(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る共振器及びフィルタについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態による共振器について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態による共振器を示す斜視図である。
図2は、本実施形態による共振器を示す断面図である。
図2Aは、
図1のIIA−IIA線に対応している。
図2Bは、
図1のIIB−IIB線に対応している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態による共振器10は、誘電体基板14を有する。誘電体基板14の一方の主面(上面)14f側には、上部遮蔽導体12Aが形成されている。誘電体基板14の他方の主面(下面)14e側には、下部遮蔽導体12Bが形成されている。共振器10は、誘電体基板14内に形成された構造体16を更に有する。構造体16は、下部遮蔽導体12Bと対向するように誘電体基板14内に形成されたストリップ線路18と、誘電体基板14内に形成され、ストリップ線路18に接続されたビア電極部20とを有する。ビア電極部20は、ストリップ線路18から上部遮蔽導体12Aにかけて形成されている。ストリップ線路18の平面形状は例えば長方形状である。
【0014】
誘電体基板14は、複数の誘電体層を積層して構成され、例えば
図1に示すように、直方体状を有する。誘電体基板14の4つの側面14a〜14dのうち、側面14aに第1入出力端子22Aが形成され、側面14aと対向する側面14bに第2入出力端子22Bが形成されている。また、側面(第1側面)14cに第1側面遮蔽導体12Caが形成され、側面14cと対向する側面(第2側面)14dに第2側面遮蔽導体12Cbが形成されている。
【0015】
ビア電極部20は、第1ビア電極部(ビア電極部)20A及び第2ビア電極部(ビア電極部)20Bを有する。第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bは、誘電体基板14に形成されたビアホールに埋め込まれている。
【0016】
第1ビア電極部20Aは、複数の第1ビア電極24aから構成され、第2ビア電極部20Bは、複数の第2ビア電極24bから構成されている(
図2A及び
図2B参照)。第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間に他のビア電極部は存在しない。
【0017】
図3A及び
図3Bは、本実施形態による共振器を示す平面図である。
図3Aは、仮想の楕円37の一部に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bが配列されている例を示している。
図3Bは、仮想のトラック形状38の一部に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bが配列されている例を示している。
【0018】
図3Aに示す例においては、複数の第1ビア電極24aは、上面から見たとき、仮想の楕円37の輪郭線の一部を構成する仮想の第1湾曲線45aに沿って配列されている。また、
図3Aに示す例においては、複数の第2ビア電極24bは、上面から見たとき、仮想の楕円37の輪郭線の一部を構成する仮想の第2湾曲線45bに沿って配列されている。
図3Bに示す例においては、複数の第1ビア電極24aは、上面から見たとき、仮想のトラック形状38の輪郭線の一部を構成する仮想の第1湾曲線45aに沿って配列されている。また、
図3Bに示す例においては、複数の第2ビア電極24bは、上面から見たとき、仮想のトラック形状38の輪郭線の一部を構成する仮想の第2湾曲線45bに沿って配列されている。
図3A及び
図3Bにおいては、第1ビア電極部20Aが3つの第1ビア電極24aによって構成され、第2ビア電極部20Bが3つの第2ビア電極24bによって構成されている例が示されているが、これに限定されるものではない。第1ビア電極部20Aが例えば5つの第1ビア電極24aによって構成されていてもよく、第2ビア電極部20Bが例えば5つの第2ビア電極24bによって構成されていてもよい。また、第1ビア電極部20Aが例えば7つの第1ビア電極24aによって構成されていてもよく、第2ビア電極部20Bが例えば7つの第2ビア電極24bによって構成されていてもよい。
【0019】
本実施形態において、仮想の楕円37又は仮想のトラック形状38に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bを配列しているのは、以下のような理由によるものである。即ち、共振器10を多段化してフィルタを構成する場合において、ビア電極部20の径を単に大きくすると、共振器10間に電気壁が発生し、Q値の劣化を招く。これに対し、ビア電極部20を楕円形にし、当該楕円形の短軸方向に共振器10を多段化すれば、ビア電極部20間の距離が互いに長くなるため、Q値を向上させることができる。また、ビア電極部20をトラック形状38にし、当該トラック形状38の直線部の長手方向に垂直な方向に共振器10を多段化すれば、ビア電極部20間の距離が互いに長くなるため、Q値を向上させることができる。このような理由により、本実施形態では、仮想の楕円37又は仮想のトラック形状38に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bを配列している。
