(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体圧アクチュエータの正方向作動側と逆方向作動側の各作動流体流路にそれぞれ連通する二つの負荷側ポートを有するスプール弁からなり、当該スプール弁の圧力ポート及び低圧ポートと各負荷側ポートとの連通状態を切換えて流体圧アクチュエータの作動方向を選択可能とする切換弁装置において、
二つの負荷側ポートを共に圧力ポートに連通させる中立状態と、圧力ポートが一方の負荷側ポートに連通し、且つ低圧ポートが他方の負荷側ポートに連通して作動流体を流通させる第一の連通状態と、圧力ポートが他方の負荷側ポートに連通し、且つ低圧ポートが一方の負荷側ポートに連通して作動流体を流通させる第二の連通状態とを、スプールで切換可能とされ、
前記スプールが、
前記第二の連通状態におけるスプール位置で、一方の負荷側ポートと圧力ポートとを非連通とするように形成される連通阻止部と、
前記中立状態における位置から前記第一の連通状態における位置の方にスプールが所定距離ずれて、他方の負荷側ポートが圧力ポートに連通しない状態を生じさせる第一の中間位置で、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの連通を制限する又は連通を完全に止めるように形成される連通制限部とを少なくとも備え、
前記連通制限部が、前記第一の中間位置からスプールがさらにずれて前記第一の連通状態の位置に達すると、一方の負荷側ポートと圧力ポートとを連通可能とする形状として形成され、
前記スプールが、前記連通阻止部と連通制限部との間に、凹部とされる通路部を設けられてなり、前記中立状態におけるスプール位置で、前記通路部が一方の負荷側ポートと圧力ポートのいずれにも連通して、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの間で前記通路部を介して作動流体を流通可能とすることを
特徴とする切換弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方向切換弁は前記特許文献に示される構成となっており、スプールを弁ケーシングに対し移動させ、各ポート間の連通状態を切換可能として、油圧回路におけるアクチュエータに対する作動油の給排方向切換等に使用されていた。
【0007】
こうした方向切換弁は、その中立状態で、二つの負荷側ポートをそれぞれ圧力ポート及び低圧ポートのいずれにも連通させず閉塞し、アクチュエータに対する作動油の流通を生じさせないようにして、アクチュエータの作動を停止させる、いわゆるクローズドセンタ式とすることが多かった。しかし、アクチュエータとして、回転作動する油圧モータを用いる場合に、この方式の方向切換弁を適用すると、作動中の油圧モータを停止させるために切換弁を中立状態へ切換えた際、慣性力でそのまま回転し続けようとする油圧モータにより、モータの排出側の作動油流路で作動油の圧力が過剰に高くなると共に、モータの供給側の作動油流路で作動油の圧力が過剰に低くなり、これら異常な圧力の影響で、油圧モータに破損等の不具合が生じやすいことはよく知られている。
【0008】
このため、油圧モータに対する方向切換弁としては、中立状態で、油圧モータに通じる二つの負荷側ポートをいずれも低圧ポートに連通させ、油圧モータに通じる各流路の圧力の均衡を図り、油圧モータの停止状態を安定且つ確実なものとすると共に、過渡状態では、圧力が高くなるモータの排出側の流路から低圧ポートを介して低圧側回路に圧力を逃がす一方、圧力が低くなるモータの供給側の流路に対し低圧ポートを介して低圧側回路から作動油を流入させて圧力を補償する、いわゆるエキゾーストセンタ式の方向切換弁が多く採用されていた。
【0009】
ところで、近年、水道圧程度の比較的低圧の水圧で水圧モータ等のアクチュエータを作動させる水圧駆動システムが注目を集めている。こうした水圧駆動システムにおいても、油圧同様、アクチュエータの作動を制御するために水圧回路における流路の切換を要することから、油圧回路で用いられるような方向切換弁を水圧回路用に適用することが検討されている。
【0010】
ただし、油圧用の方向切換弁を単純に水圧用に流用しようとしても、水圧として水道圧などの低い圧力域での使用を想定している場合、使用する圧力域が油圧の場合に比べて非常に低いことや、水は油に比べて粘性が低いなどの特性の差異から、例えば、水圧モータを停止させるための中立状態への切換の際に、慣性力でそのまま回転し続けようとする水圧モータにより、モータに繋がる流路で圧力が変動する、特に、モータの供給側の流路で作動油の圧力が過剰に低下する状態を解消できず、キャビテーション等のモータの破損に繋がる事態が生じやすいという問題があり、流用は難しいという課題を有していた。
【0011】
また、水圧アクチュエータで駆動する対象物(例えば、搬送用コンベヤなど)によっては、方向切換弁を切換えてアクチュエータを停止又は作動開始させる際に、緩やかに減速して停止させたり、緩やかに起動して加速を行う必要がある。こうしたアクチュエータの作動速度の調整には、アクチュエータに流通する水の流量調整が必要となり、方向切換機能のみ有する一般的な方向切換弁では対応できないことから、油圧駆動の場合でこうした用途に用いる電磁比例制御弁を流用することが最も有効であると考えられる。しかし、電磁比例制御弁はコストがかかることで、これを水圧回路に導入すると水圧駆動システム全体がコスト高となってしまい、水圧使用による低コスト化のメリットが薄れるという課題を有していた。
