(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868029
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】形状誘導剤を使用せずに水性環境中で金属ナノ粒子を合成する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20210426BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20210426BHJP
【FI】
B22F9/24 E
B82Y40/00
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-531130(P2018-531130)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公表番号】特表2019-500499(P2019-500499A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】IB2016057607
(87)【国際公開番号】WO2017103807
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】102015000083301
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510121547
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ・イスティトゥート・イタリアーノ・ディ・テクノロジャ
【氏名又は名称原語表記】FONDAZIONE ISTITUTO ITALIANO DI TECNOLOGIA
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】モーリアネッティ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】ポンパ,ピエル パオロ
【審査官】
瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−228067(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/162308(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102872861(CN,A)
【文献】
Bigall et al.,Monodisperse Platinum Nanospheres with Adjustable Diameters from 10 to 100 nm: Synthesis and Distinct Optical Properties,NANO LETTERS,2008年,Vol. 8, No. 12,P4588-4592
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[100]面または[111]面を有する金属ナノ粒子を製造するための方法であって、
(a)水と、金属種子成長ナノ粒子と、金属種子成長ナノ粒子と同じ金属を含む金属塩と、還元剤とを含む溶液を提供する工程と;
(b)前記溶液中の溶存酸素の濃度が、酸素飽和溶液中の酸素濃度よりも少ない状態で、前記溶液を、大気圧より高く5atm以下の圧力の下、1℃/分〜5℃/分の速度で、95〜130℃まで加熱する工程とを含み、
ただし、前記溶液は、有機溶媒および/または形状誘導剤を含まず、
工程(a)および(b)は、密閉された容器中で行われる、方法。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が[100]面を有する、請求項1に記載の金属ナノ粒子を製造するための方法。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が[111]面を有する、請求項1に記載の金属ナノ粒子を製造するための方法。
【請求項4】
