特許第6868116号(P6868116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6868116原油を精製するための一工程の低温プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868116
(24)【登録日】2021年4月13日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】原油を精製するための一工程の低温プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 17/02 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   C10G17/02
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-545398(P2019-545398)
(86)(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公表番号】特表2019-537659(P2019-537659A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】IL2017050407
(87)【国際公開番号】WO2018087744
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】248844
(32)【優先日】2016年11月8日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】519164220
【氏名又は名称】ダヴィードフ,ボリス
【氏名又は名称原語表記】DAVIDOV,Boris
(73)【特許権者】
【識別番号】519164231
【氏名又は名称】グク,ユーリー
【氏名又は名称原語表記】GUK,Yurii
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィードフ,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】グク,ユーリー
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05152886(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0291889(US,A1)
【文献】 特開昭56−020085(JP,A)
【文献】 特開2001−240871(JP,A)
【文献】 特開2003−112153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分別されていない、または分別された炭化水素原料から軽質炭化水素生成物を調製するための一工程の組合せプロセスであって、前記分別されていない、または分別された炭化水素原料を一工程で精製、異性化および分解することを組み合わせたものであり
(a)該工程が、前記軽質炭化水素生成物を得るために、反応槽内の前記炭化水素原料を反応物触媒と共に360℃未満の蒸気温度で加熱することを含むこと、
(b)該プロセスにおいて、前記軽質炭化水素生成物が、少なくとも60%の全収率で得られ、重質炭化水素生成物を含有しないこと
c)該プロセスに芳香族炭化水素の形成が伴うこと、および
(d)前記反応物触媒が、
(1)ステアリン酸をエタノールのエーテル・アルデヒド留分に溶解し、工業グレードのオレイン酸と混合した、ステアリン酸の液体混合物、又は、
(2)該プロセスの後、反応槽に残存した固形生成物を、エタノールのエーテル・アルデヒド留分で活性化した物のいずれかであること
を特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記炭化水素原料が、天然ガスコンデンセート、原油(石油)、製油所原料の常圧下もしくは真空下での残留物、前記原油および製油所原料の常圧下もしくは真空下での前記残留物に由来する溶剤脱れき油、シェール油、オイルサンド、廃潤滑油、オイルスラッジおよびその他の廃油、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記軽質炭化水素生成物が、軽質石油ガス、ナフサ、モータおよびタービンの燃料用ガソリン、灯油、ディーゼル燃料(燃料油)および軽質原油を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
