(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867913
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】車載システム及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20210426BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-156228(P2017-156228)
(22)【出願日】2017年8月11日
(65)【公開番号】特開2019-34610(P2019-34610A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田村 亘
(72)【発明者】
【氏名】沖野 圭希
(72)【発明者】
【氏名】信太 健司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 侑
【審査官】
菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/208330(WO,A1)
【文献】
特開2015−217798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転と手動運転とを選択的に行う自動車に搭載される車載システムであって、
ヘッドアップディスプレイと、
表示モード制御手段とを有し、
前記ヘッドアップディスプレイは、
画像を投射するプロジェクタと、
表示モードとして第1の表示モードと第2の表示モードを有し、第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第1の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的小さい第1の虚像として表示され、前記第2の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的大きい第2の虚像として表示されるように投影し、第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、当該画像が単一の画像の虚像として表示されるように投影する投影装置とを有し、
前記表示モード制御手段は、手動運転を行っていた前記自動車が自動運転を開始したときに、前記投影装置の前記表示モードを前記第2の表示モードに切り替え、
前記投影装置は、前記第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、ユーザの前方に配置された透明体に投影し、
かつ、前記投影装置は、
前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光が入射され、当該入射した光を反射して前記透明体に投影する主ミラーと、
前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光路と部分的に重なる前記主ミラーと前記プロジェクタの間の位置である使用位置に配置され、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光路と重ならない位置である待避位置に配置される分割ミラーと、
光を順送りする複数のミラーにより構成した光路延長光学系とを備え、
当該分割ミラーは、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光を、当該分割ミラーで遮られずに進む第1の光と、当該分割ミラーに入射した光の当該分割ミラーによる反射光である第2の光とに分割し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記分割ミラーで分割された第2の光の、前記分割ミラーから前記主ミラーに至る、前記使用位置と前記主ミラーとの間の距離より長い光路を形成し、
前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記主ミラーは、前記プロジェクタから入射した第1の光と、前記光路延長光学系から入射した前記第2の光を反射して前記透明体に投影し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光の主ミラーに至る光路を遮らず、
前記第1の光は前記第1の画像の光を含み、前記第2の光は前記第2の画像の光を含むことを特徴とする車載システム。
【請求項2】
自動運転と手動運転とを選択的に行う自動車に搭載される車載システムであって、
ヘッドアップディスプレイと、
表示モード制御手段とを有し、
前記ヘッドアップディスプレイは、
画像を投射するプロジェクタと、
表示モードとして第1の表示モードと第2の表示モードを有し、第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第1の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的小さい第1の虚像として表示され、前記第2の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的大きい第2の虚像として表示されるように投影し、第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、当該画像が単一の画像の虚像として表示されるように投影する投影装置とを有し、
前記表示モード制御手段は、手動運転を行っていた前記自動車が自動運転を開始したときに、前記投影装置の前記表示モードを前記第2の表示モードに切り替え、
