(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る扉の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0010】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の開口部に設けられる扉であって、扉体をヒンジ部によって回動自在に軸支して構成された扉に関するものである。
【0011】
ここで、「建物」とは、その具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、オフィスビル又は工場施設等を含む概念である。また、「建物の開口部」とは、建物の躯体の一部分(例えば、壁、天井、又は床等)において窓や入り口を設置するために形成された開口部である。また、「扉(ドア)」は、建物の開口部の出入り又は視界を抑制又は制限するための構造体を意味する。また、扉の取り付け位置や用途は任意であるが、例えば玄関に設置される「玄関扉」、勝手口や通用口に設置される「勝手口扉」、あるいは建物内部に設置される「室内扉」等を含む。また、扉の開閉構造は任意であり、例えば、片開式の開き戸や両開式の開き戸(いわゆる親子型の扉)として構成することができる。以下、実施の形態では、扉が、ビルの如き建物の避難通路に面する位置に配置された片開式の開き戸であって、この避難通路に隣接する部屋の中で火災が発生した場合に、当該火災の熱が当該扉を介して避難通路側に伝導することを抑制できる開き戸(すなわち、片開式の遮熱扉)である場合について説明する。
【0012】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0013】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係る扉について説明する。この実施の形態1は、第1遮熱手段が遮熱部材であり、第2遮熱手段及び第3遮熱手段が遮熱空間部である形態である。
【0014】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る扉の構成について説明する。以下の説明では、
図1のX方向を扉の左右方向又は幅方向(−X方向を扉の左方向、+X方向を扉の右方向)、
図1のY方向を扉の前後方向(+Y方向を扉の前方向(部屋の室外側の方向)、−Y方向を扉の後方向(部屋の室内側の方向))、
図1のZ方向を扉の上下方向(+Z方向を扉の上方向、−Z方向を扉の下方向)と称する。また、
図4においては、後述する第3遮熱部53を想像線で示す(なお、後述する
図10に示す第3遮熱部53についても同様とする)。
【0015】
図1から
図4に示すように、扉1は、概略的に、枠体(図示省略)と、扉体10と、ヒンジ部40とを備えて構成されている。ただし、扉1に関する特記しない構成については、従来と同様であるものとして説明を省略する。なお、後述する扉1を構成する各種部材同士の取付方法(又は接続方法)については任意であるが、例えば、取付側の部材又は取付相手側の部材に形成された取付孔(例えば、リベット孔、ネジ孔、ビス孔等)を介して、取付側の部材を取付相手側の部材に対して固定具(例えば、リベット、取付ネジ、ビス等)、溶接、接着剤、両面テープ等によって取り付ける(又は接続する)方法が採用されている。
【0016】
(構成−枠体)
枠体は、建物の躯体(図示省略)に形成された開口部(図示省略)の周縁に設置されるものであり、左右一対の縦枠及び上下一対の横枠を備える(いずれも図示省略)。これら縦枠及び横枠は、それぞれ開口部の周縁における建物の躯体に公知の方法で直接的に固定されており、相互に組み合わせられることにより全体として正面矩形環状の枠体を構成する。以下では、必要に応じて、左右一対の縦枠のうち、後述する扉体10の戸尻側の縦枠を「戸尻側縦枠」と称し、後述する扉体10の戸先側の縦枠を「戸先側縦枠」と称する。また、上下一対の横枠のうち、上側の横枠を「上側横枠」と称し、下側の横枠を「下側横枠」と称する。
【0017】
ここで、戸先側縦枠には、デッドボルト受けと、ラッチ受けとが設けられている(いずれも図示省略)。デッドボルト受けは、扉体10を全閉位置(実施の形態1においては
図1に示す位置)に位置させた状態において、扉体10に設けられた後述する公知のデッドボルトを受けるためのデッドボルト受容手段であり、後述するデッドボルトと対応する位置に配置されている。ラッチ受けは、扉体10に設けられた後述するラッチを受けるためのラッチ受容手段であり、ラッチと対応する位置に配置されている。
【0018】
(構成−扉体)
扉体10は、建物の開口部を開閉するための平板状の開閉体である。
図1に示すように、扉体10は、扉枠20と、表面材30、31とを備えている。
【0019】
(構成−扉体−扉枠)
扉枠20は、扉体10の剛性を主として担うものである。この扉枠20は、複数のスチール製の左右一対の縦力骨21、22、及び上下一対の横力骨23、24を組み合わせることによって、正面形状が矩形環状となるように形成されている。このうち、左右一対の縦力骨21、22は、長手方向(上下方向)の長さが相互に略同一となるように形成されており、上下方向に略沿うように配置されている。また、上下一対の横力骨23、24は、長手方向(左右方向)の長さが相互に略同一となるように形成されており、左右方向に略沿うように配置されている。以下では、必要に応じて、縦力骨21、22のうち、扉体10の戸尻側の縦力骨21を「戸尻側縦力骨21」と称し、扉体10の戸先側の縦力骨22を「戸先側縦力骨22」と称する。また、横力骨23、24のうち、上側の横力骨23を「上側横力骨23」と称し、下側の横力骨24を「下側横力骨24」と称する。なお、この戸尻側縦力骨21は、特許請求の範囲における「支持部材」に対応する。
【0020】
(構成−扉体−表面材)
表面材30は、扉体10の2つの主側面のうち一方の主側面の一部及び当該扉体10の戸尻側の側面の一部を覆う第1表面材であり、表面材31は、扉体10の2つの主側面のうち他方の主側面の一部及び当該扉体10の戸尻側の側面の他の一部を覆う第2表面材である。ここで、「主側面」とは、扉体10の側面のうち、面積が最も大きな側面を意味し、実施の形態1では、見込み方向(前後方向)に直交する2つの側面、すなわち扉体10の部屋の室内側の側面及び扉体10の部屋の室外側の側面を主側面として説明する。また、これら表面材30、31は、扉枠20を部屋の室内側及び部屋の室外側から覆うように設置されており、表面材30、31及び扉枠20の各々に形成された取付孔(図示省略)を介して扉枠20に対して固定具等によって固定されている。以下では、必要に応じて、これら表面材30、31のうち、部屋の室内側に配置された表面材30を「室内側表面材30」と称し、部屋の室外側に配置された表面材31を「室外側表面材31」と称する。
【0021】
(構成−扉体−その他の構成)
また、扉体10の戸先側には、把手11、ラッチ(図示省略)、及び施錠装置(図示省略)が設けられている。このうち、把手11は、ユーザが扉体10の開閉操作を行うためのものであり、扉体10の部屋の室内側の側面及び部屋の室外側の側面における相互に対応する位置に配置されている。また、ラッチは、施錠装置による施錠の有無に関わらず、扉体10によって開口部が閉鎖された状態(以下、「開口部全閉状態」と称する)の位置に扉体10を維持するためのものである。このラッチは、扉体10の内部に設けられた連動機構(図示省略)を介して把手11と連結されており、ユーザによる把手11の操作に連動して、ラッチを扉体10の戸先側の側面から出し入れすることができる。これにより、開口部全閉状態において、このラッチを戸先側縦枠に設けられたラッチ受けに係止させることにより、扉体10を開口部全閉状態の位置に維持することができる。また、施錠装置は、扉体10を施錠するための装置である。この施錠装置は、デッドボルト(図示省略)を備えて構成されており、具体的には、ユーザが扉体10の前方から鍵操作を行うことにより、デッドボルトを扉体10の戸先側の側面から出し入れすることができ、開口部全閉状態において、このデッドボルトを戸先側縦枠に設けられたデッドボルト受けに係止させることで、扉体10を施錠することができる。
