特許第6867870号(P6867870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867870
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/16 20180101AFI20210426BHJP
   F21S 41/265 20180101ALI20210426BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20210426BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20210426BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20210426BHJP
   B60Q 11/00 20060101ALI20210426BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20210426BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20210426BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20210426BHJP
【FI】
   F21S41/16
   F21S41/265
   F21S45/10
   F21V9/08 200
   F21V5/00 320
   B60Q11/00 620A
   B60Q11/00 610B
   B60Q1/04 E
   F21W102:00
   F21Y115:30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-98967(P2017-98967)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-195482(P2018-195482A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小暮 真也
(72)【発明者】
【氏名】大和田 竜太郎
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0312978(US,A1)
【文献】 特開2013−168585(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/188744(WO,A1)
【文献】 特表2014−522116(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/185851(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/16
B60Q 1/04
B60Q 11/00
F21S 41/265
F21S 45/10
F21V 5/00
F21V 9/08
F21W 102/00
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射するレーザ光源と、
前記レーザ光を受光して白色光を照射する波長変換部材と、
前記レーザ光源と前記波長変換部材との間に位置し前記白色光を出射するレンズ体と、を備え、
前記レンズ体は、
前記レーザ光源から照射された前記レーザ光を入射させるレーザ光入射面と、
前記レンズ体の内部から前記レーザ光を出射するとともに前記波長変換部材から照射された前記白色光を入射させる白色光入射面と、
前記白色光を出射する出射面と、を有し、
前記波長変換部材は、前記白色光入射面から離間して配置され
前記レーザ光入射面が、凸レンズ状に湾曲する、
車両用灯具。
【請求項2】
レーザ光を照射するレーザ光源と、
前記レーザ光を受光して白色光を照射する波長変換部材と、
前記レーザ光源と前記波長変換部材との間に位置し前記白色光を出射するレンズ体と、を備え、
前記レンズ体は、
前記レーザ光源から照射された前記レーザ光を入射させるレーザ光入射面と、
前記レンズ体の内部から前記レーザ光を出射するとともに前記波長変換部材から照射された前記白色光を入射させる白色光入射面と、
前記白色光を出射する出射面と、を有し、
前記波長変換部材は、前記白色光入射面から離間して配置され、
前記波長変換部材は、前記白色光入射面から出射された前記レーザ光の光軸と直交する受光面を有する、
請求項に記載の車両用灯具。
【請求項3】
レーザ光を照射するレーザ光源と、
