特許第6868036号(P6868036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868036
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】毛細管室を有するマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20210426BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20210426BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   G01N37/00 101
   B81B1/00
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-553071(P2018-553071)
(86)(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公表番号】特表2019-513548(P2019-513548A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】US2016027421
(87)【国際公開番号】WO2017180120
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ムレイ,デヴィン,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カンビー,マイケル,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ギャレット,イー
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1998/007069(WO,A1)
【文献】 米国特許第05958344(US,A)
【文献】 特表2005−509424(JP,A)
【文献】 特表2000−510046(JP,A)
【文献】 米国特許第06444106(US,B1)
【文献】 特開2015−066717(JP,A)
【文献】 特表2005−514187(JP,A)
【文献】 特表2002−527250(JP,A)
【文献】 特開2009−204339(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0217741(US,A1)
【文献】 特表2001−509437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B81B 1/00
G01N 37/00
B41J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チャネルと、
入口及び出口を有する毛細管室であって、前記毛細管室の前記入口が、前記マイクロ流体チャネルと連通しており、前記毛細管室が、前記マイクロ流体チャネルと前記毛細管室との間の接続部に形成された流体のメニスカスの表面張力によって、前記毛細管室を通る流体の流れを制限する、毛細管室と、
前記毛細管室の前記出口に連通している制限部と、
前記毛細管室に近接して前記マイクロ流体チャネルに配置された流体アクチュエータであって、前記流体アクチュエータを作動させることにより、前記メニスカスの前記表面張力に打ち勝って、前記毛細管室及び前記制限部を通る流体の流れが開始される、流体アクチュエータと
を含み、
前記毛細管室の前記入口は、前記マイクロ流体チャネルの下流端の対応する寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有し、前記毛細管室は、前記マイクロ流体チャネルによって引き起こされる毛細管力を破壊することにより、前記毛細管室を通る流体の流れを制限し、
前記制限部の入口は、前記毛細管室の下流端の対応する寸法よりも小さい少なくとも1つの寸法を有している、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
(i)前記マイクロ流体チャネル、前記毛細管室、及び前記制限部の各々は、円形の断面領域を有し;前記毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記毛細管室の前記入口の直径であり;前記制限部の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記制限部の前記入口の直径であり、または
(ii)前記マイクロ流体チャネル、前記毛細管室、及び前記制限部の各々は、長方形の断面領域を有し;前記毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記毛細管室の前記入口の高さであり;前記制限部の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記制限部の前記入口の高さであり、または
(iii)前記マイクロ流体チャネル、前記毛細管室、及び前記制限部の各々は、台形の断面領域を有し;前記毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記毛細管室の前記入口の高さであり;前記制限部の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記制限部の前記入口の高さである、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記流体アクチュエータは、熱抵抗アクチュエータ、圧電膜アクチュエータ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1または請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記制限部は、前記毛細管室及び前記制限部を通って所定量の流体が流れた後、前記流体アクチュエータにより開始された前記流体の流れを制限する、請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記流体アクチュエータにより開始された前記流体の流れは、前記制限部の入口に形成されたメニスカスの表面張力によって制限される、請求項4に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
