特許第6867802号(P6867802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6867802水系後糊圧着用紙及び水系後糊圧着用紙の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867802
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】水系後糊圧着用紙及び水系後糊圧着用紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/10 20060101AFI20210426BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   D21H19/10
   D21H27/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-250631(P2016-250631)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104832(P2018-104832A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】松村 尚人
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−226834(JP,A)
【文献】 特表2006−522227(JP,A)
【文献】 特開2001−032191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/10
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に形成された塗工層を有し、
前記基紙は、少なくとも2種類の内添サイズ剤を含み、この内添サイズ剤として少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を含み、
前記塗工層は、水溶性高分子を主成分とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含み、
前記耐水化剤として少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含み、
前記表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂を含み、
前記アルキルケテンダイマーと前記スチレン系樹脂との配合質量比が、40:60〜70:30であり、
前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、前記アルキルケテンダイマーの内添量が0.5〜1.5質量部、前記スチレン系樹脂の内添量が0.5〜1.8質量部であり、
前記ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂の含有量が0.75〜1.50g/m2であり、
前記スチレンアクリレート系樹脂の含有量が0.10〜0.20g/m2である、
ことを特徴とする水系後糊圧着用紙。
【請求項2】
基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に形成された塗工層を有し、
前記基紙は、少なくとも2種類の内添サイズ剤を含み、この内添サイズ剤として少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を含み、
前記塗工層は、水溶性高分子を主成分とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含み、
前記耐水化剤として少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含み、
前記表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂を含み、
前記基紙は、カチオン化澱粉及びポリアクリルアミド系紙力剤を含み、
前記カチオン化澱粉の含有量は、前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、0.3〜1.0質量%であり、
前記ポリアクリルアミド系紙力剤の含有量は、前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、0.1〜0.8質量%である、
ことを特徴とする水系後糊圧着用紙。
【請求項3】
基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に形成された塗工層を有し、
前記基紙は、少なくとも2種類の内添サイズ剤を含み、この内添サイズ剤として少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を含み、
前記塗工層は、水溶性高分子を主成分とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含み、
前記耐水化剤として少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含み、
前記表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂を含み、
ブリストー値が300〜500mm/秒であり、