前記投影装置は、前記第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、ユーザの前方に配置された透明体に投影し、
かつ、前記投影装置は、
前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光が入射され、当該入射した光を反射して前記透明体に投影する主ミラーと、
前記プロジェクタが投射した画像の光路と部分的に重なる前記主ミラーと前記プロジェクタの間の位置に配置された、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、鏡状態に制御され、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、透明状態に制御される調光ミラーである分割ミラーと、
光を順送りする複数のミラーにより構成した光路延長光学系とを備え、
当該分割ミラーは、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光を、当該分割ミラーで遮られずに進む第1の光と、当該分割ミラーに入射した光の当該分割ミラーによる反射光である第2の光とに分割し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記分割ミラーで分割された第2の光の、前記分割ミラーから前記主ミラーに至る、前記分割ミラーと前記主ミラーとの間の距離より長い光路を形成し、
前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記主ミラーは、前記プロジェクタから入射した第1の光と、前記光路延長光学系から入射した前記第2の光を反射して前記透明体に投影し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光の主ミラーに至る光路を遮らず、
前記第1の光は前記第1の画像の光を含み、前記第2の光は前記第2の画像の光を含むことを特徴とする車載システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の車載システムであって、
前記透明体は、前記自動車のフロントウインドウであることを特徴とする車載システム。
【請求項4】
画像を虚像によって表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
画像を投射するプロジェクタと、
表示モードとして第1の表示モードと第2の表示モードを有し、第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第1の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的小さい第1の虚像として表示され、前記第2の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的大きい第2の虚像として表示されるようにユーザの前方に配置された透明体に投影し、第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、当該画像が単一の画像の虚像として表示されるように前記透明体に投影する投影装置とを有し、
前記投影装置は、
前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光が入射され、当該入射した光を反射して前記透明体に投影する主ミラーと、
前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光路と部分的に重なる前記主ミラーと前記プロジェクタの間の位置である使用位置に配置され、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光路と重ならない位置である待避位置に配置される分割ミラーと、
光を順送りする複数のミラーにより構成した光路延長光学系とを備え、
当該分割ミラーは、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光を、当該分割ミラーで遮られずに進む第1の光と、当該分割ミラーに入射した光の当該分割ミラーによる反射光である第2の光とに分割し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記分割ミラーで分割された第2の光の、前記分割ミラーから前記主ミラーに至る、前記使用位置と前記主ミラーとの間の距離より長い光路を形成し、
前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記主ミラーは、前記プロジェクタから入射した第1の光と、前記光路延長光学系から入射した前記第2の光を反射して前記透明体に投影し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光の主ミラーに至る光路を遮らず、
前記第1の光は前記第1の画像の光を含み、前記第2の光は前記第2の画像の光を含むことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
画像を虚像によって表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
画像を投射するプロジェクタと、
