【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するヒンダートアミン系化合物を含む硬化性組成物は、耐黒変性があることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される化合物(A):
【化1】
(式(1)中、R
1は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6アルコキシ基であり、
Aは、各々独立して、下記式(2)で表される基、又は、フェニレン基であり、
B
1は、各々独立して、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
B
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
pは0以上の整数である。
【化2】
(式(2)中、R
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは0〜100の整数である。))、及び、
下記式(12)で表される化合物(E):
【化3】
(式(12)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、又は、炭素原子数2〜30のアルケニル基を表し、
Xは、単結合を表すか、又は、−CO−L−(Lは、直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜30のアルキレン基を表す。−COは、Aに結合する。)を表し、
Aは、下記式で表される基である。
【化4】
(式中Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数2〜30のアルケニル基を表す。))
を含む硬化性組成物であって、
前記式(1)で表される化合物(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける、前記式(1)中p≧1である化合物の面積が、前記式(1)中p=0である化合物及び前記式(1)中p≧1である化合物の面積の総面積に対して、0%以上50%未満である、硬化性組成物。
[2]
化合物(F)としてヒンダートフェノール系酸化防止剤をさらに含む、[1]に記載の硬化性組成物。
[3]
前記化合物(A)が、前記式(1)中のR
1がメチルであり、且つ、前記式(2)で表される基中のR
2がメチルである化合物を含む、[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4]
前記式(1)中のB
1が、ノルボルネン骨格若しくはノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基、及び/又は、B
2が、ノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[5]
ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有する化合物(B)と、
ヒドロシリル化反応触媒(C)と、をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[6]
密着性改良剤(D)をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[7]
前記化合物(B)が、環状シロキサン;環状シロキサンのケイ素原子に結合する1以上の水素原子に代えてノルボルネン骨格又はノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基を有する化合物;及び、環状シロキサンのケイ素原子に結合する1以上の水素原子に代えて下記式(5)で表される置換基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、[5]又は[6]に記載の硬化性組成物。
【化5】
(式(5)中、R
1は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6アルコキシ基であり、
Aは、各々独立して、下記式(2)で表される基、又は、フェニレン基であり、
B
1は、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
B
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
pは0以上の整数である。
【化6】
(式(2)中、R
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは0〜100の整数である。))
【0008】
以下に、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0009】
[硬化性組成物]
本実施形態の硬化性組成物は、下記式(1)で表される化合物(A):
【化7】
【0010】
(式(1)中、R
1は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6アルコキシ基であり、
Aは、各々独立して、下記式(2)で表される基、又は、フェニレン基であり、
B
1は、各々独立して、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
B
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
pは0以上の整数である。
【化8】
(式(2)中、R
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは0〜100の整数である。))、及び、
下記式(12)で表される化合物(E):
【化9】
(式(12)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数2〜30のアルケニル基を表し、
Xは、単結合を表すか、又は、−CO−L−(Lは、直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜30のアルキレン基を表す。−COは、Aに結合する。)を表し、
Aは、下記式で表される基である。
【化10】
(式中Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数2〜30のアルケニル基を表す。))
を含む硬化性組成物である。
また、前記式(1)で表される化合物(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける、前記式(1)中p≧1である化合物の面積が、前記式(1)中p=0である化合物及び前記式(1)中p≧1である化合物の面積の総面積に対して、0%以上50%未満である。
