【実施例】
【0040】
以下において本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
1.ゼオライト種結晶の作製
特許文献 国際公開第2010/090049号に記載の方法に従って、平均粒子径179nmのDDR型ゼオライト結晶を含むpH11.7のDDR型ゼオライト結晶分散溶液を調製した。
【0042】
次に、純水を加えてDDR型ゼオライト結晶を7wt%含むよう調整したDDR型ゼオライト結晶分散溶液500gにエチレンジアミン(以下、「EDA」という。)30gを加えて、DDR型ゼオライト結晶を含むpH11.9のシリカ不飽和アルカリ溶液を調整した。シリカ不飽和アルカリ溶液におけるシリカ飽和度は、2%以下であった。このDDR型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を用いて、ビーズミルで60分湿式粉砕した。そして、純水を加えながらDDR型ゼオライト種結晶を回収することによって、2.9wt%の固形分を含むDDR型ゼオライト種結晶分散溶液(シリカ不飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0043】
2.DDR型ゼオライト粉末の合成
EDA6.3gに1−アダマンタンアミン(以下、「1−ADA」という。)1.0gを加えて完全に溶解した。そして、純水169.1gにDDR型ゼオライト種結晶分散溶液52.1gとコロイダルシリカ26.2gを加えて軽く攪拌し、さらに1−ADAを溶解したEDAを加えて60分攪拌することによって、原料溶液(シリカ飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0044】
次に、原料溶液を100mlのテフロン(登録商標)容器に移し、熱風乾燥機を用いて水熱合成(120℃、20時間)することによって、DDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0045】
次に、実施例1に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、ナノトラック型式UPA−EX150)で測定したところ128nmであった。また、実施例1に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相をX線回折装置(リガク社製、MiniFlex)にて確認したところDDR型であった。
【0046】
(実施例2)
1.ゼオライト種結晶の作製
実施例1と同じ手法によって、平均粒子径183nmのDDR型ゼオライト結晶を含むpH12.1のDDR型ゼオライト結晶分散溶液を調製した。
【0047】
次に、純水を加えてDDR型ゼオライト結晶を7wt%含むよう調整したDDR型ゼオライト結晶分散溶液500gにEDA30gを加えて、DDR型ゼオライト結晶を含むpH12.2のシリカ不飽和アルカリ溶液を調整した。シリカ不飽和アルカリ溶液におけるシリカ飽和度は、1%以下であった。このDDR型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を用いて、ビーズミルで90分湿式粉砕した。そして、純水を加えながらDDR型ゼオライト種結晶を回収することによって、3.9wt%の固形分を含むDDR型ゼオライト種結晶分散溶液(シリカ不飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0048】
2.DDR型ゼオライト粉末の合成
EDA3.3gに1−ADA0.5gを加えて完全に溶解した。そして、純水91.2gにDDR型ゼオライト種結晶分散溶液19.4gとコロイダルシリカ13.1gを加えて軽く攪拌し、さらに1−ADAを溶解したEDAを加えて60分攪拌することによって、原料溶液(シリカ飽和アルカリ溶液)を調製した。そして、実施例1と同じ手法でDDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0049】
次に、実施例1と同じ手法によって、実施例2に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ116nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、実施例2に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相がDDR型であることを確認した。
【0050】
(実施例3)
1.ゼオライト種結晶の作製
実施例1と同じ手法によって、平均粒子径173nmのDDR型ゼオライト結晶を含むpH11.4のDDR型ゼオライト結晶分散溶液を調製した。
【0051】
次に、純水を加えてDDR型ゼオライト結晶を7wt%含むよう調整したDDR型ゼオライト結晶分散溶液500gに1MのNaOH水溶液20gを加えて、DDR型ゼオライト結晶を含むpH13.4のシリカ不飽和アルカリ溶液を調整した。シリカ不飽和アルカリ溶液におけるシリカ飽和度は、0.1%以下であった。このDDR型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を用いて、ビーズミルで90分湿式粉砕した。そして、純水を加えながらDDR型ゼオライト種結晶を回収することによって、3.8wt%の固形分を含むDDR型ゼオライト種結晶分散溶液(シリカ不飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0052】