【0022】
(構成−ヒンジ部)
ヒンジ部40は、扉体10を戸尻側縦枠に対して回動自在に軸支するためのものである。このヒンジ部40は、扉体10の戸尻側の端部において、相互に間隔を隔てて上下方向に沿って複数並設されている。また、このヒンジ部40は、公知の旗蝶番と同様に構成され、具体的には、円筒状の上軸受41と、上軸受41に差し込み自在な棒状の下軸(図示省略)と、上軸受41に接続された上支持片42と、下軸に接続された下支持片(図示省略)とを備えており、上軸受41及び下軸が扉体10よりも部屋の室外側に位置するように設けられている。また、このヒンジ部40の固定方法については任意であるが、実施の形態1においては、
図2から
図4に示すように、上支持片42に形成された取付孔(図示省略)、室外側表面材31に形成された取付孔(図示省略)(又は後述する補助部材33に形成された取付孔(図示省略))、後述する第1遮熱部51に形成された取付孔(図示省略)、戸尻側縦力骨21の後述する中央片25に形成された、後述する
図5に示す取付孔25a、及び後述する固定ライナ28に形成された、後述する
図5に示す取付孔28aを介して、上支持片42を固定ライナ28に対して固定具43により固定する。次に、下支持片に形成された取付孔(図示省略)、及び戸尻側縦枠に形成された取付孔(図示省略)を介して、下支持片を戸尻側縦枠に対して固定具(図示省略)により固定する。そして、この下支持片と接続された下軸を、この上支持片42と接続された上軸受41に差し込むことにより、このヒンジ部40を介して扉体10と戸尻側縦枠とを連結する。
【0023】
(構成−扉枠の構成の詳細)
次に、扉枠20の構成の詳細について説明する。この扉枠20を構成する戸尻側縦力骨21、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、及び下側横力骨24は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。実施の形態1において、戸尻側縦力骨21、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、及び下側横力骨24の各々は、自己の長手方向に直交する断面の断面形状がコ字状となるように形成されている。具体的には、
図2、
図4、
図5に示すように、戸尻側縦力骨21は、中央片25と、部屋の室内側に位置する室内側片26と、部屋の室外側に位置する室外側片27とを有している。また、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、及び下側横力骨24の各々も、戸尻側縦力骨21と同様に、中央片と、部屋の室内側に位置する室内側片と、部屋の室外側に位置する室外側片とを有している(いずれも図示省略)。
【0024】
また、この戸尻側縦力骨21には、固定具43を介してヒンジ部40を当該戸尻側縦力骨21に対して固定するための固定ライナ28が設けられている。ここで、固定ライナ28が設けられた理由は以下の通りである。すなわち、扉体10の内部に後述する第4遮熱部54a、54bを設ける場合には、扉体10の内部に後述する第4遮熱部54a、54bを設けない場合に比べて、中央片25の前後方向の長さ(幅)を狭める必要があることから、この中央片25において固定具43を取り付けるための取付孔25aを形成するための十分な領域を確保しづらくなる可能性があった。そこで、このような問題を解消するために、固定ライナ28が設けられている。この固定ライナ28は、長尺な板状体にて形成されており、具体的には、固定ライナ28の長手方向の長さ(上下方向の長さ)が、少なくともヒンジ部40の上支持片42の上下方向の長さよりも長くなるように形成されている。また、この固定ライナ28は、中央片25及び室外側片27にわたって形成された切欠部27aを介して戸尻側縦力骨21の内部において少なくとも一部が収容されており、当該固定ライナ28の長手方向が上下方向に沿うと共に、当該固定ライナ28の側面が中央片25と接触するように設けられている。また、この固定ライナ28に対して固定具43を取り付ける方法については、実施の形態1においては、
図2から
図5に示すように、固定具43のうち、室外側表面材31側に位置する固定具43は、室外側表面材31の取付孔、及び固定ライナ28の取付孔28aを介して固定ライナ28に対して取り付けられている。一方、固定具43のうち、室内側表面材30側に位置する固定具43は、室内側表面材30の取付孔、中央片25の取付孔25a、及び固定ライナ28の取付孔28aを介して固定ライナ28に対して取り付けられている。
【0025】
このような戸尻側縦力骨21、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、下側横力骨24、及び固定ライナ28の材質は、例えば、鋼材(具体的には、スチール、ステンレス等)で製造することができる。
【0026】
(構成−扉体の遮熱構造)
次に、扉体10の遮熱構造について説明する。この扉体10は、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合に、当該火災の熱が当該扉1を介して当該部屋の室内側又は室外側のいずれか一方から当該部屋の室内側又は室外側のいずれか他方へ伝導することを抑制するための遮熱構造を備えている。また、この遮熱構造は、扉体10の戸尻側の遮熱構造と、扉体10の戸尻側以外の他の部位の遮熱構造とを備えている。以下では、これら各遮熱構造について順次説明する。
【0027】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側の遮熱構造)
まず、扉体10の戸尻側の遮熱構造について説明する。
図2から
図4に示すように、扉体10における戸尻側の部分の遮熱性能を向上させるための遮熱構造として、第1遮熱部51、第2遮熱部52、第3遮熱部53、及び第4遮熱部54a、54bが設けられている。
【0028】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側の遮熱構造−第1遮熱部)
第1遮熱部51は、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々における扉体10の戸尻側の部分と戸尻側縦力骨21の中央片25との相互間での熱伝導を抑制するための第1遮熱手段である。この第1遮熱部51は、例えば公知の遮熱部材(例えば比較的高い遮熱性を有する無機材等)を用いて構成されており、板状体に形成され、この中央片25の上下方向の全長にわたって形成されている。また、
図2から
図4に示すように、この第1遮熱部51は、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々における扉体10の戸尻側の部分とこの中央片25との相互間において、当該扉体10の戸尻側の部分と当該中央片25とによって挟持されるように設けられており、当該扉体10の戸尻側の部分又は当該中央片25に対して接着剤等によって固定されている。
【0029】
