特許第6867910号(P6867910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6867910樹脂フィルムの再生方法及び樹脂フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867910
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの再生方法及び樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 31/00 20060101AFI20210426BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20210426BHJP
【FI】
   B29C31/00
   B29C48/08
   B29C48/27
   B29C48/285
   B29C48/305
   B29C48/88
   B29C48/92
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-152367(P2017-152367)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-30994(P2019-30994A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和宏
(72)【発明者】
【氏名】岸 幹夫
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−078914(JP,U)
【文献】 特開2012−081605(JP,A)
【文献】 特開昭55−039328(JP,A)
【文献】 特開昭52−054752(JP,A)
【文献】 特公昭46−018271(JP,B1)
【文献】 特開平06−047810(JP,A)
【文献】 特開2004−050160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 31/00
B29C 48/00 − 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性の樹脂フィルムから取り除かれた除去耳片を用いて再生成形素材を得る樹脂フィルムの再生方法であって、
連続した厚さ1μm以上20μm未満の樹脂フィルムの側部から取り除かれた略帯形の除去耳片を複数本捩じってその捩じり開始部付近をスポット加熱するとともに、この加熱時の温度をガラス転移点以上融点未満の範囲とすることで紐耳片を形成し、この紐耳片を所定の長さに切断して再生成形素材を製造することを特徴とする樹脂フィルムの再生方法。
【請求項2】
除去耳片を延伸してテンションを作用させながら捩じる請求項1記載の樹脂フィルムの再生方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した樹脂フィルムの再生方法により得られた再生成形素材を成形機に投入し、この成形機のダイから樹脂フィルムを押し出して冷却ロールと圧接ロールとの間に挟んで冷却し、この冷却した樹脂フィルムの側部を取り除いた後、樹脂フィルムを巻取機に巻き取ることを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの製造時に除去対象として取り除かれた除去耳片を利用して再生成形素材を得る樹脂フィルムの再生方法及び樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の結晶性樹脂、例えばスーパーエンジニアリングプラスチックを代表するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を用いて携帯機器のスピーカの振動板用の樹脂フィルム1を製造する場合には、図3に部分的に示すように、ペレット化されたポリエーテルエーテルケトン樹脂を押出成形機に投入して溶融混練し、この押出成形機のダイスから帯形の薄い樹脂フィルム1を連続的に押し出して冷却ロールと圧接ロールとに挟持させるとともに、樹脂フィルム1を冷却ロールにより冷却した後、所定の長さの樹脂フィルム1を巻取機に巻き取るようにしている。
【0003】
この際、樹脂フィルム1は、その両側部の厚さが不均一化するので、そのままでは品質に悪影響の生じることがある。そこで、冷却された樹脂フィルム1の両側部は、除去対象の除去耳片2としてそれぞれ切断・除去される(図5参照)。
【0004】
ところで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、耐熱性や耐薬品性等にきわめて優れるものの、非常に高価な結晶性樹脂であるので、樹脂フィルム1の製造時に除去耳片2をそのまま除去し、除去耳片2を塵として廃棄処分するのは、コストの削減や再利用の観点から問題がある。そこで、従来においては、樹脂フィルム1の製造時に除去された除去耳片2を回収して大型の混練機や成形機で溶融することにより、再生ペレットを製造し、この再生ペレットにより樹脂フィルム1を製造する方法が提案され、実施されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかしながら、この方法の場合、再生ペレットを得ることはできるが、再生ペレットの製造工程が複雑化・煩雑化し、しかも、コストの増大を招くという問題が新たに生じることとなる。この点に鑑み、従来においては、樹脂フィルム1の製造時に切断・除去された複数本の除去耳片2を縒り合わせて紐材を形成し、この紐材を延伸して圧縮紐材とし、その後、この圧縮紐材を所定の長さに切断して再生ペレットを得る方法が提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012‐081605号公報