【0020】
また、本実施形態において、仮想の楕円37の端部、即ち、仮想の楕円37のうちの曲率の大きい両端部に第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bをそれぞれ配置しているのは、以下のような理由によるものである。また、本実施形態において、仮想のトラック形状38の半円部に第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bをそれぞれ配置しているのは、以下のような理由によるものである。即ち、高周波電流は、仮想の楕円37の端部、即ち、仮想の楕円37のうちの曲率の大きい両端部に集中する。また、高周波電流は、仮想のトラック形状38の両端部、即ち、仮想のトラック形状38の半円部に集中する。このため、仮想の楕円37又は仮想のトラック形状38の両端部以外の部分にビア電極24a、24bを配置しないようにしても、共振器10のQ値の大幅な低下を招くことはない。また、ビア電極24a、24bの数を減らせば、ビアを形成するために要する時間を短縮することができるため、スループットの向上を実現することができる。また、ビア電極24a、24bの数を減らせば、ビアに埋め込まれる銀等の材料を減らし得るため、コストダウンを実現することもできる。また、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20B間には、電磁界が比較的疎である領域が形成されるため、当該領域に結合調整等のためのパターンを形成することも可能である。このような観点から、本変形例では、仮想の楕円37又は仮想のトラック形状38の両端部に第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bを配置している。
【0021】
第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bの各々の短絡端が接続された上部遮蔽導体12Aには、第1入出力端子22Aが接続線路32aを介して結合されている。また、上部遮蔽導体12Aには、第2入出力端子22Bが接続線路32bを介して結合されている。接続線路32aは、上部遮蔽導体12Aに導通していない。また、接続線路32bは、上部遮蔽導体12Aに導通していない。第1入出力端子22Aに接続された接続線路32aと上部遮蔽導体12Aとが、第1間隙33aを介して容量結合されている。また、第2入出力端子22Bに接続された接続線路32bと上部遮蔽導体12Aとが、第2間隙33bを介して容量結合されている。第1入出力端子22Aに接続された接続線路32aと上部遮蔽導体12Aとの間には、容量が形成される。また、第2入出力端子22Bに接続された接続線路32bと上部遮蔽導体12Aとの間には、容量が形成される。本実施形態では、これらの容量を適宜設定することにより外部Qを調整することができる。
【0022】
共振器10のビア電極部20は、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12CbとともにTEM波の共振器として動作する。つまり、ビア電極部20が、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbを参照したTEM波の共振器として動作する。ストリップ線路18は、開放端容量を形成する機能として動作する。これは、特許第4985999号公報記載の共振器の構造とは明らかに異なる。即ち、共振器10の構造は、TEM波の共振器として動作する部分がストリップ線路に限定され、ビア電極部がストリップ線路と平行に配置されたグランド用導体層とを接続する機能を有するに過ぎない共振器の構造とは明らかに異なる。
【0023】
ビア電極部20と、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbとは、半同軸共振器のように振る舞う。ビア電極部20に流れる電流の向きと第1側面遮蔽導体12Caに流れる電流の向きとは逆となり、また、ビア電極部20に流れる電流の向きと第2側面遮蔽導体12Cbに流れる電流の向きとは逆となる。このため、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbによって囲まれた部分に電磁界を閉じ込めることができ、放射による損失を小さくすることができ、且つ、外部への影響を小さくすることができる。共振時のあるタイミングにおいては、上部遮蔽導体12Aの中心から上部遮蔽導体12Aの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、下部遮蔽導体12Bには、下部遮蔽導体12Bの面全体から下部遮蔽導体12Bの中心に向かって集中するように電流が流れる。また、共振時の他のタイミングにおいては、下部遮蔽導体12Bの中心から下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、上部遮蔽導体12Aには、上部遮蔽導体12Aの面全体から上部遮蔽導体12Aの中心に向かって集中するように電流が流れる。上部遮蔽導体12A又は下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように流れる電流は、そのまま第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbにも同様に流れる。即ち、線幅の広い導体に電流が流れる。線幅の広い導体は抵抗成分が少ないため、本実施形態では、Q値の劣化を小さくすることができる。
