(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通話可能エリアまで往復することができないと判断した場合に、前記飛行経路決定部が、前記飛行装置を回収するための回収位置、又は前記飛行装置を充電するための充電位置に到達するように、前記飛行経路を決定する、
請求項1又は2に記載の飛行装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本実施の形態の概要]
図1は、本実施の形態に係る通報システムSの構成を示す図である。通報システムSでは、携帯電話網等の無線通信回線W、例えばLTE(Long Term Evolution)の通信可能エリアAの圏外においてユーザが遭難した場合に、ユーザが飛行装置1を用いて、予め定められた連絡先、例えば、救助センターHへ通報する。飛行装置1は、ユーザに操縦されることなく自律飛行が可能な装置、例えば、ドローンである。この飛行装置1は、軽量で持ち運びに適しており、例えば、電池を含めて約200gである。ユーザは、予め定められた連絡先へ送信するための通報内容を、例えば通報内容作成装置への操作入力により作成する。通報内容作成装置は、例えば、スマートフォン等の端末装置である。
【0019】
まず、ユーザは、基地局2を介する無線通信回線Wの通信可能エリアAの圏外、例えば、山岳地帯へ向かうときに飛行装置1及び通報内容作成装置を予め持って行く。図中の(1)に示すように、ユーザは、通信可能エリアAの圏外において遭難した場合に、通報内容作成装置により、通報内容を作成し、基地局2を介さない無線通信によりこの通報内容を飛行装置1へ送信し、送信後に飛行装置1を飛行させる。飛行装置1は、通信可能エリアAへ向けて自律飛行する。通信可能エリアA内では、飛行装置1は、基地局2を介する無線通信回線Wにより、救助センターHとの通信が可能になるため、図中(2)に示すように、通信可能エリアA内において救助センターHへ通報内容を送信する。
【0020】
図中(3)に示すように、救助センターHのオペレータは、飛行装置1による通報内容に対して応答する。例えば、救助センターHのオペレータは、ユーザの救護までにかかると予想される時間を飛行装置1へ連絡する。飛行装置1は、通報に対する救助センターHの応答である通報応答を記憶する。その後、図中(4)に示すように、飛行装置1は、飛行を開始した飛行開始位置へ帰還し、通報応答をユーザへ報知する。以上のように、ユーザは、通信可能エリアAの圏外において遭難した場合であっても、救助センターHへ通報することができる。
【0021】
[通報内容作成装置3の構成]
図2は、
図1の通報システムSにおける通報内容作成装置3の構成を示す図である。通報内容作成装置3は、表示部31と、スピーカ32と、操作部33と、カメラ34と、通信部35と、記憶部36と、制御部37とを有する。表示部31は、制御部37から入力される表示用データを表示するディスプレイであり、例えば、救助センターHへ通報するための通報内容を表示する。スピーカ32は、電気信号を物理的な振動に変換することにより音声を出力する。操作部33は、ユーザが操作入力を行うための装置であり、表示部31の表面に設けられたタッチパネルをさらに含む。操作部33は、ユーザの操作内容に応じた信号を制御部37に通知する。
【0022】
カメラ34は、ユーザやユーザの周囲を撮影して画像データを生成する。例えば、ユーザの遭難位置を救助センターHへ連絡するために、ユーザの周囲の特徴的な地形等を撮影する。又は、ユーザの救護に必要な情報として、ユーザの体調やけがの状態等を撮影する。カメラ34は、生成された画像データを制御部37に入力する。通信部35は、無線通信回線Wを用いて飛行装置1と通信するための電波を送受信する通信モジュールである。通信部35は、制御部37から入力される送信データを変調する変調器、及び変調後のデータを、基地局2を介さない無線通信、例えばWi−Fi(登録商標)に割り当てられている周波数帯の高周波信号として送信する高周波部を有する。また、通信部35は、高周波部が飛行装置1から受信した高周波信号を復調する復調器を有する。復調器は、復調後の受信データを制御部37に入力する。
【0023】
記憶部36は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。記憶部36は、制御部37が実行するプログラムを記憶しており、また、制御部37のワークメモリとして使用される。
