特許第6868053号(P6868053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6868053-スパークプラグ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868053
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   H01T13/54
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-87429(P2019-87429)
(22)【出願日】2019年5月7日
(65)【公開番号】特開2020-184434(P2020-184434A)
(43)【公開日】2020年11月12日
【審査請求日】2020年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大希
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−093137(JP,A)
【文献】 特開2014−007071(JP,A)
【文献】 特開2012−199236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、
前記中心電極の先端部に対向する対向部を有し、前記対向部と前記中心電極の前記先端部との間に放電ギャップを形成する接地電極と、
前記中心電極の前記先端部が自身の先端よりも露出した状態で前記中心電極を内部に収容する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体を内部に収容する筒状の主体金具と、
前記中心電極の前記先端部と、前記接地電極の前記対向部と、を先端側から覆って、副室を形成するとともに、前記主体金具の先端側に接合され、貫通孔たる噴孔が形成されたカバー部と、
を備えたスパークプラグであって、
前記主体金具において、前記副室の後端よりも先端側の金具体積A(mm)と、前記主体金具の常温での熱伝導率B(W/mK)とは、式(1)を満たし、
3.6<A/B<98.0 …式(1)
前記金具体積A(mm)と、前記副室の副室体積C(mm)とは、式(2)を満たすスパークプラグ。
0.18<C/A<1.20 …式(2)
【請求項2】
前記金具体積A(mm)と、前記副室体積C(mm)とは、式(3)を満たす請求項1に記載のスパークプラグ。
0.36<C/A<0.58 …式(3)
【請求項3】
前記金具体積A(mm)と、前記熱伝導率B(W/mK)とは、式(4)を満たす請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
9.8<A/B<42.5 …式(4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
点火室を備えたスパークプラグが開発されている。例えば、特許文献1のプレチャンバー点火プラグは、円筒状の金属製のハウジングと、中心電極と接地電極との両方を取り囲み点火室を形成する点火室キャップと、を備えている。点火室キャップは、混合気が燃焼室から点火室へ流入することを許容する複数のオリフィスが形成されている。この点火プラグでは、点火室内での着火によりオリフィスから燃焼室内にトーチ状の火炎を噴出させて燃焼室内の混合気を燃焼させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−199236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された点火プラグでは、点火室がオリフィスを除いて閉じられている構造であるため、着火時に点火室内部の温度が高くなり易く、プレイグニッションが生じるおそれがある。一方で、この点火プラグでは、点火室内部の温度が低くなり過ぎると、点火室内部における燃焼の際に圧力損失・熱損失が大きくなり、主燃焼室に噴出する際の圧力および熱量が小さくなることで失火するおそれがある。そこで、点火室における熱伝導に大きな影響を及ぼすハウジングと点火室キャップにおいて、熱伝導率と体積を適正な値に設定して、プレイグニッションと失火を抑制し得る構成が求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、副室を形成するカバー部を備えるスパークプラグにおいて、プレイグニッション及び失火の発生を抑制することを目的とする。本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)中心電極と、
前記中心電極の先端部に対向する対向部を有し、前記対向部と前記中心電極の前記先端部との間に放電ギャップを形成する接地電極と、
前記中心電極の前記先端部が自身の先端よりも露出した状態で前記中心電極を内部に収容する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体を内部に収容する筒状の主体金具と、
前記中心電極の前記先端部と、前記接地電極の前記対向部と、を先端側から覆って、副室を形成するとともに、前記主体金具の先端側に接合され、貫通孔たる噴孔が形成されたカバー部と、
を備えたスパークプラグであって、
