(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
A−1.装置の基本構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、燃料電池スタック100の構成を概略的に示す外観斜視図である。
図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸を示している。
図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図2以降についても同様である。
【0015】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0016】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108という場合がある。各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。
【0017】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0018】
また、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス供給マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0019】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0020】
(発電単位102の構成)
図2から
図5は、発電単位102の構成を概略的に示す説明図である。
図2には、
図1、
図4および
図5のII−IIの位置における発電単位102の断面構成を示しており、
図3には、
図1、
図4および
図5のIII−IIIの位置における発電単位102の断面構成を示しており、
図4には、
図2のIV−IVの位置における発電単位102の断面構成を示しており、
図5には、
図2のV−Vの位置における発電単位102の断面構成を示している。
【0021】
図2および
図3に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0022】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない。
【0023】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。単セル110は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルに相当する。
【0024】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、少なくともZrを含んでおり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0025】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
【0026】
図2から
図4に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。空気極側フレーム130によって、空気極114とインターコネクタ150との間に空気室166が確保されると共に、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0027】
図2、
図3および
図5に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0028】
図2、
図3および
図5に示すように、燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。具体的には、燃料極側集電体144は、方形の平板形部材に切り込みを入れ、複数の方形部分を曲げ起こすように加工することにより製造される。曲げ起こされた方形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴あき状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。なお、
図5における部分拡大図では、燃料極側集電体144の製造方法を示すため、複数の方形部分の一部の曲げ起こし加工が完了する前の状態を示している。各電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触し、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触する。そのため、燃料極側集電体144は、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間に、例えばマイカにより形成されたスペーサ149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0029】
図2から
図4に示すように、空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えばフェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。集電体要素135は、酸化剤ガス供給連通孔132から酸化剤ガス排出連通孔133に向かう酸化剤ガスOGの流れ方向(X軸負方向)に沿って延びた形状である。すなわち、上下方向視で、集電体要素135の酸化剤ガスOGの流れ方向の幅寸法は、該酸化剤ガスOGの流れ方向に直交する方向(Y軸方向)の幅寸法より長い。以下、集電体要素135について、酸化剤ガスOGの流れ方向を「長辺方向」といい、酸化剤ガスOGの流れ方向に直交する上記方向を「短辺方向」という。また、集電体要素135における空気極114に対向する側の表面を「対向面136」という。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面(集電体要素135の対向面136)とに接触することにより、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。なお、空気極側集電体134の表面は、導電性のコート(図示せず)によって覆われているとしてもよい。空気極側集電体134、または空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、特許請求の範囲における集電部材に相当する。また、また、インターコネクタ150は、特許請求の範囲における離間部に相当し、空気極側集電体134を構成する各集電体要素135は、特許請求の範囲における突出部に相当する。空気極側集電体134の集電体要素135と接合層138との詳細構成については後述する。