【0012】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、切換弁における中立状態で各負荷側ポートと圧力ポートとを連通させ、圧力ポートから作動流体圧力をアクチュエータに通じる流路に導入可能としつつ、中立状態と所定の連通状態との間でのスプール位置切換の際に、圧力ポートから負荷側ポートへの作動流体の流通を制御して、アクチュエータにおける作動流体の異常な圧力変動を防止できると共に、アクチュエータの作動に係る速度の調整が行える切換弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る切換弁装置は、流体圧アクチュエータの正方向作動側と逆方向作動側の各作動流体流路にそれぞれ連通する二つの負荷側ポートを有するスプール弁からなり、当該スプール弁の圧力ポート及び低圧ポートと各負荷側ポートとの連通状態を切換えて流体圧アクチュエータの作動方向を選択可能とする切換弁装置において、二つの負荷側ポートを共に圧力ポートに連通させる中立状態と、圧力ポートが一方の負荷側ポートに連通し、且つ低圧ポートが他方の負荷側ポートに連通して作動流体を流通させる第一の連通状態と、圧力ポートが他方の負荷側ポートに連通し、且つ低圧ポートが一方の負荷側ポートに連通して作動流体を流通させる第二の連通状態とを、スプールで切換可能とされ、前記スプールが、前記第二の連通状態におけるスプール位置で、一方の負荷側ポートと圧力ポートとを非連通とするように形成される連通阻止部と、前記中立状態における位置から前記第一の連通状態における位置の方にスプールが所定距離ずれて、他方の負荷側ポートが圧力ポートに連通しない状態を生じさせる第一の中間位置で、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの連通を制限する又は連通を完全に止めるように形成される連通制限部とを少なくとも備え、前記連通制限部が、前記第一の中間位置からスプールがさらにずれて前記第一の連通状態の位置に達すると、一方の負荷側ポートと圧力ポートとを連通可能とする形状として形成され、前記スプールが、前記連通阻止部と連通制限部との間に、孔又は凹部とされる通路部を設けられてなり、前記中立状態におけるスプール位置で、前記通路部が一方の負荷側ポートと圧力ポートのいずれにも連通して、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの間で前記通路部を介して作動流体を流通可能とするものである。
【0014】
このように本発明によれば、流体圧アクチュエータの作動状態切換用の切換弁におけるスプールが、中立状態で圧力ポートと各負荷側ポート間を連通させるものとされると共に、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの連通を必要に応じて制限又は阻止する連通阻止部と連通制限部を有し、且つ連通阻止部と連通制限部との間に通路部を設けられてなり、中立状態では一方の負荷側ポートと圧力ポートとが通路部を通じて連通する一方、中立状態から第一の連通状態への切換の途中で、連通制限部が一方の負荷側ポートと圧力ポートとの連通を一時的に制限又は止めることにより、各連通状態から中立状態への移行時は、アクチュエータ停止となる中立状態で圧力ポートと各負荷側ポートとを連通させて、アクチュエータを動かし続けようとする慣性力が加わっても、アクチュエータに繋がる各流路に作動流体の圧力をバランスよく付与して各流路の圧力状態を均等化でき、各流路で作動流体の圧力が変動するのを防止して、アクチュエータを停止状態に安定的に保持できると共に、アクチュエータにおける不具合発生を抑えられる。
【0015】
また、中立状態から第一の連通状態への切換え時に、スプールの連通制限部で圧力ポートと負荷側ポートとの連通を一時的に制限又は停止して、さらなるスプールの移動を経て圧力ポートと負荷側ポートとがあらためて連通を開始するようにすると共に、その際のアクチュエータ側の流路への作動流体の流通を、流量小の状態から開始させる状態が得られることで、アクチュエータが停止状態から緩やかに作動状態に移行することとなり、アクチュエータの駆動する対象物を安全且つ安定した状態で動かすことができる。
【0016】
また、本発明に係る切換弁装置は必要に応じて、当該切換弁装置をなすスプール弁が、前記第一の連通状態で、前記中立状態における位置から第一の連通状態における位置に向かう第一の方向へスプールの移動する量が大きくなるほど、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの間での作動流体流通量を大きくするように形成されてなるものである。
【0017】
このように本発明によれば、第一の連通状態におけるスプールの第一の方向への移動が進行するほど、一方の負荷側ポートと圧力ポートとの間での作動流体流通量を大きくするようにして、中立状態から第一の連通状態への切換時には、第一の方向へのスプールの移動と共にアクチュエータ側への作動流体の流量が流量小の状態から徐々に増大して最大流量に達する状態を得ると共に、第一の連通状態から中立状態への切換時には、スプールの第一の方向とは逆向きの移動と共にアクチュエータ側への作動流体の流量が最大流量から徐々に減少する状態を得ることにより、ポジション切換に応じたスプールの移動に伴う流量変化で、アクチュエータが停止状態から緩やかに作動速度を増加させたり、アクチュエータが定常の作動状態から緩やかに作動速度を減少させて停止する作動状態となるなど、アクチュエータに流通する作動流体の流量の急激な変動を抑えて、アクチュエータの駆動する対象物が起動後急加速したり、急減速して停止する状態となるのを防止し、対象物を安定した運転状態に維持できる。
【0018】
また、本発明に係る切換弁装置は必要に応じて、前記スプールに対し位置調整可能で且つスプールの前記第一の方向における端部と接触可能に配設され、スプールの第一の方向への移動限界位置を設定する調整部を備えるものである。
【0019】
このように本発明によれば、スプールに対しその端部と接触してスプールの移動を制限するように配設した調整部で、スプールの移動範囲を調整可能として、圧力ポートから一方の負荷側ポートに流通する作動流体の最大流量を可変とすることにより、アクチュエータに流通する作動流体の流量変化に応じてアクチュエータの作動する速度が変化するのに伴い、第一の連通状態でアクチュエータに流通する作動流体の最大流量を調整部で調整して、アクチュエータの最大作動速度、すなわち定常作動状態の作動速度を調整できることとなり、中立状態から第一の連通状態に切換えた後の、スプールの切換に係る移動が終了してアクチュエータが定常作動状態に至った際の、この定常作動状態におけるアクチュエータの作動速度を、駆動対象物や作動流体の供給状況に応じた適切な速度に設定でき、アクチュエータの作動に基づいて、駆動対象物を所望の作動状態が得られるように確実に駆動できる。
