(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。ここでは、各構成の位置関係を説明するために、X方向、Y方向およびZ方向を導入する。X方向、Y方向およびZ方向は互いに直交しており、Z方向は鉛直上方に沿う方向である。
【0023】
第1の実施の形態.
<基板処理装置>
図1は、基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10はチャンバ110を有している。チャンバ110は天井部111、隔壁112および床部113を有している。天井部111および床部113は例えば板状に形成されており、Z方向において向かい合って配置されている。隔壁112は天井部111の周縁と床部113の周縁とを連結する。このチャンバ110の内部は、基板W1に対する処理を行うための処理室10aとなる。チャンバ110は、後述する各種構成を収容する。
【0024】
<基板保持部>
この処理室10aには、基板保持部1が配置されている。基板保持部1は、基板W1を水平に保持する部材である。つまり基板保持部1は、基板W1の主面に垂直な方向がZ方向に沿う姿勢で、基板W1を保持する。基板保持部1は、例えば樹脂またはセラミックなどで形成される。基板W1が半導体基板(すなわち半導体ウエハ)の場合、基板W1は略円形の平板状である。基板W1は基板保持部1の上面側に載置される。
【0025】
基板保持部1は、本体部13と複数の突起部12とを有している。本体部13は例えば円柱形状を有しており、複数の突起部12は本体部13の上面に設けられている。本体部13の上面の径は基板W1の径と同程度以上である。複数の突起部12は基板W1側に突出する。この場合、基板W1は複数の突起部12によって支持される。この突起部12はピンとも呼ばれる。突起部12は例えば石英で作製される。本体部13は導電性を有しており、例えば導電性樹脂または導電性セラミックなどによって形成される。
【0026】
図1の例において、基板保持部1には、回転機構11が取り付けられている。回転機構11は、基板W1の中心を通り、かつ、Z方向に沿う軸を回転軸として、基板保持部1を回転させる。これにより、基板W1を回転させることができる。回転機構11は例えばモータを有しており、制御部7によって制御される。このような基板保持部1としては、例えばスピンチャックを採用できる。
【0027】
<気体供給部>
図1の例においては、気体供給部4が設けられている。気体供給部4は天井部111に取り付けられている。気体供給部4は例えばファン・フィルタ・ユニット(FFU)であってもよい。この気体供給部4は、基板W1の処理に適した気体を外部から処理室10aへと供給する。例えば気体供給部4は不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)または酸素を処理室10aへと供給する。気体供給部4による気体の供給/停止は制御部7によって制御される。なお気体供給部4は複数種の気体を、基板W1に対する処理に応じて選択的に処理室10aへと供給してもよい。
【0028】
<排気部>
図1の例においては、排気部8が設けられている。排気部8は処理室10a内の気体を外部に排気する。排気部8は排気ダクト81と吸引機構82とを備えている。排気ダクト81は筒状の形状を有している。排気ダクト81は隔壁112を貫通しており、その一端が処理室10a内において開口している。排気ダクト81の他端には、吸引機構82が設けられている。この吸引機構82が排気ダクト81の内部の気体を吸引することにより、処理室10a内の気体が排気ダクト81を介して吸引されて、外部へと排気される。
【0029】
<処理>
処理室10aにおいて、基板W1に対する処理が行われる。
図1の例においては、基板処理装置10は、後に詳述するように、処理液を用いた処理および紫外線を用いた処理を基板W1に対して選択的に行うことができる。以下では、まず処理液を用いた処理を行うための構成について簡単に述べ、次に、紫外線を用いた処理を行うための構成について述べる。
【0030】
<ノズル>