前記レーザ光を受光して白色光を照射する波長変換部材と、
前記レーザ光源と前記波長変換部材との間に位置し前記白色光を出射するレンズ体と、を備え、
前記レンズ体は、
前記レーザ光源から照射された前記レーザ光を入射させるレーザ光入射面と、
前記レンズ体の内部から前記レーザ光を出射するとともに前記波長変換部材から照射された前記白色光を入射させる白色光入射面と、
前記白色光を出射する出射面と、を有し、
前記波長変換部材は、前記白色光入射面から離間して配置され、
前記レーザ光源は、前記レーザ光入射面に対して法線方向からブリュスター角+5°の範囲でp偏光のレーザ光を入射させる、
請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
レーザ光を照射するレーザ光源と、
前記レーザ光を受光して白色光を照射する波長変換部材と、
前記レーザ光源と前記波長変換部材との間に位置し前記白色光を出射するレンズ体と、を備え、
前記レンズ体は、
前記レーザ光源から照射された前記レーザ光を入射させるレーザ光入射面と、
前記レンズ体の内部から前記レーザ光を出射するとともに前記波長変換部材から照射された前記白色光を入射させる白色光入射面と、
前記白色光を出射する出射面と、を有し、
前記波長変換部材は、前記白色光入射面から離間して配置され、
複数の前記レーザ光源を備え、
複数の前記レーザ光源は、それぞれ照射するレーザ光を同一の前記波長変換部材に入射させる
請求項1〜の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記波長変換部材の発光状態を検知する発光検知部と、
前記レーザ光源および前記発光検知部と接続された制御部と、を備え、
前記制御部は、前記レーザ光源がレーザ光を照射しており前記発光検知部が波長変換部材の発光状態を不十分と検知した場合に、前記レーザ光源によるレーザ光の照射を停止する、
請求項1〜の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光を受けて白色光を照射する波長変換部材と、波長変換部材から照射された光を前方に照射するレンズ体と、を備えた灯具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−119250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構造においてレンズ体は、波長変換部材に対しレーザ光源の反対側に配置されていた。このため、波長変換部材の両面側に光通過孔が必要となり、波長変換部材とヒートシンクの接触面積が小さくなり、光エネルギー密度が高くなる蛍光体の中心を十分に冷却できないという問題があった。そこで、本発明者らは、波長変換部材に対してレーザ光源とレンズ体を同方向に配置して、反射型のレーザ光源モジュールを採用することを想到した。この構成では、波長変換部材の受光面で反射されたレーザ光の反射光と、波長変換部材から拡散する波長変換光とを混色させて白色光を生じさせる。このような構成とすることで、受光面の逆面で熱伝導部材と波長変換部材の接触面積を十分に確保して波長変換部材の冷却効率を高める効果が期待できる。
【0005】
しかしながら、混色させる波長変換光と反射光のうち一方が拡散光であり一方が指向性の高い光であるために、混色光に色ムラが生じる。このため、車両用灯具に反射型のレーザ光源モジュールを採用すると、法規で規定された白色範囲を満たすことが困難となるという問題が新たに生じた。
【0006】
本発明は、冷却効率を高めやすい構造を採用するとともに、色ムラを抑制できる車両用灯具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため一態様の車両用灯具は、レーザ光を照射するレーザ光源と、前記レーザ光を受光して白色光を照射する波長変換部材と、前記レーザ光源と前記波長変換部材との間に位置し前記白色光を出射するレンズ体と、を備え、前記レンズ体は、前記レーザ光源から照射された前記レーザ光を入射させるレーザ光入射面と、前記レンズ体の内部から前記レーザ光を出射するとともに前記波長変換部材から照射された前記白色光を入射させる白色光入射面と、前記白色光を出射する出射面と、を有し、前記波長変換部材は、前記白色光入射面から離間して配置される。
【0008】
この構成によれば、レンズ体がレーザ光源と波長変換部材との間に位置させることで反射型のレーザ光源モジュールを構成できる。これにより、波長変換部材とヒートシンクなどの冷却構造との接触面積を十分に確保しでき、波長変換部材の冷却効率を高めた長寿命な車両用灯具を提供できる。
