(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置およびその製造方法を説明する。以下では、フレキシブル基板を有するOLED表示装置を例示するが、本発明の実施形態は、有機EL表示装置に限られず、有機EL照明装置などの他の有機ELデバイスであってもよく、以下に例示する実施形態に限定されない。
【0030】
まず、
図1(a)および(b)を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の基本的な構成を説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100のアクティブ領域の模式的な部分断面図であり、
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。
【0031】
OLED表示装置100は、複数の画素を有し、画素ごとに少なくとも1つの有機EL素子(OLED)を有している。ここでは、簡単のために、1つのOLEDに対応する構造について説明する。
【0032】
図1(a)に示す様に、OLED表示装置100は、フレキシブル基板(以下、単に「基板」ということがある。)1と、基板1上に形成されたTFTを含む回路(「駆動回路」または「バックプレーン回路」ということがある。)2と、回路2上に形成された無機保護層(第1無機保護層)2Paと、無機保護層2Pa上に形成された有機平坦化層2Pbと、有機平坦化層2Pb上に形成されたOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10とを有している。以下、基板1と、基板1上に形成された回路2、無機保護層2Pa、有機平坦化層2PbおよびOLED3を素子基板20ということがある。すなわち、基板1と、基板1上のTFE構造10よりも基板1に近い側に配置された構成要素をまとめて、素子基板という。
【0033】
OLED3は例えばトップエミッションタイプである。OLED3の最上部は、例えば、上部電極またはキャップ層(屈折率調整層)である。複数のOLED3が配列されている層をOLED層3ということがある。TFE構造10の上にはオプショナルな偏光板4が配置されている。なお、回路2とOLED層3とが一部の構成要素を共有してもよい。また、例えば、TFE構造10と偏光板4との間にタッチパネル機能を担う層が配置されてもよい。すなわち、OLED表示装置100は、オンセル型のタッチパネル付き表示装置に改変され得る。
【0034】
基板1は、例えば厚さが15μmのポリイミドフィルムである。TFTを含む回路2の厚さは例えば4μmである。無機保護層2Paは、例えばSiN
x層(500nm)/SiO
2層(100nm)(上層/下層)である。無機保護層2Paは、この他、例えば、SiO
2層/SiN
x層/SiO
2層という3層の構成でも良く、各層の厚さは、例えば200nm/300nm/100nmである。また、無機保護層2Paは、SiN
x層(200nm)の単層であってもよい。有機平坦化層2Pbは、例えば厚さが4μmのアクリル樹脂層、エポキシ樹脂層またはポリイミド層である。有機平坦化層2Pbは、感光性を有しない樹脂を用いて形成することが好ましいが、感光性樹脂を用いて形成してもよい。OLED3の厚さは例えば1μmである。TFE構造10の厚さは例えば2.5μm以下である。
【0035】
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。OLED3の直上に第1無機バリア層(例えばSiN
x層)12が形成されており、第1無機バリア層12の上に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14が形成されており、有機バリア層14の上に第2無機バリア層(例えばSiN
x層)16が形成されている。
【0036】
例えば、第1無機バリア層12は例えば厚さが1.5μmのSiN
x層であり、第2無機バリア層16は例えば厚さが800nmのSiN
x層であり、有機バリア層14は例えば厚さが100nm未満のアクリル樹脂層である。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の厚さはそれぞれ独立に、200nm以上1500nm以下であり、有機バリア層14の厚さは50nm以上200nm未満である。TFE構造10の厚さは400nm以上3μm未満であることが好ましく、400nm以上2.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
TFE構造10は、OLED表示装置100のアクティブ領域(
図2中のアクティブ領域R1参照)を保護するように形成されており、少なくともアクティブ領域R1には、上述したように、OLED3に近い側から順に、第1無機バリア層12、有機バリア層14、および第2無機バリア層16を有している。なお、有機バリア層14は、アクティブ領域R1の全面を覆う膜として存在しているのではなく、開口部を有している。有機バリア層14の内、開口部を除く、実際に有機膜が存在する部分を「中実部」ということにする。有機バリア層14は、例えば、特許文献1または2に記載の方法、あるいは、後述する成膜装置200を用いて形成することができる。
【0038】
また、「開口部」(「非中実部」ということもある。)は、中実部で包囲されている必要はなく、切欠きなどを含み、開口部においては、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している。以下において、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分を「無機バリア層接合部」という。
【0039】
次に、
図2および
図3を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100Aの構造および製造方法を説明する。
【0040】
図2に本発明の実施形態によるOLED表示装置100Aの模式的な平面図を示す。また、
図3(a)〜(c)および
図4(a)〜(d)を参照して、OLED表示装置100Aの断面構造を説明する。
図3(a)および(b)はOLED表示装置100Aの模式的な断面図であり、
図3(a)は
図2中の3A−3A'線に沿った断面図であり、
図3(b)は
図2中の3B−3B'線に沿った断面図である。
図3(c)は各層の側面のテーパー角θを示す断面図である。
図4(a)〜(d)はOLED表示装置100Aの模式的な断面図であり、
図4(a)は
図2中の4A−4A'線に沿った断面図であり、
図4(b)は
図2中の4B−4B'線に沿った断面図であり、
図4(c)は
図2中の4C−4C'線に沿った断面図であり、
図4(d)は
図2中の4D−4D'線に沿った断面図である。
【0041】
まず、
図2を参照する。基板1上に形成されている回路2は、複数のTFT(不図示)と、それぞれが複数のTFT(不図示)のいずれかに接続された複数のゲートバスライン(不図示)および複数のソースバスライン(不図示)とを有している。回路2は、複数のOLED3を駆動するための公知の回路であってよい。複数のOLED3は、回路2が有する複数のTFTのいずれかに接続されている。OLED3も公知のOLEDであってよい。
【0042】
回路2は、さらに、複数のOLED3が配置されているアクティブ領域(