図1の例においては、処理室10aには、処理液ノズル5が設けられている。処理液ノズル5は、処理液を基板W1に供給するためのノズルである。例えば処理液ノズル5は、その下端において吐出口を有しており、当該吐出口から処理液が吐出される。処理液の一種類として、例えばIPA(イソプロピルアルコール)を採用し得る。この処理液は例えばリンス処理に用いられる。なお処理液ノズル5からは、複数種の処理液が処理に応じて選択的に吐出されてもよい。
【0031】
処理液ノズル5は保持部51によって保持されている。この保持部51は支持軸52、アーム53、昇降機構54および回動機構55を備えている。支持軸52は、基板保持部1の側方(図ではX方向において隣り合う位置)に配置されている。支持軸52は例えば棒状の形状を有しており、Z方向に沿って延在している。この支持軸52の一端には、アーム23の基端が連結されている。アーム53も棒状の形状を有しており、水平方向に沿って延在している。アーム53の先端には処理液ノズル5が連結されている。
【0032】
回動機構55はZ方向に沿う軸を中心として、支持軸52を所定の角度範囲で回動させる。例えば回動機構55はモータを有している。回動機構55が支持軸52を回動させることにより、アーム53の先端に連結された処理液ノズル5は、支持軸52を中心とした円弧上を移動する。この円弧には、次に説明する対向位置および待機位置が含まれる。即ち、対向位置は、処理液ノズル5が基板W1とZ方向において対向する位置である。例えば対向位置としては、基板W1の中心とZ方向において対向する位置を採用できる。待機位置は処理液ノズル5が基板W1とZ方向において対向しない位置である。つまり、回動機構55はこの対向位置と待機位置との間において、処理液ノズル5を当該円弧に沿って往復移動させることができる。
【0033】
昇降機構54は支持軸52をZ方向に沿って移動させる。昇降機構54は例えばボールねじ機構を有している。昇降機構54が支持軸52をZ方向に沿って移動させることにより、アーム53の先端に連結された処理液ノズル5もZ方向に移動する。処理液ノズル5が基板W1とZ方向において対向した状態において、昇降機構54は処理液ノズル5と基板W1との間の距離を調整することができる。
【0034】
昇降機構54および回動機構55の動作により、処理液ノズル5は、基板W1の中心と対向し、かつ、基板W1から所定距離だけ離れた位置で停止する。この状態において、処理液ノズル5から処理液が基板W1に供給される。またこのとき、回転機構11は基板保持部1を回転させて基板W1を回転させる。これにより、処理液は遠心力により基板W1の主面上で広がってその全面に作用し、その後、基板W1の周縁から外側へと飛散する。
【0035】
<処理液排液機構>
図1の例においては、処理室10aには、処理液排液機構6が配置されている。処理液排液機構6は基板保持部1の周囲を囲んでおり、基板W1の周縁から飛散した処理液を集めて排液または回収する。処理液排液機構6は、処理液に対して対食性を有する材料(例えば樹脂など)によって形成される。処理液排液機構6は例えば排気桶60、カップ61〜63および案内部64〜67を備えている。排気桶60は、基板保持部1の周囲を囲む円筒状の形状を有している。排気桶60には、使用済みの処理液が溜められ、その処理液は図示しない排液機構へと導かれる。
【0036】
カップ61〜63は排気桶60の内部において、基板保持部1の外側に位置している。各カップ61〜63は、リング状の底面部と、当該底面部の内周側の周縁から上方に延びる内周壁と、当該底面部の外周側の周縁から上方に延びる外周壁とを有している。このような底面部、内周壁および外周壁は、上方に開口する溝を形成し、この溝が、使用済みの処理液を集めて排液するための排液溝として機能する。底面部の所定位置には、不図示の孔が形成されており、当該孔を介して、不図示の排液機構へと処理液が回収される。
【0037】
カップ61はカップ62よりも内周側に位置しており、カップ62はカップ63よりも内周側に位置している。つまり、カップ61が最も内周側に位置しており、カップ63が最も外周側に位置しており、カップ62がカップ61,63の間に位置している。
【0038】
案内部64〜67は排気桶60の内部に位置しており、基板保持部1の周囲を囲む形状を有している。具体的には、各案内部64〜67は、筒状部分と、筒状部分の上方側の周縁から、上方側に傾きつつ内周側に向かって延びる傾斜部分とを有している。
【0039】
