画素が2次元配置される基板について、半導体基板である構成とすることができる。また、発光部について、有機エレクトロルミネッセンス素子から成る構成とすることができる。
【0018】
<アクティブマトリックス型表示装置>
本開示の表示装置は、電気光学素子に流れる電流を、当該電気光学素子と同じ画素回路内に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御するアクティブマトリックス型表示装置である。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、典型的には、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタやTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)を例示することができる。
【0019】
ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である有機EL素子を、画素回路の発光部(発光素子)として用いるアクティブマトリックス型有機EL表示装置を例に挙げて説明するものとする。以下では、「画素回路」を単に「画素」と記述する場合がある。
【0020】
[システム構成]
図1は、本開示のアクティブマトリックス型有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
図1に示すように、本開示の有機EL表示装置10は、有機EL素子を含む複数の画素20が行列状に2次元配置されて成る画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置される周辺回路部とを有する構成となっている。周辺回路部は、例えば、画素アレイ部30と同じ表示パネル70上に搭載された書込み走査部40、第1駆動走査部50A、第2駆動走査部50B、及び、信号出力部60等から成り、画素アレイ部30の各画素20を駆動する。尚、書込み走査部40、第1駆動走査部50A、第2駆動走査部50B、及び、信号出力部60のいくつか、あるいは全部を表示パネル70外に設ける構成を採ることも可能である。
【0021】
有機EL表示装置10については、モノクロ(白黒)表示対応の構成とすることもできるし、カラー表示対応の構成とすることもできる。有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素(単位画素/ピクセル)は複数の副画素(サブピクセル)から構成される。このとき、副画素の各々が
図1の画素20に相当することになる。より具体的には、カラー表示対応の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色(Red;R)光を発光する副画素、緑色(Green;G)光を発光する副画素、青色(Blue;B)光を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
【0022】
但し、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素に更に1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色(White;W)光を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0023】
画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向)に沿って走査線31(31
1〜31
m)、第1駆動線32(32
1〜32
m)、及び、第2駆動線33(33
1〜33
m)が画素行毎に配線されている。更に、m行n列の画素20の配列に対して、列方向(画素列の画素の配列方向)に沿って信号線34(34
1〜34
n)が画素列毎に配線されている。
【0024】
走査線31
1〜31
mは、書込み走査部40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。第1駆動線32
1〜32
mは、第1駆動走査部50Aの対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。第2駆動線33
1〜33
mは、第2駆動走査部50Bの対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線34
1〜34
nは、信号出力部60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
【0025】
書込み走査部40は、シフトレジスタ回路等によって構成されている。この書込み走査部40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の信号電圧の書込みに際して、走査線31(31
1〜31
m)に対して書込み走査信号WS(WS
1〜WS
m)を順次供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査する、所謂、線順次走査を行う。
【0026】
第1駆動走査部50Aは、書込み走査部40と同様に、シフトレジスタ回路等によって構成されている。この第1駆動走査部50Aは、書込み走査部40による線順次走査に同期して、第1駆動線32(32
1〜32
m)に対して発光制御信号DS(DS
1〜DS
m)を供給することによって画素20の発光/非発光(消光)の制御を行う。
【0027】
第2駆動走査部50Bは、書込み走査部40と同様に、シフトレジスタ回路等によって構成されている。この第2駆動走査部50Bは、書込み走査部40による線順次走査に同期して、第2駆動線33(33
1〜33
m)に対して駆動信号AZ(AZ
1〜AZ
m)を供給することによって非発光期間において画素20を発光しないようにする制御を行う。
