(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867912
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】熱交換器の製造方法および熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20210426BHJP
F28F 9/18 20060101ALI20210426BHJP
B21D 53/08 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28F9/18
B21D53/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-155601(P2017-155601)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-35518(P2019-35518A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】小川 芳光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 宏
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 さおり
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/069280(WO,A1)
【文献】
特開昭61−108435(JP,A)
【文献】
特開2002−267380(JP,A)
【文献】
特開2002−303496(JP,A)
【文献】
特開2015−127631(JP,A)
【文献】
米国特許第03625170(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
B21D 53/08
F28F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダプレート(1)に設けた偏平な挿通孔(2)に、偏平チューブ(3)の端部が挿通され、その挿通孔(2)と偏平チューブ(3)の端部との間がろう付固定されると共に、その偏平チューブ(3)はその横断面の長軸方向の端部に巻締接合部(4)を有するものであって、
ヘッダプレート(1)に、前記挿通孔(2)の位置を取り囲むように横断面が内面側に湾曲する細長い第1突条部(5)と、その第1突条部(5)の長手方向の両端部に隣接した両側に、端部が第1突条部(5)内に入り込むように第1突条部(5)に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部(6)と、を一対ずつ形成して、その第1突条部(5)と第2突条部(6)との接続部に剛性部(7)を形成する前工程と、
次いで、その第1突条部(5)の中心線上で、その外面側から内面側に穿孔して、偏平チューブ(3)の外周に整合する立上げリブ(11)を形成すると共に、前記剛性部(7)に隣接する立上げリブ(11)の内面をヘッダプレート(1)の平面に直交する平坦面(8)に形成する穿孔工程と、
前記巻締接合部(4)を前記剛性部(7)における平坦面(8)に位置して、偏平チューブ(3)と挿通孔(2)との間をろう付するろう付工程と、
を具備することを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
ヘッダプレート(1)に設けた偏平な挿通孔(2)に、偏平チューブ(3)の端部が挿通され、その挿通孔(2)と偏平チューブ(3)の端部との間がろう付固定されると共に、その偏平チューブ(3)はその横断面の長軸方向の中間位置に中間接合部(9)を有するものであって、
ヘッダプレート(1)に、前記挿通孔(2)の位置を取り囲むように横断面が内面側に湾曲する細長い第1突条部(5)と、その第1突条部(5)の長手方向の中間に隣接した両側に、端部が第1突条部(5)内に入り込むように第1突条部(5)に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部(6)と、を一対ずつ形成して、その第1突条部(5)と第2突条部(6)との接続部に剛性部(7)を形成する前工程と、
次いで、その第1突条部(5)の中心線上で、その外面側から内面側に穿孔して、偏平チューブ(3)の外周に整合する立上げリブ(11)を形成すると共に、前記剛性部(7)に隣接した立上げリブ(11)の内面をヘッダプレート(1)の平面に直交する平坦面(8)に形成する穿孔工程と、
前記中間接合部(9)を前記平坦面(8)に位置して、偏平チューブ(3)と挿通孔(2)との間をろう付するろう付工程と、
