【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(第1実施形態)は、金属製の筒状容器の開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された封止容器の封止構造であって、
前記金属製の筒状容器の開口部側の内壁面と前記内壁面に半径方向に対向する前記金属製の閉塞部材の外表面との隙間が、溶融固化されたシール材で封止されているものである、封止構造を提供する。
【0009】
第1実施形態は、金属製の筒状容器の開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された封止構造を有しているものである。
封止構造は、前記金属製の筒状容器の開口部側の内壁面と前記内壁面に半径方向に対向する前記金属製の閉塞部材の外表面との隙間が、溶融固化されたシール材で閉塞されて封止されているものである。
前記隙間が溶融固化されたシール材で閉塞されて封止されているとは、金属製の筒状容器の開口部側の内壁面と内壁面に半径方向に対向する金属製の閉塞部材の外表面の両方に溶融状態のシール材が融着されることで隙間が封止された後、固化された状態を示している。
【0010】
金属製の筒状容器の幅方向の断面形状は特に制限されるものではなく、円形、楕円形、多角形などにすることができる。
金属製の筒状容器と金属製の閉塞部材のそれぞれの金属は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよいが、同じものであることが好ましい。
【0011】
金属製の閉塞部材は、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有しており、前記開口部と同じ形状で、かつ前記開口部内に挿入できる大きさのものであればよい。
例えば、封止対象となる開口部の状態に応じて、板状のもの、板状のものよりも厚さの大きな塊状のもの、塊状または厚い板状のものの一部から軸方向外側に突き出された部分を有しているものを使用することができる。また、塊状または厚い板状のものの一部から半径方向外側に突き出された板状部分(環状突出部分)を有しているものを使用することもできる。
【0012】
シール材は、溶融した後で固化可能なものであればよく、金属、熱可塑性樹脂から選ばれるものを使用することができる。
シール材を構成する部材が金属の場合は、低融点であるものが好ましく、金属製の筒状容器を構成する金属および金属製の閉塞部材を構成する金属よりも融点の低いものを使用する。
シール材を構成する部材が熱可塑性樹脂の場合は、吸湿性の小さいものが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などが好ましい。
このように特許文献3のような、金属を単に挟持する場合と異なり、第1実施態様の封止構造では、溶融したシール材が隙間の隅に拡散し、さらに気密性を向上させる。
【0013】
第1実施形態の封止構造の好ましい実施形態は、前記金属製の筒状容器の開口部側の内壁面と前記金属製の閉塞部材の外表面の一方または両方が粗面であるものである。
前記のように粗面、即ち凹凸を有している面であると、溶融したシール材が付着し易くなり、封止性能も高くなるので好ましい。
粗面化方法は特に制限されず、やすりなどで擦る方法、切削加工で削る方法、サンドブラスト処理、レーザー光の照射などの方法を適用することができる。
【0014】
第1実施形態の封止構造の好ましい実施形態は、前記シール材が金属または樹脂であり、前記シール材が金属であるときの融点が、前記金属製の筒状容器を構成する金属の融点と金属製の閉塞部材を構成する金属の融点の内、低い融点から少なくとも100℃低い融点であるものである。好ましくはシール材を構成する金属の融点が、筒状容器を構成する金属、或は閉塞部材を構成する金属の融点よりも、200℃から300℃低いものである。
前記融点の温度条件を満たしていると、金属製の筒状容器と金属製の閉塞部材に熱的影響を及ぼすことが無くなるので好ましい。
【0015】
本発明(第2実施形態)は、金属製容器の筒状開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された封止容器の封止構造であって、