【0028】
信号出力部60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)V
sigと基準電圧V
ofsとを選択的に出力する。ここで、基準電圧V
ofsは、映像信号の信号電圧V
sigの基準となる電圧(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電圧)に相当する電圧、あるいは、その近傍の電圧である。基準電圧V
ofsは、後述する補正動作を行う際に、初期化電圧として用いられる。
【0029】
信号出力部60から択一的に出力される信号電圧V
sig/基準電圧V
ofsは、信号線34(34
1〜34
n)を介して画素アレイ部30の各画素20に対して、書込み走査部40による線順次走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、信号出力部60は、信号電圧V
sigを画素行(ライン)単位で書き込む線順次書込みの駆動形態を採っている。
【0030】
[画素回路]
図2は、本開示のアクティブマトリックス型有機EL表示装置10における画素(画素回路)の回路構成の一例を示す回路図である。画素20の発光部は、有機EL素子21から成る。有機EL素子21は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子の一例である。
【0031】
図2に示すように、画素20は、有機EL素子21と、有機EL素子21に電流を流すことによって当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線された共通電源線35にカソード電極が接続されている。
【0032】
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)23、発光制御トランジスタ24、スイッチングトランジスタ25、保持容量26、及び、補助容量27を有する、4Tr(トランジスタ)/2C(容量素子)の構成となっている。尚、本例にあっては、画素(画素回路)20は、ガラス基板のような絶縁体上ではなく、シリコンのような半導体上に形成される。すなわち、画素20が2次元配置される基板は、半導体基板である。そして、駆動トランジスタ22は、pチャネル型のトランジスタから成る。
【0033】
また、本例にあっては、書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25についても、駆動トランジスタ22と同様に、pチャネル型のトランジスタを用いる構成を採っている。従って、駆動トランジスタ22、書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25は、ソース/ゲート/ドレインの3端子の構成ではなく、ソース/ゲート/ドレイン/バックゲートの4端子の構成となっている。各トランジスタのバックゲートには、高電位側の電源電圧V
ccpが印加される。
【0034】
書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25の各ゲート電極は、画素配列の行方向に沿って形成されている走査線31、第1駆動線32、及び、第2駆動線33に画素行単位で接続されている。従って、走査線31、第1駆動線32、及び、第2駆動線33は、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25の各ゲート配線ということができる。
【0035】
上記の構成の画素20において、書込みトランジスタ23は、信号出力部60から信号線34を通して供給される信号電圧V
sigをサンプリングすることによって駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込む。発光制御トランジスタ24は、電源電圧V
ccpのノードと駆動トランジスタ22のソース電極との間に接続されており、発光制御信号DSによる駆動の下に、有機EL素子21の発光/非発光を制御する。
【0036】
スイッチングトランジスタ25は、有機EL素子21のアノード電極と低電位側の電源電圧V
ss(例えば、接地電位)との間に接続されており、駆動信号AZによる駆動の下に、有機EL素子21のアノード電極の電位を制御することによって有機EL素子21を非発光状態にする。より具体的には、スイッチングトランジスタ25は、駆動信号AZに応答して導通状態になることにより、有機EL素子21のアノード電極に低電位側の電源電圧V
ssを印加し、有機EL素子21の非発光期間に有機EL素子21が発光しないように制御する。
【0037】
保持容量26は、駆動トランジスタ22のゲート電極とソース電極との間に接続されており、書込みトランジスタ23によるサンプリングによって書き込まれた信号電圧V
sigを保持する。駆動トランジスタ22は、保持容量26の保持電圧に応じた駆動電流を有機EL素子21に流すことによって有機EL素子21を駆動する。補助容量27は、駆動トランジスタ22のソース電極と、固定電位のノード(例えば、高電位側の電源電圧V
ccpのノード)との間に接続されている。この補助容量27は、信号電圧V
sigを書き込んだときに駆動トランジスタ22のソース電圧の変動を抑制する作用、及び、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧V
gsを駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thにする作用を為す。
【0038】
[基本的な回路動作]
ここで、上記の構成のアクティブマトリックス型有機EL表示装置10の基本的な回路動作について、
図3のタイミング波形図を用いて説明する。
【0039】
図3のタイミング波形図には、発光制御信号DS、書込み走査信号WS、駆動信号AZ、信号線34の電位V