前記溶液中の溶存酸素の濃度が、0.01ppm〜20ppmの範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属種子成長ナノ粒子と前記金属塩が白金またはパラジウムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属塩が、H2PtCl6、Na2PtCl6、K2PtCl6、H6Cl2N2Pt、PtCl2、PtBr2、K2PtCl6、Na2PtCl6、Li2PtCl4、H2Pt(OH)6、Pt(NO3)2、PtSO4、Pt(HSO4)2、Pt(ClO4)2、K2PtCl4、Na2PdCl4、Li2PdCl4、K2PdCl6、Na2PdCl6、Li2PdCl6、PdCl4、PdCl2、(NH4)2PdCl6、(NH4)2PdCl4、PdCl4、PdCl2、Pd(NO3)2、PdSO4、これらの水和物、またはこれらの塩および/または水和物の混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属塩が、0.01〜100mMの濃度で存在する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤が、8個未満のカルボン酸および/またはカルボキシレート基と、6個未満のヒドロキシ基とを有する有機分子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤が、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム、2−(カルボキシメチル)−2−ヒドロキシスクシネート、3−ヒドロキシブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、2−カルボキシ−D−アラビニトール、3,4−ジカルボキシ−3−ヒドロキシブタノエート、デヒドロ−D−アラビノノ−1,4−ラクトン、2−(カルボキシラトメチル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フロエート、2−(カルボキシメチル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フロン酸、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤が、0.1〜0.7%(w/v)の量で前記溶液中に存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)で、溶液を105〜110℃まで加熱する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液の圧力が大気圧より高く2atm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液を3℃/分〜5℃/分の速度で加熱する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御された形状と大きさを有する金属ナノ粒子の合成に関し、特に、制御された形状と大きさを有する白金およびパラジウムのナノ粒子に関する。この合成は、ポリマーおよび界面活性剤などの形状誘導剤の使用を伴わない。
【背景技術】
【0002】
様々な形状のナノ粒子は、触媒、光通信学およびナノメディシンなどの他の分野における応用の可能性に起因して、大きな関心を集めてきた。
【0003】
ナノ粒子の形状は、ナノ粒子の特性に関係があり、触媒反応における選択性、光および生物との相互作用に影響を与えることがある。特に、白金ナノ粒子は、その固有の触媒特性について研究されてきた。
【0004】
白金元素は、面心結晶構造を有しており、白金ナノ粒子では、低指数面[100]、[111]、[110]が一般的である。立方体の粒子は、完全に[100]面で構成されており、八面体粒子は完全に[111]面で構成されており、一方、立方八面体は、その両方で構成されている。ナノ粒子合成の湿式化学還元(WCR)の間、自己触媒性の成長段階は瞬間的であり、そのときにナノ粒子の形状が決まる。純粋な熱力学的な成長条件下、白金ナノ粒子は、球として成長するか、または表面エネルギーを最小にすべくアモルファス形状を有して成長する。しかし、この反応が速度論的に制御された状態で起こるとき、還元速度の減少および/または形状誘導剤の存在に起因して、立方体、四面体、八面体の形状を作り出すことができる。
【0005】
種々の化学反応のための触媒として優先的に配向した白金ナノ粒子の使用は、非常に有利であることがわかっており、触媒にとって大きな打開策を示している(M.Duca、P.Rodriguez、A.YansonおよびM.M.Koper、Top Catal.、2014、57、255−264)。例えば、アルカリ性媒体中での亜硝酸塩還元の場合には、Pt[100]面が最も活性な表面であることが示されており、アンモニアを再び酸化して窒素を与えることができる[M.T.M.Koper、Nanoscale、2011、3、2054−2073;M.Duca、M.C.Figueiredo、V.Climent、P.Rodriguez、J.M.FeliuおよびM.T.M.Koper、J Am Chem Soc、2011、133、10928−10939)。