案内部64は案内部65よりも内周側に位置しており、案内部65は案内部66よりも内周側に位置しており、案内部66は案内部67よりも内周側に位置している。案内部64〜66の筒状部分の下方側の端は、それぞれカップ61〜63の排液溝とZ方向において対向し、案内部67の筒状部分は、カップ63の外周面と排気桶20の内周面との間に位置している。なお
図1の例においては、カップ63と案内部65とは互いに連結されている。
【0040】
案内部64〜67は互いに独立して昇降可能に構成されている。案内部64〜67はそれぞれ不図示の昇降機構によって昇降する。昇降機構は例えばボールねじ機構を有している。案内部64〜67が下降した状態では、案内部64〜67の各々の上方側の一端は、Z方向において基板W1よりも下方側に位置している。案内部64〜67が昇降した状態では、案内部64〜67の筒状部分が基板W1を囲む。
【0041】
案内部64が上昇した状態において、基板W1の周縁から飛散する処理液は案内部64にあたる。この処理液は重力によって案内部64に沿って下方に移動して、カップ61の排液溝へ落ちる。案内部64が下降し案内部65が昇降した状態においては、基板W1の周縁から飛散する処理液は案内部65にあたる。この処理液は重力によって案内部65に沿って下方に移動して、カップ62の排液溝へ落ちる。案内部64,65が下降し案内部66が昇降した状態においては、基板W1の周縁から飛散する処理液は案内部66にあたる。この処理液は案内部66に沿って下方に移動して、カップ63の排液溝へ落ちる。案内部64〜66が下降し案内部67が上昇した状態においては、基板W1の周縁から飛散する処理液は案内部67にあたる。この処理液は案内部67に沿って下方へ移動して、排気桶60へ落ちる。
【0042】
この案内部64〜67を、処理液ノズル5から吐出される処理液の種類に応じて上昇させることで、処理液の種類に応じて処理液を集めることができる。
【0043】
図1の例においては、排気桶60の下端には排気口60aが形成されており、排気ダクト81の一端が、排気桶60のうち排気口60aの周縁部に連結されている。吸引機構82の吸引によって、排気桶60の内部の雰囲気が排気口60aおよび排気ダクト81を介して外部へと排気される。
【0044】
次に、紫外線を用いた除電処理を行うための構成について述べる。
【0045】
<紫外線照射器>
処理室10aには、紫外線照射器2が配置されている。紫外線照射器2は基板W1に対して上方側に配置されている。紫外線照射器2は紫外線を発生し、当該紫外線を基板W1の主面(基板保持部1とは反対側の面)へ照射することができる。紫外線照射器2は例えば棒状の形状または平板状の形状を有している。紫外線照射器2が棒状の形状を有している場合には、例えば、紫外線照射器2はその長手方向が水平方向に沿う姿勢で配置される。また紫外線照射器2が平板状の形状を有しているときには、例えば、紫外線照射器2はその厚み方向がZ方向に沿う姿勢で配置される。
【0046】
紫外線照射器2としては、例えばエキシマUV(紫外線)ランプを採用できる。この紫外線照射器2は、例えば放電用のガス(例えば希ガスまたは希ガスハロゲン化合物)を充填した石英管と、一対の電極とを備えている。放電用のガスは一対の電極間に存在している。一対の電極間に高周波で高電圧を印加することにより、放電用ガスが励起されてエキシマ状態となる。放電用ガスはエキシマ状態から基底状態へ戻る際に紫外線を発生する。
【0047】
図1の例においては、紫外線照射器2は保持部21によって保持されている。保持部21は支持軸22とアーム23と昇降機構24と回動機構25とを有している。支持軸22は、基板保持部1の側方(図ではX方向において隣り合う位置)に配置されている。支持軸22は例えば棒状の形状を有しており、Z方向に沿って延在している。支持軸22の上方側の一端には、アーム23の基端が連結されている。アーム23は棒状の形状を有しており、水平方向に沿って延在している。アーム23の先端には紫外線照射器2が連結されている。
【0048】
