(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸捕捉剤の有機ホスファイト100モル当たり0.05〜13の酸中和当量が、工程(f)でまたはその後に添加され、工程(f)の後の前記有機ホスファイトの前記亜リン酸含有量が30ppm以下である、請求項3〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態では、本発明のプロセスは、亜リン酸を含む、再結晶化または粉末化された固体有機ホスファイト化合物を受け取ることと、その固体有機ホスファイト化合物を、芳香族炭化水素、飽和脂肪族炭化水素、またはこれらの混合物を含む炭化水素溶媒に溶解させることと、溶液から未溶解の亜リン酸を除去することと、を含む。このようにして得られた有機ホスファイトは、いくつかの実施形態では30ppm以下、いくつかの実施形態では10ppm以下、いくつかの実施形態では5ppm以下の酸含有量(例えば、亜リン酸含有量)を有する。いくつかの実施形態では、未溶解の亜リン酸を濾過によって除去する一方で、他の実施形態では、未溶解の亜リン酸を遠心分離によって除去する。いくつかの実施形態では、固体有機ホスファイト化合物を水及び遊離アミンの非存在下で炭化水素溶媒に溶解させる。
【0009】
いくつかの実施形態では、プロセスは、(例えば、未溶解の亜リン酸の除去後に)炭化水素溶液中の有機ホスファイトを濃縮することと、炭化水素溶液中の濃縮された有機ホスファイトを貧溶媒と組み合わせることと、得られた固体を回収することと、を更に含む。いくつかのそのような実施形態では、炭化水素溶液中の有機ホスファイトは、50重量%以下の残留炭化水素含有量まで濃縮される。いくつかの実施形態では、プロセスは、得られた固体を少なくとも30日間保存することを含み、保存された得られた固体は、30日後に25ppm以下の亜リン酸を含む。貧溶媒が、濃縮された有機ホスファイトと組み合わされるいくつかの実施形態では、その貧溶媒は、炭化水素溶液中の濃縮された有機ホスファイトに添加され得る。いくつかのそのような実施形態で使用され得る貧溶媒の例には、イソプロパノール及びt−ブタノールが含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態に従って精製された有機ホスファイト化合物を回収した後、酸捕捉剤の配位子100モル当たり0.05〜13の酸中和当量が生成物に添加される。
【0011】
有機ホスファイト化合物は、いくつかの実施形態では、以下のうちの少なくとも1つを含む:
【0013】
本発明のいくつかの実施形態に従って回収された有機ホスファイトは、ヒドロホルミル化プロセスに提供され得る。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスのいくつかの実施形態の開始時に提供される亜リン酸を含む固体有機ホスファイト化合物は、少なくとも30日間保存されている。
【0014】
元素周期表及びその中の様々な族への全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991−1992)CRC Press,at page I−11に所載の版に対するものである。
【0015】
反対の記述、または文脈からの暗示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての試験方法は、本出願の出願日時点で最新のものである。例えば、反対の記述がない限り、相対量が「百万分率」、「ppm」、「十億分率」、「ppb」、または「部」として提供される場合、そのような量は質量基準である。米国特許実務のために、参照されるあらゆる特許、特許出願、または公開の内容は、その全体が参照により組み込まれるか、(または、その相当する米国版が、同じように参照により組み込まれ、)特に、(本開示において具体的に示されるいかなる定義とも矛盾しない程度に)定義の開示、及び当技術分野における一般知識に関して、参照により組み込まれる。
【0016】
反対の記述、または文脈からの暗示がない限り、本明細書に記載の全ての手順は、空気のない条件下で行われるべきである。空気のない状態(例えば、窒素またはアルゴンなどでのシステムのパージ)を達成するための任意の好適な手段が採用され得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、交換可能に使用される。用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、及びこれらの変形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲内に現れる場合、限定的な意味を有しない。それ故、例えば、「1つの(a)」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、その組成物が、「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈され得る。
【0018】
また本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、数値範囲は、当業者の理解と同様に、その範囲内に含まれる全ての可能な部分範囲を含み、支持することを意図していることが理解されるであろう。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55などを示唆することを意図している。また本明細書において、数値範囲及び/または数値の記述は、特許請求の範囲におけるそのような列挙を含めて、用語「約」を含むように解釈され得る。そのような場合には、用語「約」は、本明細書で記述されたものと実質的に同じ数値範囲及び/または数値を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロホルミル化」は、一酸化炭素、水素、ならびに遷移金属及び有機ホスファイト配位子から構成される触媒を使用して、1種以上のオレフィン化合物を1種以上のアルデヒドに転化することを含む全てのプロセスを含むがこれに限定されないことが企図される。