前記主体金具において、前記副室の後端よりも先端側の金具体積A(mm)と、前記主体金具の常温での熱伝導率B(W/mK)とは、式(1)を満たし、
3.6<A/B<98.0 …式(1)
前記金具体積A(mm)と、前記副室の副室体積C(mm)とは、式(2)を満たすスパークプラグ。
0.18<C/A<1.20 …式(2)
【0006】
本発明のスパークプラグにおいて、副室の後端よりも先端側の金具体積A(mm)は、値が大きくなるほど副室に熱を蓄え易くする。また、主体金具の常温での熱伝導率B(W/mK)は、値が大きくなるほど副室から外部へ熱を逃がし易くする。そのため、副室の後端よりも先端側の金具体積A(mm)と、主体金具の常温での熱伝導率B(W/mK)と、の関係を上記式(1)で規定することで、副室に熱を蓄え易くする要素と、副室から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスを良好にし、副室内の温度を適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火を防ぐことができる。
また、スパークプラグにおいて、副室の副室体積C(mm)は、値が大きくなるほど副室から外部へ熱を逃がし易くする。そのため、副室の後端よりも先端側の金具体積A(mm)と、副室の副室体積C(mm)と、の関係を上記式(2)で規定することで、副室に熱を蓄え易くする要素と、副室から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスを良好にし、副室内の温度を適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火を防ぐことができる。
【0007】
(2)前記金具体積A(mm)と、前記副室体積C(mm)とは、式(3)を満たす(1)に記載のスパークプラグ。
0.36<C/A<0.58 …式(3)
【0008】
本発明のスパークプラグは、上記式(3)を採用することで、副室に熱を蓄え易くする要素と、副室から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスをより一層良好にし、副室内の温度をより一層適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火をより一層防ぐことができる。
【0009】
(3)前記金具体積A(mm)と、前記熱伝導率B(W/mK)とは、式(4)を満たす(1)又は(2)に記載のスパークプラグ。
9.8<A/B<42.5 …式(4)
【0010】
本発明のスパークプラグは、上記式(4)を採用することで、副室に熱を蓄え易くする要素と、副室から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスをより一層良好にし、副室内の温度をより一層適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火をより一層防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態におけるスパークプラグの構成を示す断面図である。
図2】第1実施形態におけるスパークプラグの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、スパークプラグ100の第1実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明では、図1の下方側をスパークプラグ100の先端側(前方側)と呼び、図1の上方側を後端側とする。
図1は、第1実施形態におけるスパークプラグ100の概略構成を示す断面図である。図1では、スパークプラグ100の中心軸線CX(スパークプラグの軸線)が一点鎖線で図示されている。
【0013】
スパークプラグ100は、内燃機関に取り付けられて、燃焼室内の混合気の点火に用いられる。内燃機関に取り付けられたときには、スパークプラグ100の先端側(紙面下側)は内燃機関の燃焼室内に配置され、後端側(紙面上側)は燃焼室の外部に配置される。スパークプラグ100は、中心電極10と、接地電極13と、絶縁体20と、端子電極30と、主体金具40と、を備えている。
【0014】
中心電極10は、軸状の電極部材によって構成され、その中心軸がスパークプラグ100の中心軸線CXと一致するように配置されている。中心電極10は、その先端部11が、主体金具40の先端側開口部40Aよりも後端側(紙面上側)に位置するように、絶縁体20を介して主体金具40に保持されている。中心電極10は、後端側に配置されている端子電極30を介して外部電源に電気的に接続される。
【0015】
接地電極13は、主体金具40の先端側開口部40Aよりわずかに後端側(紙面上側)の位置から、中心電極10の先端部11よりわずかに先端側(紙面下側)の位置に向かって延伸している棒状の電極である。具体的には、接地電極13は、主体金具40の先端側開口部40Aのわずかに後端側(紙面上側)の位置に接続されている。そして、接地電極13は、中心電極10の先端部11の前方まで延びている。図2に示すように、接地電極13は、中心電極10の先端部11に対向する対向部13Aを有している。接地電極13の対向部13Aと、中心電極10の先端部11との間に放電ギャップSGが形成されている。