回動機構25は、Z方向に沿う軸を中心として、支持軸22を所定の角度範囲で回動させる。例えば回動機構25はモータを有している。回動機構25が支持軸22を回動させることにより、アーム23の先端に連結された紫外線照射器2は、支持軸22を中心とした円弧上を移動する。この円弧には、次に説明する対向位置および待機位置が含まれている。即ち対向位置は、紫外線照射器2が基板W1とZ方向において対向する位置であり、待機位置は紫外線照射器2が基板W1とZ方向において対向しない位置である。つまり、回動機構25はこの対向位置と待機位置との間において、紫外線照射器2を当該円弧に沿って往復移動させることができる。
【0049】
昇降機構24は支持軸22をZ方向に沿って移動させる。昇降機構24は例えばボールねじ機構を有している。昇降機構24は支持軸22をZ方向に沿って移動させることで、紫外線照射器2をZ方向に移動させることができる。よって、紫外線照射器2が基板W1と対向した状態において、昇降機構24は紫外線照射器2と基板W1との間の距離を調整することができる。
【0050】
紫外線照射器2が基板W1に対して紫外線を照射することにより、基板W1に蓄えられている電子を除去することができる。言い換えれば、基板W1の帯電量を低減することができる。その理由の一つとして、基板W1において光電効果が生じている、と考えられている。紫外線の照射により基板W1から放出された電子は、処理室10a内を移動する。この電子は処理室10a内の気体分子に作用して、当該気体分子をイオン化し得る。例えば電子は処理室10a内の酸素に作用して酸素イオンを生成し得る。よって電子はイオン(気体)として処理室10a内を移動し得る。
【0051】
<電子捕捉部>
基板処理装置10には、電子捕捉部3が配置されている。電子捕捉部3は基板W1から放出された電子を捕捉する。具体的には、電子捕捉部3は導電性部材31、直流電源32およびスイッチ33を備えている。導電性部材31は導電性を有しており、例えば金属、半導体、導電性樹脂および導電性セラミックの少なくともいずれか一つによって形成される。導電性部材31の形状は特に限定されないものの、例えば立方体の形状を有している。
図1の例においては、導電性部材31はZ方向において基板W1よりも上方側において、隔壁112の内周面に固定されている。導電性部材31は処理室10a内において露出している。
【0052】
直流電源32は導電性部材31と基板保持部1との間に接続されており、基板保持部1の電位よりも高い電位を導電性部材31へと与える。つまり、直流電源32の高電位側の出力端が配線を介して導電性部材31に接続され、直流電源32の低電位側の出力端が配線を介して基板保持部1(具体的には本体部13)に接続される。
図1の例においては、基板保持部1(具体的には本体部13)は接地されている。
【0053】
スイッチ33は例えば半導体スイッチまたはリレーであって、導電性部材31、直流電源32および基板保持部1の電気的な接続/非接続を切り替える。
図1の例においては、スイッチ33は導電性部材31と直流電源32との間に接続されている。スイッチ33のオン/オフは制御部7によって制御される。
【0054】
<シャッタ>
隔壁112には、基板W1の出入り口として機能する不図示のシャッタが設けられている。シャッタは開閉可能に設けられており、制御部7によって制御される。シャッタが開いたときには、処理室10aが外部と連通し、シャッタが閉じたときに、処理室10aが密閉される。
【0055】
<制御部>
制御部7は基板処理装置10の各構成を制御する。具体的には、制御部7は紫外線照射器2、回転機構11、昇降機構24,54、回動機構25,55、気体供給部4、吸引機構82、スイッチ33およびシャッタを制御する。
【0056】
制御部7は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部7が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部7が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部7が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0057】
<基板処理装置の動作>
図2は、基板処理装置10の動作の一例を示すフローチャートである。初期的には、紫外線照射器2および処理液ノズル5はそれぞれ待機位置で停止しており、スイッチ33はオフしている。またここでは、排気部8による排気は常時行われているものとする。
【0058】