【0020】
本発明の目的のため、用語「芳香族炭化水素」は、炭素及び水素原子から構成され、かつ少なくとも1つのベンゼン部分を含有する全ての許容される化合物を含むことが企図される。そのようなベンゼン部分は、置換または非置換であり得る。本明細書で使用される場合、用語「芳香族炭化水素」は、窒素、硫黄、及び酸素部分を含まない。芳香族炭化水素の例には、トルエン、キシレンなどが含まれる。好適な化合物は、5ε
r(ω)(20℃で)以下の誘電率を有する。
【0021】
本発明の目的のため、用語「飽和脂肪族炭化水素」は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどのアルカンを含むことが企図される。
【0022】
本発明の目的のため、用語「炭化水素溶媒」は、芳香族炭化水素ならびに芳香族炭化水素及び飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を含むことが企図される。炭化水素溶媒は、有機ホスファイトの溶解を提供するために採用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「貧溶媒」は、相当な量の固体加水分解性有機ホスファイトを溶解させることができない極性溶媒及びその混合物を含むことが企図される。好適な貧溶媒は、15ε
r(ω)(20℃で)より高い誘電率を有するが、依然として炭化水素溶媒と混和性である。例には、アセトニトリル及びアルコール(イソプロパノール、第三級ブタノールなど)などが含まれる。貧溶媒は、有機ホスファイトの結晶化を容易にするために、または粉末化溶媒として採用される。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「粉末化(trituration)」は、有機ホスファイトまたは有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮物を貧溶媒と組み合わせ、完全に混合するプロセスを表す。再結晶化とは対照的に、粉末化は、有機ホスファイトの相当な溶解を伴わず、むしろ貧溶媒中で有機ホスファイトをスラリー化することを含む。粉末化は、有機ホスファイトに対して様々な割合の貧溶媒を使用して異なる温度で行われ得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「置換」は、他に示されていない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。広範な態様において、許容される置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族、ならびに非芳香族の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、炭素数が1〜20個またはそれ以上、好ましくは1〜12の範囲であり得る、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、ならびにヒドロキシル及びハロゲンが含まれる。許容される置換基は、1つ以上であってもよく、同じかまたは適切な有機化合物の場合には異なっていてもよい。本発明は、決して、有機化合物の許容される置換基により限定されることを意図するものではない。
【0026】
加水分解性有機リン配位子は、少なくとも1つのP−Z結合を含有する三価のリン化合物であり、Zは酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素である。有機ホスファイトは、少なくとも1つのP−Z結合(Zは酸素である)を含有する三価のリン化合物である加水分解性有機リン配位子の一種である。加水分解性有機リン配位子の例には、ホスファイト、ホスフィノ−ホスファイト、ビスホスファイト、ホスホナイト、ビスホスホナイト、ホスフィナイト、ホスホロアミダイト、ホスフィノ−ホスホロアミダイト、ビスホスホロアミダイト、フルオロホスファイトなどが含まれるがこれらに限定されない。配位子はキレート構造を含んでもよい、ならびに/またはポリホスファイト、ポリホスホロアミダイトなどのように複数のP−Z部分、及びホスファイト−ホスホロアミダイト、フルオロホスファイト−ホスファイトなどのように混合P−Z部分を含有してもよい。ホスファイト配位子の例には、モノ有機ホスファイト、ジ有機ホスファイト、トリ有機ホスファイト、及び有機ポリホスファイト化合物が含まれる。そのような有機リン化合物及びそれらを調製するための方法は、当技術分野においてよく知られている。加水分解性有機リン配位子の混合物が採用され得る。
【0027】
代表的なモノ有機ホスファイトには、式:
【0029】
(式中、R
10は、4〜40個またはそれ以上の炭素原子を含有する置換または非置換の三価炭化水素ラジカル、例えば、三価非環式及び三価環式ラジカル、例えば、三価アルキレンラジカル、例えば、1,2,2−トリメチロールプロパンなどに由来するもの、または三価シクロアルキレンラジカル、例えば、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどに由来するものを表す)を有するものが含まれ得る。そのようなモノ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第4,567,306号において更に詳細に記載されていることが見出され得る。
【0030】
代表的なジ有機ホスファイトには、式:
【0032】
(式中、R
20は、4〜40個またはそれ以上の炭素原子を含有する置換または非置換の二価炭化水素ラジカルを表し、Wは、1〜18個またはそれ以上の炭素原子を含有する置換または非置換の一価炭化水素ラジカルを表す)を有するものが含まれ得る。
【0033】
