特許第6867744号(P6867744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867744
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】Fe基ナノ結晶合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 6/00 20060101AFI20210426BHJP
   H01F 1/14 20060101ALI20210426BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20210426BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20210426BHJP
   C22C 45/02 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C21D6/00 C
   H01F1/14
   H01F41/02 A
   !C22C38/00 303S
   !C22C45/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-21754(P2015-21754)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-145373(P2016-145373A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年1月18日
【審判番号】不服2019-13200(P2019-13200/J1)
【審判請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】町田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 美帆
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 芳
(72)【発明者】
【氏名】八巻 真
(72)【発明者】
【氏名】浦田 顕理
(72)【発明者】
【氏名】松元 裕之
【合議体】
【審判長】 平塚 政宏
【審判官】 磯部 香
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−213331(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/133302(WO,A1)
【文献】 特開平07−320920(JP,A)
【文献】 特開平03−146615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 6/00 C
H01F 1/14
H01F 41/02 A
C22C 38/00 303S
C22C 45/02 A
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主相が非晶質であり、Fe、B、P、Cuの元素のみまたはFe、Si、B、P、Cuの元素のみからなる組成であるFe基非晶質薄帯を、α−Fe結晶が析出する第1結晶化温度−100℃以上、+250℃以下の温度、1秒以上60秒以下の時間で保持する条件により張力を印加しつつ移動させながら加熱する第1の熱処理工程と、Fe−B化合物が析出する第2結晶化温度以下の温度、前記第1熱処理工程の保持時間よりも長い時間で保持する条件により再熱処理する第2の熱処理工程とを有し、
前記Fe基非晶質薄帯の前記第1の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs1は前記第2の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs2より小さくすることを特徴とするFe基ナノ結晶合金の製造方法。
【請求項2】
前記第1の熱処理工程における加熱手段は、誘導加熱または赤外線加熱であることを特徴とする請求項に記載のFe基ナノ結晶合金の製造方法。
【請求項3】
主相が非晶質であり、Fe、B、P、Cuの元素のみまたはFe、Si、B、P、Cuの元素のみからなる組成であるFe基非晶質薄帯を、α−Fe結晶が析出する第1結晶化温度−100℃以上、+250℃以下の温度、1秒以上60秒以下の時間で保持する条件により加熱する第1の熱処理工程と、前記Fe基非晶質薄帯を磁心に加工した後、前記磁心を、Fe−B化合物が析出する第2結晶化温度以下の温度、前記第1熱処理工程の保持時間よりも長い時間で保持する条件により再熱処理する第2の熱処理工程とを有し、
前記Fe基非晶質薄帯の前記第1の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs1は前記第2の熱処理工程後の前記磁心に含まれる前記Fe基非晶質薄帯の飽和磁束密度Bs2より小さくすることを特徴とする磁心の製造方法。
【請求項4】
前記第1の熱処理工程は、前記Fe基非晶質薄帯を移動させながら加熱することを特徴とする請求項3に記載の磁心の製造方法。
【請求項5】