2.DDR型ゼオライト粉末の合成
EDA3.3gに1−ADA0.5gを加えて完全に溶解した。そして、純水90.0gにDDR型ゼオライト種結晶分散溶液20.6gとコロイダルシリカ13.1gを加えて軽く攪拌し、さらに1−ADAを溶解したEDAを加えて60分攪拌することによって、原料溶液(シリカ飽和アルカリ溶液)を調製した。そして、水熱合成を160℃で16時間行ったこと以外は、実施例1と同じ手法でDDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0053】
次に、実施例1と同じ手法によって、実施例3に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ109nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、実施例3に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相がDDR型であることを確認した。
【0054】
(実施例4)
1.ゼオライト種結晶の作製
実施例1と同じ手法によって、平均粒子径173nmのDDR型ゼオライト結晶を含むpH11.4のDDR型ゼオライト結晶分散溶液を調製した。
【0055】
次に、純水を加えてDDR型ゼオライト結晶を7wt%含むよう調整したDDR型ゼオライト結晶分散溶液500gに5MのNaOH水溶液20gを加えて、pH13.9のDDR型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を調整した。シリカ不飽和アルカリ溶液におけるシリカ飽和度は、0.1%以下であった。このDDR型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を用いて、ビーズミルで90分湿式粉砕した。そして、純水を加えながらDDR型ゼオライト種結晶を回収することによって、3.6wt%の固形分を含むDDR型ゼオライト種結晶分散溶液(シリカ不飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0056】
2.DDR型ゼオライト粉末の合成
1MのNaOH3.3gに1−ADA0.5gを加えて溶解した。そして、純水90.0gにDDR型ゼオライト種結晶分散溶液20.6gとコロイダルシリカ13.1gを加えて軽く攪拌し、さらに1−ADAを溶解した1MNaOHを加えて60分攪拌することによって、原料溶液(シリカ飽和アルカリ溶液)を調製した。そして、実施例1と同じ手法でDDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0057】
次に、実施例1と同じ手法によって、実施例4に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ101nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、実施例4に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相がDDR型であることを確認した。
【0058】
(実施例5)
1.ゼオライト種結晶の作製
純水に、40wt%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(以下、TPAOH)水溶液とテトラプロピルアンモニウムブロミド(以下、TPABr)を加え、透明になるまで攪拌した。そこに、シリカ源となるコロイダルシリカ(SiO
230wt%溶液)を加えて攪拌し、組成比が1SiO
2:0.36TPAOH:0.36TPABr:15H
2Oの原料溶液を調整した。この原料溶液をテフロン(登録商標)容器に移し、熱風乾燥機を用いて水熱合成(110℃、12時間)することによって、平均粒子径が204nmのMFI型ゼオライト結晶を含むpH12.3のMFI型ゼオライト結晶分散溶液を調製した。
【0059】
次に、純水を加えてMFI型ゼオライト結晶を7wt%含むよう調整したMFI型ゼオライト結晶分散溶液500gに1MのNaOH水溶液50gを加えて、pH13.6のMFI型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を調整した。シリカ不飽和アルカリ溶液におけるシリカ飽和度は、0.1%以下であった。このMFI型ゼオライト結晶を含むシリカ不飽和アルカリ溶液を用いて、ビーズミルで45分湿式粉砕した。そして、純水を加えながらMFI型ゼオライト種結晶を回収することによって、3.3wt%の固形分を含むMFI型ゼオライト種結晶分散溶液(シリカ不飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0060】
2.MFI型ゼオライト粉末の合成
5MNaOH水溶液56.77gにTPABr2.01gと硫酸アルミニウム0.22g、コロイダルシリカ(SiO
