特許第6868090号(P6868090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868090
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20210426BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20210426BHJP
【FI】
   C08L23/10
   B29C45/00
   C08K7/00
   C08K3/08
   C08K3/04
   C08K3/013
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-502922(P2019-502922)
(86)(22)【出願日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2018006368
(87)【国際公開番号】WO2018159433
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2019年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-35679(P2017-35679)
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸
(74)【代理人】
【識別番号】100181607
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 史子
(72)【発明者】
【氏名】今井 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸昌
(72)【発明者】
【氏名】平野 一之介
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−227488(JP,A)
【文献】 特開2000−309638(JP,A)
【文献】 特開2009−138113(JP,A)
【文献】 特開2013−108010(JP,A)
【文献】 特開2004−083608(JP,A)
【文献】 特開2016−145330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
C08L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂組成物中の樹脂成分が、ポリプロピレン系樹脂(A)、又は、ポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂であり、
ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部(ただしポリエチレン系樹脂及び/又は無機充填材を含む場合はポリプロピレン系樹脂(A)と、ポリエチレン系樹脂及び/又は無機充填材の合計量を100質量部とする)、
平均粒径が5〜90μmである1種以上のアルミフレーク(B)0.80〜5.0質量部、及び
カーボンブラック(C)0.008〜0.06質量部
を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
該ポリプロピレン系樹脂組成物を以下の射出成形法で成形して得られる試験片の表面に対し、45°方向から入射光を照射した場合、以下に定義されるハイライト方向の明度(L15°)とシェード方向の明度(L110°)が以下の関係を満たすポリプロピレン系樹脂組成物。
L15°/L110°≧3.3
L110°≦27.0
[ハイライト方向の明度(L15°)]
ハイライト方向の明度(L15°)は、45°の入射光に対して90°の正反射位置を0°としたとき、この0°から入射光方向側に15°ずれた角度における反射光の明度である。
[シェード方向の明度(L110°)]
シェード方向の明度(L110°)は、45°の入射光に対して90°の正反射位置を0°としたとき、この0°から入射光方向側に110°ずれた角度における反射光の明度である。
[射出成形法]
バレル温度が樹脂のガラス転移温度及び/又は結晶融解温度のうち最も高温の温度+(20〜120)℃、射出速度が30〜50mm/秒、金型設定温度が樹脂のガラス転移温度及び/又は結晶化温度のうち最も高温の温度−(50〜100)℃、冷却時間が10〜20秒、型締圧が30〜80tの条件下で、ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形して2mm厚の角板からなる試験片を得る。
【請求項2】
有彩色の無機顔料及び/又は有機顔料(D)(ただしカーボンブラックは除く)0.01〜0.70質量部をさらに含有する請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂70〜100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂を含む場合はポリプロピレン系樹脂と他の樹脂の合計量を70〜100質量部とする)と無機充填材0〜30質量部を含む請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体。
【請求項5】
自動車外装材である請求項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフリップフロップ性メタリック感、重厚な高級感、耐光性及び輝度感に優れたポリプロピレン系樹脂組成物、並びにこのポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは軽量、安価、成形し易いという利点から、成形加工品において金属材料、無機材料、木材等の材料からプラスチックへの置き換えが進んでおり、人々の生活、経済、環境面に大きく貢献している。ただし、プラスチック成形加工品の外観や触感は、金属材料、無機材料又は木材からなる成形加工品と比較して安っぽい印象を与えることがある。従って、金属のように感じられたり重厚な高級感があるプラスチック成形加工品を提供することは大きな意義がある。