ステップS1にて、基板W1が基板保持部1に配置される。具体的には、制御部7がシャッタを開いた上で、不図示の搬送装置が、この開いたシャッタを介して、基板W1を処理室10aの内部に運んで、基板保持部1へ配置する。そして、搬送装置が処理室10aから退いた後に、制御部7はシャッタを閉じる。
【0059】
この基板W1は負に帯電している。例えば、純水(DIW:Deionized water)を基板W1の主面に流すリンス処理において、純水から酸化シリコン膜へ多くの電子が移動する。よってリンス処理後の基板W1は負に帯電している可能性が高い。ここでは、負に帯電した基板W1が基板保持部1の上に配置される。
【0060】
図3は、ステップS1における基板処理装置10の状態の一例を模式的に示している。
図3では、図示を簡略化すべく、処理液ノズル5、保持部21,51および吸引機構82を省略し、また処理液排液機構6を簡略化して示している。以下で参照する
図4〜6についても同様である。
図3では、基板W1に電子が蓄積されていることを、基板W1に近接して表記された、「マイナス」の記号を含む楕円で示している。
【0061】
次にステップS2にて、制御部7は気体供給部4に気体を供給させる。例えば気体供給部4は窒素を処理室10aへ供給する。次にステップS3にて、制御部7は、昇降機構24および回動機構25を制御して、紫外線照射器2を基板W1の上方で停止させる。このときの紫外線照射器2と基板W1との間の距離は例えば3[mm]に設定され得る。なおステップS1,S2の実行順序は適宜に変更してもよく、またステップS1,S2は互いに並行して実行されてもよい。ステップS2,S3も同様である。
【0062】
次にステップS4にて、制御部7は紫外線照射器2に紫外線の照射を開始させる。なお制御部7は、処理室10a内の雰囲気(特に基板W1と紫外線照射器2との間の空気)が所定の雰囲気になったときに、ステップS4を実行してもよい。例えば制御部7はステップS3からの経過時間を計時する。経過時間の計時はタイマ回路などの計時回路によって行われ得る。制御部7はこの経過時間が所定の第1所定期間よりも大きいか否かを判断し、肯定的な判断をしたときに、ステップS4を実行してもよい。あるいは、処理室10a内の雰囲気を計測するセンサを基板処理装置10に設けてもよい。制御部7は、処理室10a内の雰囲気が所定の雰囲気になったか否かを当該計測値に基づいて判断してもよい。
【0063】
図4は、ステップS4における基板処理装置10の状態の一例を模式的に示している。
図4においては、紫外線照射器2が紫外線を照射していることを、紫外線照射器2の近傍の矢印で示している。この紫外線は基板W1の主面に照射される。これにより、基板W1の電荷が除去される。つまり基板W1が除電される。この理由の一つは、基板W1に光電効果が生じ、電子が基板W1から処理室10aに放出されるからである。紫外線の波長としては例えば252[nm]以下の波長を採用できる。この波長範囲において、基板W1の電荷を効果的に除去できるからである。より効果的な波長として、172±20[nm]内の波長を採用できる。
【0064】
制御部7は紫外線の照射中において回転機構11を制御して、基板保持部1を、ひいては基板W1を回転させてもよい。これにより、紫外線が基板W1の主面に均一に照射される。
【0065】
次にステップS5にて、制御部7は処理を終了すべきか否かを判断する。例えば制御部7はステップS4からの経過時間が第2所定期間を超えているときに、処理を終了すべきと判断してもよい。あるいは、基板W1の表面電位を測定する表面電位計を設け、制御部7はその測定値が所定の電位基準値を下回ったときに処理をすべきと判断してもよい。処理を終了すべきでないと判断したときには、制御部7は再びステップS5を実行する。
【0066】
処理を終了すべきと判断すると、ステップS6にて、制御部7は紫外線照射器2に紫外線の照射を停止させる。これにより、基板W1に対する除電処理が終了する。
【0067】
次にステップS7にて、制御部7はスイッチ33をターンオンする。これにより、導電性部材31には、基板保持部1の電位よりも高い電位が印加される。したがって、処理室10aにおいて、基板保持部1と導電性部材31との間に電界が発生する。この電界の方向は、導電性部材31から基板保持部1へ向かう方向である。