図2中の破線で囲まれた領域)R1の外側の周辺領域R2に配置された複数の端子34と、複数の端子34と複数のゲートバスラインまたは複数のソースバスラインのいずれかとを接続する複数の引出し配線32を有している。複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスライン、複数の引出し配線32および複数の端子34を含む回路2全体を駆動回路層2ということがある。また、駆動回路層2の内で、アクティブ領域R1内に形成されている部分を駆動回路層2Aと表記する。
【0043】
なお、
図2等において、駆動回路層2の構成要素として、引出し配線32および/または端子34だけを図示することがあるが、駆動回路層2は、引出し配線32および端子34を含む導電層だけでなく、さらなる1以上の導電層、1以上の絶縁層および1以上の半導体層を有している。駆動回路層2に含まれる導電層、絶縁層、半導体層の構成は、例えば、後に
図9(a)および(b)に例示するTFTの構成によって変わり得る。また、基板1上に、駆動回路層2の下地膜として、絶縁膜(ベースコート)が形成されてもよい。
【0044】
基板1の法線方向から見たとき、無機保護層2Paが形成された領域内に、有機平坦化層2Pbが形成されており、有機平坦化層2Pbが形成された領域内に、アクティブ領域R1(2A、3)が配置されている。TFE構造10の外縁は、複数の引出し配線32と交差し、かつ、有機平坦化層2Pbの外縁と無機保護層2Paの外縁との間に存在する。したがって、有機平坦化層2Pbは、OLED層3とともに、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲されている(
図3(b)および
図4(b)参照)。無機保護層2Paは、例えば、マスク(例えばメタルマスク)を用いたプラズマCVD法で、少なくとも複数の端子34を露出するように形成される。あるいは、一旦、端子34を覆うように無機保護膜をプラズマCVD法で形成した後、フォトリソグラフィプロセス(ドライエッチング工程を含む)でパターニングし、端子34を露出させる開口部を形成することによって、無機保護層2Paを得てもよい。なお、後述するように、有機平坦化層2Pb上に第2無機保護層2Pa2を形成する場合(
図11(b)参照)、コンタクトホールの形成を含むパターニングは、無機保護膜2Pa(第1無機保護膜2Pa1)、有機平坦化膜2Pbおよび第2無機保護層2Pa2に対して、一括して行われることが好ましい。
【0045】
無機保護層2Paは、駆動回路層2を保護する。有機平坦化層2Pbは、OLED層3が形成される下地の表面を平坦化する。有機平坦化層2Pbは、有機バリア層14と同様に、無機保護層2Paや無機バリア層12、16に比べて水蒸気バリア性が低い。したがって、
図6〜
図8に示す比較例のOLED表示装置100Cの有機平坦化層2Pbcのように、その一部が大気(周辺雰囲気)に晒されていると、そこから水分を吸収する。その結果、有機平坦化層2Pbcが大気中の水蒸気をアクティブ領域R1内へ導く経路となってしまう。上述した様に、実施形態によるOLED表示装置100においては、有機平坦化層2Pbは、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さているので、有機平坦化層2Pbから水分がアクティブ領域R1内に導かれることが防止される。
【0046】
有機平坦化層2Pbは、有機樹脂から形成されている。有機樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を好適に用いることができる。有機平坦化層2Pbは、種々の塗布法や印刷法を用いて形成された有機樹脂膜をパターニングすることによって得られる。本発明によるある実施形態では、後述するように、有機樹脂膜の表面に、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP、以下、「CMP」という。)を施す。CMPは、有機樹脂膜にコンタクトホール等を形成する前に行うことが好ましい。有機樹脂膜にコンタクトホールを形成した後にCMPを行うと、コンタクトホール内の研磨剤を十分に除去できないおそれがあるからである。
【0047】
有機樹脂膜は、例えば、感光性を有しない樹脂を用いて形成される。ただし、感光性を有する樹脂を用いてもよい。感光性樹脂としては、ポジ型の感光性樹脂を用いることが好ましい。感光性樹脂を用いると、フォトリソグラフィプロセスで、有機樹脂膜を所定の領域内にのみ形成することができる。例えば、素子基板上のほぼ全面に感光性樹脂を付与した後、感光性樹脂を露光・現像することによって、素子基板の周辺部を除く所定の領域(例えば、
図11(c)参照)に有機樹脂膜を形成した後、CMPを施し、コンタクトホール等は、CMPの後に、別途形成すればよい。あるいは、素子基板上のほぼ全面に感光性樹脂を付与した後、CMPを施し、その後に、感光性樹脂を露光・現像することによって、例えば、素子基板の周辺部の感光性樹脂を除去するとともに、コンタクトホール等を形成してもよい。このように、未露光の感光性樹脂に対して、CMPを施す際は、感光性樹脂の、CMPに用いる薬液に対する耐性が高いことが好ましく、この観点から、ポジ型が好ましい。なお、後述するように、有機平坦化層2Pb上に第2無機保護層2Pa2を形成する場合(
図11(b)参照)、コンタクトホールの形成は、無機保護膜2Pa(第1無機保護膜2Pa1)、有機平坦化膜2Pbおよび第2無機保護層2Pa2に対して、一括して行われることが好ましい。
【0048】
有機平坦化層2Pb上に、OLED層3が形成される。OLED3の下部電極や有機層(有機EL層ともいう。少なくとも有機発光層を含む。)に高い平坦性が求められる。平坦性が低いと、例えば、OLED3の発光効率が低下する。有機平坦化層2Pbは、素子基板(製造途中では簡単のために素子基板と呼ぶことにする。)の表面に付与された液状の有機樹脂材料(溶剤を含み得る)から形成されるので、有機平坦化層2Pbの下地の凹凸(段差)を吸収し、平坦な表面を形成することができる。しかしながら、液状の樹脂材料から形成された有機樹脂膜の表面は、算術平均粗さRaが100nmを超えて300nm程度までの粗さ(「うねり」と表現され得る)を有している(
図11(a)参照)。このような表面粗さを有する有機平坦化層2Pb上にOLED3を形成すると、発光効率を十分に向上させられない。例えば、微小共振器構造を採用しても、その効果を十分に発現できないという問題がある。
【0049】
そこで、本発明による実施形態においては、上述のようにして形成された有機樹脂膜の表面に、CMPを施すことによって、有機平坦化層2Pbの算術平均粗さRaを50nm以下、好ましくは30nm以下に制御している。算術平均粗さRaは小さい方が好ましく、下限値に制限はないが、CMPに要するコストや時間と効果との関係を考慮すると、算術平均粗さRaは、10nm以上であってよく、20nm以上であってもよい。
【0050】
具体的には、中性のセリア(CeO
2)系の研磨剤を含むスラリー、または、ヒュームドシリカ系、コロイダルシリカ系の研磨剤を含むスラリーを用いてCMPを施せばよい。また、樹脂製の光学レンズ表面の研磨にも使用されるアルミナ(Al
2O
3)粉末を含むスラリーを用いてもよい。研磨パッドの荷重は50g/cm
2以上150g/cm
2以下が好ましく、回転速度は20rpm以上40rpm以下が好ましい。研磨に要する時間は約30秒から約90秒である。
【0051】
本発明の実施形態によるOLED表示装置において、発光効率の低下を抑制すために必要な平滑化のレベルは、超LSIのフォトプロセスや光学レンズの表面に要求される平滑化のレベルに比べて、1桁程度低い(算術平均粗さRaの値は10倍程度大きい)ので、高分子材料(樹脂材料)のCMPに使われる公知の研磨剤を広く用いることができる。
【0052】