当該プロセスでは得ることのない前記重質炭化水素生成物が、炭素原子を25個以上含有する炭化水素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記炭化水素原料が、前記反応物触媒と共に、連続的に反応槽に供給される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記得られた軽質炭化水素生成物が、反応槽から連続的に蒸留され、さらに生成物貯蔵タンクに回収される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記得られた軽質炭化水素生成物が、反応槽から分留され、さらに生成物貯蔵タンクに回収される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記炭化水素原料が、反応槽への供給前に、該炭化水素原料から水、水溶性塩および浮遊固形物を除去するためにあらかじめ処理される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記炭化水素原料を最初に油水分離器へ流入させ、精製所および種々のプラントからの流出廃水または廃潤滑油、オイルスラッジおよび他の廃油に見出される浮遊固形物ならびに廃水から油本体を分離する、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
当該プロセスの前に、前記軽質炭化水素生成物の一部を用いて前記炭化水素原料を希釈することにより、該炭化水素原料の密度を0.82〜0.84g/cm未満とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記希釈が、当該プロセスの間または前記炭化水素原料の輸送中に連続して行われる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記炭化水素原料の希釈に使用される前記軽質炭化水素生成物の前記一部が、沸点の範囲が40℃〜105℃である前記軽質ナフサ留分から取得される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応槽内での前記炭化水素原料の前記加熱が、常圧下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記反応槽内での前記炭化水素原料の前記加熱が、高圧下または真空中で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
当該プロセスが連続的または半連続的である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記軽質炭化水素生成物の全収率が少なくとも80%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記反応物触媒が、前記分別されていない、または分別された炭化水素原料中に元から存在する金属または金属イオンとその場(in−situ)で錯体を形成し、それによって当該プロセスを触媒する能力を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記エタノールのエーテル・アルデヒド留分が、濃度94〜98%のエタノールと、2〜6%のエーテル、アルデヒド、ジアセチル、メタノール、硝酸塩および硫酸塩とを含む、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は概して、原油の精製ならびに原油残留物、廃潤滑油ならびにその他の廃油およびオイルスラッジの処理の分野に関する。具体的には、本出願は、ディーゼル油、ガソリン、灯油およびナフサのような軽質炭化水素留分を非常に高い収率で得るために、脂肪酸の存在下で原油、製油所原料、廃潤滑油、オイルサンド、オイルスラッジおよびその他の廃油の精製、異性化および分解することを含む一工程の組合せプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
原油をより価値のある炭化水素に変換するための標準的な工業的精製プロセスは、軽質石油ガス、ナフサ、モータやタービンの燃料であるガソリン、灯油、ディーゼル燃料(または燃料油)、潤滑油、重質軽油、ならびに発電所用および同様の用途のための「マズート」と呼ばれる低品質な残留燃料油それぞれのストリームを回収するために原油を分別または蒸留することを含む。原油は従来、明確に定義された基準または仕様、例えば蒸留範囲、硫黄分、オクタン価、ディーゼル価(diesel number)などの特徴的な技術的指標を満たす最終商品を生産するために、石油精製所において一連の分留塔および化学変換操作によって処理されている。