また、この第1遮熱部51の左右方向の長さ(厚さ)及び前後方向の長さ(幅)については、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々における扉体10の戸尻側の部分とこの中央片25との相互間での熱伝導を抑制することが可能である限り、任意に設定することができる。実施の形態1においては、第1遮熱部51の左右方向の長さ(厚さ)は、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合において、室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか一方から第1遮熱部51及び中央片25を介して室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか他方へ熱伝導が行われる場合に、人が避難通路を通って避難することが妨げられない程度に、この熱伝導を抑制することが可能な長さに設定されており、具体的には、この熱伝導を抑制するために必要な当該長さが、第1遮熱部51の材質に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定されている。また、第1遮熱部51の前後方向の長さ(幅)は、この中央片25の前後方向の長さ(幅)と略同一又はそれよりも長い長さに設定されている。このような構成により、室内側表面材30(又は室外側表面材31)における扉体10の戸尻側の部分と戸尻側縦力骨21の中央片25との相互間での熱伝導を抑制できる。
【0030】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側の遮熱構造−第2遮熱部)
第2遮熱部52は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間での熱伝導を抑制するための第2遮熱手段である。
図2から
図4に示すように、この第2遮熱部52は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、当該部分と突き合わさるように配置された室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に設けられた遮熱空間部として構成されており、室内側表面材30(又は室外側表面材31)の上下方向の全長にわたって形成されている。
【0031】
ここで、この第2遮熱部52を遮熱空間部として構成するためには、具体的には、室内側表面材30及び室外側表面材31が扉枠20に対して取り付けられた場合に、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分の先端部と室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分の先端部とが相互に接触しないように、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分の前後方向の長さ、及び室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分の前後方向の長さが設定されている。
【0032】
また、この第2遮熱部52の前後方向の長さ(幅)及び左右方向の長さ(厚さ)については、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分(又は補助部材33)と室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間での熱伝導を抑制することが可能である限り、任意に設定することができる。実施の形態1においては、第2遮熱部52の前後方向の長さ(幅)は、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合において、室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか一方から第2遮熱部52を介して室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか他方へ熱伝導が行われる場合に、人が避難通路を通って避難することが妨げられない程度に、この熱伝導を抑制することが可能な長さに設定されており、具体的には、この熱伝導を抑制するために必要な当該長さを正確に設定できるように、実験結果等に基づいて設定されている。また、この第2遮熱部52の左右方向の長さ(厚さ)は、室内側表面材30(又は室外側表面材31)の厚さと略同一に設定されている(あるいは、この熱伝導を抑制できる限り、室内側表面材30(又は室外側表面材31)の厚さよりも薄く、又は厚く設定されてもよく、例えば、第2遮熱部52の内部に他の部材を介在させる場合には、室内側表面材30(又は室外側表面材31)の厚さよりも薄く設定されてもよい)。このような構成により、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間での熱伝導を抑制できる。
【0033】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側の遮熱構造−第3遮熱部)
第3遮熱部53は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分とヒンジ部40との相互間での熱伝導を抑制するための第3遮熱手段である。
図2から
図4に示すように、この第3遮熱部53は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分とヒンジ部40の上支持片42との相互間に形成された遮熱空間部として構成されており、当該上支持片42の上下方向の全長にわたって形成され、当該扉体10の戸尻側の部分から当該上支持片42に向けて傾斜するように(具体的には、見込み方向及び見付方向の各々に対して斜交するように)設けられている。
【0034】
ここで、この第3遮熱部53を遮熱空間部として構成するためには、具体的には、室内側表面材30及びヒンジ部40が扉枠20に対して取り付けられた場合に、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と上支持片42とが相互に接触しないように、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分に、第2遮熱部52を見込み方向(前後方向)の外側に向けて広げるための切欠部32が形成されている。この切欠部32の大きさ及び設置位置については、実施の形態1においては、室内側表面材30と上支持片42とが接触しない大きさ及び設置位置に設置されており、具体的には、室内側表面材30のうち、上支持片42と対向する部分及びその近傍部分を含む領域に設置されている。また、このような切欠部32が形成されることにより、戸尻側縦力骨21及びヒンジ部40の支持状態が不安定になることが想定されるので、実施の形態1においては、戸尻側縦力骨21及びヒンジ部40を安定して支持するための補助部材33が設けられている。この補助部材33は、スチール製の長尺な板状体であり、具体的には、補助部材33の前後方向の長さ(幅)が切欠部32の前後方向の長さ(幅)よりも短く、補助部材33の上下方向の長さ(高さ)が切欠部32の上下方向の長さ(高さ)よりも短く、及び補助部材33の左右方向の長さ(厚さ)が室内側表面材30の厚さと略同一となるように形成されている。また、
図2から