【0024】
制御部37は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部36に記憶されているプログラムを実行する。例えば、操作部33へのユーザの操作入力に基づいて通報内容を生成し、通信部35により無線通信を介して通報内容を飛行装置1へ送信させる。
【0025】
[飛行装置1の構成]
図3は、
図1の飛行装置1の構成を示す図である。飛行装置1は、測定部11と、通信部12と、飛行機構13と、記憶部14と、制御部15とを有する。測定部11は、飛行装置1の位置情報を取得する位置情報取得部11Aとして機能し、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信することにより、位置情報を取得する。また、測定部11は、風の向き及び風の速さを含む風状態を監視する風状態取得部11Bとして機能する。測定部11は、例えば、飛行装置1に搭載された風速計により、風速を測定する。また、測定部11は、地磁気を測定することにより飛行装置1の向きを測定し、飛行装置1の向きと風速計により測定された風の方向とを比較することにより、北東等の方角を示す情報として風の向きを取得する。また、測定部11は、気圧を測定することにより、飛行装置1の飛行高度を測定する高度測定部11Cとして機能する。なお、測定部11は、空中に静止するために要する1又は2以上のロータの角速度をそれぞれ求め、この角速度に基づいて、風の速さを取得してもよい。
【0026】
通信部12は、通信部35と同等の機能を有し、例えば、Wi−Fiにより、通報内容作成装置3と通信する。また、通信部12は、無線通信回線Wにより通信するための電波を送受信する通信モジュールを有し、無線通信回線Wの通信可能エリアA内において無線通信回線Wにより救助センターHと通信する。飛行機構13は、1又は2以上のロータ及び動力部等を含む。飛行機構13は、制御部15の飛行制御信号に基づいてこれらの機構を動作させることで、飛行速度及び飛行方向を変化させることができる。また、通信部12は、無線通信回線Wの通信品質を測定する。通信部12は、例えば、無線通信回線に含まれる電波強度を測定する。
【0027】
記憶部14は、ROM及びRAM等を含む記憶媒体である。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを記憶しており、また、制御部15のワークメモリとして使用される。
【0028】
制御部15は、例えばCPUである。制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、飛行管理部151、通報内容受付部152及び通報制御部153として機能する。飛行管理部151は、測定部11により測定された位置情報及び風状態に基づいて、飛行機構13を制御するための飛行制御信号を生成する。通報内容受付部152は、通信部12において受信した通報内容を受け付ける。例えば、通報内容受付部152は、通報内容として、通報内容作成装置3のカメラ34により撮影した画像データの入力を受け付ける。
【0029】
また、通報内容受付部152は、通報内容として、飛行装置1が飛行を開始した飛行開始位置において測定部11のGPS受信機により取得された位置情報を受け付ける。ユーザは、飛行装置1を持ち運び、遭難した場合に飛行装置1を飛行させる。このため、飛行開始位置は、飛行装置1が飛行を開始した時点におけるユーザの位置と一致し、ユーザの救護のために有用な情報である。したがって、通報内容受付部152は、通報内容として、飛行開始位置の位置情報を受け付ける。
【0030】
通報制御部153は、基地局2を介する無線通信回線Wの通信可能エリアA内において予め定められた連絡先へ通信部12に通報させる。具体的には、通報制御部153は、無線通信回線Wの電波強度のエリアごとの分布を示す分布情報を記憶部14から読み出し、分布情報において通信可能エリアAとして記憶された領域内に飛行装置1が進入した状態において予め定められた連絡先へ通信部12に通報させる。
【0031】
