特許第6868041号(P6868041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6868041ベクトル値画像をノイズ除去する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868041
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ベクトル値画像をノイズ除去する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20210426BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20210426BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20210426BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61B6/03 350X
   G06T5/00 705
   G06T1/00 290B
   A61B6/03 373
   A61B6/03 360B
   A61B5/055 380
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-556990(P2018-556990)
(86)(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公表番号】特表2019-519270(P2019-519270A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2017059582
(87)【国際公開番号】WO2017190968
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2020年4月9日
(31)【優先権主張番号】16168100.2
(32)【優先日】2016年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ベルグナー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブレンデル ベルンハルド ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】コエラー トーマス
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−534665(JP,A)
【文献】 特開2014−158267(JP,A)
【文献】 特開2015−072125(JP,A)
【文献】 特開2010−231738(JP,A)
【文献】 特表2014−520295(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0032396(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/043870(WO,A1)
【文献】 Philipp Urban,Spectral image reconstruction using an edge preserving spatio-spectral Wiener estimation,J.Opt.Soc.Am.A,米国,Opt.Soc.Am,2009年,Vol.26,No.8,pp.1866-1875
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
A61B 5/055
G06T 1/00
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクトル値画像をノイズ除去するための装置であって、前記装置は、
前記ベクトル値画像の各ピクセルに関して相関ノイズのモデルを定義する初期共分散行列を有する初期損失関数を生成するように構成される生成器と、
前記初期共分散行列の少なくとも1つの行列要素及び/又は少なくとも1つの部分行列を変更することによって、前記初期損失関数に基づいて、少なくとも1つの最終共分散行列のセットを有する最終損失関数を提供するように構成されるプロセッサと、
前記少なくとも1つの最終共分散行列の前記セットを有する前記最終損失関数を使用して前記ベクトル値画像をノイズ除去するように構成されるノイズ抑制器と
を有
前記プロセッサは、前記初期共分散行列を2つ以上の行列に分割し、それによって、前記ベクトル値画像の少なくとも2つの異なる空間周波数帯域に基づいて少なくとも2つの最終共分散行列に関して前記セットを提供することによって、前記初期共分散行列の前記少なくとも1つの行列要素及び/又は前記少なくとも1つの部分行列を変更するように構成される、
