(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス供給システムにおける上述したような機器は、通常、換気可能に構成された密閉室に配備されている。これら機器に接続された配管からの漏洩に対応するために、密閉室には、ガスの漏洩を検知するためのガス検知器が設置される。ガス検知器がガスの漏洩を検知した場合には、速やかに漏洩箇所に対して処置することが求められる。ところが、密閉室内に漏洩が想定される箇所が複数ある場合、漏洩箇所を特定するのに時間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、漏洩箇所の特定を速やかに行うことができるガス漏洩検知システム及びガス漏洩検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るガス漏洩検知システムは、給気口及び排気口を備えて換気可能に構成された密閉室と、液化ガス又はそれが気化した蒸発ガスが流れ、前記密閉室内に点在する複数の漏洩想定箇所を有する配管と、前記排気口に設置された第1ガス検知器と、前記第1ガス検知器よりもガス検知感度が低い少なくとも2つの第2ガス検知器であって、前記複数の漏洩想定箇所の少なくとも2つの近傍にそれぞれ設置された少なくとも2つの第2ガス検知器と、を備える。
【0008】
上記のガス漏洩検知システムにおいて、例えば、前記複数の漏洩想定箇所のそれぞれは、前記配管に設けられた、弁、継手、又は機器のシール部である。
【0009】
上記の構成によれば、密閉室内において配管から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、排気口に設置した第1ガス検知器により、漏洩した液化ガスが気化したガス又は漏洩した蒸発ガスを確実に検知することができる。また、各第2ガス検知器は、第1ガス検知器よりもガス検知感度が低いため、密閉室内のある漏洩想定箇所から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、ガスが漏洩した箇所の近傍に設置された第2ガス検知器がガスを検知し、それ以外は漏洩したガスを検知しないように配置できる。このため、複数の漏洩想定箇所のうちのいずれからガス漏洩があったかを速やかに特定することができる。
【0010】
また、本発明に係るガス漏洩検知方法は、密閉室に点在する複数の漏洩想定箇所のうちの1つの漏洩想定箇所からガスが漏洩した場合に、前記密閉室の排気口に設置された第1ガス検知器によりガスを検知するとともに、前記密閉室内に設置された、前記第1ガス検知器よりもガス検知感度が低い複数の第2ガス検知器のうち、ガスが漏洩した前記漏洩想定箇所の近傍に設置された1つの第2ガス検知器によりガスを検知する。
【0011】
上記の方法によれば、密閉室内において配管から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、排気口に設置した第1ガス検知器により、漏洩した液化ガスが気化したガス又は漏洩した蒸発ガスを確実に検知することができる。また、各第2ガス検知器は、第1ガス検知器よりもガス検知感度が低いため、密閉室内のある漏洩想定箇所から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、ガスが漏洩した箇所の近傍に設置された第2ガス検知器がガスを検知し、それ以外は漏洩したガスを検知しないように配置できる。このため、複数の漏洩想定箇所のうちのいずれからガス漏洩があったかを速やかに特定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、漏洩箇所の特定を速やかに行うことができるガス漏洩検知システム及びガス漏洩検知方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知システムを図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係るガス漏洩検知システム10を備える液化ガス運搬船1の概略構成図である。液化ガス運搬船1の船体2には、液化ガスを貯留するタンク3が設けられている。タンク3に貯留される液化ガスは、例えば液化天然ガス、液体水素などである。
【0016】
船体2には、液化ガス又はそれが気化した蒸発ガスが流れる配管によりそれぞれ構成された第1排出ライン4及び第2排出ライン5が設けられている。第1排出ライン4及び第2排出ライン5は、それぞれタンク3から延びており、様々な機器が配備された機械室20の内部を通過するように船体2に配設されている。本実施形態におけるガス漏洩検知システム10は、機械室20での液化ガス又は蒸発ガスの漏洩を検知する。