通報制御部153は、例えば、電子メール、通話又はその他の遭難時に用いられる通信により通報を行う。通報制御部153は、通話により通報を行う場合には、例えば、予め録音された音声又は機械的に合成された音声により連絡先へ救助を要請する。連絡先は、例えば、ユーザの遭難した地域の救助を担当する救助センターHや、110番又は119番である。より詳しくは、通報制御部153は、通報内容受付部152が受け付けた通報内容を通信部12に通報させる。例えば、通報制御部153は、通報内容として受け付けた画像データや飛行開始位置の位置情報を電子メールにより送信させる。
【0032】
また、通報制御部153は、通報を受けた連絡先から通報応答を取得する。通報応答は、通報に対する連絡先の応答であり、通報制御部153は、例えば、通報時の通話の録音情報や、電子メールによる通報に応答する電子メールを通報応答として取得する。通報制御部153は、飛行装置1が飛行開始位置へ帰還した後又は帰還する直前に、通報応答をユーザへ報知させる通報応答報知制御手段を有する。通報制御部153は、通信部12により無線通信を介して通報内容作成装置3と通信し、例えば、通報内容作成装置3のスピーカ32により、通報時の通話の録音情報を音声出力させ、又は、通報内容作成装置3の表示部31により、通報を受けた連絡先から通報応答として受信した電子メールを表示させる。
【0033】
[飛行管理部151の構成]
図4は、
図3の飛行管理部151の詳細構成を示した図である。飛行管理部151は、飛行経路決定部201と、飛行制御部202と、所要電力推定部203と、電池残量検出部204と、飛行可否判別部205とを有する。飛行経路決定部201は、分布情報を記憶部14から読み出し、分布情報において通信可能エリアAとして記憶された位置のいずれかを目標地点とする飛行経路を決定する。この場合、飛行経路決定部201は、測定部11により測定された位置情報に基づいて、飛行装置1の飛行経路を決定する。例えば、通信可能エリアA内において飛行装置1の現在位置から最も近い位置を目標地点とし、目標地点と現在位置との間の飛行距離が最も短くなる飛行経路、一例としては、目標地点と現在位置とを結ぶ線分を飛行経路として決定する。または、目標地点と現在位置との間を移動する所要時間が最短となるように、飛行経路を決定してもよい。
【0034】
また、飛行経路決定部201は、高さ情報を含む地図データを記憶部14から読み出し、この高さ情報に基づいて、飛行経路を決定し、この飛行経路を記憶部14に格納する。飛行経路決定部201は、飛行高度を含む飛行経路を決定する。例えば、飛行経路決定部201は、地面までの距離を所定の範囲以上に維持するように、飛行経路を決定する。また、標高が閾値以上の山脈を超えて移動する場合、大幅に飛行高度を上げる必要があるため、所要電力が大きくなることが予想される。この場合、飛行経路決定部201は、例えば、山脈を迂回しつつ最短経路となるように、飛行経路を決定する。この閾値は、山脈を超えて移動するよりも、山脈を迂回した方が所要電力又は所要時間を小さくすることが可能となる値である。
【0035】
また、飛行経路決定部201は、飛行装置1の飛行開始位置から通信可能エリアA内の目標地点まで移動するための往路の飛行経路と、通信可能エリアA内の目標地点から飛行開始位置まで帰還するための復路の飛行経路とを決定する。飛行経路決定部201は、往路と復路とを同一の飛行経路となるように決定してもよく、異なる飛行経路となるように決定してもよい。
【0036】
飛行制御部202は、飛行機構13を制御するための飛行制御信号を生成することにより、飛行装置1を飛行させる。飛行制御部202は、飛行経路決定部201により決定された飛行経路を記憶部14から読み出し、この飛行経路に基づいて、飛行装置を飛行させる。飛行制御部202は、例えば、測定部11により測定された飛行装置1の位置情報と、飛行経路とを比較することにより、飛行経路に沿って飛行装置1を飛行させる。また、飛行制御部202は、連絡先への通報を開始してから通報応答の受領を完了するまで、飛行機構13によりホバリングを行わせ、連絡先への通報後に、飛行装置1を飛行開始位置へ帰還させる。飛行制御部202は、通報応答を受領するまでホバリングをして待機するように制御してもよい。
【0037】