装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記初期共分散行列の前記少なくとも1つの行列要素及び/又は前記少なくとも1つの部分行列を変更するように構成され、前記少なくとも2つの最終共分散行列は、少なくとも1つの高空間周波数帯域及び少なくとも1つの低空間周波数帯域によって定義される、前記ベクトル値画像の少なくとも2つの異なる空間周波数帯域に基づき、前記高空間周波数帯域は前記低空間周波数帯域より高い周波数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、周波数ノイズの相関ノイズ除去及びクロストーク除去の間のチューニングに基づいて、前記少なくとも2つの最終共分散行列の前記セットを提供するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記生成器は、前記少なくとも1つの初期共分散行列及び前記ベクトル値画像の行列積に正規化項を加えることによって前記初期損失関数を生成するように構成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記生成器は、正規化強度パラメータを有する前記正規化項を加えることによって前記初期損失関数を生成するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記生成器は、前記ベクトル値画像にわたるすべてのピクセル位置に関して一定である前記少なくとも1つの初期共分散行列を有する前記初期損失関数を生成するように構成される、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記ベクトル値画像の最尤CT再構成の物質投影領域における周波数依存共分散チューニング、及び/又は
前記ベクトル値画像のガウスノイズモデルによる投影ノイズ除去
を実行することによって、前記初期損失関数に基づいて、前記少なくとも1つの最終共分散行列の前記セットを有する前記最終損失関数を提供するように構成される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記ベクトル値画像の少なくともn個の物質の物質不均一性のエッジにおける前記初期共分散行列の非対角要素の絶対値を減少させることによって、前記初期損失関数に基づいて、前記少なくとも1つの最終共分散行列の前記セットを有する前記最終損失関数を提供するように構成される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、低減されたノイズレベルを伴う前記ベクトル値画像から前記物質不均一性の前記エッジを抽出するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、Sobel演算子、Prewitt演算子、Marr-Hildreth演算子、Laplacian演算子、又は差分エッジ検出を前記ベクトル値画像に適用することによって、前記物質不均一性の前記エッジを抽出するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置を有する医用イメージングシステム。
【請求項12】
ベクトル値画像をノイズ除去する方法であって、前記方法は、
生成器によって前記ベクトル値画像の各ピクセルについて相関ノイズのモデルを定義する少なくとも1つの初期共分散行列を有する初期損失関数を生成するステップと、
プロセッサによって前記初期共分散行列の少なくとも1つの行列要素及び/又は少なくとも1つの部分行列を変更することによって、前記初期損失関数に基づいて、少なくとも1つの最終共分散行列のセットを有する最終損失関数を提供し、前記初期共分散行列を2つ以上の行列に分割し、それによって、前記ベクトル値画像の少なくとも2つの異なる空間周波数帯域に基づいて、少なくとも2つの最終共分散行列に関して前記セットを提供することによって、前記初期共分散行列の前記少なくとも1つの行列要素及び/又は前記少なくとも1つの部分行列を変更するステップと、
ノイズ抑制器によって、少なくとも1つの最終共分散行列の前記セットを有する前記最終損失関数を用いて前記ベクトル値画像をノイズ除去するステップと
を有する、方法。
【請求項13】
前記初期損失関数に基づく少なくとも1つの最終共分散行列の前記セットを有する前記最終損失関数は、前記ベクトル値画像の物質不均一性のエッジにおける前記初期共分散行列の非対角要素の絶対値を減少させることによって提供される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反復画像再構成の分野に関する。特に、本発明は、ベクトル値画像をノイズ除去するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトル領域又は多重エネルギーX線コンピュータ断層撮影の画像領域における反復的なノイズ除去では、コスト又は損失関数が反復的に解かれ、これは典型的には
である。ここで、iはi番目の画像ピクセルのインデックスである。Ci-1は同一画像ピクセルiについての物質画像(例えば、光効果及びコンプトン散乱)の物質値の間のノイズを記述する共分散行列の逆数である。 μi,origは、入力画像のピクセルiに対する異なる物質値を含むベクトルであり、μiはピクセルiのノイズ除去画像の物質値を含む。
【0003】
単一物質の場合、Ci-1は各ピクセルの逆ノイズ分散である。 R(μ)は正則化項、βは正則化強度パラメータである。Ci-1の項は、各ピクセルの相関ガウスノイズのモデルを反映している。
【0004】
マルチエネルギーCTでは、1つの画像ピクセルのノイズは物質の間で強く相関しているため、Ci-1によって導入された結合は、効率的に相関するノイズ部分を除去するが、経験は、ノイズ除去された物質画像の間のクロストークをもたらし、例えばヨウ素を含むべきでない画像にヨウ素部分が現れることがあることを示す。