ofs/V
sig、及び、駆動トランジスタ22のソース電圧V
s、ゲート電圧V
gのそれぞれの変化の様子を示している。
【0040】
尚、書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25がpチャネル型のトランジスタであるため、書込み走査信号WS、発光制御信号DS、及び、駆動信号AZの低レベルの状態がアクティブ状態となり、高レベルの状態が非アクティブ状態となる。そして、書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25は、書込み走査信号WS、発光制御信号DS、及び、駆動信号AZのアクティブ状態で導通状態となり、非アクティブ状態で非導通状態となる。
【0041】
時刻t
1で、書込み走査信号WSが高レベルから低レベルに遷移することで、書込みトランジスタ23が導通状態になる。このとき、信号出力部60から信号線34に対して、基準電圧V
ofsが出力されている状態にある。従って、基準電圧V
ofsが書込みトランジスタ23によるサンプリングによって駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれるため、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gが基準電圧V
ofsになる。
【0042】
また、時刻t
1では、発光制御信号DSが低レベルの状態にあるため、発光制御トランジスタ24が導通状態にある。従って、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sは、高電位側の電源電圧V
ccpになっている。このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧V
gsは、V
gs=V
ofs−V
ccpとなる。
【0043】
ここで、閾値補正動作(閾値補正処理)を行うには、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧V
gsを、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thよりも大きくしておく必要がある。そのため、|V
gs|=|V
ofs−V
ccp|>|V
th|となるように各電圧値が設定されることになる。
【0044】
このように、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gを基準電圧V
ofsに設定し、かつ、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sを電源電圧V
ccpに設定する初期化動作が、次の閾値補正動作を行う前の準備(閾値補正準備)の動作である。従って、基準電圧V
ofs及び電源電圧V
ccpが、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
g及びソース電圧V
sの各初期化電圧ということになる。
【0045】
次に、時刻t
2で、発光制御信号DSが低レベルから高レベルに遷移し、発光制御トランジスタ24が非導通状態になると、駆動トランジスタ22のソース電極がフローティング状態となり、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gが基準電圧V
ofsに保たれた状態で閾値補正動作が開始される。すなわち、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gから閾値電圧V
thを減じた電圧(V
g−V
th)に向けて、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sが下降(低下)を開始する。
【0046】
基本的な動作にあっては、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gの初期化電圧V
ofsを基準とし、当該初期化電圧V
ofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thを減じた電圧(V
g−V
th)に向けて駆動トランジスタ22のソース電圧V
sを変化させる動作が閾値補正動作となる。この閾値補正動作が進むと、やがて、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧V
gsが、駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thに収束する。この閾値電圧V
thに相当する電圧は保持容量26に保持される。
【0047】
そして、時刻t
3で、書込み走査信号WSが低レベルから高レベルに遷移し、書込みトランジスタ23が非導通状態になると、閾値補正期間が終了する。その後、時刻t
4で、信号出力部60から信号線34に映像信号の信号電圧V
sigが出力され、信号線34の電位が基準電圧V
ofsから信号電圧V
sigに切り替わる。
【0048】
次に、時刻t
5で、書込み走査信号WSが高レベルから低レベルに遷移することで、書込みトランジスタ23が導通状態になり、信号電圧V
sigをサンプリングして画素20内に書き込む。この書込みトランジスタ23による信号電圧V
sigの書込み動作により、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gが信号電圧V
sigになる。
【0049】
この映像信号の信号電圧V
sigの書込みの際に、駆動トランジスタ22のソース電極と電源電圧V
ccpのノードとの間に接続されている補助容量27は、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sの変動を抑える作用を為す。そして、映像信号の信号電圧V
sigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thが
保持容量26に保持された閾値電圧V
thに相当する電圧と相殺される。
【0050】
このとき、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧V
gsが、信号電圧V
sigに応じて開く(大きくなる)が、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sは依然としてフローティング状態にある。そのため、保持容量26の充電電荷は、駆動トランジスタ22の特性に応じて放電される。そして、このとき駆動トランジスタ22に流れる電流によって有機EL素子21の等価容量C
elの充電が開始される。
【0051】
有機EL素子21の等価容量C
elが充電されることにより、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sが時間が経過するにつれて徐々に下降していく。このとき既に、駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thの画素毎のばらつきがキャンセルされており、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流I
dsは当該駆動トランジスタ22の移動度μに依存したものとなる。尚、駆動トランジスタ22の移動度μは、当該駆動トランジスタ22のチャネルを構成する半導体薄膜の移動度である。
【0052】
ここで、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sの下降分は、保持容量26の充電電荷を放電するように作用する。換言すれば、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sの下降分(変化量)は、保持容量26に対して負帰還がかけられたことになる。従って、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sの下降分は負帰還の帰還量となる。
【0053】
このように、駆動トランジスタ22に流れるドレイン−ソース間電流I
dsに応じた帰還量で保持容量26に対して負帰還をかけることにより、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流I
dsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この打ち消す動作(打ち消す処理)が、駆動トランジスタ22の移動度μの画素毎のばらつきを補正する移動度補正動作(移動度補正処理)である。
【0054】
より具体的には、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる映像信号の信号振幅V
in(=V
sig−V
ofs)が大きい程ドレイン−ソース間電流I
dsが大きくなるため、負帰還の帰還量の絶対値も大きくなる。従って、映像信号の信号振幅V
in、即ち、発光輝度レベルに応じた移動度補正処理が行われる。また、映像信号の信号振幅V
inを一定とした場合、駆動トランジスタ22の移動度μが大きいほど負帰還の帰還量の絶対値も大きくなるため、画素毎の移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0055】
時刻t
6で、書込み走査信号WSが低レベルから高レベルに遷移し、書込みトランジスタ23が非導通状態になることで、信号書込み&移動度補正期間が終了する。移動度補正を行った後、時刻t
7で、発光制御信号DSが高レベルから低レベルに遷移することで、発光制御トランジスタ24が導通状態になる。これにより、電源電圧V
ccpのノードから発光制御トランジスタ24を通して駆動トランジスタ22に電流が供給される。
【0056】
このとき、書込みトランジスタ23が非導通状態にあることで、駆動トランジスタ22のゲート電極は信号線34から電気的に切り離されてフローティング状態にある。ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間に保持容量26が接続されていることにより、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sの変動に連動してゲート電圧V
gも変動する。
【0057】
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電圧V
s及びゲート電圧V
gは、保持容量26に保持されているゲート−ソース間電圧V
gsを保持したまま上昇する。そして、駆動トランジスタ22のソース電圧V
sは、トランジスタの飽和電流に応じた有機EL素子21の発光電圧V
oledまで上昇する。
【0058】
このように、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
gがソース電圧V
sの変動に連動して変動する動作がブートストラップ動作である。換言すれば、ブートストラップ動作は、保持容量26に保持されたゲート−ソース間電圧V
gs、即ち、保持容量26の両端間電圧を保持したまま、駆動トランジスタ22のゲート電圧V
g及びソース電圧V
sが変動する動作である。
【0059】
そして、駆動トランジスタ22のドレイン−ソース間電流I
dsが有機EL素子21に流れ始めることにより、当該電流I
dsに応じて有機EL素子21のアノード電圧V
anoが上昇する。やがて、有機EL素子21のアノード電圧V
anoが有機EL素子21の閾値電圧V
thelを超えると、有機EL素子21に駆動電流が流れ始めるため、有機EL素子21が発光を開始する。
【0060】
一方、第2駆動走査部50Bは、時刻t
1よりも前の時刻t
0から、時刻t
7よりも後の時刻t