【0003】
一方、特許文献1には、アルミ箔(アルミフレーク)を含むメタリック塗料が開示されている。メタリック塗料を塗布した成形品は見る角度、すなわち塗装面で反射した光の射出光の受光角度の違いにより視覚で感じられる色調(明度)が異なるというフリップフロップ性を有している。
【0004】
近年、自動車外装材等の分野では、塗装品と同等のメタリック感を有する樹脂成形品を得る為の技術が検討されている。例えば特許文献2では、小粒径のアルミフレークとパールマイカを併用することにより、フリップフロップ性メタリック感を有する熱可塑性樹脂組成物が得られると記載されている。ここで、ハイライト方向(光の入射角度に対して正反射方向)とシェード方向(非正反射方向)の明度の差が大きいほど、人はメタリック感を感じるので、このフリップフロップ性が高いことが求められている。
【0005】
特許文献3には、光輝材として平均粒径の異なる2種以上のアルミフレークを用いることによって、射出成型品に高いフリップフロップ性と塗装に近い光輝感を付与できると記載されている。特許文献4には、熱可塑性樹脂、繊維状無機充填材、光輝剤(アルミフレーク)、着色剤からなる組成物が開示されている。着色剤としてカーボンブラックを0.3質量部配合している。ただし、着色剤としてカーボンブラックを0.3質量部添加した場合、受光角度にかかわらず明度が低いので、フリップフロップ性メタリック感は発現しない。
【0006】
特許文献5には、熱可塑性樹脂からなる基材、黒色着色剤(カーボンブラック)、粒子状の光輝材(アルミニウム粒子)を含む樹脂成形品が開示されている。そして、光輝材の含有量が少なくても多くの光輝材を含んでいるかのようなメタリック調の外観が得られると記載されている。ただし、実施例で具体的に使用されている光輝材の含有量は0.6質量%であり、このような少量では輝度感が十分に発揮されない。
【0007】
特許文献6には、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、繊維状充填剤、着色剤、光輝剤(アルミニウム粉末)を含有する樹脂組成物からなるメタリック調のエンジンカバーが開示されている。しかし、この樹脂組成物はフリップフロップ性メタリック感や高級感の点において不十分であり、外観が非常に重要となる部分の材料として適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭和62−106870号公報
【特許文献2】特開2006−009034号公報
【特許文献3】特開2014−076626号公報
【特許文献4】特開2009−035713号公報
【特許文献5】特開2000‐309638号公報
【特許文献6】特開2013‐227488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、フリップフロップ性メタリック感、重厚な高級感、耐光性及び輝度感に優れたポリプロピレン系樹脂組成物、並びにこのポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、耐光性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物にアルミフレーク及びカーボンブラックを各々特定の量で添加すると、両者の相乗作用が顕著に発現し、フリップフロップ性メタリック感と、重厚な高級感と、輝度感とを含む高級金属感が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
さらに本発明者らは、そのような樹脂組成物から得られる成形品のハイライト方向(光の入射角度に対して正反射方向)とシェード方向(非正反射方向)の明度の比が一定値以上で、シェード方向の明度が一定値以下だとフリップフロップ性メタリック感と、重厚な高級感と、輝度感とを含む高級金属感が得られることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の事項により特定される。
【0012】
[1]ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂及び/又は無機充填材を含む場合はポリプロピレン系樹脂と、他の樹脂及び/又は無機充填材の合計量を100質量部とする)、
平均粒径が5〜90μmである1種以上のアルミフレーク(B)0.80〜5.0質量部、及び
カーボンブラック(C)0.005〜0.06質量部
を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
【0013】
[2]ポリプロピレン系樹脂組成物を以下の射出成形法で成形して得られる試験片の表面に対し、45°方向から入射光を照射した場合、以下に定義されるハイライト方向の明度(L15°)とシェード方向の明度(L110°)が以下の関係を満たす[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
L15°/L110°≧3.3
L110°≦27.0
[ハイライト方向の明度(L15°)]
ハイライト方向の明度(L15°)は、45°の入射光に対して90°の正反射位置を0°としたとき、この0°から入射光方向側に15°ずれた角度における反射光の明度である。
[シェード方向の明度(L110°)]