【0024】
図4A及び
図4Bは、本実施形態による共振器の等価回路を示す図である。
図4Aに示すように、ストリップ線路18から第1ビア電極部20Aの入出力部分(I/O)にかけて第1λ/4共振器34Aが構成され、ストリップ線路18から第2ビア電極部20Bの入出力部分(I/O)にかけて第2λ/4共振器34Bが構成される。これにより、
図4Bに示すように、第1λ/4共振器34Aと第2λ/4共振器34Bには同相の電流iが流れる。第1λ/4共振器34Aと第2λ/4共振器34Bとに流れる電流が同相であるため、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間の領域は電磁界が疎の状態となる。このため、本実施形態では、不要な結合を抑制しつつ、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間にパターンを配置することができる。その結果、Q値の劣化を防止することができるとともに、特性のばらつきを抑制することができる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、第1入出力端子22Aが第1間隙33aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されており、第2入出力端子22Bが第2間隙33bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されている。第1入出力端子22Aが第1間隙33aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されているため、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間には、容量が形成される。また、第2入出力端子22Bが第2間隙33bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されているため、第2入出力端子22Bと上部遮蔽導体12Aとの間には、容量が形成される。本実施形態によれば、これらの容量を適宜設定することにより外部Qを調整することができる。従って、本実施形態によれば、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0026】
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1による共振器について
図5を用いて説明する。
【0027】
本変形例による共振器10は、横断面が円形状又は楕円形状とされた1つのビア電極24Aによってビア電極部20が構成されているものである。本変形例のように、横断面が円形状又は楕円形状の1つのビア電極24Aによってビア電極部20を構成するようにしてもよい。
【0028】
本変形例においても、第1入出力端子22Aが第1間隙33aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されており、第2入出力端子22Bが第2間隙33bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されている。第1入出力端子22Aが第1間隙33aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されているため、本変形例においても、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間に容量が形成される。また、第2入出力端子22Bが第2間隙33bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されているため、本変形例においても、第2入出力端子22Bと上部遮蔽導体12Aとの間に容量が形成される。本変形例によれば、これらの容量を適宜設定することにより外部Qを調整することができるため、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0029】
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2による共振器について
図6を用いて説明する。
【0030】
本変形例による共振器10は、横断面がトラック形状とされた1つのビア電極24Bによってビア電極部20が構成されているものである。トラック形状とは、対向する2つの半円部と、これら半円部を接続する2つの平行な直線部とから構成される形状である。本変形例のように、横断面がトラック形状の1つのビア電極24Bによってビア電極部20を構成するようにしてもよい。
【0031】