【0003】
先に言及したように、最終商品は、軽質石油ガス、石油化学ナフサ、ガソリン、灯油、ディーゼル燃料(燃料油)、およびこれらよりもオクタン価が大きいあるいは小さい他のカテゴリの燃料、潤滑油、ならびに溶媒、パラフィン、タービン燃料および道路のアスファルトなどの他の製品を含む。このように、石油精製所では、組成および価格に応じて選択された一定の種類の原油から、比較的多種類の最終商品が生産される。
【0004】
所望の製品を生産するための原油の精製には、多くの工程が含まれうる。原油の精製に含まれる主要なプロセスは、分留、異性化、接触分解または熱分解および芳香族化合物の合成である。典型的には、供給される原油をあらかじめ熱しておき、次いで原油塔に流し込むが、これは通常、蒸気によって加熱される。原油のうち、液化石油ガスやナフサのような揮発性の軽質留分は、原油塔の上部から除去され、より重い成分は原油塔の下部から除去される。重質留分は、典型的には潤滑油および重質軽油を含んでいるが、これは軽油分解装置内での接触分解に供される。重質軽油は、この接触分解ユニット内で、より軽く、より価値の高い成分を生産するために分解される。
【0005】
したがって、従来の原油生成プロセスは、通常、2つの主要なプロセスを含む。第1のプロセスは分留であり、ポンプによって原油を汲み上げて熱い炉の中にあるパイプを通し、下流に位置する高さのある蒸留塔(精製所の風景に特有の建物)において、重分子から軽質炭化水素分子を分離することを含む。これらは常圧で操作されても、真空圧で操作されてもよい。分留中、原油の各留分(液化石油ガスから重質軽油まで)は、それらの分子量によって分離される。このプロセスはトッピングとしても知られているが、これは、重い留分や残留物が蒸発せずに底部に残る一方で、蒸気は蒸留塔内を上昇することによる。蒸気が上昇すると、分子は、塔内の異なる温度で凝縮して液体となる。ガスのみが頂部に達するが、ここで温度は通常160℃未満に低下する。凝縮(これは、塔内の分留プレート上で蒸発と平衡状態にある)によって、塔のそれぞれ異なる高さに位置するプレート(またはトレー)上で、液体が形成される。これらの液体油は、塔の上部ほど軽いものが見出される。プレートはそれぞれ、異なる留分(これは「石油留分」としても知られている)を回収するが、それと共に底部ではれき青(アスファルト)のような粘性炭化水素、最上部ではガスが回収される。
【0006】
分留の後に残った重質残留物には、密度が中程度である多くの生成物が含まれている。残留物は、別の塔(おそらくは真空塔)へ移され、ここで重質軽油、潤滑油およびジェットオイルのような中間留分を回収するための第2の蒸留に供される。常圧での分留および/または真空分留の後でも、製油所原料の構成成分である多くの重質原油残留物がなお残っている。「製油所原料」が単一の生成物であることはめったになく、大抵は原油に由来する留分の組合せであり、精製業における混合以外のさらなる処理に供されることとなる。これは1つ以上の成分または最終製品に変換される。
【0007】
製油所原料はさらに、より軽い生成物へと変換されるか、あるいは原油精製所における残留物処分の要件を満たすように、分解または除去される必要がある。製油所原料は、「分解(クラッキング)」と呼ばれるプロセス(熱によるものでも触媒によるものでもよい)においてより軽い生成物に変換され、このとき重質炭化水素がより軽い炭化水素へと分解される。原油留分の現代的な高圧熱分解は、通常、絶対温度500〜540℃、圧力約2〜5MPaで操作される。化学的不均化の全プロセスを観察することができ、ここでは重い分子を使用して水素を多く含むより軽い生成物が形成されるが、重い分子は凝縮して水素を失う。実際の反応はアルケンを生成する均等開裂であり、これはポリマーを経済的に生産する際に使用される。さらに、熱分解は現在、重質留分を「改良」したり、軽質留分もしくは留出物、バーナー燃料および/または石油コークスを生成したりするために使用されている。
【0008】
原油留分の接触分解は、典型的には酸触媒(通常は、シリカアルミナやゼオライトのような固体酸)の存在下で行われ、この触媒が結合の不均等切断を促進したり、化学反応を加速させたりする。このプロセスでは通常、ガス、ガソリンおよびディーゼルに変換されるのは、多くとも製油所原料の60%に過ぎない。この収率は、水素を加えること、水素化分解と呼ばれるプロセス、または炭素を除去するために深変換(deep conversion)を使用することによって多少は上げることができる。
【0009】