コッブサイズ度が20〜40g/m2であり、
接触角が80.0〜105.0度であり、
透気度が10.0〜45.0秒である、
ことを特徴とする水系後糊圧着用紙。
【請求項4】
抄紙機のプレスパートにおいてプレス圧100kg/cm以下で抄紙された基紙に、少なくとも2種類の内添サイズ剤を内添し、この内添サイズ剤として少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を使用し、
前記基紙の少なくとも一方の面に、水溶性高分子を主成分とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含む塗工液をフィルム転写方式で塗工して塗工層を形成し、
前記耐水化剤として少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を使用し、
前記表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂を使用
前記基紙は、カチオン化澱粉及びポリアクリルアミド系紙力剤を含み、
前記カチオン化澱粉の含有量は、前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、0.3〜1.0質量%であり、
前記ポリアクリルアミド系紙力剤の含有量は、前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、0.1〜0.8質量%である、
ことを特徴とする水系後糊圧着用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系後糊圧着用紙及び水系後糊圧着用紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、用紙の表面に、個人情報等の各種情報を印刷すると共に、接着層を形成し、印刷面が内側となるように折り畳み、剥離可能に接着(いわゆる疑似接着)させて使用する圧着用紙が存在している。この圧着用紙における接着層の形成方法には、各種情報等を印刷する前に接着層を形成する先糊方式と、各種情報等を印刷した後に接着層を形成する後糊方式との2種類の方式が存在する。
【0003】
しかるに、近年では、UVニスや水系糊を使用する後糊方式が多く採用されるようになっている。これは、後糊方式の方が、剥離後の接着面(印刷面)の質感に優れ、高級感を有するためである。もっとも、UVニスを使用する後糊方式の場合は、UVニスの浸透を防止するために、顔料を主成分とする塗工層を形成する必要があり、製造コストが嵩む。したがって、現在では、水系糊を使用する後糊方式が多く採用されるようになっている。
【0004】
一方、水系後糊圧着用紙に、高速に、かつ大量の情報を印刷するには、オフセット印刷が数多く採用されている。また、水系後糊圧着用紙に、隠蔽、秘匿等を必要とする個人情報等を印刷するには、インクジェット印刷が数多く採用されている。したがって、水系後糊圧着用紙は、オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性のいずれをも有することが要求される。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1は、オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性を有する圧着用紙として、「カチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有」する圧着用紙を提案する。しかしながら、同文献が提案する方法によると、吸液性の調節が困難であり、したがって、例えば、インクの滲みや乾燥性、水系糊の浸透性等について改善の余地がある。
【0006】
また、本件出願人も、オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性を有する圧着用紙として、「基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層が設けられ、一方の前記クリアーコート層上に、塗工層が設けられ」、「前記澱粉が変性澱粉であり、前記耐水化剤がカチオン性ポリアミン系樹脂であり、前記サイズ剤がアルキルケテンダイマーサイズ剤である」圧着用紙を提案している(特許文献2)。しかしながら、この提案は、クリアーコート層にインクジェット印刷をした場合や接着層を形成した場合に、インクジェット適性や接着強度が低くなるとの問題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−65343号公報
【特許文献2】特開2008−2033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする主たる課題は、オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性のいずれをも有し、かつ接着強度も十分なものとなる水系後糊圧着用紙及び水系後糊圧着用紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、
基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に形成された塗工層を有し、
前記基紙は、少なくとも2種類の内添サイズ剤を含み、この内添サイズ剤として少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を含み、