シェード方向の明度(L110°)は、45°の入射光に対して90°の正反射位置を0°としたとき、この0°から入射光方向側に110°ずれた角度における反射光の明度である。
[射出成形法]
バレル温度が樹脂のガラス転移温度及び/又は結晶融解温度のうち最も高温の温度+(20〜120)℃、射出速度が30〜50mm/秒、金型設定温度が樹脂のガラス転移温度及び/又は結晶化温度のうち最も高温の温度−(50〜100)℃、冷却時間が10〜20秒、型締圧が30〜80tの条件下で、ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形して2mm厚の角板からなる試験片を得る。
【0014】
[3]有彩色の無機顔料及び/又は有機顔料(D)(ただしカーボンブラックは除く)0.01〜0.70質量部をさらに含有する[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【0015】
[4]ポリプロピレン系樹脂70〜100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂を含む場合はポリプロピレン系樹脂と他の樹脂の合計量を70〜100質量部とする)と無機充填材0〜30質量部を含む[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【0016】
[5][1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体。
【0017】
[6]自動車外装材である[5]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、特定のアルミフレークとカーボンブラックを各々適切な量で添加することにより、驚くべきことにフリップフロップ性メタリック感及び輝度感が顕著に向上し、成形体の面に対して水平方向の明度だけが低くなることから重厚な高級感が発現し、しかも十分な耐光性も発現する。したがって、その成形品は無塗装であっても良好なメタリック感・重厚な高級感が発現するので、例えば自動車外装材、家電等の産包材等の様々な分野に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ポリプロピレン系樹脂(A)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中の樹脂成分は、主としてポリプロピレン系樹脂(A)である。ただしポリプロピレン系樹脂(A)と共に、他の樹脂(ポリプロピレン系樹脂(A)以外の樹脂)を含んでいても良い。樹脂成分100質量%中、ポリプロピレン系樹脂(A)の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。他の樹脂ポリエチレン系樹脂である
【0020】
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、例えば、少なくとも1種以上のプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8のオレフィンから選ばれた少なくとも1種以上のモノマーとのランダム共重合体、23℃n−デカン不溶部(Dinsol)60〜95質量%と、23℃n−デカン可溶部(Dsol)5〜40質量%(DinsolとDsolの合計を100質量%とする)とから構成されるプロピレンブロック共重合体が挙げられる。
【0021】
他の樹脂であるポリエチレン系樹脂としては、例えば、少なくとも1種以上のエチレン単独重合体、エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られ、極限粘度[η]が0.5〜3.0dl/gであり、密度が850〜970kg/mであるエチレン共重合体、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸エチル共重合体が挙げられる。エチレン共重合体の極限粘度[η]は、好ましくは0.6〜3.0、より好ましくは、0.6〜2.5である。エチレン共重合体の密度は、好ましくは850〜920kg/m、より好ましくは850〜900kg/mである。
【0022】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)と共に、無機充填材を含んでいても良い。ポリプロピレン系樹脂の割合は好ましくは70〜100質量部、より好ましくは80〜100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂を含む場合はポリプロピレン系樹脂と他の樹脂の合計量の割合が好ましくは70〜100質量部、より好ましくは80〜100質量部)であり、無機充填材の割合は好ましくは0〜30質量部、より好ましくは0〜20質量部である。これら割合は、ポリプロピレン系樹脂と他の樹脂と無機充填材との合計量を100質量部とした場合を基準とする。無機充填材の種類は特に限定されず、公知の無機材を使用できる。具体例としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンが挙げられる。中でも、タルクが特に好ましい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂(A)は、結晶化核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、対侯安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤をさらに混合して使用することも出来る。
【0024】
[アルミフレーク(B)]