【特許文献2】特開2011‐20413号公報
【特許文献3】特開2006‐021519号公報
【特許文献4】特開2013‐091187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、圧縮紐材を所定の長さに切断して再生ペレットを得る方法の場合、比較的簡易に再生ペレットを得ることができるものの、複数本の除去耳片2を単に縒り合わせるだけなので、縒り合わせ時に複数本の除去耳片2間に空気が介在し、押出成形機に再生ペレットを適切に投入することができないおそれがある。また、再生ペレットが空気を含み、かさ比重が軽く低いので、例え押出成形機に再生ペレットを投入しても、押出成形機の内部で再生ペレットが浮き、その結果、樹脂溶融のタイミングがずれ、樹脂フィルム1の製造に重大な支障を来すという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、耳片に空気が介在するのを抑制して成形機等に再生成形素材を適切に投入することができ、成形機等で再生成形素材が浮いて樹脂溶融のタイミングがずれるのを低減することのできる樹脂フィルムの再生方法及び樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、結晶性の樹脂フィルムから取り除かれた除去耳片を用いて再生成形素材を得る樹脂フィルムの再生方法であって、
連続した厚さ1μm以上20μm未満の樹脂フィルムの側部から取り除かれた略帯形の除去耳片を複数本捩じってその捩じり開始部付近をスポット加熱するとともに、この加熱時の温度をガラス転移点以上融点未満の範囲とすることで紐耳片を形成し、この紐耳片を所定の長さに切断して再生成形素材を製造することを特徴としている。
【0010】
なお、結晶性の樹脂フィルムを、エンジニアリングプラスチック製の樹脂フィルムとすることができる。
また、結晶性の樹脂フィルムを、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製又はポリエチレンテレフタレート樹脂製の樹脂フィルムとすることができる。
また、除去耳片を延伸してテンションを作用させながら捩じることができる。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2に記載した樹脂フィルムの再生方法により得られた再生成形素材を成形機に投入し、この成形機のダイから樹脂フィルムを押し出して冷却ロールと圧接ロールとの間に挟んで冷却し、この冷却した樹脂フィルムの側部を取り除いた後、樹脂フィルムを巻取機に巻き取ることを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における樹脂フィルムの側部には、一側部や他側部の他、両側部が含まれる。また、除去耳片の捩じりという用語には、少なくとも捩じり、綯う、縒り、撚り、編みが含まれる。除去耳片が複数本の場合、各除去耳片を縒った後、複数本の除去耳片を逆方向に縒っても良いし、複数本の除去耳片をまとめて縒っても良い。また、複数本の除去耳片を絡ませながら編んでも良い。
【0013】
除去耳片の加熱時の温度は、捩じった除去耳片の結晶性樹脂のガラス転移点以上融点未満の範囲とされる。除去耳片の捩じり開始部付近には、捩じり開始部とその近傍が含まれる。また、成形機には、少なくとも各種の押出成形機や溶融押出成形機等が含まれる。再生成形素材を成形機に投入する際、新規の結晶性樹脂含有の成形材料を成形機に併せて投入しても良い。
【0014】
本発明によれば、結晶性の樹脂フィルムから取り除かれた除去耳片を利用して再生成形素材を得る場合には、樹脂フィルムの側部から取り除かれた略帯形の除去耳片を用意し、この除去耳片を捩じるとともに、捩じり開始部やその近傍等を加熱して除去耳片を収縮させることにより、紐耳片を形成する。紐耳片を形成したら、この紐耳片を所定の長さに分割すれば、成形用の再生成形素材を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耳片に空気が介在するのを抑制し、成形機等に再生成形素材を適切に投入することができるという効果がある。また、再生成形素材のかさ比重を高くすることにより、成形機等で再生成形素材が浮いて樹脂溶融のタイミングがずれるのを低減することができるという効果がある。また、非晶性ではなく、結晶性の樹脂フィルムから除去された除去耳片を対象とするので、加熱時の温度管理が容易となる。また、樹脂フィルムの厚さが20μm未満なので、粉砕が困難な除去耳片を用いて再生成形素材を得ることができる。また、複数本の除去耳片を捩じって加熱するので、再生成形素材のかさ比重を重く高くし、混練機や成形機等に適切に投入することができる。また、除去耳片の捩じり開始部付近をスポット加熱し、捩じり始めの除去耳片の両面をポイント加熱するので、除去耳片を急速に収縮させることが可能となる。