なお、表面粗さは、例えば、共焦点レーザー顕微鏡や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定され得る。測定範囲は画素の中心付近を含むことが好ましく、基準長は表面粗さに応じて適宜設定される。
【0053】
本明細書において、有機平坦化層2Pbによる平坦化と、CMPによる平坦化とを区別するために、CMPよる平坦化を「平滑化」と呼ぶことがある。
【0054】
有機平坦化層2Pbの表面を平滑化することによって、有機平坦化層2Pb上に形成されるOLED3の下部電極、有機層および上部電極を平滑にできるので、OLED表示装置の発光効率を向上させることができる。
【0055】
有機樹脂は、水分を含み易い。一方、上述した様に、OLED(特に有機発光層および陰極電極材料)は、水分の影響を受けて劣化しやすい。したがって、有機平坦化層2Pb上に、OLED層3を形成する前に、有機平坦化層2Pbに含まれる水分を除去するために、加熱(ベーク)することが好ましい。加熱温度は、例えば100℃以上(例えば1時間以上)が好ましく、250℃以上(例えば15分以上)がさらに好ましい。雰囲気は大気圧であってよい。減圧雰囲気で加熱すれば、加熱時間を短くすることができる。この加熱(ベーク)工程において熱劣化が生じないように、耐熱性の高い樹脂材料が好ましく、例えば、ポリイミドが好ましい。
【0056】
なお、有機平坦化層2Pbを形成した後、OLED層3を形成するまでに、素子基板が保管または運搬されることがある。すなわち、駆動回路層2、無機保護層2Paおよび有機平坦化層2Pbを形成した素子基板を作製した後、OLED層3を形成するまでに、時間が空く(例えば、1日以上数日間にわたって保管する)、あるいは、別の工場に移動することがある。この間に、有機平坦化層2Pbの表面が汚染されること、もしくは、移動の際にダストが付着することを防止する方法として、例えば、有機平坦化層2Pbを覆うポジ型のフォトレジスト膜を形成すればよい。このフォトレジスト膜は、フォトレジスト溶液を付与した後、プリベーク(溶剤の揮発除去:例えば約90℃以上約110℃以下の温度範囲で約5分〜約30分程度の加熱)を行うことによって形成することが好ましい。保管や移動の後、OLED層3を形成する直前に、フォトレジスト膜を除去することによって、有機平坦化層2Pbの清浄な表面を得ることができる。フォトレジスト膜の除去は、フォトレジスト膜の全面を露光した後、通常のポストベークを行うことなく、現像する、もしくはプリベークを行った後、全面露光をせずに剥離液で剥離することが好ましい。ポジ型のフォトレジスト膜を形成する材料としては、例えば、ポジ型フォトレジストである東京応化株式会社製の製品名OFPR−800を好適に用いることができる。
【0057】
なお、
図11(b)を参照して後述するように、OLED素子3を形成する過程で、バンク層が形成されることがある。バンク層は、下部電極を形成した後、有機層(有機EL層)を形成する前に形成される。バンク層は、有機樹脂(例えばポリイミド)で形成されるので、水分を含み易く、かつ、有機層に接触する。したがって、バンク層の水分を除去するために加熱することが好ましい。そこで、有機平坦化層2Pbを形成した後、下部電極の形成およびバンク層の形成を行った後で、上述の様に、素子基板の表面を保護するポジ型のフォトレジスト膜を形成してもよい。必要な保管および/また運搬の後、上述の様にフォトレジスト膜を除去し、有機層の形成の直前に、加熱することによって、有機平坦化層2Pbおよびバンク層に含まれる水分を除去する。このように、有機平坦化層2Pbに含まれる水分を除去するための加熱工程と、バンク層に含まれる水分を除去するための加熱工程とを兼ねてもよい。もちろん、上述した様に、有機平坦化層2Pbをポジ型のフォトレジスト膜で保護し、ポジ型のフォトレジスト膜を除去した後、有機平坦化層2Pbに含まれる水分を除去するための加熱工程を行い、その後、下部電極およびバンク層を形成した後、有機層を形成する前に、バンク層に含まれる水分を除去するための加熱工程を行ってもよい。
【0058】
次に、
図3(a)〜(c)および
図4(a)〜(d)を参照して、OLED表示装置100Aの断面構造をさらに詳細に説明する。
【0059】
図3(a)、(b)および
図4(a)、(b)に示す様に、TFE構造10Aは、OLED3上に形成された第1無機バリア層12と、第1無機バリア層12に接する有機バリア層14と、有機バリア層14に接する第2無機バリア層16とを有している。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、SiN
x層であり、マスクを用いたプラズマCVD法で、アクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される。
【0060】
有機バリア層14は、例えば、上記特許文献2または3に記載の方法によって形成され得る。例えば、チャンバー内で、有機材料(例えばアクリルモノマー)の蒸気または霧状の有機材料を、室温以下の温度に維持された素子基板上に供給し、素子基板上で凝縮させ、液状になった有機材料の毛細管現象または表面張力によって、第1無機バリア層12の凸部の側面と平坦部との境界部に偏在させる。その後、有機材料に例えば紫外線を照射することによって、凸部の周辺の境界部に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14の中実部を形成する。この方法によって形成される有機バリア層14は、平坦部には中実部が実質的に存在しない。有機バリア層の形成方法に関して、特許文献2および3の開示内容を参考のために本明細書に援用する。
【0061】
有機バリア層14はまた、成膜装置200を用いて形成する樹脂層の最初の厚さを調整する(例えば、100nm未満とする)、および/または、一旦形成した樹脂層をアッシング処理することによって、形成することもできる。アッシング処置は、後に詳述するように、例えば、N
2O、O
2およびO
3の内の少なくとも1種のガスを用いたプラズマアッシングによって行われ得る。
【0062】
図3(a)は、
図2中の3A−3A'線に沿った断面図であり、パーティクルPを含む部分を示している。パーティクルPは、OLED表示装置の製造プロセス中に発生する微細なゴミで、例えば、ガラスの微細な破片、金属の粒子、有機物の粒子である。マスク蒸着法を用いると、特にパーティクルが発生しやすい。
【0063】
図3(a)に示す様に、有機バリア層(中実部)14は、パーティクルPの周辺にのみ形成され得る。これは、第1無機バリア層12を形成した後に付与されたアクリルモノマーが、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面(テーパー角θが90°以上)の周辺に凝縮され、偏在するからである。第1無機バリア層12の平坦部上は、有機バリア層14の開口部(非中実部)となっている。
【0064】
パーティクル(例えば直径が約1μm以上)Pが存在すると、第1無機バリア層12にクラック(欠陥)12cが形成されることがある。これは、パーティクルPの表面から成長するSiN
x層12aと、OLED3の表面の平坦部分から成長するSiN
x層12bとが衝突(インピンジ)するために生じたと考えられる。このようなクラック12cが存在すると、TFE構造10Aのバリア性が低下する。
【0065】
OLED表示装置100AのTFE構造10Aでは、