内部にノズルオリフィスが形成されたノズル層をさらに含み、前記ノズルオリフィスが、前記毛細管室と連通しており、
前記流体アクチュエータを作動させることにより、さらに、前記ノズルオリフィスを介して流体の液滴が噴射される、請求項4または請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記マイクロ流体チャネル及び前記毛細管室の流体は、前記流体の液滴が噴射される方向とは反対の方向の背圧を受けている、請求項4〜6の何れか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
第1のマイクロ流体チャネルと、
入口及び出口を有する第1の毛細管室であって、前記第1の毛細管室の前記入口が、前記第1のマイクロ流体チャネルと連通している、第1の毛細管室と、
前記第1の毛細管室の前記出口に連通している第2のマイクロ流体チャネルと、
前記第1の毛細管室に近接して前記第1のマイクロ流体チャネルに配置された第1の流体アクチュエータと
を含み、
前記第1の毛細管室は、前記第1のマイクロ流体チャネルと前記第1の毛細管室との間の接続部に形成された流体のメニスカスの表面張力によって、前記第1の毛細管室を通る前記第2のマイクロ流体チャネルへの流体の流れを制限し、
前記第1の流体アクチュエータの作動は、前記メニスカスの前記表面張力に打ち勝って、前記第1の毛細管室を通る前記第2のマイクロ流体チャネルへの流体の流れを引き起し、
前記第1の毛細管室の前記入口は、前記第1のマイクロ流体チャネルの下流端の対応する寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有し、前記第1の毛細管室は、前記第1のマイクロ流体チャネルによって引き起こされる毛細管力を破壊することにより、前記第1の毛細管室を通る流体の流れを制限し、
前記第2のマイクロ流体チャネルの入口は、前記第1の毛細管室の下流端の対応する寸法よりも小さい少なくとも1つの寸法を有している、マイクロ流体デバイス。
【請求項9】
(i)前記第1のマイクロ流体チャネル、前記第1の毛細管室、及び前記第2のマイクロ流体チャネルの各々は、円形の断面領域を有し;前記第1の毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記第1の毛細管室の前記入口の直径であり;前記第2のマイクロ流体チャネルの前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記第2のマイクロ流体チャネルの前記入口の直径であり、または
(ii)前記第1のマイクロ流体チャネル、前記第1の毛細管室、及び前記第2のマイクロ流体チャネルの各々は、長方形の断面領域を有し;前記第1の毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記第1の毛細管室の前記入口の高さであり;前記第2のマイクロ流体チャネルの前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記第2のマイクロ流体チャネルの前記入口の高さであり、または
(iii)前記第1のマイクロ流体チャネル、前記第1の毛細管室、及び前記第2のマイクロ流体チャネルの各々は、台形の断面領域を有し;前記第1の毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記第1の毛細管室の前記入口の高さであり;前記第2のマイクロ流体チャネルの前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記第2のマイクロ流体チャネルの前記入口の高さである、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記マイクロ流体デバイスは、
第3のマイクロ流体チャネルと、
入口及び出口を有する第2の毛細管室であって、前記第2の毛細管室の入口が、前記第2のマイクロ流体チャネルと連通しており、前記第2の毛細管室の前記出口が、前記第3のマイクロ流体チャネルと連通しており、前記第2の毛細管室が、前記第2の毛細管室を通る前記第3のマイクロ流体チャネルへの流れを制限する、第2の毛細管室と、
前記第2の毛細管室に近接して前記第2のマイクロ流体チャネルに配置された第2の流体アクチュエータであって、前記第2の流体アクチュエータを作動させることにより、前記第2の毛細管室を通る前記第3のマイクロ流体チャネルへの流体の流れが開始される、第2の流体アクチュエータと
をさらに含む、請求項または請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
マイクロ流体デバイスについての方法であって、
リザーバから毛細管室へ、それらの間を連通するマイクロ流体チャネルを介して流体を受動的にポンプ輸送し、
前記マイクロ流体チャネルと前記毛細管室との間の接続部に形成された流体のメニスカスの表面張力によって、前記毛細管室を通る前記流体の流れを制限し、
前記毛細管室に近接して前記マイクロ流体チャネルに配置された流体アクチュエータを作動させることにより、前記メニスカスの前記表面張力に打ち勝って、前記毛細管室及び制限部を通る前記流体の流れを開始すること
を含み、前記制限部が、前記毛細管室の出口に連通しており、