【0017】
機械室20内では、第1排出ライン4及び第2排出ライン5に様々な機器が設けられている。本実施形態では、第1排出ライン4に、機械室20内の圧縮機11が設けられている。圧縮機11は、タンク3内で余剰となった蒸発ガスを有効利用するために、第1排出ライン4を通じてタンク3から導かれた蒸発ガスを圧縮する。即ち、タンク3では、外部からの入熱によって液化ガスが気化して蒸発ガス(ボイルオフガス)が発生する。圧縮機11にて圧縮された蒸発ガスは、第1排出ライン4における圧縮機11より下流側部分に接続された図略の舶用主機、舶用補機又は再液化装置等に送られて、使用される。
【0018】
また、本実施形態では、第2排出ライン5に、タンク3に近い側から順に、機械室20内の蒸発器12とヒーター13が設けられている。第2排出ライン5は、その一端がタンク3内の底部に配設されたポンプ6に接続されており、当該ポンプ6から吐出された液化ガスは、蒸発器12に送られる。蒸発器12にて液化ガスが気化した蒸発ガスは、ヒーター13に送られて加熱された後、第2排出ライン5におけるヒーター13より下流側部分に接続された図略の舶用主機又は舶用補機等に送られて、使用される。
【0019】
図2は、機械室20を模式的に示した平面図である。機械室20は、密閉された空間を形成する密閉室である。機械室20は換気可能に構成されており、機械室20の適所には、給気口21及び排気口22が設けられている。即ち、図略の換気装置によって、機械室20内の空気が排気口22から強制的に排気され、給気口21から機械室20内に空気が送られる。
【0020】
第1排出ライン4及び第2排出ライン5は、機械室20内に点在する複数の漏洩想定箇所30を有する。ここで、漏洩想定箇所とは、配管を流れる液化ガス又は蒸発ガスが漏洩する可能性が比較的高い箇所のことである。本実施形態では、複数の漏洩想定箇所30のそれぞれは、第1排出ライン4及び第2排出ライン5を構成する配管に設けられた、弁、継手、又は機器のシール部である。シール部は、例えば圧縮機やポンプ等の回転機械や往復動機械等における摺動面間で液化ガス又は蒸発ガスの漏洩をシールする部品である。
【0021】
具体的には、第1排出ライン4には、漏洩想定箇所30として、圧縮機11より上流側の管部4aに位置するフランジ継手30a及び遮断弁30bと、圧縮機11のシール部30cと、圧縮機11より下流側の管部4bに位置するフランジ継手30dとが設けられている。また、第2排出ライン5には、漏洩想定箇所30として、蒸発器12より上流側の管部5aに位置するフランジ継手30e及び遮断弁30fと、蒸発器12とヒーター13との間の管部5bに位置するフランジ継手30g、フランジ継手30h及び遮断弁30iと、ヒーター13より下流側の管部5cにフランジ継手30jとが設けられている。なお、以下の説明では、「フランジ継手」、「遮断弁」及び「シール部」はいずれも「漏洩想定箇所」と称し、漏洩想定箇所30a〜30jのうち、任意の漏洩想定箇所を示す場合には「漏洩想定箇所30」と称する。
【0022】
本実施形態では、これら漏洩想定箇所30a〜30jが、機械室20内におけるいくつかの箇所に集積されて配置されている。
図2に示した例では、漏洩想定箇所30の配置の一例として、漏洩想定箇所30a〜30dが圧縮機11の近傍に集積して配置されており、漏洩想定箇所30e〜30gが蒸発器12の近傍に集積して配置されており、漏洩想定箇所30h〜30jがヒーター13の近傍に集積して配置されている。
【0023】
ガス漏洩検知システム10は、漏洩想定箇所30a〜30jからの液化ガス又は蒸発ガスの漏洩を検知するために、第1ガス検知器41と、複数(本例では3つ)の第2ガス検知器42a〜42cとを備える。
【0024】
第1ガス検知器41は、排気口22に設置されている。機械室20内において液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合、漏洩した液化ガスが気化したガス又は漏洩した蒸発ガス(以下、単に「漏洩したガス」ともいう。)は、必ず排気口22を通過する。このため、第1ガス検知器41の検知感度を、機械室20内のいずれの漏洩想定箇所30から漏洩した場合でもガスを検知するように高感度に(即ち、検知濃度を低く)設定しておくことにより、漏洩したガスを確実に検知することができる。
【0025】