8までの期間で駆動信号AZをアクティブ状態(低レベルの状態)とする。時刻t
0−時刻t
8の期間は、有機EL素子21の非発光期間である。この非発光期間に駆動信号AZがアクティブ状態となることで、これに応答してスイッチングトランジスタ25が導通状態となる。
【0061】
スイッチングトランジスタ25が導通状態になることで、当該スイッチングトランジスタ25を介して、有機EL素子21のアノード電極(駆動トランジスタ22のドレイン電極)に低電位側の電源電圧V
ssが印加される。これにより、有機EL素子21の非発光期間において、スイッチングトランジスタ25は、有機EL素子21が発光しないように制御することができる。因みに、閾値補正及び信号書込みが行われる1水平期間(1H)では駆動信号AZがアクティブ状態となるが、以降の発光期間中では駆動信号AZが非アクティブ状態となる。
【0062】
ここで、スイッチングトランジスタ25を持たない画素構成における、閾値補正準備期間から閾値補正期間(時刻t
1〜時刻t
3)にかけての動作点に着目する。先述した動作説明から明らかなように、閾値補正動作を行うには、駆動トランジスタ22のゲート−ソース間電圧V
gsを、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧V
thよりも大きくしておく必要がある。
【0063】
ゲート−ソース間電圧V
gsが閾値電圧V
thよりも大きいと、駆動トランジスタ22に電流が流れる。すると、閾値補正準備期間から閾値補正期間の一部にかけて、一時的に有機EL素子21のアノード電圧V
anoが当該有機EL素子21の閾値電圧V
thelを超える。これにより、駆動トランジスタ22から有機EL素子21に電流が流れ込むことになるため、非発光期間であるにも拘わらず、信号電圧V
sigの階調に依らず毎フレーム、一定輝度で有機EL素子21が発光する。その結果、表示パネル70のコントラストの低下を招くことになる。
【0064】
これに対して、スイッチングトランジスタ25を持つ画素構成では、上述したスイッチングトランジスタ25の作用により、有機EL素子21の非発光期間において、駆動トランジスタ22に流れる電流が有機EL素子21に流れ込まないようにすることができる。これにより、非発光期間において、有機EL素子21が発光するのを抑制することができるため、スイッチングトランジスタ25を持たない画素構成に比べて表示パネル70の高コントラスト化を図ることができる。
【0065】
以上説明した一連の基本的な回路動作では、閾値補正、映像信号の信号電圧V
sigの書込み(信号書込み)、及び、移動度補正の各動作(処理)は、例えば1水平期間(1H)において実行される。より具体的には、1水平期間において、駆動信号AZがアクティブ状態(低レベル状態)となり、スイッチングトランジスタ25が導通状態となる期間t
0−t
8、即ち、有機EL素子21の非発光期間に実行される。
【0066】
[配線間の寄生容量]
上述したアクティブマトリックス型有機EL表示装置10において、書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25の各ゲート配線、即ち、走査線31、第1駆動線32、及び、第2駆動線33は、先述したように、画素配列の行方向に沿って形成されている。
【0067】
ここで、高精細化に伴って多画素化が進むと、画素20間の間隔が狭くなる。また、マイクロディスプレイ(超小型の表示装置)にあっては、当然のことながら、モニター用途の一般的なディスプレイに比べて画素20間の間隔が狭い。このように、画素20間の間隔が狭くなると、画素配列の行方向に沿って形成され、互いに隣接するゲート配線間に生ずる寄生容量が無視できなくなってくる。
【0068】
(隣接するゲート配線を同じ配線層に形成した例)
ここで、書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25の各ゲート配線を同じ配線層に形成した場合を従来例として考える。従来例に係る書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25のゲート配線構造の平面図を
図4Aに示し、
図4AのA−A線に沿った矢視断面図を
図4Bに示す。
【0069】
駆動トランジスタ22に関して、その一方側に発光制御トランジスタ24のゲート配線である第1駆動線32が、その他方側に書込みトランジスタ23のゲート配線である走査線31及びスイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33が、行方向に沿って形成されている。第1駆動線32、走査線31、及び、第2駆動線33はいずれも第1配線層、即ち、同じ配線層に形成されている。
【0070】
第1駆動線32には、発光制御トランジスタ24のゲート電極24
Gがコンタクト24
Cによって接続されている。走査線31には、書込みトランジスタ23のゲート電極23
Gがコンタクト23
Cによって接続されている。第2駆動線33には、スイッチングトランジスタ25のゲート電極25
Gがコンタクト25
Cによって接続されている。
【0071】
上記のゲート配線構造において、走査線31と第2駆動線33とが、互いに隣接して行方向に沿って平行に形成されていることから、画素20間の間隔が狭くなると、両ゲート配線間の寄生容量C
1の容量値が大きくなる。ここで、第2駆動線33をゲート配線とするスイッチングトランジスタ25は、有機EL素子21のアノード電極に接続されている(
図2参照)。従って、第2駆動線33の電位が、隣接するゲート配線である走査線31の電位変動の際に、寄生容量C
1によるカップリングによって変動すると、第2駆動線33の電位変動が有機EL素子21の発光動作に悪影響を及ぼし、表示ムラが生じる懸念がある。
【0072】
(実施例1)