前記毛細管室の前記入口は、前記マイクロ流体チャネルの下流端の対応する寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有し、前記毛細管室は、前記マイクロ流体チャネルによって引き起こされる毛細管力を破壊することにより、前記毛細管室を通る流体の流れを制限し、
前記制限部の入口は、前記毛細管室の下流端の対応する寸法よりも小さい少なくとも1つの寸法を有している、方法。
【請求項12】
(i)前記マイクロ流体チャネル、前記毛細管室、及び前記制限部の各々は、円形の断面領域を有し;前記毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記毛細管室の前記入口の直径であり;前記制限部の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記制限部の前記入口の直径であり、または
(ii)前記マイクロ流体チャネル、前記毛細管室、及び前記制限部の各々は、長方形の断面領域を有し;前記毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記毛細管室の前記入口の高さであり;前記制限部の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記制限部の前記入口の高さであり、または
(iii)前記マイクロ流体チャネル、前記毛細管室、及び前記制限部の各々は、台形の断面領域を有し;前記毛細管室の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記毛細管室の前記入口の高さであり;前記制限部の前記入口の前記少なくとも1つの寸法は、前記制限部の前記入口の高さである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
所定量の流体が流れた後、前記制限部により、流体の流れをさらに制限すること
をさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体アクチュエータにより開始された前記流体の流れは、前記制限部の入口に形成されたメニスカスの表面張力によって制限される、請求項13に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
微細加工は、基板(例えば、シリコンチップ、セラミックチップ、ガラスチップなど)上に種々の構造及び種々の構成要素を形成することを含む。微細加工デバイスの例としては、マイクロ流体デバイスが挙げられる。マイクロ流体デバイス(マイクロ流体装置)は、流体を搬送し、処理し、及び/又は分析するための構造及び構成要素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素のブロック図を提供する。
図2A】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素のブロック図を提供する。
図2B】2B−2B線に沿った図2Aの例示的マイクロ流体デバイスの構成要素の断面図を提供する。
図3】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素のブロック図を提供する。
図4】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素のブロック図を提供する。
図5A】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素の動作のブロック図を提供する。
図5B】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素の動作のブロック図を提供する。
図6A】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素の動作のブロック図を提供する。
図6B】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素の動作のブロック図を提供する。
図6C】例示的マイクロ流体デバイスの一部の構成要素の動作のブロック図を提供する。
図7】例示的マイクロ流体デバイスによって実施され得る動作のシーケンスを示すフロー図を提供する。
【0003】
図面全体を通して、同一の参照符号は、類似しているが、必ずしも同一ではない要素を示している。図は、必ずしも縮尺通りではなく、一部の部品のサイズは、図示の例をより明確に示すために強調されている場合がある。さらに、図面は、説明と一致する種々の例及び/又は実施形態を提供する。しかしながら、説明は、図面に提供される例及び/又は実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書で提供される例は、マイクロ流体デバイスについての装置、方法、及びプロセスを含む。マイクロ流体デバイスの例としては、ラボ・オン・チップ・デバイス(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応デバイス、化学センサなど)、流体噴射装置(例えば、インクジェットプリントヘッド、流体分析装置など)、及び/又は、マイクロ流体構造及び関連する構成要素を有する他のそのようなマイクロデバイスが挙げられる。本明細書に記載される例示的マイクロ流体デバイスでは、種々の例は、少なくとも1つのマイクロ流体チャネル、少なくとも1つの毛細管室、及び、毛細管室に近接して配置された少なくとも1つの流体アクチュエータを含む場合がある。
【0005】