前記金属製の筒状開口部側の内壁面と前記内壁面に半径方向に対向する前記金属製の閉塞部材の外表面との隙間が、溶融固化されたシール材で封止されているものである、封止構造を提供する。
【0016】
第2実施形態の封止構造は、第1実施形態の封止構造とは容器の形状および構造が異なるだけであり、封止構造自体および効果は同じものである。
第2実施形態の封止構造は、金属製容器の筒状開口部に形成されている。筒状開口部は、用途に応じて1または複数有しているものでもよい。
筒状開口部は、容器本体から外側に突き出された形状のもののほか、容器本体から外側に突き出されることなく、容器内側に形成された凹部内に形成された形状のものでもよい。
また筒状開口部は、容器本体と直接に接続されているもののほか、他部材を介して容器本体と接続されたものでもよい。
【0017】
第2実施形態の封止構造の好ましい実施形態は、前記金属製容器の筒状開口部側の内壁面と前記金属製の閉塞部材の外表面の一方または両方が粗面であるものである。
前記のように粗面、即ち凹凸を有している面であると、溶融したシール材が付着し易くなり、封止性能も高くなるので好ましい。
【0018】
第2実施形態の封止構造の好ましい実施形態は、前記シール材が金属または樹脂であり、前記シール材が金属であるときの融点が、前記金属製容器を構成する金属の融点と金属製の閉塞部材を構成する金属の融点の内、低い融点から少なくとも100℃低い融点であるものである。好ましくはシール材を構成する金属の融点が、筒状容器を構成する金属、或は閉塞部材を構成する金属の融点よりも、200℃から300℃低いものである。
前記融点の温度条件を満たしていると、金属製容器と金属製の閉塞部材に熱的影響を及ぼすことが無くなるので好ましい。
【0019】
本発明は、ガス排出口を有するハウジング内にガス発生源となるガス発生剤と、前記ガス発生剤を着火燃焼させるための点火器を含む部品が収容されたガス発生器であり、
前記ハウジングの少なくとも点火器カラーを備えた点火器が固定された開口部において、第1実施形態または第2実施形態の封止容器の封止構造が使用されているものである、ガス発生器を提供する。
【0020】
本発明のガス発生器は、ガス発生剤のみをガス発生源とするパイロ式ガス発生器、ガス発生剤とアルゴン、ヘリウムなどをガス発生源とするハイブリッドインフレータなどに適用することができる。
ガス発生器の形態に応じて、ハウジングは筒状のものやディスク状のものなどがある。ディスク状のハウジングは、筒状ハウジングよりも長さ(L)が短く、直径(D)が大きなもの(即ち、筒状ハウジングよりもL/Dが小さいもの)である。
【0021】
ガス発生器が筒状ハウジングを使用している場合には、筒状ハウジングとして、ガス排出口が形成された第1実施形態の封止構造を使用することができる。この形態では、一端側または両端側において第1実施形態の封止構造を使用することができる。
例えば、一端側開口部が金属製カラー(閉塞部材)を備えた点火器が固定されることで閉塞され、他端側開口部が板状の閉塞部材で閉塞され、周壁部に複数のガス排出口を有している形態のガス発生器を挙げることができる。
前記一端開口部側では、金属製カラーの外表面と筒状ハウジングの内壁面の隙間が融着後に固化されたシール材で封止されている。
前記他端開口部側では、板状の閉塞部材の周面と筒状ハウジングの内壁面の隙間が溶融固化されたシール材で封止されることで、第1実施形態の封止構造が形成されている。
【0022】
ガス発生器がディスク状ハウジングを使用している場合には、ディスク状ハウジングとして、ガス排出口が形成された第2実施形態の封止構造を使用することができる。
例えば、天板、天板と軸方向反対側の底板、天板と底板の間のガス排出口を有する周壁部からなるハウジングにおいて、底板の筒状開口部が金属製カラー(閉塞部材)を備えた点火器で閉塞された形態のガス発生器を挙げることができる。
前記筒状開口部では、金属製カラーの外表面と筒状開口部の内壁面の隙間が溶融固化されたシール材で封止されることで、第2実施形態の封止構造が形成されている。
【0023】
本発明は、第1実施形態の封止容器の封止構造の形成方法であって、