本発明で用いるアルミフレーク(B)は、公知の方法によって製造できる。具体的には、例えば、アトマイズ紛、アルミニウム箔、蒸着アルミニウム箔等の材料をボールミル、アトライター、スタンプミル等の装置によって粉砕又は摩砕処理することによって製造できる。特に、アトマイズ法によって得られるアルミニウムパウダーをボールミルによって摩砕処理して得られるアルミフレークが好ましい。アルミニウムの純度は、特に限定されず、展延性を有すれば他の金属との合金であっても良い。他の金属の具体例としては、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Znが挙げられる。
【0025】
アルミフレーク(B)の平均粒径は、好ましくは5〜90μm、より好ましくは10〜70μmである。アルミフレーク(B)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
アルミフレーク(B)の配合量は、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂及び/又は無機充填材を含む場合はポリプロピレン系樹脂と、他の樹脂及び/又は無機充填材の合計量を100質量部とする)に対して、0.8〜5.0質量部であり、好ましくは1.0〜3.0質量部である。アルミフレークの配合量が少な過ぎると、輝度感やフリップフロップ性メタリック感を向上させることができない。一方、アルミフレークの配合量が多過ぎると、衝撃強度等の機械物性が悪化する場合がある。
【0027】
[カーボンブラック(C)]
本発明で用いるカーボンブラック(C)としては、公知のカーボンブラック特に制限なく使用できる。カーボンブラック(C)の平均粒径にも制限はないが、その一次粒子は好ましくは10〜40nmである。
【0028】
アルミフレークだけを配合した場合は、水平及び斜め方向(シェード)からの観察と正反射方向(ハイライト)からの観察で得られる明度差が大きくないことに由来し、フリップフロップ性メタリック感が弱い。一方、本発明においては、アルミフレーク(B)とカーボンブラック(C)を適量添加することにより、驚くべきことにハイライトからの観察ではアルミフレーク(B)の明度を阻害することなく、シェードからの観察ではカーボンブラック(C)の明度を発揮させ、しかも十分な輝度感も得られる。その機構は必ずしも定かではないが、適量のカーボンブラックを添加することにより、アルミフレークによるハイライトの明度を明るく維持しつつ、カーボンブラックによるシェードの明度を下げ暗くすることが可能となり、深みのある明暗差が発現しフリップフロップ性メタリック感がより顕著になり、重厚な高級感及び輝度感が発現したと推察される。
【0029】
さらに、適量のカーボンブラック(C)を添加することにより、光輝材のアルミフレーク(B)のみを用いた場合よりも耐光性が向上する。
【0030】
カーボンブラック(C)の配合量は、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂及び/又は無機充填材を含む場合はポリプロピレン系樹脂と、他の樹脂及び/又は無機充填材の合計量を100質量部とする)に対して、0.005〜0.06質量部であり、好ましくは0.008〜0.03質量部、より好ましくは0.01〜0.02質量部である。カーボンブラック(C)の配合量が多過ぎると、カーボンブラック(C)の隠ぺい力によって全体の明度が低下し、フリップフロップ性メタリック感の発現自体が阻害される恐れがある。
【0031】
[顔料(D)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、カーボンブラック(B)以外の有彩色の無機顔料及び/又は有機顔料(D)を含有しても良い。顔料(D)としては、公知の顔料を使用できる。無機顔料の具体例としては、金属の酸化物、硫化物、硫酸塩が挙げられる。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンジジン系が挙げられる。
【0032】
有彩色の無機顔料及び/又は有機顔料(D)(ただしカーボンブラックは除く)の配合量は、ポリプロピレン系樹脂組成物(A)100質量部(ただしポリプロピレン系樹脂が他の樹脂及び/又は無機充填材を含む場合はポリプロピレン系樹脂、他の樹脂及び/又は無機充填材の合計量を100質量部とする)に対して、好ましくは0.01〜0.70質量部、より好ましくは0.05〜0.70質量部、特に好ましくは0.10〜0.60質量部である。
【0033】
[各種添加剤]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、分散剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合できる。
【0034】
[組成物の製造方法]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述した成分及び必要に応じて各種添加剤を、公知の方法にて混合することにより製造できる。例えば、各成分をミキサーやタンブラーにより混合しても良いし、また、混合物を押出機により溶融混練しても良い。さらに、成形の操作性を向上する為にペレット状に加工してもよい。
【0035】
[明度]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を以下の射出成形法で成形して得られる試験片の表面に対し、45°方向から入射光を照射した場合、以下に定義されるハイライト方向の明度(L15°)とシェード方向の明度(L110°)が以下の関係を満たすことが好ましい。
L15°/L110°≧3.3
L110°≦27.0
(ハイライト方向の明度(L15°))
ハイライト方向の明度(L15°)は、45°の入射光に対して90°の正反射位置を0°としたとき、この0°から入射光方向側に15°ずれた角度における反射光の明度である。