前記塗工層は、水溶性高分子を主成分とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含み、
前記耐水化剤として少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含み、
前記表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂を含む、
ことを特徴とする水系後糊圧着用紙である。
そして、前記アルキルケテンダイマーと前記スチレン系樹脂との配合質量比が、40:60〜70:30であり、
前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、前記アルキルケテンダイマーの内添量が0.5〜1.5質量部、前記スチレン系樹脂の内添量が0.5〜1.8質量部であり、
前記ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂の含有量が0.75〜1.50g/m2であり、
前記スチレンアクリレート系樹脂の含有量が0.10〜0.20g/m2である、
ことを特徴とする。
【0010】
また、抄紙機のプレスパートにおいてプレス圧100kg/cm以下で抄紙された基紙に、少なくとも2種類の内添サイズ剤を内添し、この内添サイズ剤として少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を使用し、
前記基紙の少なくとも一方の面に、水溶性高分子を主成分とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含む塗工液をフィルム転写方式で塗工して塗工層を形成し、
前記耐水化剤として少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を使用し、
前記表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂を使用する、
ことを特徴とする水系後糊圧着用紙の製造方法である。
そして、前記基紙は、カチオン化澱粉及びポリアクリルアミド系紙力剤を含み、
前記カチオン化澱粉の含有量は、前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、0.3〜1.0質量%であり、
前記ポリアクリルアミド系紙力剤の含有量は、前記基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、0.1〜0.8質量%である、
ことを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性のいずれをも有し、かつ接着強度も十分なものとなる水系後糊圧着用紙及び水系後糊圧着用紙の製造方法になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明の範囲は、本実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、本実施形態には種々の変更を加えることができる。なお、以下で説明する基紙に配合する各材料の配合量(内添量)は、特に記載がない場合は、原料パルプの絶乾質量に対する質量割合を意味する。また、塗工層(塗工液)に配合する各材料の配合量(含有量)は、特に記載がない場合は、塗工層全体の質量に対する各材料の絶乾質量割合を意味する。
【0013】
本形態の水系後糊圧着用紙は、基紙及び塗工層を有する。また、基紙は、少なくとも2種類の内添サイズ剤を含む。この内添サイズ剤としては、少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を含む。一方、塗工層は、水溶性高分子を主成分(好適には50質量%以上)とし、かつ耐水化剤及び表面サイズ剤を含む。そして、耐水化剤としては、少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含む。また、表面サイズ剤としては、少なくともスチレンアクリレート系樹脂を含む。以下、各成分について順に説明し、その後に水系後糊圧着用紙及びその製造方法について説明する。
【0014】
(基紙:原料パルプ)
基紙を構成する原料パルプとしては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ、これらのパルプを組み合わせたもの等を使用することができる。
【0015】
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)から、化学的に又は機械的に製造されたパルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0016】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0017】
(基紙:内添サイズ剤)
前述したように、基紙は、内添サイズ剤として、少なくともアルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂を含む。この点、アキケルケテンダイマーを単独で内添した場合も、サイズ効果を高めることができる。しかるに、内添量がわずかに変化しただけでサイズ効果が大きく変動してしまい、微調節するのが困難である。一方、アルキルケテンダイマーと共にスチレン系樹脂を内添すれば、所望のサイズ性に調節するのが容易となる。スチレン系樹脂は、アルキルケテンダイマーと比べて相対的にサイズ効果の低いためである。