図3(a)に示す様に、有機バリア層14が、第1無機バリア層12のクラック12cを充填するように形成され、かつ、有機バリア層14の表面は、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面と、OLED3の平坦部上の第1無機バリア層12bとの表面を連続的に滑らかに連結する。したがって、パーティクルP上の第1無機バリア層12および有機バリア層14上に形成される第2無機バリア層16に欠陥が形成されることなく、緻密な膜が形成される。このように、有機バリア層14によって、パーティクルPが存在しても、TFE構造10Aのバリア性を保持することができる。
【0066】
次に、
図3(b)および
図4(a)〜(d)を参照して、引出し配線32および端子34上の断面構造を説明する。
【0067】
図3(b)に示す様に、基板1上に、引出し配線32および端子34が一体的に形成されており、端子34を露出するように、引出し配線32上に無機保護層2Paが形成されている。無機保護層2Pa上には有機平坦化層2Pbが形成されており、有機平坦化層2Pb上には、OLED層3が形成されている。TFE構造10Aは、OLED層3および有機平坦化層2Pbを覆うように形成されており、OLED層3および有機平坦化層2Pbは、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さている。なお、TFE構造10Aの第1無機バリア層12と第2無機バリア層16との間の有機バリア層(中実部)14は、パーティクルなどの凸部の周囲にのみ形成されるので、ここでは図示されていない。有機バリア層(中実部)14は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している無機バリア層接合部によって包囲されている。
【0068】
図4(a)に示すように、アクティブ領域R1に近い領域(
図2中の4A−4A'線に沿った断面)においては、引出し配線32上には、無機保護層2Pa、有機平坦化層2PbおよびTFE構造10Aが形成されている。
【0069】
図4(b)に示すように、
図2中の4B−4B'線に沿った断面においては、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触しており、有機平坦化層2Pbは、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さている(
図2、
図3(b)参照)。
【0070】
図4(c)に示すように、端子34に近い領域においては、引出し配線32上には無機保護層2Paだけが形成されている。
【0071】
図4(d)に示すように、端子34は、無機保護層2Paからも露出されており、外部の回路(例えば、FPC(Flexible Printed Circuits))との電気的な接続に用いられる。
【0072】
図4(b)〜(d)に示した部分を含む領域は、有機平坦化層2Pbに覆われていないので、TFE構造10Aの有機バリア層14を形成する過程で、有機バリア層(中実部)が形成され得る。例えば、引出し配線32の線幅方向に平行な断面形状における側面が90°以上のテーパー角θを有していると、引出し配線32の側面に沿って有機バリア層が形成され得る。しかしながら、
図4(b)〜(d)に示す様に、実施形態によるOLED表示装置100Aは、少なくとも、これらの領域において、引出し配線32および端子34の断面形状における側面のテーパー角θは90°未満とされており、光硬化性樹脂が偏在することが無い。したがって、引出し配線32および端子34の側面に沿って有機バリア層(中実部)が形成されることがない。
【0073】
ここで、
図3(c)を参照して、各層の側面のテーパー角θを説明する。
図3(c)は各層の側面のテーパー角θを示す断面図であり、例えば、
図4(b)に示す断面図に対応する。
図3(c)に示す様に、引出し配線32の幅方向に平行な断面形状における側面のテーパー角θをθ(32)と表し、他の層の側面のテーパー角θも同様に、θ(構成要素の参照符号)で表すことにする。
【0074】
そうすると、引出し配線32の上に形成される無機保護層2Pa、無機保護層2Paの上に形成されるTFE構造10Aの第1無機バリア層12の側面および第2無機バリア層16の側面の各テーパー角θは、θ(32)≧θ(2Pa)≧θ(12)≧θ(16)の関係を満足する。したがって、引出し配線32の側面のテーパー角θ(32)が90°未満であれば、無機保護層2Paの側面のテーパー角θ(2Pa)および第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(12)も90°未満となる。
【0075】
側面のテーパー角θが90°以上であると、特許文献2または3に記載の有機バリア層の形成方法では、側面と平坦な表面との境界(90°以下の角を成す)に沿って、有機材料(例えばアクリルモノマー)の蒸気または霧状の有機材料が凝縮し、有機バリア層(中実部)が形成されることになる。そうすると、例えば、引出し配線に沿って形成された有機バリア層(中実部)が大気中の水蒸気をアクティブ領域内へ導く経路となってしまう。
【0076】
例えば、
図5(a)の比較例のOLED表示装置100B1における
図4(b)に対応する模式的な断面図に示すように、引出し配線32B1の側面のテーパー角θ(32B1)および第1無機バリア層12B1の側面のテーパー角θ(12B1)が90°以上であると、TFE構造10B1の第1無機バリア層12B1の側面に沿って、第1無機バリア層12B1と第2無機バリア層16B1との間に有機バリア層(中実部)14B1が形成される。なお、OLED表示装置100B1は、例えば、実施形態によるOLED表示装置100における無機保護層2Paを省略し、かつ、引出し配線32の側面のテーパー角θ(32)および第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(12)を90°以上に改変したものであってよい。
【0077】
また、
図5(b)の比較例のOLED表示装置100B2における
図4(b)に対応する模式的な断面図に示すように、引出し配線32B2、無機保護層2PaB2および第1無機バリア層12B2の側面のテーパー角θ(32B2)、θ(2PaB2)およびθ(12B2)が90°以上であると、TFE構造10B2の第1無機バリア層12B2の側面に沿って、第1無機バリア層12B2と第2無機バリア層16B2との間に有機バリア層(中実部)14B2が形成される。なお、OLED表示装置100B2は、例えば、実施形態によるOLED表示装置100Aにおける引出し配線32の側面テーパー角θ(32)および第1無機バリア層12の側面テーパー角θ(12)を90°以上に改変したものであってよい。
【0078】
OLED表示装置100B2は、OLED表示装置100B1と異なり、無機保護層2PaB2を有しているので、第1無機バリア層12B2の側面テーパー角θ(12B2)は、OLED表示装置100B1の第1無機バリア層12B1の側面テーパー角θ(12B1)よりも小さくなりやすい。
【0079】
図4(b)〜(d)に示した本発明の実施形態によるOLED表示装置100Aにおける引出し配線32、無機保護層2Paおよび第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(32)、θ(2Pa)およびθ(12)はいずれも90°未満であり、これらの側面に沿って有機バリア層14が形成されることが無い。したがって、アクティブ領域R1内に有機バリア層(中実部)14を介して大気中の水分が到達することが無く、優れた耐湿信頼性を有し得る。ここでは、テーパー角θ(32)、θ(2Pa)およびθ(12)がいずれも90°未満である例を示したが、これに限られず、少なくとも、有機バリア層14の直下の表面を構成する第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(12)が90°未満であれば、