表示モードとして第1の表示モードと第2の表示モードを有し、第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第1の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的小さい第1の虚像として表示され、前記第2の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的大きい第2の虚像として表示されるようにユーザの前方に配置された透明体に投影し、第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、当該画像が単一の画像の虚像として表示されるように前記透明体に投影する投影装置とを有し、
前記投影装置は、
前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光が入射され、当該入射した光を反射して前記透明体に投影する主ミラーと、
前記プロジェクタが投射した画像の光路と部分的に重なる前記主ミラーと前記プロジェクタの間の位置に配置された、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、鏡状態に制御され、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、透明状態に制御される調光ミラーである分割ミラーと、
光を順送りする複数のミラーにより構成した光路延長光学系とを備え、
当該分割ミラーは、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光を、当該分割ミラーで遮られずに進む第1の光と、当該分割ミラーに入射した光の当該分割ミラーによる反射光である第2の光とに分割し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記分割ミラーで分割された第2の光の、前記分割ミラーから前記主ミラーに至る、前記分割ミラーと前記主ミラーとの間の距離より長い光路を形成し、
前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記主ミラーは、前記プロジェクタから入射した第1の光と、前記光路延長光学系から入射した前記第2の光を反射して前記透明体に投影し、
前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光の主ミラーに至る光路を遮らず、
前記第1の光は前記第1の画像の光を含み、前記第2の光は前記第2の画像の光を含むことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項4または5記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
当該ヘッドアップディスプレイ装置は、フロントウインドウを備えた自動車に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であり、
前記透明体は、前記自動車の前記フロントウインドウであることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイを備えた車載システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイを備えた車載システムとしては、単一のプロジェクタから投射された画像を、第1の画像と第2の画像に分割し、ユーザの前後方向についてユーザに近い位置に表れる第1の画像の虚像と、ユーザの前後方向についてユーザから遠い位置に表れる第2の画像の虚像によって、第1の画像と第2の画像とをユーザの前後方向についての距離が異なる位置に配置された二つの画像としてユーザに提示する第1の表示モードと、プロジェクタから投射された画像の全体を、ユーザの前後方向についてユーザに近い位置に表れる虚像によって一つの画像としてユーザに提示する第2の表示モードを備えた車載システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、この技術では、第1の表示モードでは、光軸方向の位置が異なるように配置した二つのスクリーンに、それぞれ第1の画像と第2の画像をプロジェクタから投射し、各スクリーンに投射された画像を、フロントウインドウに投影してユーザの方向に反射させることにより、第1の画像と第2の画像の虚像のユーザの前後方向についてのユーザからの距離を異ならせている。
また、この技術では、第2の表示モードでは、プロジェクタから画像の全体が単一のスクリーンに投射されるように、スクリーンを第1の表示モードにおける位置から移動させることにより、画像の全体を一つの画像としてユーザに提示している。
【0004】
また、この技術では、第1の表示モードにおいて、第1の画像によって車速等の表示を行い、第2の画像によって割り込み車両の警告の表示を行っている。
【0005】
また、自動車の運転に関する技術としては、自動車の自動運転と手動運転との自動切り替えを行う技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015- 11217号公報
【特許文献2】特開2001-199295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、自動車の自動運転と手動運転との自動切り替えを行う自動車に、上述した第1の表示モードと第2の表示モードを備えたヘッドアップディスプレイを備えた車載システムを適用した場合、自動運転中は、周辺の監視や自動車の運転操作などの自動車の運転に関わる作業は自動車側において行うため、第1の表示モードでユーザの前後方向についての距離が異なる二つの画像を用いて行っていた車速の表示や割り込み車両の警告の表示はユーザにとっては必ずしも必要な表示ではなくなる。
【0008】