上記の方法に関しては、いくつかの問題がある。第1の問題は一般的であり、従来の精製プロセスが分別に基づくという事実から生じるものである。常圧蒸留は、熱を使用して、原油をナフサ、灯油、ガソリン、ディーゼルおよび重質軽油に分離する。得られる軽質留分の全収率は比較的低く(平均で60%未満)、重質軽油および残留物はさらなる処理を必要とし、これが第2の大きな問題となる。
【0010】
重質軽油留分および残留物を真空条件下で処理するために高価な触媒および減圧蒸留塔を使用したとしても、上記の問題は部分的にしか解決されない。しかしながら、そのような高価な減圧蒸留塔の設置に投資する原油精製所は、少数である。原油精製所の多くは、マズートを含む重質軽油留分および残留物を、発電所、建設業界および海運業界に販売することを選択する。これによって、我々は、未だ解決されていない別の重大な問題に直面することとなる。その問題とは、ディーゼル油や潤滑油より重く、非常に価値の低い生成物と考えられている原油の成分を、完全に、かつコスト効率良く処分する方法がないことである。マズート、れき青およびタールのなどの成分は、原油の処理を非常に困難にする。しかしながら、真の問題は、分解が不十分なことおよび分解プロセスの後に残る製油所原料の利用である。接触分解ユニット内で生成するガソリンのオクタン価は上昇しているが、これは、イソヘプタンや灯油留分の異性体のような異性化された炭化水素を比較的多く含んでいることによる。したがって、そのオレフィン性により、他のガソリン成分と比較すると化学的な安定性が低い。
【0011】
一般に、原油精製所において現在行われている重質軽油および残留物の処理は、メンテナンスおよび環境に関する深刻な問題を生み出している。精製所で生じた固液廃棄物は、地下に特別に建設された貯蔵床に何十年間も貯蔵・蓄積されている。秘密とはされていないが、この貯蔵容量は有限であり、したがって環境的な危険を示している。貯蔵容量が有限であることから、精製所は、生態学的汚染や危険性のない環境を維持し、かつ精製所を稼動させておくために、残留成分の適切な管理および除去に多大な投資を行わなければならない。さらに、原油残留物、アスファルトまたは高融点生成物を入れるタンクは、自然発火や発癌の危険性があることから、定期的に、また通気や導入の前に、蒸気に当てたり化学的に洗浄したりする必要がある。例えば、れき青の除去は容易でないが、これは容器が常温であると流動せず、密度またはAPI比重が10重力単位未満であることによる。精製所を連続運転しながらこれらの問題をすべて解決することは、さらなる費用を要し、また困難を呈する。
【0012】
最後の、しかし最小ではない問題は、精製プロセス全体の効率が極めて低いことである。上述のように、最も有用であり最も望まれる軽質油留分は、比較的低い収率で得られる。実際に、原料である原油のうち軽質留分となるのは50%未満である。結局のところ、操作が複雑になるほどコストがかかり、使用するエネルギーも多くなる。上記の通り、分解プロセスは高温および面倒な手順を要すものの、得られる軽油生成物の収率は比較的低い。さらに、上で説明したように、分解プロセスの後に残された固体の重質残留物は精製所の稼動および周辺地域の生態学的状況に深刻な問題を引き起こしかねない。したがって、精製業界における現時点での目的は、収率、変換コストおよび生態学的要因の間で均衡を見出すことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本出願の目的は、原油、製油所原料、オイルスラッジおよび廃油の精製プロセスにおいて得られる生成物の、経済学的・生態学的価値を顕著に高めることである。この目的は、蒸留と、脂肪酸の存在下での炭化水素原料の熱分解とを含む一工程の低温プロセスにおける重質軽油留分および残留物の処理性を本質的に改善すること、ならびにマズートのような低品質の残留生成物をエネルギー産業から完全に除去することによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1つ以上の実施形態の詳細が、以下で説明される。記載される技術のその他の特徴、目的および利点は、発明の詳細な説明および請求項から明らかになるであろう。
【0015】
本出願は、分別された、または分別されていない炭化水素原料の精製、接触分解および異性化を含む一工程の組合せプロセスの実施形態について記載するものであり、前記組合せプロセスは、軽質炭化水素生成物を得るために、前記炭化水素原料を1種以上の脂肪酸またはそれらの混合物と共に360℃未満の蒸気温度で加熱することを含み、前記プロセスで得られた前記軽質炭化水素生成物は、重質炭化水素を含有せず、前記プロセスには芳香族炭化水素の形成が伴う。