【0018】
アルキルケテンダイマーの添加量は、基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、好ましくは0.5〜1.5質量部、より好ましくは0.6〜1.2質量部、特に好ましくは0.7〜1.0質量部である。
【0019】
スチレン系樹脂の添加量は、基紙を構成する原料パルプの絶乾基準で100質量部に対して、好ましくは0.5〜1.8質量部、より好ましくは0.55〜1.5質量部、特に好ましくは0.6〜1.3質量部である。
【0020】
アルキルケテンダイマーとスチレン系樹脂との配合質量比は、好ましくは40:60〜70:30、より好ましくは48:52〜68:32、特に好ましくは45:55〜65:35である。アルキルケテンダイマーの配合質量比が40質量%未満であると、十分なサイズ性が得られず、塗工層の表面サイズ剤を増量しなければならなくなる。結果、剥離時の転写汚れが生じ易くなり、また、印刷装置の汚れも生じ易くなる。他方、アルキルケテンダイマーの配合質量比が80質量%を超えると、サイズ度が高くなり過ぎ、塗工層の表面サイズ剤を極端に減らさなければならなくなる。結果、インクジェット印刷する際の印刷適性や接着層の接着強度が低下するおそれがある。
【0021】
(基紙:填料)
基紙には、必要により填料を内添することができる。基紙に填料を内添すると、基紙の不透明度が高まり、圧着用紙において重要な隠蔽性が高まる。
【0022】
填料としては、例えば、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、凝集型軽質炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、水和ケイ素、ホワイトカーボン、再生粒子、シリカ複合再生粒子、シリカ複合無機粒子等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、填料としては、凝集型軽質炭酸カルシウムを使用するのが好ましい。凝集型軽質炭酸カルシウムを使用すると、圧着用紙を疑似接着する際の圧力を緩衝する効果が向上し、また、基紙の白色度が向上する。
【0023】
填料の内添量は、灰分率を基準として、好ましくは10.0〜15.0質量%、より好ましくは10.5〜14.5質量%、特に好ましくは11.0〜14.0質量%である。灰分率が10.0〜15.0質量%であると、基紙の不透明度及び表面強度をいずれも十分なものにすることができる。なお、灰分率は、JIS P 8251(2003)に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した値をいう。
【0024】
(基紙:澱粉及び紙力剤)
基紙には、カチオン化澱粉及びポリアクリルアミド系紙力剤(好ましくは、両性ポリアクリルアミド系紙力剤)を内添すると好適である。
【0025】
カチオン化澱粉は、例えば、コーン、小麦、じゃがいも、タピオカ、サゴ等を原料とすることができる。カチオン化澱粉は、これらの原料から得られた澱粉をカチオン基で変性させたものである。カチオン化澱粉を基紙に内添すると、基紙の紙力が向上する。
【0026】
カチオン化澱粉の内添量(配合量)は、基紙を構成する原料パルプ(絶乾基準)を100質量%として、好ましくは0.3〜1.0質量%、より好ましくは0.4〜0.9質量%、特に好ましくは0.5〜0.8質量%である。
【0027】
ポリアクリルアミド系紙力剤、特に両性ポリアクリルアミド系紙力剤を内添すると、カチオン化澱粉をも内添している場合は、基紙の紙力が向上する。また、塗工層に耐水化剤として含有させるポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂は、強カチオン性を示す。したがって、循環原料として塗工層にポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含有させた場合、抄紙系内の電気的なバランスが阻害される。しかるに、基紙に両性ポリアクリルアミド系紙力剤を内添するものとすれば、抄紙系内の電気的なバランスが阻害されるのが緩和される。さらに、カチオン化澱粉と共にポリアクリルアミド系紙力剤を内添すると、基紙のZ軸方向の剥離強度が高まる。したがって、接着層を剥離する際に基紙が破れる(特に層間剥離する)のを防止することができる。加えて、両薬剤を共に内添すると、抄紙機のプレスパートにおいて基紙が潰れてしまうのを軽減することができ、圧着用紙の透気度を所望の範囲に調節するのが容易となる。
【0028】
ポリアクリルアミド系紙力剤の内添量(配合量)は、基紙を構成する原料パルプ(絶乾基準)を100質量%として、好ましくは0.1〜0.8質量%、より好ましくは0.2〜0.7質量%、特に好ましくは0.3〜0.6質量%である。
【0029】
(基紙:添加剤)
基紙には、必要により添加剤を内添することができる。
【0030】
添加剤としては、例えば、凝結剤、消泡剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0031】
(基紙:抄紙)
基紙は、原料パルプ等のスラリー(パルプ繊維を主成分とするスラリー)を抄紙して製造することができる。この抄紙には、例えば、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、コータパート、カレンダーパート等が備わる抄紙機を使用することができる。抄紙機は、コータパートやカレンダーパートがオンマシンであっても、オフマシンであってもよい。ただし、コータパートは、フィルム転写方式であるのが好ましい。
