(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867881
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】カウルカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-107656(P2017-107656)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-202926(P2018-202926A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堀水 康正
(72)【発明者】
【氏名】井原 淳
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−106716(JP,A)
【文献】
特開2016−084116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドと車体部材との間のカウル部を覆うカバー本体部と、
前記カバー本体部に係脱可能に取り付けられる別体構造物と、を備え、
前記カバー本体部は、カバー本体部側係合部を有し、
前記別体構造物は、前記カバー本体部側係合部と係合する別体構造物側係合部を有し、
前記カバー本体部は平面視で矩形状であり、前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部は、外方から荷重が加わった際に、前記カバー本体部の長手方向に沿って、前記カバー本体部側係合部と前記別体構造物側係合部との係合量を増加可能に構成される
ことを特徴とするカウルカバー。
【請求項2】
前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部のうちの一方に、係合爪が設けられており、前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部のうちの他方には、前記係合爪が係止される係合爪受部が設けられている請求項1に記載のカウルカバー。
【請求項3】
ウインドシールドと車体部材との間のカウル部を覆うカバー本体部と、
前記カバー本体部に係脱可能に取り付けられる別体構造物と、を備え、
前記カバー本体部は、カバー本体部側係合部を有し、
前記別体構造物は、前記カバー本体部側係合部と係合する別体構造物側係合部を有し、
前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部のうちの一方の係合部に、係合爪が設けられており、前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部のうちの他方の係合部には、前記係合爪が係止される係合爪受部が設けられ、前記係合爪は、前記一方の係合部における前記係合爪の設置面から下方へ延在する断面L字状に形成されたL字部と、前記係合爪の設置面と前記L字部とに囲まれた受容部とを有し、
前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部は、外方から荷重が加わった際に、前記係合爪受部の一部が前記受容部へ入り込むことにより前記係合爪受部と前記係合爪との係合量を増加可能に構成される
ことを特徴とするカウルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウインドシールドと車体部材との間のカウル部を覆うカウルカバーが公知である(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のカウルカバーは、一端部がウインドシールドの縁部に係止され、他端部が車体部材の取付部に係止されるカバー本体部を備える。このカバー本体部には、別体構造物(衝撃吸収部)が分離可能に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4337778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、外方から荷重が別体構造物に加わった際に別体構造物をカバー本体部から脱落させてカバー本体部の剛性を低下させることにより、カウルカバーによる衝撃吸収を可能にしている。しかしながら、外方から荷重が別体構造物に加わった際にカバー本体部と別体構造物との係合状態を解除させるために初期反力が大きくなってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、外方から荷重が別体構造物に加わった際にカバー本体部と別体構造物との係合状態を維持して別体構造物の変形や変位を許容することにより、カウルカバーによる衝撃吸収効果を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカウルカバーは、ウインドシールドと車体部材との間のカウル部を覆うカバー本体部と、カバー本体部に係脱可能に取り付けられる別体構造物と、を備える。カバー本体部は、カバー本体部側係合部を有し、別体構造物は、カバー本体部側係合部と係合する別体構造物側係合部を有する。
前記カバー本体部は平面視で矩形状であり、カバー本体部側係合部及び別体構造物側係合部は、外方から荷重が加わった際に、
前記カバー本体部の長手方向に沿って、前記カバー本体部側係合部と前記別体構造物側係合部との係合量を増加可能に構成される。