(シェード方向の明度(L110°))
シェード方向の明度(L110°)は、45°の入射光に対して90°の正反射位置を0°としたとき、この0°から入射光方向側に110°ずれた角度における反射光の明度である。
(射出成形法)
バレル温度が樹脂のガラス転移温度及び/又は結晶融解温度のうち最も高温の温度+(20〜120)℃、射出速度が30〜50mm/秒、金型設定温度が樹脂のガラス転移温度及び/又は結晶化温度のうち最も高温の温度−(50〜100)℃、冷却時間が10〜20秒、型締圧が30〜80tの条件下で、ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形して2mm厚の角板からなる試験片を得る。
【0036】
[成形体]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、公知の加工法(例えば、射出成形や押出成形)により、各種成形品に加工できる。中でも射出成形に適している。得られた成形品は、高いフリップフロップ性メタリック感、重厚な高級感及び輝度感を発現するので、塗装工程や表皮を設ける工程等の後工程を行わなくても製品として使用できる。
【0037】
本発明の成形体は、例えば自動車部材、家電等の産包材の材料として好適に使用できる。特に、本発明の成形体は、フリップフロップ性メタリック外観、重厚な高級感、耐光性及び輝度感に優れているので、特に自動車外装材として有用である。なお、外装材に要求される性能やそのレベルは、自動車の種類や外装の箇所等の様々な条件によって異なるのが実情である。そして本発明の成形体は、特に高いレベルの高級感及び輝度感が要求される外装材、例えば高級車の外装材あるいは常に目立つ箇所の外装材(例えばSUV車のバンパーガーニッシュ)として非常に有用である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する、ただし、本発明はこれら実施例に限定されない。各成分の詳細を以下に記載する。
【0039】
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
「P−1」:ブロックポリプロピレン(プライムポリマー社製、「プライムポリプロ(登録商標)J830HV」、MFR(230℃、2.16kg)=30g/10分)
【0040】
<他の樹脂>
「P−2」:エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学社製、「タフマー(商標登録)A0550」、MFR=0.9g/10分、密度=861kg/m
【0041】
<無機充填材>
「タルク」:タルク(浅田製粉社製、商品名「JM209」、平均粒径=3.9μm)
【0042】
<アルミフレーク(B)>
「アルミ1」:アルミマスターバッチ(東洋アルミ社製、平均粒径=20μm、アルミ濃度=70%)
「アルミ2」:アルミマスターバッチ(東洋アルミ社製、平均粒径=60μm、アルミ濃度=70%)
「アルミ3」:アルミマスターバッチ(東洋アルミ社製、平均粒径=10μm、アルミ濃度=70%)
「アルミ4」:アルミマスターバッチ(東洋アルミ社製、平均粒径=70μm、アルミ濃度=70%)
【0043】
<カーボンブラック(C)>
CABOT社製、商品名「BLACK PERLS 4840」、平均一次粒子径=18nm
【0044】
<顔料(D)>
HOLLIDAY PIGMENTS社製、商品名「Ultramarine Blue NO.57」
【0045】
<樹脂組成物(A−1)〜(A−3)の調製>
P−1、P−2及びタルクを表1記載の割合で配合し、樹脂組成物(A−1)〜(A−3)を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
樹脂組成物(A−1)〜(A−3)の樹脂成分の最高結晶融解温度は162℃、最高結晶化温度は115℃、ガラス転移温度は0℃以下であった。これらの温度を参考に、射出成形機のシリンダー温度を190℃(162℃+28℃)、金型設定温度を45℃(115℃−70℃)に決定した。なお、結晶融解温度及び結晶化温度はDSCを用いて以下の方法により測定し、ガラス転移温度は固体粘弾性測定装置を用いて以下の方法により測定した。
【0048】
(結晶融解温度及び結晶化温度)
結晶融解温度及び結晶化温度は、パーキンエルマー社製DSC8500装置を用いて測定した。吸熱曲線、発熱曲線における最大ピーク位置の温度に関しては、厚み約300μmのプレスシートから切り出した試料約5mgを底が平らなアルミパンに詰め、窒素雰囲気下(窒素:20ml/min)で、230℃で5分間保持し、その後230℃から10℃/minで30℃まで降温する際の発熱曲線の最も大きいピークを結晶化温度とした。さらに30℃で1分間保持し、その後30℃から230℃まで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線の最も大きいピークの温度を結晶融解温度とした。
【0049】
(ガラス転移温度)
ペレットをプレス成形して成形品を作製し、固体粘弾性測定装置を用いて以下の条件で温度分散測定を行い、貯蔵弾性率(E')と損失弾性率(E'')の比tanδが最大となる最も高温のピーク温度をガラス転移温度とした。
測定装置:RSA−II(TA製)
測定モード:引張モード(Autotension,Autostrain制御)
測定温度:−80〜150℃(測定可能な温度まで)
昇温速度:3℃/min
試料サイズ:幅5mm×厚さ0.4mm
初期Gap(L0):21.5mm
雰囲気:N
【0050】
<参考例1、実施例1〜12、比較例1〜10>