図4に示すように、この補助部材33は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に介在するように設置されており、具体的には、補助部材33の少なくとも一部が第2遮熱部52の領域のうち切欠部32に囲繞された領域52a(以下、「囲繞領域52a」と称する)に位置し(より具体的には、室内側表面材30及び室外側表面材31と接触しないように位置し)、且つ、第1遮熱部51が補助部材33と戸尻側縦力骨21の中央片25とによって挟持されるように設置されている。このような構成により、後述する実施の形態3に係る扉201のように、室外側表面材31の一部に後述する突出部分34を形成して、当該突出部分34を囲繞領域52aに位置するように設置した場合に比べて、室外側表面材31を加工する手間を低減できるので、扉1の製造性を向上させることが可能となる。また、補助部材33を設けない場合に比べて、戸尻側縦力骨21やヒンジ部40を安定して支持することができるので、扉体10における構造の安定性を高めることが可能となる。
【0035】
また、この第3遮熱部53の前後方向の長さ(幅)及び左右方向の長さ(厚さ)については、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と上支持片42との相互間での熱伝導を抑制することが可能である限り、任意に設定することができる。実施の形態1においては、この第3遮熱部53の前後方向の長さ(幅)及び左右方向の長さ(厚さ)は、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合において、室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか一方から第3遮熱部53及び上支持片42を介して室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか他方へ熱伝導が行われる場合に、人が避難通路を通って避難することが妨げられない程度に、この熱伝導を抑制することが可能な長さに設定されており、具体的には、この熱伝導を抑制するために必要な当該長さを正確に設定できるように、実験結果等に基づいて設定されている。このような構成により、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分とヒンジ部40との相互間での熱伝導を抑制できる。
【0036】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側の遮熱構造−第4遮熱部)
第4遮熱部54aは、室内側表面材30の主側面側(部屋の室内側)の部分と戸尻側縦力骨21の室内側片26との相互間での熱伝導を抑制するための第4遮熱手段であり、第4遮熱部54bは、室外側表面材31の主側面側(部屋の室外側)の部分と戸尻側縦力骨21の室外側片27との相互間での熱伝導を抑制するための第4遮熱手段である。この第4遮熱手段は、室内側表面材30及び室外側表面材31と戸尻側縦力骨21との相互間の熱伝導を抑制する点において、第1遮熱手段と同様の機能を有するものである。これら第4遮熱部54a、54bの各々は、例えば公知の遮熱部材を用いて構成されており、この室内側片26(又はこの室外側片27)の上下方向の全長にわたって形成されている。また、
図2から
図4に示すように、第4遮熱部54aは、室内側表面材30における部屋の室内側の部分とこの室内側片26との相互間において、当該部屋の室内側の部分と当該室内側片26とによって挟持されるように設けられており、当該部屋の室内側の部分又は当該室内側片26に対して接着剤等によって固定されている。また、第4遮熱部54bは、室外側表面材31における部屋の室外側の部分とこの室外側片27との相互間において、当該部屋の室外側の部分と当該室外側片27とによって挟持されるように設けられており、当該部屋の室外側の部分又は当該室外側片27に対して接着剤等によって固定されている。
【0037】
また、この第4遮熱部54aの前後方向の長さ(厚さ)及び左右方向の長さ(幅)については、室内側表面材30における部屋の室内側の部分と室内側片26との相互間での熱伝導を抑制することが可能である限り、任意に設定することができる。実施の形態1においては、第4遮熱部54aの前後方向の長さ(厚さ)は、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合において、室内側表面材30及び室内側片26のいずれか一方から第4遮熱部54aを介して室内側表面材30及び室内側片26のいずれか他方へ熱伝導が行われる場合に、人が避難通路を通って避難することが妨げられない程度に、この熱伝導を抑制することが可能な長さに設定されており、具体的には、この熱伝導を抑制するために必要な当該長さが、第4遮熱部54aの材質に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定されている。また、第4遮熱部54aの左右方向の長さ(幅)は、室内側片26の左右方向の長さと略同一又はそれよりも長い長さに設定されている。また、この第4遮熱部54bの前後方向の長さ(厚さ)及び左右方向の長さ(幅)については、上述した第4遮熱部54aの前後方向の長さ(厚さ)及び左右方向の長さ(幅)と同様に、室外側表面材31における部屋の室外側の部分と室外側片27との相互間での熱伝導を抑制することが可能な長さに設定されている。このような構成により、室内側表面材30の主側面側(部屋の室内側)の部分と戸尻側縦力骨21の室内側片26との相互間での熱伝導を抑制できると共に、室外側表面材31の主側面側(部屋の室外側)の部分と戸尻側縦力骨21の室外側片27との相互間での熱伝導を抑制できる。
【0038】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側の遮熱構造−その他の構造)
また、この扉体10の戸尻側の遮熱構造に関するその他の構造については、扉体10における戸尻側の部分の遮熱性能をさらに向上させるために、以下に示す特徴を有する。すなわち、室外側表面材31の取付孔及び補助部材33の取付孔の形状については、実施の形態1においては、固定具43を介してヒンジ部40と室外側表面材31及び補助部材33の各々との相互間で熱伝導が行われることを抑制できるように、固定具43と室外側表面材31又及び補助部材33の各々とが接触しない形状にて形成されており、具体的には、これら取付孔の各々の直径が固定具43の直径よりも大きく形成されている。このような形状により、固定具43を介してヒンジ部40と室外側表面材31及び補助部材33の各々との相互間で熱伝導が行われることを抑制できる。
【0039】
以上のような扉体10の戸尻側の遮熱構造により、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合に、当該火災の熱が当該扉1を介して当該部屋の室内側又は室外側のいずれか一方から当該部屋の室内側又は室外側のいずれか他方へ伝導することを抑制できるので、扉体10における戸尻側の部分の遮熱性能を向上させることが可能となる。
【0040】
(構成−扉体の遮熱構造−扉体の戸尻側以外の他の部位の遮熱構造)