理解されるように、本明細書に提供される例は、基板に対して種々の微細加工及び/又は微小機械加工プロセスを実施し、種々の構造及び/又は構成要素を形成及び/又は接続することによって形成される場合がある。基板は、シリコンベースのウェハ、又は微細加工デバイスに使用される他の類似材料(例えば、ガラス、ガリウム砒素、プラスチックなど)を含む場合がある。上述のように、種々の例は、マイクロ流体チャネル及び/又は容積チャンバ(本明細書では、毛細管室と呼ばれることがある)を含む場合がある。マイクロ流体チャネル及び/又はチャンバは、基板においてエッチング又は微小機械加工プロセスを実施することによって形成される場合がある。したがって、マイクロ流体チャネル及び/又はチャンバは、マイクロ流体デバイスの基板内に作製された種々の表面によって画定される場合がある。さらに、本明細書に記載される種々の例は、少なくとも1つの流体アクチュエータを含む場合がある。本明細書で説明される種々の例において実施可能な流体アクチュエータとしては、例えば、熱抵抗ベースのアクチュエータ、圧電膜ベースのアクチュエータ、静電膜アクチュエータ、機械駆動式/衝撃駆動式膜アクチュエータ、磁歪駆動式アクチュエータ、及び/又は、他のそのような構成要素が挙げられる。
【0006】
本明細書に記載される種々の例において、マイクロ流体チャネルは、毛細管室と連通している場合がある。流体アクチュエータは、毛細管室に近接して配置される場合がある。そのような例では、毛細管力(毛管作用とも呼ばれる)により、マイクロ流体チャネル内に流体の受動的ポンプ輸送が発生することがある。
【0007】
本明細書に記載される一部の例では、マイクロ流体チャネル及び/又は毛細管室の少なくとも1つの寸法は、毛細管力を促進するほど十分に小さい(例えば、マイクロメータサイズのスケールである)。一部の例において、流体は、毛細管力により受動的にポンプ輸送される場合がある。他の例において、流体の流れは、毛細管力によって制限される場合がある。例示的毛細管室は、マイクロ流体デバイス内の毛管作用により、流体の流れが停止/制限されるようなサイズを有する場合がある。したがって、毛細管室は、流体の流れを制限する。本明細書において、流体の流れを制限することは、流体の流れを停止/阻止することを含む場合がある。さらに、本明細書では、理解されるように、流体の流れの制限は、流体アクチュエータの作動によって克服される場合があり、それによって、流体の流れが開始される場合がある。本明細書に記載される種々の例において、流体の流れは、流体アクチュエータの作動によって開始されることがあるが、理解されるように、流体アクチュエータは、能動型ポンプとしては使用されない場合がある。したがって、エネルギーの使用(すなわち、流体アクチュエータへの電力の供給)は、能動型ポンプを使用して流体の流れを促進する装置と比較して、少ない場合がある。ポンプの例としては、慣性ポンプ、キャピラリーポンプ、サーマルインクジェットポンプ、又は空気圧ポンプが挙げられる。
【0008】
本明細書に記載される種々の例では、したがって、流体の流れを制限するために、毛細管室が、マイクロ流体デバイスにおいて実施される場合があり、毛細管室は、バルブ又は流体栓として実施される場合がある。さらに、流体アクチュエータが、毛細管室に近接して配置される場合があり、流体アクチュエータを作動させることにより、マイクロ流体デバイス(例えば、毛細管室及び/又はマイクロ流体チャネル)を通る流体の流れが開始される場合がある。一部の例では、毛細管室の出口は、第2のマイクロ流体チャネルと連通している場合があり、流体アクチュエータの作動(及び、毛細管室を通る流体の流れの開始)の後、流体は、毛管作用により第2のマイクロ流体チャネルを通して受動的にポンプ輸送される場合がある。
【0009】
ここで図面、特に図1を参照する。図1は、例示的マイクロ流体デバイス10の一部の構成要素を示すブロック図を提供する。この例では、マイクロ流体デバイス10は、マイクロ流体チャネル12と、毛細管室14と、毛細管室14に近接して配置された流体アクチュエータ16とを含む。例えば、流体は、(毛管作用により)マイクロ流体チャネル12を通して毛細管室14へ受動的にポンプ輸送され、毛細管室14は、その中を通って流れる流体の流れを制限する場合がある。理解されるように、マイクロ流体チャネル12と毛細管室14との間の流体の移動及び表面張力は、マイクロ流体チャネル12と毛細管室14との間の接続部にある流体に、メニスカスの発生を引き起こすことがある。したがって、流体が毛細管室14を通って流れることは、制限される場合がある。毛細管室14を通る流体の流れを開始させるために、流体アクチュエータ16が、作動される場合がある。理解されるように、流体アクチュエータ16の作動は、毛細管室14によって制限された流体に、流体のメニスカスによる制限力に打ち勝つのに十分なだけの力を発生させる場合がる。このように、流体アクチュエータ16が作動されると、流体は、毛細管室14を通って流れ始めることができる。この例では、流体アクチュエータ16の作動後の流体の流れの方向は、例示的流れの方向18として示されている。一部の流体が毛細管室を通って流れると、毛管作用により流体はさらにポンプ輸送されることができる。
【0010】
理解されるように、流体アクチュエータ16の作動は、比較的短い持続時間である場合がある。一部の例では、流体アクチュエータ16は、特定の持続時間にわたって、特定の周波数でパルス駆動される場合がある。一部の例では、流体アクチュエータの作動は、約0.1ミリ秒(mS)から約10mSまでの範囲内である場合がある。本明細書に記載される一部の例では、流体アクチュエータ16の作動は、電気的作動を含む。このような例では、コントローラが、流体アクチュエータ16に電気的に接続される場合があり、コントローラによって電気信号を流体アクチュエータ16に送信することにより、流体アクチュエータ16が作動される場合がある。
【0011】