【0011】
〔化合物(A)〕
化合物(A)は、上記式(1)で表される化合物であり、下記式(3)で表される構成単位と、B
2で表される構成単位とを有する直鎖構造を有し、その両末端がB
1で封鎖されている。化合物(A)は、上記式(1)で表される化合物の1種又は2種以上を含む。
【0012】
【化11】
【0013】
式(1)中のR
1は、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基であり、非置換若しくは置換の炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜12の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基が挙げられる。
【0014】
非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基における置換としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等の置換基による置換が挙げられる。
置換の炭素数1〜12の炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0015】
また、式(1)中のR
1は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、非置換若しくは置換の炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基における置換としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等の置換基による置換が挙げられる。
【0016】
上記R
1の中でも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましい。また、工業的に製造することが容易で、入手容易性の観点から、式(1)中のR
1が、全てメチル基であることが好ましい。
【0017】
式(1)中のAは、各々独立して、上記式(2)で表される基、又は、フェニレン基である。
式(2)におけるR
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、その具体例としては、上記R
1と同様のものが挙げられる。R
2はR
1と同様の基であっても異なる基であってもよい。
【0018】
式(2)におけるnは、0〜100の整数であり、0〜50の整数であることが好ましく、0〜10の整数であることがより好ましく、0〜5の整数であることがさらに好ましい。また、式(1)におけるAがフェニレン基である場合、隣接するケイ素原子への2つの置換位置は、1位と2位、1位と3位、1位と4位のいずれであってもよい。
【0019】
化合物(A)は、式(1)中のR
1がメチルであり、且つ、式(2)で表される基中のR
2がメチルである化合物を含むことが好ましい。すなわち、前記式(3)で表される構成単位が下記式(4)で表される構成単位であることが好ましい。式(4)で表される構成単位を有することにより、得られる硬化物の引張弾性率、引張伸度、及び破断エネルギーがより向上する傾向にある。
【0020】
【化12】
【0021】
B
1は、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であれば特に限定されないが、例えば、下記式(NB11)〜(NB16)で表されるノルボルネン骨格又はノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基、及び、下記式(DCP11)〜(DCP17)で表されるジシクロペンタジエン由来骨格を有する多環式炭化水素基が挙げられる。式(1)中のB
1は、ノルボルネン骨格又はノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基であることが好ましい。
上記の多環式炭化水素基を有することにより、得られる硬化物の引張弾性率、引張伸度、及び破断エネルギーがより向上する傾向にある。なお、以下のノルボルネン骨格又はノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基をまとめて、「NB1基」と略記し、ジシクロペンタジエン由来骨格を有する多環式炭化水素基をまとめて、「DCP1基」と略記することがある。
【0022】
【化13】
【0023】
B
2は、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であれば特に限定されないが、例えば、下記式(NB21)〜(NB24)で表されるノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基、及び、下記式(DCP21)〜(DCP26)で表されるジシクロペンタジエン由来骨格を有する多環式炭化水素基が挙げられる。式(1)中のB
2は、ノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基であることが好ましい。
上記の多環式炭化水素基を有することにより、得られる硬化物の引張弾性率、引張伸度、及び破断エネルギーがより向上する傾向にある。なお、以下のノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基をまとめて、「NB2基」と略記し、ジシクロペンタジエン由来骨格を有する多環式炭化水素基をまとめて、「DCP2基」と略記することがある。なお、B
2は、炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
【0024】
【化14】
【0025】
なお、上記式で表されるNB2基、DCP2基は、その左右方向が上記記載のとおりに限定されるものではなく、上記構造式は、実質上、個々の上記構造を紙面上で180度回転させた構造であってもよい。
【0026】
式(1)で表される化合物における、1分子あたりの炭素−炭素二重結合の数は、2個以上であり、2〜6個であることが好ましく、2個であることがより好ましい。炭素−炭素二重結合の数が2個以上であることにより、得られる硬化物の引張弾性率、引張伸度、及び破断エネルギーがより向上する。また、炭素−炭素二重結合の数が6個以下であることにより、得られる硬化物が割れやすくなることをより抑制できる傾向にある。式(1)で表される化合物が有する炭素−炭素二重結合は、B
1に由来するものであり、炭素−炭素二重結合を、式(3)で表される構成単位と、B
2で表される構成単位とを有する直鎖構造の末端に、又は、側鎖として有していてもよい。
【0027】