【0030】
空気極114と空気極側集電体134とは、導電性の接合層138により接合されている。接合層138は、例えば、ZnとMnとCoとCuとの少なくとも1つを含むスピネル型酸化物(例えば、Mn
1.5Co
1.5O
4やMnCo
2O
4、ZnCo
2O
4、ZnMnCoO
4、CuMn
2O
4)により形成されている。接合層138は、例えば、接合層用のペーストが空気極114の表面の内、空気極側集電体134を構成する各集電体要素135の先端部と対向する部分に印刷され、乾燥工程を経て、各集電体要素135の先端部がペーストに押し付けられた状態で所定の条件で焼成されることにより形成される。また、空気極側集電体134の先端部に接合層用のペーストを、印刷などにより塗布して乾燥した後、空気極114に押し付けて焼成してもよい。接合層138により、空気極114と空気極側集電体134とが電気的に接続される。空気極114と空気極側集電体134とが接合層138により接合された複合体(単セル110、空気極側集電体134、接合層138)が、特許請求の範囲における集電部材−電気化学反応単セル複合体に相当する。
【0031】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161に酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を経て、空気室166に供給される。また、
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171に燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を経て、燃料室176に供給される。
【0032】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134(および接合層138)を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0033】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2に示すように、空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133、酸化剤ガス排出マニホールド162を経て、燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3に示すように、燃料室176から燃料ガス排出連通孔143、燃料ガス排出マニホールド172を経て、燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0034】
A−3.空気極側集電体134の集電体要素135と接合層138との詳細構成:
図6は、空気極側集電体134の集電体要素135と接合層138との詳細構成を示すXZ断面図であり、
図2のV1部分の拡大図である。
図7は、集電体要素135の長辺方向の端部の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、集電体要素135および接合層138のXZ断面は、次の第1の条件と第2の条件との両方を満たす。
第1の条件:長辺方向(X軸方向)において、接合層138の両端は、集電体要素135における空気極114側の両端135Aと同じ位置、または、集電体要素135における空気極114側の両端135Aより内側に位置する。
第2の条件:集電体要素135と接合層138との境界線Lは、平坦線L1と非平坦線L2とを含む。平坦線L1は、長辺方向に沿った直線状の境界線であり、非平坦線L2は、該平坦線L1に対して空気極114側と該空気極114とは反対側との少なくとも一方に突出する凸状の境界線である。なお、長辺方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当し、集電体要素135および接合層138のXZ断面は、特許請求の範囲における突出部および接合層の第1の方向に平行な少なくとも1つの断面に相当する。
【0035】
より具体的には、長辺方向(X軸方向)において、接合層138の両端は、集電体要素135における空気極114側の両端(上述の対向面136の両端)135Aと同じ位置(±100(μm)程度のずれは同じ位置であるとみなす。以下、同じ)である。また、集電体要素135と接合層138との境界線Lは、長辺方向において、略中央部に位置する平坦線L1と、該平坦線L1の両側にそれぞれ位置する一対の非平坦線L2とを含む。各非平坦線L2は、上下方向(Z軸方向)において、平坦線L1に対して空気極114側(Z軸負方向側)に突出する円弧状の境界線である。各非平坦線L2は、該非平坦線L2の両端よりも空気極114側に位置する突出先端点Pを有する。また、各非平坦線L2は、接合層138の両端のいずれか一方の端に位置する。より詳細には、各非平坦線L2の一方の端は、接合層138の両端(集電体要素135の対向面136の両端135A)のいずれか一方と同じ位置に位置する。なお、各非平坦線L2の長辺方向の幅Hは、例えば、0.5(μm)以上、2(μm)以下である。
【0036】
図7に示すように、集電体要素135の対向面136は、長辺方向(X軸方向)において、略中央部に位置する平坦面136Aと、該平坦面136Aの両側のそれぞれに位置する一対の非平坦面136Bとを含む。平坦面136Aは、上述の短辺方向(Y軸方向)の全長にわたって平坦な平面であり、各非平坦面136Bは、短辺方向の全長にわたって、該短辺方向視の断面形状が空気極114側(Z軸負方向側)に突出する円弧状である曲面である。このため、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図6に示すXZ断面だけでなく、短辺方向の任意の位置におけるXZ断面において、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たす。なお、短辺方向は、特許請求の範囲における第3の方向に相当し、集電体要素135の短辺方向に沿った短辺部は、特許請求の範囲における辺部に相当する。
【0037】
以上のように、集電体要素135の対向面136は、空気極114側に突出する非平坦面136Bを含む一方で、空気極114における集電体要素135と対向する側の表面(上面)は、全体が平坦な平面である。このため、
図6に示すように、集電体要素135の非平坦面136Bと空気極114の上面との間における接合層138の第2の厚さD2は、平坦面136Aと空気極114の上面との間における接合層138の第1の厚さD1より薄くなっている。例えば、第1の厚さD1は、10(μm)以上、35(μm)以下であり、第2の厚さD2は、5(μm)以上、25(μm)以下である。