例えば、流体アクチュエータ16は、熱抵抗ベースのアクチュエータである場合がある。この例では、熱抵抗ベースのアクチュエータを作動させると、熱抵抗ベースのアクチュエータは、熱を発生することがある。熱抵抗ベースのアクチュエータによる熱の発生は、次いで、熱抵抗ベースのアクチュエータに近接する流体内に、気泡の形成を引き起こす場合がある。生成された気泡の形成及び/又は崩壊は、近接流体の移動を引き起こす場合がある。この例では、このように発生した気泡による近接流体の移動は、毛細管室によって引き起こされる流体のメニスカスの表面張力に基づく力に打ち勝つ場合があり、それによって毛細管室14を通る流体の流れが引き起こされる場合がある。
【0012】
別の例として、流体アクチュエータは、圧電膜ベースのアクチュエータである場合がある。この例では、圧電膜ベースのアクチュエータの電気的作動は、圧電膜ベースのアクチュエータの運動を引き起こす場合がある。圧電膜ベースのアクチュエータの運動は、次いて、圧電膜ベースのアクチュエータに近接する流体の移動を引き起こす場合がある。この例では、このような圧電膜ベースのアクチュエータによる近接流体の移動は、毛細管室によって引き起こされる流体のメニスカスの表面張力に基づく力に打ち勝つ場合があり、それによって毛細管室14を通る流体の流れが引き起こされる場合がある。
【0013】
図2Aは、例示的マイクロ流体デバイス50の一部の構成要素を示している。この例では、デバイス50は、毛細管室54と連通するマイクロ流体チャネル52を含む。流体アクチュエータ56は、毛細管室54に近接して配置されている。さらに、この例では、例示的デバイスは、制限部58を含む。マイクロ流体チャネル52及び毛細管室54は、方向矢印60で示される方向の背圧を受けていてもよい。したがって、この例では、マイクロ流体チャネル52及び/又は毛細管室54を通る流体の流れは、毛細管室54に発生する流体のメニスカスの表面張力によって制限される場合がある。したがって、加えられた背圧により流体に及ぼされる力は、毛細管室54においてメニスカスの表面張力によって引き起こされる制限力に打ち勝つには不十分である場合がある。
【0014】
この例では、流体アクチュエータ56の作動により、例示的方向矢印60の方向(すなわち、背圧の方向)への流体の流れを開始させることができる。ただし、留意されるように、流体アクチュエータ56の作動は、毛細管室54から例示的方向矢印62で示される方向(背圧の方向とは反対の方向)への流体の液滴の噴射を、さらに引き起こす場合がある。流体アクチュエータ56の作動後、流体は、毛細管室54、マイクロ流体チャネル52、及び制限部58を通って、背圧方向(すなわち、例示的方向矢印60)に流れる場合がある。この例では、流体が背圧の方向に流れる際に、流体は、制限部58を通って流れる場合がある。所定量の流体が毛細管室54、マイクロ流体チャネル52、及び制限部58を通って流れた後、制限部58にメニスカスが発生する場合があり、制限部58に発生したメニスカスの表面張力は、マイクロ流体デバイス50を通る流体のそれ以上の流れを制限する場合がある。
【0015】
図2Bは、図2Aの例示的マイクロ流体デバイス50の2B−2B線に沿った断面図を提供する。この例では、マイクロ流体チャネル52、毛細管室54、及び制限部58は、円形断面領域で示されている。ただし、理解されるように、種々の他の幾何形状が実施されてもよい。例えば、長方形及び/又は台形の断面領域が、種々のマイクロ流体チャネル、毛細管室及び/又は制限部に使用される場合がある。図2A図2Bの例では、毛細管室54は、マイクロ流体チャネル52の少なくとも1つの寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法(例えば、直径、半径、幅、高さなど)を有する。さらに、制限部58は、毛細管室54の少なくとも1つの寸法よりも小さい少なくとも1つの寸法を有する。理解されるように、他の例は、種々の特徴について異なる寸法及び相対的サイズを有する場合がある。
【0016】
図3は、マイクロ流体デバイス100の一部の構成要素のブロック図を提供する。この例では、マイクロ流体デバイス100は、第1のマイクロ流体チャネル102及び第2のマイクロ流体チャネル104を含む。図示のように、第1のマイクロ流体チャネル102は、第1の毛細管室106と連通しており、第2のマイクロ流体チャネル104は、第1の毛細管室106及び第2の毛細管室108と連通している。さらに、マイクロ流体デバイス100は、第1の毛細管室106に近接して配置された第1の流体アクチュエータ110と、第2の毛細管室108に近接して配置された第2の流体アクチュエータ112とを含む。したがって、この例では、第1のマイクロ流体チャネル102は、第1の毛細管室106の入口に接続され、第2のマイクロ流体チャネル104は、第1の毛細管室106の出口に接続され、第2のマイクロ流体チャネル104は、第2の毛細管室108の入口に接続されている。図示されていないが、第2の毛細管室108の出口は、別のマイクロ流体チャネル、あるいは、マイクロ流体デバイス100の他の構成要素にさらに接続される場合がある。さらに、理解されるように、この例のマイクロ流体チャネル102,104及び毛細管室106,108の配置は、直列配置と記載される場合がある。
【0017】
したがって、図3の例では、流体は、毛管作用により、第1のマイクロ流体チャネル102を通して第1の毛細管室106へ受動的にポンプ輸送される場合がある。第1の毛細管室106は、その中を通る流体の流れを制限する場合がある。第1の流体アクチュエータ110を作動させることにより、第1の毛細管室106を通る第2のマイクロ流体チャネル104への流体の流れを開始させることができる。流体は、毛管作用により、第2のマイクロ流体チャネル104を通して第2の毛細管室108へ受動的にポンプ輸送される場合がある。第2の毛細管室108は、その中を通る流体の流れを制限する場合がある。第2の流体アクチュエータ112を作動させることにより、第2の毛細管室108を通る流体の流れを開始させることができる。したがって、理解されるように、流体のポンプ輸送は、マイクロ流体チャネル102,104における毛管作用によって引き起こされる場合があり、流体アクチュエータ110,112を作動させることにより、毛細管室106,108を通る流体の流れが引き起こされる場合がある。