前記式(1)で表される化合物(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける、前記式(1)中p≧1である化合物(以下、化合物(A2)とも称す)の面積は、前記式(1)中p=0である化合物(以下、化合物(A1)とも称す)及び前記式(1)中p≧1である化合物の面積の総面積に対して、0%以上50%未満である。上記化合物(A2)及び化合物(A1)の面積比率は、それぞれ、化合物(A)中の化合物(A2)及び化合物(A1)の含有量に相当する。
上記化合物(A2)の面積は、好ましくは0%以上40%以下であり、より好ましくは0%以上35%以下であり、さらに好ましくは1%以上35%以下である。
化合物(A2)の面積が50%未満であることにより、得られる硬化物の引張弾性率、引張伸度、及び破断エネルギーがより向上する。化合物(A2)の面積が1%以上であることにより、耐リフロー性がより向上する。また、化合物(A2)の面積が25%以下であることにより、ガスバリア性がより向上する傾向にある。さらに、化合物(A2)の面積が5%以上20%以下であることにより、破断エネルギーがさらに向上する傾向にある。
なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる化合物(A1)及び化合物(A2)の総面積に対する化合物(A2)の面積比率(含有量)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
化合物(A2)における式(1)中のpは、1以上であり、1〜100であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましい。化合物(A2)における式(1)中のpが上記範囲内であることにより、耐リフロー性、ガスバリア性、破断エネルギーがより向上する傾向にある。
【0029】
式(1)中のpの値は、後述する化合物(A)の製造方法において、水素原子が結合したケイ素原子を1分子中に2個有する化合物(a)1molに対して、反応する、炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物(b)の量を増大させることにより、減少させることができる。すなわち、化合物(b)の量を増大させることにより、化合物(A1)の含有量がより増加し、化合物(A2)の含有量がより減少する傾向にある。
【0030】
上述した化合物(A1)としては、特に限定されないが、例えば、以下に記載するものが挙げられる。なお、「NB」及び「DCP」の意味するところは、上記のとおりである。化合物(A1)は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0031】
NB−Me
2SiOSiMe
2−NB
NB−Me
2SiO(Me
2SiO)SiMe
2−NB
NB−Me
2SiO(Me
2SiO)
4SiMe
2−NB
NB−Me
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2−NB
NB−Me
2SiO(Me
2SiO)
12SiMe
2−NB
NB−Me
2Si−p−C
6H
4−SiMe
2−NB
NB−Me
2Si−m−C
6H
4−SiMe
2−NB
DCP−Me
2SiOSiMe
2−DCP
DCP−Me
2SiO(Me
2SiO)SiMe
2−DCP
DCP−Me
2SiO(Me
2SiO)
4SiMe
2−DCP
DCP−Me
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2−DCP
DCP−Me
2SiO(Me
2SiO)
12SiMe
2−DCP
DCP−Me
2Si−p−C
6H
4−SiMe
2−DCP
DCP−Me
2Si−m−C
6H
4−SiMe
2−DCP
【0032】
上述した化合物(A2)としては、特に限定されないが、例えば、以下に記載するものが挙げられる。なお、「NB」及び「DCP」の意味するところは、上記のとおりである。また、下記式中、pは1以上の整数である。化合物(A2)は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0033】
【化15】
【0034】
〔化合物(A)の製造方法〕
化合物(A)は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物(a)と、炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物(b)と、を付加反応させることにより得ることができる。
【0035】
(化合物(a))
化合物(a)としては、特に限定されないが、例えば、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化16】
【0037】
(式(6)中、R
1は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6アルコキシ基であり、
Aは、下記式(2)で表される基、又は、フェニレン基である。
【0038】
【化17】
【0039】
(式(2)中、R
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは0〜100の整数である。))
【0040】
前記式(6)におけるAが、上記式(2)で表される基である化合物は、下記式(7)で表される。
【0041】
【化18】
【0042】
(式(7)中、R
1及びR
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは0〜100の整数である。)
【0043】
式(6)、(2)、及び(7)における炭化水素基の炭素数は、1〜12であり、1〜6であることが好ましい。上記炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基が挙げられる。
【0044】
式(6)、(2)、及び(7)中の、「非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基」における置換としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等の置換基による置換が挙げられる。
置換の炭素数1〜12の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0045】
また、式(6)、(2)、及び(7)におけるアルコキシ基の炭素原子数は、1〜6であり、1〜4であることが好ましい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等が挙げられる。
【0046】
式(6)、(2)、及び(7)における上記R