【0006】
亜硝酸塩還元にPt[100]電極を触媒として用いることによって、二酸化窒素から窒素へと直接的に変換することができることも知られている。この電気化学的特徴は、[100]領域の品質に非常に影響を受けやすく、その対称性に制御した状態で欠陥を導入すると、窒素への選択的な電解触媒的変換が急速に低下することが観察されている。主要な電気化学的特徴(亜硝酸塩からアンモニアへの還元)も、表面の規則性が失われることによって影響を受ける。したがって、この反応は、大きく、十分に規則的な[100]領域を有する立方体のナノ粒子という、特殊な特徴を有するナノ粒子が必要である。
【0007】
添加剤と、形状を制御するためのキャッピング剤(形状誘導剤)を用いた湿式化学還元によって、形状の定まった白金ナノ粒子が得られる。自己触媒性の成長段階に、ポリマー、界面活性剤、有機配位子およびイオン性塩などの形状誘導剤が存在することは、形状の定まったナノ粒子の生成に重要な役割をはたす。一般的に、これらの種は、特定の面に結合して非対称的な成長を促進することによって、または熱力学的または速度論的に制御した状態で成長が進むように、還元速度を変えることによって作用する。例えば、米国特許第8,257,465号は、形状誘導剤として臭素を用いることによって金属ナノ粒子の形状を制御する方法を記載する。臭素は、種結晶の表面に吸着し、次いで、酸化剤で処理され、種結晶の1つの表面を酸化的にエッチングする。次いで、金属前駆体化合物および還元剤存在下、露出した表面は、[100]面および[110]面を有するナノ構造を生成するように成長することができる。臭素が存在しないと、立方八面体のみが生成することが報告されている。
【0008】
形状誘導剤が金属粒子表面と相互作用し、形状を定めるのにさらに効果的な状態になるには多くの時間がかかるため、形状の定まったナノ粒子を得るには、ゆっくりとした還元条件が望ましい。少ない数の種子を生成するにも、還元速度が低い方が望ましく、形状生成を補助する、種子に対する前駆体の比率が大きくなる(J.Yin、J.Wang、M.Li、C.JinおよびT.Zhang、Chemistry of Materials、2012、24、2645−2654)。Gumeciら(J.Phys.Chem.C 2014、118、14433−14440)は、DMFを含有する水中の前駆体としてPt(acac)
2を用いる、金属ナノ粒子を調製する方法を記載している。形状が制御されたナノ粒子を得るために、種結晶の迅速な核形成、その後のゆっくりとした成長期間を促進するために、加熱速度と反応温度が選択された。20%(体積基準)を超えて含水量を上げていくと、凝集が起こり、形状制御がうまくいかなくなることがわかった。
【0009】
形状成長に影響を及ぼし得る別のパラメータは、添加剤の使用による面の安定化である。配位子およびポリマーなどの化学種を使用し、これらの面の成長を遅らせることによって特定の面を選択的に安定化させるため、最終的なナノ粒子の表面に添加剤が豊富に存在するようになる。残念ながら、配位子およびポリマーは、材料の触媒特性にも影響を与え、界面活性剤、例えば、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドは、触媒活性にとって有益ではないことが示されている(A.Miyazaki、I.BalintおよびY.Nakano、Journal of Nanoparticle Research、2003、5、69−80)。オレイルアミンも、アミン基の被毒特性に起因して、一酸化炭素の酸化の触媒活性に非常に有害であることが示されている(J.N.Kuhn、C.−K.Tsung、W.HuangおよびG.A.Somorjai、Journal of Catalysis、2009、265、209−215)。さらに、UV−オゾン処理、熱アニーリングまたは酢酸洗浄によってナノ粒子表面の有機被膜を部分的または完全に除去することは可能ではあるが、これらの処理は時間がかかり、高価であり、完全な除去を保証するものではない。有機被膜は、ナノ粒子の触媒特性を妨害する場合がある。
【0010】
形状誘導剤を使用することなく、金属ナノ粒子の形状を制御する方法は、特許出願WO2014/162308 A2に記載されている。ここでは、反応溶液の迅速な加熱および冷却が、[100]面を有するナノ粒子の生成に影響を与えることがわかった。反応溶液の温度を制御するために、フローシステムを使用し、反応溶液が反応領域を流れ、特定時間加熱された後、冷却領域へと流れる。この方法は、金属種子ナノ粒子の使用を含まなかった。
【0011】