【0016】
絶縁体20は、中心を貫通する軸孔21を有する筒状部材である。絶縁体20は、例えば、アルミナや、窒化アルミニウム等のセラミック焼結体によって構成される。絶縁体20の軸孔21の先端側には、中心電極10が、その先端部11が露出した状態で収容されている。軸孔21の後端側には軸状の電極部材である端子電極30が保持されている。端子電極30の後端部31は、外部電源と接続可能なように、絶縁体20の後端開口部22から延出している。中心電極10と端子電極30とは、火花放電発生時における電波雑音の発生を抑制するために、ガラスシール材に挟まれた抵抗体35を介して電気的に接続されている。絶縁体20の中心軸は、スパークプラグ100の中心軸線CXと一致している。
【0017】
主体金具40は、中心に筒孔41を有する略円筒状の金属部材である。主体金具40は、例えば、炭素鋼によって構成される。主体金具40の中心軸はスパークプラグ100の中心軸線CXと一致する。主体金具40の先端側開口部40A付近には、上述したように、接地電極13が取り付けられている。主体金具40の内側における縮径部分と絶縁体20との間には、パッキン43が設けられている。パッキン43は、例えば、主体金具40を構成する金属材料よりも軟質の金属材料によって構成されている。
【0018】
スパークプラグ100は、カバー部50を備えている。カバー部50は、ドーム状に形成されている。カバー部50は、例えば、ステンレス、ニッケル系合金、銅系合金等によって構成される。カバー部50は、主体金具40の先端(より具体的には、先端側開口部40A)に環状に接合されている。カバー部50は、中心電極10の先端部11、及び接地電極13の対向部13Aを前方側から覆っている。カバー部50によって囲まれた空間が、プレチャンバー空間(副室)63とされている。プレチャンバー空間63の後端65は、主体金具40の内側が縮径している部分(図2の破線Lが通る部分)であり、具体的には、絶縁体20と主体金具40とが中心電極10の先端部11よりも後端側で接している部分である。カバー部50は、後端側からその頂部51Aに近いほど厚みが徐々に小さくなっている。
【0019】
図2に示すように、カバー部50には、その頂部51Aよりも後端側に複数の噴孔61が形成されている。噴孔61は、例えば、4個形成されている。噴孔61はいずれも略円柱形の貫通孔である。複数の噴孔61は、スパークプラグ100の中心軸線CXを中心とする仮想円周上に位置している。複数の噴孔61は、上記仮想円周上において等間隔に配列している。カバー部50に覆われた空間であるプレチャンバー空間63は、着火室として構成され、噴孔61を介して燃焼室と連通する。
【0020】
本第1実施形態のスパークプラグ100は、主体金具40において、プレチャンバー空間63の後端65よりも先端側(破線Lよりも先端側)の金具体積A(mm)と、主体金具40の常温での熱伝導率B(W/mK)とが、下記(1)式を満たす。
3.6<A/B<98.0 …(1)
716≦A≦2191 …(5)
13≦B≦372 …(6)
また、主体金具40において、プレチャンバー空間63の後端65よりも先端側の金具体積A(mm)と、プレチャンバー空間63の空間体積(副室体積)C(mm)とが、下記(2)式を満たす。なお、プレチャンバー空間63の空間体積Cは、噴孔61が形成されていない状態のカバー部50(噴孔61が埋められて内面がなだらかに連なっている状態のカバー部50)と、主体金具40と、中心電極10と、接地電極13と、絶縁体20と、によって囲まれた空間である。
0.18<C/A<1.20 …(2)
259≦C≦887 …(7)
このスパークプラグ100において、プレチャンバー空間63の後端65よりも先端側の金具体積A(mm)は、値が大きくなるほどプレチャンバー空間63に熱を蓄え易くする。また、主体金具40の常温での熱伝導率B(W/mK)は、値が大きくなるほどプレチャンバー空間63から外部へ熱を逃がし易くする。そのため、3.6<A/B<98.0となる構成を採用することで、プレチャンバー空間63に熱を蓄え易くする要素と、プレチャンバー空間63から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスを良好にし、プレチャンバー空間63内の温度を適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火を防ぐことができる。
また、スパークプラグ100において、プレチャンバー空間63の副室体積C(mm)は、値が大きくなるほどプレチャンバー空間63から外部へ熱を逃がし易くする。そのため、0.18<C/A<1.20となる構成を採用することで、プレチャンバー空間63に熱を蓄え易くする要素と、プレチャンバー空間63から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスを良好にし、プレチャンバー空間63内の温度を適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火を防ぐことができる。
【0021】
また、本第1実施形態のスパークプラグ100は、主体金具40において、プレチャンバー空間63の後端65よりも先端側の金具体積A(mm)と、プレチャンバー空間63の空間体積C(mm)とが、下記(3)式を満たす。