【0018】
図4は、例示的マイクロ流体デバイス150の一部の構成要素を示すブロック図を提供する。この例では、マイクロ流体デバイス150は、基板152を含む。前述のように、一部の例において、種々の構造/構成要素(例えば、マイクロ流体チャネル、毛細管室、流体入力、流体リザーバなど)は、基板内に微細加工される場合がある。この例では、マイクロ流体デバイス150は、流体入力部154と、流体リザーバ156a、156bとを含む。第1のマイクロ流体チャネル158は、流体入力部154と連通しており、第2のマイクロ流体チャネル160は、第1のリザーバ156aと連通しており、第3のマイクロ流体チャネル162は、第2のリザーバ156bに接続されている。
【0019】
この例では、マイクロ流体デバイス150は、ラボ・オン・チップ(lab−on−a−chip)実施形態であってもよく、当該デバイスを使用して、流体サンプルを処理及び/又は分析することができる場合がある。流体サンプルは、流体入力部154を介して処理/分析のために投入される場合がある。理解されるように、分析処理のための追加の試薬が、流体リザーバ156a、156b内に貯蔵されている場合がある。図示のように、第1のマイクロ流体チャネル158は、第1の毛細管室164と連通している場合があり;第2のマイクロ流体チャネル160は、第2の毛細管室166と連通している場合があり;第3のマイクロ流体チャネルは、第3の毛細管室168と連通している場合がある。したがって、理解されるように、流体は、第1のマイクロ流体チャネル158を介して流体入力部154から毛細管室164へ;第2のマイクロ流体チャネル160を介して第1のリザーバ156aから第2の毛細管室166へ;及び、第2のリザーバ156bから第3の毛細管室168へ、それぞれ受動的にポンプ輸送される場合がある。理解されるように、この例のマイクロ流体チャネル158162及び毛細管室164168の配置は、平行配置と記載される場合がある。
【0020】
先の例で説明したように、各毛細管室164〜168は、その中を通る流体の流れを制限する場合がある。したがって、流体は、入力部154、第1のリザーバ156a、及び第2のリザーバ156bから、マイクロ流体チャネル158〜162を通って、毛細管室164〜168へと流れ、そこで流体の流れは、毛細管室164〜168によって制限される場合がある。この例では、各毛細管室164168は、混合チャンバ170と連通している。マイクロ流体デバイス150は、各毛細管室164〜168に近接した流体アクチュエータ172〜176をさらに含む。
【0021】
この例では、第1の流体アクチュエータ172を作動させることにより、第1の毛細管室164を通る流体の流れを開始させることができ、それによって流体は、入力部154から混合チャンバ170へとポンプ輸送される。同様に、第2の流体アクチュエータ174を作動させることにより、第2の毛細管室166を通る流体の流れを開始させることができ、それによって流体は、第1のリザーバ156aから混合チャンバ170へとポンプ輸送される。さらに、第3の流体アクチュエータ176を作動させることにより、第3の毛細管室168を通る流体の流れを開始させることができ、それによって流体は、第2のリザーバ156bから混合チャンバ170へとポンプ輸送される。図示のように、マイクロ流体デバイス150は、混合チャンバ170内に配置された種々の他の構成要素178を含む場合がある。他の構成要素178は、混合チャンバ内に配置された混合アクチュエータを含む場合があり、混合アクチュエータを作動させることにより、混合チャンバ内の流体(例えば、入力部154、第1のリザーバ156a、及び/又は第2のリザーバ156bからの流体)を混合させることができる。一部の例では、他の構成要素178は、加熱要素を含む場合があり、加熱要素を電気的に作動させることにより、混合チャンバ170内の流体を加熱させることができる。
【0022】
この例では、マイクロ流体デバイス150は、混合チャンバ170と連通するマイクロ流体チャネル182内に配置された種々の検出器180を含む場合がある。一部の例では、検出器182は、流体サンプルを分析し、種々のタイプの試験(例えば、DNA試験、化学物質存在試験など)を実施するためのセンサである場合がある。例えば、検出器180は、光学センサシステム(一体型光源又は外部光源と共に使用される光学センサを含むことがある)を含む場合がある。別の例として、検出器180は、電気インピーダンスセンサを含む場合がある。一部の例では、検出器180は、温度センサを含む場合がある。一例では、検出器180は、電気化学センサを含む。理解されるように、共通の基板(「オン・チップ」とも呼ばれる)上に検出器が組み込まれた種々の例は、ラボ・オン・チップ・デバイスと呼ばれることがある。基板は、シリコンを含む任意の適当な材料を含むことができる。基板は、任意の適当な幾何形状(形状及びサイズを含む)を有することができる。例えば、形状は、正方形、長方形、又は他の任意の形状などの平行四辺形であってもよい。形状は、不規則な形状であってもよい。基板のサイズは、特定の値である必要はない。一部の例では、寸法は、ミリメートルの範囲であってもよい。用語「寸法」は、基板の形状に応じて、幅、長さなどを指すことがある。例えば、基板の長さは、0.5mm〜10mmであってもよく、例えば1mm〜8mm、2mm〜6mmなどであってもよい。他の値も可能である。一例では、長さは、2mmである。例えば、基板の幅は、0.1mm〜5mmであってもよく、例えば、0.5mm〜4mm、1mm〜2mmなどであってもよい。他の値も可能である。
【0023】