また、本発明に係るカウルカバーは、ウインドシールドと車体部材との間のカウル部を覆うカバー本体部と、前記カバー本体部に係脱可能に取り付けられる別体構造物と、を備え、前記カバー本体部は、カバー本体部側係合部を有し、前記別体構造物は、前記カバー本体部側係合部と係合する別体構造物側係合部を有し、前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部のうちの一方の係合部に、係合爪が設けられており、前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部のうちの他方の係合部には、前記係合爪が係止される係合爪受部が設けられ、前記係合爪は、前記一方の係合部における前記係合爪の設置面から下方へ延在する断面L字状に形成されたL字部と、前記係合爪の設置面と前記L字部とに囲まれた受容部とを有し、前記カバー本体部側係合部及び前記別体構造物側係合部は、外方から荷重が加わった際に、前記係合爪受部の一部が前記受容部へ入り込むことにより前記係合爪受部と前記係合爪との係合量を増加可能に構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るカウルカバーによれば、外方から荷重が別体構造物に加わった際にカバー本体部と別体構造物との係合状態を維持して別体構造物の変形や変位を許容することにより、カウルカバーによる衝撃吸収効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るカウルカバーの分解斜視図である。
【
図2】カバー本体部側の係合部を示す要部拡大斜視図である。
【
図4】カバー本体部に対する蓋体の取付状態を示す説明図である。
【
図5】荷重入力初期における蓋体の取付状態を示す説明図である。
【
図6】荷重入力後期における蓋体の取付状態を示す説明図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るカウルカバーにおける、カバー本体部に対する蓋体の取付状態を示す説明図である。
【
図8】荷重入力初期における蓋体の取付状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
なお、以下、前後方向、左右方向および上下方向については、車両に取り付けた状態を基準として説明する。図中、矢印FRは車両前方を示す。
【0011】
図1に示すカウルカバー(カウルトップカバー)1は、ウインドシールド(フロントガラス)と車体部材(例えば、車体パネル)との間に位置する。また、カウルカバーは、ウインドシールドと車体パネルとの間のカウル部を覆うために左右方向に沿って延在している。カウルカバー1は、比較的硬質の樹脂材料(例えば、ABS樹脂、変性PPO樹脂等)によって形成されるカバー本体部2を備えている。
【0012】
カバー本体部2には、ワイパーのワイパーシャフトが挿通される穴部であるワイパーピボット穴部3が形成されている。また、カバー本体部2には、メッシュ状の空気導入穴(図示せず)が形成されている。この空気導入穴は、例えば、外気を空調装置(図示せず)を介して車内に導入する際の空気導入穴として用いられる。
【0013】
図2から
図4に示すように、平面視で略矩形状のカバー本体部2の前端部4に、開口部(切欠部)5が形成されている。開口部5は、カバー本体部2に係脱可能に取り付けられる蓋体(別体構造物)6によって閉塞されている。蓋体6は、カバー本体部2の開口部5を閉塞するために左右方向に沿って延在している。
【0014】
蓋体6は、リッドやキャップ等とも称されるもので、カバー本体部2と別体であり、カウルカバー1のカバー本体部2以外の部分を構成する小型の部材(カバー本体部2よりも相当小さい部材)である。蓋体6は、カバー本体部2の前端部4に上方から取り付けられるようになっている。蓋体6は、カバー本体部2と同等の剛性又はカバー本体部2よりも低剛性の樹脂材料によって形成されている。
【0015】
蓋体6は、カバー本体部2の前端部4の一部を構成する蓋体本体部7を有して構成されている。蓋体本体部7は、カバー本体部2の前端部4と同一の断面形状(断面L字状)に形成されている。具体的には、蓋体本体部7は、シール部材(図示せず)が配設される本体部側シール面部8の一部を構成する蓋体側シール面部9と、本体部側シール面部8に連続して形成される本体部側斜面部10の一部を構成する蓋体側斜面部11とを有して構成される。
【0016】
カバー本体部2は、カバー本体部側係合部12を有している。その一方で、蓋体6は、カバー本体部側係合部12と係合する蓋体側係合部(別体構造物側係合部)13を有する。カバー本体部側係合部12と蓋体側係合部13とが着脱可能に係合することにより、カバー本体部2に蓋体6が取り付けられている。
【0017】
本実施形態では、蓋体6側の係合部(蓋体側係合部13)に、係合爪14が設けられている(
図3参照)。その一方で、カバー本体部2側の係合部(カバー本体部側係合部12)には、係合爪14が係合されて係止される係合爪受部15が設けられている(
図2参照)。
【0018】
係合爪14は、蓋体本体部7の左右方向の両端部にそれぞれ設けられている(
図3参照)。各係合爪14は、蓋体本体部7の蓋体側シール面部9の下面から下方へ延在する第一部分16と、第一部分16の先端部から左右方向の内方(車幅方向の中央側)へ延在する第二部分17とを有して断面L字状に形成されている。係合爪14の第二部分17には、先端から下方に向かって突出する下垂突起17aが形成されており、この下垂突起17aにおける係合爪受部15との接触面はテーパ形状に形成されている。下垂突起17aにおける係合爪受部15との接触面が、上方から下方へ向かい左右方向の外方(係合爪受部15とは反対側)に傾斜するテーパ形状に形成されることにより、下垂突起17aが係合爪14の挿入時にガイドの役割を持つようになっている。そして、蓋体側シール面部9端部と係合爪14を構成する第一部分16と第二部分17とに囲まれた断面略U字状の空間に、受容部18が形成されている。
