(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867909
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】熱式流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/699 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
G01F1/699
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-149632(P2017-149632)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-27981(P2019-27981A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 吉夫
(72)【発明者】
【氏名】松永 晋輔
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5874117(JP,B2)
【文献】
特許第5284864(JP,B2)
【文献】
特許第6518486(JP,B2)
【文献】
特許第4698014(JP,B2)
【文献】
米国特許第7277802(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体を加熱するヒータを備え、前記ヒータの温度と前記ヒータの熱影響を受けない位置における前記流体の温度との差が設定されている設定温度差となるように前記ヒータを駆動しているときの、前記ヒータに加熱された前記流体における熱拡散の状態に対応する第1の値を出力するように構成されたセンサ部と、
前記設定温度差を前記ヒータの温度と測定された前記流体の温度との差で除した値を前記第1の値に乗じた第2の値を算出するように構成された処理部と、
前記流体の流量を前記処理部が算出した前記第2の値から算出するように構成された流量算出部と
を備えることを特徴とする熱式流量計。
【請求項2】
請求項1記載の熱式流量計において、
前記処理部は、前記設定温度差を前記ヒータの温度と測定された前記流体の温度との差で除した値および予め設定した定数を前記第1の値に乗じて前記第2の値を算出する
ことを特徴とする熱式流量計。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱式流量計において、
前記ヒータの温度と測定された前記流体の温度との差と前記設定温度差との差が、設定されている値より小さいか否かを判定するように構成された判定部を更に備え、
前記判定部が、前記ヒータの温度と測定された前記流体の温度との差と前記設定温度差との差が、設定されている値より小さいと判定した場合、前記流量算出部は、前記第1の値から前記流量を求める
ことを特徴とする熱式流量計。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱式流量計において、
前記流量算出部が求めた前記流量の時間微分値と設定されている補正係数とを前記流量に乗じた値に、前記流量を加算して第3の値を求めるように構成された流量処理部
を更に備えることを特徴とする熱式流量計。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱式流量計において、
前記センサ部は、前記ヒータの温度と前記ヒータの熱影響を受けない位置における前記流体の温度との差が前記設定温度差となるように前記ヒータを駆動しているときの前記ヒータの電力を前記第1の値として出力する
ことを特徴とする熱式流量計。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱式流量計において、
前記センサ部は、前記ヒータの温度と前記ヒータの熱影響を受けない位置における前記流体の温度との差が前記設定温度差となるように前記ヒータを駆動しているときの、前記ヒータより上流の前記流体の温度と前記ヒータより下流の前記流体の温度との温度差を前記第1の値として出力する
ことを特徴とする熱式流量計。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱式流量計において、
前記流体を輸送する配管と、
前記配管の外壁に接して設けられて前記流体の温度を測定する温度測定部を備え、
前記ヒータは、前記配管の外壁に接して設けられている
ことを特徴とする熱式流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体における熱拡散の作用を利用して流量を測定する熱式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流路を流れる流体の流量や流速を測定する技術が工業・医療分野などで幅広く利用されている。流量や流速を測定する装置としては、電磁流量計、渦流量計、コリオリ式流量計、熱式流量計など様々な種類があり、用途に応じて使い分けられている。熱式流量計は、 気体の検出が可能であり、圧力損失が基本的にはなく、質量流量が測定できるなどの利点がある。また、流路をガラス管から構成することで、腐食性の液体の流量を測定可能とした熱式流量計も用いられている(特許文献1、2参照)。このような液体の流量を測定する熱式流量計は、微量な流量の測定に適している。
【0003】
熱式流量計には、ヒータの上下流の温度差により流量を測定する方法と、ヒータの消費電力により流量を測定する方法とがある。例えば、後者により液体の流量を測定する場合、ヒータ温度を水温に対し、プラス10℃など一定の温度差となるようにヒータを加温駆動し、ヒータの上流と下流との温度差またはヒータの消費電力から、流量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−010322号公報