230wt%溶液)6.00gを加えて攪拌した後、MFI型ゼオライト種結晶分散溶液を15.00g加え、60分攪拌することによって、原料溶液(シリカ飽和アルカリ溶液)を調製した。
【0061】
次に、シリカ飽和アルカリ溶液を100mlのテフロン(登録商標)容器に移し、熱風乾燥機を用いて水熱合成(160℃、20時間)することによって、MFI型ゼオライト粉末を合成した。
【0062】
次に、実施例1と同じ手法によって、実施例5に係るMFI型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ154nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、実施例5に係るゼオライト粉末の結晶相がMFI型であることを確認した。
【0063】
(比較例1)
EDAを加えずにpH10.4で湿式粉砕することによってDDR型ゼオライト種結晶分散溶液を調製した以外は実施例1と同じ工程にてDDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0064】
実施例1と同じ手法によって、比較例1に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ148nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、比較例1に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相がDDR型であることを確認した。
【0065】
(比較例2)
EDAを加えずにpH10.2で湿式粉砕することによってDDR型ゼオライト種結晶分散溶液を調製した以外は実施例2と同じ工程にてDDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0066】
実施例1と同じ手法によって、比較例2に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ137nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、比較例2に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相がDDR型であることを確認した。
【0067】
(比較例3)
5MNaOHを加えずにpH10.1で湿式粉砕することによってDDR型ゼオライト種結晶分散溶液を調製した以外は実施例4と同じ工程にてDDR型ゼオライト粉末を合成した。
【0068】
実施例1と同じ手法によって、比較例3に係るDDR型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ121nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、比較例3に係るDDR型ゼオライト粉末の結晶相がDDR型であることを確認した。
【0069】
(比較例4)
1MNaOHを加えずにpH10.6で湿式粉砕することによってMFI型ゼオライト種結晶分散溶液を調製した以外は、実施例5と同じ工程にてMFI型ゼオライト粉末を合成した。
【0070】
実施例1と同じ手法によって、比較例4に係るMFI型ゼオライト粉末の平均粒子径を測定したところ178nmであった。また、実施例1と同じ手法によって、比較例4に係るゼオライト粉末の結晶相がMFI型であることを確認した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、シリカ不飽和アルカリ溶液を用いてゼオライト結晶を湿式粉砕した以外は比較例1と同じ条件で水熱合成が行われた実施例1では、ゼオライト粉末の平均粒径を小さくすることができた。これは、ゼオライト結晶の粉砕に伴って生成されるアモルファス成分がシリカ不飽和アルカリ溶液に溶解することによって、ゼオライト種結晶がアモルファス成分に取り込まれて凝集することを抑制できたことと、アルカリによって、ゼオライト種結晶にゼータ電位を生じさせて引き離された状態に保持できたことによるものである。
【0073】
また、実施例2,3と比較例2の比較、実施例4と比較例3の比較、及び実施例5と比較例4の比較からも、シリカ不飽和アルカリ溶液を用いてゼオライト結晶を湿式粉砕することによってゼオライト粉末の平均粒径を小さくできることが確認された。
【0074】
また、実施例1,2と実施例3,4の比較から、湿式粉砕に用いるアルカリ源に関わらずゼオライト粉末の平均粒径を小さくできることが確認された。また、ゼオライト粉末の平均粒径は、EDAよりもNaOHを用いた方が、又、pHが高い方が、小さくなりやすいことが分かった。
【0075】
また、実施例1と実施例2の比較から、湿式粉砕時間を90分以上とすることによってゼオライト粉末の平均粒径をより小さくできることが確認された。
【0076】
また、実施例3と実施例4の比較から、湿式粉砕に用いるアルカリ源の濃度を高くすることによってゼオライト粉末の平均粒径をより小さくできることが確認された。
【0077】
また、MFI型ゼオライト粉末を合成した実施例5でも良好な結果を得ることができたことから、本発明の製造方法がDDR型ゼオライト粉末以外にも有効であることが確認された。