次に、扉体10の戸尻側以外の他の部位の遮熱構造について説明する。扉体10における戸先側の部分以外の他の部分(具体的には、扉体10の戸先側の部分、扉体10の上面側の部分、扉体10の下面側の部分)の遮熱性能を向上させるための遮熱構造として、扉体10の戸先側の遮熱構造における第1遮熱部、第2遮熱部、及び一対の第4遮熱部が、扉体10の戸先側の部分、扉体10の上面側の部分、及び扉体10の下面側の部分にそれぞれ設けられている(いずれも図示省略)。具体的には、扉体10の戸先側の部分においては、第1遮熱部が、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々における扉体10の戸先側の部分と戸先側縦力骨22の中央片との相互間に設けられ、第2遮熱部が、室内側表面材30における扉体10の戸先側の部分と室外側表面材31における扉体10の戸先側の部分との相互間に設けられ、一対の第4遮熱部が、室内側表面材30の主側面側(部屋の室内側)の部分と戸先側縦力骨22の室内側片との相互間、及び室外側表面材31の主側面側(部屋の室外側)の部分と戸先側縦力骨22の室外側片との相互間に設けられている。また、扉体10の上面側の部分においては、第1遮熱部が、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々における上面側の部分と上側横力骨23の中央片との相互間に設けられ、第2遮熱部が、室内側表面材30における上面側の部分と室外側表面材31における上面側の部分との相互間に設けられ、一対の第4遮熱部が、室内側表面材30の主側面側(部屋の室内側)の部分と上側横力骨23の室内側片との相互間、及び室外側表面材31の主側面側(部屋の室外側)の部分と上側横力骨23の室外側片との相互間に設けられている。また、扉体10の下面側の部分においては、第1遮熱部が、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々における下面側の部分と下側横力骨24の中央片との相互間に設けられ、第2遮熱部が、室内側表面材30における下面側の部分と、室外側表面材31における下面側の部分との相互間に設けられ、一対の第4遮熱部が、室内側表面材30の主側面側(部屋の室内側)の部分と下側横力骨24の室内側片との相互間、及び室外側表面材31の主側面側(部屋の室外側)の部分と下側横力骨24の室外側片との相互間に設けられている。このような扉体10の戸尻側以外の他の部位の遮熱構造により、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合に、当該火災の熱が当該扉1を介して当該部屋の室内側又は室外側のいずれか一方から当該部屋の室内側又は室外側のいずれか他方へ伝導することを抑制できるので、扉体10における戸先側の部分、扉体10の上面側の部分、及び扉体10の下面側の部分の遮熱性能を向上させることが可能となる。
【0041】
(扉体の遮熱構造の作用)
このように構成された扉体10の遮熱構造の作用について説明する。
【0042】
まず、例えば、開口部全閉状態において、部屋の中で火災が発生した場合に、当該火災の熱によって室内側表面材30が加熱される。
【0043】
この場合において、上記火災の熱の一部が、室内側表面材30から戸尻側縦力骨21、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、及び下側横力骨24の各々を介して室外側表面材31に向けて間接的に伝導しようとすると、扉体10の戸尻側の遮熱構造における第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54b、並びに、扉体10の戸尻側以外の他の部位の遮熱構造における第1遮熱部及び一対の第4遮熱部によって、室内側表面材30と戸尻側縦力骨21、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、及び下側横力骨24の各々との相互間、及び戸尻側縦力骨21、戸先側縦力骨22、上側横力骨23、及び下側横力骨24の各々と室外側表面材31との相互間での熱伝導が抑制される。
【0044】
また、上記火災の熱の他の一部が、室内側表面材30から室外側表面材31に向けて直接的に伝導しようとすると、扉体10の戸尻側の遮熱構造における第2遮熱部52、及び扉体10の戸尻側以外の他の部位の遮熱構造における第2遮熱部によって、室内側表面材30と室外側表面材31との相互間での熱伝導が抑制される。
【0045】
また、上記火災の熱の他の一部が、室内側表面材30からヒンジ部40を介して室外側表面材31に向けて間接的に伝導しようとすると、扉体10の戸尻側の遮熱構造における第3遮熱部53によって、ヒンジ部40と室内側表面材30との相互間での熱伝導が抑制される。
【0046】
以上のことから、上記火災の熱が、室内側表面材30から室外側表面材31に向けて直接的又は間接的に伝導することを抑制できるので、上記火災時において、人が避難通路を通って避難することが妨げられることを回避できる。
【0047】
(効果)
このように実施の形態1によれば、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々と、戸尻側縦力骨21との相互間に設けられた第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54bと、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、当該部分と突き合わさるように配置された室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に設けられた第2遮熱部52と、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分とヒンジ部40との相互間に設けられた第3遮熱部53と、を備えているので、第1遮熱部51、第2遮熱部52、第3遮熱部53、及び第4遮熱部54a、54bによって、室内側表面材30とヒンジ部40との相互間での熱伝導を抑制することができると共に、室内側表面材30又は室外側表面材31の少なくともいずれか一方と戸尻側縦力骨21との相互間での熱伝導、及び室内側表面材30と室外側表面材31との相互間での熱伝導も抑制することができ、扉1の遮熱性能(特に、扉体10における戸尻側の部分の遮熱性能)を向上させることができる。よって、例えば、扉1を有する建物の部屋の中で火災が発生した場合に、この扉1に隣接する避難通路を通って人が避難することが妨げられることを回避できる。
【0048】
また、第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54bは、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々と戸尻側縦力骨21とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、第2遮熱部52は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、第3遮熱部53は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分とヒンジ部40との相互間に形成された遮熱空間部であるので、第2遮熱部52及び第3遮熱部53が遮熱部材である場合に比べて、扉1の部品数を低減でき、扉1の製造コストを低減することが可能となる。
【0049】
また、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に介在させる補助部材33を備え、第1遮熱部51を補助部材33と戸尻側縦力骨21とによって挟持したので、補助部材33を備えない場合に比べて、戸尻側縦力骨21やヒンジ部40を安定して支持することができ、扉体10における構造の安定性を高めることが可能となる。
【0050】
また、補助部材33の少なくとも一部が、第2遮熱部52の囲繞領域52aに位置するように、当該補助部材33を設置したので、後述する実施の形態3に係る扉201のように、室外側表面材31の一部に後述する突出部分34を形成して、当該突出部分34を囲繞領域52aに位置するように設置した場合に比べて、室内側表面材30又は室外側表面材31のいずれか一方を加工する手間を低減でき、扉1の製造性を向上させることが可能となる。