1及びR
2の中でも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましい。また、工業的に製造することが容易で、入手容易性の観点から、R
1及びR
2が全てメチル基である化合物が好ましい。
【0047】
また、式(2)及び(7)におけるnは、0〜100の整数であり、0〜50の整数であることが好ましく、0〜10の整数であることがより好ましく、0〜5の整数であることがさらに好ましい。
【0048】
式(7)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。なお、以下、「Me」はメチル基を意味する。なお、式(7)で表される化合物(a)は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0049】
HMe
2SiOSiMe
2H
HMe
2SiO(Me
2SiO)SiMe
2H
HMe
2SiO(Me
2SiO)
4SiMe
2H
HMe
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2H
HMe
2SiO(Me
2SiO)
12SiMe
2H
【0050】
前記式(6)におけるAがフェニレン基である化合物は、例えば、下記式(8)で表される。−Si(R
1)
2H基は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。
【0051】
【化19】
【0052】
(式中、R
1は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6アルコキシ基である。)
【0053】
上記式(8)中のR
1としては、式(6)、(2)、及び(7)におけるR
1と同様の基を挙げることができる。式(8)中のR
1は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましく、全てメチル基であることがより好ましい。
【0054】
上記式(8)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式で表されるシルフェニレン化合物が挙げられる。なお、この式(8)で表される化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0055】
HMe
2Si−p−C
6H
4−SiMe
2H:1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン
HMe
2Si−m−C
6H
4−SiMe
2H:1,3−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン
【0056】
化合物(a)は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。化合物(a)としては、本実施形態の硬化性組成物の硬化物の耐光黄変性の観点から、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
【0057】
(化合物(b))
化合物(b)は、炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物である。炭素−炭素二重結合は付加反応性を有することが好ましい。なお、本実施形態において「付加反応性」とは、ヒドロシランの付加(ヒドロシリル化反応として周知)を受け得る性質を意味する。
【0058】
化合物(b)としては、特に限定されないが、例えば、(i)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間に炭素−炭素二重結合が形成されているもの;(ii)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が、炭素−炭素二重結合含有基によって置換されているもの;又は、(iii)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間に炭素−炭素二重結合が形成されており、かつ、多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が炭素−炭素二重結合含有基によって置換されているものが挙げられる。
【0059】
化合物(b)としては、例えば、下記式(x)で表される5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン;下記式(y)で表される6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、これら両者の組み合わせ(以下、これら3者を区別する必要がない場合は、「ビニルノルボルネン」と総称することがある);下記式(z)で表されるジシクロペンタジエン等が挙げられる。
なお、ビニルノルボルネンのビニル基の立体配置は、シス配置(エキソ型)又はトランス配置(エンド型)のいずれであってもよく、現在工業的入手できるビニルノルボルネンは、これら両配置の異性体の混合物であるため、これら量は異性体の組み合わせであっても差し支えない。
【0060】
【化20】
【0061】
(付加反応条件)
化合物(a)と化合物(b)の付加反応の条件は、SiH基が、炭素−炭素二重結合にヒドロシリル化反応する条件であれば特に制限されない。以下、本実施形態における好適な反応条件について記載するが、反応条件は以下に限定されない。
【0062】
化合物(b)の使用量は、化合物(a)1molに対して、好ましくは10mol超過30mol以下であり、より好ましくは15mol以上25mol以下である。化合物(b)の使用量を化合物(a)の使用量に対して過剰とすることにより、(b)成分の構造に由来する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する化合物(A)を得ることができる。得られる化合物(A)は、上記(a)成分に由来する残基を有する。その残基は、上記(b)成分の構造に由来し、炭素−炭素二重結合を有しない多環式炭化水素の残基に結合している構造を含むものであってもよい。
【0063】
化合物(a)と化合物(b)の付加反応においては、必要に応じてヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。ヒドロシリル化反応触媒としては、従来から公知のものを全て使用することができる。例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、その他の付加反応条件、溶媒の使用等については、特に限定されず通常のとおりとすればよい。
【0064】
〔化合物(E)〕