を具備することを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記穿孔に伴い第1突条部(5)の両端部および剛性部(7)の位置に、他の部分に比べて孔縁部をより高く且つ、前記平坦面(8)の高さを他の部分よりも高く形成した請求項1または請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記前工程と穿孔工程との中間に、偏平チューブの幅に比べて狭い幅のスリット(12)を形成する工程を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
ヘッダプレートは、第1突条部(5)の長手方向の中間と両端とに隣接した両側の位置で、予めその内面側に湾曲する3本以上の第2突条部(6)および剛性部(7)をそれぞれ形成しておく前工程を有する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
ヘッダプレート(1)に設けた偏平な挿通孔(2)に、偏平チューブ(3)の端部が挿通され、その挿通孔(2)と偏平チューブ(3)の端部との間がろう付固定されていると共に、その偏平チューブ(3)はその横断面の長軸方向の端部に巻締接合部(4)又はその横断面の長軸方向の中間位置に中間接合部(9)を有するものであって、
ヘッダプレート(1)は、前記挿通孔(2)の位置を取り囲むように横断面が内面側に湾曲する細長い第1突条部(5)と、その第1突条部(5)の長手方向の両端部又は長手方向の中間に隣接する両側に、端部が第1突条部(5)内に入り込むように第1突条部(5)に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部(6)と、が一対ずつ形成されており、その第1突条部(5)と第2突条部(6)との接続部に剛性部(7)が形成されており、
前記第1突条部(5)の中心線上には、偏平チューブ(3)の外周に整合する立上げリブ(11)を有する挿通孔(2)が穿孔されていると共に、前記剛性部(7)に隣接した立上げリブ(11)の内面にヘッダプレート(1)の平面に直交する平坦面(8)が形成されている構造を有しており、
前記偏平チューブ(3)の巻締接合部(4)又は中間接合部(9)が前記剛性部(7)における平坦面(8)に位置した状態で、偏平チューブ(3)とヘッダプレート(1)の挿通孔(2)との間がろう付固定されていることを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として、薄い条材の両縁を互いに巻締めて偏平チューブを形成し、それをヘッダプレートの挿通孔に挿入して、両者間をろう付して固定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
条材の端部どうしを重ね合わせて、巻締部を形成した偏平チューブが知られている。下記特許文献1に記載の熱交換器用偏平チューブは、一対のプレートの両縁に設けた横断面U字状部を互いに嵌着し、その嵌着部を巻締めて固定したものである。
また、条材の両縁部を折り返して、その端部どうしを横断面H字状に接続したものも知られている。これは条材の中間部に仕切用の立上げ部を形成し、その頂部を条材の中間部内面に接続したものである。この条材の外面側には予めろう材が被覆されている。
このようにしてなる偏平チューブは、その外周に整合するチューブ挿通孔を有するヘッダプレートに挿通され、偏平チューブとヘッダプレートとの間が、高温の炉内で一体的にろう付固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−058065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏平チューブの外周に整合するチューブ挿通孔は、通常、プレス成形により孔縁部がバーリング加工されている。即ち、チューブ挿通孔の孔縁部はタンクの内部側に突出する筒状に形成されている。このようなバーリング加工部に偏平チューブを挿通し、一体的にろう付固定する時、特に、偏平チューブの継目にろう付不良が生じることがある。
このような偏平チューブに対して本発明の発明者による、ろう付不良の原因究明の結果、挿通孔の横断面の偏平チューブに接触する剪断部が
図8の如く、僅かに波打っている波打面28が形成される場合に、その部分でろう付不良が生じることが判った。特に、偏平チューブの巻締部等の条材の継目において、チューブ挿通孔の剪断部にスムーズでない波打面28が形成されると、それらにより形成される隙間からろう材が流出してろう付不良が生じていた。
そこで、本発明は特に、ヘッダプレートと偏平チューブの接合部におけるろう付不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ヘッダプレート(1)に設けた偏平な挿通孔(2)に、偏平チューブ(3)の端部が挿通され、その挿通孔(2)と偏平チューブ(3)の端部との間がろう付固定されると共に、その偏平チューブ(3)はその横断面の長軸方向の端部に巻締接合部(4)を有するものであって、