またこの構成によれば、波長変換部材は、レンズ体の内部からレーザ光を出射する白色光入射面から離間して配置される。このため、白色光入射面から出射する光を屈折させて波長変換部材の受光面に対して異なる方向から様々な入射角の光を入射させることができる。これにより、波長変換部材の受光面で反射された反射光に拡散角度を付与させることができ、拡散性の高い波長変換光と全体的に混色させて色ムラを抑制した白色光を生じさせることができる。
またこの構成によれば、白色光入射面は、波長変換部材から照射された白色光を入射させる。波長変換部材が白色光入射面から離間して配置させることで、波長変換部材から照射された光を白色光入射面において屈折させて、レンズ体の内部に拡散角度を狭めた白色光を入光させることができる。レンズ体の内部で白色光を内面反射させる場合に、内面反射面の面方向を適切に設定することで全反射効率を高めることができる。
【0009】
上述の車両用灯具において、前記レーザ光入射面が、凸レンズ状に湾曲する構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、レーザ光入射面においてレーザ光が集光方向に屈折される。したがって、レンズ体の内部を通過する光に非平行な光を含ませることができる。レンズ体の内部を通過して白色光入射面に達したレーザ光を出射時にさらに屈折させることができる。結果として、波長変換部材の受光面で反射された反射光の拡散角度を大きくすることができ、色ムラ抑制の効果を高めることができる。
【0011】
上述の車両用灯具において、前記波長変換部材は、前記白色光入射面から出射された前記レーザ光の光軸と直交する受光面を有する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、波長変換部材において反射させた反射光の光軸と波長変換させた波長変換光の光軸とを一致させることが可能となり、色ムラを効果的に抑制できる。
【0013】
上述の車両用灯具において、前記レーザ光源は、前記レーザ光入射面に対して法線方向からブリュスター角+5°の範囲でp偏光のレーザ光を入射させる構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、レーザ光入射面におけるレーザ光の反射を抑制し、光の利用効率を高めることができる。
【0015】
上述の車両用灯具において、複数の前記レーザ光源を備え、複数の前記レーザ光源は、それぞれ照射するレーザ光を同一の前記波長変換部材に入射させる構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、複数のレーザ光源から照射されるレーザ光を用いるため、照度の高い車両用灯具を提供できる。
【0017】
上述の車両用灯具において、前記波長変換部材の発光状態を検知する発光検知部と、前記レーザ光源および前記発光検知部と接続された制御部と、を備え、前記制御部は、前記レーザ光源がレーザ光を照射しており前記発光検知部が波長変換部材の発光状態を不十分と検知した場合に、前記レーザ光源によるレーザ光の照射を停止する構成としてもよい。
【0018】
この構成によれば、波長変換部材が脱落した場合に、レーザ光源からのレーザ光の照射を停止とすることができる。したがって、波長変換部材が脱落した場合に、レーザ光が出射面からレンズ体外部に出射することを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用灯具によれば、冷却効率を高めやすい構造を採用するとともに、色ムラを抑制できる車両用灯具の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一実施形態の車両用灯具の側面模式図である。
図2図2は、一実施形態の車両用灯具の発光ユニットの断面模式図である。
図3図3は、一実施形態の車両用灯具のレンズ体の断面模式図である。
図4図4は、一実施形態の車両用灯具の断面模式図でありレーザ光源から照射されたレーザ光の光路を示す図である。
図5図5は、一実施形態の車両用灯具の断面模式図であり波長変換部材から照射された白色光の光路を示す図である。
図6図6は、変形例1の車両用灯具の断面模式図である。
図7図7は、変形例2の車両用灯具の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
以下の説明で用いる図面は、特徴を分かり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