また、自動運転中、運転作業から解放されたユーザは、娯楽等のため、ヘッドアップディスプレイを、テレビ番組などのコンテンツの表示に用いることが多い。そして、この場合、テレビ番組などのコンテンツは、第2の表示モードによって大画面で表示したいと思うことが一般的である。
【0009】
しかし、この場合には、自動車の自動運転と手動運転との間の切り替えの発生の度に、ユーザ自身が、第1の表示モードと第2の表示モードとの間の切り替えを行うという、煩雑な操作が必要となる。
【0010】
そこで、本発明は、プロジェクタから投射された画像を分割した第1の画像と第2の画像とをユーザの前後方向についての距離が異なる二つの画像としてユーザに提示する第1の表示モードと、プロジェクタから投射された画像の全体を一つの画像としてユーザに提示する第2の表示モードとを備えた車載システムにおいて、利用する表示モードを切り替えるためのユーザの操作の煩雑さを軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題達成のために、本発明は、自動運転と手動運転とを選択的に行う自動車に搭載される車載システムに、ヘッドアップディスプレイと、表示モード制御手段とを設けたものである。ここで、前記ヘッドアップディスプレイは、画像を投射するプロジェクタと、表示モードとして第1の表示モードと第2の表示モードを有し、第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第1の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的小さい第1の虚像として表示され、前記第2の画像がユーザの前後方向についてのユーザからの距離が比較的大きい第2の虚像として表示されるように投影し、第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、当該画像が単一の画像の虚像として表示されるように投影する投影装置とを備えている。そして、前記表示モード制御手段は、手動運転を行っていた前記自動車が自動運転を開始したときに、前記投影装置の前記表示モードを前記第2の表示モードに切り替える。
【0012】
ここで、このような車載システムは、前記表示モード制御手段において、自動運転を行っていた前記自動車が手動運転を開始したときに、前記投影装置の前記表示モードを前記第1の表示モードに切り替えるように構成することが好ましい。
【0013】
以上のような車載システムによれば、前記自動車が自動運転を開始するときに、前記投影装置の前記表示モードを、自動的に、自動運転時の表示に適した第2の表示モードに切り替えたり、前記自動車が手動運転を開始するときに、前記投影装置の前記表示モードを、自動的に、手動運転時の表示に適した第1の表示モードに切り替えたりすることができる。よって、自動運転/手動運転の状況に応じて、利用する表示モードを切り替えるためのユーザの操作の煩雑さを軽減することができる。
【0014】
また、以上の車載システムは、前記投影装置において、前記第2の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、当該画像が、前記第1の虚像とユーザの前後方向についてのユーザからの距離が同じ虚像として表示されるように投影するように構成してもよい。
【0015】
また、以上の車載システムは、当該車載システムに、前記プロジェクタが投射する画像を生成する投射画像生成手段を設け、前記表示モード制御手段において、前記投影装置の前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射する画像として上記第1の画像と前記第2の画像に振り分けられる二つの画面を含めた画像を生成するように、前記投射画像生成手段を制御し、前記投影装置の前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射する画像として単一の画面の画像を生成するように、前記投射画像生成手段を制御するようにしてもよい。
【0016】
また、以上の車載システムは、前記投影装置において、前記第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を分割した第1の画像と第2の画像を、前記第1の表示モードにおいて、前記プロジェクタが投射した画像を、ユーザの前方に配置された透明体に投影するように構成してもよい。
【0017】
また、この場合において、前記透明体は、前記自動車のフロントウインドウであってよい。
また、以上の車載システムにおいて、前記投影装置は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光が入射され、当該入射した光を反射して前記透明体に投影する主ミラーと、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光路と部分的に重なる前記主ミラーと前記プロジェクタの間の位置である使用位置に配置され、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光路と重ならない位置である待避位置に配置される分割ミラーと、光を順送りする複数のミラーにより構成した光路延長光学系とを含めて構成するようにしてもよい。ここで、当該分割ミラーは、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光を、当該分割ミラーで遮られずに進む第1の光と、当該分割ミラーに入射した光の当該分割ミラーによる反射光である第2の光とに分割し、前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記分割ミラーで分割された第2の光の、前記分割ミラーから前記主ミラーに至る、前記使用位置と前記主ミラーとの間の距離より長い光路を形成し、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記主ミラーは、前記プロジェクタから入射した第1の光と、前記記光路延長光学系から入射した前記第2の光を反射して前記透明体に投影し、前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光の主ミラーに至る光路を遮らず、前記第1の光は前記第1の画像の光を含み、前記第2の光は前記第2の画像の光を含む。