所要電力推定部203は、飛行装置1が飛行経路に沿って移動した場合に、飛行装置1が飛行開始位置と通信可能エリアAとの間を往復するために要する所要電力を推定する。所要電力推定部203は、測定部11により求められた風状態に基づいて、所要電力を推定する。所要電力は、無風で飛行高度が一定である場合には、飛行装置1の移動距離にほぼ比例する。しかしながら、飛行方向に対して逆風である場合には、無風である場合より所要電力が大きくなる。また、風の速さが大きい程、逆風時における所要電力は増大する。そこで、所要電力推定部203は、例えば、無風時の所要電力に対し、風状態に応じた定数を乗じることにより、所要電力を推定する。
【0038】
電池残量検出部204は、電池残量を検出する検出手段であり、例えば、電池電圧を検出することにより、電池残量を検出する。飛行可否判別部205は、電池残量に基づいて、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することが可能か否かを判別する。具体的には、飛行可否判別部205は、所要電力推定部203により求められた所要電力と、電池残量とを比較し、この比較結果に基づいて、往復の可否を判別する。電池残量が所要電力以上である場合には、飛行可否判別部205は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することが可能であると判別する。一方、電池残量が所要電力未満である場合には飛行可否判別部205は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することができないと判別する。
【0039】
飛行可否判別部205は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することができないと判別した場合に、飛行装置1が通報後に帰還しないことをユーザに報知させる。例えば、飛行開始前に通報内容作成装置3の表示部31に表示させる。飛行可否判別部205は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することが可能であると判別した場合には、飛行可否判別部205は、飛行装置1が通報後に帰還することを飛行開始前にユーザに報知させてもよく、飛行装置1が通報後に帰還することについてユーザに報知させなくてもよい。
【0040】
飛行経路決定部201は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することができないと飛行可否判別部205が判別した場合に、飛行装置1の墜落又は紛失を抑制するため、飛行経路を変更する。この場合、飛行経路決定部201は、飛行装置を回収するための回収位置に到達するように、飛行経路を決定する。回収位置は、例えば、救助センターHである。また、回収位置は、飛行開始位置に最も近い山小屋等、人が常駐している場所として記憶部14に記憶されている地点であってもよい。あるいは、飛行経路決定部201は、飛行経路の途中において飛行装置1を充電するため、飛行装置1を充電するための充電位置を経由するように、飛行経路を決定する。
【0041】
このような構成を採用することにより、基地局2を介する無線通信回線の通信可能エリアAの圏外においてユーザが遭難した場合、飛行装置1がユーザの位置から通信可能エリアAまで移動して、救助センターHへ遭難を通報し、救助を要請することができる。また、飛行装置1は、地面までの距離を所定の範囲以上に維持するように飛行することから、例えば、ユーザが山岳地帯において遭難した場合にも、飛行装置1が山に墜落することを抑制することができる。
【0042】
図5は、
図2の通報内容作成装置3の動作の一例を示した説明図である。ここでは、ユーザが、通報内容作成装置3を用いて、救助センターHへ通報するための通報内容を作成している状態が示されており、制御部37は、通報内容の確認画面を表示部31に表示させている。アイコンA1は、飛行装置1の電池残量を示しており、ここでは、電池残量が70%であることが示されている。メッセージA2は、救助センターHへ電子メールにより送信されるメッセージであり、一例として、通報内容の作成日時、北緯及び東経からなる位置情報、ユーザの氏名、年齢、性別、血液型、ケガの有無、テント等の装備の有無、水や食料の有無、服装及びユーザの周囲の状況を含んでいる。
【0043】