以下の説明において、前後方向とは、車両用灯具が搭載される車両の前後方向を意味し、車両用灯具は、前方に向かって光を照射するものとする。さらに前後方向は、特に断りのない場合は、水平面内の一方向であるものとする。さらに、左右方向とは、特に断りのない場合は、水平面内の一方向であり、前後方向と直交する方向である。
本明細書において、「ある方向(指定した方向)に沿う」とは、厳密に指定した方向に沿う場合に加えて、指定した方向に対して45°未満の範囲で傾いた方向に沿う場合も含む。
本明細書において、2つの点が「近傍に位置する」とは、2つの点が単に近い位置にある場合を指すのみならず、2つの点が互いに一致する場合を含む。
【0023】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Y軸方向は上下方向(鉛直方向)であり、+Y方向が上方向である。また、Z軸方向は前後方向であり、+Z方向が前方向(前方)である。さらに、X軸方向は、左右方向である。
【0024】
図1は、一実施形態の車両用灯具1の側面模式図である。なお、図1においてレンズ体40を断面として示す。
車両用灯具1は、レーザ光源10と、波長変換部材20と、波長変換部材20を保持する保持部材25と、レーザ光源10と波長変換部材20との間に位置するレンズ体40と、発光検知部50と、制御部60と、を備える。波長変換部材20および保持部材25は、発光ユニット3を構成する。また、発光ユニット3およびレーザ光源10は、レーザ光源モジュール2を構成する。発光検知部50および制御部60は、制御ユニット5を構成する。
【0025】
(レーザ光源モジュール)
レーザ光源モジュール2は、レーザ光源10と発光ユニット3とを有する。レーザ光源10は、青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザ光LL1を照射するレーザーダイオード等の半導体レーザ光源である。レーザ光源10は、鉛直線Vに対して角度θだけ後方に傾斜する光軸J1方向にレーザ光LL1を照射する。レーザ光源10は、図示略の固定部材によって車両用灯具1が搭載される車両に固定されている。
【0026】
波長変換部材20は、レーザ光源10に対向して配置されている。波長変換部材20は、レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1を受光して白色光を照射する。波長変換部材20は、保持部材25により保持されている。波長変換部材20および保持部材25から構成される発光ユニット3は、図示略の固定部材によって車両用灯具1が搭載される車両に固定されている。
【0027】
図2は、発光ユニット3の断面模式図である。
本実施形態において、波長変換部材20は、矩形板状の蛍光体である。波長変換部材20は、レーザ光源10と対向してレーザ光LL1を受ける受光面20aと、受光面20aと反対側を向く裏面20bと、を有する。受光面20aは、レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1の光軸と直交する。また、裏面20bには、反射膜21が形成されている。
【0028】
波長変換部材20は、レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1を受けてレーザ光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換し受光面20aから黄色の波長変換光FLを照射する。また、波長変換部材20は、レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1を青色の反射光LL2として反射させる。黄色の波長変換光FLと青色の反射光LL2は、互いに混色して白色光WLを構成する。すなわち、波長変換部材20は、レーザ光LL1を受光して白色光WLを照射する。
なお、波長変換部材20の裏面20bに形成された反射膜21は、波長変換部材20を透過したレーザ光LL1を反射させる。また、反射膜21は、裏面20b側に照射された波長変換光FLを受光面20a側に反射させる。波長変換部材20の裏面20bに反射膜21が設けられることで、波長変換部材20から照射される光を効率的に利用することができる。
【0029】
保持部材25は、レーザ光源10と対向する上面25aに凹部25cが設けられている。凹部25cには、波長変換部材20が嵌め込まれている。これにより、保持部材25は、波長変換部材20を裏面20b側から保持する。保持部材25の下面25bには、複数のフィン25dが設けられている。これにより、保持部材25は、ヒートシンクとして機能する。保持部材25は、放熱特性の高い金属(アルミニウム合金など)から構成されることが好ましい。