制御された形状と大きさを有するナノ粒子の合成における上述の進化にもかかわらず、汚染物質を含まず、優先的に形状の定まったナノ粒子を得る単純で環境に優しい方法が、依然として当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本願発明者らは、形状誘導剤、例えば、ポリマー、界面活性剤、イオン性塩および有機配位子を使用することなく、および/または有機溶媒を使用することなく、優先的に形状の定まった金属ナノ粒子を作成することができることを発見した。
【0013】
具体的には、本願発明者らは、形状誘導剤を使用することなく、反応パラメータを制御することによって、[100]面の割合が大きく、[110]面および/または[111]面の割合が小さいナノ粒子、または[111]面の割合が大きく、[110]面および/または[100]面の割合が小さいナノ粒子を得ることができることを発見した。
【0014】
本開示は、主に[100]面または[111]面を有する金属ナノ粒子を製造する方法を提供する。この方法は、水と、金属種子成長ナノ粒子と、金属種子成長ナノ粒子と同じ金属を含む金属塩と、還元剤とを含む溶液の調製を伴う。この溶液を95〜130℃まで加熱する。1℃/分〜5℃/分の速度で加熱することによって、最終的な温度に達してもよい。この系の圧力は、1〜5atmに維持される。
【0015】
この方法は、
溶液中の溶存酸素の濃度が、酸素飽和溶液中の酸素濃度よりも
少ない状態で行われてもよい。例えば、溶液中の溶存酸素の濃度は、5%〜18%(v/v)の範囲であってもよい。
【0016】
本開示の方法に使用される金属種子成長ナノ粒子と金属塩は、好ましくは、白金またはパラジウムを含む。
【0017】
本開示の金属ナノ粒子を製造する方法は、有機溶媒または形状誘導剤の使用を伴わない。この方法が有機溶媒を必要としないため、反応媒体として水を使用する。金属ナノ粒子のこの合成法は、環境により良い方法である。
【0018】
以下の図面は、本明細書に開示する特定事項の好ましい実施形態を示す。請求項に記載される特定事項は、添付の図面と組み合わせて、以下の記載を参照することによって理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1に記載する本発明の実施形態にしたがって得られるナノ粒子のTEM画像。
【
図2】金属前駆体濃度が変えられている、実施例2に記載するさらなる実施形態にしたがって得られるナノ粒子のTEM画像。
【
図3】Bigallらによって報告される方法を用いることによって得られ、実施例3に記載する球状ナノ粒子のTEM画像。
【
図4】本発明の方法を金粒子に適用することによって得られ、実施例4に記載する金ナノ粒子のTEM画像。
【
図5】実施例5に記載する本発明の実施形態にしたがって得られるナノ粒子のTEM画像。
【
図6】実施例1に記載する本発明の実施形態にしたがって得られるナノ粒子の(a)、(b)、(c)および(d)TEM画像、(e)制限視野電子回折(SAED)画像、(f)HR−TEM画像。
【
図7】実施例6に記載する本発明の実施形態にしたがって得られるナノ粒子のTEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載される場合、「金属種子成長ナノ粒子」との用語は、単結晶ナノ粒子、または特定の結晶系を有し、もっと大きなナノ粒子を形成することが可能な、複数の対になった結晶を意味する。
【0021】
本明細書に記載される場合、「形状誘導剤(shape−directing agent)」との用語は、1つ以上の表面に結合することによって、または熱力学的または速度論的に制御した状態でナノ粒子の成長が進むように反応速度を変えることによって、金属ナノ粒子の成長に影響を与えることができる化合物を意味する。「形状誘導剤」の例は、ポリマー、界面活性剤、イオン性塩および有機配位子である。一般的に使用される形状誘導剤は、例えば、ポリ(ビニルピロリドン)およびハロゲン化物である。
【0022】
本明細書に記載される場合、「バイメタリックナノ粒子」との用語は、2種類の異なる金属元素から構成されるナノ粒子を意味する。
【0023】
本明細書に記載される場合、「ガルバニ置換」との用語は、金属原子と別の金属のカチオンとの間で起こる酸化還元反応を意味する。
【0024】
本発明は、制御された形状と大きさを有する金属ナノ粒子を合成する方法に関する。本発明は、形状誘導剤を用いることなく、形状の定まった金属ナノ粒子(立方体、直方体、八面体)を合成する容易な方法を提供する。したがって、ナノ粒子の触媒特性および/またはそのバイオナノ相互作用に影響を与え得るナノ粒子表面の汚染物質の存在が避けられる。