【0051】
〔実施の形態2〕
まず、実施の形態2に係る扉について説明する。この実施の形態2は、第1遮熱手段及び第3遮熱手段が遮熱部材であり、第2遮熱手段が遮熱空間部である形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0052】
(構成)
まず、実施の形態2に係る扉の構成について説明する。
図6、
図7に示すように、実施の形態2に係る扉101については、実施の形態1に係る扉1とほぼ同様に構成されている。ただし、室内側表面材30の構成、及び扉体10の戸尻側の遮熱構造の構成については、下記に示す工夫が施されている。
【0053】
(構成−室内側表面材の構成)
次に、室内側表面材30の構成について説明する。実施の形態2に係る室内側表面材30は、実施の形態1に係る室内側表面材30の構成要素に対して、切欠部32及び補助部材33を省略して構成されている。このような構成において、ヒンジ部40の上支持片42の固定方法については任意であるが、実施の形態2においては、
図6、
図7に示すように、上支持片42の取付孔、第3遮熱部53の取付孔、室外側表面材31の取付孔(又は室内側表面材30に形成された取付孔(図示省略))、第1遮熱部51の取付孔、戸尻側縦力骨21の中央片25の取付孔25a、及び固定ライナ28の取付孔28aを介して、上支持片42を固定ライナ28に対して固定具43により固定する。
【0054】
(構成−扉体の戸尻側の遮熱構造の構成)
次に、扉体10の戸尻側の遮熱構造の構成について説明する。
図6、
図7に示すように、実施の形態2に係る扉体10の戸尻側の遮熱構造として、第1遮熱部51、第2遮熱部52、第3遮熱部53、及び第4遮熱部54a、54bが設けられている。このうち、第3遮熱部53は、例えば公知の遮熱部材を用いて構成されており、板状体に形成されており、ヒンジ部40の上支持片42における上下方向の略全長にわたって形成されている。また、この第3遮熱部53は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分及び室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分の各々と上支持片42との相互間に挟持されるように設けられており、当該扉体10の戸尻側の部分の各々又は当該上支持片42に対して接着剤等によって固定されている。また、この第3遮熱部53の左右方向の長さ(厚さ)及び前後方向の長さ(幅)については、室内側表面材30(又は室外側表面材31)における扉体10の戸尻側の部分と上支持片42との相互間での熱伝導を抑制することが可能である限り、任意に設定することができる。実施の形態2においては、第3遮熱部53の左右方向の長さ(厚さ)は、部屋の室内側又は室外側のいずれか一方で火災が発生した場合において、室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか一方から第3遮熱部53及び上支持片42を介して室内側表面材30及び室外側表面材31のいずれか他方へ熱伝導が行われる場合に、人が避難通路を通って避難することが妨げられない程度に、この熱伝導を抑制することが可能な長さに設定されており、具体的には、この熱伝導を抑制するために必要な当該長さが、第3遮熱部53の材質に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定されている。また、この第3遮熱部53の前後方向の長さ(幅)は、上支持片42のうち、室内側表面材30及び室外側表面材31と見付け方向に沿って重なり合う部分の前後方向の長さ(幅)よりも若干短い長さに設定されている(あるいは、当該重なり合う部分の前後方向の長さ(幅)と略同一に設定されてもよい)。このような構成により、第3遮熱部53が遮熱空間部である場合に比べて、熱伝導を抑制することができ、扉体10における戸尻側の部分の遮熱性能を向上させることが可能となる。
【0055】
(効果)
このように実施の形態2によれば、第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54bは、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々と戸尻側縦力骨21とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、第2遮熱部52は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、第3遮熱部53は、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々とヒンジ部40とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であるので、第3遮熱部53が遮熱空間部である場合に比べて、熱伝導を抑制することができ、扉101の遮熱性能を一層向上させることが可能となる。
【0056】
〔実施の形態3〕
まず、実施の形態3に係る扉について説明する。この実施の形態3は、実施の形態1とは異なる形態であって、第1遮熱手段が遮熱部材であり、第2遮熱手段及び第3遮熱手段が遮熱空間部である形態である。ただし、この実施の形態3の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0057】
(構成)
まず、実施の形態3に係る扉の構成について説明する。
図8から
図10に示すように、実施の形態3に係る扉201については、実施の形態1に係る扉1とほぼ同様に構成されている。ただし、室内側表面材30の構成、室外側表面材31の構成、及び扉体10の戸尻側の遮熱構造の構成については、下記に示す工夫が施されている。
【0058】
(構成−室内側表面材及び室外側表面材の構成)
次に、室内側表面材30及び室外側表面材31の構成について説明する。実施の形態3に係る室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分のうち切欠部32に対応する部分には、実施の形態1に係る補助部材33に代えて、部屋の室内側に向けて突出する突出部分34が形成されている。この突出部分34は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に介在するように設置されており、具体的には、
図8から
図10に示すように、突出部分34の少なくとも一部が第2遮熱部52の囲繞領域52aに位置し、且つ、第1遮熱部51が当該突出部分34と戸尻側縦力骨21の中央片25とによって挟持されるように設置されている。ここで、この突出部分34の形状については任意であるが、実施の形態3においては、突出部分34の前後方向の長さ(幅)が当該突出部分34と室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分との相互間に隙間が形成される長さとし、突出部分34の上下方向の長さ(高さ)が切欠部32の上下方向の長さ(高さ)よりも短く、及び、突出部分34の左右方向の長さ(厚さ)が室内側表面材30の厚さと略同一となるように形成されている。この場合において、ヒンジ部40の上支持片42の固定方法については任意であるが、実施の形態3においては、
図8から