【0005】
US 2010/0220912 A1は、検査対象のスキャンと、異なるX線エネルギースペクトルに基づいてそれぞれ行われる少なくとも2つのCT画像データ記録の生成とを伴うCT画像データのノイズ低減のための装置及び方法を記載している。
【0006】
米国特許出願公開第2013/0343624 A1号は、マルチスペクトルX線断層撮影データを取得するステップと、マルチスペクトルX線断層撮影データの物質分解を実行して複数の物質サイノグラムを生成するステップと、少なくとも2つの物質分解されたサイノグラムの結合尤度項を含む関数を反復的に最適化することによって、複数の物質成分密度画像を再構成するステップとを含む、対象の画像成分密度を再構成するステップのための方法を記述する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ベクトル値画像をノイズ除去するための装置及び方法を改善する必要があるかもしれない。
【0008】
これらのニーズは、独立請求項の主題によって満たされる。さらなる例示的な実施形態は、従属請求項及び以下の説明から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ベクトル値画像をノイズ除去するための装置に関する。この装置は、生成器、プロセッサ、及びノイズ抑制器を備える。
【0010】
生成器は、ベクトル値画像の各ピクセルの相関ノイズのモデルを定義する少なくとも1つの初期共分散行列を含む初期損失関数を生成するように構成される。
【0011】
プロセッサは、初期共分散行列の少なくとも1つの部分行列及び/又は少なくとも1つの行列要素を変更することによって、初期損失関数に基づいて、少なくとも1つの最終共分散行列のセットを含む最終損失関数を提供するように構成される。
【0012】
ノイズ抑制器は、少なくとも1つの最終共分散行列のセットを含む最終損失関数を使用してベクトル値画像をノイズ除去するように構成される。
【0013】
換言すれば、本発明は、ノイズ除去処理が改善されるので、誤った診断結果が回避されるという利点を提供する。
【0014】
本発明は、例えば、1つのピクセル又はサブ領域の物質値の間に周波数特定相関を導入することによってクロストークを有利に低減する。すなわち、低い空間周波数及び高い空間周波数画像を備える画像コンテンツは、ノイズモデルにおける異なる相関度を有し得る。
【0015】
さらに本発明の第2の態様は、第1の態様による装置又は第1の態様の何れかの実装形態による装置を含む医用撮像システムに関する。
【0016】
さらに本発明の第3の態様は、ベクトル値画像をノイズ除去する方法であって、前記方法は、
【0017】
生成器によって前記ベクトル値画像の各ピクセルについて相関ノイズのモデルを定義する少なくとも1つの初期共分散行列を含む初期損失関数を生成するステップと、
【0018】
プロセッサによって初期共分散行列の少なくとも1つの部分行列及び/又は少なくとも1つの行列要素を変更することによって、初期損失関数に基づいて少なくとも1つの最終共分散行列のセットを含む最終損失関数を提供するステップと、
【0019】
ノイズ抑制器によって少なくとも1つの最終共分散行列のセットを含む最終損失関数を用いてベクトル値画像をノイズ除去するステップと
を有する、方法に関する。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、初期共分散行列を2つ以上の行列に分割し、それによって、ベクトル値画像の少なくとも2つの異なる空間周波数帯域に基づいて少なくとも2つの最終共分散行列に関して設定を提供することによって、初期共分散行列の少なくとも1つの部分行列及び/又は少なくとも1つの行列要素を変更するように構成される。例えば、少なくとも2つの異なる空間周波数帯域の低周波数帯域における相関が低下し、したがって、クロストークが有利に低減される。
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、初期共分散行列の少なくとも1つの部分行列及び/又は少なくとも1つの行列要素を変更するように構成され、少なくとも2つの最終共分散行列は、ベクトル値画像の少なくとも2つの異なる空間周波数帯域に基づいて、少なくとも1つの高空間周波数帯域と少なくとも1つの低空間周波数帯域とによって規定され、高空間周波数帯域は低空間周波数帯域より高い周波数を含む。これは、有利なことに、調整することによってチューニングされることができるクロストークと相関ノイズ除去性能との間のトレードオフが提供されることを可能にする。
【0022】
換言すれば、例えば、周波数依存方法の場合、入力共分散は2つ以上の部分に分割されるので、多数の共分散行列が提供される。ノイズ抑制器の動作中、画像は、例えば、高周波数の画像と低周波数の画像とに分割され、両方は、これらの個別の共分散行列の上記セットを使用してノイズ除去され、すなわち、少なくとも2つの最終共分散行列のうちの1つの行列は高周波に使用され、少なくとも2つの最終共分散行列のうちの1つの行列が、低周波に対して使用される。
【0023】
言い換えれば、本発明の例示的な実施形態によれば、異なる画像部分に使用される複数の共分散行列が存在し、異なる周波数帯域の画像の分割は、ノイズ抑制器によるノイズ除去の間に実行され得る。