図4(b)に示した積層構造(無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触している部分(有機平坦化層2Pbが存在しない)、および第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分(有機バリア層14が存在しない)が形成されるので、アクティブ領域R1内に、有機平坦化層2Pbまたは有機バリア層14を介して大気中の水分が侵入することを抑制・防止することができる。また、無機保護層2Paを有することによって、第1無機バリア層12のテーパー角θ(12)を低減することができるので、引出し配線32のテーパー角θ(32)を比較的大きくしても(例えば90°)、第1無機バリア層12のテーパー角θ(12)を90°未満にすることができる。すなわち、引出し配線32のテーパー角θ(32)を90°または90°に近づけることができるので、引出し配線32のL/Sを小さくすることができるという利点が得られる。
【0080】
なお、側面のテーパー角θが70°以上90°未満の範囲では、側面に沿って有機バリア層(中実部)14が形成されることがある。もちろん、アッシング処理を行えば、傾斜した側面に沿って偏在した樹脂を除去することができるが、アッシング処理に要する時間が長くなる。例えば、平坦な表面上に形成された樹脂を除去した後も長時間のアッシング処理が必要になる。あるいは、パーティクルPの周辺に形成される有機バリア層(中実部)が過度にアッシング(除去)される結果、有機バリア層を形成した効果が十分に発揮されないという問題が発生することがある。これを抑制・防止するためには、第1無機バリア層12のテーパー角θ(12)を70°未満とすることが好ましく、60°未満とすることがさらに好ましい。
【0081】
次に、
図6から
図8を参照して、比較例のOLED表示装置100Cの構造を説明する。
図6は、OLED表示装置100Cの模式的な平面図を示す。
図7(a)および(b)はOLED表示装置100Cの模式的な断面図であり、
図7(a)は
図6中の7A−7A'線に沿った断面図であり、
図7(b)は
図6中の7B−7B'線に沿った断面図である。
図8(a)〜(c)はOLED表示装置100Cの模式的な断面図であり、
図8(a)は
図6中の8A−8A'線に沿った断面図であり、
図8(b)は
図6中の8B−8B'線に沿った断面図であり、
図8(c)は
図6中の8C−8C'線に沿った断面図である。
【0082】
OLED表示装置100Cは、無機保護層2Paを有しない点、および有機平坦化層2Pbcが、TFE構造10Cに覆われていない領域まで延設されている点で、実施形態によるOLED表示装置100と異なる。なお、OLED表示装置100Aが有する構成要素と実質的に同じ構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略することがある。
【0083】
例えば、
図6、
図7(b)および
図8(b)から明らかなように、有機平坦化層2Pbcの一部が大気(周辺雰囲気)に晒されている。そうすると、有機平坦化層2Pbcは、大気に晒されている部分から水分を吸収し、大気中の水蒸気をアクティブ領域R1内へ導く経路となってしまう。これに対し、実施形態によるOLED表示装置100Aは、
図3(b)および
図4(b)に示したように、有機平坦化層2Pbは、OLED層3とともに、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さている。したがって、比較例のOLED表示装置100Cが有する上記の問題を解決することができる。
【0084】
次に、
図9および
図10を参照して、OLED表示装置100Aに用いられるTFTの例と、TFTを作製する際のゲートメタル層およびソースメタル層を用いて形成した引出し配線および端子の例を説明する。以下で説明する、TFT、引出し配線および端子の構造は、上述した実施形態のOLED表示装置100Aに用いることができる。
【0085】
高精細の中小型用OLED表示装置には、移動度が高い、低温ポリシリコン(「LTPS」と略称する。)TFTまたは酸化物TFT(例えば、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素)を含む4元系(In−Ga−Zn−O系)酸化物TFT)が好適に用いられる。LTPS−TFTおよびIn−Ga−Zn−O系TFTの構造および製造方法はよく知られているので、以下では簡単な説明に留める。
【0086】
図9(a)は、LTPS−TFT2
PTの模式的な断面図であり、TFT2
PTはOLED表示装置100Aの回路2に含まれ得る。LTPS−TFT2
PTは、トップゲート型のTFTである。
【0087】
TFT2
PTは、基板(例えばポリイミドフィルム)1上のベースコート2
Pp上に形成されている。上記の説明では省略したが、基板1上には無機絶縁体で形成されたベースコートを形成することが好ましい。
【0088】
TFT2
PTは、ベースコート2
Pp上に形成されたポリシリコン層2
Pseと、ポリシリコン層2
Pse上に形成されたゲート絶縁層2
Pgiと、ゲート絶縁層2
Pgi上に形成されたゲート電極2
Pgと、ゲート電極2
Pg上に形成された層間絶縁層2
Piと、層間絶縁層2
Pi上に形成されたソース電極2
Pssおよびドレイン電極2
Psdとを有している。ソース電極2
Pssおよびドレイン電極2
Psdは、層間絶縁層2
Piおよびゲート絶縁層2
Pgiに形成されたコンタクトホール内で、ポリシリコン層2
Pseのソース領域およびドレイン領域にそれぞれ接続されている。
【0089】
ゲート電極2
Pgはゲートバスラインと同じゲートメタル層に含まれ、ソース電極2
Pssおよびドレイン電極2
Psdはソースバスラインと同じソースメタル層に含まれる。ゲートメタル層およびソースメタル層を用いて、引出し配線および端子が形成される(
図10を参照して後述する)。
【0090】
TFT2
PTは、例えば、以下の様にして作製される。
【0091】
基板1として、例えば、厚さが15μmのポリイミドフィルムを用意する。
【0092】
ベースコート2
Pp(SiO
2膜:250nm/SiN
x膜:50nm/SiO
2膜:500nm(上層/中間層/下層))およびa−Si膜(40nm)をプラズマCVD法で成膜する。
【0093】
a−Si膜の脱水素処理(例えば450℃、180分間アニール)を行う。
【0094】
a−Si膜をエキシマレーザーアニール(ELA)法でポリシリコン化する。
【0095】
フォトリソグラフィ工程でa−Si膜をパターニングすることによって活性層(半導体島)を形成する。
【0096】
ゲート絶縁膜(SiO
2膜:50nm)をプラズマCVD法で成膜する。
【0097】
活性層のチャネル領域にドーピング(B
+)を行う。
【0098】
ゲートメタル(Mo:250nm)をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ゲート電極2
Pgおよびゲートバスライン等を形成する)。
【0099】
活性層のソース領域およびドレイン領域にドーピング(P
+)を行う。
【0100】
活性化アニール(例えば、450℃、45分間アニール)を行う。このようにしてポリシリコン層2
Pseが得られる。
【0101】
層間絶縁膜(例えば、SiO
2膜:300nm/SiN
