特許第6867908号(P6867908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867908
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】気化式石油燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 11/02 20060101AFI20210426BHJP
   F23D 11/40 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F23D11/02 D
   F23D11/40 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-148881(P2017-148881)
(22)【出願日】2017年8月1日
(65)【公開番号】特開2019-27710(P2019-27710A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠介
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−119611(JP,A)
【文献】 特開昭60−073205(JP,A)
【文献】 実開昭61−053634(JP,U)
【文献】 特開平05−141626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/02,11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用ヒ−タを備えると共に燃焼空気の噴出口及び燃料噴射ノズルを備え、底部には混合ガスの流出口を有した気化器と、該気化器下部で流出口と連通した混合室と、該混合室上部で気化器背面側に備えられたバ−ナ部とで構成され、前記混合室にはバ−ナ部の炎孔部に連通するガス室と、二次空気供給部に連通する二次空気室とを交互に形成し、更に前記ガス室と二次空気室とは気化器から離れるに従って先細形状とした気化式石油燃焼装置に於いて、前記バ−ナ部の先端に係合部を形成し、該係合部は、先端を断面略コの字状に形成し、混合室の先端をコの字状の部分で囲うように設けられ、前記係合部を混合室の先端部分と係合させると共に、前記バ−ナ部の先端部分をねじにて混合室の先端部分に固定するものであって、前記係合部は前記バ−ナ部の先端部分の前記ねじのさらに先端部分に設けたことを特徴とする気化式石油燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機や給湯機の燃焼部を構成する加熱用ヒ−タを備えた気化式の石油燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものに於いては、加熱用ヒ−タを備えた気化器で、気化ガスと燃焼空気との予混合ガスを形成し、更に混合室内でこの混合を促進させた後、バ−ナ部で周囲から二次空気の供給を受けながら良好な燃焼を行わせるものであった。
【0003】
前記混合室は、気化器下部に連通し、該気化器から遠ざかるに従い浅く形成することで、混合室上部のバ−ナ部から噴出する混合ガスの噴出速度を全体的に均一化し、良好な燃焼を得ようとするものであった。
【0004】
そして前記混合室は、気化器下部に備えられたアルミダイキャスト製で、流出口に連通し混合ガスの整流を行うように1段下方に凹ませて大容量とした整流室と、該整流室に連通し先細状に区画成形され間に下方に連通する二次空気室を交互に有する複数のガス室とを一体成形して構成され、更に整流室底部にはU字状のシ−ズヒ−タから成る補助ヒ−タが鋳込まれており、予熱時の一定時間のみ通電され混合室を予熱するものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−119611号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この従来のものでは、給排気筒に風が当たって給気不足になると、混合室の先端部分に到達する混合ガスが減少してしまうため、混合ガスによる冷却効果が低下して、混合室の先端部分は気化器のある根元側に比べて高温となってしまう。
【0007】