【0024】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、クロストーク除去と周波数ノイズの相関ノイズ除去との間のチューニングに基づいて、少なくとも2つの最終共分散行列の前記セットを提供するように構成される。これにより、改善されたノイズ除去性能が有利に得られる。
【0025】
本発明の例示的な実施形態によれば、生成器は、少なくとも1つの初期共分散行列とベクトル値画像との行列積に正規化項を加えることによって、初期損失関数を生成するように構成される。これは、正則化項を調整することによって、周波数ノイズの改善された相関ノイズ除去を有利に提供する。
【0026】
本発明の例示的な実施形態によれば、生成器は、正則化強度パラメータを含む正則化項を加算することによって初期損失関数を生成するように構成される。これにより、改善されたノイズ除去性能が有利に得られる。
【0027】
本発明の例示的な実施形態によれば、生成器は、ベクトル値画像にわたるすべてのピクセル位置に対して一定である、少なくとも1つの初期共分散行列を含む初期損失関数を生成するように構成される。これにより、有利なことに、低減される必要とされる計算能力による、改善されたノイズ除去が可能になる。
【0028】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、初期共分散行列の分割に基づいて最終共分散行列を含む最終損失関数を提供するように構成される。このことは、低減されるノイズ除去アーチファクトによりノイズ除去性能を改善することを有利に可能にする。
【0029】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、
i)ベクトル値画像の最尤CT再構成の物質投影領域における周波数依存共分散チューニング、及び/又は
ii)ベクトル値画像のガウスノイズモデルによる投影ノイズ除去
を実行することによって、初期損失関数に基づいて、少なくとも1つの最終共分散行列のセットを含む最終損失関数を提供するように構成される。
【0030】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、ベクトル値画像の少なくともnの材料の不均一性材料のエッジにおける初期共分散行列の非対角要素の絶対値を減少させることによって、初期損失関数に基づいて、少なくとも1つの最終共分散行列のセットを含む最終損失関数を提供するように構成される。これは、有利には、物質画像の不均一性のエッジで共分散行列における非対角要素の絶対値を減少させる方法を提供する。これにより、改善されたノイズ除去性能が有利に得られる。
【0031】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、ノイズレベルが低減されたベクトル値画像から物質の不均一性のエッジを抽出するように構成される。これは、有利には、低減され、抑制されたクロストークを伴う、改善された画像ノイズ除去を提供する。
【0032】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、Sobel演算子、Prewitt演算子、Marr-Hildreth演算子、Laplacian演算子、又は差分エッジ検出をベクトル値画像に適用することによって、物質の不均一性のエッジを抽出するように構成される。これにより、改善されたノイズ除去性能が有利に得られる。
【0033】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、サポートベクターマシン又はニューロンネットワークのような分類アルゴリズムを画像から抽出された特徴に適用することによって、物質の不均一性のエッジを抽出するように構成される。これにより、改善されたノイズ除去性能が有利に得られる。
【0034】
本発明の例示的な実施形態によれば、プロセッサは、トレーニングデータセットを備える以前の訓練又は事前訓練に基づいて、エッジのような物質の不均一性が存在する可能性が最も高い場合、各ピクセルにおいて、平均値よりも高いか又は初期にもたらされる値より高い値を与える分類アルゴリズムを適用するように構成される。言い換えれば、ある確率でエッジが検出された場合、例えば、95%の確率でエッジの検出が存在する場合、その検出は真である。高い値を有するピクセルの場合、共分散及びしたがってクロストークは、分類アルゴリズムを適用するプロセッサによって有利に低減される。
【0035】
本発明の方法を実行するコンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体に格納することができる。コンピュータ可読媒体は、フロッピーディスク、ハードディスク、CD、DVD、USB(Universal Serial Bus)記憶装置、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)又はEPROM消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ)である。コンピュータ可読媒体は、プログラムコードをダウンロードすることを可能にするデータ通信ネットワーク、例えばインターネットであってもよい。
【0036】