【0030】
本実施形態によれば、図1に示すように、レンズ体40がレーザ光源10と波長変換部材との間に位置するため、レーザ光LL1の反射光LL2と波長変換光FLとを混色させる反射型のレーザ光源モジュール2を採用できる。これにより、波長変換部材20に対してレンズ体40の反対側にヒートシンク(本実施形態において保持部材25)を配置して、波長変換部材20とヒートシンクとの接触面積を十分に確保できる。したがって、本実施形態によれば、波長変換部材20の冷却効率を高めた長寿命な車両用灯具1を提供できる。
【0031】
(制御ユニット)
図1に示すように、制御ユニット5は、レーザ光源モジュール2を制御する。制御ユニット5は、発光検知部50および制御部60を有する。
【0032】
発光検知部50は、波長変換部材20の近傍に配置されている。発光検知部50は、波長変換部材20から照射された光のうち、レンズ体40内に入光しなかった光又はレンズ体40から漏れ出した漏れ光を検知する。発光検知部50が検知する光は、波長変換部材20から照射される白色光WLおよび波長変換光FL(すなわち黄色光)のうち少なくとも一方である。これにより、発光検知部50は、波長変換部材20の発光状態を検知する。なお本明細書において、「波長変換部材の発光状態を検知する」とは、波長変換部材から照射される光の強度を検知することを意味する。
【0033】
制御部60は、レーザ光源10および発光検知部50と電気的に接続されている。制御部60は、発光検知部50から送信された信号を基に波長変換部材20の発光状態を監視する。また、制御部60は、レーザ光源10を制御する。
【0034】
制御部60は、例えば、図示略のCPU(中央処理ユニット、Central Processing Unit)およびRAM(ランダムアクセスメモリ、Random access memory)などを有する。制御部60は、CPUにおいて所定プログラムを実行することで、発光検知部50の検知結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づきレーザ光LL1を放出しないようにレーザ光源10を制御する。
【0035】
次に、制御ユニット5の具体的な動作について説明する。
波長変換部材20が、保持部材25に保持され定位置に配置されている場合、発光検知部50は黄色光(又は白色光)を受光し、受光量に応じた検知信号を制御部60へ発する。一方、波長変換部材20が何らかの理由で定位置から脱落した場合、発光検知部50は黄色光(又は白色光)を受光せず、検知信号を発しない(または、検知できなかった、との信号を発する)。ここで、予め定められたしきい値として、波長変換部材20が定位置に配置されている場合の発光検知部50の検知信号の値より小さく、波長変換部材20が脱落した場合の発光検知部50の検知信号の値よりは大きい値を設定しておき、制御部60に記憶させておく。
【0036】
制御部60は、発光検知部50が検知した検知結果と予め定められたしきい値とを比較し、その比較結果に基づき、波長変換部材20が定位置から脱落したか否かを判定する。そして、制御部60は、発光検知部50が発した検知信号より予め定められたしきい値のほうが大きいとの比較結果を得て、波長変換部材20が定位置から脱落したと判定した場合、レーザ光を放出しないようにレーザ光源10への電流供給を停止するなどの制御を行う。すなわち、制御部60は、レーザ光源10がレーザ光LL1を照射しており発光検知部50が波長変換部材20の発光状態を不十分と検知した場合に、レーザ光源10によるレーザ光の照射を停止する。このため、本実施形態によれば、波長変換部材20が脱落した場合に、レーザ光源10をOFFとすることができ、レーザ光LL1が出射面48からレンズ体40外部に出射することを抑制できる。
【0037】
(レンズ体)
図3は、レンズ体40の断面模式図である。図3には、発光ユニット3から照射された白色光WLの光路の一部を図示する。レンズ体40は、波長変換部材20から照射された白色光WLを前方に向けて照射する。
【0038】
レンズ体40は、前後基準軸AX40に沿って延びた形状を有する中実の多面レンズ体である。なお本実施形態において、前後基準軸AX40は、車両の前後方向(Z軸方向)に延び、後段で説明するレンズ体40の出射面48の中心を通過する基準となる軸である。レンズ体40は、後方を向く後端部40AAと、前方を向く前端部40BBと、を含む。
【0039】