【特許文献2】特表2003−532099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱式流量計は、例えば、流量が急激に変化すると、正確な流量が測定できなくなる。これは、熱式流量計は、ヒータ温度が一定となるまで正確な流量の測定ができないためである。このように、熱式流量計は、応答性が遅いという問題がある。
【0006】
ヒータ温度制御が遅れる原因として、加熱の対象となる物体の熱容量が考えられる。特に、測定対象が液体の場合には、配管の壁を介して液体を加熱することになるため、液体に加えて配管の壁が加熱対象となり、熱容量が大きくなり、応答性が遅くなりやすい。このように、熱式流量計では、測定対象の流体の流量を迅速に把握することが容易ではないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、熱式流量計で測定対象の流体の流量がより迅速に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る熱式流量計は、測定対象の流体を加熱するヒータを備え、ヒータの温度とヒータ前記ヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定されている設定温度差となるようにヒータを駆動しているときの、ヒータに加熱された流体における熱拡散の状態に対応する第1の値を出力するように構成されたセンサ部と、設定温度差をヒータの温度と測定された流体の温度との差で除した値を第1の値に乗じた第2の値を算出するように構成された処理部と、流体の流量を処理部が算出した第2の値から算出すように構成された流量算出部とを備える。
【0009】
上記熱式流量計において、処理部は、設定温度差をヒータの温度と測定された流体の温度との差で除した値および予め設定した定数を第1の値に乗じて第2の値を算出するようにしてもよい。
【0010】
上記熱式流量計において、ヒータの温度と測定された流体の温度との差と設定温度差との差が、設定されている値より小さいか否かを判定するように構成された判定部を更に備え、判定部が、ヒータの温度と測定された流体の温度との差と設定温度差との差が、設定されている値より小さいと判定した場合、流量算出部は、第1の値から流量を求めるようにするとよい。
【0011】
上記熱式流量計において、流量算出部が求めた流量の時間微分値と設定されている補正係数とを流量に乗じた値に、流量を加算して第3の値を求めるように構成された流量処理部を更に備えるようにしてもよい。
【0012】
上記熱式流量計において、センサ部は、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定温度差となるようにヒータを駆動しているときのヒータの電力を第1の値として出力する。
【0013】
上記熱式流量計において、センサ部は、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定温度差となるようにヒータを駆動しているときの、ヒータより上流の流体の温度とヒータより下流の流体の温度との温度差を第1の値として出力する。
【0014】
上記熱式流量計において、流体を輸送する配管と、配管の外壁に接して設けられて流体の温度を測定する温度測定部を備え、ヒータは、配管の外壁に接して設けられている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、流体の温度に対して高い温度とするヒータにおける設定温度差をヒータの温度と測定された流体の温度との差で除した値を第1の値に乗じて第2の値とし、第2の値より流量を求めるので、熱的平衡状態にならなくても、熱式流量計で測定対象の流体の流量がより迅速に把握できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1における熱式流量計の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態における熱式流量計におけるセンサ部101のより詳細な構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態における熱式流量計におけるセンサ部101のより詳細な他の構成を示す構成図である。
【
図4】
図4は、流量の変化に伴うヒータの温度と測定された流体の温度との差の変化、および流量の変化、推定流量の変化を示す特性図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態2における熱式流量計の構成を示す構成図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態3における熱式流量計の構成を示す構成図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態における処理部102、流量算出部103、判定部104、流量処理部105などのハードウエア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1における熱式流量計について
図1を参照して説明する。この熱式流量計は、センサ部101と、処理部102と、流量算出部103とを備える。
【0019】
センサ部101は、測定対象の流体を加熱するヒータを備え、ヒータの温度とヒータの熱影響を受けない位置における流体の温度との差が設定されている設定温度差となるようにヒータを駆動しているときの、ヒータに加熱された流体における熱拡散の状態に対応するセンサ値(第1の値)を出力する。