本明細書で説明される方法、システム、及びデバイスは、デジタル信号プロセッサ、DSP、マイクロコントローラ、又は他の何れかのサイドプロセッサ内のソフトウェアとして、又は特定用途向け集積回路、ASIC、CPLD 、又はFPGA内のハードウェア回路として、実装される。
【0037】
本発明は、デジタル電子回路、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせで、例えば従来の医用撮像装置の利用可能なハードウェア又は本明細書に記載の方法を処理するための専用の新しいハードウェアで実施されることができる。
【0038】
本発明及びそれに付随する利点のより完全な理解は、縮尺通りではない以下の概略図を参照することによって明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明を説明するためのマルチチャネル光/散乱再構成からの散乱画像のノイズ除去結果を示す。
図2】本発明を説明するための、グランドトゥルース散乱画像の点でマルチチャネル光/散乱再構成からの散乱画像のノイズ除去結果を示す。
図3】本発明を説明するための模式的な光効果画像及びコンプトン散乱画像を示す図である。
図4】本発明の例示的な実施形態によるベクトル値画像及び医用画像システムをノイズ除去するための装置の概略図を示す。
図5】本発明の例示的な実施形態によるベクトル値画像をノイズ除去するためのフローチャート図の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面の図は、単に模式的なものであり、スケーリング関係又はサイズ情報を提供することを意図するものではない。異なる図面において、同様の又は同一の要素には同じ参照番号が付されている。一般的に、同一の部品、ユニット、実体又はステップには、同じ参照符号が付されている。
【0041】
図1は、本発明を説明するためのマルチチャネル光/散乱再構成からの散乱画像のノイズ除去結果を示す。
【0042】
図1に示すように、画像は異なる空間周波数帯域、例えば高い空間周波数及び低い空間周波数に分割される。周波数帯域に依存して、異なる物質間の相関がそれからコスト関数において変更される。
【0043】
図1において、上段は、低周波数においてゼロに設定された共分散を有する新規な手法を示す。下段は、従来のノイズ除去を示す。列にはさまざまなレベルの正則化強度が示されている。右下の画像は、図2の後半に示すグランドトゥルースと比較する場合、挿入におけるクロストークの量が多いことを示している。ベクトル値画像をノイズ除去する方法は、図1の右上の図に示すように、このクロストークを低減する改善されたアプローチを提供する。
【0044】
例えば、ベクトル値の画像をノイズ除去する方法は、低周波数帯域の物質間の相関を低下させ、したがって、これらの帯域の物質間のクロストークを低減することを可能にする。これは、この場合、ノイズモデルが相関の減少のためにより少ない相関を仮定するので、これらの帯域内の相関ノイズを除去する性能の低下を犠牲にする。
【0045】
本発明の例示的な実施形態によれば、低周波ノイズの相関ノイズ除去とクロストークとの間のチューニングが、プロセッサ及び/又はノイズ抑制器によって提供される。ベクトル値画像をノイズ除去する方法を適用することにより、図1及び図2に示すような改善された手法が提供される。特に、図1及び図2は、本方法がどのようにしてクロストークを低減するかの例を示している。
【0046】
図2は、本発明を説明するためのグランドトゥルース散乱画像の点において、マルチチャネル光/散乱再構成からの散乱画像のノイズ除去結果を示す。
【0047】
本発明の例示的な実施形態によれば、
のような上記抽象化コスト関数L(μ)がもたらされる。ここで画像ベクトルμは全ての物質及びピクセル位置からなる。行列Wは、対角上の元の問題の逆共分散を有するブロック対角行列として見られることができる。 μorigは、入力画像の各ピクセルについて異なる物質値を含むベクトルであり、μは各ピクセルのノイズ除去画像の物質値を含む。
【0048】
単一物質の場合、Wは各ピクセルの逆ノイズ分散である。 R(μ)は正則化項、βは正則化強度パラメータである。
【0049】
高空間周波数と低空間周波数に分割される周波数、HFとLFを導入し、
となる。ここでμ-μorigの差をdと略記する。行列FHF及びFLFは、フィルタリングを実行する。周波数分割において、たとえばFHF + FLF = I、すなわち単位行列を選択することができるので、フィルタを追加すると元の問題が残る。
【0050】
次のステップで、例えばコレスキー分解によりWを
に分割することができる。
【0051】
これは、この場合、KHF及びKLFを選択することによって、各ピクセル位置における高及び低周波数に対して異なるKTを選択する機会
を与えている。
【0052】
本発明の例示的な実施形態によれば、共分散行列は、画像間の全ピクセル位置に対して一定である。コスト関数は次のように、
と再定式化することができる。ここで
は、i番目の物質のピクセル値を持つ画像ベクトルである。 ci,jは、逆共分散行列の係数である。
は、それに応じて差ベクトルを示す。
フィルタリングは、この場合、
を介して異なって導入される。
ここでci,j、LF及びci,j、HFは低周波数及び高周波数の逆共分散である。ここでも、FLFとFHFは空間フィルタであり、ここでは異なる物質画像で動作する。コスト関数は
及び
を選択することによって明らかに元の問題に対して減らされることができる。