レンズ体40は、例えば、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。また、レンズ体40に透明樹脂を用いた場合は、金型を用いた射出成形によってレンズ体40を形成することが可能である。
【0040】
レンズ体40は、後端部40AAからレンズ体40の内部に入射した白色光WLを前端部40BBから出射して前方に照射されることにより、上端縁にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する。
【0041】
レンズ体40の後端部40AAは、白色光入射面42及び第1反射面44を含んでいる。レンズ体40の前端部40BBは、凸レンズ面である出射面48を含んでいる。レンズ体40の後端部40AAと前端部40BBとの間には、第2反射面46が配置されている。
【0042】
レンズ体40は、レーザ光入射面41と、白色光入射面42と、第1反射面44と、第2反射面46と、出射面48と、を有する。レーザ光入射面41、白色光入射面42および第1反射面44は、レンズ体40の後端部40AAに位置する。また、出射面48は、レンズ体40の前端部40BBに位置する。第2反射面46は、後端部40AAと前端部40BBとの間に位置する。
【0043】
第1反射面44は、白色光入射面42からレンズ体40内部に入射した白色光WLを内面反射(好ましくは全反射)する面である。第1反射面44は、第1焦点F1と、第1焦点F1より前方に位置する第2焦点F2を基準とする楕円球形状(又はこれに類する自由曲面等)を含む反射面として構成される。第1焦点F1は、仮想光源位置FVに配置されており、第2焦点F2は、出射面48の焦点F48の近傍に配置されている。
【0044】
ここで、仮想光源位置FVとは、波長変換部材20から白色光入射面42において屈折してレンズ体40内部に入射した光を逆方向に延長した場合の交点である。仮想光源位置FVは、レンズ体40の内部に光源が一体的に配置されていると仮定した場合の光源の位置である。
【0045】
楕円状の反射面は、一方の焦点を通過した光を他方の焦点に集光させる性質を有するため、第1反射面44は、レンズ体40の内部に入射した白色光を内面反射させて第2焦点F2に集光させる。また、第1反射面44は、第1焦点F1からずれた位置から照射された光を第2の焦点の上方又は下方に向けて内面反射させる。
【0046】
第2反射面46は、第1反射面44で内面反射された白色光WLの少なくとも一部を内面反射(好ましくは全反射)する面である。本実施形態の第2反射面46は、出射面48の焦点F48の近傍から後方に向かって略水平方向に延びる。また本実施形態において第2反射面46は、平面である。なお、第2反射面46は、水平に対して傾斜した面であってもよく、また湾曲した面であってもよい。
【0047】
第2反射面46の前端縁46aは、第1反射面44で内面反射された白色光WLの一部を遮光してロービーム用配光パターンのカットオフライを形成するエッジ形状を含んでいる。第2反射面46の前端縁46aは、焦点F48の近傍に配置されている。
【0048】
出射面48は、レンズ体40の内部を通過する白色光WLを前方に出射する。出射面48は前方に向かって突出する凸レンズ面である。出射面48は、第2焦点F2と略一致する焦点F48を基準として構成されている。なお本明細書において、出射面48の焦点F48とは、出射面48から出射される光が所望の配光パターンを形成するときに、出射面48の手前で光が集中する集光領域の中心に位置する点を意味する。
【0049】
出射面48は、第1反射面44で内面反射された白色光WLのうち、第2反射面46で反射されて出射面48に達した白色光WLと、第2反射面46で反射されることなく出射面48に達した白色光WLと、を出射する。なお、第2反射面46で反射されて出射面48に達した白色光WLは、出射面48において前後基準軸AX40より上側から下向きに出射される。また、第2反射面46で反射されることなく出射面48に達した白色光WLは、出射面48において前後基準軸AX40より下側から略平行に出射される。これらの出射光は、車両用灯具1の前方で互いに重ね合わされる。すなわち、なわち、第2反射面46で内面反射された光は、第2反射面46の前端縁46aを境に折り返されてカットオフラインより下側に重畳される形となる。
【0050】
図4は、レンズ体40の後端部40AA近傍における車両用灯具1の断面模式図であり、レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1の光路を示す図である。