本変形例においても、第1入出力端子22Aが第1間隙33aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されており、第2入出力端子22Bが第2間隙33bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されている。第1入出力端子22Aが第1間隙33aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されているため、本変形例においても、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間に容量が形成される。また、第2入出力端子22Bが第2間隙33bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されているため、本変形例においても、第2入出力端子22Bと上部遮蔽導体12Aとの間に容量が形成される。本変形例によれば、これらの容量を適宜設定することにより外部Qを調整することができるため、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0032】
(変形例3)
次に、本実施形態の変形例3による共振器について
図7〜
図8Bを用いて説明する。
図7は、本変形例による共振器を示す斜視図である。
図8A及び
図8Bは、本変形例による共振器を示す断面図である。
図8Aは、図7AのVIIIA−VIIIA線に対応している。図8Bは、図7のVIIIB−VIIIB線に対応している。
【0033】
本変形例による共振器10では、第1入出力端子22Aが接続線路50aを介してビア電極部20に導通している。より具体的には、ビア電極部20に接続された電極52に、第1入出力端子22Aが接続線路50aを介して接続されている。また、本変形例では、第2入出力端子22Bが接続線路50bを介してビア電極部20に導通している。より具体的には、ビア電極部20に接続された電極52に、第2入出力端子22Bが接続線路50bを介して接続されている。
【0034】
本変形例においても、
図1〜
図4Bを用いて上述した共振器10と同様に、ビア電極部20と、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbとは、半同軸共振器のように振る舞う。ビア電極部20に流れる電流の向きと第1側面遮蔽導体12Caに流れる電流の向きとは逆となり、また、ビア電極部20に流れる電流の向きと第2側面遮蔽導体12Cbに流れる電流の向きとは逆となる。このため、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbによって囲まれた部分に電磁界を閉じ込めることができ、放射による損失を小さくすることができ、且つ、外部への影響を小さくすることができる。共振時のあるタイミングにおいては、上部遮蔽導体12Aの中心から上部遮蔽導体12Aの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、下部遮蔽導体12Bには、下部遮蔽導体12Bの面全体から下部遮蔽導体12Bの中心に向かって集中するように電流が流れる。また、共振時の他のタイミングにおいては、下部遮蔽導体12Bの中心から下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、上部遮蔽導体12Aには、上部遮蔽導体12Aの面全体から上部遮蔽導体12Aの中心に向かって集中するように電流が流れる。上部遮蔽導体12A又は下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように流れる電流は、そのまま第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbにも同様に流れる。即ち、線幅の広い導体に電流が流れる。線幅の広い導体は抵抗成分が少ないため、本変形例においても、Q値の劣化を小さくすることができる。
【0035】
このように、第1入出力端子22A及び第2入出力端子22Bをビア電極部20に導通させるようにしてもよい。本変形例によっても、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0036】
なお、高さ方向、即ち、ビア電極部20の長手方向における接続線路50a、50b及び電極52の位置を適宜設定するようにしてもよい。高さ方向における接続線路50a、50b及び電極52の位置を適宜設定することにより、外部Qを適宜調整し得る。
【0037】
また、接続線路50a、50bをストリップ線路18に結合させるようにしてもよい。この際、接続線路50a、50bをストリップ線路18に接続するようにしてもよいし、間隙を介して接続線路50a、50bをストリップ線路18に接続するようにしてもよい。
【0038】
(変形例4)
次に、本実施形態の変形例4による共振器について
図9〜
図10Bを用いて説明する。
図9は、本変形例による共振器を示す斜視図である。
図10A及び
図10Bは、本変形例による共振器を示す断面図である。
図10Aは、図9のXA−XA線に対応している。図10Bは、図9のXB−XB線に対応している。
【0039】