画像A3は、ユーザがカメラ34により撮影した画像であり、ユーザの周囲の状況を示している。この確認画面においてユーザが決定ボタンA4を押下することにより、通信部35が、基地局2を介しない無線通信により通報内容を飛行装置1に送信し、飛行装置1の通報内容受付部152が記憶部14に通報内容を格納する。一方、ユーザがキャンセルボタンA5を押下することにより、制御部37が、通報内容を再度作成するための画面を表示させる。
【0044】
図6は、
図1の飛行装置1の動作の一例を示したフローチャートであり、飛行経路決定部201による飛行経路決定時の動作が示されている。ユーザが飛行装置1へ電源を投入するための救助ボタンを押下することにより、この処理手順が開始される。まず、測定部11は、GPS衛星からの信号を受信することにより、飛行装置1の位置情報を取得する(S11)。次に、通報内容受付部152が、通信部12を介して、通報内容作成装置3により作成された通報内容を受け付ける(S12)。
【0045】
さらに、飛行経路決定部201が、通信可能エリアA内において飛行装置1の現在位置から最も近い位置を目標地点とし、当該目標地点と現在位置との間の飛行距離が最も短くなるように、飛行経路を決定する(S13)。さらに、測定部11が、飛行装置1に搭載された風速計により、風の向き及び風の速さを含む風状態を取得する(S14)。次に、電池残量検出部204が、電池残量を検出する(S15)。さらに、所要電力推定部203が、飛行装置1が飛行経路に沿って移動した場合に、飛行装置1が飛行開始位置と通信可能エリアAとの間を往復するために要する所要電力を推定する(S16)。
【0046】
飛行可否判別部205は、所要電力推定部203により求められた所要電力と、電池残量とを比較する(S17)。電池残量が所要電力以上である場合には(S17のYES)、飛行可否判別部205は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することが可能であると判別し、飛行制御部202が、飛行経路に沿って飛行を開始させる(S18)。飛行開始前に、飛行可否判別部205は、飛行経路、飛行装置1が通信可能エリアAに到着すると予想される到着時間、及び、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復して帰還すると予想される帰還時間を通報内容作成装置3へ送信し、通報内容作成装置3の制御部37が、飛行経路、到着時間及び帰還時間を表示部31に表示させる。
【0047】
また、飛行可否判別部205は、飛行装置1が飛行開始位置から通信可能エリアAまで往復することができないと判別した場合に(S17のNO)、飛行装置1が通報後に帰還しないことをユーザに報知させる(S19)。この場合、飛行経路決定部201は、目標地点を変更し、飛行装置を回収するための回収位置に到達するように、飛行経路を決定し、飛行制御部202が、飛行経路に沿って飛行を開始させる(S20,S18)。この場合、飛行可否判別部205は、飛行開始前に、飛行経路及び到着時間を通報内容作成装置3へ送信し、通報内容作成装置3の制御部37が、飛行経路及び到着時間を表示部31に表示させる。
【0048】
図7は、
図1の飛行装置1の動作の一例を示したフローチャートであり、救助センターHへの通報の様子を示している。この処理手順は、飛行装置1が、分布情報において通信可能エリアAとして記憶されている位置に到達したときに開始される。まず、通報制御部153は、通報内容を記憶部14から読み出し、無線通信回線Wを経由して、救助センターHへ電子メールにより通報内容を送信させる(S21)。次に、通報制御部153は、基地局2へ発信信号を送信することにより、救助センターHのオペレータと通話を開始し、予め録音された音声により救助センターHへ救助を要請する(S22)。
【0049】
次に、通報制御部153は、通報後に帰還するか否かに応じて異なる処理を行う(S23)。飛行経路決定部201が、飛行開始位置を通報後の目標地点とする飛行経路を決定している場合には(S23のYES)、通報制御部153は、救助センターHのオペレータとの通話内容の録音情報を通報応答として取得し、飛行開始位置への帰還を開始させる(S24,S25)。飛行装置1が飛行開始位置へ帰還したときに、ユーザは、飛行開始位置から移動している可能性がある。このため、通報制御部153は、飛行開始位置付近まで帰還したときに、飛行装置1の帰還を報知する帰還報知信号を通報内容作成装置3へ無線通信により送信し、通報内容作成装置3の制御部37は、飛行装置1が飛行開始位置付近に帰還したことを示すメッセージを表示部31に表示させる(S26)。飛行装置1の帰還を報知されたユーザは、飛行開始位置から離れている場合、通報内容作成装置3の操作部33への操作入力により、無線通信を介して飛行装置1を操縦する。