実施例1は、スイッチングトランジスタ25のゲート配線を、他のトランジスタのゲート配線と異なる配線層に形成する例である。実施例1に係る書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25のゲート配線構造の平面図を
図5Aに示し、
図5AのB−B線に沿った矢視断面図を
図5Bに示す。
【0073】
実施例1に係るゲート配線構造は、スイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33を第1配線層に形成し、書込みトランジスタ23及び発光制御トランジスタ24の各ゲート配線である走査線31及び第1駆動線32を第2配線層に形成した構成となっている。
【0074】
そして、第2配線層に形成された第1駆動線32には、発光制御トランジスタ24のゲート電極24
Gが、第1配線層に形成された島状の中継電極41を介してコンタクト24
Cによって接続されている。同様に、第2配線層に形成された走査線31には、書込みトランジスタ23のゲート電極23
Gが、第1配線層に形成された島状の
中継電極42を介してコンタクト23
Cによって接続されている。
【0075】
尚、ここでは、走査線31及び第1駆動線32を共に第2配線層に形成するゲート配線構造を例示したが、少なくとも第2駆動線33に隣接する走査線31を第2配線層に形成するゲート配線構造であればよい。また、第2駆動線33を第2配線層に形成し、走査線31、又は、走査線31及び第1駆動線32を第1配線層に形成するゲート配線構造であってもよい。
【0076】
このように、スイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33を、隣接する走査線31と異なる配線層に形成することで、第2駆動線33と走査線31との間の配線間隔が、両ゲート配線が同じ配線層に形成する場合に比べて広くなる。従って、第2駆動線33と走査線31との間に生ずる寄生容量C
2を、両ゲート配線が同じ配線層に形成する場合の寄生容量C
1に比べて低減できる。これにより、走査線31の電位変動の際に、走査線31からの第2駆動線33に対する寄生容量C
2によるカップリングの影響を抑えることができるため、カップリングノイズ等によって生じる第2駆動線33の電位の揺れに起因する表示ムラを抑制することができる。
【0077】
(実施例2)
実施例2は、実施例1の変形例であり、スイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33の上層に固定電位の電源配線を形成する例である。実施例2に係る書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25のゲート配線構造の平面図を
図6Aに示し、
図6AのC−C線に沿った矢視断面図を
図6Bに示す。
【0078】
実施例2に係るゲート配線構造は、スイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33を、隣接する走査線31と異なる配線層に形成した上で、第2駆動線33の上層(本例では、第2配線層)に電源電圧V
ccpの電源配線36を形成した構成となっている。これにより、第2駆動線33とその上層の電源配線36との間に寄生容量C
3が形成されることになる。
【0079】
この実施例2に係るゲート配線構造によれば、実施例1の場合と同様に、走査線31からの第2駆動線33に対する寄生容量C
2によるカップリングの影響を抑えることができることに加えて、寄生容量C
3の作用によって第2駆動線33の電位をより安定化することができる。その結果、第2駆動線33の電位が、他のゲート配線からの影響を受け難くすることができるため、第2駆動線33の電位の揺れに起因する表示ムラを抑制することができる。
【0080】
(実施例3)
実施例3は、
実施例1の変形例であり、スイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33の下層に固定電位の電源配線を形成する例である。実施例3に係る書込みトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25のゲート配線構造の平面図を
図7Aに示し、
図7AのD−D線に沿った矢視断面図を
図7Bに示す。
【0081】
実施例3に係るゲート配線構造は、スイッチングトランジスタ25のゲート配線である第2駆動線33を、隣接する走査線31と異なる配線層に形成した上で、第2駆動線33の下層(本例では、第1配線層)に電源電圧V
ccpの電源配線36を形成した構成となっている。これにより、第2駆動線33とその下層の電源配線36との間に寄生容量C
3が形成されることになる。
【0082】
この実施例3に係るゲート配線構造によっても、実施例2の場合と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、実施例1の場合と同様に、走査線31からの第2駆動線33に対する寄生容量C
2によるカップリングの影響を抑えることができることに加えて、寄生容量C
3の作用によって第2駆動線33の電位をより安定化することができる。その結果、第2駆動線33の電位が、他のゲート配線からの影響を受け難くすることができるため、第2駆動線33の電位の揺れに起因する表示ムラを抑制することができる。
【0083】
<変形例>
以上、本開示の技術について、好ましい実施例に基づき説明したが、本開示の技術は当該実施例に限定されるものではない。上記の各実施例において説明した表示装置の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、上記の各実施例では、他のトランジスタのゲート配線として書込みトランジスタ23のゲート配線(走査線31)を例示したが、これに限られるものではない。例えば、
図2に示す画素回路にあっては、発光制御トランジスタ24のゲート配線(第1の駆動線32)を、他のトランジスタのゲート配線とすることができる。