本実施形態の硬化性組成物は、下記式(12)で表される化合物(E)を含む。式(12)で表される化合物(E)は、NOアルキル型のヒンダートアミン系酸化防止剤である。
【0065】
【化21】
(式(12)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数2〜30のアルケニル基を表し、
Xは、単結合を表すか、又は、−CO−L−(Lは、直鎖又は分岐鎖を有する炭素数1〜30のアルキレン基を表す。−COは、Aに結合する。)を表し、
Aは、下記式で表される基である。
【化22】
(式中Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数2〜30のアルケニル基を表す。))
【0066】
下記式(12)で表される化合物(E)を使用することによって、LEDを点灯させる場合に、光及び熱の同時に暴露される際の耐黒変性が向上する。
【0067】
式(12)のRにおける炭素数1〜30のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデデシル基、イコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
式(12)のRにおける炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシ−tert−ブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシイソペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシ−sec−ヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシラウリル基、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデデシル基、ヒドロキシイコシル基、ヒドロキシトリアコンチル基等が挙げられる。これらのヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシ基の置換位置が異なる構造異性体を含む。
式(12)のRにおける炭素数2〜30のアルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、トリアコンテニル基等が挙げられる。これらのアルケニル基は、二重結合の位置が異なる構造異性体を含み、シス体及びトランス体の幾何異性体も含む。
【0068】
式(12)中のLにおける、直鎖又は分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。
【0069】
化合物(E)は、市販品として入手することもでき、有機合成手法を用いて調製することによって、得ることができる。
【0070】
化合物(E)の調製方法としては、例えば、4−ヒドロキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンに、R−COO−OOC−Rで表されるペルオキシド化合物(式中、Rは、式(12)におけるRと同義である。)を反応させ、4−ヒドロキシ−1−(RO)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを得る工程(以下、1段階目ともいう)と、
上記4−ヒドロキシ−1−(RO)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン2分子を、少なくとも1つのカルボニル基を介して連結する工程(以下、2段階目ともいう)と
を含む、製造方法によって製造することができる。
【0071】
(1段階目)
1段階目においては、4−ヒドロキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、R−COO−OOC−Rで表されるペルオキシド化合物とを反応させる。
R−COO−OOC−Rで表されるペルオキシド化合物としては、上記4−ヒドロキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン中のオキシ基と反応して式(12)中のORを形成するものであれば特に制限されず、例えば、ジヘキサノイルペルオキシド、ジヘプタノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジヘノナイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジウンデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジトリデカノイルペルオキシド、ジテトラデカノイルペルオキシド、ジペンタデカノイルペルオキシド、ジヘキサデカノイルペルオキシド、ジヘプタデカノイルペルオキシド、ジオクタデカノイルペルオキシド、ジイコサノイルペルオキシド等を挙げることができる。
4−ヒドロキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、R−COO−OOC−Rで表されるペルオキシド化合物との反応条件は、特に制限されない。化合物の使用量、反応温度、溶媒の使用、精製の方法等については、特に限定されず通常行われる方法を適宜選択すればよい。
【0072】
(2段階目)
2段階目では、上記4−ヒドロキシ−1−(RO)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン2分子を、少なくとも1つのカルボニル基を介して連結する。上記連結としては、例えば、4−ヒドロキシ−1−(RO)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、ホスゲン、又は、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸等のジカルボン酸とを反応させる方法等が挙げられる。
4−ヒドロキシ−1−(RO)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、ホスゲン、又は、ジカルボン酸との反応条件は、特に制限されない。化合物の使用量、反応温度、溶媒の使用、精製の方法等については、特に限定されず通常行われる方法を適宜選択すればよい。
【0073】
化合物(E)は、市販品として入手することもでき、具体的には、LA81、TINUVIN123等が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0074】
【化23】
【0075】
【化24】
【0076】