上記式(II)においてWで表される代表的な置換及び非置換の一価炭化水素ラジカルには、アルキル及びアリールラジカルが含まれる一方で、R
20によって表される代表的な置換及び非置換の二価炭化水素ラジカルには、二価非環式ラジカル及び二価芳香族ラジカルが含まれる。例示的な二価非環式ラジカルには、例えば、アルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−S−アルキレン、及びシクロアルキレンラジカルが含まれる。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えば、米国特許第3,415,906号及び同第4,567,302号により詳細に開示されているような二価アルキレンラジカルである。例示的な二価芳香族ラジカルには、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−S−アリーレン、アリーレン−S−アルキレンなどが含まれる。より好ましくは、R
20は、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号においてより十分に開示されているような二価芳香族ラジカルである。
【0034】
ジ有機ホスファイトのより好ましい種類の代表例は、式:
【0036】
(式中、Wは、上記に定義した通りであり、各Arは、同じかまたは異なり、かつ置換または非置換アリールラジカルを表し、各yは、同じかまたは異なり、かつ0または1の値であり、Qは、−C(R
33)
2−、−O−、−S−、Si(R
35)
2、及び−O−から選択される二価架橋基を表し、各R
33は、同じかまたは異なり、かつ水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、及びアニシルを表し、各R
35は、同じかまたは異なり、かつ水素またはメチルラジカルを表し、mは、0または1の値を有する)のものである。そのようなジ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号においてより詳細に記載されている。
【0037】
代表的なトリ有機ホスファイトには、式:
【0039】
(式中、各R
46は、同じかまたは異なり、かつ置換または非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1〜24個の炭素原子を含有し得る、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、及びアラルキルラジカルである)を有するものが含まれる。例示的なトリ有機ホスファイトには、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイトなど、例えばトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)フェニルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)(4−スルホニルフェニル)ホスファイトなどが含まれる。最も好ましいトリ有機ホスファイトは、トリフェニルホスファイトである。そのようなトリ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第3,527,809号及び同第5,277,532号においてより詳細に記載されている。
【0040】
代表的な有機ポリホスファイトは、2個以上の第三級(三価)リン原子を含有し、これには、式:
【0042】
(式中、Xは、2〜40個の炭素原子を含有する置換または非置換のn価有機架橋ラジカルを表し、各R
57は、同じかまたは異なり、かつ4〜40個の炭素原子を含有する二価有機ラジカルを表し、各R
58は、同じかまたは異なり、かつ1〜24個の炭素原子を含有する置換または非置換一価炭化水素ラジカルを表し、a及びbは、同じかまたは異なってもよく、かつそれぞれが、0〜6の値を有するが、ただし、a+bの合計が、2〜6であり、nがa+bになどしいことを条件とする)を有するものが含まれる。aが2以上の値を有するとき、各R
57ラジカルは、同じかまたは異なってもよいことを理解されたい。各R
58ラジカルはまた、任意の所与の化合物において、同じかまたは異なってもよい。
【0043】
上記でXによって表される代表的なn価(好ましくは、二価)有機架橋ラジカル、及びR
57によって表される代表的な二価有機ラジカルには、非環式ラジカル及び芳香族ラジカルの両方、例えば、アルキレン、アルキレン−Q
m−アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−(CH
2)
y−Q
m−(CH
2)
y−アリーレンラジカルなどが含まれ、式中、各Q、y、及びmは、式(III)において上記で定義される通りである。上記X及びR
57で表されるより好ましい非環式ラジカルは、二価アルキレンラジカルであり、一方で上記X及びR
57で表されるより好ましい芳香族ラジカルは、例えば、米国特許第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,179,055号、同第5,113,022号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,264,616号、同第5,364,950号、及び同第5,527,950号でより十分に開示されているような、二価アリーレン及びビスアリーレンラジカルである。上記の各R
58ラジカルで表される代表的な好ましい一価炭化水素ラジカルには、アルキル及び芳香族ラジカルが含まれる。
【0044】
例示的な好ましい有機ポリホスファイトには、以下の式(VI)〜(VIII):
【0046】
(式中、式(VI)〜(VIII)の各R
57、R
58、及びXは、式(V)に関して上記で定義されたものと同じである)のものなどのビスホスファイトが含まれ得る。好ましくは、R