【0084】
<本開示の電子機器>
以上説明した本開示の表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示する、あらゆる分野の電子機器の表示部(表示装置)として用いることができる。電子機器としては、テレビジョンセット、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機等の携帯端末装置、ヘッドマウントディスプレイ等を例示することができる。但し、これらに限られるものではない。
【0085】
このように、あらゆる分野の電子機器において、その表示部として本開示の表示装置を用いることにより、以下のような効果を得ることができる。すなわち、本開示の表示装置によれば、スイッチングトランジスタ25のゲート配線の電位の揺れに起因する表示ムラを抑制することができる。従って、本開示の表示装置を、電子機器の表示部(表示装置)として用いることにより、表示画像の表示品質を向上できる。
【0086】
本開示の表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。一例として、画素アレイ部に透明なガラス等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。尚、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やフレキシブルプリントサーキット(FPC)などが設けられていてもよい。以下に、本開示の表示装置を用いる電子機器の具体例として、デジタルスチルカメラ及びヘッドマウントディスプレイを例示する。但し、ここで例示する具体例は一例に過ぎず、これらに限られるものではない。
【0087】
[具体例1]
図8は、レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラの外観図であり、
図8Aにその正面図を示し、
図8Bにその背面図を示す。レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラは、例えば、カメラ本体部(カメラボディ)111の正面右側に交換式の撮影レンズユニット(交換レンズ)112を有し、正面左側に撮影者が把持するためのグリップ部113を有している。
【0088】
そして、カメラ本体部111の背面略中央にはモニタ114が設けられている。モニタ114の上部には、電子ビューファインダ(接眼窓)115が設けられている。撮影者は、電子ビューファインダ115を覗くことによって、撮影レンズユニット112から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことが可能である。
【0089】
上記の構成のレンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラにおいて、その電子ビューファインダ115として本開示の表示装置を用いることができる。すなわち、本例に係るレンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラは、その電子ビューファインダ115として本開示の表示装置を用いることによって作製される。
【0090】
[具体例2]
図9は、ヘッドマウントディスプレイの外観図である。ヘッドマウントディスプレイは、例えば、眼鏡形の表示部211の両側に、使用者の頭部に装着するための耳掛け部212を有している。このヘッドマウントディスプレイにおいて、その表示部211として本開示の表示装置を用いることができる。すなわち、本例に係るヘッドマウントディスプレイは、その表示部211として本開示の表示装置を用いることによって作製される。
【0091】
<本開示がとることができる構成>
尚、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
[1]発光部及び複数のトランジスタを含む画素が行列状に2次元配置され、複数のトランジスタのゲート配線が画素配列の行方向に沿って形成されており、
複数のトランジスタのうち、発光部のアノード電極に接続されたスイッチングトランジスタのゲート配線は、他のトランジスタのゲート配線と異なる配線層に形成されている、
表示装置。
[2]スイッチングトランジスタは、発光部のアノード電極の電位を制御することによって発光部を非発光状態にする、
上記[1]に記載の表示装置。
[3]スイッチングトランジスタのゲート配線の上層又は下層には、固定電位の電源配線が形成されている、
上記[1]又は[2]に記載の表示装置。
[4]他のトランジスタは、発光部を駆動する駆動トランジスタのゲート電極に対して、映像信号を書き込む書込みトランジスタである、
上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の表示装置。
[5]画素では、スイッチングトランジスタが導通状態となる発光部の非発光期間に、駆動トランジスタの特性のバラツキを補正するための処理が行われる、
上記[4]に記載の表示装置。
[6]画素が2次元配置される基板は、半導体基板である、
上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の表示装置。
[7]発光部は、有機エレクトロルミネッセンス素子から構成されている、
上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の表示装置。
[8]発光部及び複数のトランジスタを含む画素が行列状に2次元配置され、複数のトランジスタのゲート配線が画素配列の行方向に沿って形成されており、
複数のトランジスタのうち、発光部のアノード電極に接続されたスイッチングトランジスタのゲート配線は、他のトランジスタのゲート配線と異なる配線層に形成されている、
表示装置を有する電子機器。