前記筒状容器の開口部内に前記シール材を介在させた状態で前記閉塞部材を挿入する工程(第1工程)、
前記筒状容器の開口部側の周壁部をかしめて前記閉塞部材を固定する工程(第2工程)、
前記筒状容器の外側から加熱して前記シール材を溶融させることで、前記金属製の筒状容器の開口部側の内壁面と前記金属製の閉塞部材の外表面の両方に対して前記シール材を融着させる工程および固化させる(第3工程)を有している、封止容器の封止構造の形成方法を提供する。
【0024】
第1工程における閉塞部材の挿入位置は、第2工程におけるかしめ部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。筒状容器の内壁面に、閉塞部材の挿入位置を特定する突起や段差などを形成してもよい。またかしめ方法によっては閉塞部材を筒状容器の開口部に圧入することでも、挿入位置を特定する手段となる。
第2工程におけるかしめ方法は、ローリングかしめ方法などを適用することができる。
第3工程における加熱方法は、レーザービーム溶接による加熱、電子ビーム溶接による加熱などを適用することができるほか、ガスバーナーなどで加熱する方法、加熱装置内に入れる方法などを適用することができる。
好ましくはシール材が配置されている部分を局所的に加熱するもので、レーザービーム溶接や電子ビーム溶接を使用する場合は、筒状容器の外からビームを照射してもシール材が溶融する程度の電子ビーム強度であればよく、閉塞部材まで溶接深さを深める(溶接ビームを到達させる)必要はない。このため溶接による入熱量が制限され、閉塞部材への熱的影響が少なく、例えば閉塞部材近傍に樹脂が存在する場合は、その熱変形を抑制できる。
【0025】
本発明は、第2実施形態の封止容器の封止構造の形成方法であって、
前記金属製容器の筒状開口部内に前記シール材を介在させた状態で前記閉塞部材を挿入する工程、
前記金属製容器の筒状開口部側の周壁部をかしめて前記閉塞部材を固定する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の外側から加熱して前記シール材を溶融させることで、前記金属製容器の筒状開口部側の内壁面と前記金属製の閉塞部材の外表面の両方に対して前記シール材を融着および固化させる工程を有している、封止容器の封止構造の形成方法を提供する。
【0026】
第2実施形態の封止容器の封止構造の形成方法は、第1実施形態の封止容器の封止構造の形成方法とは、容器形状が異なるため閉塞部材の取り付け位置が異なるが、同じ工程にて実施することができる。
【0027】
本発明の封止構造の形成方法の好ましい実施形態は、前記閉塞部材として外表面がシール材で被覆されているものを使用することである。
閉塞部材として外表面がシール材で被覆されているものは、例えば、閉塞部材の外表面が銅などによって金属めっきされているもの、閉塞部材の外表面が熱可塑性樹脂で被覆されているものである。
このような閉塞部材を使用すると、前記シール材を介在させることが容易になるので好ましい。
【0028】
本発明は、第1実施形態の封止容器の封止構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された金属製の筒状容器の第2端開口部の内側にシール材を介在させた状態で前記板状の閉塞部材を挿入する工程(第1工程)、
前記筒状容器の第2端開口部側の周壁部をかしめて前記板状の閉塞部材を固定する工程(第2工程)、
前記筒状容器の第1端開口部からガス発生剤および必要に応じて他の部品を収容配置する工程(第3工程)、
前記筒状容器の第1端開口部から、シール材を介在させた状態で閉塞部材となる部分を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を挿入する工程(第4工程)、
前記筒状容器の第1端開口部側の周壁部をかしめて前記点火器カラーを固定する工程(第5工程)、
前記金属製の筒状容器の第1端開口側と第2端開口部側を外側から加熱して前記シール材を溶融させることで、前記金属製容器の第1端開口部側の内壁面と前記点火器カラーの外表面の両方に対して前記シール材を融着させ、および前記金属製容器の第2端開口部側の内壁面と前記金属製の閉塞部材の外表面の両方に対して前記シール材を融着させた後に固化させる工程(第6工程)を有している、ガス発生器の製造方法を提供する。