更に混合室の先端部分のバーナ部から吹き出す混合ガスが減少することより、気化器のある根元側に比べて先端部分に形成される炎は小さく、更によりバーナ部の炎孔に近い位置に形成されるため、バーナ部に形成される炎が不均一になり、混合室の先端部分は気化器のある根元側に比べて更に高温となってしまい、それによりバーナ部に反る力が加わり、混合室と該混合室上部のバ−ナ部の先端を締結しているネジの締結力よりもバーナ部の反る力が大きくなると、混合室とバ−ナ部との間に隙間が発生し、燃焼バランスが崩れて逆火が発生してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、加熱用ヒ−タを備えると共に燃焼空気の噴出口及び燃料噴射ノズルを備え、底部には混合ガスの流出口を有した気化器と、該気化器下部で流出口と連通した混合室と、該混合室上部で気化器背面側に備えられたバ−ナ部とで構成され、前記混合室にはバ−ナ部の炎孔部に連通するガス室と、二次空気供給部に連通する二次空気室とを交互に形成し、更に前記ガス室と二次空気室とは気化器から離れるに従って先細形状とした気化式石油燃焼装置に於いて、前記バ−ナ部の先端に係合部を形成し、前記係合部は、先端を断面略コの字状に形成し、混合室の先端をコの字状の部分で囲うように設けられ、前記係合部を混合室の先端部分と係合させると共に、前記バ−ナ部の先端部分をねじにて混合室の先端部分に固定するものであって、前記係合部は前記バ−ナ部の先端部分の前記ねじのさらに先端部分に設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の請求項1によれば、加熱用ヒ−タを備えると共に燃焼空気の噴出口及び燃料噴射ノズルを備え、底部には混合ガスの流出口を有した気化器と、該気化器下部で流出口と連通した混合室と、該混合室上部で気化器背面側に備えられたバ−ナ部とで構成され、前記混合室にはバ−ナ部の炎孔部に連通するガス室と、二次空気供給部に連通する二次空気室とを交互に形成し、更に前記ガス室と二次空気室とは気化器から離れるに従って先細形状とした気化式石油燃焼装置に於いて、前記バ−ナ部の先端に係合部を形成し、該係合部を混合室の先端部分と係合させると共に、前記バ−ナ部の先端部分をねじにて混合室の先端部分に固定したので、混合室の先端部分が高温になってバーナ部の先端部分が上方向に反ろうとしても、ねじによる締結力と、係合部が混合室の先端部分と係合する係合力とにより、バーナ部の先端部分が上方向に反るのを防止できるものである。
【0011】
又、請求項によれば、前記係合部は、先端を断面略コの字状に形成し、混合室の先端をコの字状の部分で囲うように設けられているので、混合室の先端部分が高温になってバーナ部の先端部分が上方向に反ろうとしても、断面略コの字状の係合部が混合室の先端部分に引っかかる状態であるためバーナ部の先端部分が上方向に反ることができず、バーナ部の先端部分が上方向に反るのを防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明一実施例を付した気化式石油燃焼装置の断面図。
図2】同混合室の根元側の断面図。
図3】同混合室とバーナ部の斜視図。
図4】同バーナ部の斜視図。
図5】同混合室のとバーナ部の先端部分の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1はアルミダイキャストから成る横椀状の気化器で、正面は燃料噴射ノズル2及び一次空気の噴出口3を備えた蓋体4で閉塞され、底部に仕切壁(図示せず)で2つに仕切られた混合ガスの流出口5を形成している。
【0014】
前記気化器1は燃料噴射ノズル2と対向する内面を、該燃料噴射ノズル2に対して垂直に形成し垂直気化面6とすると共に、燃油が吹き付けられる部分は該燃油の均一な拡散を計る為に平坦面(図示せず)とし、更にこの平坦面の周囲には長さの異なる複数個のビ−ド7を水平方向で且つそれぞれ平行に複数段配置して、流下する燃油の蛇行路(図示せず)を形成しているものである。
【0015】
8は気化器1に鋳込まれたU字状のシ−ズヒ−タから成る加熱用ヒ−タで、垂直気化面6上方から燃料噴射ノズル2側に突出し、該垂直気化面6の上方空間を覆う上側壁9と、垂直気化面6下方から突出し流出口6を形成する下側壁10とに鋳込まれているものである。
【0016】
11は気化器1の蛇行路(図示せず)最終端に備えられた平面から見て台形の案内壁で、気化器1内で形成される気化ガスと燃焼用一次空気による混合ガスを、底部の2つの流出口5にスム−ズに分割して案内するものである。