【0019】
その一方で、係合爪受部15は、開口部5の左右方向の両端部に位置させてそれぞれ設けられている(
図2参照)。係合爪受部15は、開口部5の左右方向の両端部に設けられた受部基部15aに設けられ、係合爪14を挿入可能な開口15bを有する。本実施形態では、係合爪受部15の開口15bは、左右方向に沿った長辺を有して延在している。係合爪受部15の左右方向で受部基部15a側となる開口縁の一部を切り欠いて舌片状の弾性片15cが形成されている。弾性片15cは、蓋体6がカバー本体部2に取り付けられたときに受容部18に一部が入り込んだ状態となる。すなわち、係合爪14の第二部分17の自由端上面と弾性片15cの自由端下面とが、蓋体6が上方へ容易に移動(脱落)しない程度に接触し、弾性片15cの自由端と係合爪14の第一部分16の内向面とが対向した状態となっている。蓋体6に形成された受容部18により、弾性片15cの自由端と係合爪14の第一部分16の内向面とが一定距離だけ離間し、蓋体6(係合爪14)の左右方向の内方への移動がある程度許容されるようになっている。また、係合爪受部15における係合爪14との接触部に弾性片15cを形成することにより、係合爪14が挿入時にたわみやすくなり、係合爪14の挿入性を向上させることが可能である。
【0020】
また、開口部5の縁部分に、本体部側シール面部8から下方へ延在する当接部19が形成されている。この当接部19は、カバー本体部2に取り付けられた蓋体6の左右方向の外方への移動を規制して位置決めする機能を主に有している。本実施形態では、係合爪受部15は、当接部19の下端から左右方向の内方へ延在する延在部15dと同一面上に形成されている(
図2参照)。すなわち、係合爪受部15は、本体部側シール面部8から一段下がったところに形成されている。
【0021】
さらに、蓋体本体部7の蓋体側斜面部11に、断面L字状の係合片20が設けられており、カバー本体部2の本体部側斜面部10には、係合片20が係合される係合片受部21が設けられている。この係合片受部21は、蓋体6の前後方向及び下方への移動を規制して位置決めする機能を主に有している。
【0022】
このような蓋体6が、カバー本体部2に対して上方から取り付けられる。より具体的には、蓋体6の係合爪14がカバー本体部2の係合爪受部15に係合されて係止され、かつ、蓋体6の係合片20がカバー本体部2の係合片受部21に係合されることにより、蓋体(別体構造物)6がカバー本体部2に取り付けられる。このため、カバー本体部2への蓋体6の取付は容易に行うことが可能である。
【0023】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0024】
蓋体6に対して外方から荷重入力があった際(荷重入力初期)には、
図5に示されるように、この外力により蓋体6が下方へ押される。蓋体6が下方へ押されて変形すると、蓋体6の両端部位置が蓋体6の左右方向の内方へ移動する。カバー本体部2の係合爪受部15の弾性片15cが蓋体6の受容部18奥側、すなわち断面略U字状の空間の開放部側から空間内部へ入り込むことにより、係合爪受部15と係合爪14との係合量が増加することになる。このため、蓋体6の変形や変位が許容されることにより、カバー本体部2と蓋体6との係合状態を解除させずに初期反力を抑えることができる。
【0025】
そして、荷重入力後期には、
図6に示されるように、カバー本体部2の係合部と蓋体6の係合部との係合量が増加した状態が維持されることにより、カバー本体部2と蓋体6との係合状態が維持される。このため、荷重入力後期には、カバー本体部2を変形させることにより、衝撃荷重のエネルギーを効果的に吸収することができる。
【0026】
また、カバー本体部2の長手方向(車幅方向)に沿って係合量を増加させることにより、カバー本体部2の短手方向(車長方向)に沿って係合量を増加させる場合と比較して、係合量の増加量を大きく確保することが可能になる。
【0027】
本実施形態では、蓋体6に係合爪14を設け、カバー本体部2に係合爪受部15を設けている。これとは逆に、カバー本体部2に係合爪14を設け、蓋体6に係合爪受部15を設けることも可能である。
【0028】
ところで、本発明のカウルカバーは前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0029】
例えば、
図7及び
図8に示すように、係合爪14の向きを前述の実施形態とは逆向きにするようにしてもよい。また、係合爪14の向きの変更に合わせて、係合爪受部15及び当接部19の配置も前述の実施形態とは逆になっている。つまり、外方荷重の入力時に蓋体6に生じ得る変形モードに応じて、係合爪14の向き等は適宜選択することが可能である。
【0030】
また、図示はしないが、外方荷重の入力時に蓋体6に生じ得る変形モードに応じて、複数箇所ではなく、一箇所のみに前述の係合爪14及び係合爪受部15を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 カウルカバー
2 カバー本体部
6 蓋体(別体構造物)
12 カバー本体部側係合部
13 蓋体側係合部(別体構造物側係合部)
14 係合爪
15 係合爪受部