さらに、一部の例では、マイクロ流体デバイスの各検出器は、異なる構成、及び種々のセンサの組み合わせを含む場合がある。本明細書に記載される一部の例によれば、少なくとも1つのオンチップ検出器180を用いて、流体入力部154に提供されたサンプルの分析を容易にすることができる。
【0024】
図示のように、マイクロ流体デバイス150は、流体アクチュエータ184を含む場合があり、流体アクチュエータ184を作動させることにより、流体を混合チャンバ170から、検出器180が配置される場合があるマイクロ流体チャネル182へとポンプ輸送することができる。したがって、図4の例示的マイクロ流体デバイス150に類似する種々の例では、流体は、混合チャンバ170から、検出器180が配置されたマイクロ流体チャネル182の中へポンプ輸送される場合があり、そのような流体が、検出器180を用いて分析される場合がある。検出器180が配置されたマイクロ流体チャネル182は、廃液出力部186に出力することができる。
【0025】
理解されるように、図4のマイクロ流体デバイス150に類似する種々の例において、流体アクチュエータ172〜176、他の構成要素178、流体アクチュエータ184及び/又は検出器180は、コントローラに電気的に接続される場合がある。したがって、コントローラは、これらを電気的に作動させる場合がある。コントローラは、これらの構成要素から電気信号の形式でデータを受信する場合がある。例えば、コントローラは、流体の分析に対応する検出器180からセンサデータを受信する場合がある。
【0026】
「コントローラ」という用語が本明細書で使用される場合があるが、理解されるように、コントローラは、種々のタイプのデータ処理リソースを含む場合がある。コントローラは、例えば、少なくとも1つのハードウェアベースのプロセッサを含む場合がある。同様に、コントローラは、1以上の複数の汎用データプロセッサ及び/又は1以上の特殊用途のデータプロセッサを含む場合がある。例えば、コントローラは、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はデータ処理のための論理構成要素の他のそのような構成を含む場合がある。一部の例では、コントローラは、種々の実行可能命令を記憶しているメモリリソースを含む場合がある。命令の実行により、コントローラ及び/又はデバイスは、本明細書に記載された種々の機能、プロセス、及び/又は一連の動作を実行する場合がある。さらに、これらの例において、メモリリソースは、メモリと呼ばれることがある機械読み取り可能な記憶媒体を含む場合がある。メモリリソースは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)デバイス、ならびに他のタイプのメモリ(例えば、キャッシュメモリ、不揮発性メモリデバイス、読み出し専用メモリなど)を表す場合がある。メモリリソースは、RAM、ROM、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ又は他の半導体メモリ技術、あるいは、種々の実行可能命令を記憶するために使用され得る任意の他の媒体を含む場合がある。なお、メモリリソース556は、非一時的なものであってもよい。
【0027】
一部の例では、コントローラは外部に配置され(例えば、データ処理システム内に)配置され、例示的マイクロ流体デバイスの種々の電気接続及び導電性トレースを介して、当該マイクロ流体デバイスの種々の構成要素に電気的に接続される場合がある。他の例では、マイクロ流体デバイスは、共通の基板上に配置され、種々の導電性トレースを介して当該マイクロ流体デバイスの種々の構成要素に電気的に接続されたコントローラを含む場合がある。
【0028】
また、図4の例示的デバイス150は、3つの毛細管室164〜168と連通する3つのマイクロ流体チャネル172〜176を示しているが、理解されるように、他の例では、マイクロ流体チャネルと毛細管室の種々の他の組み合わせが実施される場合がある。例えば、もっと多数又は少数のマイクロ流体チャネルが、もっと多数又は少数の毛細管室と直列及び/又は並列に接続される場合がある。さらに、類似する種々の例では、もっと多数又は少数の検出器180、入力部154、リザーバ156a〜156b、流体アクチュエータ172〜176、及び/又は他の構成要素178が実施される場合がある。
【0029】
図5A図5Bは、例示的マイクロ流体デバイス200内の流体の流れを示すブロック図を提供する。種々の例において、マイクロ流体デバイス200は、毛細管室204に連通するマイクロ流体チャネル202を含む。さらに、流体アクチュエータ206が、毛細管室204に近接して配置されている。図示のように、マイクロ流体チャネル202は、毛細管室204を流体リザーバ又は入力部208に連通することができる。図5Aに示されるように、流体は、マイクロ流体チャネル202内の毛管作用により、リザーバ/入力部208から毛細管室204へ受動的にポンプ輸送されることができる。図5Aでは、流体のメニスカス210が、マイクロ流体チャネル202と毛細管室204との間の接続部に発生している。このように、マイクロ流体チャネル202から毛細管室204への寸法の変化は、メニスカス210を引き起こすことがあり、それによって、毛細管室204を通る流体の流れは、制限される場合がある。図5Bは、毛細管室204を通る流体の流れが、方向矢印212によって示される方向に開始されることを示している。この例では、毛細管室204を通る流体の流れは、流体アクチュエータ206の作動によって開始されることができる。例えば、流体アクチュエータが圧電膜ベースのアクチュエータである場合、流体アクチュエータをパルス駆動することにより、流体アクチュエータに近接する流体の移動を引き起こすことができる。流体アクチュエータに近接する流体の移動は、メニスカス210による毛細管室204の制限力に打ち勝つポンプ輸送力を引き起こすことができる。
【0030】