【0050】
さらに、通報制御部153は、通報応答として取得した通話内容を通報内容作成装置3のスピーカ32により音声出力させ、処理を終了する(S27)。一方、飛行経路決定部201が、回収位置を通報後の目標地点とする飛行経路を決定している場合には(S23のNO)、通報制御部153は、無線通信回線Wを経由して、回収位置への飛行装置1の回収要請を通信部12に行わせ、回収位置へ飛行させる(S28,S29)。
【0051】
本実施の形態によれば、通報制御部153は、通報内容として飛行開始位置を通報させるので、救助隊は、ユーザの位置を容易に特定することができ、ユーザの救護にかかる時間や手間を大幅に短縮することができる。また、通報制御部153は、通報内容として画像情報を送信させるので、救助隊が、ユーザの状況を視覚的に把握することができる。例えば、ユーザがケガ等をしている場合には、ケガの状況を表す画像情報を送信することにより、救助隊が治療に必要な器具をユーザの救護時に持参することができる。このため、ユーザの救護作業を効率化することができる。
【0052】
また、通報制御部153は、通報応答をユーザに報知させるので、ユーザは、救護の予定や状況等を把握することができる。このため、遭難時のユーザの精神的負荷を軽減することができる。
【0053】
また、飛行可否判別部205は、通信可能エリアAまで往復することができないと判別した場合に、ユーザに報知させるので、ユーザは、飛行装置1が通報後に帰還しないことを予め把握することができる。また、飛行可否判別部205が、通信可能エリアAまで往復することができないと判別した場合に、飛行経路決定部201は、回収位置又は充電位置に到達するように、飛行経路を決定するので、飛行装置1の墜落又は紛失を抑制することができる。さらに、飛行経路決定部201が充電位置を経由する場合には、飛行管理部151が、充電位置において充電を受けることにより、電池残量の不足を補うことができる。
【0054】
また、所要電力推定部203は、風状態に基づいて、所要電力を推定するので、飛行装置1が通信可能エリアAまで往復することが可能であると飛行可否判別部205が判別した場合に、逆風による所要電力の増加に起因して、飛行装置1が墜落することを抑制することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、測定部11が、風の速さ及び風の向きをそれぞれ測定することにより、風状態を取得する場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザが飛行装置1を持って通信可能エリアAの圏外に向かう前に、測定部11が、無線通信回線Wを介してサーバに接続することにより、ユーザが向かうエリア内における風状態の予測情報を取得する構成であってもよい。
【0056】
また、ユーザが飛行装置1を持って通信可能エリアAの圏外へ向かう前に、飛行可否判別部205が、電池残量検出部204により検出された電池残量から飛行可能距離を算出し、万一ユーザが遭難した場合に、飛行装置1が遭難地点から通信可能エリアAまで飛行して連絡先へ通報することが可能となる遭難地点の範囲を決定して通報内容作成装置3へ送信し、通報内容作成装置3の制御部37は、表示部31にこの遭難地点の範囲を表示させてもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、通報内容作成装置3の操作部33にユーザが通報内容を入力する場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、飛行装置1が操作部を有し、飛行装置1の操作部にユーザが通報内容を入力してもよい。また、本実施の形態では、通報制御部153が、通報内容作成装置3の表示部31又はスピーカ32により、通報応答をユーザに報知する場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、飛行装置1が図示しない表示部又はスピーカを有し、通報制御部153が、飛行装置1の表示部又はスピーカにより、通報応答をユーザに報知してもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、飛行可否判別部205が、通信可能エリアAまで往復することが可能か否かを判別する場合の例について説明した。