本変形例による共振器10では、第1入出力端子22Aに接続された接続線路50aが、ビア電極部20に接続された電極52に、第1間隙33aを介して結合されている。また、本変形例では、第2入出力端子22Bに接続された接続線路50bが、ビア電極部20に接続された電極52に、第2間隙33bを介して結合されている。
【0040】
このように、第1入出力端子22Aに接続された接続線路50aが、ビア電極部20に接続された電極52に、第1間隙33aを介して結合されるようにしてもよい。また、第2入出力端子22Bに接続された接続線路50bが、ビア電極部20に接続された電極52に、第2間隙33bを介して結合されるようにしてもよい。本変形例では、第1入出力端子22Aに接続された接続線路50aと電極52との間には、容量が形成される。また、本変形例では、第2入出力端子22Bに接続された接続線路50bと電極52との間には、容量が形成される。本変形例によれば、これらの容量を適宜設定することにより外部Qを調整することができるため、特性の良好な共振器
10を提供することができる。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態による共振器について
図11〜
図12Bを用いて説明する。第1実施形態による共振器と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し又は簡略にする。
図11は、本実施形態による共振器を示す斜視図である。
図12A及び
図12Bは、本実施形態による共振器を示す断面図である。
図12Aは、図11のXIIA−XIIA線に対応している。図12Bは、図11のXIIB−XIIB線に対応している。
【0042】
本実施形態による共振器10では、誘電体基板14の側面14a、14bに第1入出力端子22A及び第2入出力端子22Bが形成されていない。また、本実施形態では、誘電体基板14の下面14eのうち、上部遮蔽導体12Aの接続線路32aと対向する位置に第1入出力端子22Aが形成されている。また、本実施形態では、接続線路32aと第1入出力端子22Aとが第4ビアホール42Dを介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、誘電体基板14の下面14eのうち、上部遮蔽導体12Aの接続線路32bと対向する位置に第2入出力端子22Bが形成されている。また、本実施形態では、接続線路32bと第2入出力端子22Bとが第5ビアホール42Eを介して電気的に接続されている。
【0043】
本実施形態による共振器10では、誘電体基板14の下面14eに一定電位(例えば接地電位)が供給される外部端子40が形成されている。また、本実施形態では、下部遮蔽導体12Bが誘電体基板14内に形成されている。また、本実施形態では、下部遮蔽導体12Bと外部端子40とが第1ビアホール42Aを介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、誘電体基板14内のうち、側面14cに近接する部分に、上部遮蔽導体12Aと下部遮蔽導体12Bとを電気的に接続する複数本(例えば6本)の第2ビアホール42Bが側面14cに沿って形成されている。即ち、第1側面遮蔽導体12Caとして機能する複数本の第2ビアホール42Bが形成されている。また、本実施形態では、誘電体基板14内のうち、側面14dに近接する部分に、上部遮蔽導体12Aと下部遮蔽導体12Bとを電気的に接続する複数本(例えば6本)の第3ビアホール42Cが側面14dに沿って形成されている。即ち、第2側面遮蔽導体12Cbとして機能する複数本の第3ビアホール42Cが形成されている。
【0044】
なお、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbを形成しないようにしてもよい。
【0045】
本実施形態による共振器10では、誘電体基板14の下面14eに形成された第1入出力端子22Aに例えば正方向の電流が供給されると以下のようになる。即ち、正方向の電流が、第4ビアホール42Dを介して上部遮蔽導体12Aに拡散し、第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cに向かって流れる。その際に、ストリップ線路18からもビア電極部20を介して上部遮蔽導体12Aに向かって変位電流が流れ、この変位電流も上部遮蔽導体12Aを介して第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cに向かって流れる。即ち、第1入出力端子22Aに例えば正方向の電流が供給された瞬間から、電流(正方向の電流及び変位電流)が上部遮蔽導体12Aから第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cに拡散しながら流れることになる。このため、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbを設けないようにしても、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbの役割を第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cが果たし得る。
【0046】