57及びXはそれぞれ、アルキレン、アリーレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、及びビスアリーレンから選択される二価炭化水素ラジカルを表す一方で、各R
58ラジカルは、アルキル及びアリールラジカルから選択される一価炭化水素ラジカルを表す。そのような式(V)〜(VIII)の有機ホスファイト化合物は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,748,261号、同第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,113,022号、同第5,179,055号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,254,741号、同第5,264,616号、同第5,312,996号、同第5,364,950号、及び同第5,391,801号に開示されていることが見出され得る。
【0047】
式(VI)〜(VIII)中のR
10、R
20、R
46、R
57、R
58、Ar、Q、X、m、及びyは、上記に定義される通りである。最も好ましくは、Xは、二価アリール−(CH
2)
y−(Q)
m−(CH
2)
y−アリールラジカルを表し、ここで、各yは、それぞれ、0または1の値を有し、mは、0または1の値を有し、Qは、−O−、−S−、または−C(R
35)
2−であり、各R
35は、同じかまたは異なり、かつ水素またはメチルラジカルを表す。より好ましくは、上記に定義されるR
8基の各アルキルラジカルは、1〜24個の炭素原子を含有し得、上記に定義される上記式(VI)〜(VII)のAr、X、R
57、及びR
58基の各アリールラジカルは、6〜18個の炭素原子を含有し得、該ラジカルは、同じかまたは異なってもよいが、Xの好ましいアルキレンラジカルは、2〜18個の炭素原子を含有し得、R
57の好ましいアルキレンラジカルは、5〜18個の炭素原子を含有し得る。また、好ましくは、上記式のXの二価Arラジカル及び二価アリールラジカルは、フェニレンラジカルであり、ここで、−(CH
2)
y−(Q)
m−(CH
2)
y−によって表される架橋基は、フェニレンラジカルを式のそれらのリン原子に結合させる式の酸素原子に対してオルト位で、該フェニレンラジカルに結合する。また、そのようなフェニレンラジカルに存在する場合、任意の置換ラジカルがそのリン原子に所与の置換フェニレンラジカルを結合させる酸素原子に対して、フェニレンラジカルのパラ及び/またはオルト位で結合することも好ましい。
【0048】
上記式(I)〜(VIII)のこのような有機ホスファイトのR
10、R
20、R
57、R
58、W、X、Q、及びArラジカルのいずれも、所望される場合、本発明のプロセスの所望される結果に過度に悪影響を及ぼさない1〜30個の炭素原子を含有する任意の好適な置換基で置換され得る。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、及びシクロヘキシル置換基などの対応する炭化水素ラジカルに加えて上記ラジカルに存在し得る置換基には、例えば、シリルラジカル、例えば−−Si(R
35)
3;ホスフィンラジカル、例えば−アリール−P(R
15)
2;アルコキシラジカル、例えば−OR
15;ホスホニルラジカル、例えば−P(O)(R
15)
2、ならびにハロ、トリフルオロメチルなどが含まれ得、各R
15ラジカルは、それぞれ、1〜18個の炭素原子を有する同じまたは異なる一価炭化水素ラジカル(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、及びシクロヘキシルラジカル)を表す。特定の所与の有機ホスファイトを構成する任意の置換または非置換炭化水素ラジカル基は、同じかまたは異なっていてもよいことを理解されたい。
【0049】
より具体的には、例示的な置換基には、一級、二級、及び三級アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソ−オクチル、デシル、オクタデシルなど;アリールラジカル、例えばフェニル、ナフチルなど;アラルキルラジカル、例えばベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチルなど;アルカリールラジカル、例えばトリル、キシリルなど;脂環式ラジカル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチルなど;アルコキシラジカル、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH
2CH
2OCH
3、−O(CH
2CH
2)
2OCH
3、−O(CH
2CH
2)
3OCH
3など;アリールオキシラジカル、例えばフェノキシなど;ならびにシリルラジカル、例えば−Si(CH
3)
3、−Si(OCH
3)
3、−Si(C
3H
7)
3など;アリールホスフィンラジカル、例えば−P(C
6H
5)
2など;スルフィニルラジカル、例えば−S(O)CH
3など;スルフィジルラジカル、例えば−SCH
3、−SC
2H
5、−SC
6H
5など;ホスホニルラジカル、例えば−P(O)(C
6H
5)
2、−P(O)(CH
3)
2、−P(O)(C
2H
5)
2、−P(O)(C
3H
7)
2、−P(O)(C
4H
9)
2、−P(O)(C
6H
13)
2、−P(O)CH
3(C
6H
5)、−P(O)(H)(C
6H
5)などが含まれる。
【0050】