各成分を表2に示す割合で各々配合し(表のアルミフレークの添加量はマスターバッチ中のアルミフレークの量である)、更にその配合物100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「IRGANOX1010FP」)0.10質量部、リン系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「IRGA FOS168」)0.05質量部、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製、商品名「カルシウム・ステアレート」)0.05質量部を配合し、ヘンシェルミキサーにて予備混合した。次いで、二軸押出機を用いて樹脂温度210℃で溶融混練を行い、溶融ストランドを水槽で冷却し、ストランドカッターにてポリプロピレン系樹脂ペレットを得た。
【0051】
以上の各ペレットを用いて、実施例1〜12及び比較例1〜10においては、以下の各評価用の試験片を成形し評価を行った。参考例1においては、以下の各評価用の試験片を成形し、その試験片の表面にメタリック合成樹脂エナメル塗料(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、商品名「NH−700M(YK)」)を塗布してから評価を行った。評価方法の詳細は以下の通りである。各評価結果を表2に示す。
【0052】
(1)明度(L)
以下の条件で50mm×90mm×2mm厚みの角板を射出成形し、これを明度測定用の試験片として用いた。
東芝機械社製 :EC−40NII
シリンダー温度:190℃
スクリュ回転数:110rpm
計量時間 :7.5sec
保圧 :40MPa
背圧 :5MPa
射出速度 :40mm/s
型締圧力 :40t
金型設定温度 :45℃
冷却時間 :10sec
【0053】
明度の測定装置としてはX―rite社製の多角度分光測色器MA−98を使用し、得られたCIE表色系の明度指標であるL値を用いた。そして45°方向から入射光を照射して、ハイライト方向の明度(L15°)、すなわち正反射位置0°から入射光方向側に15°ずれた角度(ハイライト方向)における反射光の明度を測定し、かつシェード方向の明度(L110°)、すなわち正反射位置0°から入射光方向側に110°ずれた角度(シェード方向)における反射光の明度を測定し、両者の比(L15°/L110°)を算出した。
【0054】
(2)フリップフロップ性メタリック感
フリップフロップ性メタリック感評価用の試験片としては、上記の明度測定用の試験片と同じ50mm×90mm×2mm厚みの角板を用いた。この試験片の面に対して垂直で見た明度と水平で見た明度を目視により確認し、以下の基準でフリップフロップ性メタリック感を評価した。
◎:試験片の面に対して垂直で見た明度と水平で見た明度差が非常に大きい。
〇:試験片の面に対して垂直で見た明度と水平で見た明度差が大きい。
【0055】
(3)重厚な高級感
重厚な高級感評価用の試験片としては、上記の明度測定用の試験片と同じ50mm×90mm×2mm厚みの角板を用いた。この試験片の表面を目視により確認し、以下の基準で輝度感を評価した。
◎:試験片の面に対して水平に見ると、深い黒に見える。
○:試験片の面に対して水平に見ると、やや深い黒に見える。
△:試験片の面に対して水平に見ると、少し黒っぽく見える。
【0056】
(4)耐光性
耐光性評価用の試験片としては、上記の明度測定用の試験片と同じ50mm×90mm×2mm厚みの角板を用いた。評価機器としてはキセノンウェザーメーターを使用し、ブラックパネル温度83℃、照射エネルギー60W/mの条件で、100〜500時間暴露試験を実施して、試料表面の変化を目視により確認し、以下の基準で耐光性を評価した。
◎:表面に変色・ひび割れが全く無い。
○:表面に変色・ひび割れがほとんど無い。
△:表面に変色・ひび割れが認められる。
×:表面の変色・ひび割れが激しい。
【0057】
【表2】
【0058】
<評価>
表2に示す結果から明らかなように、カーボンブラックを適量添加した実施例1〜12の成形体は、無添加の比較例1〜10の成形体と比較して、フリップフロップ性メタリック感と重厚な高級感に優れるとともに、耐光性に優れていた。
【0059】
シェード方向の明度の低下は、アルミフレークの平均粒径・添加量、カーボンブラック以外の顔料の有無、樹脂の種類、無機充填材の添加量にかかわらず、カーボンブラックの適量添加によって生じる現象であり、このこととハイライト方向の明度をシェード方向の明度で割った値が大きいことがフリップフロップ性メタリック感と重厚な高級感を向上させたと推察される。
【0060】
<実施例13〜14、比較例11〜12>
各成分の割合を表3に示す割合に変更したこと以外は、実施例1〜12と同様にしてペレットを作製した。そして、そのペレットを用いて、上述した明度(L)評価用の試験片と以下の輝度感評価用の試験片を成形し評価を行った。輝度感の評価方法の詳細は以下の通りである。各評価結果を表3に示す。
【0061】
(5)輝度感
輝度感の試験片としては、上記の明度測定用の試験片と厚さのみ異なる50mm×90mm×1mm厚みの角板を用いた。この試験片の表面を目視により確認し、以下の基準で輝度感を評価した。
◎:研磨した金属表面のようなツヤ感が非常に高い。
〇:研磨した金属表面のようなツヤ感が高い。
【0062】
【表3】
【0063】
<評価>
輝度感の定量化はできなかったが、輝度感の一因子と考える成形体の反射率に関し、実施例13の反射率(610nm)は38.36%、比較例11の反射率(610nm)は35.94%であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体は、フリップフロップ性メタリック外観、重厚な高級感、耐光性及び輝度感に優れているので、例えば自動車外装材、家電等の産包材等の様々な分野、に有用である。