【0025】
さらに、本方法は、有機溶媒を使用せず、そのため、反応媒体として有機溶媒を使用する既存の多くのナノ粒子合成方法よりも環境に優しい。
【0026】
本明細書に記載するような[100]面の割合が高いか、または[111]面の割合が高い金属ナノ粒子を作成するための反応は、速度論的に制御した状態で進行すると考えられる。
【0027】
好ましくは、溶液は、有機溶媒および/または形状誘導剤を含まない。
【0028】
本発明の方法にしたがって製造されるナノ粒子は、[100]面または[111]面を有し、好ましくは、立方体または八面体の形状を有する、形状の定まったナノ粒子を高い割合で含む。
【0029】
形状の定まったナノ粒子において、[100]面が優位であれば、主に立方体の形状を有するナノ粒子が得られ、一方、形状の定まったナノ粒子において、[111]面が優位であれば、主に八面体の形状を有するナノ粒子が得られる。
【0030】
本発明の方法を用いて得ることができる、[100]面または[111]面を有する形状の定まったナノ粒子の割合は、60重量%〜90重量%であり、100重量%までの残りの部分は、異なる形状(例えば、不規則な形状)を有するナノ粒子、好ましくは、立方八面体を有するものである。
【0031】
一実施形態では、本開示は、[100]面を有する白金またはパラジウムのナノ粒子、好ましくは[100]面を有する立方体の白金ナノ粒子を製造する方法に関する。
【0032】
別の実施形態では、本開示は、[111]面を有する白金またはパラジウムのナノ粒子、好ましくは[111]面を有する八面体の白金ナノ粒子を製造する方法に関する。好ましくは、金属種子成長ナノ粒子と金属塩は、白金またはパラジウムを含む。金属種子成長ナノ粒子は、当該技術分野で公知の任意の方法によって、好ましくは、Bigallらによって記載される方法(N.C.Bigall、T.Hartling、M.Klose、P.Simon、L.M.EngおよびA.Eychmuller、Nano Letters、2008、8、4588−4592)にしたがって得られてもよい。
【0033】
金属種子成長ナノ粒子は、溶液中に、2〜4nMの濃度で、ナノ粒子が、好ましくは、白金またはパラジウムのナノ粒子が存在していてもよい。
【0034】
ナノ粒子を成長させるために使用される塩の濃度によって、得られるナノ粒子の大きさを決定づけることができ、そのため、報告したように、成長工程の間の溶液中のPtイオンまたはPdイオンの濃度を調整することによって、白金またはパラジウムのナノ粒子の大きさを制御することができる。
【0035】
本明細書に開示する方法で使用される金属塩は、H
2PtCl
6、Na
2PtCl
6、K
2PtCl
6、H
6Cl
2N
2Pt、PtCl
2、PtBr
2、K
2PtCl
6、Na
2PtCl
6、Li
2PtCl
4、H
2Pt(OH)
6、Pt(NO
3)
2、PtSO
4、Pt(HSO
4)
2、Pt(ClO
4)
2、K
2PtCl
4、Na
2PdCl
4、Li
2PdCl
4、K
2PdCl
6、Na
2PdCl
6、Li
2PdCl
6、PdCl
4、PdCl
2、(NH
4)
2PdCl
6、(NH
4)
2PdCl
4、PdCl
4、PdCl
2、Pd(NO
3)
2、PdSO
4、これらの水和物、またはこれらの塩および/または水和物の混合物からなる群から選択される。好ましくは、金属塩は、貴金属塩である。さらにより好ましくは、金属塩は、H
2PtCl
6、Na
2PtCl
6、K
2PtCl
6、Na
2PdCl
4またはK
2PdCl
6である。
【0036】
一実施形態では、異なる金属の塩の混合物を使用することによって、バイメタリックナノ粒子を得ることができる。さらなる実施形態では、ある金属の金属種子成長ナノ粒子と、別の金属の金属塩とが関与するガルバニ置換によっても、バイメタリックナノ粒子を得ることができる。
【0037】
金属塩は、好ましくは、0.01〜100mM、好ましくは0.1〜5mMの濃度で存在する。
【0038】
本開示の方法で使用される還元剤は、8個未満のカルボン酸および/またはカルボキシレート基を有する有機分子であってもよい。還元剤は、6個未満のヒドロキシ基も有していてもよい。還元剤は、好ましくは、10個以下の官能基を有する。還元剤は、好ましくは、アミノ基を含まない。還元剤は、好ましくは、貴金属表面に強く結合する官能基を含まない。このような望ましくない官能基としては、アミン基、チオール基、ホスフィン基およびアミド基を含む群から選択される1つ以上の官能基が挙げられる。
【0039】
還元剤は、有機低分子であってもよく、「有機低分子」との用語は、10個以下の官能基、8個以下のカルボン酸またはカルボキシレート官能基、6個以下のヒドロキシル基を有し、アミノ官能基を有さない分子であると定義される。