【0018】
または、以上の車載システムにおいて、前記投影装置は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光が入射され、当該入射した光を反射して前記透明体に投影する主ミラーと、前記プロジェクタが投射した画像の光路と部分的に重なる前記主ミラーと前記プロジェクタの間の位置に配置された、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、鏡状態に制御され、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、透明状態に制御される調光ミラーである分割ミラーと、光を順送りする複数のミラーにより構成した光路延長光学系とを含めて構成するようにしてもよい。ここで、当該分割ミラーは、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光を、当該分割ミラーで遮られずに進む第1の光と、当該分割ミラーに入射した光の当該分割ミラーによる反射光である第2の光とに分割し、前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記分割ミラーで分割された第2の光の、前記分割ミラーから前記主ミラーに至る、前記使用位置と前記主ミラーとの間の距離より長い光路を形成し、前記表示モードが前記第1の表示モードである期間中、前記主ミラーは、前記プロジェクタから入射した第1の光と、前記記光路延長光学系から入射した前記第2の光を反射して前記透明体に投影し、前記光路延長光学系は、前記表示モードが前記第2の表示モードである期間中、前記プロジェクタが投射した画像の光の主ミラーに至る光路を遮らず、前記第1の光は前記第1の画像の光を含み、前記第2の光は前記第2の画像の光を含む。
【0019】
以上のような分割ミラーと光路延長光学系とを備えた投影装置によれば、光の反射によって第2の画像の光路の延長を行うので、第2の画像の光路を第1の画像の光路よりも大きく延長することが容易となる。そして、この結果、第1の画像と第2の画像の虚像のユーザの前後方向についてのユーザからの距離の差を大きく設定したり、第2の画像の虚像をユーザの前後方向についてのユーザからの充分に遠い位置に生成したりすることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、プロジェクタから投射された画像を分割した第1の画像と第2の画像とをユーザの前後方向についての距離が異なる二つの画像としてユーザに提示する第1の表示モードと、プロジェクタから投射された画像の全体を一つの画像としてユーザに提示する第2の表示モードとを備えた車載システムにおいて、利用する表示モードを切り替えるためのユーザの操作の煩雑さを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイの表示のようすを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る表示モード制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る車載システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは自動車に搭載されているシステムであり、図示するように、車載システムは、ヘッドアップディスプレイ1、カメラやGPS受信器や放送受信器や記憶装置やディスクドライブや入力装置などの各種の周辺装置2、制御装置3を備えている。また、 車載システムは、地図を用いた経路案内などを行うナビゲーションシステム4や、放送受信器で受信したTV番組やディスクドライブに装着されたディスクや記憶装置に格納されている楽曲やビジュアルコンテンツの再生出力などを行うエンターティメントシステム5や、自動車の車速等の自動車の運転に関わる各種状態の表示出力を行う状態提示システム6などの制御装置3の管理下で動作する複数のアプリケーションシステムを備えている。
【0023】
そして、制御装置3は、自動車の自動運転と手動運転とを選択的に行う自動運転システム100に接続している。
ここで、自動運転システム100は、運転モードとして自動運転モードと手動運転モードとを備えており、自動運転モードは、操舵、制動、加速などの各種動作の全て自動制御を行う運転モードであり、手動運転モードは、操舵、制動、加速などの各種動作の全ての自動制御、または、当該種動作の一部の動作の自動制御を行わない運転モードである。
【0024】
そして、自動運転システム100は、運転モードを、ユーザの指示により、または、走行状況や周囲状況に応じて切り替えながら、運転モードに応じた形態で自動車の操舵、制動、加速などの各種動作の自動制御を行う。
【0025】
なお、運転モードとして、手動運転モードが設定されているときには、ユーザは自身で周囲の交通状況を監視し、自動運転システム100が自動制御を行わない自動車の動作についてはユーザ自身が操作を行う必要がある。一方、運転モードとして、自動運転モードが設定されているときには、ユーザは自動車の操作を行う必要はなく、周囲の交通状況を監視する必要からも解放される。