【0016】
一実施形態における炭化水素原料は、原油(石油)、製油所原料の常圧下もしくは真空下での残留物、前記原油および製油所原料の常圧下もしくは真空下での前記残留物に由来する溶剤脱れき油、シェール油、オイルサンド、廃潤滑油、オイルスラッジおよびその他の廃油、ならびにこれらの混合物から選択される。前記軽質炭化水素生成物は、軽質石油ガス、ナフサ、モータおよびタービンの燃料用ガソリン、灯油、ディーゼル燃料(燃料油)および軽質原油である。前記プロセスでは得ることのない前記重質炭化水素生成物は、炭素原子数が25以上の炭化水素である。
【0017】
特定の一実施形態において、炭化水素原料は、前記1種以上の脂肪酸またはそれらの混合物と共に、連続的に反応槽に供給される。特定の一実施形態において、1種以上の脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸およびこれらの混合物から選択される。得られた軽質炭化水素生成物は、反応槽から連続的に蒸留され(分別を行うことも行わないこともある)、生成物貯蔵タンクに回収される。
【0018】
一実施形態における炭化水素原料は、反応槽への供給前に、該炭化水素原料から水、水溶性塩および浮遊固形物を除去するためにあらかじめ処理される。前記炭化水素原料は最初に希釈し、静置による浮遊固形物を分離し、油水分離器へ流し入れて、精製所および種々のプラントからの流出廃水または廃潤滑油、オイルスラッジおよび他の廃棄物に見出される浮遊固形物ならびに廃水から油本体を分離する。特定の一実施形態において、前記炭化水素原料は、密度が0.82〜0.84g/cm未満である炭化水素原料を得るために、前記軽質炭化水素生成物の一部を用いて希釈される。未処理の炭化水素原料の希釈に使用される軽質炭化水素生成物が、軽質ナフサ留分(40℃〜105℃の間で沸騰する留分であり、主としてペンタン、ヘキサンおよびヘプタンからなる)から取得される場合、希釈プロセス全体はリサイクルされない。あるいは、希釈に使用された軽質炭化水素生成物の一部は、生成物貯蔵タンクから前記油水分離器へと絶えず戻されてリサイクルされる。一実施形態における前記プロセスは、連続的であっても半連続的であってもよく、常圧下、高圧下、真空中のいずれで行われてもよい。
【0019】
1つ以上の実施形態の詳細が、以下で説明される。記載される技術のその他の特徴、目的および利点は、発明の詳細な説明および請求項から明らかになるであろう。
【0020】
発明の詳細な説明
以下の記載において、本出願の種々の態様が説明されるであろう。本出願を完全に理解するための説明を目的として、特定の構成および詳細が示される。しかしながら、ここに示される特定の詳細を用いずに本出願が実行されうることもまた、当業者には明らかであろう。さらに、本出願が不明瞭になることを避けるため、よく知られている特徴は、省略または簡略化されることもある。
【0021】
請求項で使用される「含む」という語は、以降に列記される構成要素および工程に限定されるものと解釈すべきではなく、その他の構成要素または工程を排除しない。言及された特徴、整数、工程または構成要素の存在を規定するが、1つ以上のその他の特徴、整数、工程もしくは構成要素またはそれらの群の存在を排除するものではないと解釈する必要がある。したがって、発現「xおよびzを含むプロセス」の範囲は、単に工程xおよびzのみを含むプロセスに限定されるべきではない。
【0022】
本出願は、分別された、または分別されていない炭化水素原料の精製、接触分解および異性化を含む一工程の組合せプロセスの実施形態について記載するものであり、前記組合せプロセスは、軽質炭化水素生成物を得るために、前記炭化水素原料を1種以上の脂肪酸またはそれらの混合物と共に360℃未満の蒸気温度で加熱することを含み、前記プロセスで得られた前記軽質炭化水素生成物は、重質炭化水素生成物を含有せず、前記プロセスには芳香族炭化水素の形成が伴う。上述の「精製」は分留を含む。上記の「軽質炭化水素生成物は重質炭化水素生成物を含有しない」という語は、該重質炭化水素生成物は当初の炭化水素原料中に存在し、完全に反応して軽質炭化水素生成物へと変換されることはないものの、反応槽から蒸留された最終軽質炭化水素生成物には一切含まれないことを意味する。しかしながら、少量の液体炭化水素生成物が反応槽の底部に残存してもよい。このような少量(炭化水素原料の10%未満)の液体炭化水素生成物は、固形残留物から分離して、元のあるいは別の反応槽に戻し、次いで同じプロセスによって、反応槽の底部の液体残留物を加熱しながら、軽質炭化水素生成物に変換することができる。このようなリサイクルによって、プロセスの反応収率を顕著に高めることができるが、反応収率は、反応混合液中の初期アスファルテン含量に強く依存する。