第1ガス検知器41の検知濃度は、例えば数値流体力学(CFD:computational fluid dynamics)解析を実施することにより決定する。具体的には、まず漏洩想定箇所30a〜30jのそれぞれにおいて、想定される漏洩孔径と運用圧若しくは設計圧等から、漏洩する流体の最低漏洩速度を推算する。そして、推算された最低漏洩速度から、単位時間当たりの最小漏洩量Q1を算出する。次に、算出した最小漏洩量Q1と換気量Q2(例えば排気口22からの排出される単位時間当たりの空気量)を境界条件としてCFD解析を実施し、第1ガス検知器41が設置された位置における漏洩したガスの濃度を予測する。こうして、予測したガス濃度に安全率を設定して、機械室20内のいずれの漏洩想定箇所30から漏洩した場合でも第1ガス検知器41によりガスの漏洩を検知できるように検知濃度を決定する。
【0026】
第2ガス検知器42a〜42cは、複数の漏洩想定箇所30の近傍にそれぞれ設置されている。具体的には、第2ガス検知器42aは、互いに近接している漏洩想定箇所30a〜30dの近傍に設置されている。第2ガス検知器42bは、互いに近接している漏洩想定箇所30e〜30gの近傍に設置されている。第2ガス検知器42cは、互いに近接している漏洩想定箇所30h〜30jの近傍に設置されている。
【0027】
ここで、「漏洩想定箇所30の近傍」とは、漏洩想定箇所30から漏洩したガスの漏洩を検知できる範囲であることを意味する。即ち、第2ガス検知器42aは、漏洩想定箇所30a〜30dのいずれから蒸発ガスが漏洩した場合でもその漏洩を検知できる位置に設置されている。第2ガス検知器42bは、漏洩想定箇所30e〜30gのいずれから液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合でもその漏洩を検知できる位置に設置されている。第2ガス検知器42cは、漏洩想定箇所30h〜30jのいずれから蒸発ガスが漏洩した場合でもその漏洩を検知できる位置に設置されている。
【0028】
本実施形態では、第2ガス検知器42a〜42cとして、第1ガス検知器41よりもガス検知感度が低いものが用いられている。そして、ある漏洩想定箇所30から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、第2ガス検知器42a〜42cのうちの1つがガス漏洩を検知し、それ以外はガス漏洩を検知しないように、第2ガス検知器42a〜42cは配置されている。
【0029】
具体的には、第2ガス検知器42aは、漏洩想定箇所30d〜30jのいずれからの液化ガス又は蒸発ガスの漏洩も検知せず、第2ガス検知器42bは、漏洩想定箇所30a〜30d,30h〜30jのいずれからの液化ガス又は蒸発ガスの漏洩も検知せず、第2ガス検知器42cは、漏洩想定箇所30a〜30gのいずれからの液化ガス又は蒸発ガスの漏洩も検知しない。但し、漏洩想定箇所30からの液化ガス又は蒸発ガスの漏洩量が想定を超えたものである場合には、この限りでない。このように、第1ガス検知器41よりもガス検知感度が低い(検知濃度が高い)第2ガス検知器42a〜42cをそれぞれ適宜配置させることにより、漏洩想定箇所30a〜30dと、漏洩想定箇所30e〜30gと、漏洩想定箇所30g〜30jのいずれからガス漏洩があったかが特定される。
【0030】
なお、第2ガス検知器42a〜42cのそれぞれは、漏洩想定箇所30a〜30jのうち、近傍の漏洩想定箇所30からのガス漏洩のみを検知し、近傍に位置しない漏洩想定箇所30からのガス漏洩は検知しないように、設置位置だけでなく、検知濃度も適宜決定される。本実施形態では、第2ガス検知器42a〜42cの検知濃度は、互いに同じである。但し、第2ガス検知器42a〜42cの検知濃度は、互いに異なってもよい。例えば、第2ガス検知器42a〜42cの検知濃度は、爆発下限界(LEL:Lower Explosion Limit)より低い濃度であり、例えば25%LEL、30%LEL、50%LELなどである。第2ガス検知器42a〜42cの検知濃度の決定には、上述したようにいずれの漏洩想定箇所30からのガス漏洩を検知するかを考慮する他、第2ガス検知器42a〜42cの各設置場所の安全基準や第1ガス検知器41の検知濃度の決定方法に依存して行われる。
【0031】
次に、本実施形態における機械室20内でのガス漏洩を検知する流れについて、例を挙げて説明する。
【0032】
例えば漏洩想定箇所30a〜30jのうちの漏洩想定箇所30aから蒸発ガスが漏洩した場合、第1ガス検知器41により漏洩したガスが検知されるとともに、3つの第2ガス検知器42a〜42cのうち、漏洩想定箇所30aの近傍にある第2ガス検知器42aによりガスが検知される。第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42aがガスを検知すると、例えば可視可聴警報により液化ガス運搬船1の船橋やエンジン制御室等にいる船員に、機械室20内でガスの漏洩があったことが知らされる。船員は、第2ガス検知器42aがガス検知したことから、漏洩想定箇所30a〜30dを含む第2ガス検知器42aの近傍に漏洩箇所があることを特定でき、速やかに漏洩箇所に対して処置を行う。