x膜:300nm(上層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。
【0102】
ゲート絶縁膜および層間絶縁膜にコンタクトホールをドライエッチングで形成する。このように、層間絶縁層2
Piおよびゲート絶縁層2
Pgiが得られる。
【0103】
ソースメタル(Ti膜:100nm/Al膜:300nm/Ti膜:30nm)をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ソース電極2
Pss、ドレイン電極2
Psdおよびソースバスライン等を形成する)。
【0104】
この後、上述した無機保護層2Pa(
図2および
図3参照)を例えばプラズマCVD法で形成する。
【0105】
図9(b)は、In−Ga−Zn−O系TFT2
OTの模式的な断面図であり、TFT2
OTはOLED表示装置100Aの回路2に含まれ得る。TFT2
OTは、ボトムゲート型のTFTである。
【0106】
TFT2
OTは、基板(例えばポリイミドフィルム)1上のベースコート2
Op上に形成されている。TFT2
OTは、ベースコート2
Op上に形成されたゲート電極2
Ogと、ゲート電極2
Og上に形成されたゲート絶縁層2
Ogiと、ゲート絶縁層2
Ogi上に形成された酸化物半導体層2
Oseと、酸化物半導体層2
Oseのソース領域上およびドレイン領域上にそれぞれ接続されたソース電極2
Ossおよびドレイン電極2
Osdとを有している。ソース電極2
Ossおよびドレイン電極2
Osdは、層間絶縁層2
Oiに覆われている。
【0107】
ゲート電極2
Ogはゲートバスラインと同じゲートメタル層に含まれ、ソース電極2
Ossおよびドレイン電極2
Osdはソースバスラインと同じソースメタル層に含まれる。ゲートメタル層およびソースメタル層を用いて、引出し配線および端子が形成され、
図10を参照して後述する構造を有し得る。
【0108】
TFT2
OTは、例えば、以下の様にして作製される。
【0109】
基板1として、例えば、厚さが15μmのポリイミドフィルムを用意する。
【0110】
ベースコート2
Op(SiO
2膜:250nm/SiN
x膜:50nm/SiO
2膜:500nm(上層/中間層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。
【0111】
ゲートメタル(Cu膜:300nm/Ti膜:30nm(上層/下層))をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ゲート電極2
Ogおよびゲートバスライン等を形成する)。
【0112】
ゲート絶縁膜(SiO
2膜:30nm/SiN
x膜:350nm(上層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。
【0113】
酸化物半導体膜(In−Ga−Zn−O系半導体膜:100nm)をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ウエットエッチング工程を含む)でパターニングすることによって、活性層(半導体島)を形成する。
【0114】
ソースメタル(Ti膜:100nm/Al膜:300nm/Ti膜:30nm(上層/中間層/下層))をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ソース電極2
Oss、ドレイン電極2
Osdおよびソースバスライン等を形成する)。
【0115】
活性化アニール(例えば、300℃、120分間アニール)を行う。このようにして酸化物半導体層2
Oseが得られる。
【0116】
この後、保護膜として、層間絶縁層2
Oi(例えば、SiN
x膜:300nm/SiO
2膜:300nm(上層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。この層間絶縁層2
Oiは、上述した無機保護層2Pa(
図2および
図3参照)を兼ねることができる。もちろん、層間絶縁層2
Oiの上に、さらに無機保護層2Paを形成してもよい。
【0117】
次に、
図10(a)〜(c)を参照して、実施形態による他のOLED表示装置の構造を説明する。このOLED表示装置の回路(バックプレーン)2は、
図9(a)に示したTFT2
PTまたは
図9(b)に示したTFT2
OTを有し、TFT2
PTまたはTFT2
OTを作製する際のゲートメタル層およびソースメタル層を用いて引出し配線32Aおよび端子34Aが形成されている。
図10(a)〜(c)はそれぞれ
図4(b)〜(d)に対応し、対応する構成要素の参照符号に「A」を付すことにする。また、
図10中のベースコート2pは、
図9(a)中のベースコート2
Ppおよび
図9(b)中のベースコート2
Opに対応し、
図10中のゲート絶縁層2giは、
図9(a)中のゲート絶縁層2
Pgiおよび
図9(b)中のゲート絶縁層2
Ogiに対応し、
図10中の層間絶縁層2iは、
図9(a)中の層間絶縁層2
Piおよび
図9(b)中の層間絶縁層2
Oiにそれぞれ対応する。
【0118】
図10(a)〜(c)に示す様に、ゲートメタル層2gおよびソースメタル層2sは、基板1上に形成されたベースコート2p上に形成されている。
図3および
図4では省略したが、基板1上には無機絶縁体で形成されたベースコート2pを形成することが好ましい。
【0119】
図10(a)〜(c)に示すように、引出し配線32Aおよび端子34Aは、ゲートメタル層2gとソースメタル層2sとの積層体として形成されている。引出し配線32Aおよび端子34Aのゲートメタル層2gで形成された部分は、例えばゲートバスラインと同じ断面形状を有し、引出し配線32Aおよび端子34Aのソースメタル層2sで形成された部分は、例えばソースバスラインと同じ断面形状を有している。例えば、500ppiの5.7型の表示装置の場合、ゲートメタル層2gで形成された部分の線幅は例えば10μmであり、隣接間距離は16μm(L/S=10/16)であり、ソースメタル層2sで形成された部分の線幅は例えば16μmであり、隣接間距離は10μm(L/S=16/10)である。テーパー角θはいずれも90°未満であり、70°未満であることが好ましく、60°以下であることがさらに好ましい。なお、有機平坦化層Pbの下に形成される部分のテーパー角は90°以上であってもよい。
【0120】
次に、
図11を参照して、本発明の他の実施形態による他のOLED表示装置の構造および製造方法を説明する。
図11に示すOLED表示装置は、
図9(a)に示したLTPS−TFT2
PTを有している。もちろん、LTPS−TFT2
PTに代えて、
図9(b)に示したIn−Ga−Zn−O系TFT2
OTを用いることもできるし、他の公知のTFTを用いることができる。また、
図11(a)および(b)には、OLEDの上部電極(共通電極)46に電気的に接続される、共通配線2
Pcおよびコンタクト部2
PcVを併せて図示している。
【0121】
図11(a)は、駆動回路層2上に、第1無機保護層2Pa1となる第1無機保護膜2Pa1を形成した後、有機平坦化層2Pbとなる有機平坦化膜2Pbを形成した直後の状態を模式的に示している。第1無機保護膜2Pa1はメタルマスクにより所望の領域に選択成膜されている。また、有機平坦化膜2Pbは素子基板20の所望の領域に選択的に塗布形成されるか、一旦全面に形成された後、不要部分が除去される。第1無機保護膜2Pa1は、コンタクトホール等の開口部を有していない点において、第1無機保護層2Pa1と異なるが、簡単のために同じ参照符号で示す。同様に、有機平坦化膜2Pbは、コンタクトホール等の開口部を有していない点において、有機平坦化層2Pbと異なるが、簡単のために同じ参照符号で示す。なお、第1無機保護層2Pa1は、上述した無機保護層2Paと同様に形成される。