本実施形態によれば、誘電体基板14の下面14eに形成された外部端子40、第1入出力端子22A及び第2入出力端子22Bに対してフリップチップ実装を行うことによって、共振器10を実装することができる。このため、本実施形態によれば、高密度実装を実現することができる。本実施形態によっても、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0047】
[第3実施形態]
第3実施形態による共振器について
図13〜
図14Bを用いて説明する。
図13は、本実施形態による共振器を示す斜視図である。
図14A及び
図14Bは、本実施形態による共振器を示す断面図である。
図14Aは、図13のXIVA−XIVA線に対応している。図14Bは、図13のXIVB−XIVB線に対応している。第1又は第2実施形態による共振器と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し又は簡略にする。
【0048】
本実施形態による共振器10では、誘電体基板14の側面14a、14bに第1入出力端子22A及び第2入出力端子22Bが形成されている。なお、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbを設けないようにしてもよい。
【0049】
本実施形態では、第1入出力端子22Aに例えば正方向の電流が供給されることで、正方向の電流が、上部遮蔽導体12Aに拡散し、第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cに向かって流れる。その際に、ストリップ線路18からもビア電極部20を介して上部遮蔽導体12Aに向かって変位電流が流れ、この変位電流も上部遮蔽導体12Aを介して第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cに向かって流れる。即ち、第1入出力端子22Aに例えば正方向の電流が供給された瞬間から、電流(正方向の電流及び変位電流)が上部遮蔽導体12Aから第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cに拡散しながら流れることになる。このため、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbを設けないようにしても、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbの役割を第2ビアホール42B及び第3ビアホール42Cが果たし得る。
【0050】
このように、誘電体基板14の側面14a、14bに第1入出力端子22A及び第2入出力端子22Bが形成されているようにしてもよい。本実施形態によれば、第1入出力端子22A及び第2入出力端子22Bに対する側面実装と、誘電体基板14の下面14eに形成された外部端子40に対するフリップチップ実装を行うことによって、共振器10を実装することができる。このため、本実施形態によっても、高密度実装を実現することができる。本実施形態によっても、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0051】
[第4実施形態]
第4実施形態によるフィルタについて
図15〜
図19を用いて説明する。
図15は、本実施形態によるフィルタを示す斜視図である。
図16A及び
図16Bは、本実施形態によるフィルタを示す断面図である。
図16Aは、図15のXVIA−XVIA線に対応している。図16Bは、図15のXVIB−XVIB線に対応している。図17は、本実施形態によるフィルタを示す平面図である。第1〜第3実施形態による共振器と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し又は簡略にする。
【0052】
本実施形態によるフィルタ(誘電体フィルタ)60には、複数の共振器10、例えば共振器10A〜10C(
図16A参照)が備えられている。共振器10A〜10Cとしては、例えば、
図1〜
図4Bを用いて上述した共振器10がそれぞれ用いられている。なお、ここでは、3つの共振器10A〜10Cを設ける場合、即ち、共振器10を3段にする場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0053】
各々の共振器10A〜10Cには、構造体16がそれぞれ備えられている。構造体16は、上述したように、下部遮蔽導体12Bに対向するストリップ線路18と、誘電体基板14内に形成されるとともに上部遮蔽導体12Aからストリップ線路18にかけて形成されたビア電極部20とを有する。なお、各々の構造体16の各々の構成要素のサイズは、所望の電気的特性が得られるように適宜設定される。
【0054】
誘電体基板14内には、結合容量電極(結合パターン)29が更に設けられている。結合容量電極29の一部は、共振器10Bのストリップ線路18に対向している。共振器10Bのビア電極部20には、結合容量電極29が接続されている。結合容量電極29は、共振器10Bのビア電極部20のうちの下部以外の部分によって、上部遮蔽導体12Aに接続されている。結合容量電極29は、共振器10Bのビア電極部20のうちの下部によって、共振器10Bのストリップ線路18に接続されている。結合容量電極29は、共振器10Bのストリップ線路18の上方の位置から、共振器10Aの第1ビア電極部20Aと共振器10Aの第2ビア電極部20Bとの間におけるストリップ線路18の上方の位置まで延在している。結合容量電極29は、共振器10Bのストリップ線路18の上方の位置から、共振器10Cの第1ビア電極部20Aと共振器10Cの第2ビア電極部20Bとの間におけるストリップ線路18の上方の位置まで延在している。