【0020】
また、本発明に係る切換弁装置は必要に応じて、前記スプールが、パイロット圧回路によるパイロット圧付加で切換に係る移動を生じるものとされ、前記パイロット圧回路におけるパイロット切換弁の出力ポートから前記スプールにパイロット圧を付与する流路中に配設され、当該流路におけるパイロット圧流体の流量を調整可能とする可変絞りを備えるものである。
【0021】
このように本発明によれば、切換弁装置のスプールをパイロット圧回路によるパイロット圧付加で移動可能とすると共に、スプールにパイロット圧を付加するパイロット圧回路の所定流路中に可変絞りを設け、この可変絞りの絞り量調整で、スプールを移動させるパイロット圧流体の流量を変化させることにより、スプールの移動速度がパイロット圧流体の流量に応じたものとなる関係で、可変絞りの絞り量調整でスプールの移動速度、すなわち中立状態から各連通状態への切換や、逆に各連通状態から中立状態への切換に係る速度を調整可能となり、アクチュエータが起動して定常作動状態に達するまでの時間や、逆に定常作動状態から作動停止に至る時間を調整でき、アクチュエータで駆動される駆動対象物の起動時の加速状態や停止時の減速状態を、その使用状況に対応した適切なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る切換弁装置を前記
図1ないし
図15に基づいて説明する。本実施形態においては、作動流体としての水を流通させてアクチュエータを駆動する水圧回路中に設けられて、アクチュエータへの水の流通状態を切換える装置の例について説明する。
【0024】
前記各図において本実施形態に係る切換弁装置1は、アクチュエータとしての水圧モータ60に通じる各負荷側流路61、62にそれぞれ連通する二つの負荷側ポート24、25を有するスプール弁であり、このスプール弁の圧力ポート22及び低圧ポート23と各負荷側ポート24、25との連通状態を切換えて水圧モータ60の作動方向を選択可能とされてなり、二つの負荷側ポート24、25を共に圧力ポート22に連通させる中立状態と、圧力ポート22が一方の負荷側ポート24に連通し、且つ低圧ポート23が他方の負荷側ポート25に連通して水を流通させる第一の連通状態と、圧力ポート22が他方の負荷側ポート25に連通し、且つ低圧ポート23が一方の負荷側ポート24に連通して水を流通させる第二の連通状態とを、スプール30で切換可能とされるものである。
【0025】
このスプール弁である切換弁装置1は、空隙部21及びこの空隙部21に通じる水の流入出口を設けられるケーシング20と、このケーシング20の空隙部21に直線移動可能に配設される略円筒状のスプール30とを備える構成である。
【0026】
この他、切換弁装置1には、スプール弁におけるスプール30のポジションを切換えるパイロット切換弁50が一体に設けられる。そして、この切換弁装置1は、水圧モータ60や圧力源80と接続されて水圧回路をなし、スプール30がパイロット切換弁50の作動に基づいて移動することで、所定の負荷側流路との接続を切換えて、作動流体としての水の流通状態を調整し、水圧モータ60の作動を制御するものである。
【0027】
前記ケーシング20は、金属材で形成され、横断面が円形状の細長い空隙部21を内部に穿設されると共に、外部から空隙部21に通じる水の流入出口を複数設けられる構成である。これら水流入出口としては、詳細には、圧力源80に接続される圧力ポート22と、低圧側流路70を介して排出部90に接続される低圧ポート23と、負荷である水圧モータ60の正回転作動側と逆回転作動側の二つの負荷側流路61、62に各々接続される二つの負荷側ポート24、25がそれぞれ設けられる。
【0028】
このケーシング20における圧力ポート22と低圧ポート23はスプール長手方向に並べて配置され、また、二つの負荷側ポート24、25もケーシング20の他側でスプール長手方向に並べて配置され、これらの流入出口を通じて空隙部21に対し水が流入出可能とされる。そして、ケーシング20の空隙部21にはスプール30が長手方向移動自在に装着される。
【0029】
前記スプール30は、金属材で形成される略円柱状体であり、周側面に周方向へ連続する溝状の凹部31を穿設され、中心部に円柱軸方向に連続する中空部32を設けられ、さらに周側面の複数所定箇所で周方向へ連続する溝部分と中空部32に連通する孔部分とを組合せた横孔部33、34を穿設される構成である。
【0030】
このスプール30が、ケーシング20の空隙部21に直線移動可能に配設され、ケーシング20における各流入出口の連通状態を変化させるようケーシング20に対し位置調整される仕組みである。
【0031】
このスプール30の位置調整により、切換弁装置1がスプール弁として負荷である水圧モータ60に対する水の給排状態を切換えることとなる。切換弁装置1は、二つの負荷側ポート24、25を共に圧力ポート22に連通させる一方で、低圧ポート23にはいずれも連通させない中立状態(
図2参照)と、圧力ポート22が一方の負荷側ポート24に連通し、且つ低圧ポート23が他方の負荷側ポート25に連通して、水を水圧モータ60に流通可能とする第一の連通状態(
図6、
図9参照)と、圧力ポート22が他方の負荷側ポート25に連通し、且つ低圧ポート23が一方の負荷側ポート24に連通して、水を第一の連通状態とは逆向きに水圧モータ60に流通可能とする第二の連通状態(
図14参照)とをそれぞれ切換可能とする、3ポジションタイプの切換弁である。
【0032】
この他、スプール30は、一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を制限又は禁止するための、連通阻止部35及び連通制限部36を備える構成である。連通阻止部35は、スプール30の一端部側の横孔部33と凹部31との間に形成される略円筒部分であり、第二の連通状態におけるスプール位置で、一方の負荷側ポート24と圧力ポート22とを非連通とするものである。
【0033】