ヘッダプレート(1)に、前記挿通孔(2)の位置を取り囲むように横断面が内面側に湾曲する細長い第1突条部(5)と、その第1突条部(5)の長手方向の両端部に隣接した両側に、端部が第1突条部(5)内に入り込むように第1突条部(5)に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部(6)と、を一対ずつ形成して、その第1突条部(5)と第2突条部(6)との接続部に剛性部(7)を形成する前工程と、
次いで、その第1突条部(5)の中心線上で、その外面側から内面側に穿孔して、偏平チューブ(3)の外周に整合する立上げリブ(11)を形成すると共に、前記剛性部(7)に隣接する立上げリブ(11)の内面をヘッダプレート(1)の平面に直交する平坦面(8)に形成する穿孔工程と、
前記巻締接合部(4)を前記剛性部(7)における平坦面(8)に位置して、偏平チューブ(3)と挿通孔(2)との間をろう付するろう付工程と、
を具備することを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、ヘッダプレート(1)に設けた偏平な挿通孔(2)に、偏平チューブ(3)の端部が挿通され、その挿通孔(2)と偏平チューブ(3)の端部との間がろう付固定されると共に、その偏平チューブ(3)はその横断面の長軸方向の中間位置に中間接合部(9)を有するものであって、
ヘッダプレート(1)に、前記挿通孔(2)の位置を取り囲むように横断面が内面側に湾曲する細長い第1突条部(5)と、その第1突条部(5)の長手方向の中間に隣接した両側に、端部が第1突条部(5)内に入り込むように第1突条部(5)に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部(6)と、を一対ずつ形成して、その第1突条部(5)と第2突条部(6)との接続部に剛性部(7)を形成する前工程と、
次いで、その第1突条部(5)の中心線上で、その外面側から内面側に穿孔して、偏平チューブ(3)の外周に整合する立上げリブ(11)を形成すると共に、前記剛性部(7)に隣接した立上げリブ(11)の内面をヘッダプレート(1)の平面に直交する平坦面(8)に形成する穿孔工程と、
前記中間接合部(9)を前記平坦面(8)に位置して、偏平チューブ(3)と挿通孔(2)との間をろう付するろう付工程と、
を具備することを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記穿孔に伴い第1突条部(5)の両端部および剛性部(7)の位置に、他の部分に比べて孔縁部をより高く且つ、前記平坦面(8)の高さを他の部分よりも高く形成した請求項1または請求項2に記載の熱交換器の製造方法である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記前工程と穿孔工程との中間に、偏平チューブの幅に比べて狭い幅のスリット(12)を形成する工程を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器の製造方法である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、ヘッダプレートは、第1突条部(5)の長手方向の中間と両端とに隣接した両側の位置で、予めその内面側に湾曲する3本以上の第2突条部(6)および剛性部(7)をそれぞれ形成しておく前工程を有する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱交換器の製造方法である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、ヘッダプレート(1)に設けた偏平な挿通孔(2)に、偏平チューブ(3)の端部が挿通され、その挿通孔(2)と偏平チューブ(3)の端部との間がろう付固定されていると共に、その偏平チューブ(3)はその横断面の長軸方向の端部に巻締接合部(4)又はその横断面の長軸方向の中間位置に中間接合部(9)を有するものであって、
ヘッダプレート(1)は、前記挿通孔(2)の位置を取り囲むように横断面が内面側に湾曲する細長い第1突条部(5)と、その第1突条部(5)の長手方向の両端部又は長手方向の中間に隣接する両側に、端部が第1突条部(5)内に入り込むように第1突条部(5)に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部(6)と、が一対ずつ形成されており、その第1突条部(5)と第2突条部(6)との接続部に剛性部(7)が形成されており、
前記第1突条部(5)の中心線上には、偏平チューブ(3)の外周に整合する立上げリブ(11)を有する挿通孔(2)が穿孔されていると共に、前記剛性部(7)に隣接した立上げリブ(11)の内面にヘッダプレート(1)の平面に直交する平坦面(8)が形成されている構造を有しており、
前記偏平チューブ(3)の巻締接合部(4)又は中間接合部(9)が前記剛性部(7)における平坦面(8)に位置した状態で、偏平チューブ(3)とヘッダプレート(1)の挿通孔(2)との間がろう付固定されていることを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明は、偏平チューブの横断面の長軸方向の端部に巻締接合部4が形成されたものを対象とし、その巻締部とチューブ挿通孔とのろう付の信頼性を向上するものである。