【0040】
還元剤は、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム、2−(カルボキシメチル)−2−ヒドロキシスクシネート、3−ヒドロキシブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、2−カルボキシ−D−アラビニトール、3,4−ジカルボキシ−3−ヒドロキシブタノエート、デヒドロ−D−アラビノノ−1,4−ラクトン、2−(カルボキシlatoメチル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フロエート、2−(カルボキシメチル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フロン酸、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノンおよびこれらの混合物を含む群から選択されてもよい。
【0041】
還元剤は、0.1〜0.7%(w/v)、好ましくは0.8〜2.5%(w/v)、より好ましくは1%(w/v)の量で溶液中に存在してもよい。
【0042】
還元剤は、安定化剤として作用してもよい。
【0043】
溶液を95〜130℃まで加熱してもよい。好ましくは、105〜110℃まで加熱してもよい。
【0044】
溶液を1℃/分〜5℃/分の速度で加熱してもよい。好ましくは、溶液を3℃/分〜5℃/分の速度で加熱する。
【0045】
溶液が入った容器中の空気は、1〜5atmの圧力に維持される。好ましくは、圧力は、1〜2atmの圧力に維持される。
【0046】
本開示の一実施形態では、水溶液中の溶存酸素の濃度は、酸素飽和水溶液中の酸素濃度よりも少ない。溶液中の溶存酸素の濃度は、0.01ppm〜20ppm、好ましくは0.1ppm〜10ppmの範囲であってもよい。
【0047】
別の実施形態では、本開示は、[100]面を有する金属ナノ粒子または[111]面を有するナノ粒子を製造する方法であって、
(a)水と、金属種子成長ナノ粒子と、金属種子成長ナノ粒子と同じ金属を含む金属塩と、還元剤とを含む溶液を提供する工程と;
(b)前記溶液を、1℃/分〜5℃/分の速度、1〜5atmの圧力で95〜130℃まで加熱することとを含む、方法に関する。
【0048】
好ましくは、この溶液は、有機溶媒および/または形状誘導剤を含まない。
【0049】
一実施形態では、水溶液中の溶存酸素の濃度は、酸素飽和水溶液中の酸素濃度よりも少ない。溶液中の溶存酸素の濃度は、0.01ppm〜20ppm、好ましくは0.1ppm〜10ppmの範囲であってもよい。
【0050】
カルボキシル基およびヒドロキシル基のおかげで、有機低分子は、白金またはパラジウムのナノ粒子表面と弱く結合するため、有機低分子は、水溶液中で凝集に対して粒子を安定化させるのに重要な役割をはたす。このように、有機低分子は、主な凝集プロセスを避け、同時に、水で単純に洗浄して容易に除去することができ、非常にきれいな表面が得られる。
【0051】
クエン酸ナトリウムとL−アスコルビン酸が非対称的な成長を促進し得る文献(WO2014/162308)に報告された場合であっても、温度および圧力による同時制御がなければ、また、熱移動および酸素曝露による制御がなければ、Bigallら(上に引用)に報告されるように、いくつかの小さな結晶から構成され、表面粗さが大きい、球状のナノ粒子が得られる。この結果は、Ptナノ粒子の非対称的な成長において、この化合物自体が唯一の寄与因子ではないことを示している。
【0052】
上述のパラメータの厳格な制御は、形状の定まったナノ粒子の生成に重要な役割をはたす。同じ反応が、同じ温度および熱移動速度で行われるが、クエン酸ナトリウムとL−アスコルビン酸存在下、圧力を制御せず、環流設定での酸素曝露を制御しないと、比較例3に示すように、形状の定まったナノ粒子は生成せずに、球状のナノ粒子が生成する。この結果は、多面体の成長を達成する際に、反応パラメータの相乗効果の重要な役割を強調するものである。
【0053】
本発明の一実施形態では、工程(a)の調製された水溶液(好ましくは、加熱システムを備える密閉された容器に入れられる)は、好ましくは、4つの物理的なパラメータ(温度、熱移動、圧力および酸素曝露)を調整することによって、還元反応に供される。
【0054】
反応温度は、好ましくは、95〜130℃、好ましくは105〜110℃の範囲に設定される。
【0055】
圧力は、好ましくは1〜5atm、好ましくは1〜2atmの範囲に設定される。
【0056】