また、連通制限部36は、連通阻止部35に隣接して形成される略円筒部分である。スプール30は、その中立状態の位置から前記第一の連通状態における位置の方に所定距離ずれた第一の中間位置(
図4参照)で、その凹部31が他方の負荷側ポート25に面さず、他方の負荷側ポート25を圧力ポート22に連通させない状態を生じさせる。このスプール30の第一の中間位置で、連通制限部36は、一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を制限する、又は、連通を完全に止めるようにする。
【0034】
この連通制限部36は、第一の中間位置からスプール30がさらにずれて第一の連通状態の位置に達すると、凹部31が一方の負荷側ポート24に面して、この凹部31周囲の空隙部21を通じて一方の負荷側ポート24と圧力ポート22とが連通可能となるのを許容する形状として形成される。
【0035】
これら連通阻止部35と連通制限部36との間となるスプール30外周位置には、凹部とされる通路部37が設けられる。通路部37は、スプール30の中立状態の位置で、一方の負荷側ポート24と圧力ポート22に面して、一方の負荷側ポート24と圧力ポート22を連通させることとなる。
【0036】
この通路部37は、スプール30の中立状態の位置で一方の負荷側ポート24と圧力ポート22に面して、全体として一方の負荷側ポート24と圧力ポート22間であらかじめ設定された流量の水を流通させられるものであれば、そのスプール外周への配設数は、
図2に示す態様に限られるものではなく、より少ない数やより多い数としてもかまわない。
【0037】
また、スプール30は、第一の連通状態の位置で、横孔部34が他方の負荷側ポート25と低圧ポート23に面して、他方の負荷側ポート25と低圧ポート23とを連通させるが、第一の中間位置では、横孔部34が他方の負荷側ポート25に面さず、他方の負荷側ポート25を低圧ポート23に連通させない形状とされる構成である。よって、第一の中間位置では、他方の負荷側ポート25は、圧力ポート22と低圧ポート23のいずれにも連通しない状態とされる。
【0038】
スプール30がポジション切換により、中立状態の位置(
図2参照)から第一の連通状態の位置に向けて一端部側(
図2中で上側)にずれるように移動すると、スプール30が第一の中間位置に達した際に、一旦連通制限部36が一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を制限する。その後、スプール30が第一の連通状態の位置に達すると、凹部31が圧力ポート22と一方の負荷側ポート24に面し、再び圧力ポート22と負荷側ポート24とが連通する状態となる。
【0039】
この第一の連通状態の位置では、スプール30の横孔部34を通じて、負荷側ポート25と低圧ポート23とが連通することで、負荷側ポート25から低圧ポート23側に水が流通可能となる。これにより、圧力ポート22から負荷側ポート24を経て水圧モータ60に至り、水圧モータ60を作動させた後、この水圧モータ60から負荷側ポート25を経て低圧ポート23に達する、水の流通状態を生じさせることができる。
【0040】
逆に、スプール30がポジション切換により、中立状態の位置(
図2参照)から第二の連通状態の位置に向けて他端部側(
図2中で下側)にずれるように移動すると、圧力ポート22と他方の負荷側ポート25にスプール30の凹部31が面して、圧力ポート22と負荷側ポート25とを連通させる状態が中立状態から引き続き維持される一方で、通路部37が一方の負荷側ポート24に連通する状態が途切れ、連通阻止部35のみが一方の負荷側ポート24に面して、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24とが連通しない状態となる。
【0041】
この後、スプール30が第二の連通状態の位置に達すると、一方の負荷側ポート24にスプール30の横孔部33が面し、また低圧ポート23に横孔部34が面して、横孔部33、スプール30の中空部32、及び横孔部34からなる通路が負荷側ポート24と低圧ポート23とを連通させる。こうして、負荷側ポート24から低圧ポート23側に水が流通可能となることで、上記とは逆に、圧力ポート22から負荷側ポート25を経て水圧モータ60に至り、水圧モータ60を第一の連通状態の場合とは逆向きに作動させた後、水圧モータ60から負荷側ポート24を経て低圧ポート23に達する、水の流通状態を生じさせることができる。
【0042】
こうしてスプール30は、各連通状態と中立状態のそれぞれで、圧力ポート22と各負荷側ポート24、25とを連通させるように形成されるが、スプール30が中立状態にある場合の圧力ポート22と各負荷側ポート24、25との連通度合いは、スプール30が第一の連通状態にある場合の圧力ポート22と一方の負荷側ポート24との連通度合いや、スプール30が第二の連通状態にある場合の圧力ポート22と他方の負荷側ポート25との連通度合いに比べて小さく(例えば、各連通状態での最大時の11%程度)、中立状態では各負荷側流路に均一に水の圧力を付加できる必要最小限の連通状態とするようにされる。
【0043】
このスプール30に対し、スプール30の第一の連通状態における一端部側への移動量を調整する調整部26が設けられる。
調整部26は、ケーシング20にスプール移動方向と平行に位置調整可能に取り付けられ、スプール端部と接触する先端部の位置を変化させることで、スプール30の第一の連通状態において一端部側へ最大限到達可能な位置を調整可能とする仕組みである(
図15参照)。
【0044】
スプール30は、ケーシング20に対し、第一の連通状態で一端部側に移動するほど、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24との連通の度合いを大きくするようにされている(
図8参照)。このため、スプール30端部と接触してスプール30の移動範囲を定める調整部26で、スプール30の一端部側への到達限界位置、すなわち、スプール30の移動範囲内で圧力ポート22から一方の負荷側ポート24へ流通する水の流量が最大となる位置、を調整することで、第一の連通状態で流通する水の最大流量を任意に設定できるなど、調整部26でスプール30に一種の可変絞りの役割を与えることができる。