【0122】
形成された直後、すなわち、CMPを施す前の有機平坦化膜2Pbの表面2Pb_Saは、算術平均粗さRaが100nmを超えて300nm程度までの粗さを有している。このような表面粗さを有する有機平坦化層2Pb上にOLED3を形成すると、発光効率を十分に向上させられない。例えば、微小共振器構造を採用しても、その効果を十分に発現できないという問題がある。
【0123】
そこで、本発明による実施形態のOLED表示装置100Dにおいては、
図11(b)に示すように、有機平坦化層2Pbの表面2Pb_Sbは、平滑化されており、算術平均粗さRaが50nm以下に制御されている。
【0124】
図11(a)に示した有機平坦化膜2Pbの表面2Pb_Sa(Ra>50nm)に対して、CMPを施すことによって、算術平均粗さRa≦50nmの表面2Pb_Sbを得ることができる。表面2Pb_Sbの算術平均粗さRaは、30nm以下であることが好ましい。算術平均粗さRaは小さい方が好ましく、下限値に制限はないが、CMPに要するコストや時間と効果との関係を考慮すると、算術平均粗さRaは、10nm以上であってよく、20nm以上であってもよい。CMPの具体的な条件等を上述した通りである。
【0125】
次に、
図11(b)に示す様に、平滑化された表面2Pb_Sbを有する有機平坦化膜2Pbの上に、第2無機保護膜2Pa2を形成する。第2無機保護膜2Pa2も第1無機保護膜2Pa1と同様にマスクを用いて所望の領域に選択形成される。第2無機保護膜2Pa2は、有機平坦化膜2Pbの表面2Pb_Sb上に形成されているので、有機平坦化膜2Pbの表面2Pb_Sbと同程度の平滑性を有している。例えば、SiN
x膜の単層で第2無機保護膜2Pa2をプラズマCVD法で形成する場合、例えば、10nm/sを超えない成膜速度で、150nm以上の厚さを有するSiN
x膜を形成することによって、下地平滑性を反映した第2無機保護膜2Pa2が得られる。
【0126】
次に、素子基板20の所望の領域に形成された第1無機保護膜2Pa1、有機平坦化膜2Pbおよび第2無機保護膜2Pa2を一括でパターニングすることによって、コンタクトホールCH1、CH2等の開口部を形成する。このパターニングは、例えば、O
2とCF
4の混合ガスを用いたドライエッチングによって行うことができる。したがって、有機平坦化膜2Pb2を形成する樹脂は、感光性を有しなくてよい。なお、
図11(c)に示すように、第1無機保護層2Pa1とTFE構造10Dを構成する第1無機バリア層(不図示)とが直接接触する部分を形成するために、第1無機保護層2Pa1だけを残す部分は、例えば、多階調マスクを用いることによって形成され得る。
【0127】
次に、下部電極42および上部電極用コンタクト部43を形成する。下部電極42は、コンタクトホールCH1内で、ドレイン電極2
Psdに電気的に接続される。
【0128】
次に、複数の画素Pixのそれぞれを規定するバンク層48を形成する。バンク層48は、画素Pixに対応する開口部を有し、開口部の側面は、順テーパー側面部分を有する斜面を有する。バンク層48の斜面は、各画素の周囲を包囲している。バンク層48は、例えば感光性樹脂(例えばポリイミドまたはアクリル樹脂)を用いて形成される。バンク層48の厚さは、例えば1μm以上2μm以下である。バンク層48の斜面の傾斜角は、60°以下である。バンク層48の斜面の傾斜角θbが60°超であると、バンク層48の上に位置する層に欠陥が生じることがある。
【0129】
上述した様に、バンク層48に含まれる水分および有機平坦化層2Pbに含まれる水分を除去するために、加熱(ベーク)することが好ましい。加熱温度は、例えば100℃以上(例えば1時間以上)が好ましく、250℃以上(例えば15分以上)がさらに好ましい。雰囲気は大気圧であってよい。減圧雰囲気で加熱すれば、加熱時間を短くすることができる。この加熱(ベーク)工程において熱劣化が生じないように、バンク層48および有機平坦化層2Pbは、耐熱性の高い樹脂材料で形成されていることが好ましく、例えば、ポリイミドで形成されていることが好ましい。
【0130】
この後、素子基板の製造を中断し、素子基板が保管または運搬されることがある。その場合には、上述した様に、バンク層48まで形成された素子基板の表面を覆うポジ型のフォトレジスト膜を形成すればよい。保管や移動の後、有機層44を形成する直前に、フォトレジスト膜を除去することによって、清浄な表面を得ることができる。また、有機層44の形成の直前に、加熱することによって、有機平坦化層2Pbおよびバンク層48に含まれる水分を除去する。
【0131】
次に、下部電極42の上に有機層44を形成する。有機層44は、例えば蒸着法で形成される。有機層44の上に、上部電極46を形成する。上部電極46は、上部電極用コンタクト部43と接触し、コンタクト部2
PcVを介して、共通配線2
Pcに電気的に接続される。
【0132】
下部電極42および上部電極46は、例えば、それぞれ、陽極および陰極を構成する。上部電極46は、アクティブ領域の画素全体にわたって形成されている共通の電極であり、下部電極(画素電極)42は画素ごとに形成されている。下部電極42と有機層44との間にバンク層48が存在すると、下部電極42から有機層44に正孔が注入されない。従って、バンク層48が存在する領域は画素Pixとして機能しないので、バンク層48が画素Pixの外縁を規定する。バンク層48は、PDL(Pixel Defining Layer)と呼ばれることもある。
【0133】
このようにしてOLED3を形成した後、TFE構造10Dを形成する。TFE構造10Dは、上述したTFE構造10Aと同様の構造を有している。すなわち、TFE構造10Dは、OLED3に近い側から、第1無機バリア層(例えばSiN
x層)12、有機バリア層14と、第2無機バリア層(例えばSiN
x層)16とを有している。
図11(c)に示す様に、第1無機バリア層12は、第2無機保護層2Pa2の上面および傾斜側面、有機平坦化層2Pbの傾斜側面および第1無機保護層2Pa1の上面と接触している。すなわち、OLED表示装置100Dは、その端部において、
図3(b)に示したOLED表示装置100Aと同様の構造を有しており、優れた耐湿信頼性を有している。
【0134】
次に、
図12(a)および(b)を参照して、有機バリア層の形成に用いられる成膜装置200およびそれを用いた成膜方法を説明する。
図12(a)および(b)は、成膜装置200の構成を模式的に示す図であり、
図12(a)は、光硬化性樹脂の蒸気または霧状の光硬化性樹脂を含むチャンバー内において、第1無機バリア層上で光硬化性樹脂を凝縮させる工程における成膜装置200の状態を示しており、
図12(b)は、光硬化性樹脂が感光する光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させる工程における成膜装置200の状態を示している。
【0135】
成膜装置200は、チャンバー210と、チャンバー210の内部を2個の空間に分割する隔壁234とを有している。チャンバー210の内部のうち隔壁234で仕切られた一方の空間には、ステージ212と、シャワープレート220とが配置されている。隔壁234で仕切られた他方の空間には、紫外線照射装置230が配置されている。チャンバー210は、その内部の空間を所定の圧力(真空度)および温度に制御される。ステージ212は、第1無機バリア層が形成されたOLED3を複数有する素子基板20を受容する上面を有し、上面を例えば−20℃まで冷却することができる。