図5A図5Bの例において理解されるように、毛細管室204は、マイクロ流体チャネル202の対応する寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法(例えば、半径、幅、高さなど)を有する。例えば、マイクロ流体チャネルの直径は、毛細管室204の直径よりも小さい。理解されるように、マイクロ流体チャネル202から毛細管室204へのこのような寸法の変化は、マイクロ流体チャネル202によって流体に引き起こされる毛管作用を破壊する。そのため、流体は、メニスカス210を形成する。
【0031】
図6A図6Cは、例示的マイクロ流体デバイス250内の流体の流れを示すブロック図を提供する。図6A図6Cにおいて、例示的マイクロ流体デバイス250は、毛細管室252と、内部にノズルオリフィス259が形成されたノズル層254と、マイクロ流体チャネル256と、制限部258と、流体アクチュエータ260とを含む。この例では、毛細管室252、マイクロ流体チャネル256、及び制限部258にある流体は、例示的方向矢印262で示される方向の背圧を受けており、それによって毛細管室252にメニスカス264が発生している。前述のように、毛細管室252内の流体に及ぼされる毛細管力は、背圧の方向への流体の流れを制限する場合がある。図6A図6Cの例では、流体アクチュエータ260は、熱抵抗を利用した流体アクチュエータである場合がある。
【0032】
したがって、図6Bでは、流体アクチュエータ260が作動されると、流体アクチュエータ260に近接する流体内に気泡280が形成される。図示のように、気泡280は、流体の液滴282を移動させ、それによって、流体の液滴は、ノズル層254のノズルオリフィス259を通して噴射される。したがって、流体アクチュエータ260の作動による気泡280の形成は、背圧の方向(例示的方向矢印262)への流体の流れをさらに引き起こす場合がある。図示のように、流体の液滴282は、ノズルオリフィス259から、背圧の方向262とは反対の方向に噴射される。
【0033】
図6Cでは、流体は、毛細管室252、マイクロ流体チャネル256、及び制限部258から、背圧262の方向に流れた。特に、所定量の流体が、毛細管室252、マイクロ流体チャネル256、及び制限部258を通って流れる場合があり、それによって、制限部258にメニスカス290が発生している。メニスカス290の表面張力及び制限部258に関連する毛管作用により、流体のそれ以上の流れは、制限部258によって制限される場合がある。理解されるように、毛細管室252を通って流れることができる流体の量は、マイクロ流体チャネル256と毛細管室252の容積サイズに対応する場合がある。したがって、マイクロ流体チャネル256、毛細管室252、及び制限部258を通って流れることができる流体の量は、毛細管室252及びマイクロ流体チャネル256の容積寸法に少なくとも部分的に基づいて、予め決定されることができる。
【0034】
図6A図6Cの例において理解されるように、毛細管室252は、マイクロ流体チャネル256の対応する寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法(例えば、半径、幅、高さなど)を有する。例えば、毛細管室252の直径は、マイクロ流体チャネル256の直径よりも大きい場合がある。理解されるように、毛細管室252のこの少なくとも1つの寸法は、背圧262の方向とは反対の方向の毛細管力を引き起こすことができる。そのため、流体は、メニスカス264を形成する。同様に、制限部258は、毛細管室252よりも小さい少なくとも1つの寸法を有する場合があり、それによって、所定の体積の流体が背圧262の方向に流れた後、制限部258にメニスカス290が生成され、流体のそれ以上の流れを制限する場合がある。
【0035】
図7は、例示的マイクロ流体デバイスにより実施されることがある一連の動作を示すフロー図300を提供する。この例では、流体は、マイクロ流体チャネルを介して毛管破壊チャネルに受動的にポンプ輸送される場合がある(ブロック302)。毛管破壊チャネルを通る流体の流れは、毛細管室によって制限される場合がある(ブロック304)。流体アクチュエータを作動させることにより、毛細管室を通る流体の流れを開始する場合がある(ブロック306)。一部の例では、所定量の流体が流れた後、流体の流れは、マイクロ流体デバイスの制限部により制限される場合がある(ブロック308)。
【0036】
図7のフロー図は、本明細書に記載された種々の例示的プロセス及び方法を実施するために例示的マイクロ流体デバイスによって実施されることがある例示的一連の動作を提供する。一部の例では、図7のフロー図に開示した例示的プロセス及び/又は方法の一部の動作は、マイクロ流体デバイスにおいて実施されるコントローラによって実施される場合がある。
【0037】
このように、本明細書に記載された種々の例は、少なくとも1つの毛細管室がマイクロ流体チャネルと連通していることがあるマイクロ流体デバイスの種々の例を提供する。これらの例において、毛細管室は、マイクロ流体デバイス内の流体の流れを制限する場合がある。また、毛細管室を通る流体の流れは、毛細管室に近接して配置された流体アクチュエータの作動により開始される場合がある。さらに、本明細書に記載された種々の例示的デバイスによれば、少量の流体(例えば、約1nL〜約1pL)の操作が容易になる場合がある。本明細書に記載された種々の例によれば、このような少量の流体の受動的ポンプ輸送が容易になることから、これらの例は、マイクロ流体システムにおいてバルブ機構として実施される場合がある。
【0038】
上記の説明は、本明細書に記載された原理の種々の例を図示説明するために提示されたものである。この説明は、網羅的であることも、それらの原理を開示した厳密な形態に限定することも、意図していない。上記の開示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7