好ましくは、酸素曝露および水に溶解した酸素の量は、それぞれ15ppm未満であり、好ましくは0.1ppm〜10ppmの範囲である。
【0057】
温度勾配は、好ましくはゆっくりであり、1℃/分〜5℃/分、好ましくは3℃/分〜5℃/分の範囲である。
【0058】
さらに、ナノ粒子を成長させるために使用される塩の濃度によって、得られるナノ粒子の大きさを決定づけることができ、そのため、実施例2に報告したように、成長工程の間の溶液中のPtイオンの濃度を調整することによって、白金ナノ粒子の大きさを制御することができる。
【0059】
ここに開示する方法によって得られるナノ粒子の大部分が、立方体または八面体の形状を示す。立方体または八面体の白金およびパラジウムのナノ粒子には、(100)面または(111)面が存在することが示されている。両方の種類の形状の定まったナノ粒子が、その高い触媒活性のため、触媒用途にとって興味深い。しかし、本発明の方法を用いて得られるナノ粒子の一部は、(100)面と(111)面の混合している立方八面体の形状を有する。
【0060】
本開示の方法によって得られる白金/パラジウムのナノ粒子の多面体形状という観点で、白金/パラジウムのナノ粒子を、選択的な触媒反応が関与する工業プロセスで使用することができる。
【0061】
本明細書に開示する方法によって得られる白金/パラジウムのナノ粒子を、硝酸塩の還元、電解触媒的な酸素還元反応、ジメチルエーテル酸化などの反応の触媒として使用してもよい。
【0062】
本明細書に開示する方法によって得られる白金/パラジウムのナノ粒子を、例えば、バイオ酵素プロセスの分野において、ナノバイオ相互作用が関与する生物学的プロセスに使用してもよい。
【実施例】
【0063】
(実施例1。形状の定まったPt粒子の調製)
密閉された容器中、大気圧よりわずかに高い圧力で、合成を行った。3mlの白金種子成長ナノ粒子(Bigallらに記載される方法(N.C.Bigall、T.Hartling、M.Klose、P.Simon、L.M.EngおよびA.Eychmuller、Nano Letters、2008、8、4588−4592)にしたがって合成された)を、87mlのMilliQ水に添加した。108μlの塩化白金酸六水和物(0.5M)を、1.5mlの1%クエン酸および1.25%のL−アスコルビン酸溶液と一緒に加えた。次いで、容器を密閉し、油浴に浸し、ゆっくりと110℃にした。穏やかな速度で撹拌しつつ、反応をこれらの条件に1時間維持した。次いで、容器を油浴から取り出し、さらに1時間撹拌しつつ、冷却した。得られたナノ粒子は、直径が18.5nmであった。
【0064】
(実施例2。寸法制御を調整しつつ、形状の定まったPt粒子の調製)
ナノ粒子の大きさに対するPt前駆体の濃度の影響を調べるために、実施例1に記載した合成を行ったが、(108μlではなく)54μlの塩化白金酸六水和物(0.5M)を添加した。得られたナノ粒子は、寸法が10nmであり、108μlの塩化白金酸六水和物を用いて得られた寸法(18.5nm)より小さい。
【0065】
(実施例3。文献(Bigallら)を用いた比較例)
文献に報告されている環流装置を用い、合成を行った。3mlの白金種子成長ナノ粒子(Bigallらに記載される方法にしたがって合成された)を、87mlのMilliQ水に添加した。108μlの塩化白金酸六水和物(0.5M)を、1.5mlの1%クエン酸および1.25%のL−アスコルビン酸溶液と一緒に加えた。容器(これに付属する環流装置を備える)を油浴に浸し、ゆっくりと110℃にした。穏やかな速度で撹拌しつつ、反応をこれらの条件に1時間維持した。次いで、容器を油浴から取り出し、さらに1時間撹拌しつつ、冷却した。
【0066】
(実施例4。上に記載したのと同じプロトコルを用いた金ナノ粒子の成長)
密閉された容器中、大気圧よりわずかに高い圧力で、合成を行った。実施例1の種子成長ナノ粒子と同じ濃度の3mlの金種子成長ナノ粒子(Maioranoらに記載される方法(G.Maiorano、S.Sabella、B.Sorce、V.Bruentti、M.A.Malvindi、R.Cingolani,P.Pompa.ACS Nano、2010、4、7481−7491)にしたがって合成された)を、87mlのMilliQ水に添加した。108μlの塩化金酸(0.5M)を、1.5mlの1%クエン酸および1.25%のL−アスコルビン酸溶液と一緒に加えた。次いで、容器を密閉し、油浴に浸し、ゆっくりと110℃にした。穏やかな速度で撹拌しつつ、反応をこれらの条件に1時間維持した。次いで、容器を油浴から取り出し、さらに1時間撹拌しつつ、冷却した。
【0067】
(実施例5。八面体形状および多面体形状を有するパラジウムナノ粒子の成長)