また、空気が介在しやすい捩じり部付近から空気を外部に逃がし、紐耳片中に空気が介在するのを防ぐことが可能となる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、除去耳片を延伸してテンションを作用させながら捩じるので、紐耳片の幅を略一定としたり、再生成形素材のかさ比重を重く高くすることが可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、塵として廃棄処分される除去耳片を有効利用し、結晶性の樹脂フィルムを安価に製造することができる。また、溶融押出成形法を採用して樹脂フィルムを製造することができるので、樹脂フィルムの厚さ精度、生産性、及びハンドリング性を向上させ、しかも、設備の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る樹脂フィルムの再生方法の実施形態における複数本の除去耳片を縒り、この複数本の除去耳片の縒り開始部をスポット加熱して紐耳片を形成する状態を模式的に示す説明図である。
図2】本発明に係る樹脂フィルムの再生方法の実施形態における紐耳片をカッタで所定の長さに切断する状態を模式的に示す説明図である。
図3】本発明に係る樹脂フィルムの製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。
図4】本発明に係る樹脂フィルムの再生方法の第2の実施形態における複数本の除去耳片を縒り、この複数本の除去耳片の縒り開始部をスポット加熱して紐耳片を形成する状態を模式的に示す説明図である。
図5】押出成形された樹脂フィルムを示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における樹脂フィルムの再生方法は、図1図2図5に示すように、結晶性の樹脂フィルム1の側部から除去された除去耳片2を複数本縒って加熱するとともに、この加熱時の温度を結晶性樹脂のガラス転移点以上融点未満の範囲とすることで、細長い紐状の紐耳片4を形成し、この紐耳片4を所定の長さに切断して樹脂フィルム1製造用の再生成形素材7を得るようにしている。
【0021】
結晶性の樹脂フィルム1は、少なくとも強度や剛性等に優れるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、芳香族ポリイミド(PI)樹脂、液晶ポリマー(LCP)製の連続した長い薄膜フィルムからなる。
【0022】
樹脂フィルム1の厚さとしては、1μm以上20μm未満、好ましくは1μm以上15μm未満、より好ましくは1μm以上12μm未満、さらに好ましくは1μm以上10μm未満が良い。これは、樹脂フィルム1の厚さが20μmを越える場合には、除去耳片2を粉砕して再生ペレットを容易に得ることができるので、複数本の除去耳片2を縒って加熱し、再生成形素材7を得る必要性に乏しいからである。
【0023】
なお、結晶性樹脂は、大きい収縮率、高い剛性・硬度を有し、しかも、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の非晶性樹脂と異なり、特定の融点(Tm)を有するので、紐耳片4を形成する際の温度管理が実に容易となる。
【0024】
複数本の除去耳片2は、樹脂フィルム1の製造時に樹脂フィルム1の両側部が除去対象としてそれぞれ細長い帯形(略テープ形でもある)に切断・除去されることで形成される。この複数本の除去耳片2は、幅や長さの異同を特に問うものではない。除去耳片2の本数は、特に限定されるものではないが、再生成形素材7のかさ比重を重く高くし、しかも、取扱いの便宜を図る観点から、2本以上6本以下、好ましくは2本以上5本以下、より好ましくは2本以上4本以下が良い。各除去耳片2の幅は、特に限定されるものではないが、例えば10mm以上100mm以下とされる。
【0025】
上記において、樹脂フィルム1から除去された除去耳片2を利用して樹脂フィルム1製造用の再生成形素材7を得る場合には、先ず、樹脂フィルム1の両側部から除去された帯形の薄い除去耳片2を回収して複数本用意し、この細長い複数本の除去耳片2を上方の上流から下方の下流に一定速度で繰り出し供給しながら絡めて強く縒るとともに、複数本の除去耳片2が重なり始めた縒り開始部3を熱風噴射で加熱して複数本の除去耳片2を急激に収縮させることにより、複数本の除去耳片2が密接した細長い一本の紐耳片4を形成する(図1参照)。
【0026】
これらの作業は手作業でも良いが、専用の装置を用いて自動的に実施することもできる。自動化を図る場合、例えば複数の繰出しローラから除去耳片2をそれぞれ繰り出して複数本の除去耳片2を複数の引出しローラ間に挟持させ、複数の繰出しローラからそれぞれ繰り出された複数本の除去耳片2を複数の集束ローラ間に挟持させるとともに、複数本の除去耳片2に圧縮ローラを摺接させて縒ることにより、φ5mm、10mm、20mm等の紐耳片4を形成することができる。
【0027】
上記作業の際、紐耳片4の径を略一定とし、再生成形素材7のかさ比重を重く高くする観点から、複数本の除去耳片2を上下方向に延伸させ、複数本の除去耳片2に繰り出し供給方向のテンションを均一に作用させることが好ましい。また、複数本の除去耳片2の縒り方は、Z縒り、S縒り、普通縒り、ラング縒り、ツイスト撚り等があるが、特に限定されるものではない。例えば、除去耳片2が二本の場合には、二本の除去耳片をツイスト撚りして紐耳片4を形成することができ、除去耳片2が三本の場合には、三本の除去耳片を三つ編みして紐耳片4を形成することができる。