そのために、その第1突条部と第2突条部との接続部に剛性部7を形成する前工程と、続く穿孔で、剛性部7における剪断面14をヘッダプレート1の平面に直交する平坦な面8に形成し、その剛性部7における平坦面8に偏平チューブの巻締接合部4の外面に生じる継目15を配置して、両者間をろう付するものである。
その平坦面8は剛性部7の剛性のため、スムーズな面を形成し、そこに配置される巻締接合部4の継目15との間の隙間を限りなく小さくしたので、そこに配置される巻締接合部4の継目15からのろう材の流出を平坦面8が阻止し、ろう付の信頼性を確保できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、偏平チューブ1の横断面の長手方向の中間位置に中間接合部9を有するものを対象とし、その接合部9と挿通孔2とのろう付の信頼性を向上するものである。
そして、剛性部7の存在により穿孔に伴う剪断面14をヘッダプレート1の平面に直交する平坦な面8に形成し、その平坦面8に偏平チューブの中間接合部9の外面に生じる継目15を配置して、両者間をろう付するものである。このとき、中間接合部9の継目15が平坦面8に位置することによりそれらの間の隙間を限りなく小さくしているので、ろう付中のろう材の流出を平坦面8が阻止し、ろう付の信頼性を確保できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記剛性部7における前記平坦面8の高さを他の部分よりも高く形成したので、巻締接合部4または中間接合部9と挿通孔2とのろう付長さを長く確保し、ろう付の信頼性を向上できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前工程と穿孔工程との中間に、偏平チューブの幅に比べて狭い幅のスリットを形成する工程を設けたので、剛性部7における剪断面14を平坦な面8に正確に形成できる。そのため、巻締接合部4または中間接合部9と挿通孔2とのろう付の信頼性をさらに向上できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、ヘッダプレートの第1突条部5の中間と両端とに隣接した両側の位置で、予めその内面側に湾曲する3本以上の第2突条部6および剛性部7をそれぞれ形成したものである。このヘッダプレート1を使用すれば、巻締接合部4を有する偏平チューブにも、中間接合部9を有する場合、中間接合部9を1つの偏平チューブ内に多数有する場合のいずれにも使用でき、汎用性の高い熱交換器の製造方法を提供できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、偏平チューブの横断面の長軸方向の端部に巻締接合部4が形成されたもの又は中間位置に中間接合部9が形成されたものを対象とし、その巻締接合部4又は中間接合部9とチューブ挿通孔2とのろう付の信頼性を向上するものである。
そのために、ヘッダプレート1の平面には第1突条部5と第2突条部6が設けられ、その接続部に剛性部7が形成され、その第1突条部5の中心線上に、偏平チューブ3の外周に整合する立上げリブ11を有する挿通孔2が穿孔され、剛性部7に隣接した立上げリブ11の内面にヘッダプレート1の平面に直交する平坦面8が形成されている構造を有しており、その剛性部7における平坦面8に偏平チューブ3の巻締接合部4又は中間接合部9を配置して、偏平チューブ3とヘッダプレート1の両者間がろう付されている構造を有している。
その平坦面8はその隣接位置に設けられた剛性部7の存在により、滑らかな面に形成されているので、そこに配置される偏平チューブ3の巻締接合部4又は中間接合部9の外面に生じる継目15との間の隙間を小さくすることができる。それ故、そこに配置される継目15からのろう材の流出を防止し、ろう付の信頼性の高い熱交換器となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の熱交換器のヘッダプレート1の平面図(A)、
図1(A)のB−B断面図(B)、
図1(A)のC−C断面図(C)、
図1(A)のD−D断面図(D)、
図1(A)のE−E断面図(E)。
【
図2】同ヘッダプレートを製造するための第1工程(前工程)の平面図(A)、
図2(A)のB−B断面図(B)。
【
図3】同ヘッダプレートのチューブ挿通孔の穿孔工程の手順の一例を示す説明図であって、A1及びA2は第2工程の穿孔工程の補助工程を示す平面図と断面図であり、B1及びB2は第2工程の穿孔工程の主工程を示す平面図と断面図。
【
図4】同工程により形成されたヘッダプレートのバーリング加工部の要部斜視図。
【
図5】同ヘッダプレートのチューブ挿通孔に端部巻締型の偏平チューブを挿通した状態を示す平面図(A)、
図5(A)のB部拡大図(B)、
図5(B)のD−D断面図(C)。
【