レンズ体40は、後端部40AAにおいて、レーザ光源10と波長変換部材20との間に位置する。レンズ体40の後端部40AAには、レーザ光入射面41および白色光入射面42が設けられている。本実施形態において、レーザ光入射面41および白色光入射面42は、レーザ光源10と波長変換部材20とを結ぶ直線状に配置されている。
【0051】
レーザ光入射面41は、第1反射面44から外側に膨出するように形成された膨出部49に設けられている。レーザ光入射面41は、レーザ光源10に対向して配置されている。レーザ光入射面41は、レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1を入射させる。レーザ光入射面41は、凸レンズ状に湾曲している。レーザ光源10から照射されたレーザ光LL1は、レーザ光入射面41において屈折してレーザ光LL1の光軸J1側に向けて屈折させる。すなわち、レンズ体40の内部に入光したレーザ光LL1は、レーザ光入射面41により集光される。
なお、ここでレーザ光LL1の光軸J1とは、レーザ光LL1の光束の中心軸である。言い換えると、レーザ光LL1とは、レーザ光LL1のスポットの中心を通過する基準線である。
【0052】
白色光入射面42は、波長変換部材20と隙間を介して対向して配置されている。本実施形態において、白色光入射面42は、レンズ体40の内部を通過するレーザ光LL1の光軸J1に直交する。
【0053】
白色光入射面42は、レンズ体40の内部から波長変換部材20に向けてレーザ光LL1を出射する。レーザ光LL1は、レンズ体40に入光する際に、湾曲状のレーザ光入射面41において集光方向に屈折されているため、白色光入射面42に異なる方向から到達する光を含む。したがって、レンズ体40の内部で白色光入射面42に達したレーザ光LL1は、白色光入射面42から出射される際に光軸J1に近づく方向(又は離れる方向)にさらに屈折されて、波長変換部材20に入射される。
【0054】
本実施形態によれば、波長変換部材20が白色光入射面42から離間して配置されるため、白色光入射面42から出射するレーザ光LL1を屈折させて波長変換部材20の受光面20aに対して異なる入射角を持った光を入射させることができる。これにより、波長変換部材20の受光面20aで反射された反射光LL2(図2参照)に拡散角度を付与させることができ、反射光LL2と波長変換光FLと全体的に混色させることができる。結果的に、色ムラを抑制した白色光WLをレンズ体40に入光させて、色ムラを抑制した白色光WLを出射面48から出射することができる。
なお、従来一般的な反射型のレーザ光源モジュールでは、波長変換部材から照射され拡散的に広がる光を効率的にレンズ体に取り込むために、波長変換部材とレンズ体とを接触させている。
【0055】
本実施形態によれば、レーザ光入射面41が凸レンズ状に湾曲するため、レンズ体40の内部においてレーザ光LL1が集光方向に屈折される。したがって、レンズ体40の内部を通過するレーザ光LL1に非平行な光を含ませることができ、レンズ体の内部を通過して白色光入射面に達したレーザ光を出射時に異なる方向に屈折させることができる。結果として、波長変換部材20の受光面20aで反射された反射光LL2の拡散角度を大きくすることができ、色ムラ抑制の効果を高めることができる。
なお、本実施形態では、レーザ光入射面41においてレーザ光LL1を集光させる構成について説明した。しかしながら、レンズ体40の内部で白色光入射面42に達する光に異なる方向の光を含ませることができればよく、例えば、レーザ光源10とレーザ光入射面41との間に集光レンズを配置する構成を採用してもよい。
【0056】
本実施形態によれば、波長変換部材20の受光面20aは、白色光入射面42から出射されたレーザ光LL1の光軸J1と直交する。したがって、波長変換部材20において反射させた反射光LL2(図2参照)の光軸と波長変換光FL(図2参照)の光軸とを一致させることが可能となる。これにより、拡散する波長変換光FLの全体に亘って反射光LL2を重ね合わせることができ、白色光WLの色ムラを効果的に抑制できる。
【0057】
図5は、レンズ体40の後端部40AA近傍における車両用灯具1の断面模式図であり、波長変換部材20から照射された白色光WLの光路を示す図である。
図5に示すように、白色光入射面42は、波長変換部材20から照射された白色光WLを屈折させて入射させる。
【0058】
本実施形態によれば、波長変換部材20が白色光入射面42から離間して配置させることで、波長変換部材20から照射された白色光WLを白色光入射面42において屈折させて、レンズ体40の内部に拡散角度を狭めた白色光WLを入光させることができる。したがって、レンズ体40の第1反射面44で白色光WLを内面反射させる場合に、第1反射面44に対する入射角度の範囲を狭めて全反射効率を高めることができる。