前記第1の熱処理工程における加熱手段は、誘導加熱または赤外線加熱であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の磁心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスやインダクタ、リアクトル用磁心に好適なFe基ナノ結晶合金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fe基ナノ結晶合金は、高飽和磁束密度と低磁歪の両立が可能な軟磁性材料である。このFe基ナノ結晶合金を得るためには、非晶質構造を有する軟磁性合金組成物に対して熱処理を施し、微細なbccFe結晶(α―Fe)を析出させる必要がある。
【0003】
微細な結晶を得る従来の熱処理方法として、例えば特許文献1には、大気中、真空中、又はアルゴン、窒素若しくはヘリウム等の不活性ガス中で行うことが望ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−231533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Fe基ナノ結晶合金を用いたトランスやインダクタ、リアクトル用の磁心を形成する場合、非晶質構造を有する軟磁性合金薄帯を環状に巻いて形成する方法や積層して形成する方法が知られている。
【0006】
このように磁心に加工した軟磁性合金薄帯に結晶を析出させる工程において、特許文献1に記載されているように、アルゴンガス雰囲気のような不活性ガス中で熱処理を行うと、結晶化時に磁心内部の薄帯が自己発熱を起こし、α−Fe結晶以外にFe−B等の化合物が析出する。そのため、所望の磁気特性が得られないという課題がある。
【0007】
この課題を解決するために、軟磁性合金組成物にNbやZr等の金属元素を添加して、熱処理時における結晶の粒成長を抑制する方法がある。しかしながら、NbやZr等を添加すると飽和磁束密度が低下する、NbやZr等が高価であるため製品価格に影響するという課題がある。
【0008】
一方、非磁性体であるNbやZr等の金属元素を添加しない合金組成物を用いた場合、高い飽和磁束密度を得られるが、結晶の粒成長が早いため熱処理の昇温速度が低下すると結晶が粗大化し、磁気特性が劣化するという課題がある。
【0009】
そこで本発明は、結晶の粗大化及び化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性を有するFe基ナノ結晶合金の熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明によるFe基ナノ結晶合金の製造方法は、主相が非晶質であるFe基非晶質薄帯を加熱する第1の熱処理工程と、再熱処理する第2の熱処理工程とを有し、前記Fe基非晶質薄帯の前記第1の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs1は前記第2の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs2より小さくすることを特徴とする。
【0011】
非晶質構造を有する軟磁性合金組成物を熱処理すると、2回以上結晶化が起こり、最初に結晶化を開始する温度、すなわち、α−Fe結晶が析出する温度を第1結晶化温度、続いて結晶化が開始する温度、すなわち、Fe−B等の化合物が析出する温度を第2結晶化温度という。
【0012】
第1の熱処理工程によりある程度ナノ結晶化した薄帯は、必要に応じて磁心等の形状に加工した後、第2の熱処理工程である再熱処理を行い、ナノ結晶化を完了させる。
【0013】
したがって、第1の熱処理工程後の薄帯の飽和磁束密度Bs1は、第2の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs2より小さくなるように熱処理条件を調整する。
【0014】
薄帯を粉砕して、圧粉磁心に加工する場合も、巻き磁心と同様に磁心の中心部において自己発熱による高温部分が生じ、Fe−B等の化合物が析出することから、上記熱処理工程を採用するのは、良好な磁気特性を得る上で好ましい。
【0015】
また、本発明における第1の熱処理工程では主相が非晶質であるFe基非晶質薄帯を移動させながら加熱することを特徴とする。加熱手段と薄帯の相対的な位置を変化することで、均一に加熱できるとともに、結晶の生成に伴い発生した熱を効率よく発散させる。量産性を考慮すれば、加熱手段の位置を固定して、薄帯を移動させながら加熱するのが好ましい。
【0016】
なお、薄帯のナノ結晶化が進むに従い、薄帯は靱性を失い、巻き磁心等の形状への加工の困難性が増すことから、熱処理時間や薄帯の移動速度は適宜調整するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の前記第1の熱処理工程における加熱手段は、誘導加熱または赤外線加熱であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、結晶の粗大化及び化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性を有するFe基ナノ結晶合金の製造方法およびFe基ナノ結晶合金を用いた磁心の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る第1の熱処理工程を説明する概略図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る第1の熱処理工程を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る第1の熱処理工程を説明する概略図である。本実施の形態では、第1の熱処理工程の加熱手段として誘導加熱機を用いる。
【0023】