【0038】
図8は、空気極側集電体134の集電体要素135と接合層138との詳細構成を示すYZ断面図であり、
図3のV2部分の拡大図である。
図8に示すように、短辺方向(Y軸方向)において、接合層138の両端は、集電体要素135における空気極114側の両端(上述の対向面136の両端)135Cと同じ位置である。また、集電体要素135と接合層138との境界線Mは、該境界線Mの両端に対して境界線Mの中央部が空気極114側(Z軸負方向側)に突出する円弧状の境界線である。これに対して、上述したように、空気極114の上面は、全体が平坦な平面である。このため、集電体要素135と接合層138とのYZ断面図において、集電体要素135の中央部と空気極114の上面との間における接合層138の厚さD4は、集電体要素135の両端135Cと空気極114の上面との間における接合層138の厚さD3より薄くなっている。
【0039】
A−4.インターコネクタ150(空気極側集電体134,集電体要素135)の製造方法:
図9は、インターコネクタ150(空気極側集電体134,集電体要素135)の製造方法の一例を示す説明図である。
図9に示すように、本実施形態では、まず、平板形状の金属体200を準備し(S110)、この金属体200にプレス型Wを用いてプレス加工を施す(S120〜S140)。プレス型Wにおける金属体200に対向する側の表面は、平坦面WBと、該平坦面WBの両側のそれぞれに位置する一対の突出面WAとを備える。各突出面WAは、平坦面WBに対して金属体200側に突出する曲面である。このようなプレス型Wによって金属体200が押圧されると、金属体200における各突出面WAによって押圧される部分が、金属体200における平坦面WBによって押圧される部分より、プレス型Wとは反対側に盛り上がるように変形する(S130,S140)。この変形により、金属体200の上面側が、上述の平坦面136Aおよび一対の非平坦面136Bを含む形状になる。この変形後の金属体200に切削等の加工を施すことにより、上述のインターコネクタ150を作製することができる。なお、インターコネクタ150は、
図9に示す作製方法に限定されず、エッチング等の他の作製方法を用いて作製することができる。
【0040】
A−5.本実施形態の効果:
例えば、集電体要素135の対向面136の全体が平坦である構成では、接合層138を形成した後の乾燥過程で、接合層138が収縮して接合層138と接触する集電体要素135の端部で剥離が生じ、十分な接合力が得られず、空気極側集電体134と空気極114との間の導通が十分に確保されないおそれがある。これに対して、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図6に示すように、集電体要素135および接合層138のXZ断面は、上述の第1の条件と第2の条件との両方を満たす。これにより、集電体要素135の対向面136の全体が平坦である構成に比べて、集電体要素135と接合層138との接触面積が広いことにより、集電体要素135と接合層138との間の接合強度が高いため、集電体要素135と接合層138との間の剥離の発生を抑制することができる。
【0041】
また、上述の第1の条件と第2の条件との両方を満たす場合、燃料電池スタック100の製造段階において、次の効果がある。すなわち、空気極114と集電体要素135との接合工程では、空気極114と集電体要素135とを、接合剤(図示せず)を介して重ね合わせて、接合剤を乾燥させることによって接合層138を形成させる。その乾燥過程で、接合剤が収縮することにより、集電体要素135と接合層138との間の剥離が発生するおそれがある。しかし、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、集電体要素135と接合層138との境界線Lは、非平坦線L2を含む。このため、集電体要素135と接合剤との接触面積が広いことにより、接合剤の乾燥過程において集電体要素135と接合剤(接合層138)との間の剥離の発生を抑制することができる。また、接合剤は、長辺方向の収縮量が短辺方向の収縮量より大きい。これは、接合剤の長辺方向の全長が、短辺方向の全長より長いからである。このため、特に、長辺方向において集電体要素135と接合層138との境界線Lが非平坦線を含むと、剥離の発生をより効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、各非平坦線L2は、接合層138の両端のいずれか一方の端に位置する。これにより、非平坦線L2が、接合層138の両端のいずれにも位置しない構成(非平坦線L2が接合層138の端から離間している)に比べて、接合層138の端部において、集電体要素135との剥離の発生を抑制することができる。また、
図6に示すように、集電体要素135と接合層138との境界線Lは、接合層138における長辺方向の両端側にそれぞれ位置する一対の非平坦線L2と、それら一対の非平坦線L2の間に位置する1つの平坦線L1とを含む。このように、平坦線L1が、主としてイオン導電経路に利用される接合層138の中央部に位置することにより、接合層138の厚さの不均一に起因するイオン導電経路の抵抗ばらつきを抑制できる。また、非平坦線L2が、特に集電体要素135と接合層138との剥離が発生し易い接合層138の両端に位置することにより、集電体要素135と接合層138との剥離の発生をより確実に抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、
図6に示すXZ断面だけでなく、短辺方向の任意の位置におけるXZ断面において、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たす。これにより、集電体要素135の短辺方向(Y軸方向)の全長にわたって、集電体要素135と接合層138との剥離の発生を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、各非平坦線L2は、上下方向(Z軸方向)において、平坦線L1に対して空気極114側(Z軸負方向側)に突出している。これにより、
図6に示すように、集電体要素135の非平坦面136Bと空気極114の上面との間における接合層138の第2の厚さD2は、平坦面136Aと空気極114の上面との間における接合層138の第1の厚さD1より薄くなっている。このため、非平坦面136Bと空気極114の上面との間(本実施形態では、接合層138の端側)において、温度変化による接合層138の変化量が小さい分だけ、温度変化による集電体要素135と接合層138との剥離の発生を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、非平坦線L2は、角部がない曲線である。これにより、角部に応力が集中し、集電体要素135が損傷することを抑制することができる。