【0028】
複数本の除去耳片2の縒り開始部3を加熱してかさ比重を重く高くする場合には、単なる加熱ではなく、例えば10mm範囲でスポット加熱することが好ましい。このスポット加熱時の温度は、縒り開始部3の周面(表面)から水平外方向に5mm前後離れた箇所で測定した場合、結晶性樹脂のガラス転移点(Tg)以上融点(Tm)未満の範囲が良い。これは、ガラス転移点未満の場合には、除去耳片2の物性変化や熱収縮が期待できないからである。これに対し、融点を越える場合には、除去耳片2が溶融して著しく熱劣化し、紐耳片4の形成が困難になるからである。
【0029】
スポット加熱は、例えば除去耳片2がポリエーテルエーテルケトン樹脂製の場合、143℃以上343℃未満、好ましくは144℃以上300℃未満、より好ましくは145℃以上200℃未満の温度範囲で実施することができる。除去耳片2がポリエチレンテレフタレート樹脂製の場合には、69℃以上260℃未満、好ましくは144℃以上200℃未満、より好ましくは145℃以上180℃未満の温度範囲で実施することが可能である。
【0030】
スポット加熱の範囲は、除去耳片2の熱履歴による劣化を防止するため、5mm以上20mm以下、好ましくは7mm以上15mm以下、より好ましくは10mm前後が最適である。このスポット加熱には、加熱手段である複数のホットガン5、ドライヤ、ヒータ等を適宜使用することができる。
【0031】
細長い紐耳片4を形成したら、この紐耳片4をカッタ6や鋏等で所定の長さに切断(図2参照)すれば、再生ペレットに類似した樹脂フィルム1製造用の再生成形素材7を製造することができる。この切断作業は手作業でも良いが、上記同様、専用の装置を用いて自動的に実施することもできる。自動化を図る場合、細長い紐耳片4を、下方に向かうに従い徐々に傾斜しながら縮径となる中空逆円錐形の縦長供給路に挿通して紐耳片4の絞小化を図った後、所定の長さに切断することができる。
【0032】
紐耳片4は、溶融押出成形機10に再生成形素材7を円滑に投入することができるよう、好ましくは再生成形素材7が新規の結晶性樹脂ペレットと略同様の長さ(例えば8mm、10mm、12mm、20mm等)となるよう切断される。カッタ6が切断手段として使用される場合、カッタ6は、水平方向に回転可能、あるいは紐耳片4に対して水平に往復動可能に配設されることが好ましい。
【0033】
次に、製造した再生成形素材7を用いて結晶性の樹脂フィルム1を新たに製造する場合には、図3に示すように、再生成形素材7を新規の結晶性樹脂と共に成形材料として溶融押出成形機10に投入して溶融混練し、この溶融押出成形機10のTダイス13から帯形の薄い樹脂フィルム1を連続的に押し出して冷却ロール16と一対の圧接ロール17との間に挟持させて冷却し、冷却した樹脂フィルム1の両側部をそれぞれ除去した後、樹脂フィルム1を巻取機18に巻き取るようにしている。
【0034】
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された再生成形素材7等を溶融混練するよう機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入で成形材料の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
【0035】
溶融押出成形機10の先端部にはTダイス13が連結管14を介して装着され、このTダイス13が薄い帯形の樹脂フィルム1を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の上流には、連結管14に装着されたギアポンプ15が位置し、このギアポンプ15が成形材料を一定速度で、かつ高精度にTダイス13に移送する。
【0036】
冷却ロール16と一対の圧接ロール17とは、Tダイス13の下方にそれぞれ回転可能に軸支され、冷却ロール16が一対の圧接ロール17に挟持される関係に配設されており、樹脂フィルム1に摺接してこれを冷却ロール16に圧接する。冷却ロール16としては、例えば圧接ロール17よりも拡径の金属ロール等が使用される。
【0037】
各圧接ロール17は、平滑性に優れる樹脂フィルム1を成形する場合には、表面が金属の金属弾性ロールが使用される。また、各圧接ロール17の周面には、樹脂フィルム1と冷却ロール16との密着性を向上させたい場合には、樹脂フィルム1に弾接する弾性層が必要に応じて覆着され、この弾性層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。弾性層の材料としては、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が採用される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
【0038】
一対の圧接ロール17の下流には、樹脂フィルム1を回転可能な巻取ロール19に巻き取る巻取機18が設置され、一対の圧接ロール17と巻取機18との間には、樹脂フィルム1の両側部を不要な除去耳片2として切断・除去する複数のスリット刃20がそれぞれ昇降可能に配置されており、この複数のスリット刃20と巻取機18との間には、樹脂フィルム1にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール21が必要数軸支される。