0.36<C/A<0.58 …(3)
このスパークプラグ100は、0.36<C/A<0.58となる構成を採用することで、プレチャンバー空間63に熱を蓄え易くする要素と、プレチャンバー空間63から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスをより一層良好にし、プレチャンバー空間63内の温度をより一層適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火をより一層防ぐことができる。
【0022】
また、本第1実施形態のスパークプラグ100は、主体金具40において、プレチャンバー空間63の後端65よりも先端側の金具体積A(mm)と、主体金具40の常温での熱伝導率B(W/mK)とが、下記(4)式を満たす。
9.8<A/B<42.5 …(4)
このスパークプラグ100は、9.8<A/B<42.5となる構成を採用することで、プレチャンバー空間63に熱を蓄え易くする要素と、プレチャンバー空間63から外部へ熱が逃げ易くする要素とのバランスをより一層良好にし、プレチャンバー空間63内の温度をより一層適切に保つことができ、プレイグニッション及び失火をより一層防ぐことができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0024】
1.実験1(第1実施形態に対応する実験)
(1)実験方法
(1.1)実験例1(実施例)
図1、2に示されるスパークプラグ100のサンプルを用いた。詳細な条件は、下記の表1に記載した。このスパークプラグ100は、第1実施形態の要件を満たしている。表1において、実験例を「No.」を用いて示す。表1のNo.1,4,7,13,14,16〜21,23〜26,28〜33,35,36,42,45,48は実施例である。
(1.2)実験例2(比較例)
図1、2に示されるスパークプラグ100とは異なる構成のスパークプラグのサンプルを用いた。詳細な条件は、下記の表1に記載した。このスパークプラグは、第1実施形態の要件を満たしていない。表1において「1*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。すなわち、表1のNo.2,3,5,6,8〜12,15,22,27,34,37〜41,43,44,46,47は比較例である。
【0025】
(2)評価方法
(2.1)金具体積A(mm)、空間体積C(mm)の測定
X線CTスキャナーを用いて、管電圧200kV、管電流120μAの条件で、各サンプルをスキャンした。スキャン結果から3D像を作製して、主体金具において、プレチャンバー空間の後端よりも先端側の金具体積A(mm)と、プレチャンバー空間の空間体積C(mm)と、を測定した。
(2.2)耐プレイグニッション評価試験
各サンプルについて、耐プレイグニッション評価試験を行った。耐プレイグニッション評価試験の概要は次の通りである。各サンプルを、直列4気筒、排気量1.3Lの自然吸気エンジンに取り付け、点火角度(クランク角度)を所定の初期値として、全開状態(6000rpm)にてエンジンの一連の工程を1000サイクル動作させた。エンジン動作時にプレイグニッションが発生したか否かを確認し、プレイグニッションが発生した場合には、そのときの点火角度をプレイグニッション発生角度として特定した。プレイグニッションが発生しなかった場合には、点火角度を1度進角させた上で、再度エンジンを全開状態にて動作させ、プレイグニッションの発生の有無を確認した。これを、プレイグニッションが発生するまで繰り返し行い、各サンプルのプレイグニッション発生角度を特定した。また、基準となるスパークプラグ(試験エンジンに搭載された純正スパークプラグ)についても、同様にしてプレイグニッション発生角度を特定した。そして、基準となるスパークプラグのプレイグニッション発生角度と各サンプルのプレイグニッション発生角度の差分値を算出した。この基準となるスパークプラグに対してプレイグニッション発生角度が進角側であるほど、耐プレイグニッション性能が良好なスパークプラグとして評価される。基準となるスパークプラグに対する各サンプルのプレイグニッション発生角度を以下の基準で評価して、各実験例の評価スコアを付けた。その結果を、表1の「耐プレイグニッション」の欄に示した。

<耐プレイグニッションの評価>
評価は以下のような3段階で行った。評価スコアは、点数が高いほど、耐プレイグニッション性能が良好であることを示す。
評価スコア 3:基準となるスパークプラグに対して5°CA以上進角
1:基準となるスパークプラグに対して2°CA以上5°CA未満進角
0:基準となるスパークプラグに対して2°CA未満進角又は遅角

(2.3)耐失火の試験
各サンプルについて、耐失火評価試験を行った。耐失火評価試験の概要は次の通りである。サンプルを、直列4気筒、排気量1.6L、直噴ターボチャージャエンジンに取り付け、2000rpm、吸気圧1000kPaの条件で、1000サイクル運転した際の失火率を測定した。失火率が低いほど、耐失火性能(着火性能)が良好なスパークプラグとして評価される。各サンプルの失火率を以下の基準で評価して、各実験例の評価スコアを付けた。その結果を、表1の「耐失火」の欄に示した。

<耐失火の評価>