そのような有機ホスファイト化合物の具体的な実例には、2−t−ブチル−4−メトキシフェニル(3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、メチル(3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、6,6’−[[3,3’−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン、(2R,4R)−ジ[2,2’−(3,3’,5,5’−テトラキス−tert−ブチル−1,1−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスファイト、(2R,4R)ジ[2,2’−(3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスファイト、2−[[2−[[4,8,−ビス(1,1−ジメチルエチル)、2,10−ジメトキシジベンゾ−[d,f][1,3,2]ジオキソホスフェピン−6−イル]オキシ]−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−メトキシフェニル]メチル]−4−メトキシ、亜リン酸のメチレンジ−2,1−フェニレンテトラキス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステル、及び亜リン酸の[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイルテトラキス[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェニル]エステルが含まれる。
【0051】
加水分解性有機リン配位子及びそれらを製造するための一般的方法は、当業者によく知られている。一般に、加水分解性有機リン配位子は、塩基(通常はアミンまたはアミン樹脂)の存在下でのPCl
3とH−Z化合物(Zは、本明細書において定義される通りである)との反応によって生成される。本明細書に記載された工程の前の粗加水分解性有機リン配位子への実際の合成経路は、本発明の重要な特徴ではない。
【0052】
一態様では、本発明は、実質的にアミン及び水を含まない固体有機ホスファイト組成物を含む。驚くべきことに、亜リン酸と組み合わせた場合に当業者が遊離酸よりも炭化水素溶媒中での溶解度が低いと予想するであろう塩を形成するアミンの存在は、濾過によって亜リン酸を除去する能力を実際に減少させることが発見された。本発明のプロセスの前に少なくとも1回、好適な溶媒中で粗加水分解性有機ホスファイト配位子を再結晶化または粉末化することは、本発明で採用される有機ホスファイトが水及びアミンを実質的に含まないことを保証するために必要とされる。有機ホスファイト配位子の初期再結晶化に好適であることが知られている溶媒は、例えばWO2013/066712及びWO2013/098370に見出され得る。好ましい再結晶化溶媒の例には、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、トルエン、及びアセトンが含まれる。粉末化に好適な溶媒は、アセトニトリル及びアルコール(イソプロパノール、t−ブタノールなどを含む)貧溶媒を含む。用語「実質的に水及び遊離アミンを含まない」は、好適な溶媒中で少なくとも1回再結晶化または粉末化された固体有機ホスファイト組成物を含むことが企図される。
【0053】
炭化水素溶媒は、有機リン配位子を溶解させることが可能であるべきであり、典型的には5ε
r(ω)未満の誘電率を有するであろう。炭化水素溶媒に採用される好ましい芳香族炭化水素の例には、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼンなどが含まれる。採用される炭化水素溶媒の量は重要ではないが、濾過温度で配位子の実質的に全てを溶解させるのに十分であるべきである。有利には、濾過温度は20℃から溶媒の沸点までである。一態様では、本発明は、水及び遊離アミンの非存在下で固体加水分解性有機ホスファイト配位子を炭化水素溶媒に溶解させることと、次いで得られる濾過液が有機ホスファイトの質量を基準として、30ppm未満のリン酸を含有するように溶液を不溶性亜リン酸から分離することと、を含む。分離は濾過または遠心分離によって行われ得る。この分離は、効果的な多孔度が≦1ミクロンであるフィルターを通して溶液を濾過することによって達成され得る。驚くべきことに、実質的に炭化水素溶媒及び溶解した有機ホスファイトから構成されるマトリックス中の亜リン酸の溶解度は非常に低く、そのようなマトリックス内で亜リン酸は濾過による分離に適した形態で存在することが見出された。
【0054】
濾過は、実用的なほど細かいフィルターを採用すべきであるが、最低でも1ミクロン以下の有効多孔度で実施すべきである。フィルター助剤及びボディ助剤(セライトなど)がフィルター効率を向上させるために採用され得る。1ミクロンを超える平均径の粒子の大部分が除去された場合、得られる溶液は30ppm未満の亜リン酸含有量を呈することが見出された。濾過効率は、レーザー粒子サイズ決定などの既知の技術によって平均粒子サイズを観察することによって、または溶液中の亜リン酸の濃度を測定することによって監視され得る。濾過温度は重要ではないが、一般に、不純物の溶解度を最小限にするために実用的なほど低くすべきである(例えば、40℃未満)。必要な場合、固体有機ホスファイトの溶解を促進または維持するために高温が採用され得る。濾過は、30ppm未満の亜リン酸含有量を達成するように、複数のフィルターを順次使用するか、溶液を同じフィルターに複数回通すか、または当業者に既知の他の技術で達成され得る。
【0055】
濾過の代替手段は、固体ボウルデカンタ、ディスクスタック遠心分離、遠心分離フィルターなどの機器を採用する遠心分離であり得る。濾過及び遠心分離はまた順次行われ得る。
【0056】
本発明の一態様では、酸を含まない濾過液は、炭化水素溶媒の一部を除去することによって濃縮される。真空によるか、または高温での不活性ガスの流れの下での溶媒除去を容易にする様々な手段は当業者に知られている。好ましい方法は、溶液を適度な温度で真空下に置くことである。一般に、実用的なほど多くの炭化水素溶媒を除去することが望ましい。このようにして除去された溶媒は、連続操作の場合に再循環され得る。
【0057】