しかしながら、本発明は往復の可否を判別する構成に限定されない。例えば、飛行可否判別部205が、電池残量に基づいて、通信可能エリアAまで到達することが可能か否かを判別する構成であってもよい。この場合、飛行可否判別部205が、通信可能エリアAまで到達することが可能であると判別した場合には、飛行制御部202が、飛行経路に沿って、飛行装置1を飛行させる。
【0059】
一方、飛行可否判別部205が、通信可能エリアAまで到達することができないと判別した場合にも、飛行装置1の電池残量がわずかに不足するだけであれば、ユーザが移動することにより、飛行装置1が、通信可能エリアAまで飛行することが可能になる。そこで、飛行可否判別部205は、通信可能エリアAまで到達することができないと判別した場合に、ユーザの位置から最も近い通信可能エリアAの方向をユーザに報知する。
【0060】
ただし、飛行可否判別部205が、通信可能エリアAまで到達することができないと判別した場合に、ユーザが移動することができない可能性がある。この場合、飛行経路決定部201は、電池残量検出部204により検出された電池残量において到達可能な範囲において他者に遭遇することが予想される地点として記憶部14に記憶された場所を目標地点とするように、飛行経路を決定する。例えば、飛行経路決定部201は、通行量の比較的多い登山道等を目標地点とする。さらに、飛行装置1がこの目標地点に到達した場合に、通報制御部153は、例えば、図示しないスピーカにより、遭難の発生を他者へ報知する。
【0061】
このような構成を採用することにより、飛行可否判別部205は、通信可能エリアAまで飛行することができないと判別した場合に、通信可能エリアAの方向をユーザに報知するので、飛行装置1の電池残量がわずかに不足するだけであれば、ユーザが移動することにより、飛行装置1を用いて遭難を通報することができる。また、飛行可否判別部205が、通信可能エリアAまで到達することができないと判別し、かつ、ユーザが移動することができない場合であっても、飛行制御部202は、他者に遭遇することが予想される地点へ飛行装置1を飛行させるので、他者に遭難の発生を知らせることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、通報制御部153が、分布情報において通信可能エリアAとして記憶された領域内に飛行装置1が進入していると判定した場合に、予め定められた連絡先へ通報させる場合の例について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されない。例えば、通報制御部153は、通信部12により測定された無線通信回線Wの電波強度を閾値と比較し、無線通信回線Wの電波強度が閾値以上である場合に、予め定められた連絡先へ通信部12に通報させてもよい。この閾値は、無線通信回線Wによる通信が可能な程度の値である。
【0063】
また、本実施の形態では、飛行装置1の飛行経路決定部201が通信可能エリアAまでの飛行経路を決定する場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザが通報内容作成装置3において通信可能エリアAまでの飛行経路を指定する構成であってもよい。ユーザは、例えば、表示部31に表示されたマップ上において通信可能エリアA内の飛行装置1の目標地点や、飛行装置1が目標地点に到達するまでに通過する1又は2以上の通過地点を操作部33にそれぞれ入力することにより、飛行装置1の飛行経路を指定する。通報内容作成装置3の制御部37は、指定された飛行経路を通信部35により飛行装置1に送信する。飛行装置1は、図示しない経路受付部をさらに備え、経路受付部は、通信部12を介して、ユーザにより指定された飛行経路を通報内容作成装置3から受け付ける。このような構成を採用することにより、ユーザは、例えば、標高の高い山脈を迂回するように飛行装置1を通信可能エリアAへ飛行させる飛行経路等、状況に応じた適切な飛行経路を指定することができる。
【0064】
本発明の特徴を以下にまとめた。