【0046】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
上記実施形態では、長辺方向(X軸方向)において、接合層138の両端の少なくとも一方が、集電体要素135における空気極114側の両端(上述の対向面136の両端)135Aより内側に位置するとしてもよい。
【0048】
上記実施形態では、集電体要素135と接合層138との境界線Lは、略中央部に位置する平坦線L1と、該平坦線L1の両側にそれぞれ位置する一対の非平坦線L2とを含むとしているが、平坦線L1を2つ以上含むとしてもよいし、非平坦線L2を1つだけ含むとしてもよいし、非平坦線L2を3つ以上含むとしてもよい。また、非平坦線L2は、接合層138の両端より内側に位置するとしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、非平坦線L2は、円弧状であったが、これに限らず、三角形状や矩形状であるとしてもよい。また、非平坦線L2の数を増やしたりすることにより、アンカー効果の高まり、集電体要素135と接合層138との間の接合強度をより向上させることができる。また、非平坦線L2は、平坦線L1に対して空気極114側(Z軸負方向側)に突出する線部分と、空気極114とは反対側(Z軸正方向側)に突出する線部分と、の両方を含む凹凸状としてもよい。
【0050】
また、
図10は、空気極側集電体134Xの集電体要素135Xと接合層138Xとの詳細構成を示すXZ断面図である。
図10に示すように、集電体要素135Xと接合層138Xとの境界線LXは、長辺方向において、略中央部に位置する平坦線L1Xと、該平坦線L1Xの両側にそれぞれ位置する一対の非平坦線L2Xとを含む。各非平坦線L2Xは、上下方向(Z軸方向)において、平坦線L1Xに対して空気極114とは反対側(Z軸正方向側)に突出する円弧状の境界線である。各非平坦線L2Xは、該非平坦線L2Xの両端よりも空気極114とは反対側に位置する突出先端点PXを有する。平坦線L1Xと空気極114の上面との間における接合層138の第5の厚さD5は、非平坦線L2Xと空気極114の上面との間における接合層138の第6の厚さD6より薄くなっている。これにより、主としてイオン導電経路に利用される接合層138の中央部において、接合層138の抵抗成分を低減することができる。
【0051】
本明細書における「第2の方向に沿った平坦線」は、第2の方向に厳密に平行である線だけを意味するものではなく、第2の方向に対して±5度程度傾いた線も含まれる。
【0052】
また、上記実施形態では、
図6に示すXZ断面だけでなく、短辺方向の任意の位置におけるXZ断面において、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たすとされているが、集電体要素135および接合層138の上下方向に平行な少なくとも1つの断面が、第1の条件および第2の条件の両方を満たせばよい。また、上記実施形態において、短辺方向の任意の位置だけでなく、長辺方向の任意の位置における断面が、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たすとしてもよい。これにより、接合層138の全周にわたって集電体要素135と接合層138との剥離の発生を抑制することができる。
【0053】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、空気極114は、活性層210と集電層220との二層構成であるとしているが、空気極114が活性層210および集電層220以外の他の層を含むとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0054】
また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0055】
なお、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての集電体要素135および接合層138について、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たす必要は無く、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1組の集電体要素135および接合層138について、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たせば、該集電体要素135および接合層138について剥離の発生を抑制することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の集電部材−電気化学反応単セル複合体および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、集電体要素135および接合層138について、上記第1の条件および第2の条件の両方を満たせば、該集電体要素135および接合層138について剥離の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0057】
また、次のような集電部材−電気化学反応単セル複合体の製造方法であるとしてもよい。
「固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、
前記電気化学反応単セルの前記空気極の側に配置され、前記空気極に向けて突出する突出部を有する集電部材と、
前記突出部と前記空気極とを接合する導電性の接合層と、を備える集電部材−電気化学反応単セル複合体の製造方法において、
前記集電部材の前記突出部における前記空気極との対向面は、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿った平坦面と、前記平坦面に対して前記空気極側および前記空気極とは反対側の少なくとも一方に突出する凸状の非平坦面とを含み、
前記空気極と前記集電部材の前記突出部における前記対向面とを接合剤を介して重ねる工程と、
前記接合剤を乾燥させることにより、前記接合層を形成する工程と、を含む。」
この製造方法によれば、上述したように、突出部(集電体要素135)と接合剤との接触面積が広いことにより、接合剤の乾燥過程において集電部材(集電体要素135)と接合剤(接合層138)との間の剥離の発生を抑制することができる。