一実施形態では、有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮溶液を、貧溶媒を含有する第2の容器に移す。そのような実施形態では、炭化水素溶媒の体積は、有機ホスファイトの溶解度限界を超えて減少させるべきではない。換言すれば、有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮溶液を第2の容器に効果的に移すには、有機ホスファイトが溶液中に残存することが必要である。移送が行われる温度は、濃縮工程の間に除去され得る炭化水素溶媒の量に大いに影響する。
【0058】
好ましい実施形態では、炭化水素溶媒を実質的に除去して、有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮物を固体またはスラッシュとして残す。濃縮物中に残存する炭化水素溶媒の量は重要ではないものの、有利には、重量でおよそ50:50の有機ホスファイトと炭化水素溶媒との混合物が達成される。そのような実施形態では、有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮物を含有する容器に貧溶媒を移す。
【0059】
一態様では、有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮物を貧溶媒と組み合わせ、混合する。貧溶媒の体積は、有機ホスファイト及び炭化水素溶媒を含む濃縮物の体積以上(例えば、濃縮物1部毎に少なくとも1部の貧溶媒)であるべきであり、いくつかの場合では大過剰の貧溶媒が採用され得る。組み合わせると、混合物は、PCT公開第WO2013/066712号に記載されているように、有利には、1時間以上≧65℃に撹拌しながら加熱して迅速に乾燥する固体を得る。次いで、得られた固体ホスファイトを(例えば、濾過または遠心分離により)回収し、貧溶媒の一部で洗浄し、乾燥させるべきである。そのような濾過、洗浄、及び乾燥の特定の方法は重要ではなく、例示的な方法は、PCT公開第WO2013/066712号に記載されている。
【0060】
本発明はまた、保存中に亜リン酸を発生させた部分的に分解した材料を再処理するのに有用である。この場合、ホスファイトを好適な容器に入れ、上述したように炭化水素溶媒に溶解させ、分離する。次いで得られた低亜リン酸溶液を濃縮し、貧溶媒と組み合わせ、上記のように処理する。
【0061】
PCT出願第PCT/US2015/026648号に記載されているように、任意に、加水分解性有機リン配位子の保存安定性を更に増加させる働きをする化合物である酸捕捉剤が添加され得る。任意の酸捕捉剤は、好ましくは本発明の最終工程の間に添加されるか、またはパッケージングの前または間に固体加水分解性有機リン配位子と混合される。任意の酸捕捉剤が貧溶媒に添加される場合、酸捕捉剤の量は、全溶液の0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0062】
これより本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例に詳細に記載する。
【実施例】
【0063】
以下の実施例における全ての部及び百分率は、他に示されていない限り、重量基準である。全ての操作は、他に示されていない限り、空気及び水分を排除するためにN
2−グローブボックス内で行われる。固体配位子AまたはBは、以下の実施例で使用される:
【0064】
【化8】
【0065】
固体有機ホスファイトの亜リン酸含有量は、溶離剤発生及び炭酸塩除去装置を含む抑制された伝導度検出を伴うDionex ICS2100イオンクロマトグラフを使用するイオンクロマトグラフィ(IC)によって決定される。クロマトグラフは、IonPac AG11−HCガードカラム及びIonPac AS11−HC分析カラムが装着されている。データ分析はChromeleon 7.0ソフトウェアで実施される。他に示されていない限り、サンプルは、固体配位子(0.1〜0.5g)をトルエン(5〜10mL)に溶解させ、続いて水酸化ナトリウム(0.004M、12〜15mL)または脱イオン水(8〜15mL)でトルエン溶液を抽出することによって調製される。同様の手法でトルエン溶液の酸含有量が決定される。亜リン酸の定量は、有機ホスファイト中の重量百分率として報告される。非常に高いレベルの酸を含有するサンプルは、較正範囲内に留まるために水性抽出物の追加的希釈を必要とする。他に示されていない限り、本明細書で使用される配位子AまたはBは、粗製材料ではなく、例えば、PCT公開第WO2013/0066712号に記載されているように、再結晶化を介して事前に精製されている。
【0066】
比較実験A、B、及びC
9000〜10,000ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(0.3g)を3つの20mLのガラスバイアルの各々に計量導入し、示されたように溶解させる。次いで各溶液を0.20ミクロンの多孔度のシリンジフィルターを通して濾過する。濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。結果を表1に要約する。
【0067】
【表1】
【0068】
比較実験A、B、及びCは、酢酸エチル、ベンジルエーテル、またはエチルエーテル中の有機ホスファイトの溶液を単に濾過するだけでは亜リン酸含有量を有意に低下させないことを示している。
【0069】
実施例1及び2、比較実験D
2250ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(1.0g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、周囲温度で少量のピリジンを含有するトルエン(8.0g)に溶解させる。次いで溶液を0.45ミクロンの多孔度のシリンジフィルターを通して濾過し、濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。各実験を二度実施し、それぞれの平均値を表2に要約する。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の結果は、溶液中のアミンの量と亜リン酸分離効率の減少との間の直接的関係を示している。