【0045】
そして、切換弁装置1の圧力ポート22から一方の負荷側ポート24へ流通する水は、負荷側流路61を通じて水圧モータ60に供給されて、この水圧モータ60を回転作動させるものであり、その流量が大きいほど水圧モータ60の回転速度も大きくなる。この水圧モータ60の回転速度は、水の流量が最大の時に最大速度となることから、調整部26で水圧モータ60の最大速度の調整が可能となる。
【0046】
前記パイロット切換弁50は、ソレノイドの作動により高圧ポート51及び低圧ポート52に対する二つの出力ポート53、54の各連通状態を切り換える公知の切換弁であり、出力ポート53、54を切換弁装置1におけるスプールポジション切換用の二つの圧力室11、12にそれぞれ接続され、出力ポート53、54と圧力源80の連通状態でスプール30を動かし、スプールポジション切換操作可能とされる構成である。
【0047】
このパイロット切換弁50では、高圧ポート51をケーシング20の圧力ポート22を介して圧力源80に、低圧ポート52をケーシング20の低圧ポート23を介して排出部90にそれぞれ接続される。
【0048】
パイロット切換弁50で、高圧ポート51が出力ポート53に連通し、低圧ポート52が出力ポート54に連通すると(
図3参照)、ケーシング20の圧力室11に高圧の水を供給されて、逆に水を排出されて低圧となる反対側の圧力室12の側にスプール30が移動し、スプール30は圧力室12側寄りのポジションをとる仕組みである(
図7参照)。この状態で、切換弁装置1における圧力ポート22が一方の負荷側ポート24に連通し、低圧ポート23が他方の負荷側ポート25に連通する。
【0049】
また、パイロット切換弁50で高圧ポート51が出力ポート54に連通し、低圧ポート52が出力ポート53に連通すると(
図11参照)、ケーシング20の圧力室12に高圧の水を供給されて、逆に水を排出されて低圧となる反対側の圧力室11の側にスプール30が移動し、スプール30は圧力室11側寄りのポジションをとる仕組みである(
図13参照)。この状態で、切換弁装置1で圧力ポート22が負荷側ポート25に連通し、低圧ポート23が負荷側ポート24に連通することとなる。
【0050】
なお、パイロット切換弁50には中立状態が存在しており、ソレノイドが作動していない場合にこの中立状態となる。中立状態では、高圧ポート51とケーシング20の圧力室11、12に通じる二つの出力ポート53、54との連通が遮断される一方、低圧ポート52と出力ポート53、54が連通する仕組みである(
図1参照)。
【0051】
スプール30がいずれかの連通状態に対応して、いずれかの圧力室寄り位置にある中で、パイロット切換弁50が中立状態となった場合(
図10参照)は、当初の圧力室の一方が高圧となり、圧力室の他方が低圧となっている状態から、各圧力室11、12の圧力が出力ポート53、54及び低圧ポート52を経て低圧側流路70に逃げ、各圧力室11、12の圧力が均衡する状態に移行することで、スプール30は別途設けられたばね等の付勢力で中立状態に対応する位置に移動し、切換弁装置1は中立状態に復帰する。
【0052】
切換弁装置1が中立状態にある場合には、パイロット切換弁50の中立状態では、スプール30に対しこれを所定方向へ動かそうとする水圧は加わらないことで、スプール30は中立位置に保持され、切換弁装置1の中立状態がそのまま維持される。
【0053】
パイロット切換弁50の出力ポート53とケーシング20の圧力室11との間の流路には、可変絞り56が設けられる。この流路中の可変絞り56の絞り量調整で、この流路に流通する水の流量を変化させることができる。そして、スプール30が動く場合には、いずれも可変絞り56への水の流通が生じることから、スプール30の移動は可変絞り56の絞り量の影響を受けることとなり、スプール30の移動速度、すなわち中立状態から各連通状態への切換や、逆に各連通状態から中立状態への切換の速度を、可変絞り56で増減調整することができる。
【0054】
これにより、水圧モータ60が起動して定常作動状態に達するまでの時間や、逆に定常作動状態から作動停止に至る時間を調整できることとなり、水圧モータ60で駆動される駆動対象物の起動時の加速状態や停止時の減速状態を、使用状況に対応した適切なものとすることができる。
【0055】
次に、本実施形態に係る切換弁装置における切換状態について説明する。前提として、通常、作動流体としての水が、負荷である水圧モータ60の作動状態に関わりなく、ポンプや水道等の圧力源80から所定の供給圧力で継続的に供給されて、切換弁装置1におけるケーシング20の圧力ポート22に達しているものとする。
【0056】
加えて、パイロット切換弁50の出力ポート53と圧力室11との間の流路における可変絞り56があらかじめ調整されて、スプール30の切換速度が所望の状態に設定されると共に、スプール30の移動限界を規定する調整部26もあらかじめ調整されて、圧力ポート22と各負荷側ポートを経て水圧モータ60に供給される水の最大流量が所望の値に設定されているものとする。
【0057】
切換弁装置1が中立状態の場合、スプール30の凹部31が圧力ポート22と他方の負荷側ポート25に面して、圧力ポート22と他方の負荷側ポート25を連通させると共に、スプール30の通路部37が圧力ポート22と一方の負荷側ポート24に面して、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24を連通させることから、圧力ポート22から各負荷側ポート24、25を経て負荷側流路61、62に水圧が伝わることとなり、負荷側流路61、62の水圧は同じになる。この時、低圧ポート23はいずれの負荷側ポート24、25にも連通せず、水圧モータ60を作動させられるような水の流通は生じないことから、水圧モータ60は停止状態となる(
図1、
図2参照)。
【0058】
パイロット切換弁50により、切換弁装置1を中立状態から第一の連通状態とするようにスプール30のポジション切換を実行すると、まず、スプール30が一端部側(