【0068】
紫外線の照射によって基板W1から放出された電子がこの電界に進入すると、当該電界に起因したクーロン力が電子に作用する。これにより、電子は導電性部材31へ向かって移動する。
図5は、ステップS5における基板処理装置10の状態の一例を模式的に示している。なお実際には、基板W1から放出された電子は気体分子に作用して気体分子をイオン化する。よってクーロン力はイオン(気体)に作用する。つまり、このイオンが導電性部材31へと移動する。
図5では、基板W1から放出された電子が導電性部材31へと移動する様子を、破線の矢印で示している。
【0069】
電子は電子捕捉部3によって捕捉される。具体的には、電子は導電性部材31、直流電源32およびスイッチ33を経由して接地へと流れる。つまり、電流が流れる。
【0070】
次にステップS8にて、制御部7は電界の印加を終了すべきか否かを判断する。例えば制御部7は、ステップS7からの経過時間が第3所定期間を超えているか否かを判断し、経過時間が第3所定時間を超えているときに、電界の印加を終了すべきと判断する。電界の印加を終了しないと判断したときには、制御部7はステップS8を再び実行する。
【0071】
電界の印加を終了すべきと判断したときには、ステップS9にて、制御部7はスイッチ33をターンオフする。これにより、基板保持部1と導電性部材31との間の電界が消失する。
【0072】
以上のように、基板処理装置10によれば、基板W1に蓄積された電子を除去することができ、しかも、電子捕捉部3がその基板W1から放出された電子を捕捉する。よって、基板W1から放出された電子が他の部材(例えば処理液排液機構6)に蓄積されることを抑制できる。つまり、基板処理装置10内の他の部材(例えば処理液排液機構6)が帯電することを抑制できる。
【0073】
比較例として、電子捕捉部3が設けられていない場合を考慮する。この場合、基板W1から放出された電子は、例えば、処理液排液機構6に蓄積され得る。つまり、処理液排液機構6が帯電し得る。そして、処理液排液機構6が帯電した状態で、処理液を用いた処理を基板W1に対して行う場合、処理液の飛沫が処理液排液機構6に衝突することにより、電子が処理液排液機構6から処理液へと急速に移動(放電)し得る。この電子の放電に起因して熱が発生するので、この熱に起因して例えば処理液排液機構6の寿命が低下し得る。また、この処理液が引火性を有している場合には、電子の放電に起因して発火し得る。
【0074】
その一方で、本実施の形態にかかる基板処理装置10によれば、電子捕捉部3が電子を捕捉するので、処理液排液機構6の帯電を抑制できる。よって、上記放電の発生を抑制または回避できる。
【0075】
図2の例では、基板処理装置10は紫外線の照射を終了した後で、スイッチ33をターンオンしている。つまり、紫外線の照射と電界の印加とがそれぞれ異なる期間で行われている。なお、紫外線の照射と電界の印加は並行して行われてもよい。
【0076】
図6は、基板処理装置10の上記動作の一例を示すフローチャートである。ステップS11〜S14はステップS1〜S4とそれぞれ同一である。ステップS14の次のステップS15にて、制御部7はスイッチ33をターンオンする。つまり、紫外線の照射中にも電界が印加される。これにより、紫外線の照射によって基板W1から放出された電子は当該電界に起因して、導電性部材31へと移動する。なおステップS14,S15の実行順序は逆でもよく、あるいは、ステップS14,S15は並行して実行されてもよい。
【0077】
次にステップS16にて、制御部7は紫外線の照射を終了すべきか否かを判断する。紫外線の照射を終了すべきではないと判断したときには、制御部7は再びステップS16を実行する。紫外線の照射を終了すべきと判断したときには、ステップS17にて、制御部7は紫外線照射器2に紫外線の照射を停止させる。次にステップS18にて、制御部7はスイッチ33をターンオフする。なおステップS17,S18の実行順序は逆でもよく、あるいは、ステップS17,S18は並行して実行されてもよい。
【0078】
これによれば、紫外線の照射中に電界が印加されているので、基板W1から放出された電子は速やかに導電性部材31へ移動する。よって、当該電子が他の部材に蓄積されることを更に抑制することができる。
【0079】
第2の実施の形態.