【0072】
比較実験E
以下の手順を商業的規模で行う:2,2’−ビフェノール(250部)及びピリジン(3.75部)をトルエン(1730部)に溶解させ、0〜5℃に冷却する。三塩化リン(289部)を添加し、スラリーを34〜35℃までゆっくりと加温し、18時間撹拌する。蒸留(120℃、大気圧)によって過剰の三塩化リンを除去する。得られた溶液を0〜5℃に冷却し、ピリジン(314部)を添加する。トルエン(1550部)中の4,4,6,6−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール(274部)の溶液を、5℃未満の温度に維持しつつ、よく撹拌しながら第1の溶液にゆっくりと添加する。得られたスラリーを、反応が完了するまで、12時間〜18時間、35℃までゆっくりと加温する。次いで水(1370部)を添加して酸性塩を溶解させ、水層を排出する。得られたトルエン層を共沸的に乾燥させ、5ミクロンのフィルターを通して濾過し、真空下で濃縮して残渣とし、次いでこれを酢酸エチルまたはプロピルから再結晶させる。得られた固体をイソプロパノールで粉末化し、次いで真空下で乾燥させると、配位子Aが結晶性粉末として得られる。この手法で調製された3つの異なる商業ロットは、最終生成物中に平均で77ppmの亜リン酸を含有する。
【0073】
比較実験Eは、有意なレベルの亜リン酸が、合成後に配位子Aに通常存在することを実証している。
【0074】
比較実験F及びG
1288ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(0.3g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、周囲温度及び70℃でトルエン(6.5g)に溶解させる。溶液を5.0μのシリンジフィルターを通して濾過する。濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。結果を表3に要約する。
【0075】
【表3】
【0076】
表3の結果は、5.0μのフィルターを通す単回通過濾過が適切ではないことを示している。
【0077】
実施例3〜5
1289ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(0.3g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、周囲温度でトルエン(6.5g)に溶解させる。溶液を様々な多孔度のシリンジフィルターを通して濾過する。濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。結果を表4に要約する。
【0078】
【表4】
【0079】
実施例は、低い多孔度のフィルターを用いる有機ホスファイト及びトルエンを含む溶液の濾過によって亜リン酸含有量の減少を達成する方法を明らかに実証している。
【0080】
実施例6〜8
濾過直前に溶液を70℃に加熱すること以外は実施例1〜3の手順を繰り返す。結果を表5に要約する。
【0081】
【表5】
【0082】
実施例6〜8は、濾過が行われる温度は重要ではないことを示している。
【0083】
実施例9
8986ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(0.3g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、40℃で1:1のトルエン:ヘプタン(6.0g)に溶解させる。溶液を0.45μのシリンジフィルターを通して濾過する。濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。濾過後の配位子Aの亜リン酸含有量は29.2ppmである。
【0084】
実施例10〜11
594ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(0.2g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、周囲温度でベンゼンまたはp−キシレン(7.0g)に溶解させる。溶液を0.20μのシリンジフィルターを通して濾過する。濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。結果を表6に要約する。
【0085】
【表6】
【0086】
実施例12〜15
65.3ppmの亜リン酸を含有する固体配位子A(0.3g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、周囲温度でトルエン(6.5g)に溶解させる。セライト(0.5gのCelite545;酸洗浄していない)を示されたように添加し、得られたスラリーを約5分間撹拌した。次いでスラリーを示されているようにガラスウールプラグまたはフィルターが装着されたシリンジに入れる。濾過液を水で抽出し、水層をICによって分析する。結果を表7に要約する。
【0087】
【表7】
【0088】
実験12〜15は、Celite545が濾過性能を向上させることを示している(例えば、5.00ミクロンフィルターの性能は、許容可能であり、0.20ミクロンフィルターに匹敵する)。その上、そのデータは、ガラスウール上にCelite545のスラリーを単に堆積させることによって良好な結果が達成され得ることを示している。
【0089】
実施例16〜19
採用した配位子Aが8986ppmの亜リン酸を含有すること以外は実施例10〜13の手順を繰り返す。結果を表8に要約する。
【0090】
【表8】
【0091】