図10に示すように、上支持片42の取付孔、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分に形成された図示しない取付孔(具体的には、この取付孔が当該部分に複数形成されており、これら複数の取付孔の一部が当該部分の突出部分34に形成されている)、第1遮熱部51の取付孔、戸尻側縦力骨21における中央片25の取付孔25a、及び固定ライナ28の取付孔28aを介して、上支持片42を固定ライナ28に対して固定具43により固定する。このような構成により、補助部材33を設けていなくても、突出部分34によって戸尻側縦力骨21及びヒンジ部40を安定して支持することができるので、扉201の部品数を低減することが可能となる。なお、このような突出部分34は、具体的には、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分のうち、先端部及びその近傍部分の一部を切断成形することにより形成される。
【0059】
(構成−扉体の戸尻側の遮熱構造の構成)
次に、扉体10の戸尻側の遮熱構造の構成について説明する。
図8から
図10に示すように、実施の形態3に係る扉体10の戸尻側の遮熱構造として、第1遮熱部51、第2遮熱部52、第3遮熱部53、及び第4遮熱部54a、54bが設けられている。このうち、第2遮熱部52は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部として構成されている。特に、この第2遮熱部52のうち、室外側表面材31の突出部分34と室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分との相互間に対応する部分が、第3遮熱部53の一部と重複するように配置されているので、この重複部分は、第2遮熱部52及び第3遮熱部53の両方の機能を有することになる。これにより、第2遮熱部52及び第3遮熱部53を相互に離れて配置した場合に比べて、第2遮熱部52の一部を第3遮熱部53として兼用することができるので、例えば、扉体10のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0060】
(効果)
このように実施の形態3によれば、第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54bは、室内側表面材30及び室外側表面材31の各々と戸尻側縦力骨21とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、第2遮熱部52は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分と、室外側表面材31における扉体10の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、第3遮熱部53は、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分とヒンジ部40との相互間に形成された遮熱空間部であるので、実施の形態1に係る扉と同様に、第2遮熱部52及び第3遮熱部53が遮熱部材である場合に比べて、扉201の部品数を低減できる。
【0061】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0062】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、本発明に係る扉の遮熱性能が従来と同程度であっても、従来と異なる構造により従来と同程度の遮熱性能を確保できている場合には、本願の課題は解決している。
【0063】
(ヒンジ部について)
上記実施の形態1から3では、ヒンジ部40は、当該ヒンジ部40の上軸受41及び下軸が扉体10よりも部屋の室外側に位置するように設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、部屋の室外側にヒンジ部40が露出しないようにするために、当該ヒンジ部40の上軸受41及び下軸が扉体10よりも部屋の室内側に位置するように設けられてもよい。この場合において、上記実施の形態1では、切欠部32が、室外側表面材31のうち上支持片42と対向する部分及びその近傍部分を含む領域に形成され、補助部材33が、当該補助部材33の少なくとも一部が第2遮熱部52の囲繞領域52aに位置し、且つ、第1遮熱部51が補助部材33と戸尻側縦力骨21の中央片25とによって挟持されるように設置されてもよい。また、上記実施の形態3では、切欠部32が、室外側表面材31のうち上支持片42と対向する部分及びその近傍部分を含む領域に形成される共に、室内側表面材30における扉体10の戸尻側の部分のうち、切欠部32に対応する部分が部屋の室内側に向けて突出するように、当該室内側表面材30が形成され、この突出部分34の少なくとも一部が第2遮熱部52の囲繞領域52aに位置し、且つ、第1遮熱部51が当該突出部分34と戸尻側縦力骨21の中央片25とによって挟持されるように設置されてもよい。
【0064】
(固定ライナについて)
上記実施の形態1から3では、固定ライナ28が戸尻側縦力骨21に設けられていると説明したが、これに限られない。例えば、戸尻側縦力骨21の中央片25において、固定具43を取り付けるための取付孔25aを形成するための十分な領域を確保できる場合には、固定ライナ28を省略して、ヒンジ部40が、この固定具43を介して中央片25に対して固定されてもよい。
【0065】
(扉体の戸尻側の遮熱構造における各種遮熱部について)
上記実施の形態1から3では、第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54bは、遮熱部材として構成されていると説明したが、これに限られず、例えば、製造コストの低減を図るために、遮熱部材及び遮熱空間部を組み合わせたものとして構成されてもよい。具体的には、第1遮熱部51及び第4遮熱部54a、54bの各々においては、複数の遮熱部材を相互に間隔を隔てて上下方向に沿って並設することにより構成されてもよい。また、上記実施の形態1から3では、第2遮熱部52は、遮熱空間部として構成されていると説明したが、これに限られず、例えば、遮熱性能を向上させるために、遮熱部材として構成されてもよく、あるいは、遮熱部材及び遮熱空間部を組み合わせたものとして構成されてもよい。また、上記実施の形態1から3では、第3遮熱部53は、遮熱部材又は遮熱空間部のいずれか一方によって構成されていると説明したが、これに限られず、例えば、遮熱部材及び遮熱空間部を組み合わせたものとして構成されてもよい。
【0066】
(第1の付記)
第1の付記1の扉は、扉体をヒンジ部によって回動自在に軸支して構成された扉であって、前記扉体の2つの主側面のうち一方の主側面の一部及び当該扉体の戸尻側の側面の一部を覆う第1表面材と、前記扉体の前記2つの主側面のうち他方の主側面の一部及び当該扉体の戸尻側の側面の他の一部を覆う第2表面材と、前記扉体の内部であって、少なくとも当該扉体の戸尻側に設けられた支持部材と、前記第1表面材又は前記第2表面材の少なくともいずれか一方と、前記支持部材との相互間に設けられた第1遮熱手段と、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分と、当該部分と突き合わさるように配置された前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分との相互間に設けられた第2遮熱手段と、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分又は前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分の少なくともいずれか一方と前記ヒンジ部との相互間に設けられた第3遮熱手段と、を備えている。
【0067】