【0020】
処理部102は、上述した設定温度差をヒータの温度と測定された流体の温度との差で除した値をセンサ値に乗じた推定値(第2の値)を算出する。流量算出部103は、流体の流量を、処理部102が算出した推定値から算出する。
【0021】
次に、センサ部101について、より詳細に説明する。センサ部101は、例えば、
図2に示すように、温度測定部111、ヒータ112、制御部113、電力計測部114を備える。温度測定部111は、測定対象の流体121を輸送する配管122の外壁に接して設けられている。配管122は、例えば、ガラスから構成されている。ヒータ112は、温度測定部111の下流の側の配管122の外壁に接して設けられている。温度測定部111は、流体121の温度を測定する。
【0022】
制御部113は、ヒータ112の温度と、温度測定部111で測定されるヒータ112の熱影響を受けない位置、例えばヒータ112より上流における流体121の温度との差が、予め設定されている設定温度差となるように、ヒータ112を制御して駆動する。電力計測部114は、制御部113により制御されているヒータ112の電力を計測して出力する。この例では、センサ部101を構成する電力計測部114から出力される電力がセンサ値となる。電力計測部114が計測して出力したヒータ112の電力(センサ値)より、流体121の流量を算出することができる。
【0023】
よく知られているように、ヒータ112の温度とヒータ112の熱影響を受けない位置における流体121の温度との差が設定温度差となるようにヒータ112を駆動しているときの、ヒータ112が消費している電力と流体121の流量との間には相関がある。また、この相関関係は、同じ流体/流量/温度において再現性がある。従って、上述したように、ヒータ112が制御部113に制御されている状態で、電力計測部114が計測した電力より、所定の相関係数(定数)を用いることで流量が算出できる。
【0024】
また、
図3に示すように、温度測定部111、ヒータ112、制御部113、温度測定部116、温度測定部117からセンサ部101’を構成してもよい。
【0025】
ここで、温度測定部111は、測定対象の流体121を輸送する配管122の外壁に接して設けられている。ヒータ112は、温度測定部111の下流の側の配管122の外壁に接して設けられている。温度測定部111は、流体121の温度を測定する。
【0026】
制御部113は、ヒータ112の温度と、温度測定部111で測定されるヒータ112の熱影響を受けない位置、例えばヒータ112より上流における流体121の温度との差が、予め設定されている設定温度差となるように、ヒータ112を制御して駆動する。
【0027】
温度測定部11
6は、温度測定部111より下流側でかつヒータ112の上流側において、配管122の外壁に接して設けられている。また、温度測定部117は、ヒータ112の下流側において、配管122の外壁に接して設けられている。温度測定部116,温度測定部117は、流体121の温度を測定する。
【0028】
温度測定部116が測定している流体の温度と、温度測定部117が測定している流体の温度との温度差より、流体121の流量を算出することができる。この例では、温度測定部116が測定している流体の温度と、温度測定部117が測定している流体の温度との温度差が、センサ値となる。
【0029】
よく知られているように、ヒータ112の温度とヒータ112の熱影響を受けない位置における流体121の温度との差が、予め設定されている設定温度差となるようにヒータ112を駆動しているときの、ヒータ112より上流の流体121の温度とヒータ112より下流の流体121の温度との温度差と、流体121の流量との間には相関がある。また、この相関関係は、同じ流体/流量/温度において再現性がある。従って、上述したように、ヒータ112が制御部113に制御されている状態で、温度測定部116が測定した温度と温度測定部117が測定した温度との差(温度差)より、所定の相関係数(定数)を用いることで流量が算出できる。
【0030】
上述したように構成されているセンサ部101から出力される電力や温度差などのセンサ値Pから、「P’=P×(Tup÷ΔT)・・・(1)」により推定値P’を求める。なお、ΔTは、ヒータの温度と測定された流体の温度との差である。また、Tupは、流体の温度に対して高い温度とするヒータにおける設定温度差である。
【0031】
以下、式(1)について説明する。まず、
図4の破線で示すように、流量が急激に変化した場合を考える。急激に流量が変化しても、実際の流量がセンサ出力(第1の値)に正確に反映されれば、流量算出部103が出力する流量は、
図4の破線で示すように変化するはずである。
【0032】
しかし、流量が急激に変化すると、
図4の一点鎖線で示すように、ヒータの温度と測定される流体の温度との差ΔTが、一時的に設定温度差Tup(例えば10℃)に維持できなくなる状態が発生する。特に、測定対象が液体である場合は、熱容量が大きいため、急激な流量変化によるΔTとTupとの乖離が大きくなる。なお、一時的にΔTとTupとが異なる状態となった後、ΔTが徐々にTupに近づき、最終的にTupに安定する。
【0033】
例えば、流量が急激に増加した場合、一時的にΔTがTupより小さくなる。この状態では、センサ値Pより求めた流量は、実際より小さい値を示すものとなる。上述したように、急激な流量の変化においては、
図4の一点鎖線で示すように、ΔTが一時的に変化するため、流量算出部103が出力する流量は、点線で示すように応答が遅れる。
【0034】