表8の実施例は、セライトを使用する利点を再度実証しており、その上、本発明のプロセスが極めて高い酸含有量の有機ホスファイトに有効であることを示している。
【0092】
実施例20
6041ppmの亜リン酸を含有する固体配位子B(0.1g)を20mLのガラスバイアルに計量導入し、周囲温度でトルエン(8.8g)に溶解させる。セライト(1.0gのCelite Standard Super−Cel)を添加し、得られたスラリーを約5分間撹拌する。次いでスラリーを、0.2μフィルターが装着されたシリンジに入れる。濾過液を回収し、水で抽出し、水性層をICによって分析する。有機ホスファイトの酸含有量は3.4ppmであると決定される。
【0093】
実施例20の結果は、本発明が配位子Bに有効であることを明らかに示している。
【0094】
実施例21
41.5ppmの亜リン酸を含有する酢酸エチルから再結晶化された固体配位子A(10.9g)を200mLの丸底フラスコに計量導入し、周囲温度でトルエン(34.4g)に溶解させる。得られた溶液を0.2ミクロンのシリンジフィルターを通して濾過し、次いで濾過液を9.0gの残留トルエンを含有するスラッシュが達成されるまでロータリーエバポレーターで濃縮する。イソプロパノール(100mL)をスラッシュに添加し、混合物を70℃で約1時間粉末化する。次いで固体を回収し、イソプロパノール(30mL)で洗浄し、真空中で乾燥させる。このようにして得られた配位子Aは、0.7ppmの亜リン酸を含有する(元の亜リン酸の98.3%の除去)。
【0095】
比較実験H及び実施例22〜23
実施例21で調製された低酸固体配位子A(6g)及び様々な量の亜リン酸を含有する固体配位子Aの2つの追加サンプルを小さなガラス瓶に入れ、キャップをせずに放置し、塩化ナトリウムで飽和した少量の水を含有するより大きなガラス瓶に入れた。次いで最も外側の瓶をキャップし、40℃のオーブンに入れる。瓶内の相対湿度は75%である(Journal of Research of the National Bureau of Standards−A.Physics and Chemistry Vol.81 A,No.1,January−February 1977)サンプルを定期的に取り出し、静かに混合し、IC分析のためにサンプリングする。結果を表9に要約する。
【0096】
【表9】
【0097】
表9に要約した結果は、配位子Aの酸含有量を低下させることにより、過酷な条件下でのその保存安定性を向上させることを示している。それ故、本発明は、非常に低い酸含有量の最終生成物を生成することによって、長期保存中に安定なままである有機ホスファイトを生成する手段を提供する。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
(a)亜リン酸を含む、再結晶化または粉末化された固体有機ホスファイト化合物を受け取ることと、(b)前記固体有機ホスファイト化合物を、芳香族炭化水素、飽和脂肪族炭化水素、またはこれらの混合物を含む炭化水素溶媒に溶解させることと、(c)溶液から未溶解の亜リン酸を除去することと、を含むプロセスであって、工程(c)の後の前記有機ホスファイトの酸含有量が30ppm以下である、プロセス。
項2.
前記未溶解の亜リン酸を濾過によって除去する、項1に記載のプロセス。
項3.
前記未溶解の亜リン酸を遠心分離によって除去する、項1に記載のプロセス。
項4.
工程(c)の後の前記有機ホスファイトの前記酸含有量が10ppm以下である、項1に記載のプロセス。
項5.
工程(c)の後の前記有機ホスファイトの前記酸含有量が5ppm以下である、項1に記載のプロセス。
項6.
(d)炭化水素溶液中の前記有機ホスファイトを濃縮することと、(e)炭化水素溶液中の前記濃縮された有機ホスファイトを貧溶媒と組み合わせることと、(f)得られた固体を回収することと、を更に含む、項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
項7.
(g)少なくとも30日間、前記得られた固体を保存することを更に含み、前記保存された得られた固体が、30日後に25ppm以下の亜リン酸を含む、項6に記載のプロセス。
項8.
炭化水素溶液中の前記有機ホスファイトが、50重量%以下の残留炭化水素含有量に濃縮される、項6または項7に記載のプロセス。
項9.
前記貧溶媒が、炭化水素溶液中の前記濃縮された有機ホスファイトに添加される、項6〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
項10.
前記貧溶媒が、イソプロパノールまたはt−ブタノールである、項6〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
項11.
酸捕捉剤の有機ホスファイト100モル当たり0.05〜13の酸中和当量が、工程(f)でまたはその後に添加され、工程(f)の後の前記有機ホスファイトの前記酸含有量が30ppm以下である、項6〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
項12.
前記有機ホスファイトをヒドロホルミル化プロセスに提供することを更に含む、項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
項13.
亜リン酸を含む前記固体有機ホスファイト化合物が、少なくとも30日間保存されている、項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
項14.
前記有機ホスファイト化合物が、以下のうちの少なくとも1つを含む、項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【化1】
項15.
前記固体有機ホスファイト化合物を水及び遊離アミンの非存在下で前記炭化水素溶媒に溶解させる、項1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。