また、本実施形態の硬化性組成物は、酸化防止剤として、式(12)で表される化合物(E)(NOアルキル型のヒンダートアミン系酸化防止剤)に加え、さらに別の酸化防止剤を併用することができる。別の酸化防止剤としては、後述の酸化防止剤が挙げられる。
また、別の酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤(以下、化合物(F)ともいう。)を併用することが好ましい。ヒンダートフェノール系酸化防止剤を併用することによって、LEDを点灯させた場合に、光及び熱の同時に暴露される際の耐黒変性がさらに良好になる。
併用の方法としては、具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールと、Irganox1010と、並びに、LA81及び/又はTINUVIN123とを添加することや、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールと、Irgano3114と、並びに、LA81及び/又はTINUVIN123とを添加することが挙げられる。
【0077】
本実施形態における化合物(E)の含有量は、特に制限されないが、上記化合物(A)の質量、あるいは、上記化合物(A)と化合物(B)との合計質量に対して、好ましくは0.1〜100,000質量ppmであり、より好ましくは1〜50,000質量ppmであり、さらに好ましくは10〜10,000質量ppmである。化合物(E)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物は耐黒変性がみられる。
【0078】
〔化合物(B)〕
本実施形態の硬化性組成物は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有する化合物(B)(化合物(B)とも称す)をさらに含んでもよい。化合物(B)が有するSiHと、化合物(A)が有する炭素−炭素二重結合とがヒドロシリル化反応することにより、化合物(A)に対して化合物(B)が付加することができる。この際、SiHを3個以上有する化合物(B)は3分岐以上の架橋点として機能する。これにより、3次元網状構造の硬化物を与えることができる。
【0079】
前記化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、下記式(9)で表される環状シロキサン系化合物や、HMS991(Gelest社製)等のような鎖状シロキサン系化合物等が挙げられる。
【0080】
【化25】
【0081】
(式(9)中、R
3は、独立して、水素原子、又は、アルケニル基以外の非置換若しくは置換の炭素数1〜12、好ましくは1〜6の炭化水素基であり、qは3〜10、好ましくは3〜8の整数、rは0〜7、好ましくは0〜2の整数であり、かつq及びrの和は3〜10、好ましくは3〜6の整数である。)
【0082】
上記式(9)中のR
3がアルケニル基以外の非置換若しくは置換の炭化水素基である場合、かかる炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;及びこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
上記の中でも、前記R
3は、全てメチル基であるが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0083】
また、化合物(B)としては、本実施形態の硬化性組成物の硬化時に、式(9)で表される環状シロキサン系化合物である、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの揮発を抑える観点から、例えば、上記ビニルノルボルネンの一種又は二種と1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとをヒドロシリル化反応させて得られるSiHを1分子中に3個以上有する付加反応生成物、例えば、下記式(10)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0084】
【化26】
【0085】
(式(10)中、sは1〜100、好ましくは1〜10の整数である。)
【0086】
また、該化合物(B)としては、本発明の硬化性組成物の硬化時に、式(9)で表される環状シロキサン系化合物である、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの揮発を抑える観点から、例えば、前記化合物(A)と1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとをヒドロシリル化反応させて得られるSiHを1分子中に3個以上有する付加反応生成物、例えば、下記式(11)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0087】
【化27】
【0088】
(式中、tは1〜100、好ましくは1〜10の整数である)
【0089】
その他の化合物(B)としては、例えば、Gelest社のHMS−013、HMS−031、HMS−064、HMS−071、HMS−082、HMS−151、HMS−301、HMS−H271,HMS−991,HMS−993,HES−992,HDP−111,HMP−502,HAM−302,HAM−3012,HQM105,HQM107等のハイドロシロキサン等が挙げられる。
【0090】
耐リフロー性及びガスバリア性の観点から、上記化合物(B)として、好適な具体例は以下の化合物である。好適な具体例は、これに限定されるものではない。
【0091】
(HMeSiO)
3
(HMeSiO)
4
(HMeSiO)
5
(HMeSiO)
3(Me
2SiO)
(HMeSiO)
4(Me
2SiO)
【0092】
【化28】
【0093】
前記化合物(B)は、環状シロキサン;環状シロキサンのケイ素原子に結合する1以上の水素原子に代えてノルボルネン骨格又はノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基を有する化合物;及び、環状シロキサンのケイ素原子に結合する1以上の水素原子に代えて下記式(5)で表される置換基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような化合物(B)を用いることにより、得られる硬化物の引張弾性率、引張伸度、及び破断エネルギーが非環状シロキサン骨格を有するSiH化合物を用いた場合に比べ、不連続に向上する傾向にある。環状シロキサンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0094】
【化29】
【0095】
(式(5)中、R
1は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、