【0032】
また、プレスパートのプレス圧は、好ましくは100kg/cm以下、より好ましくは50〜95kg/cmである。プレス圧が100kg/cmを超えると、基紙が高密度化し、また、基紙の透気度が高くなる。結果、インクジェット印刷、オフセット印刷のインクが基紙の表面に留まる傾向にあり、転写汚れが発生する可能性がある。なお、プレスパートのプレス圧とは、湿紙状態にある基紙が、例えば、金属ロールとフェルトとの間において加圧される際の圧力をいう。この加圧が複数回行われる場合は、その中の最大圧力をプレス圧とする。
【0033】
(塗工層:水溶性高分子)
前述したように、塗工層は、水溶性高分子を主成分にする。塗工層が水溶性高分子を主成分にすると、圧着用紙の表面強度を高まる。結果、オフセット印刷適性が高まり、例えば、オフセット印刷時の紙粉発生を減らすことができる。
【0034】
水溶性高分子としては、例えば、天然高分子系を使用することができる。天然高分子系としては、例えば、コーン、小麦、タピオカ、ポテト等の生澱粉を各種製法で変性させた、酵素分解澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸化澱粉、変性酸化澱粉や、カルボキシメチル化セルロース(CMC)、カルボキシエチル化セルロース(CEC)等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0035】
(塗工層:表面サイズ剤)
前述したように、塗工層は表面サイズ剤を含み、かつこの表面サイズ剤としては少なくともスチレンアクリレート系樹脂を含む。塗工層に表面サイズ剤として少なくともスチレンアクリレート系樹脂が含まれていると、表面サイズ性を微調節が容易になる。また、基紙に内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー樹脂及びスチレン系樹脂を内添する場合において、表面サイズ剤としてスチレンアクリレート系樹脂を含むと、インクジェット印刷適性及び接着層(水系後糊)の接着性が向上し、また、剥離時の転写汚れを減らすことができる。
【0036】
本形態においては、耐水化剤として少なくとも強カチオン性を示すポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を使用することから、スチレンアクリレート系樹脂としてはカチオン性のものを使用するのが好ましい。カチオン性のスチレンアクリレート系樹脂を使用すると、塗工液(塗工層)中の凝集物を減らすことができる。
【0037】
スチレンアクリレート系樹脂の含有量は、好ましくは0.10〜0.20g/m2、より好ましくは0.11〜0.18g/m2、特に好ましくは0.13〜0.17g/m2である。スチレンアクリレート系樹脂の含有量が0.60g/m2未満であると、インクジェット印刷時に滲み(フェザリング)が発生し、バーコード印刷適性等が不十分になるおそれがある。また、スチレンアクリレート系樹脂の含有量が0.10g/m2未満であると、接着層を形成する水系糊が基紙に浸透し過ぎ、接着強度が不十分になるおそれがある。他方、スチレンアクリレート系樹脂の含有量が0.20g/m2を超えると、インク乾燥性が低下し、接着層(糊層)へのインクの溶出、剥離時の転写汚れ、プリンターの汚れ等が生じるおそれがある。
【0038】
(塗工層:耐水化剤)
前述したように、塗工層は耐水化剤を含み、かつこの耐水化剤としては少なくともポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を含む。塗工層に耐水化剤としてポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂が含まれていると、塗工層が均一なものとなる。ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂は、粘度安定性が高いため、たとえ0.75g/m2以上の高配合としても塗工液の粘度を低く保つことができるためである。また、耐水化剤としてポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂が含まれていると、インクジェット印刷時のインク定着性や耐水性が効果的に高まる。さらに、塗工層の主成分が水溶性高分子である場合において、耐水化剤としてポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂を使用すると、オフセット印刷機を使用して印刷した場合及びインクジェット印刷機を使用して印刷した場合のいずれにおいても、印刷が鮮明になり、また、紙粉等の発生も少なくなる。
【0039】
ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂の含有量は、好ましくは0.75〜1.50g/m2、より好ましくは0.90〜1.40g/m2、特に好ましくは1.00〜1.25g/m2である。含有量が0.75g/m2未満であると、郵送中等において水濡れした場合に、インクジェットインクが溶出して印刷内容を判読することができなくなる等のおそれがある。また、含有量が0.75g/m2未満であると、水系糊を塗布した際に、接着層(糊層)にインクジェットインクが溶出して剥離時に転写汚れが生じるおそれがある。他方、含有量が1.50g/m2を超えると、インクジェット印刷において滲み(フェザリング)が発生し、例えば、バーコード等が読めなくなるおそれがある(印刷適性の低下)。また、含有量が1.50g/m2を超えると、圧着用紙の臭気、抄紙機の汚れ等が問題とされるおそれがある。