熱処理前のFe基非晶質薄帯1は、ロール状に巻かれている巻送りロール2から、巻受けロール5に送り出される。送り出されたFe基非晶質薄帯1は、加熱コイル3により、所定の温度に設定された誘導加熱機4内を移動しながら加熱される。熱処理されたFe基非晶質薄帯1は巻受けロール5によって巻き取られ、第1の熱処理工程を終了する。
【0024】
巻送りロール2と巻受けロール5は熱処理速度と張力が制御されている。このように、Fe基非晶質薄帯1に張力を印加しながら熱処理することにより、より均一に加熱され、かつ放熱することから良好な磁気特性を得る上で好ましい。
【0025】
第1の熱処理工程の熱処理条件は、α−Fe結晶が析出し、且つFe−B等の化合物が析出しない温度と時間を適宜設定するのが好ましい。すなわち、加熱温度を高くするに従い、加熱時間を短くし、加熱温度を低くするに従い、加熱時間を長くするのが好ましい。
【0026】
具体的には、第1結晶化温度−100℃以上、第1結晶化温度+250℃以下の温度で、0.1秒以上60分以下の熱処理が好ましく、第1結晶化温度−50℃以上、第1結晶化温度+150℃以下の温度で、1秒以上60秒以下の熱処理がより好ましい。
【0027】
第1の熱処理工程後、薄帯のまま、もしくは必要に応じて巻き磁心または圧粉磁心を作製し、再熱処理、すなわち、第2の熱処理工程を行う。
【0028】
第2の熱処理工程の手段は特に制限はなく、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下などの公知の熱処理方法を用いて行うのが好ましい。
【0029】
良好な磁気特性を得る上では、第2の熱処理工程は、第2結晶化温度以下で行うことがより好ましい。
【0030】
Fe基非晶質薄帯を熱処理によって完全にナノ結晶化すると、薄帯は脆化し、磁心を形成した際には応力によって特性が劣化するおそれがある。したがって、本発明では第1の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs1を、第2の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs2より小さくする、すなわち、第1の熱処理工程後の薄帯内部にアモルファス相を残存させ、ある程度靭性を有する薄帯とすることで、磁心の形成を容易にする。
【0031】
上記のように、第1の熱処理工程において、Fe基非晶質薄帯を完全にナノ結晶化しない、すなわち部分的にナノ結晶化を施し、第2の熱処理工程においては、残存する析出可能なナノ結晶を析出させるにとどまるので、薄帯の自己発熱を抑制することができる。
【0032】
さらに、Fe基非晶質薄帯を所定の温度に設定した誘導加熱機内で移動させながら加熱することによって、Fe基非晶質薄帯が直接加熱されるので加熱効率が高く、急速な加熱や短時間での熱処理も可能となる。
【0033】
薄帯を移動させながら加熱していることから均一に加熱されるとともに、結晶化時における自己発熱も薄帯表面から空気中に効率良く放熱され、薄帯の温度上昇が抑制される。したがって、磁気特性を劣化させる要因である、結晶の粗大化およびFe−B等の化合物の析出が抑制される。
【0034】
また、Fe基非晶質薄帯全体に均一な加熱および放熱が施されることから、均質な薄帯を連続的に得ることも可能となる。
【0035】
これにより、軽量で小型の磁心のみならず、自己発熱量が大きい、大型の磁心においても、高温による結晶の粗大化やFe−B等の化合物の析出を抑制することができ、優れた磁気特性を得る事ができる。
【0036】
Fe基非晶質薄帯は、Fe−(Si,B,P,C)−Cu系やFe−Si−B−Nb−Cu系、Fe−(Nb,Zr)−B系等の合金で、熱処理を施すことでαFe(−Si)といった粒径10〜20nm程度の結晶を析出するナノ結晶材料用非晶質薄帯を用いるのが好ましい。
【0037】
ナノ結晶化の熱処理時に速い昇温速度を必要とするナノ結晶材料用非晶質薄帯を用いると、本発明の熱処理効果はより顕著となるので好ましく、具体的には、NbやZr等のナノ結晶の結晶粒成長を抑制効果を有する元素の含有量が少ない、もしくは含有しない、Fe−(Si,B,P,C)−Cu系合金で79≦Fe≦86at%、0≦Si≦10at%、1≦B≦15at%、1≦P≦15at%、0≦C≦10at%、0.4≦Cu≦2.0at%の組成を有し、Pの割合(x)とCuの割合(z)との特定の比率(z/x)は、0.06以上、1.2以下であるものがさらに好ましい。
【0038】
なお、上記組成において、耐食性、形成能、結晶粒成長の制御のために、Feの3at%以下をTi、V、Z、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Al、Mn、Ag、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、Y、N、O、Mg、希土類元素、Au、白金属元素のうちの1つ以上の元素で置換する、もしくは、さらに飽和磁束密度や磁歪などを制御するためにFeの30at%以下をCo、Niと置換するのも好ましい。
【0039】
Fe基非晶質薄帯の第1の熱処理工程後に除熱を行う場合は、冷却用の気体を吹き付ける、水やアルコール等の液状媒体に浸漬する、冷却用のロールに接触させる等を行うのが好ましい。
【0040】
巻送りロールと巻受けロールの間に、電磁石、ソレノイド又は永久磁石などを適宜配置し、薄帯の進行方向および幅方向に磁場を印加することは、良好な磁気特性を得るために好ましい。
【0041】