Aは、各々独立して、下記式(2)で表される基、又は、フェニレン基であり、
B
1は、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
B
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の多環式炭化水素基であり、
pは0以上の整数である。
【0096】
【化30】
【0097】
(式(2)中、R
2は、各々独立して、非置換若しくは置換の炭素数1〜12の炭化水素基、又は、非置換若しくは置換の炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは0〜100の整数である。))
【0098】
化合物(B)は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
上記環状シロキサンとしては、例えば、前記式(9)で表される環状シロキサン系化合物が挙げられる。
上記環状シロキサンのケイ素原子に結合する1以上の水素原子に代えてノルボルネン骨格又はノルボルナン骨格を有する多環式炭化水素基を有する化合物としては、例えば、式(10)で表される化合物及び式(11)で表される化合物が挙げられる。
【0099】
化合物(B)中のケイ素原子に結合した水素原子の量は、化合物(A)中の炭素−炭素二重結合1molに対して、好ましくは0.1〜2.0molであり、より好ましくは0.5〜2.0molであり、さらに好ましくは0.8〜1.5molである。化合物(B)中のケイ素原子に結合した水素原子の量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の硬度がより向上し、コーティング材料等の用途に、より好適に用いることができる傾向にある。
【0100】
また、本実施形態の硬化性組成物が、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に1〜2個有する化合物(B’)を含む場合、化合物(B)及び化合物(B’)中のケイ素原子に結合した水素原子の総量は、化合物(A)中の炭素−炭素二重結合1molに対して、好ましくは0.5〜2.0molであり、より好ましくは0.8〜1.5molである。化合物(B)及び化合物(B’)中のケイ素原子に結合した水素原子の量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の硬度がより向上し、コーティング材料等の用途に、より好適に用いることができる傾向にある。
【0101】
なお、本実施形態の硬化性組成物がケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に1〜2個有する化合物(B’)を含む場合、化合物(B)中のケイ素原子に結合した水素原子の量は、化合物(B)及び化合物(B’)中のケイ素原子に結合した水素原子の量100mol%に対して、好ましくは20〜100mol%であり、より好ましくは40〜100mol%である。
【0102】
また、本実施形態の硬化性組成物が化合物(A)以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A’)と、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に1〜2個有する化合物(B’)を含む場合、化合物(B)及び化合物(B’)中のケイ素原子に結合した水素原子の総量は、化合物(A)及び化合物(A’)中の付加反応性炭素−炭素二重結合1molに対して、好ましくは0.5〜2.0molであり、より好ましくは0.8〜1.5molである。化合物(B)及び化合物(B’)中のケイ素原子に結合した水素原子の量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の硬度がより向上し、コーティング材料等の用途により好適に用いることができる傾向にある。
【0103】
なお、本実施形態の硬化性組成物が化合物(A)以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A’)を含む場合、化合物(A)中の炭素−炭素二重結合の量は、化合物(A)及び化合物(A’)中の炭素−炭素二重結合の量100mol%に対して、好ましくは20〜100mol%であり、より好ましくは40〜100mol%である。
上記化合物(A’)としては、例えば、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタビニルシルセスキオキサン等を挙げることができる。
【0104】
〔ヒドロシリル化反応触媒(C)〕
本実施形態の硬化性組成物は、ヒドロシリル化反応触媒(C)をさらに含んでもよい。ヒドロシリル化反応触媒(C)としては、特に限定されないが、例えば、上記「化合物(A)の製造方法」で記載したものと同様のものを例示することができる。
本実施形態の硬化性組成物は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有する化合物(B)と、ヒドロシリル化反応触媒(C)と、をさらに含むことが好ましい。
【0105】
ヒドロシリル化反応触媒(C)の含有量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記化合物(A)と化合物(B)との合計質量に対して、白金族金属原子基準で、好ましくは0.1〜500ppmであり、より好ましくは1〜100ppmである。ヒドロシリル化反応触媒(C)の含有量が上記範囲内であることにより、硬化反応に要する時間が適度のものとなり、硬化物の着色がより抑制される傾向にある。
【0106】
〔密着性改良剤(D)〕
本実施形態の硬化性組成物は、密着性改良剤(D)をさらに含むことが好ましい。密着性改良剤(D)をさらに含むことにより、基材への密着性がより向上する傾向にある。
【0107】
密着性改良剤(D)としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系シランカップリング剤(例えば、メタクリロプロピルトリメトキシシラン、メタクリロプロピルジメトキシシラン、メタクリロプロピルトリエトキシシラン、メタクリロプロピルジエトキシシラン、アクリロプロピルトリメトキシシラン、アクリロプロピルジメトキシシラン、アクリロプロピルトリエトキシシラン、アクリロプロピルジエトキシシラン等);エポキシ系シランカップリング剤(グリシジルプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン等);ノルボルニル基を有するシランカップリング剤(ノルボルニルエチルトリメトキシシラン、ノルボルニルエチルジメトキシシラン、ノルボルニルエチルトリエトキシシラン、ノルボルニルエチルジエトキシシラン等)等を用いることができる。このなかでも、密着強度向上の観点から、グリシジルプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0108】