[1]飛行装置であって、
前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
高さ情報を含む地図データ、及び無線通信回線の通信品質の分布情報を記憶する記憶部と、
前記位置情報及び前記高さ情報に基づいて、地面までの距離を所定の範囲以上に維持するように、前記分布情報において通信可能エリア内として記憶された位置まで飛行する飛行経路を決定する飛行経路決定部と、
前記飛行経路に基づいて、前記飛行装置を飛行させる飛行制御部と、
前記通信可能エリア内において、前記無線通信回線を用いて予め定められた連絡先へ通報させる通報制御部とを備える、飛行装置。
[2]前記通報制御部は、前記飛行装置が飛行を開始した飛行開始位置を通報させる、[1]に記載の飛行装置。
[3]画像情報の入力を受け付ける通報内容受付部をさらに備え、
前記通報制御部は、前記連絡先へ前記画像情報を送信する、[1]又は[2]に記載の飛行装置。
[4] 前記通報制御部は、前記連絡先から通報応答を取得し、
前記通報応答をユーザに報知させる通報応答報知制御部をさらに備え、
前記飛行制御部は、前記連絡先への通報後に、前記飛行装置を前記飛行開始位置に向かって飛行させる、[2]に記載の飛行装置。
[5] 前記通報制御部は、前記連絡先との通話の録音情報である前記通報応答を取得する、[4]に記載の飛行装置。
[6] 電池残量を検出する電池残量検出部と、
前記電池残量に基づいて、前記通信可能エリアまで往復することが可能か否かを判別する飛行可否判別部とをさらに備え、
前記飛行可否判別部は、前記通信可能エリアまで往復することができないと判別した場合に、前記ユーザに報知させる、[4]又は[5]に記載の飛行装置。
[7] 前記通信可能エリアまで往復することができないと判断した場合に、前記飛行経路決定部が、前記飛行装置を回収するための回収位置、又は前記飛行装置を充電するための充電位置に到達するように、飛行経路を決定する、[6]に記載の飛行装置。
[8]風の向き及び風の速さを含む風状態を取得する風状態取得部と、
前記風状態に基づいて、前記通信可能エリアまで往復するために要する所要電力を推定する所要電力推定部とをさらに備え、
前記飛行可否判別部は、前記所要電力と前記電池残量との比較結果に基づいて、前記通信可能エリアまで往復することが可能か否かを判別する、[6]又は[7]に記載の飛行装置。
[9] 電池残量を検出する電池残量検出部と、
前記電池残量に基づいて、前記通信可能エリアまで飛行することが可能か否かを判別する飛行可否判別部とをさらに備え、
前記飛行可否判別部は、前記通信可能エリアまで移動することができないと判別した場合に、前記通信可能エリアの方向をユーザに報知させる、[1]から[5]のいずれか一つに記載の飛行装置。
[10]飛行装置を用いた通報方法であって、
前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
高さ情報を含む地図データ、及び無線通信回線の通信品質の分布情報を記憶する記憶ステップと、
前記位置情報及び前記高さ情報に基づいて、所定の範囲内に地面までの距離を維持するように、前記分布情報において通信可能エリア内として記憶された位置まで飛行する飛行経路を決定する飛行経路決定ステップと、
前記飛行経路に基づいて、前記飛行装置を飛行させる飛行制御ステップと、
前記通信可能エリア内において、前記無線通信回線を用いて予め定められた連絡先へ通報する通報ステップとを備える、通報方法。
[11]飛行装置内のコンピュータに、
前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
高さ情報を含む地図データ、及び無線通信回線の通信品質の分布情報を記憶する記憶ステップと、
前記位置情報及び前記高さ情報に基づいて、所定の範囲内に地面までの距離を維持するように、前記分布情報において通信可能エリア内として記憶された位置まで飛行する飛行経路を決定する飛行経路決定ステップと、
前記飛行経路に基づいて、前記飛行装置を飛行させる飛行制御ステップと、
前記通信可能エリア内において、前記無線通信回線を用いて予め定められた連絡先へ通報する通報ステップと
を実行させるプログラム。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。