【0029】
第1工程における閉塞部材の挿入位置は、第2工程における変形部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。
第2工程におけるかしめ方法は、ローリングかしめ方法などを適用することができる。
第3工程における必要に応じて配置される他の部品は、フィルタ、リテーナなどである。
第4工程における閉塞部材となる部分を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器の挿入位置は、第5工程におけるかしめ部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。
第1工程および第4工程においては、筒状容器の内壁面に、点火器の挿入位置を特定する突起や段差などを形成してもよい。かしめ方法によっては閉塞部材を筒状容器の開口部に圧入することでも、挿入位置を特定する手段となる。
【0030】
第5工程におけるかしめ方法は、第3工程と同様に実施する。
第6工程における加熱は、筒状ハウジング、閉塞部材および点火器カラーに損傷を与えることなく、シール材を加熱して溶融できる方法であればよい。
加熱方法は、レーザービーム溶接による加熱、電子ビーム溶接による加熱などを適用することができるほか、ガスバーナーなどで加熱する方法、加熱装置内に入れる方法などを適用することができる。
好ましくはシール材が配置されている部分を局所的に加熱させるもので、レーザービーム溶接や電子ビーム溶接を使用する場合は、筒状容器の外からビームを照射してもシール材が溶融する程度のビーム強度であればよく、閉塞部材まで溶接深さを深める(溶接ビームを到達させる)必要はない。このため溶接による入熱量が制限され、閉塞部材への熱的影響が少なく、例えば閉塞部材近傍に樹脂が存在する場合は、その熱変形を抑制できる。
なお、第1工程にて使用する筒状容器は、予め周壁部にガス排出口が形成されたものを使用することができるほか、筒状容器のいずれか一端開口部にガス排出口を有する部品(カップ形状のディフューザ部)が溶接などの方法で固定されたものや、一端開口部が閉塞されたものでもよい。カップ形状のディフューザ部は、金属製のカップの周壁部および底面部の一方または両方にガス排出口が形成されているものである。
第1工程にてカップ形状のディフューザ部を第2端開口部に固定したものを使用するときは、第1工程と第2工程は省略する。
【0031】
本発明は、第2実施形態の封止容器の封止構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された金属製容器内にガス発生剤、点火器および必要に応じて他の部品を収容配置する工程、
シール材を介在させた状態で前記閉塞部材を前記金属製容器の筒状開口部内に挿入する工程、
前記金属製容器の筒状開口部側の周壁部をかしめて前記閉塞部材を固定する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の外側から加熱して前記シール材を溶融させることで、前記金属製容器の筒状開口部側の内壁面と前記金属製の閉塞部材の外表面の両方に対して前記シール材を融着させた後に固化させる工程を有している、ガス発生器の製造方法を提供する。
【0032】
第2実施形態の封止構造を含むガス発生器の製造方法は、第1実施形態の封止構造を含むガス発生器の製造方法とは、容器形状が異なるため閉塞部材の取り付け位置が異なるが、同じ工程にて実施することができる。
【0033】
本発明の第1実施形態の封止構造を含むガス発生器の製造方法と第2実施形態の封止構造を含むガス発生器の製造方法の好ましい実施形態は、前記閉塞部材として外表面がシール材で被覆されているものを使用することである。
【0034】
閉塞部材として外表面がシール材で被覆されているものは、例えば、閉塞部材の外表面が銅などによって金属めっきされているもの、閉塞部材の外表面が熱可塑性樹脂で被覆されているものである。
このような閉塞部材とシール材が一体になったものを使用すると、シール材を介在させた状態で閉塞部材を挿入する工程が容易になるので好ましい。