なお、図5には、比較例として、白色光入射面と接触させた波長変換部材から照射される仮想白色光VWLの光路を図示する。図5に示すように、波長変換部材が白色光入射面と接触させる場合には、レンズ体の内部に通過する仮想白色光VWLの拡散角度が大きいため、第1反射面44において全反射されず、光の利用効率が低下する。
【0059】
波長変換部材20と白色光入射面42との距離Hは、波長変換部材20から照射された白色光WLを十分に取り込める程度の距離であることが望ましい。波長変換部材20から照射される白色光WLはランバーシアンの強度特性を有する。このうち、波長変換部材20の面に対して垂直な方向を基準として、例えば70°以内の角度範囲に照射される光がレンズ体40の白色光入射面42を介してレンズ体40内に入射するように距離Hを設定する。なお、白色光WLがレンズ体40に入射する上記の角度範囲が70°以下であってもよい。
また、距離Hは、レンズ体40の第1反射面44に白色光WLが入射したときに、より多くの光が全反射の条件を満たすように適切に設定する。
【0060】
<変形例1>
図6は、上述の実施形態の変形例1の車両用灯具101の断面模式図である。変形例1の車両用灯具101は、上述の車両用灯具1と比較してレーザ光源110の構成が主に異なる。
車両用灯具101は、上述の実施形態と同様に、レーザ光源110と、波長変換部材20と、レンズ体40と、を備える。
【0061】
本変形例において、レーザ光源110は、p偏光のレーザ光LL1を照射する。また、レーザ光源110は、レーザ光入射面41に対してブリュスター角βの近傍でレーザ光LL1を入射させる。より具体的には、レーザ光LL1は、レーザ光入射面41に対して法線方向からブリュスター角β+5°の範囲で入射する。一般的に、p偏光をブリュスター角で入射させると反射率が0となることが知られている。レーザ光LL1をレーザ光入射面41に対して法線方向からブリュスター角β+5°の範囲で入射させることで、レーザ光入射面41に対するレーザ光LL1の反射率を十分に低下させることができる。すなわち、本変形例によれば、レーザ光入射面41におけるレーザ光LL1の反射を抑制し、光の利用効率を高めることができる。なお、レーザ光LL1をブリュスター角β±5°の範囲でレーザ光入射面41に入射させることで、このような効果をより顕著に得ることができる。
なお、p偏光のレーザ光LL1をブリュスター角βで入射させるほかに、白色光入射面42に反射防止膜を形成しても類似の効果を得ることができる。しかしながら、本変形例によれば、レーザ光LL1固有の直線偏光を利用することで、反射防止膜の成膜を行うことなく反射を防止して、レーザ光LL1の利用効率を高めることができる。
【0062】
<変形例2>
図7は、上述の実施形態の変形例2の車両用灯具201の断面模式図である。変形例2の車両用灯具201は、上述の車両用灯具1と比較して複数のレーザ光源210を備える点が主に異なる。
【0063】
車両用灯具201は、上述の実施形態と同様に、複数のレーザ光源210と、波長変換部材20と、レンズ体40と、を備える。複数のレーザ光源210は、それぞれレンズ体40のレーザ光入射面41にレーザ光LL1を入射させる。レーザ光入射面41に入射したレーザ光LL1は、上述の実施形態と同様に、白色光入射面42から出射して波長変換部材20に入射する。すなわち、複数のレーザ光源210は、それぞれ照射するレーザ光LL1を同一の波長変換部材20に入射させる。
本実施形態によれば、複数のレーザ光源210から照射されるレーザ光LL1を用いるため、照度の高い車両用灯具201を提供できる。
なお、複数のレーザ光源210は、それぞれp偏光のレーザ光LL1をそれぞれブリュスター角の近傍で入射させる構成としてもよい。これにより、複数のレーザ光源210から照射されるレーザ光LL1のレーザ光入射面41における反射を抑制して、レーザ光LL1の利用効率を抑制できる。
【0064】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されない。
【符号の説明】
【0065】
1,101,201…車両用灯具、10,110,210…レーザ光源、20…波長変換部材、20a…受光面、40…レンズ体、41…レーザ光入射面、42…白色光入射面、48…出射面、50…発光検知部、60…制御部、J1…光軸、LL1…レーザ光、LL2…反射光、FL…波長変換光、WL…白色光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7