【0055】
このように、複数の共振器10、即ち、共振器10A〜10Cを適宜用いて、フィルタ60を構成するようにしてもよい。特性の良好な共振器10を用いるため、良好な特性のフィルタ60を得ることができる。しかも、間隙33a、33bを介して入出力端子22A、22Bが上部遮蔽導体12Aに接続されているため、外部Qを調整することができる。従って、本実施形態によれば、特性の良好なフィルタ60を提供することができる。
【0056】
本実施形態によるフィルタの外部Qの評価結果について
図18を用いて説明する。
図18は、外部Qのシミュレーション結果を示すグラフである。
図18の横軸は、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間の容量、即ち、容量値を示している。
図18の縦軸は、外部Qを示している。
図18における実線は、実施例の場合、即ち、本実施形態によるフィルタ60における外部Qを示している。
図18における点線は、比較例1の場合、即ち、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとを導通させた場合における外部Qを示している。
【0057】
図18から分かるように、比較例1の場合、即ち、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとを導通させた場合には、外部Qは例えば9.9となる。
【0058】
これに対し、実施例の場合、即ち、本実施形態によるフィルタ60では、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間の容量を変化させると、外部Qが変化する。即ち、本実施形態では、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間の容量を変化させることにより、外部Qを調整することが可能である。しかも、実施例、即ち、本実施形態では、比較例1の場合よりも外部Qを小さくすることが可能である。なお、本実施形態において、外部Qを比較例1の場合よりも小さくし得るのは、第1入出力端子22Aとビア電極部20とが同じ方向に伸びており、これらの間で十分な磁界干渉が生じるためと考えられる。
【0059】
本実施形態によるフィルタの特性の評価結果について
図19を用いて説明する。
図19は、減衰量と挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフである。
図19の左側の縦軸は、減衰量を示している。
図19の右側の縦軸は、挿入損失を示している。
図19の横軸は、周波数を示している。
図19における実線は、実施例、即ち、本実施形態の場合を示している。
図19における破線は、比較例1、即ち、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとを導通させた場合を示している。
【0060】
図19から分かるように、本実施形態によれば、良好な特性のフィルタを得ることができる。
【0061】
比較例2による不図示のフィルタに対する本実施形態によるフィルタの優位性について説明する。
【0062】
比較例2によるフィルタでは、第1入出力端子22Aに接続された接続線路32aが共振器10Aの第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bに直接接続されている。また、比較例2によるフィルタでは、第2入出力端子22Bに接続された接続線路32bが共振器10Cの第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bに直接接続されている。このような比較例2によるフィルタでは、高さ方向、即ち、ビア電極部20の長手方向における接続線路32a、32bの位置を変化させることにより、外部Qを調整することが可能である。しかし、このような比較例2によるフィルタでは、誘電体基板14を構成する複数の誘電体層の厚さの単位でしか、高さ方向における接続線路32a、32bの位置を変化させ得ない。また、比較例2によるフィルタでは、外部Qが互いに異なる複数種のフィルタを得る場合、誘電体基板14を構成する誘電体層の積層構造を変化させる必要が生じる。また、比較例2によるフィルタでは、接続線路32a、32bに電流が集中するため、挿入損失が大きくなる傾向がある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、第1間隙33aの寸法を変化させるだけで、第1入出力端子22Aと上部遮蔽導体12Aとの間の容量を調整し得る。また、本実施形態では、第2間隙33bの寸法を変化させるだけで、第2入出力端子22Bと上部遮蔽導体12Aとの間の容量を調整し得る。第1間隙33aの寸法及び第2間隙33bの寸法は、微調整が可能である。従って、本実施形態によれば、所望の特性を有するフィルタを容易に得ることが可能となる。また、本実施形態では、接続線路32a、32bに電流が集中しないため、挿入損失の小さい良好なフィルタを得ることができる。