図6】同チューブ挿通孔に偏平チューブ3として、その横断面の中央位置に中間接合部9を設けた場合のろう付状態を示す平面図(A)及び
図6(A)のB部拡大図(B)。
【
図7】
図5(B)のD−D線における偏平チューブを挿通する前のバーリング加工部の拡大断面図。
【
図8】従来型ヘッダプレートのチューブ挿通孔のバーリング加工部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
なお、各発明のヘッダプレート1の平面に対する内面側とは、ヘッダプレート1の外周壁の立ち上げ側、図示しないヘッダタンクの内部に向かせる面の側、若しくは平面に対して第1突条部5が突設される側をいう。
図1は、
図5に示すような横断面の両端部に巻締接合部4を有する偏平チューブ3とヘッダプレート1とのろう付に最適な熱交換器のヘッダプレート1である。この第1実施形態の熱交換器に用いられる偏平チューブ3は、一対の条材をその両縁部で横断面U字状に嵌着して、その嵌着部を巻締ることによって接続されている。
【0019】
このヘッダプレート1の構造は、次のようになっている。
ヘッダプレート1の平面には、その長手方向に向かって、横断面が内面側に湾曲する多数の細長い第1突条部5が定間隔に並列して突設されている。そして、各第1突条部5の中心線上に偏平チューブ3の外周に整合するように、挿通孔2が穿孔されている。
また、第1突条部5の偏平チューブ3の巻締接合部4に隣接した位置の両側に、第1突条部5に直交して内面側に横断面が湾曲する第2突条部6と、が一対ずつ形成されている。その第2突条部6の端部は第1突条部5内に入り込むように形成されており、その第1突条部5と第2突条部6との接続部には剛性部7が形成されている。
各挿通孔2の孔縁には立上げリブ11が形成されており、剛性部7に隣接した立上げリブ11の内面には、ヘッダプレート1の平面に直交する滑らかな平坦面8が形成されている。
【0020】
この例のヘッダプレート1の挿通孔2には、
図5に示すような巻締嵌着部4を有する偏平チューブ3の端部が挿通されている。巻締接合部4はその偏平チューブ3の外周に継目15を有しており、その継目15がヘッダプレート1の立ち上げリブ11の滑らかな平坦面8に位置した状態で、偏平チューブ3とヘッダプレート1の挿通孔2との間がろう付接合されている。
このような特徴を有する熱交換器は、ヘッダプレート1の挿通孔2と巻締接合部4の継目15との間の隙間を限りなく小さくし、そこに配置される巻締接合部4からのろう材の流出を阻止することができる。また、第2突条部6及び剛性部7が偏平チューブ3の巻締接合部4に隣接した位置の両側に存在しているので、各挿通孔2の平坦面8と偏平チューブ3の継目15の位置を確認する必要がない。
【0021】
図1に例示されたヘッダプレート1の平面の周縁には、内面側に立ち上げられた外周壁が形成されている。
ヘッダプレート1の外周壁の内周面には図示しないヘッダタンクの端部が載置され、ヘッダプレートの周壁をカシメることにより(カシメ固定の構造は公知のものを採用できる。)、ヘッダタンクとヘッダプレートを接続する。また、各偏平チューブ3の間には、図示しないアウターフィンが設けられる。
【0022】
この例のヘッダプレート1の挿通孔2は、
図2及び
図3のように順次、成形される。
ヘッダプレート1は、バーリング加工を施す準備として第1突条部5と第2突条部6を形成する前工程を行う。
図2(A)及び
図2(B)に示す如く、細長い第1突条部5がヘッダプレート1の平面の長手方向に定間隔に並列されている。第1突条部5はその横断面が内面側に突出する円弧状に形成されている。そして、第1突条部5の両端部に隣接した両側縁に、第1突条部5に直交して、第2突条部6が平面と一体に突設されている。この第2突条部6は、ヘッダプレート1の内面側に湾曲する。そして、第1突条部5と第2突条部6とが隣接する位置に剛性部7が形成される。剛性部7は、偏平チューブ3の巻締接合部4により生じる継目15の位置に整合するように形成される。
この剛性部7は両突条部5、6の境にあるため、機械的剛性が強く、プレス成形による剪断に際して、その位置にある剪断面14が
図7に示す如く、滑らかな平坦面8として形成される。
【0023】
次に、前工程を行ったヘッダプレート1の内面側を下向きにして、図示しない補助工程のプレス金型10に使用されるダイの上に配置する。そして、
図3(A1)及び
図3(A2)に示す如く、先端部10aに切断部を有する補助工程のプレス金型10のパンチにより、ヘッダプレート1の第1突条部5の中心線上に狭いスリット12を形成する。補助工程のプレス金型10のダイには、スリット12を穿孔するための孔が設けられる。この補助工程のプレス金型10のパンチの先端部10aは、側面が偏平に形成され且つ、その先端部10aが鋭利に形成されている。
【0024】
次に、第2工程(穿孔工程)の主工程(バーリング)を行う。補助工程を行ったヘッダプレート1の内面側を下向きにして、図示しない主工程のプレス金型13のダイの上に配置する。そして、
図3(B1)及び