図7は、基板処理装置10Aの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10Aは測定部34の有無という点で基板処理装置10と相違する。測定部34は、電子捕捉部3によって捕捉された電子の量を測定する。具体的には、測定部34は電流計である。測定部34は、電子捕捉部3を流れる電流(具体的には、導電性部材31から直流電源32およびスイッチ33を経由して流れる電流)i1を測定する。この電流i1は、電子捕捉部3によって捕捉された電子の単位時間当たりの量とみなすことができる。測定部34によって測定された電流i1の値は制御部7へと出力される。
【0080】
さて、基板W1の除電が完了する直前においては、除電の開始の直後に比べて、基板W1から放出される電子は少なくなると考えられる。よって、基板W1の除電が完了する直前では、電子捕捉部3が捕捉する電子の単位時間当たりの量も少なくなる。つまり、電流i1も小さくなる。
【0081】
そこで、制御部7は測定部34の測定値に基づいて、紫外線照射器2の紫外線の照射の停止およびスイッチ33のターンオフを決定する。具体的には、制御部7は、測定部34によって測定された電流i1が所定の基準値irefよりも小さいか否かを判断する。基準値irefは例えば予め設定されており、零に近い値に設定される。電流i1が基準値irefよりも小さいと判断したときには、制御部7は紫外線照射器2に紫外線の照射を停止させる。
【0082】
図8は、基板処理装置10Aの動作の一例を示す図である。ステップS21〜S25はそれぞれステップS11〜S15と同一である。ステップS25の次のステップS26にて、測定部34は電流i1を測定し、これを制御部7へと出力する。次にステップS27にて、制御部7は電流i1が基準値irefよりも小さいか否かを判断する。電流i1が基準値irefよりも小さくないと判断したときには、再びステップS26が実行される。電流i1が基準値irefよりも小さいと判断したときには、ステップS28にて、制御部7は紫外線照射器2に紫外線の照射を停止させる。つまり、制御部7は、紫外線を用いた処理を終了すべきと判断して、紫外線の照射の停止を決定する。
【0083】
次にステップS29にて、制御部7はスイッチ33をターンオフする。なおステップS28,S29の実行順序は逆であってもよく、ステップS28,S29は互いに並行に実行されてもよい。
【0084】
以上のように、第2の実施の形態においては、制御部7は、電子捕捉部3によって捕捉された電子に基づいて、紫外線の照射の停止を決定する。したがって、紫外線を用いた除電処理の終了を適切に判断することができる。また表面電位計を設ける必要がない。表面電位計は電流計に比べて構造が複雑であり、高価であるので、表面電位計を設けない場合には基板処理装置10の製造コストを低減できる。
【0085】
第3の実施の形態.
図9は、基板処理装置10Bの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10Bは気体供給部41の有無という点で基板処理装置10と相違する。気体供給部41は導電性部材31の周囲に不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)を供給する。気体供給部41は配管411を有している。配管411は隔壁112を貫通する。
図9の例においては、配管411は導電性部材31の上方において隔壁112を貫通している。この配管411の一端(吐出口とも呼ぶ)411aは処理室10aにおいて開口している。具体的には、吐出口411aは導電性部材31に向かって開口している。気体供給部41は配管411を介して、不活性ガスを導電性部材31の周囲へ流す。
【0086】
さて、揮発性の処理液が揮発すると、その処理液は処理室10a内を漂って移動する。あるいは、処理液の飛沫が処理室10a内を移動することもある。そして、この処理液を含む雰囲気が導電性部材31に作用すると、導電性部材31を腐食する可能性がある。例えば処理液がウェットエッチング用の処理液であり、導電性部材31が金属である場合には、処理液が導電性部材31に付着することにより、導電性部材31が腐食する。
【0087】
第3の実施の形態では、導電性部材31の周囲に不活性ガスが流れることにより、この不活性ガスの流れが当該雰囲気に対する保護層として機能する。したがって、処理液が導電性部材31に付着することを抑制できる。これにより、導電性部材31の腐食を抑制することができる。
【0088】
第4の実施の形態.