【0040】
(塗工層:その他)
塗工層は、基紙の一方の面又は他方の面(表面及び裏面)に形成される。塗工層は、1層であっても複数層であってもよい。
【0041】
塗工層は、基紙の少なくとも一方の面に塗工液を塗工することで形成することができる。塗工液の塗工は、例えば、サイズプレスコータ、ゲートロールコータ、ロッドメタリングコータ、ビルブードコータ、ブレードコータ等のコータを使用して行うことができる。ただし、転写方式のゲートロールコータ及びロッドメタリングコータの少なくとも一方を使用するのが好ましい。これらのコータを使用すると、低塗工量でも均一に塗工層を形成することができる。
【0042】
塗工液には、例えば、着色染料、着色顔料、消泡剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有させることができる。
【0043】
塗工液の塗工量は、片面当たり、好ましくは0.5〜2.5g/m2、より好ましくは0.6〜2.4g/m2、特に好ましくは0.8〜2.3g/m2である。なお、塗工液の塗工量は、固形分換算した場合の値である。
【0044】
(水系後糊圧着用紙:坪量)
水系後糊圧着用紙の坪量は、好ましくは120.0〜160.0g/m2、より好ましくは121.0〜157.0g/m2、特に好ましくは121.0〜127.9g/m2である。坪量が120.0〜160.0g/m2であれば、軽量でありながら用紙強度を十分なものとすることができ、郵送等するに適するものとすることができる。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した数値である。
【0045】
(水系後糊圧着用紙:ブリストー値)
水系後糊圧着用紙のブリストー値は、好ましくは300〜500mm/秒、より好ましくは330〜450mm/秒、特に好ましくは350〜420mm/秒である。ブリストー値が300mm/秒未満であると、インクジェット印刷時に滲み(フェザリング)が発生し、例えば、バーコード印刷適性等が不十分とされるおそれがある。また、ブリストー値が300mm/秒未満であると、接着層を形成する水系糊が基紙に浸透し過ぎ、接着強度が不十分になるおそれがある。他方、ブリストー値が500mm/秒を超えると、インク乾燥性が不十分となり、例えば、プリンターの汚れや、接着層にインクが溶出して剥離時に転写汚れが生じるおそれがある。なお、ブリストー値は、J.TAPPI No51に準拠して測定(測定機器:熊谷理機工業(株)製液体動的吸収性試験機ブリストー式、回転数:50.0mm/s、添加液:40μl(イオン交換水))した値である。
【0046】
(水系後糊圧着用紙:コッブサイズ度)
水系後糊圧着用紙のコッブサイズ度は、好ましくは20〜40g/m2、より好ましくは22〜37g/m2、特に好ましくは25〜34g/m2である。コッブサイズ度が20g/m2未満であると、インク乾燥性が不十分となり、例えば、プリンターの汚れや、接着層にインクが溶出して剥離時に転写汚れが生じるおそれがある。他方、コッブサイズ度が40g/m2を超えると、水系糊が基紙に浸透し過ぎて接着強度等が不十分になるおそれがある。なお、コッブサイズ度は、JIS P 8140(1998)に記載の「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ方」に準拠し、10秒法によって測定した値である。
【0047】
(水系後糊圧着用紙:接触角)
水系後糊圧着用紙の接触角は、好ましくは80.0〜105.0度、より好ましく82.0〜97.0度、特に好ましくは83.0〜90.0度である。接触角が80.0度未満であると、インクジェットインクの用紙表面での広がりを抑制することができず、インクジェット印刷時に滲み(フェザリング)が発生し、例えば、バーコード印刷適性等が不十分になるおそれがある。他方、接触角が105.0度を超えると、インクジェットインクが付着後に広がらず、例えば、画像を形成するインクドットが小さくなり過ぎて画像発色が不十分になるおそれがある。なお、接触角は、動的接触角測定装置(DM−701 協和界面科学(株)製)を使用して、蒸留水を2.0μL滴下した時の0.2秒後の接触角を測定した値である。
【0048】
(水系後糊圧着用紙:透気度)
水系後糊圧着用紙の透気度は、好ましくは10.0〜45.0秒、より好ましくは15.0〜40.0、特に好ましくは20.0〜35.0秒である。透気度が10.0秒未満であると、水系糊が基紙に浸透し過ぎて、接着強度が不十分になるおそれがある。他方、透気度が45秒を超えると、オフセットインクが圧着用紙に付着し難くなり、剥離時に反対面にとられるおそれがある。なお、透気度は、JIS P 8117(2009)に記載の「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法」に準拠し、低圧法によって測定した値である。
【0049】
(水系後糊圧着用紙:接着層)
本形態の水系後糊圧着用紙は、オフセット印刷やインクジェット印刷等が行われた後、例えば、一方又は両方の塗工層の表面に接着層が積層され、更に接着層が存在する面(印刷面)が内側となるように折り畳まれ、剥離可能に接着されて使用される。
【0050】