【0017】
12は気化器1下部に備えられたアルミダイキャスト製の混合室で、流出口5に連通し混合ガスの整流を行うように1段下方に凹ませて大容量とした整流室13と、該整流室13に連通し先細状に区画成形され間に下方に連通する二次空気室14を交互に有する複数のガス室15とを一体成形して構成され、更に整流室13底部にはU字状のシ−ズヒ−タから成る補助ヒ−タ16が鋳込まれており、予熱時の一定時間のみ通電され混合室12を予熱するものである。
又、前記二次空気室14は断面略逆U字状に形成されると共に、前記ガス室15は断面略U字状に形成されているものである。
【0018】
17は混合室12のガス室15及び二次空気室14上で気化器1の背面側に形成されたバ−ナ部で、前記ガス室15上に固定される凸状の炎孔部18と、該炎孔部18間隔で二次空気室14と連通した二次空気供給部19とで構成され、炎孔部18頂部にはほぼ中央部から側壁まで延設された細長逆L字状の炎孔20が、長手方向に沿って左右交互に形成され、更に二次空気供給部19底部には二次空気室14と連通する二次空気孔21を、炎孔部18のフランジ部22に形成した小孔を重合して形成しているものである。
【0019】
23は係合部で、フランジ部22先端を断面略コの字状に形成して設けられ、混合室12の先端をコの字状の部分で囲うようにして取付けられ、係合部23に囲われる混合室12の先端にはねじ切りされた締結孔24が形成され、フランジ部22の両端に設けられたねじ孔25に締結ねじ26を差込んで前記締結孔24に螺合させるものである。
【0020】
27は気化器1背面からバ−ナ部17上に突出した縦長の吸熱フィンで、燃焼ガスとの接触面積を多くしてヒ−トバック量を増大させる為に複数に分割形成され、燃焼時には燃焼熱のヒ−トバックを気化熱として利用し加熱用ヒ−タ8の省電力化を計るものであり、上端はバ−ナ部17側に向かって下り傾斜した傾斜部28とし、上昇してくる燃焼熱の抜けを良くしているものである。
【0021】
29は吸熱フィン27上方に備えられたL字状の抑止板で、気化器1側から吸熱フィン27上約2/3まで張り出して該吸熱フィン27間及び縦溝上を覆い、この間を上昇して来る燃焼熱の上昇力を抑制するものであり、又吸熱フィン27上方全体を覆うまで張り出させた場合には、抑止板29自体にスリットや穴を形成して抑制力を調節するようにしてもよいものである。
【0022】
30は吸熱フィン27間の気化器1背面壁に横方向R状の凸部を複数個連続して形成した凹凸面で、吸熱面積を増大させると共に、燃焼熱の上昇力を制御し十分なヒ−トバックを得るようにしているもので、特にR形状であるから燃焼熱に乱流を起こさせることなく、スム−ズにその上昇力のみを抑制することが出来るものである。
【0023】
31はバ−ナ部17の上方を囲った燃焼室で、外周は空気室32を介してカバ−枠33で覆われている。
【0024】
34は燃焼ファンで、風路35を介して噴出口3と空気室32に連通し、噴出口3には燃焼用の一次空気を供給し、空気室32には気化器1側方を通り混合室12下方からバ−ナ部17の二次空気供給部19へ供給される二次空気及び、燃焼室31を冷却する空気を供給するものである。
【0025】
36は燃料噴射ノズル2に送油管37を介して燃油を供給する電磁ポンプ、38は遮熱板である。
【0026】
次にこの発明一実施例の作動について説明する。
今、加熱用ヒ−タ8に通電し気化器1を所定温度まで加熱すれば、これを適所に備えた温度センサ−(図示せず)で検知し、燃焼ファン34及び電磁ポンプ36を駆動させることで、気化器1には燃料噴射ノズル2から燃油が、又噴出口3からは燃焼用の一次空気がそれぞれ供給される。
【0027】
そして気化器1では、燃料噴射ノズル2から噴射された燃油は、垂直気化面6の平坦面に衝突し凹凸がないので均一に周囲に拡散するが、直ぐには落下せず周囲のビ−ド7上を供給される一次空気の送風力もあって蛇行路に沿って順次移動し、十分な気化時間となって気化が促進されると共に、ビ−ド7による凹凸で供給される一次空気も乱流を起こし気化ガスとの混合も十分に行われ、良好な混合ガスを得ることが出来るものである。
【0028】