図2中で上側)に移動して第一の中間位置に達し、スプール30の連通制限部36が一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を一旦制限する(
図4参照)。また、スプール30の凹部31が他方の負荷側ポート25に面しない状態となり、スプール30は他方の負荷側ポート25を圧力ポート22に連通させなくする。この第一の中間位置では、横孔部34は低圧ポート23に面するものの他方の負荷側ポート25には面しておらず、低圧ポート23を他方の負荷側ポート25に連通させていない。
【0059】
この第一の中間位置からスプール30がさらに一端部側に移動すると、低圧ポート23に面するスプール30の横孔部34が、他方の負荷側ポート25にも面する状態となり、低圧ポート23と負荷側ポート25とを連通させる(
図5参照)。続いて、スプール30の凹部31が一方の負荷側ポート24に面する位置に達し、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24とを再度連通させて(
図6参照)、第一の連通状態となる。
【0060】
第一の連通状態では、圧力ポート22が一方の負荷側ポート24と連通して、圧力ポート22から負荷側ポート24側に水が流通可能となり、且つ低圧ポート23が他方の負荷側ポート25に連通して、負荷側ポート25から低圧ポート23側に水が流通可能となることで、圧力源80からの高圧の水が、切換弁装置1の圧力ポート22に進み、凹部31周囲の空隙部21を通って、一方の負荷側ポート24に至ることとなる。水は、一方の負荷側ポート24から出て、一方の負荷側流路61を通じて水圧モータ60に供給される状態となる(
図7参照)。これにより、水圧モータ60が正回転方向に回転作動して、駆動対象物の駆動に用いられることとなる。
【0061】
この状態で、水圧モータ60からは、この水圧モータ60で使用された水が他方の負荷側流路62へ順次排出される。他方の負荷側流路62に接続する他方の負荷側ポート25は、低圧ポート23と連通しているため、水圧モータ60の作動の間、水圧モータ60から他方の負荷側流路62に排出される水は、他方の負荷側ポート25、及び低圧ポート23を経て低圧側流路70、さらに排出部90に至る。
【0062】
この第一の連通状態では、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24との連通が再開してからもスプール30は一端部側へ移動し、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24とが最大限に連通する移動限界位置(全開位置)に達すると、スプール30は調整部26と接して、それ以上移動できずに停止状態となる(
図9、
図15参照)。このスプール30の移動につれて圧力ポート22と一方の負荷側ポート24との連通の度合いが徐々に増していき、圧力ポート22から一方の負荷側ポート24及び一方の負荷側流路61を経て水圧モータ60に流通する水の流量が増大することで、水圧モータ60の正回転方向への回転速度も緩やかに増加する状態が得られる。
【0063】
また、この第一の連通状態に至る前に、いったん連通制限部36で一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を制限することで、一方の負荷側ポート24を経て水圧モータ60に至る水の流量は最小限に抑えられている。そして、スプール30が移動して圧力ポート22と一方の負荷側ポート24との連通が再開して第一の連通状態となった時に、水圧モータ60に流通する水の流量が流量小の状態からスプール30の移動と共に徐々に増えるようになることで、水圧モータ60が停止状態から起動して無理なく緩やかに回転速度を増加させる状態となる。これにより、中立状態から一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通が継続したままで第一の連通状態に移行する場合のように、水圧モータに流通する水の流量が急激に増大することはなく、水圧モータの駆動対象物(例えば、搬送用コンベア)が急に起動、加速するような事態を防止できる。
【0064】
この他、パイロット切換弁50と圧力室11間の水の流量を可変絞り56で変化させ、スプール30の移動速度を調整することで、水圧モータ60の回転速度が増える割合を変えることもでき、駆動対象物に対応させて水圧モータ60の作動状態を適切なものとすることができる。
【0065】
上記とは逆に、パイロット切換弁50により、切換弁装置1を第一の連通状態から中立状態とするようにスプール30のポジション切換を実行すると、圧力ポート22と一方の負荷側ポート24とを最大限に連通させる移動限界位置(全開位置)にあったスプール30が他端部側へ移動する。このスプールの移動につれて圧力ポート22と一方の負荷側ポート24との連通の度合いが徐々に減少していき、圧力ポート22から一方の負荷側ポート24及び一方の負荷側流路61を経て水圧モータ60に流通する水の流量も減ることで、水圧モータ60の回転速度も緩やかに減少する状態が得られる。
【0066】
スプール30がさらに他端部側に移動して第一の中間位置に達すると、スプール30の凹部31が一方の負荷側ポート24に面しない状態となり、圧力ポート22と負荷側ポート24との連通が制限される。
【0067】
こうして、圧力ポート22が一方の負荷側ポート24と連通せず、圧力ポート22から負荷側ポート24側に水が流通不可能となることで、圧力ポート22から一方の負荷側ポート24と一方の負荷側流路61を通じて水圧モータ60に至る水の流通が生じず、水圧モータ60の回転作動が停止することとなる。
【0068】
このように、第一の連通状態から中立状態に移行する時に、水圧モータ60に流通する水の流量が最大流量の状態からスプール30の移動と共に徐々に減少して、一旦流通が止まることで、水圧モータ60が定常の回転作動状態から無理なく緩やかに回転速度を減少させて停止する状態となる。これにより、第一の連通状態から一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通が継続したままで中立状態に移行する場合のように、水圧モータに流通する水の流量が急激に減少することはなく、水圧モータの駆動対象物(例えば、搬送用コンベア)が急に減速、停止するような事態を避けられる。