接着層は、塗工層の表面に接着剤を塗工することで形成することができる。接着剤としては、水系エマルションを好適に使用することができる。接着剤の塗工量は、固形分換算で、好ましくは2.0〜10.0g/m2、より好ましくは2.0〜9.0g/m2、特に好ましくは2.0〜8.0g/m2である。接着剤の塗工量を2.0〜10.0g/m2にすることで、十分な接着性が確保されながら、剥離時に用紙が破壊されるおそれもなくなる。なお、剥離時の剥離強度は、例えば、40〜300g/15mmである。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の実施例を説明する。なお、本発明の範囲は、この実施例に限定されるものではない。
【0052】
(試験紙の製造)
まず、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)80質量%及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量%を調製して、パルプスラリーを得た。このパルプスラリーには、必要に応じて内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(FK34改、東邦化学工業(株)製)及びスチレン系樹脂(NAサイズ、荒川化学工業(株)製)を内添した。なお、アルキルケテンダイマー及びスチレン系樹脂の内添の有無及び内添量は、表1に示した。また、パルプスラリーには、カチオン化澱粉(EHCAT14W、オー・ジー(株)製)0.7質量%、両性ポリアクリルアミド系紙力剤(ハーマイドEX-200、ハリマ化成(株)製)0.5質量%、凝集型軽質炭酸カルシウム(TP-NPF、奥多摩工業(株)製)、凝結剤、歩留剤を内添した。得られたパルプスラリーは、オントップ型長網抄紙機にて抄紙して、基紙(灰分率12.0%)を得た。
【0053】
次に、基紙の両面に酸化澱粉(MS#3800、日本食品化工(株)製)を主成分とする塗工液を塗工し、ドライヤーにて乾燥させて塗工層を形成し、圧着用紙を得た。塗工液の塗工には、ロッドメタリングコータを使用した。また、塗工液には、必要に応じて表面サイズ剤としてスチレンアクリレート系樹脂(SS-2700、星光PMC(株)製)を配合し、耐水化剤としてポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂(TDK-168、星光PMC(株)製)を配合した。なお、酸化澱粉、スチレンアクリレート系樹脂、及びポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂の配合の有無及び両面での塗工量は、表1に示した。
【0054】
得られた圧着用紙には、オフセット印刷及びインクジェット印刷を施した。そして、その後に、印刷面に接着剤(水系糊)を塗工し、硬化させて接着層を形成した。接着剤の塗工には、ロールコータを使用した。接着剤の塗工量は、片面当たり、2.0g/m2とした。接着剤の乾燥には、熱風乾燥機を使用した。このようにして得られた試験紙を、接着層同士が対向するように折曲げて圧着させた。この圧着には、圧着シーラーを使用した。この圧着は、10〜3,000kg/cmの圧力で行い、必要に応じて加熱した。
【0055】
以上のようにして得られた試験紙の物性を測定し、また、各種評価を行った。結果は、表2に示した。なお、物性の測定方法は、前述したとおりとした。また、評価の方法は、次に示すとおりとした。
【0056】
(接着性)
試験紙の接着性について、以下の基準で評価した。
◎:折曲部が接着されたまま維持されており、引き剥がすまで接着されていた。
〇:当初は折曲部が接着されたまま維持されていたが、約1日経過すると折曲部の一部に剥がれが認められた。ただし、当該剥がれは、目立たないものであり、実用に供することができるものであった。
△:折曲部の一部に剥がれが認められ、再度、圧着シーラーを掛ける必要があった。実用に供するにはやや難があった。
×:折曲部が接着せず、実用性が全くなかった。
【0057】
(転写汚れ)
折曲部を剥離した際の転写汚れについて、以下の基準で評価した。
◎:印刷が非印刷面に全く転写しなかった。
○:印刷が非印刷面に薄い擦れ程度に転写した。しかしながら、肉眼ではっきりと見ることができるものではなく、実用に供することができるものであった。
△:印刷が非印刷面に転写し、実用に供するにはやや難があった。
×:印刷が非印刷面に色濃く転写し、実用性が全くなかった。
【0058】
(乾燥性)
本評価は、オフセット印刷及びインクジェット印刷を施す前の試験紙(圧着用紙)に対して行った。具体的には、まず、試験紙に顔料インクで罫線を印刷した。そして、印刷直後に罫線部分を布で拭き取り、乾燥性を以下の基準で評価した。印刷には、プリンター/PX−045A(セイコーエプソン(株)製)を使用した。印刷モードは、「スーパーファイン紙、標準」とした。なお、乾燥性の評価が下がるにしたがって、実機印刷でのロール汚れが顕著になると考えられる。
◎:罫線部分に汚れが殆どなかった。
〇:印刷部分に汚れが認められた。しかしながら、当該汚れは、目立たないものであり、実用に供することができるものであった。
△:印刷部分に汚れがあり、実用に供するにはやや難があった。
×:印刷部分の汚れが酷く、実用性が全くなかった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、水系後糊圧着用紙及び水系後糊圧着用紙の製造方法として利用することができ、例えば、郵送用途に好適に利用することができる。