又、垂直気化面6で気化された気化ガスは、該垂直気化面6に衝突して跳ね返される一次空気と共に、横椀状の気化器1内で加熱用ヒ−タ8を備えた上下側壁9・10側に流れるが、この上下側壁9・10は加熱用ヒ−タ8によって十分加熱されているので、気化ガスの気化は更に促進されると共に、一次空気も良好に加熱され、しかも気化器1は横椀状で気化ガスと一次空気とは直ぐには流出せず、ある程度気化器1内にとどまり十分混合した後、流出口5から流出されるものである。
【0029】
一方この流出口5から流出した混合ガスは混合室12内に流入するが、該混合室12は上記気化器1の予熱と同時に通電される補助ヒ−タ16によって一定時間加熱され、高温の予熱状態が維持されているので、流入した混合ガスは液化することがないものである。
【0030】
そして、混合ガスは整流室13で整流を促進した後、直ぐに複数のガス室15に細かく分割して流入し、内壁面の塗装面による微細凹凸と先細形状とによって、炎孔部の炎孔から噴出する混合ガスの噴出速度は、長手方向に関係なく全体が均一となり、又混合ガスは炎孔から噴出される直前に整流アミを通過して最後に整流されて噴出し、適宜点火手段(図示せず)で点火されれば燃焼が開始されるものである。
【0031】
次に混合室12の先端部分が高温になった場合、例えば施工範囲を越えて給排気管が延長されて施工されていたり、給排気筒に風が当たったりして給気不足状態になって、混合室12の先端部分が高温になった場合のこの発明一実施例の作動について説明する。
【0032】
給気不足状態の場合、混合室12に流入する混合ガスが給気正常状態よりも少ないため、混合ガスによる冷却効果が低下して、混合室の先端部分は気化器1のある根元側に比べて高温となり、更に先端部分に形成される炎が根元の炎に比べて小さく、根元部分の炎に比べて先端部分の炎は炎孔部18に近く形成されるため、更に混合室12の先端部分は高温になり、その結果、バーナ部17の先端部分が上方向に反る力が発生する。
【0033】
従来は、バ−ナ部17のフランジ部22の先端部分のねじ孔25に締結ねじ26を差込んで混合室12先端部分の締結孔24に螺合させることで混合室12とバーナ部17の先端部分を締結させていたが、本実施例ではその締結ねじ26による締結力と、フランジ部22先端の係合部23が混合室12の先端部分と係合する係合力とにより混合室12とバーナ部17の先端部分を締結させており、混合室の先端部分が高温になってバーナ部17の先端部分が上方向に反ろうとしても、断面略コの字状の係合部23が混合室12の先端部分に引っかかる状態であるためバーナ部17の先端部分が上方向に反ることができず、バーナ部17の先端部分が上方向に反ることによる逆火の発生を防止できるものである。
【0034】
又、前記係合部23をフランジ部22先端に形成して設けたことにより、混合室12と係合部23との間に隙間が生じたとしても、二次空気が漏れるだけで混合ガスは漏れないので、燃焼に悪影響を与えることなく安価に係合部23を形成することができるものである。
【0035】
以上のように、バ−ナ部17の先端に係合部23を形成し、該係合部23を混合室12の先端部分と係合させると共に、前記バ−ナ部17の先端部分を締結ねじ26にて混合室12の先端部分に固定したので、混合室12の先端部分が高温になってバーナ部17の先端部分が上方向に反ろうとしても、締結ねじ26による締結力と、係合部23が混合室12の先端部分と係合する係合力とにより、バーナ部17の先端部分が上方向に反るのを防止でき、バーナ部17の先端部分が上方向に反ることにより混合室12とバーナ部17との間に隙間が生じて逆火が発生するのを防止できるものである。
【0036】
又、前記係合部23は、先端を断面略コの字状に形成し、混合室12の先端をコの字状の部分で囲うように設けられているので、混合室12の先端部分が高温になってバーナ部17の先端部分が上方向に反ろうとしても、断面略コの字状の係合部23が混合室12の先端部分に引っかかる状態であるためバーナ部17の先端部分が上方向に反ることができず、バーナ部17の先端部分が上方向に反るのを更に防止でき、バーナ部17の先端部分が上方向に反ることにより混合室12とバーナ部17との間に隙間が生じて逆火が発生するのを更に防止できるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 気化器
2 燃料噴射ノズル
3 噴出口
5 流出口
8 加熱用ヒ−タ
12 混合室
14 二次空気室
15 ガス室
17 バ−ナ部
18 炎孔部
19 二次空気供給部
23 係合部
26 締結ねじ
図1
図2
図3
図4
図5