【0136】
シャワープレート220は、隔壁234との間に、間隙部224を形成するように配置されており、複数の貫通孔222を有している。間隙部224の鉛直方向サイズは、例えば100mm以上1000mm以下であり得る。間隙部224に供給されたアクリルモノマー(蒸気または霧状)は、シャワープレート220の複数の貫通孔222から、チャンバー210内のステージ212側の空間に供給される。必要に応じてアクリルモノマーは加熱される。アクリルモノマーの蒸気または霧状のアクリルモノマー26pは、素子基板20の第1無機バリア層に付着または接触する。アクリルモノマー26は、容器202からチャンバー210内に所定の流量で供給される。容器202には、配管206を介してアクリルモノマー26が供給されるとともに、配管204から窒素ガスが供給される。容器202へのアクリルモノマーの流量は、マスフローコントローラ208によって制御される。シャワープレート220、容器202、配管204、206およびマスフローコントローラ208などによって原料供給装置が構成されている。
【0137】
紫外線照射装置230は、紫外線光源とオプショナルな光学素子とを有している。紫外線光源は、例えば、紫外線ランプ(例えば、水銀ランプ(高圧、超高圧を含む)、水銀キセノンランプまたはメタルハライドランプ)であってもよい。光学素子は、例えば、反射鏡、プリズム、レンズ、および回折素子である。
【0138】
紫外線照射装置230は所定の位置に配置されたときに、所定の波長および強度を有する光をステージ212の上面に向けて出射する。隔壁234およびシャワープレート220は、紫外線の透過率が高い材料、例えば、石英で形成されていることが好ましい。
【0139】
成膜装置200を用いて、有機バリア層14を、例えば以下の様にして形成することができる。ここでは、光硬化性樹脂としてアクリルモノマーを用いる例を説明する。
【0140】
チャンバー210内に、アクリルモノマー26pを供給する。素子基板20は、ステージ212上で、例えば−15℃に冷却されている。アクリルモノマー26pは素子基板20の第1無機バリア層12上で凝縮される。このときの条件を制御することによって、第1無機バリア層12が有する凸部の周囲にだけ液状のアクリルモノマーを偏在させることができる。あるいは、第1無機バリア層12上で凝縮されたアクリモノマーが液膜を形成するように、条件を制御する。
【0141】
液状の光硬化性樹脂の粘度および/または表面張力を調整することによって、液膜の厚さや第1無機バリア層12の凸部に接する部分の形状(凹形状)を制御することができる。例えば、粘度および表面張力は、温度に依存するので、素子基板の温度を調節することによって制御することができる。例えば、平坦部上に存在する中実部の大きさは、液膜の第1無機バリア層12の凸部に接する部分の形状(凹形状)および後で行うアッシング処理の条件によって制御され得る。
【0142】
続いて、紫外線照射装置230を用いて、典型的には、素子基板20の上面の全体に紫外線232を照射することによって、第1無機バリア層12上のアクリルモノマーを硬化させる。紫外線光源としては、例えば、365nmにメインピークを持つ高圧水銀ランプを用い、紫外線強度として例えば、12mW/cm
2で、約10秒照射する。
【0143】
アクリル樹脂からなる有機バリア層14はこのようにして形成される。この有機バリア層14の形成工程のタクトタイムは例えば、約30秒未満であり、非常に量産性が高い。
【0144】
液膜状の光硬化性樹脂を硬化した後、アッシング処理を経て、凸部の周囲にだけ有機バリア層14を形成してもよい。なお、偏在させた光硬化性樹脂を硬化することによって有機バリア層14を形成する際にも、アッシング処理を施してもよい。アッシング処理によって、有機バリア層14と第2無機バリア層16との接着性を向上させることができる。すなわち、アッシング処理は、一旦形成した有機バリア層の余分な部分を除去するためだけでなく、有機バリア層14の表面を改質する(親水化する)ために用いてもよい。
【0145】
アッシングは、公知のプラズマアッシング装置、光励起アッシング装置、UVオゾンアッシング装置を用いて行い得る。例えば、N
2O、O
2およびO
3の内の少なくとも1種のガスを用いたプラズマアッシング、または、これらにさらに紫外線照射とを組合せて行われ得る。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16としてSiN
x膜をCVD法で成膜する場合、原料ガスとして、N
2Oを用いるので、N
2Oをアッシングに用いると装置を簡略化できるという利点が得られる。
【0146】
アッシングを行うと、有機バリア層14の表面が酸化され、親水性に改質される。また、有機バリア層14の表面がほぼ一様に削られるとともに、極めて微細な凹凸が形成され、表面積が増大する。アッシングを行ったときの表面積増大効果は、無機材料である第1無機バリア層12に対してよりも有機バリア層14の表面に対しての方が大きい。したがって、有機バリア層14の表面が親水性に改質されることと、表面積が増大することから、第2無機バリア層16との密着性が向上させられる。
【0147】
この後、第2無機バリア層16を形成するためのCVDチャンバーに搬送し、例えば、第1無機バリア層12と同じ条件で、第2無機バリア層16を形成する。第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12が形成された領域に形成されるので、有機バリア層14の非中実部には、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部が形成される。したがって、上述したように、有機バリア層を介して大気中の水蒸気がアクティブ領域内に到達することが抑制・防止される。
【0148】
なお、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、以下の様にして形成される。SiH
4およびN
2Oガスを用いたプラズマCVD法で、例えば、成膜対象の基板(OLED3)の温度を80℃以下に制御した状態で、400nm/minの成膜速度で、厚さ400nmの無機バリア層を形成することができる。この様にして得られる無機バリア層の屈折率は1.84で、400nmの可視光の透過率は90%(厚さ400nm)である。また、膜応力の絶対値は50MPaである。
【0149】
なお、無機バリア層として、SiN
x層の他、SiO
2層、SiO
xN
y(x>y)層、SiN
xO
y(x>y)層、Al
2O
3層などを用いることもできる。光硬化性樹脂は、例えば、ビニル基含有モノマーを含む。その中でも、アクリルモノマーが好適に用いられる。アクリルモノマーには必要に応じて、光重合開始剤が混合され得る。公知の種々のアクリモノマーを用いることができる。複数のアクリルモノマーを混合してもよい。例えば、2官能モノマーと3官能以上の多官能モノマーを混合してもよい。また、オリゴマーを混合してもよい。光硬化性樹脂の硬化前の室温(例えば25℃)の粘度は、10Pa・sを超えないことが好ましく、1〜100mPa・sであることが特に好ましい。粘度が高いと、厚さが500nm以下の薄い液膜を形成することが難しいことがある。
【0150】
上記では、フレキシブル基板を有するOLED表示装置およびその製造方法の実施形態を説明したが、本発明の実施形態は例示したものに限られず、柔軟性を有しない基板(例えばガラス基板)に形成された有機EL素子と、有機EL素子上に形成された薄膜封止構造とを有する有機ELデバイス(例えば、有機EL照明装置)に広く適用できる。