ここで、急激に流量が増加した過渡期には、ΔTはTupより小さくなり、センサ値Pより求めた流量は、実際より小さい値となる。また、急激に流量が減少した過渡期には、ΔTはTupより大きくなり、センサ値Pより求めた流量は、実際より大きい値となる。言い換えると、急激な流量変化の過渡期におけるTupに対するΔTの大小関係は、センサ値Pに反映されている。従って、急激な流量変化の過渡期におけるTupに対するΔTの大小関係を示すΔT/Tupの逆数をセンサ値Pに乗じた推定値P’は、実際の流量を反映した値に近づくものと考えられる。
【0035】
従って、上述した式(1)によりセンサ値Pから推定値P’を推定し、この推定値P’より流量を求める。このようにすることで、流量算出部103が出力する流量の応答を、実線で示すように実際の流量の変化に近づけることができる。
【0036】
流量が急激に増加した過渡期には、ΔTがTupより一時的に小さくなるが、この場合、1より大きなTup/ΔTがセンサ値Pに乗じられて大きな値となった推定値P’が流量算出に用いられる。また、流量が急激に減少した過渡期には、ΔTがTupより一時的に大きくなるが、この場合、1より小さなTup/ΔTがセンサ値Pに乗じられて小さな値となった推定値P’が流量算出に用いられる。
【0037】
なお、流量が徐々に変化している状態では、ΔT=Tupの状態がおおよそ維持されているので、Tup÷ΔT≒1であり、P≒P’となり、実質的にはセンサ値Pが、このまま流量の算出に用いられた状態に等しくなる。
【0038】
以上に説明したように、実施の形態1によれば、式(1)により推定したセンサ値で流量を求めるようにしたので、熱式流量計で測定対象の流体の流量がより迅速に把握できるようになる。なお、定数kを用い、「P’=P×k×(Tup÷ΔT)・・・(2)」により推定値P’を求めてもよい。k=1とすれば、式(1)と同じである。実験により、センサ値PおよびΔTに対する実際の流量の関係より、適宜にkを設定して式(2)よりP’を求めることで、P’を実際の流量により近づけることができる。
【0039】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2における熱式流量計について
図5を参照して説明する。この熱式流量計は、センサ部101と、処理部102と、流量算出部103とを備える。これらは、前述した実施の形態1と同様である。実施の形態2では、ヒータの温度と測定された流体の温度との差と設定温度差との差が、設定されている値より小さいか否かを判定する判定部104を更に備える。
【0040】
実施の形態2では、判定部104が、ヒータの温度と流体の温度との差(ΔT)と設定温度差(Tup)との差が、設定されている値より小さいと判定した場合、流量算出部103は、センサ部101が出力したセンサ値から流量を求める。
【0041】
例えば、流量の変化が小さい場合、センサ部101が出力するセンサ値をこのまま用いて流量算出部103で流量を求めても、応答の遅れは大きくない。この状態は、ΔTとTupとの差が小さい状態である。この状態では、「Tup÷ΔT≒1」ではあるが、「Tup÷ΔT=1」ではないため、推定値P’は、小さな流量の変化に対応して小さく変化する。このため、常に、処理部102が算出した第2の値を用いて流量を求めると、流量の変化が小さい場合には、流量算出部103で求められる流量がふらつくことになる。これに対し、流量の変化が小さい場合、ΔTとTupの差も小さいので、この差が設定されている値より小さい場合、センサ部101が出力したセンサ値Pから流量を求めることで、上述したふらつきが抑制できるようになる。
【0042】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3における熱式流量計について
図6を参照して説明する。この熱式流量計は、センサ部101と、処理部102と、流量算出部103、判定部104とを備える。これらは、前述した実施の形態2と同様である。
【0043】
実施の形態3では、流量算出部103が求めた流量Qから、流量処理部105により推定流量Q’を求めることで、流量の応答を実際の流量の変化に近づける。流量処理部105は、「Q’=Q+A×Q×dQ/dt・・・(3)」により、推定流量Q’を求める。なお、Aは、補正係数であり、予め決定しておく。補正係数Aの値により、推定流量Q’と実際の流量の変化との差が変化する。
【0044】
なお、補正係数Aが大きいほど、推定流量Q’がふらつく場合がある。このため、推定流量Q’と実際の流量の変化との差をどの程度にするかにより、補正係数Aを設定する。また、流量の時間微分値dQ/dtがある一定値以下の場合は、流量処理部105による推定を実施せず、流量算出部103による流量Qをこのまま出力することで、定常流量時の安定性を確保できる。
【0045】
なお、処理部102、流量算出部103、判定部104、流量処理部105は、
図7に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)201と主記憶装置202と外部記憶装置203となどを備えたコンピュータ機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作することで、上述した各機能が実現される。
【0046】
以上に説明したように、本発明によれば、流体の温度に対して高い温度とするヒータにおける設定温度差を、ヒータの温度と測定された流体の温度との差で除した値をセンサ値に乗じて推定するので、熱式流量計で測定対象の流体の流量がより迅速に把握できるようになる。
【0047】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0048】
101…センサ部、102…処理部、103…流量算出部、111…温度測定部、112…ヒータ、113…制御部、114…電力計測部、116…温度測定部、117…温度測定部。