評価は以下のような3段階で行った。評価スコアは、点数が高いほど、耐失火性能が良好であることを示す。
評価スコア 3:失火率が1%未満
1:失火率が1%以上3%未満
0:失火率が3%以上

(2.4)総合評価
耐プレイグニッションの評価スコアと、耐失火の評価スコアの合計スコアをもとに、各サンプルを総合評価した。合計スコアが高いほど、耐プレイグニッション性能と、耐失火性能の双方が良好であるとして評価される。合計スコアが6のサンプルの総合評価を「◎」とし、4と2のサンプルの総合評価を「〇」とし、3と1と0のサンプルの総合評価を「×」とした。その結果を、表1の「総合評価」の欄に示した。
【0026】
【表1】


【0027】
(3)評価結果
(3.1)耐プレイグニッションについて
実験例2,3,5,6,8,9,11,12,37,38,40,41,43,44,46,47(比較例)では、主体金具40の常温での熱伝導率B(W/mK)に対する、主体金具40においてプレチャンバー空間63の後端65よりも先端側の金具体積A(mm)の割合A/Bが上記(1)式(3.6<A/B<98.0)を満たしておらず、「耐プレイグニッション」の評価スコアが0であった。一方で、実験例1,4,7,10,13〜36,39,42,45,48(実施例)では、A/Bが上記(1)式(3.6<A/B<98.0)であり、「耐プレイグニッション」の評価スコアが1又は3であった。このように、実施例は、上記(1)式(3.6<A/B<98.0)を満たすことで、比較例と比較して、プレイグニッションが抑制されていた。
【0028】
実験例1,4,7,10,25,28,31,34,39,42,45,48(実施例)では、A/Bが上記(4)式(9.8<A/B<42.5)を満たしておらず、「耐プレイグニッション」の評価スコアが1であった。一方で、実験例13〜24,26,27,29,30,32,33,35,36(実施例)では、A/Bが上記(4)式(9.8<A/B<42.5)であり、「耐プレイグニッション」の評価スコアが3であった。このように、実施例は、上記(4)式(9.8<A/B<42.5)を満たすことで、プレイグニッションがより一層抑制されていた。
【0029】
(3.2)耐失火について
実験例3,10,15,22,27,34,39,46(比較例)では、プレチャンバー空間63の空間体積C(mm)に対する、主体金具40においてプレチャンバー空間63の後端65よりも先端側の金具体積A(mm)の割合C/Aが上記(2)式(0.18<C/A<1.20)を満たしておらず、「耐失火」の評価スコアが0であった。一方で、実験例1,2,4〜9,11〜14,16〜21,23〜26,28〜33,35〜38,40〜45,47,48(実施例)では、C/Aが上記(2)式(0.18<C/A<1.20)であり、「耐失火」の評価スコアが1又は3であった。このように、実施例は、上記(2)式(0.18<C/A<1.20)を満たすことで、失火が抑制されていた。
【0030】
実験例2,4〜7,9,11,14,16〜19,21,23,26,28〜31,33,35,38,40〜43,45,47(実施例)では、C/Aが上記(3)式(0.36<C/A<0.58)を満たしておらず、「耐失火」の評価スコアが1であった。一方で、実験例1,8,12,13,20,24,25,32,36,37,44,48(実施例)では、C/Aが上記(3)式(0.36<C/A<0.58)であり、「耐失火」の評価スコアが3であった。このように、実施例は、上記(3)式(0.36<C/A<0.58)を満たすことで、失火がより一層抑制されていた。
【0031】
(3.3)総合評価について
実験例1,4,7,13,14,16〜21,23〜26,28〜33,35,36,42,45,48(実施例)では、「耐プレイグニッション」の評価スコア及び「耐失火」の評価スコアがともに1以上であり、プレイグニッションと失火の双方が抑制されていた。特に、実験例13,20,24,32,36(実施例)では、合計スコアが6であり、プレイグニッションと失火の双方が良好に抑制されていた。
【0032】
<他の実施形態(変形例)>
なお、この発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0033】
(1)上記実施形態では、カバー部の形状は、特定形状としたが、その形状は適宜変更することができる。カバー部の形状は、例えば、円筒、四角の箱型、円錐等とすることができる。
(2)上記実施形態では、特定数の噴孔を備えたスパークプラグを例示したが、噴孔の数は、特に限定されず、適宜変更できる。また、噴孔の配置、貫通方向も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…中心電極
11…先端部
13…接地電極
13A…対向部
20…絶縁体
21…軸孔
22…後端開口部
30…端子電極
31…後端部
35…抵抗体
40…主体金具
40A…先端側開口部
41…筒孔
43…パッキン
50,250…カバー部
50A,250A…先端側の部分
50B,250B…後端側の部分
51A,251A…頂部
61,261…噴孔
63,263…プレチャンバー空間(副室)
65…プレチャンバー空間の後端
100,200…スパークプラグ
AX…中心軸線
CX…中心軸線
SG…放電ギャップ
図1
図2