密閉された容器中、大気圧よりわずかに高い圧力で、合成を行った。実施例1および4の種子成長ナノ粒子と同じ濃度の3mlのパラジウム種子成長ナノ粒子(Bigallらに記載される方法(N.C.Bigall、T.Hartling、M.Klose、P.Simon、L.M.EngおよびA.Eychmuller、Nano Letters、2008、8、4588−4592)にしたがって合成された)を、87mlのMilliQ水に添加した。108μlのテトラクロロパラジウム酸ナトリウム(0.5M)を、1.5mlの1%クエン酸および1.25%のL−アスコルビン酸溶液と一緒に加えた。次いで、容器を密閉し、油浴に浸し、ゆっくりと110℃にした。穏やかな速度で撹拌しつつ、反応をこれらの条件に1時間維持した。次いで、容器を油浴から取り出し、さらに1時間撹拌しつつ、冷却した。
【0068】
(実施例6。多脚型、より具体的には八脚型の合成)
多脚型のナノ粒子を、密閉された容器中、大気圧よりわずかに高い圧力で合成した。実施例1の種子成長ナノ粒子と同じ濃度の3mlの白金種子成長ナノ粒子(Bigallらに記載される方法(N.C.Bigall、T.Hartling、M.Klose、P.Simon、L.M.EngおよびA.Eychmuller、Nano Letters、2008、8、4588−4592)にしたがって合成された)を、87mlのMilliQ水に添加した。14μlの塩化白金酸六水和物(0.5M)と14μlのテトラクロロ白金酸カリウム(0.5M)を、1.5mlの1%クエン酸および1.25%のL−アスコルビン酸溶液と一緒に加えた。次いで、容器を密閉し、油浴に浸し、ゆっくりと200℃にした。穏やかな速度で撹拌しつつ、反応をこれらの条件に1時間維持した。次いで、容器を油浴から取り出し、さらに1時間撹拌しつつ、冷却した。
【0069】
実施例1、4および5は、異なる金属ナノ粒子、それぞれ、白金、金およびパラジウムが得られる本発明の異なる実施形態を示す。
【0070】
実施例2は、溶液中の白金イオンまたはパラジウムイオンの濃度を変えることによって、得られるナノ粒子の大きさを制御することができることを示す。
【0071】
実施例3は、比較例であり、容器中の空気圧と酸素曝露が制御されない場合を示す。いくつかの小さな結晶から構成され、表面粗さが大きい、球状のナノ粒子が得られる。
【0072】
実施例6は、金属塩前駆体の混合物を使用する本発明の実施形態を示す。この場合には、得られるナノ粒子表面に脚部の生成を観察することができる。
【0073】
ここに記載される方法は、例えば、マイクロ波反応器を用い、スケールアップするように修正可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】米国特許第8257465号(U.S.8,257,465)
【特許文献2】特許出願WO2014/162308A2(WO2014/162308A2)
【非特許文献】
【0075】
【非特許文献1】M.Duca、P.Rodriguez、A.YansonおよびM.M.Koper 「Top Catal.」 2014、57、255−264
【非特許文献2】M.T.M.Koper 「Nanoscale」 2011、3、2054−2073
【非特許文献3】M.Duca、M.C.Figueiredo、V.Climent、P.Rodriguez、J.M.FeliuおよびM.T.M.Koper 「J Am Chem Soc」 2011、133、10928−10939
【非特許文献4】J.Yin、J.Wang、M.Li、C.JinおよびT.Zhang 「Chemistry of Materials」 2012、24、2645−2654
【非特許文献5】Gumeciら 「J.Phys.Chem.C」 2014、118、14433−14440
【非特許文献6】A.Miyazaki、I.BalintおよびY.Nakano 「Journal of Nanoparticle Research」 2003、5、69−80
【非特許文献7】J.N.Kuhn、C.−K.Tsung、W.HuangおよびG.A.Somorjai 「Journal of Catalysis」 2009、265、209−215
【非特許文献8】N.C.Bigall、T.Hartling、M.Klose、P.Simon、L.M.EngおよびA.Eychmuller 「Nano Letters」 2008、8、4588−4592
【非特許文献9】G.Maiorano、S.Sabella、B.Sorce、V.Bruentti、M.A.Malvindi、R.Cingolani,P.Pompa 「ACS Nano」 2010、4、7481−7491