密着性改良剤(D)の含有量は、特に制限されないが、上記化合物(A)の質量、あるいは、上記化合物(A)と化合物(B)との合計質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。密着性改良剤(D)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の基材への密着性がより向上する傾向にある。
【0109】
〔他の配合成分〕
本実施形態の硬化性組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて他の成分を配合することができる。
【0110】
(酸化防止剤)
本実施形態の硬化性組成物の硬化物が大気中の酸素により酸化されると、熱や光により硬化物が着色する原因となる。特に熱や光が同時にかかる場合は、より硬化物の着色が顕著になる。そこで、本実施形態の硬化性組成物に、必要に応じ、酸化防止剤を配合することにより着色を未然に防止することができる。
【0111】
この酸化防止剤としては、従来から公知のものが全て使用することができ、例えばヒンダートフェノール系酸化防止剤(化合物(F))を使用することができる。より具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、Irganox1010、Irganox1035、Irganox3114等が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。2種類以上を組み合わせる場合、1種類目に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを選択するとLEDを点灯させた場合に、光及び熱の同時に暴露される際の耐黒変性が向上するという顕著な効果が見られるため、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールに加えて、もう1種類として、Irganox1010、Irganox3114等のヒンダートフェノール型の酸化防止剤を選択することが好ましい。
【0112】
また、酸化防止剤としては、従来から公知のものが全て使用することができ、例えば
HALS等のヒンダートアミン系酸化防止剤を使用することができる。より具体的には、NH型のヒンダートアミン系酸化防止剤であるCHIMMASORB944FDL、CHIMMASORB2020FDL、LA57、LA63P、LA68、LA77Y等が挙げられる。また、Nアルキル型のヒンダートアミン系酸化防止剤であるLA52、LA72、PA144、TINUVIN622SF等が挙げられる。
【0113】
酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記化合物(A)の質量、あるいは、上記化合物(A)と化合物(B)との合計質量に対して、1種類の酸化防止剤につき、好ましくは10〜10,000ppmであり、より好ましくは100〜5,000ppmである。前記範囲内の含有量とすることによって、酸化防止能力が十分発揮され、着色、白濁、酸化劣化等の発生がなく光学的特性に優れた硬化物が得られる。
【0114】
(粘度調整剤及び硬度調整剤)
本実施形態の硬化性組成物の粘度又は本実施形態の硬化性組成物から得られる硬化物の硬度等を調整するために、ケイ素原子に結合したアルケニル基又はSiHを有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン若しくは網状オルガノポリシロキサン;非反応性の(即ち、ケイ素原子に結合したアルケニル基及びSiHを有しない)直鎖状若しくは環状ジオルガノポリシロキサン、シルフェニレン系化合物等を、粘度調整剤及び/又は硬度調整剤として配合してもよい。
【0115】
本実施形態の硬化性組成物に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有する種々の構造のオルガノポリシロキサンを配合する場合、その含有量は、上記アルケニル基と前記化合物(A)が有する炭素−炭素二重結合との合計量1molに対する、前記化合物(B)中のSiHが、通常、0.5〜2.0mol、好ましくは0.8〜1.5molとなる量とするのがよい。また、SiHを有する種々の構造のオルガノポリシロキサンを配合する場合、その含有量は、前記SiHと前記化合物(B)が有するSiHとの合計量が、前記(a)成分が有する炭素−炭素二重結合1molに対して、通常、0.5〜2.0mol、好ましくは0.8〜1.5molとなる量とするのがよい。
【0116】
(その他の添加剤)
また、ポットライフを確保するために、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等の付加反応制御剤を配合することができる。更に、透明性に影響を与えない範囲で、強度を向上させるためにヒュームドシリカ等の無機質充填剤を配合してもよいし、必要に応じて、染料、顔料、難燃剤等を配合してもよい。
【0117】
更に、太陽光線、蛍光灯等の光エネルギーによる光劣化に対する抵抗性を付与するため光安定剤を用いることも可能である。この光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを補足するヒンダードアミン系安定剤が適しており、酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果はより向上する。光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。また、クラック防止のため可塑剤を添加してもよい。なお、本実施形態の硬化性組成物の硬化条件については、その量により異なり、特に制限されないが、通常、60〜180℃、5〜600分の条件とすることが好ましい。
【0118】
〔硬化性組成物の製造方法〕
本実施形態の硬化性組成物は、例えば、化合物(A)及び化合物(E)、並びに、必要に応じて、化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、密着性改良剤(D)、他の配合成分を混合して製造することができる。
本実施形態の硬化性組成物は、例えば、化合物(A)及び化合物(E)、並びに、必要に応じて、化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、密着性改良剤(D)、他の成分を混合後、加熱による硬化反応を行うことで硬化物とすることができる。