【0069】
第一の中間位置からスプール30がさらに他端部側に移動すると、他方の負荷側ポート25に面して低圧ポート23と負荷側ポート25とを連通させていたスプール30の横孔部34がこの他方の負荷側ポート25に面しない状態となり、低圧ポート23と負荷側ポート25との連通も途切れることとなる。
【0070】
そして、スプール30がさらに他端部側に移動すると、スプール30の凹部31が他方の負荷側ポート25に面する状態となり、圧力ポート22と負荷側ポート25とを連通させる。続いて、スプール30の連通制限部36が圧力ポート22に面し、さらに通路部37の一部が圧力ポート22に面する状態に移行すると、通路部37を通じて一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通が生じ、二つの負荷側ポート24、25が共に圧力ポート22に連通する中立状態となり、水圧モータ60の停止状態は維持される。
【0071】
一方、パイロット切換弁50により、切換弁装置1を中立状態から第二の連通状態とするようにスプール30のポジション切換を実行すると、スプール30が中立状態の位置から他端部側(
図2中で下側)にずれるように移動し、圧力ポート22と負荷側ポート25にスプール30の凹部31が面して、圧力ポート22と負荷側ポート25とを連通させる状態を維持する一方で、スプール30の通路部37が一方の負荷側ポート24に面しない状態となり、連通阻止部35が一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を阻止する(
図12参照)。
【0072】
さらにスプール30が移動すると、圧力ポート22と負荷側ポート25とを連通させる状態をそのまま維持しつつ、一方の負荷側ポート24にスプール30の横孔部33が面する。この一方の負荷側ポート24にスプール30の横孔部33が面する状態では、低圧ポート23には横孔部34が面しており、横孔部33、スプール30の中空部32、及び横孔部34からなる通路が負荷側ポート24と低圧ポート23とを連通させる。こうして負荷側ポート24と低圧ポート23とを連通させて、負荷側ポート24から低圧ポート23側に水が流通する第二の連通状態となる(
図14参照)。
【0073】
第二の連通状態では、圧力ポート22が他方の負荷側ポート25と連通して、圧力ポート22から負荷側ポート25側に水が流通可能となり、且つ低圧ポート23が一方の負荷側ポート24に連通して、負荷側ポート24から低圧ポート23側に水が流通可能となることで、圧力源80からの高圧の水が、切換弁装置1の圧力ポート22に進み、凹部31周囲の空隙部21を通って、他方の負荷側ポート25に至ることとなる。水は、他方の負荷側ポート25から出て、他方の負荷側流路62を通じて水圧モータ60に供給される状態となる(
図13参照)。これにより、水圧モータ60が逆回転方向に回転作動して、駆動対象物の逆向きの駆動に用いられることとなる。
【0074】
この状態で、水圧モータ60からは、この水圧モータ60で使用された水が一方の負荷側流路61へ順次排出される。一方の負荷側流路61に接続する一方の負荷側ポート24は、低圧ポート23と連通しているため、水圧モータ60の作動の間、水圧モータ60から一方の負荷側流路61に排出される水は、一方の負荷側ポート24、及び低圧ポート23を経て低圧側流路70、さらに排出部90に至る。
【0075】
この第二の連通状態では、低圧ポート23と一方の負荷側ポート24とが連通して、負荷側流路25を経て水圧モータ60に水が流通する状態となってからも、スプール30は他端部側へ移動し、圧力ポート22と他方の負荷側ポート25とが最大限に連通する移動限界位置(全開位置)に達すると、スプール30は停止状態となる。このスプール30の他端部側への移動につれて、圧力ポート22と他方の負荷側ポート25との連通の度合いが徐々に増していき、圧力ポート22から他方の負荷側ポート25及び他方の負荷側流路62を経て水圧モータ60に流通する水の流量が増大することで、水圧モータ60の逆回転方向への回転速度も緩やかに増加する状態が得られる。
【0076】
この他、上記とは逆に、パイロット切換弁50により、切換弁装置1を第二の連通状態から中立状態とするようにスプール30のポジション切換を実行すると、圧力ポート22と他方の負荷側ポート25とが最大限に連通する移動限界位置(全開位置)にあったスプール30が一端部側へ移動し、このスプールの移動につれて圧力ポート22と他方の負荷側ポート25との連通の度合いが徐々に減少していき、圧力ポート22から他方の負荷側ポート25及び他方の負荷側流路62を経て水圧モータ60に流通する水の流量も減ることで、水圧モータ60の回転速度も緩やかに減少する状態が得られる。
【0077】
スプール30がさらに一端部側に移動すると、スプール30の横孔部33が一方の負荷側ポート24に面しない状態となり、低圧ポート23と一方の負荷側ポート24との連通が制限される。
【0078】
こうして、低圧ポート23が一方の負荷側ポート24と連通しなくなることで、水圧モータ60から一方の負荷側流路61と一方の負荷側ポート24を経て低圧ポート23に至る水の流通が止まり、合わせて、圧力ポート22から他方の負荷側ポート25と他方の負荷側流路62を通じて水圧モータ60に至る水の流通も止まることで、水圧モータ60の逆回転方向への回転作動が停止して、駆動対象物の駆動も停止することとなる。
【0079】
スプール30がさらに一端部側に移動すると、スプール30の凹部31が他方の負荷側ポート25に面する状態を維持したまま、スプール30の連通阻止部35と連通制限部36との間にある通路部37の一部が一方の負荷側ポート24に面する状態に移行し、通路部37を通じて一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通が生じ、二つの負荷側ポート24、25が共に圧力ポート22に連通する中立状態となって、水圧モータ60の停止状態は維持される。