磁心形成時の薄帯の破損を防止するためには、第1の熱処理工程後の薄帯の曲率半径は50cm以上であることが好ましい。
【0042】
第2の熱処理工程後の結晶粒径は、磁気特性の劣化を抑制するために30nm以下であることが好ましく、優れた磁気特性を得るためには、25nm以下であることがより好ましい。
【0043】
第1の熱処理工程の手段として誘導加熱機を用いてFe基非晶質薄帯を熱処理することは、Fe基非晶質薄帯内の原子を振動させるため加熱効率が高く、急速な加熱や短時間での熱処理を可能となるので好ましい。
【0044】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係る第1の熱処理工程を説明する概略図である。本実施の形態では、第1の熱処理工程の加熱手段として赤外線加熱機を用いる。
【0045】
熱処理前のFe基非晶質薄帯11は、ロール状に巻かれている巻送りロール12から巻受けロール15に送り出される。送り出されたFe基非晶質薄帯11は、赤外線ランプ13により所定の温度に設定された赤外線加熱機14内を移動しながら加熱される。熱処理されたFe基非晶質薄帯11は巻受けロール15によって巻き取られ、第1の熱処理工程を終了する。
【0046】
第1の熱処理工程後、必要に応じて磁心を作製し、第2の熱処理工程において再熱処理を行う。第2の熱処理工程の手段は特に制限はなく、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下などの従来の熱処理方法を用いて行えば良く、第2結晶化温度以下で熱処理することが望ましい。
【0047】
第1の熱処理工程の手段として赤外線加熱機を用いた場合は、薄帯の片面のみを加熱することが可能となるので、片面を加熱し、他方の面に、金属、セラミックス等を接触配置し、冷却またはガイド用とするのも好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明する。
【0049】
(実施例1〜14および比較例1〜3)
一般的に使用される原料である工業鉄、Fe−Si合金、Fe−B合金、Fe−P合金、および電気銅を、表1に示す実施例1〜14および比較例1〜3の組成式になるよう各々秤量し、高周波溶解で溶解した。
【0050】
続いて、溶解した組成物を単ロール液体急冷法を用いて幅30mm、厚さ25μmで300gの連続薄帯とし、10mm幅になるよう切断して100gの薄帯を得た。
【0051】
さらに、薄帯を表1に示す保持温度に設定された誘導加熱機内で、表1に示す保持時間の加熱を行い、アルキメデス法による密度、振動試料型磁力計(VSM)による飽和磁化の評価から飽和磁束密度Bs1を算出した。
【0052】
その後、100gの薄帯を巻回して磁心を作製して、表1に示す保持温度に設定された電気炉において表1に示す保持時間の再熱処理を行い、飽和磁束密度Bs2、透磁率、平均結晶粒径、析出相を調べた。平均結晶粒径は透過電子顕微鏡(TEM)によって測定し、X線回折法によって結晶構造を分析した。
【0053】
表1に実施例1〜14および比較例1〜3の測定結果と第2結晶化温度を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
(実施例15〜28および比較例4〜6)
実施例15〜28および比較例4〜6において、実施例1と同様に、表2に示す組成式になるよう秤量および溶解を行い、連続薄帯を得た。その後、表2に示す保持温度に設定された赤外線加熱機内で、表2に示す保持時間の加熱を行った。
【0056】
その後、実施例1と同様に磁心を作製し、表2に示す保持温度に設定された電気炉において表2に示す保持時間の再熱処理を行った。
【0057】
実施例1と同様に飽和磁束密度Bs1およびBs2、透磁率、平均結晶粒径、析出相を測定した結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表1および表2から明らかなように、従来の方法で熱処理を行った比較例1〜6のFe基ナノ結晶合金には化合物が析出しているのに対し、実施例1〜28のFe基ナノ結晶合金はアモルファス相とα−Fe結晶相のみが析出している。また、結晶粒径においても、比較例の結晶粒径よりも小さい値となっており、結晶の粒成長が抑制されていることがわかる。
【0060】
さらに、本実施例では結晶の粗大化および化合物の析出を抑制したことによって、比較例と比べて透磁率が向上しており、飽和磁束密度Bs2は高い値を保っている。
【0061】
以上より、Fe基非晶質薄帯を必要に応じて移動させながら加熱する第1の熱処理工程の後、再加熱する第2の熱処理工程を行い、第1の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs1を、第2の熱処理工程後の飽和磁束密度Bs2より小さくすることにより、結晶の粗大化及び化合物の析出を抑制し、優れた磁気特性を有するFe基ナノ結晶合金が得られた。
【0062】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正が可能である。例えば、第1の熱処理工程の手段として、誘導加熱および赤外線加熱を挙げているが、薄帯を移動させながら熱処理することが可能であれば、特に制限されない。すなわち、当業者であれば成し得る各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1、11 Fe基非晶質薄帯
2、12 巻送りロール
3 加熱コイル
4 誘導加熱機
5、15 巻受けロール
13 赤外線ランプ
14 赤外線加熱機
図1
図2