【0053】
後者の条件は、周波数領域でのノイズエネルギーの分割に相当する。
【0054】
本発明の例示的な実施形態によれば、元の問題は、追加項
をコスト関数又は損失関数に加算することによって変更される。ここでも、クロストークと相関ノイズ除去性能との間のトレードオフは、調整することによってチューニングされることができる。
【0055】
本発明の例示的な実施形態によれば、ガウスノイズモデルを用いた最尤CT再構成又は投影ノイズ除去の物質投影領域における周波数依存共分散チューニングを導入する。
【0056】
μ及びμorigの代わりに前方投影画像Aμ及び測定された投影を再構成するために使用する点を除いて、上記の実施形態と同じ形式を使用することができる。
【0057】
図3は、本発明を説明するための概略的な光効果画像及びコンプトン散乱画像を示す。
【0058】
図3は提案手法のシミュレーションデータへの適用を示す。上の行は、光効果画像、下の行はコンプトン散乱画像を示す。
【0059】
図3では、左から右へ、以下の画像が示されている。i)グランドトゥルース(ファントム)、ii)ノイズ除去のためのノイズ入力、iii)元の共分散行列によるノイズ除去、iv)本発明のノイズ除去による変更された共分散行列を用いたノイズ除去である。
【0060】
図3では、より大きな不均質性を囲む小さな不均一性が表示されている。これらの小さな不均一性は、左上に示すように光画像にのみ現れ、左下に示すように散乱画像には現れない。
【0061】
それにもかかわらず、元の共分散行列を用いてノイズ除去を適用した後、これらの不均一性は、散乱画像にも現れる(下、右から2番目)。これは、上述のクロストークの一つの現れである。変更された共分散を伴うノイズ除去を適用すると、このクロストークは大幅に減少する(右下)。
【0062】
本発明の例示的な実施形態によれば、マルチエネルギーCTにおいて、1つの画像ピクセルに対するノイズは、物質間で強く相関しており、Ci-1によって導入される結合は相関するノイズ部分を効率的に除去するが、経験は、物質画像間のクロストークにもつながることを示している。例えばヨウ素部分が、ヨウ素などが含まれるべきでない画像に現れることがある。これは誤った診断結果を招き、避ける必要がある。
【0063】
本発明の例示的な実施形態によれば、物質画像間のクロストークの根本原因は、ノイズモデルにおける強いノイズ相関の表現である。これは、共分散行列Ciにおける非対角要素の大きな負の値において顕著になる。さらに、クロストークは、不均一性のエッジにおいて特に強く現れることが観察され得る。したがって、この考えは、物質画像の不均一性のエッジで共分散行列Ciの非対角要素の絶対値を減らすことである。
【0064】
本発明の例示的な実施形態によれば、不均一性のエッジは、(例えば、ソーベル(Sobel)演算子を前もってノイズ除去された70keVの単エネルギー画像に適用することにより)低ノイズレベルの画像から抽出され、強いエッジ応答を有する画像ピクセルに属する共分散行列の非対角要素の絶対値を減少させる。それから、変更された共分散行列を利用して統計的ノイズ除去が実行される。このプロセスの結果を図3に示す。
【0065】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、ベクトル値画像をノイズ除去するための装置の概略図を示す。
【0066】
医用イメージングシステム1000は、ベクトル値画像をノイズ除去するための装置100を備えることができる。医用イメージングシステム1000は、例えば、コンピュータ断層撮影システム、Cアームに基づくコンピュータ断層撮影、CT、システム、X線イメージングシステム、マルチスペクトル又はスペクトルX線イメージングシステム又は磁気共鳴イメージング、MRI、システムである。
【0067】
本発明の例示的な実施形態によれば、医用イメージングシステム1000は、複数の物質画像又はスキャンの複数の画像に関してベクトル値画像を提供するように構成することができる。 MRI及びCTスキャンなどの医用イメージングモダリティは、ベクトル値画像によって表される大量のスカラー又はテンソル測定値を生成する。
【0068】
本発明の例示的な実施形態によれば、(スペクトル又はマルチエネルギーCTのための)物質画像の統計的反復ノイズ除去において、
の形態を有するコスト関数が反復的に解かれる。ここで、iはi番目の画像ピクセルのインデックスである。Ci-1は同一画像ピクセルiについての物質画像(例えば、光効果及びコンプトン散乱)の値の間のノイズを記述する共分散行列の逆数である。μi、origは、入力画像のピクセルiに対して異なる物質値を含むベクトルであり、μiはピクセルiのノイズ除去画像の物質値を含む。
【0069】
本発明の例示的な実施形態によれば、単一物質の場合、Ci-1は各ピクセルの逆ノイズ分散である。 R(μ)は正則化項、βは正則化強度パラメータである。Ci-1の項は、各ピクセルの相関ガウスノイズのモデルを表す。
【0070】
本発明の例示的な実施形態によれば、ベクトル値画像をノイズ除去するための装置100は、生成器10、プロセッサ20、及びノイズ抑制器30を含むことができる。生成器10、プロセッサ20、及びノイズ抑制器30は、電子装置、又は説明したような機能を処理するように構成される電子回路であってもよい。
【0071】