【0026】
次に、
図2a1、b1に示すように、ヘッドアップディスプレイ1は、運転席の前方のフロントウインドウ101に下方から画像を投影するディスプレイであり、フロントウインドウ101に投影された映像は、
図2a2、b2に示すように、前方の景色に重畳した形態で、運転姿勢をとっている運転者に視認される。
【0027】
ここで、ヘッドアップディスプレイ1は、制御装置3から切り替え可能な表示モードとして、遠近2画面モードと1画面モードとを備えている。
そして、遠近2画面モードでは、
図2a1、a2に示すように、ユーザの前後方向についてユーザに近い位置に表れる虚像201と、ユーザの前後方向についてユーザから遠い位置に表れる虚像202によって、第1の画像211と第2の画像212とをユーザの前後方向についての距離が異なる位置に配置された二つの画像としてユーザに提示する。
【0028】
また、1画面モードでは、
図2b1、b2に示すように、ユーザの前後方向についてユーザに近い位置に表れる虚像203によって、第1画像や第2画像よりもサイズの大きな一つの画像213をユーザに提示する。
【0029】
次に、ヘッドアップディスプレイ1の内部構成について示す。
図3aに示すように、ヘッドアップディスプレイ1は、二次元の画像を投射するプロジェクタ11と、プロジェクタ11から投射された画像をフロントウインドウ101に投影する投影光学系12とを備えている
そして、投影光学系12は、主反射ミラー121、分割ミラー122、第1光路延長ミラー123、第2光路延長ミラー124、合流ミラー125を備えている。
【0030】
また、投影光学系12は、分割ミラー122を回転移動する分割ミラー回転機構126と、合流ミラー125を回転移動する合流ミラー回転機構127とを備えており、制御装置3は、分割ミラー回転機構126と合流ミラー回転機構127によって、分割ミラー122と合流ミラー125を、
図3a1に示す位置から
図3b1に示す位置との間で回転移動することができる。
【0031】
さて、遠近2画面表示モードの期間中、制御装置3は、分割ミラー122と合流ミラー125を、
図3a1に示す位置に設定する。
図3a1に示した遠近2画面表示モードの状態では、分割ミラー122は、プロジェクタ11から投射された画像の光路中に配置さて、この分割ミラー122によって、プロジェクタ11から投射された画像の光路から、画像の下方の部分の光路が分離される。プロジェクタ11から投射された画像の、下方の部分として分離されなかった残りの上方の部分は第1画像として主反射ミラー121に投射され、主反射ミラー121で反射して、フロントウインドウ101の下方部分に投影される。
【0032】
一方、分割ミラー122で分離された下方の部分には第2画像が含まれており、この第2画像は、第1光路延長ミラー123、第2光路延長ミラー124、合流ミラー125の順に反射されて、主反射ミラー121に投射され、主反射ミラー121で反射して、フロントウインドウ101の、第1画像の投影位置の上方の位置に投影される。
【0033】
なお、
図2a1は、第1画像と第2画像の光路を示している。
この結果、プロジェクタ11からフロントウインドウ101の投影位置までの光路長は、第2画像が第1画像より長いので、第2画像の虚像の結像位置は第1画像の虚像の結像位置よりもフロントウインドウ101の前方方向に遠い位置となり、第1の画像と第2の画像とがユーザの前後方向についての距離が異なる位置に配置された二つの画像としてユーザに提示される。
【0034】
したがって、たとえば、プロジェクタ11によって
図3a2に示した第1画像211と第2画像212を含む画像を投射することにより、
図2a2に示したような表示をヘッドアップディスプレイ1によって行うことができる。
【0035】
なお、プロジェクタ11が投射する画像は、第1画像と第2画像以外の領域は非発光(黒色)の領域とし、フロントウインドウ101の第1画像に重なる位置に、分割ミラー122、第1光路延長ミラー123、第2光路延長ミラー124、合流ミラー125、主反射ミラー121のルートを辿った上記下方の部分の第2画像外の部分の光が投影されないようにする。
【0036】
次に、1画面表示モードの期間中、制御装置3は、分割ミラー122と合流ミラー125を、
図3b1に示す位置に設定する。
図3bに示した1画面表示モードの状態では、分割ミラー122と合流ミラー125は、プロジェクタ11から投射された画像の光路外に配置され、プロジェクタ11から投射された画像は、そのまま、主反射ミラー121に投射され、主反射ミラー121で反射して、フロントウインドウ101に投影される。
【0037】
この結果、プロジェクタ11から投射された画像全体が、ユーザの前後方向についてユーザに近い位置に配置された一つの画像としてユーザに提示される。
したがって、たとえば、プロジェクタ11によって
図3b2に示した画像213を投射することにより、
図2b2に示したような表示をヘッドアップディスプレイ1によって行うことができる。
【0038】
次に、制御装置3が行う表示モード制御処理について説明する。
図4に、この表示モード制御処理の手順を示す。
図示するように、表示モード制御処理において制御装置3は、自動運転システム100の運転モードが手動運転モードが否かを調べ(ステップ402)、手動運転モードである場合、遠近2画面モードを設定して、分割ミラー回転機構126と合流ミラー回転機構127を制御して、分割ミラー122と合流ミラー125を
図3a1の位置にセットする(ステップ404)。
【0039】
また、遠近2画面モードを設定したならば、プロジェクタ11に画像を投射させる画面を、遠近2画面モード用の画面、すなわち、