【0039】
上記において、結晶性の樹脂フィルム1を新たに製造する場合には図3に示すように、再生成形素材7と新規の結晶性樹脂とを混合して成形材料を調製した後、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料を加熱・加圧状態で溶融混練し、Tダイス13から帯形の薄い樹脂フィルム1を連続的に押し出す。この際、成形材料の溶融混練前における含水率は、5000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは250〜2000ppm以下に調整される。これは、含水率が5000ppmを越える場合には、成形材料が発泡するおそれがあるからである。
【0040】
樹脂フィルム1を押し出したら、冷却ロール16、一対の圧接ロール17、テンションロール21、及び巻取機18の巻取ロール19に順次巻架するとともに、樹脂フィルム1を冷却ロール16により冷却し、樹脂フィルム1の両側部を帯形の除去耳片2としてスリット刃20でそれぞれ切断・除去した後、巻取機18の巻取ロール19に順次巻き取れば、再生成形素材7含有の成形材料により、スピーカの振動板用やフィルムキャパシタ用の高価な樹脂フィルム1を安価に製造することができる。切断・除去した各除去耳片2は、厚さが20μm未満の場合には、必要に応じ、再生成形素材7を製造するため、再利用される。
【0041】
上記によれば、複数本の除去耳片2を強く縒りながら加熱し、複数本の除去耳片2を急激に圧縮して除去耳片2間の空気を外部に排気するので、複数本の除去耳片2間に空気が介在するのを有効に防止することができる。したがって、後に樹脂フィルム1を製造する際、溶融押出成形機10に再生成形素材7を適切に投入することができる。また、再生成形素材7のかさ比重が重く高いので、溶融押出成形機10に再生成形素材7を投入しても、溶融押出成形機10の内部で再生成形素材7の浮くことがない。したがって、樹脂溶融のタイミングがずれ、樹脂フィルム1の製造に重大な支障を来すのを有効に防止することが可能となる。
【0042】
また、複数本の除去耳片2の縒り終了部を単に加熱するのではなく、複数本の除去耳片2の縒り開始部3をスポット加熱し、重なり絡み始めた各除去耳片2の内外両面をポイント加熱するので、複数本の除去耳片2を急速に収縮させ、縮径化して一体化することが可能となる。さらに、樹脂フィルム1が非晶性の場合には、非晶性樹脂が明確な溶融境界を有しないので、ガラス転移点以上融点未満の温度範囲の設定が現実的には容易ではないが、結晶性の樹脂フィルム1から除去された除去耳片2を再生成形素材7の対象とするので、スポット加熱時の温度管理が実に容易となる。したがって、再生成形素材7製造の自動化や量産化に大いに資することができる。
【0043】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、複数本の除去耳片2を水平横方向の上流から下流に一定速度で繰り出し供給しながら絡めて強く縒るとともに、複数本の除去耳片2が重なり始めた縒り開始部3をスポット加熱して複数本の除去耳片2を急速に熱収縮させることにより、複数本の除去耳片2が密接した細長い紐耳片4を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0044】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、複数本の除去耳片2を上方から下方に一定速度で繰り出し供給できない場合にも、細長い紐耳片4を形成することができるのは明らかである。
【0045】
なお、上記実施形態では樹脂フィルム1用の再生成形素材7を製造したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、医療品用、自動車用、液晶製造装置用、半導体製造装置用の再生成形素材7でも良い。また、溶融押出成形機10の原料投入口11に投入する成形材料には、再生成形素材7の他、必要に応じ、着色剤(酸化チタン、カーボンブラック等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオ系、リン系等)、帯電防止剤、難燃剤(酸化アンチモン、金属水酸化物等)、可塑剤、離型剤、滑剤(シリコーン系、フッ素系等)、無機系フィラー、有機系フィラー、無機系繊維、有機系繊維等の添加剤を添加しても良い。また、冷却ロール16の周面に微細な凹凸を形成し、樹脂フィルム1の成形時に微細な凹凸を同時に形成して摩擦係数を低下させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る樹脂フィルムの再生方法及び樹脂フィルムの製造方法は、携帯機器、情報機器、音響機器、精密部品、電子部品等に用いられる樹脂フィルムの製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0047】
1 樹脂フィルム
2 除去耳片
3 縒り開始部(捩じり開始部)
4 紐耳片
5 ホットガン
6 カッタ
7 再生成形素材
10 溶融押出成形機(成形機)
13 Tダイス(ダイ)
16 冷却ロール
17 圧接ロール
18 巻取機
20 スリット刃
図1
図2
図3
図4
図5