生成器10は、ベクトル値画像の各ピクセルの相関ノイズのモデルを定義する少なくとも1つの初期共分散行列ICMを含む初期損失関数L_Iを生成するように構成される。
【0072】
プロセッサ20は、初期共分散行列ICMの少なくとも1つの部分行列及び/又は少なくとも1つの行列要素を変更することによって、初期損失関数に基づいて少なくとも1つの最終共分散行列FCMのセットを含む最終損失関数L_Fを提供するように構成される。
【0073】
ノイズ抑制器30は、少なくとも1つの最終共分散行列FCMのセットを含む最終損失関数L_Fを用いてベクトル値画像をノイズ除去するように構成される。
【0074】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、ベクトル値画像をノイズ除去するフローチャートの概略図を示す。
【0075】
この方法の第1ステップとして、生成器10によってベクトル値画像の各ピクセルについて相関ノイズのモデルを定義する少なくとも1つの初期共分散行列ICMを含む初期損失関数L_Iを生成するステップS1が実行されることができる。
【0076】
この方法の第2のステップとして、初期共分散行列の少なくとも1つの行列要素及び/又は少なくとも1つの部分行列を変更することによって、初期損失関数L_Iに基づいて少なくとも1つの最終共分散行列FCMのセットを含む最終損失関数L_Fを提供するステップ20が実行されることができる。
【0077】
この方法の第3ステップとして、ノイズ抑制器30によって少なくとも1つの最終共分散行列FCMのセットを含む最終損失関数L_Fを使用してベクトル値画像をノイズ除去S3するステップが実行される。
【0078】
本発明の例示的な実施形態によれば、最終共分散行列FCMを提供するための初期共分散行列ICMの少なくとも1つの部分行列及び/又は少なくとも1つの行列要素の変更は、少なくとも2つの異なる空間周波数帯域に基づいて実行される。
【0079】
本発明の例示的な実施形態によれば、画像は異なる空間周波数帯域、空間周波数の高い周波数及び低い周波数に分割される。周波数帯域に応じて、ノイズモデルは、減少される相関によってより低い相関が仮定されるので、これらの帯域内の相関ノイズを除去する低下性能を犠牲にして異なる物質間の相関がそれからコスト関数内で変更される。
【0080】
本発明の例示的な実施形態によれば、初期損失関数L_Iに基づいて最終共分散行列FCMを含む最終損失関数L_Fは、ベクトル値画像の物質不均一のエッジにおいて初期共分散行列ICMの非対角要素の絶対値を低減することによって提供される。
【0081】
言い換えれば、統計的反復的なノイズ除去では、典型的には最尤関数が最小化される。最尤関数は、一般にガウスノイズモデルを用いてノイズ統計をモデル化するデータ項を含む。スペクトルCTにおける物質画像のノイズ除去のために、このノイズモデルは、画像間の強いノイズ相関を表す高い相関係数を有する共分散行列によって記述される。この強い相関関係は、物質画像における望ましくないクロストークを招く可能性がある。ここに提示された方法は、物質画像におけるクロストークを抑制するために相関を局所的に低減する。
【0082】
マルチエネルギーCTでは、1つの画像ピクセルのノイズは物質間で強く相関しているため、Ci-1によって導入される結合は、効率的に相関するノイズ部分を除去するが、経験は、物質画像の間にクロストークをもたらすことを示す。例えばヨウ素部分が、ヨウ素などが含まれていない画像に現れることがある。これは誤った診断結果を招き、避ける必要がある。
【0083】
これにより、相関の局所的な低減による物質画像のクロストークの低減が提供される。
【0084】
本発明の実施形態は、異なる主題を参照して説明されることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態は、方法の種類の請求項を参照して記載され、他の実施形態は、装置の種類の特許請求の範囲を参照して記載される。
【0085】
しかしながら、当業者であれば、上述したやり方から、特に断らない限り、主題の1つのタイプに属する特徴の何れかの組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間の何れの組み合わせもこの出願に開示されていると考えられる。
【0086】
しかしながら、これらの機能の単純な総和以上の相乗効果を提供するすべての機能を組み合わせることができる。
【0087】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されてきたが、そのような図示及び説明は、例示的又は例証的であって制限的ではないとみなされるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変更は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者によって理解され、請求された発明を実施することができる。
【0088】
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又はコントローラ又は他のユニットが、請求項に列挙されたいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとみなすべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5