図3a2に示したような第1画像と第2画像とを含む画面に設定し、設定した画面の生成とプロジェクタ11への出力を開始する(ステップ406)。ここで、遠近2画面モードを設定したときに、プロジェクタ11に投射させる画像を、どのような画面の画像とするかは予め設定しておく。すなわち、たとえば、遠近2画面モードを設定したときにプロジェクタ11に画像を投射させる画面を、
図3a2に示すような、第1画像211を、ナビゲーションシステム4が出力する案内地図画像を中央に配置し、その左右に、状態提示システム6が出力する自動車の車速やエンジン回転数を表す画像を配置したものとし、第2画像212を、カメラで撮影した自車前方の画像から状態提示システム6が認識した車線を表す図形を、実際の風景上に重畳して表す画像とした画面とするように設定しておく。
【0040】
そして、自動運転システム100の運転モードの切り替えの発生を監視し(ステップ408)、運転モードの切り替えが発生したならばステップ402からの処理に戻る
一方、自動運転システム100の運転モードが手動運転モードでない場合、すなわち、運転モードが自動運転モードである場合には(ステップ402)1画面モードを設定して、分割ミラー回転機構126と合流ミラー回転機構127を制御して、分割ミラー122と合流ミラー125を
図3b1の位置にセットする(ステップ410)、
また、1画面モードを設定したならば、プロジェクタ11に画像を投射させる画面を、1画面モード用の画面、すなわち、
図3b2に示したような画面213に設定し、設定した画面の生成とプロジェクタ11への出力を開始する(ステップ412)。
【0041】
ここで、1画面モードを設定したときに、プロジェクタ11に投射させる画像を、どのような画面の画像とするかは予め設定しておく。すなわち、たとえば、1画面モードを設定したときにプロジェクタ11に画像を投射させる画面を、
図3b2に示すような、エンターティメントシステム5が出力する画面213とするように設定しておく。なお、
図3b2は、エンターティメントシステム5が出力しているTV番組の表示画面がプロジェクタ11に投射させる画像の画面となっている場合を示している。
【0042】
ただし、1画面モードを設定したときに、プロジェクタ11に画像を投射させる画面は、たとえば、
図5aに示すように、遠近2画面モードで第1画像として表示していた画像に含まれる表示要素を、拡大して表した画面213とするなど、他の条件に従って定めるようにしてもよい。
【0043】
そして、自動運転システム100の運転モードの切り替えの発生を監視し(ステップ408)、運転モードの切り替えが発生したならばステップ402からの処理に戻る。
以上、制御装置3が行う表示モード制御処理について説明した。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態では、ヘッドアップディスプレイ1において、分割ミラー回転機構126と合流ミラー回転機構127によって、分割ミラー122と合流ミラー125とを回転移動させることにプロジェクタ11の投射した画像の下方部分の光路を遠近2画面モードと1画面モードとで切り替えるようにしたが、これは、分割ミラー122と合流ミラー125とを平行移動する機構などの他の機構によって、分割ミラー122と合流ミラー125とを移動することによって、プロジェクタ11の投射した画像の下方部分の光路を遠近2画面モードと1画面モードとで切り替えるようにしてもよい。
【0044】
または、分割ミラー122と合流ミラー125として鏡状態と透明状態を切り替えられる調光ミラーを用い、遠近2画面モードでは分割ミラー122と合流ミラー125とを
図3a1に示すように鏡状態として使用し、1画面モードでは、
図5bに示すように、分割ミラー122と合流ミラー125とを透明状態として使用することにより、プロジェクタ11の投射した画像の下方部分の光路を遠近2画面モードと1画面モードとで切り替えるようにしてもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、自動車が自動運転と手動運転とを切り替えた際に、自動的に、前記投影装置の前記表示モードを、手動運転が開始されるときには手動運転時の表示に適した遠近2画面モードに、自動運転が開始されるときには自動運転時の表示に適した1画面モードに切り替えることができる。よって、自動車の自動運転と手動運転との間の切り替えの発生の度に、ユーザ自身が、遠近2画面モードと1画面モードとの間の切り替えを行う必要が無くなり、自動運転/手動運転の状況に応じて、利用する表示モードを切り替えるためのユーザの操作の煩雑さを軽減することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、遠近2画面モード時には、分割ミラー122、第1光路延長ミラー123、第2光路延長ミラー124、合流ミラー125による光の反射によって第2画像の光路の延長を行うので、第2画像の光路を第1画像の光路よりも大きく延長することが容易となる。そして、この結果、第1画像と第2画像の虚像のユーザの前後方向についてのユーザからの距離の差を大きく設定したり、第2の画像の虚像をユーザの前後方向についてのユーザからの充分に遠い位置に生成したりすることができるようになる。
【符号の説明】
【0047】
1…ヘッドアップディスプレイ、2…周辺装置、3…制御装置、4…ナビゲーションシステム、5…エンターティメントシステム、6…状態提示システム、11…プロジェクタ、12…投影光学系、100…自動運転システム、101…フロントウインドウ、121…主反射ミラー、122…分割ミラー、123…第1光路延長ミラー、124…第2光路延長ミラー、125…合流ミラー、126…分割ミラー回転機構、127…合流ミラー回転機構。