【0080】
切換弁装置1を第一の連通状態や第二の連通状態から中立状態に切り替えて、水圧モータ60の作動を停止させる場合、切換直後は、駆動対象物が惰性で動き続けようとし、水圧モータ60もそれ自体の慣性力と駆動対象物からのトルクを受けてそのまま回転し続けようとすることに伴い、それまでと同様に水圧モータ60の水供給側となる負荷側流路から水を取り入れようとしてこの負荷側流路の圧力を低下させると共に、水圧モータ60の水排出側となる負荷側流路へ水を排出しようとして、負荷側流路の圧力を高めるおそれがある。しかし、この中立状態では、負荷側流路の両方を各負荷側ポート24、25を通じて圧力ポート22に連通させており、負荷側流路61、62が共通に圧力ポート22からの水圧を受けることで、負荷側流路における水の圧力状態を速やかに均等化して変動を抑制でき、水圧モータ60を停止状態に安定的に保持できると共に、水圧モータ60における異常圧力による不具合発生を防止できる。
【0081】
このように、本実施形態に係る切換弁装置は、スプールの中立状態で圧力ポートと負荷側ポート間を連通させる流路接続形態を採用すると共に、この中立状態で少なくとも一方の負荷側ポートと圧力ポートとが通路部37を通じて連通するようにし、中立状態から少なくとも一方の連通状態への切換の途中で、通路部37を通じて連通していた負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を一時的に連通制限部36で制限することにより、各連通状態から中立状態への移行時は、水圧モータ60を停止させる中立状態で圧力ポート22と各負荷側ポートとを連通させて、水圧モータ60を動かし続けようとする慣性力が加わっても、各負荷側流路61、62に水の圧力をバランスよく付与して流路の圧力状態を均等化でき、水圧モータ60に繋がる流路で水の圧力が変動するのを防止して、水圧モータ60を停止状態に安定的に保持できると共に、水圧モータ60における不具合発生を抑えられる。
【0082】
また、スプール30に連通制限部36を設けて、中立状態から第一の連通状態への切換え時に、中立状態の位置からスプール30を動かす過程で、連通制限部36により圧力ポート22と負荷側ポート24との連通を一時的に制限して、第一の連通状態の位置ではスプール30の移動と共に負荷側流路への水の流量が流量小の状態から徐々に増大して最大流量に達する状態を得ることができ、水圧モータ60が停止状態から緩やかに回転速度を増加させる作動状態となる。さらに、第一の連通状態から中立状態への切換時には、連通制限部36が圧力ポート22と負荷側ポート24との連通を制限する位置に達するまで、スプール30の移動と共に負荷側流路への水の流量が最大流量から徐々に減少して、水圧モータ60が定常の回転作動状態から緩やかに回転速度を減少させて停止する状態となる。こうして、水圧モータ60に流通する水の流量の急激な変動を抑えて、水圧モータ60の駆動対象物が起動後急加速したり、急減速して停止する状態となるのを防止でき、駆動対象物を安定した運転状態に維持できる。
【0083】
なお、前記実施形態に係る切換弁装置においては、中立状態から第一の連通状態とするようにスプール30のポジション切換を実行して、移動するスプール30が第一の中間位置に達すると、スプール30の連通制限部36が一方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を一旦制限して、第一の連通状態に移行した際に、水圧モータ60に流通する水の流量が流量小の状態からスプール30の移動と共に徐々に増えるようにする構成としているが、この他、スプールを移動させて中立状態から第二の連通状態とする場合も、移動するスプールが所定の中間位置(第二の中間位置)に達すると、他方の負荷側ポート24と圧力ポート22との連通を一旦制限する連通制限部をスプール30に設けて、第二の連通状態に移行した際に、水圧モータ60に流通する水の流量が流量小の状態からスプール30の移動と共に徐々に増えるようにする構成とすることもできる。
【0084】
この場合、前記実施形態同様、第二の連通状態で水圧モータ60が停止状態から起動して無理なく緩やかに回転速度を増加させる状態が得られ、水圧モータの駆動対象物(例えば、搬送用コンベア)が急に起動、加速するような事態を防止できる。
【0085】
また、第二の連通状態から中立状態に移行する時も、水圧モータに流通する水の流量が最大流量の状態からスプールの移動と共に徐々に減少した後、連通制限部による連通制限で一旦流通が止まるようにすることから、水圧モータが定常の回転作動状態から無理なく緩やかに回転速度を減少させて停止する状態が得られ、水圧モータの駆動対象物(例えば、搬送用コンベア)が急に減速、停止するような事態を避けられる。
【0086】
また、前記実施形態に係る切換弁装置においては、ケーシング20におけるスプール30の一端部近傍に調整部26を位置調整可能に配設し、調整部26のスプール一端部と接触する先端部の位置変化で、第一の連通状態におけるスプール30の一端部側への最大限到達可能な位置を調整可能とし、第一の連通状態で流通する水の最大流量を任意に設定可能な構成としているが、これに限られるものではなく、ケーシング20におけるスプール30の他端部近傍にも位置調整可能な調整部を設けて、この調整部のスプール他端部と接触する先端部を位置変化させて、第二の連通状態におけるスプール30の他端部側への最大限到達可能な位置を調整する構成とすることもできる。
【0087】
この場合も、前記実施形態同様、スプール30他端部と接触してスプール30の移動範囲を定める調整部で、スプール30の他端部側への到達限界位置を調整、設定することで、第二の連通状態で流通する水の最大流量を任意に設定できる。この流量を調整された水は、他方の負荷側ポート25から負荷側流路62を通じて水圧モータ60に供給されて、この水圧モータ60を回転作動させるものであることから、前記実施形態同様、調整部で水圧モータ60の最大速度を調整可能である。