第1の付記2の扉は、第1の付記1に記載の扉において、前記第1遮熱手段は、前記第1表面材又は前記第2表面材の少なくともいずれか一方と前記支持部材とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、前記第2遮熱手段は、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分と、前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、前記第3遮熱手段は、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分又は前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分のいずれか一方と前記ヒンジ部との相互間に形成された遮熱空間部である。
【0068】
第1の付記3の扉は、第1の付記2に記載の扉において、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分と、前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分との相互間に介在させる補助部材を備え、前記遮熱部材を前記補助部材と前記支持部材とによって挟持した。
【0069】
第1の付記4の扉は、第1の付記3に記載の扉において、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分、又は前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分のいずれか一方の一部のみに、当該第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分と、当該第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分との相互間に形成された前記遮熱空間部を見込み方向の外側に向けて広げるための切欠部を形成し、前記補助部材の少なくとも一部が、前記遮熱空間部の領域のうち、前記切欠部に囲繞された囲繞領域に位置するように、当該補助部材を設置した。
【0070】
第1の付記5の扉は、第1の付記1に記載の扉において、前記第1遮熱手段は、前記第1表面材及び前記第2表面材の各々と前記支持部材とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、前記第2遮熱手段は、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分と、前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、前記第3遮熱手段は、前記第1表面材及び前記第2表面材の各々と前記ヒンジ部とによって挟持されるように設けられた遮熱部材である。
【0071】
(第1の付記の効果)
第1の付記1に記載の扉によれば、第1表面材又は第2表面材の少なくともいずれか一方と、支持部材との相互間に設けられた第1遮熱手段と、第1表面材における扉体の戸尻側の部分と、当該部分と突き合わさるように配置された第2表面材における扉体の戸尻側の部分との相互間に設けられた第2遮熱手段と、第1表面材における扉体の戸尻側の部分又は第2表面材における扉体の戸尻側の部分の少なくともいずれか一方とヒンジ部との相互間に設けられた第3遮熱手段と、を備えているので、第1遮熱手段、第2遮熱手段、及び第3遮熱手段によって、第1表面材又は第2表面材の少なくともいずれか一方とヒンジ部との相互間での熱伝導を抑制することができると共に、第1表面材又は第2表面材の少なくともいずれか一方と支持部材との相互間での熱伝導、及び第1表面材と第2表面材との相互間での熱伝導も抑制することができ、当該扉の遮熱性能(特に、扉体における戸尻側の部分の遮熱性能)を向上させることができる。よって、例えば、当該扉を有する建物の部屋の中で火災が発生した場合に、当該扉に隣接する避難通路を通って人が避難することが妨げられることを回避できる。
【0072】
第1の付記2に記載の扉によれば、第1遮熱手段は、第1表面材又は第2表面材の少なくともいずれか一方と支持部材とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、第2遮熱手段は、第1表面材における扉体の戸尻側の部分と、第2表面材における扉体の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、第3遮熱手段は、第1表面材における扉体の戸尻側の部分又は第2表面材における扉体の戸尻側の部分のいずれか一方とヒンジ部との相互間に形成された遮熱空間部であるので、第2遮熱手段及び第3遮熱手段が遮熱部材である場合に比べて、当該扉の部品数を低減でき、当該扉の製造コストを低減することが可能となる。
【0073】
第1の付記3に記載の扉によれば、第1表面材における扉体の戸尻側の部分と、第2表面材における扉体の戸尻側の部分との相互間に介在させる補助部材を備え、遮熱部材を補助部材と支持部材とによって挟持したので、補助部材を備えない場合に比べて、支持部材やヒンジ部を安定して支持することができ、扉体における構造の安定性を高めることが可能となる。
【0074】
第1の付記4に記載の扉によれば、補助部材の少なくとも一部が、遮熱空間部の領域のうち、切欠部に囲繞された囲繞領域に位置するように、当該補助部材を設置したので、第1表面材又は第2表面材のいずれか一方の一部に突出部分を形成して、当該突出部分を囲繞領域に位置するように設置した場合に比べて、第1表面材又は第2表面材のいずれか一方を加工する手間を低減でき、当該扉の製造性を向上させることが可能となる。
【0075】
第1の付記5に記載の扉によれば、第1遮熱手段は、第1表面材及び第2表面材の各々と支持部材とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であり、第2遮熱手段は、第1表面材における扉体の戸尻側の部分と、第2表面材における扉体の戸尻側の部分との相互間に形成された遮熱空間部であり、第3遮熱手段は、第1表面材及び第2表面材の各々とヒンジ部とによって挟持されるように設けられた遮熱部材であるので、第3遮熱手段が遮熱空間部である場合に比べて、熱伝導を抑制することができ、当該扉の遮熱性能を一層向上させることが可能となる。
【0076】
(第2の付記)
第2の付記1の扉は、扉体をヒンジ部によって回動自在に軸支して構成された扉であって、前記扉体の2つの主側面のうち一方の主側面の一部及び当該扉体の戸尻側の側面の一部を覆う第1表面材と、前記扉体の前記2つの主側面のうち他方の主側面の一部及び当該扉体の戸尻側の側面の他の一部を覆う第2表面材と、前記第1表面材における前記扉体の戸尻側の部分又は前記第2表面材における前記扉体の戸尻側の部分の少なくともいずれか一方と前記ヒンジ部との相互間に設けられた遮熱手段と、を備える。
【0077】
(第2の付記の効果)
第2の付記1に記載の扉によれば、第1表面材又は第2表面材の少なくともいずれか一方と、第1表面材における扉体の戸尻側の部分又は第2表面材における扉体の戸尻側の部分の少なくともいずれか一方とヒンジ部との相互間に設けられた遮熱手段と、を備えているので、遮熱手段によって、第1表面材又は第2表面材の少なくともいずれか一方とヒンジ部との相互間での熱伝導を抑制することができ、当該扉の遮熱性能(特に、扉体における戸尻側の部分の遮熱性能)を向上させることができる。よって、例えば、当該扉を有する建物の部屋の中で火災が発生した場合に、当該扉に隣接する避難通路を通って人が避難することが妨げられることを回避できる。