第4の実施の形態では、電子捕捉部3の配置位置について説明する。
図10は、基板処理装置10Cの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10Cは電子捕捉部3の位置という点で基板処理装置10と相違する。
【0089】
第4の実施の形態では、電子捕捉部3(より具体的には導電性部材31)を処理室10aにおいて、気流の流れの下流側に配置する。
図10の例において、天井部111に設けられた気体供給部4から処理室10aへと気体が供給され、隔壁112の下端に配置された排気ダクト81を介して、処理室10a内の気体が排気される。よって、処理室10a内には、天井部111から排気ダクト81へ向かう気流が形成される。
【0090】
また
図10の例においては、排気ダクト81には、排気孔8aが形成されている。この排気孔8aは排気桶60の外周面と隔壁112の内周面との間に位置しており、排気ダクト81の側面をZ方向に沿って貫通している。この構造によれば、処理室10a内の気体の一部は排気桶60を通って排気口60aから排気ダクト81の内部へと流れるとともに、他の一部は排気桶60と隔壁112との間を通って排気孔8aから排気ダクト81の内部へと流れる。
【0091】
図10の例において、導電性部材31は排気孔8aの近傍に位置している。具体的には、導電性部材31は排気孔8aの上方において、隔壁112の内周面に固定されている。
【0092】
さて、基板W1から放出された電子は気体分子に作用して、当該気体分子をイオン化し得る。このイオン(気体)は、電界に起因したクーロン力を受ける一方で、他の気体分子との衝突によっても力を受ける。つまり、クーロン力を無視すれば、このイオンは気流に沿って流れる。
【0093】
第4の実施の形態においては、導電性部材31は気流の下流側に位置している。これによれば、クーロン力のみならず、気流の流れによっても、イオンを導電性部材31へと移動させることができる。つまり、イオンは導電性部材31へと移動しやすい。ひいては、電子捕捉部3は電子を捕捉しやすい。
【0094】
図11は、基板処理装置10Dの構成の一例を概略的に示している。基板処理装置10Dは複数の導電性部材31が配置されているという点で基板処理装置10Cと相違する。
図11の例においては、導電性部材31として導電性部材31a,31bが配置されている。導電性部材31は実質的に電子を捕捉する部分であるので、基板処理装置10Dは複数の電子捕捉部3を備えている、とも説明できる。
【0095】
導電性部材31bは処理室10aにおいて気体の流れの下流側に配置されている。一方で、導電性部材31aは、紫外線照射器2と水平方向(図ではX方向)で隣り合う位置であって、基板W1の主面とZ方向において向かい合う位置に配置されている。
図11の例においては、導電性部材31aはアーム23の下側の面に取り付けられている。これによれば、導電性部材31aを導電性部材31bよりも基板W1の主面に近い位置に配置することができる。
【0096】
導電性部材31a,31bには、直流電源32によって、基板保持部1の電位よりも高い電位が与えられる。
図9の例においては、スイッチ33の一端(直流電源32とは反対側の一端)が配線を介してそれぞれ導電性部材31a,31bに接続されている。スイッチ33がオンすることにより、導電性部材31a,31bには、基板保持部1の電位よりも高い電位が印加される。これにより、導電性部材31aと基板保持部1との間、および、導電性部材31bと基板保持部1との間には、電界が印加される。
【0097】
導電性部材31aは基板W1の主面に近い位置に配置されるので、基板W1から放出された電子は短い移動距離で導電性部材31aに到達し得る。したがって、導電性部材31aは電子を捕捉しやすい。これによれば、電子が他の部材に蓄積されることを効率的に抑制することができる。
【0098】
また複数の導電性部材31a,31bが配置されているので、一方で捕捉できなかった電子を他方で捕捉することができる。これにより、電子が他の部材に蓄積されることを更に抑制することができる。なお必ずしも複数の導電性部材31を配置する必要は無く、例えば導電性部材31aのみが配置されてもよい。