【0033】
例えば漏洩想定箇所30a〜30j以外から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩する万一の場合にも、排気口22に設置した高感度の第1ガス検知器41によって、漏洩したガスを検知することができる。このような場合、低感度である第2ガス検知器42a〜42cのいずれも漏洩したガスを検知しなかったとしても、機械室20内で漏洩したガスを確実に検知することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係るガス漏洩検知システム10では、機械室20内において液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、排気口22に設置した第1ガス検知器41により、漏洩したガスを確実に検知することができる。また、第2ガス検知器42a〜42cは、第1ガス検知器41よりもガス検知感度が低いため、機械室20内のある漏洩想定箇所30から液化ガス又は蒸発ガスが漏洩した場合に、ガスが漏洩した箇所の近傍に設置された第2ガス検知器が漏洩したガスを検知し、それ以外の第2ガス検知器が漏洩したガスを検知しないように配置できる。このため、複数の漏洩想定箇所30a〜30jのうちのいずれからガス漏洩があったかを速やかに特定することができる。
【0035】
(変形例)
図3は、変形例に係る機械室20を模式的に示した平面図である。
図3に示した機械室20は、上記実施形態とは、漏洩想定箇所30を検知するために設置する第2ガス検知器の数及び設置方法が異なる。即ち、上記実施形態では、
図2に示したように、複数の漏洩想定箇所に対して、それらの近傍に1つの第2ガス検知器を設置したが、変形例では、1つの漏洩想定箇所に対して、その近傍に1つの第2ガス検知器を設置している。具体的には、第2ガス検知器43a〜43jのそれぞれは、漏洩想定箇所30a〜30jのそれぞれの近傍に、対応して設置されている。
【0036】
この場合、第2ガス検知器の設置位置は、その検知対象である漏洩想定箇所以外の漏洩想定箇所からガスが漏洩したときに、当該第2ガス検知器に到達する漏洩ガスの濃度が十分に低くなるように決定されることが好ましい。また、第2ガス検知器の検知濃度は、その検知対象である漏洩想定箇所以外の漏洩想定箇所からガスが漏洩したときに、当該第2ガス検知器に到達する漏洩ガスの濃度より低いことが好ましい。但し、漏洩想定箇所からの液化ガス又は蒸発ガスの漏洩量が想定を超えたものである場合には、この限りでない。
【0037】
このように、漏洩想定箇所30a〜30jのそれぞれに対して、その近傍に1つずつ第2ガス検知器を設置するため、複数の漏洩想定箇所30a〜30jのうちのいずれからガス漏洩があったかの特定がより速やかになる。
【0038】
また、漏洩想定箇所30a〜30jの全てについて、第2ガス検知器43a〜43jを設置しなくてもよい。例えば、漏洩想定箇所30a〜30jのうち、特に漏洩する可能性の高い2つの漏洩想定箇所の近傍にのみ、第2ガス検知器が設置されてもよい。この場合、2つの第2ガス検知器のどちらかが漏洩したガスを検知したときに、特に漏洩する可能性の高い2つの漏洩想定箇所のどちらからガス漏洩があったかを速やかに特定することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、
図1に示された液化ガス運搬船1は、概略的に示されたものであり、タンク3及び機械室20の形状や船体2に対する大きさなどは、
図1に示されたものに限定されない。例えば、船体2に設けられたタンク3の数は、複数であってもよいし、タンク3は、その上部が船体2の上甲板より上方に突き出るように船体2に配置されてもよい。また、例えば、機械室20は、船体2の上甲板より上部に設けられてもよい。
【0041】
また、上記実施形態及び変形例では、第1排出ライン4及び第2排出ライン5(即ちそれらを構成する2つの配管)が機械室20の内部を通過するように船体2に配設されていたが、機械室20において液化ガス又はそれが気化した蒸発ガスが流れる配管は2つでなくてもよく、1つ又は3つ以上であってもよい。例えば、機械室20を通過する配管は、第1排出ライン4及び第2排出ライン5のいずれか一方を構成する配管であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態及び変形例では、複数の漏洩想定箇所が点在する密閉室として液化ガス運搬船が備える機械室20を例に挙げたが、本発明は、機械室20以外の換気可能に構成された密閉室にも適用可能であり、また、本発明は、陸上設備が備える密閉室にも適用可能である。