図3(B2)に示す如く、主工程のプレス金型13を外面側から内面側にプレスすることによってスリット12が拡開される。この主工程のプレス金型13のパンチは、横断面が偏平でその先端部13aが弧状に形成されている。そして、この先端部13aによって、スリット12が拡開されて、挿通孔2の立上げ部11を形成するともに、その内面にヘッダプレート1の平面16に直行する剪断面14が形成される。この時、特に、第1突条部5と第2突条部6との接続部である剛性部7の近傍では、その剛性により、
図1(D)及び
図3(B2)に示す如く、剪断面14が滑らかな平坦面8として形成される。即ち、対向する平坦面8はその平面どうしが、ヘッダプレート1の平面に対し垂直であり、それらの面が平行で且つ滑らかである。
【0025】
さらに、
図1(D)に示す如く、第2突条6(D−D)における立上げ高さH1は、第2突条部のない位置(E−E)の立上げ高さH2より高く設定することが好ましい。即ち、H1>H2である。しかも、その(D)内の平坦面8の長さH3は、第2突条部のない位置での平坦面8の長さH4より高く設定することが好ましい。即ち、H3>H4である。このように形成すると、第2突条部6における偏平チューブ3とヘッダプレート1とのろう付の接合部の長さは、突条のない位置でのそれらの長いので、ヘッダプレート1と偏平チューブ3との間で信頼性の高いろう付が実現できる。
【0026】
次いで、巻締接合部4を有する偏平チューブ3の長手方向の端部が立上げ部11内に挿通される。そして、図示しない高温の炉内で偏平チューブ3とヘッダプレート1とが一体的にろう付固定される。この時、
図5に示す如く、偏平チューブ3の巻締接合部4の継目15の近傍は、ヘッダプレート1の剛性部7の存在により、その平坦面8が滑らかに形成されている。そのため、ヘッダプレート1の平坦面8と偏平チューブ3の外面に生じる巻締接合部4の継目15との間の隙間はろう材が流れない程度の小さなものになるので、そのろう付部は正確に形成される。
【0027】
次に、
図6は、本発明の第2実施形態であり、偏平チューブ3として、その横断面の長軸の中央に偏平チューブ3の内部に仕切壁を形成するための中間接合部9が形成されたものを対象とする。
この例では、ヘッダプレート1の第1突条部5の長手方向の中央部に一対の第2突条部6が突設されている。そして、その第1突条部5と第2突条部6との境に剛性部7が形成され、その剛性部7に隣接して立上げ部11の内面に平坦面8が形成されており、その平坦面8の中間接合部9の継目15が配置されている。
立上げ部11の長手方向の中央部における平坦面8の内面は滑らかに形成されているため、偏平チューブ3の外面に生じる中間接合部9の継目15とのろう付を正確に行うことができる。即ち、高温の炉内でろう付中に、ろう材が中間接合部9の継目15の近傍から流れ出すことを平坦面8によって阻止している。
この第2実施形態のヘッダプレート1は、第1実施形態の前行程及び穿孔工程(第2工程)に準じて製造される。
この中間接合部9の形成位置は、偏平チューブの長手方向の中央位置に限られず、偏平チューブ3の長手方向の中間位置にあればよく、複数の位置に設けることもできる。その場合は、剛性部7を中間接合部9の数と位置に整合するように設ければよい。
【0028】
なお、この例では、ヘッダプレート1として、立上げ部11の長手方向の両端部に第2突条部6を設けるとともに、中央部にも第2突条部6を設けているが、長手方向の両端部における一対の第2突条部6を省略することもできる。
また、このように、長手方向に互いに離間して3つずつの第2突条部6を形成した場合には、中間接合部9を設けた偏平チューブ3に用いることができるとともに、
図5に示す横断面の両端部に巻締接合部4を設けたものにも適用できる。第2突条部6の数は4つ以上とすることもできる。
【0029】
(ヘッダプレートの立上げ工程の変形例)
図3における実施例では、ヘッダプレート1の穿孔に対して補助工程のプレス金型10と主工程のプレス金型13の2つのプレス金型を用いたが、実験によれば、補助工程のプレス金型10を用いず直接主工程のプレス金型13のみをヘッダプレート1の第1突条部5及び第2突条部6に適用しても、剛性部7の存在により、略同様の立上げ部11及び平坦面8を形成することができた。
したがって、
図3(A1)及び
図3(A2)におけるスリット12の形成工程は任意であり、省くこともできる。
なお、本願の熱交換器は、請求項に記載されている構成を有していれば発明の効果を奏することができ、それ以外の構成要素については、図面及び発明を実施するための形態の説明に記載された内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 ヘッダプレート
2 挿通孔
3 偏平チューブ
4 巻締接合部
5 第1突条部
6 第2突条部
7 剛性部
8 平坦面
9 中間接合部
10 補助工程のプレス金型
10a 先端部
11 立上げ部
12 スリット
13 主工程のプレス金型
14 剪断面
15 継目
22 挿通孔
23 立上げ部
28 波打面