【0064】
なお、ここでは、
図1〜
図4Bを用いて上述した共振器10を多段化する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。
図5を用いて上述した共振器10、
図6を用いて上述した共振器10、
図7〜
図8Bを用いて上述した共振器10、又は、
図9〜
図10Bを用いて上述した共振器10を多段化するようにしてもよい。また、
図11〜
図12Bを用いて上述した共振器10、
図13〜
図14Bを用いて上述した共振器10を多段化するようにしてもよい。
【0065】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0066】
上記実施形態をまとめると以下のようになる。
【0067】
共振器(10)は、誘電体基板(14)内に形成されたビア電極部(20)と、前記誘電体基板に、前記ビア電極部を囲むように形成された複数の遮蔽導体(12A、12B、12Ca、12Cb)と、前記誘電体基板内において前記ビア電極部に接続され、且つ、少なくとも前記遮蔽導体と対向するストリップ線路(18)とを有し、前記複数の遮蔽導体のうち、前記ビア電極部の短絡端が接続された前記遮蔽導体(12A)に第1入出力端子(22A)及び第2入出力端子(22B)が間隙(33a、33b)を介して容量結合されている。このような構成によれば、第1入出力端子が間隙を介して遮蔽導体に結合されており、第2入出力端子が間隙を介して遮蔽導体に結合されている。第1入出力端子が間隙を介して遮蔽導体に結合されているため、第1入出力端子と遮蔽導体との間には、容量が形成される。また、第2入出力端子が間隙を介して遮蔽導体に結合されているため、第2入出力端子と遮蔽導体との間には、容量が形成される。このため、このような構成によれば、これらの容量を適宜設定することにより外部Qを調整することができる。従って、このような構成によれば、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0068】
前記複数の遮蔽導体は、前記誘電体基板の第1主面(14f)側に形成された第1遮蔽導体(12A)と、前記誘電体基板の第2主面(14e)側に形成された第2遮蔽導体(12B)と、前記誘電体基板の第1側面(14c)側に形成された第3遮蔽導体(12Ca)と、前記誘電体基板の第2側面(14d)側に形成された第4遮蔽導体(12Cb)とを有し、前記第1遮蔽導体に前記ビア電極部の前記短絡端が接続されており、前記第1遮蔽導体に前記第1入出力端子及び前記第2入出力端子が間隙を介して容量結合されているようにしてもよい。
【0069】
共振器(10)は、誘電体基板内に形成されたビア電極部(20)と、前記誘電体基板に、前記ビア電極部を囲むように形成された複数の遮蔽導体(12A、12B、12Ca、12Cb)と、前記誘電体基板内において前記ビア電極部に接続され、且つ、少なくとも前記遮蔽導体と対向するストリップ線路(18)とを有し、前記ビア電極部に第1入出力端子(22A)又は第2入出力端子(22B)が結合されている。このような構成によっても、特性の良好な共振器を提供することができる。
【0070】
前記ビア電極部に前記第1入出力端子又は前記第2入出力端子が導通しているようにしてもよい。
【0071】
前記ビア電極部に前記第1入出力端子又は前記第2入出力端子が間隙を介して容量結合されているようにしてもよい。
【0072】
前記ビア電極部は、隣接して形成された第1ビア電極部(20A)と第2ビア電極部(20B)とを有し、前記第1ビア電極部は、複数の第1ビア電極(24a)から構成され、前記第2ビア電極部は、複数の第2ビア電極(24b)から構成され、前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在しないようにしてもよい。このような構成によれば、第1ビア電極部と第2
ビア電極部との間に他のビア電極部が存在しないため、ビアを形成するために要する時間を短縮することができ、ひいてはスループットの向上を実現することができる。また、このような構成によれば、第1ビア電極部と第2
ビア電極部との間に他のビア電極部が存在しないため、ビアに埋め込まれる銀等の材料が少なくて済み、ひいてはコストダウンを実現することもできる。また、第1ビア電極部と第2ビア電極部間に、電磁界が比較的疎である領域が形成されるため、当該領域に結合調整電極等を形成することもできる。
【0073】
前記複数の第1ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線(45a)に沿って配列され、前記複数の第2ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線(45b)に沿って配列されているようにしてもよい。
【0074】
前記第1湾曲線と前記第2湾曲線は、1つの仮想の楕円(37)の一部又は1つの仮想のトラック形状(38)の一部を構成しているようにしてもよい。
【0075】
前記第1ビア電極部は、前記ストリップ線路とともに、第1λ/4共振器(34A)を構成し、前記第2ビア電極部は、前記ストリップ線路とともに、第2λ/4共振器(34B)を構成するようにしてもよい。
【0076】
フィルタ(60)は、上記のような共振器を備える。