【0023】
一実施形態において、炭化水素原料は原油、製油所原料、廃潤滑油、オイルスラッジ、およびその他の廃油またはこれらの混合物を含む。本明細書中、「炭化水素原料」とは、留分に分離されておらず、精製操作に使用される任意の炭化水素原料と定義され、天然ガスコンデンセート、原油(石油)、製油所原料の常圧下または真空下での残留物、これらの石油または残留物に由来する溶剤脱れき油、シェール油、オイルサンド、廃潤滑油、オイルスラッジおよびその他の廃油を含む。前記炭化水素原料は、溶媒、解乳化剤、腐食抑制剤などを含む1種以上の処理化学薬品を用いてあらかじめ処理されていてもよい。
【0024】
本明細書中、実施形態における「軽質炭化水素生成物」は、軽質石油ガス、ナフサ、モータおよびタービンの燃料用ガソリン、灯油、ディーゼル燃料および軽質原油またはこれらの混合物と定義される。これらはいずれも、実施形態のプロセスにおいて形成される軽質炭化水素である。炭素原子数が25以上である重質炭化水素生成物は、実施形態のプロセスにおいて、全く形成されないか、または無視できるほどのごく少量しか形成されない。驚くべきことに、炭化水素原料を脂肪酸と共に加熱すると、1)ヘキサンに始まり重質炭化水素分子に至るまでのあらゆる炭化水素分子の異性化、および2)重質炭化水素分子の効率的な分解による軽質炭化水素分子の形成、という結果が得られることが見出された。このプロセスには芳香族炭化水素の形成が伴うことがわかった。
【0025】
分解反応が進むにつれて、形成された軽質炭化水素生成物が反応槽から連続的に蒸留され(分別を行うことも行わないこともある)、さらに生成物貯蔵タンクに回収される。本明細書中、「低温分解」は、連続的または半連続的な分解プロセスと定義される。このプロセスは360℃未満の蒸気温度において、常圧下、高圧あるいは真空中で行われ、炭化水素原料中の高沸点かつ高分子量の炭化水素留分を、はるかに軽いディーゼル油、灯油、ガソリン、ナフサおよびガソリン製品へと変換する。本出願のプロセスの最も重要な特徴は、重質炭化水素生成物が形成されないことであり、このプロセスにおいては芳香族炭化水素が自然に形成される。
【0026】
前記プロセスは、一実施形態において、単一の反応工程で実施される真の一工程連続プロセスである。前記炭化水素原料は、1種以上の脂肪酸またはそれらの混合物と共に、連続的に反応槽に供給される。特定の一実施形態において、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸およびこれらの混合物から選択される。脂肪酸の使用によって、分離されていない炭化水素原料中の炭化水素原料を、360℃未満の蒸気温度で効率的に分解できる。したがって、400℃を超えて反応槽を加熱する必要はないため、プロセス全体を、既存の原油精製プロセスよりもはるかに経済的に実行することができる。繰り返して言うまでもないが、このプロセスは一工程で実施することができ、軽質炭化水素生成物のみが得られる。
【0027】
脂肪酸の存在下で供給された炭化水素原料の異性化および分解反応の裏にある機構は、今なお未知である。しかしながら、脂肪酸が、未処理の炭化水素原料から抽出した金属と錯体を形成しうるのではないかと推測することができる。原油は通常、バナジウム、ニッケルおよび鉄などの金属を含んでいる。このような金属は、通常、マズート、れき青およびタールのようなより重い留分に集中する傾向がある。しかしながら、このような金属の存在は、これらの重い留分の処理を非常に困難にする。疎水性が高いことにより、脂肪酸は、反応槽に供給された炭化水素原料の大半を占める油性部分に急速に浸透することができ、それによって、該大部分において金属との錯体を形成する。一旦脂肪酸と金属との錯体が形成されると、化学触媒や添加剤がなくとも、分解反応は(反応温度を低下させることによって)はるかに容易に進行するものと考えられる。したがって、脂肪酸またはそれらの混合物は、本明細書中、「反応物触媒」と定義することができる。実際に、脂肪酸またはそれらの混合物が実施形態のプロセスの反応を開始し、かつ触媒作用も及ぼしうることは、驚くべき知見である。
【0028】
特定の一実施形態において、炭化水素原料は、反応槽への供給前にあらかじめ処理しておく必要がある。これは、精製に先立って炭化水素原料から水、水溶性塩および浮遊固形物を除去するために行われる。未処理の炭化水素原料の前処理に関する品質要求は、任意の工業的精製における品質要求と同一である。すなわち、水分量が0.5%を超えてはならず、反応槽内に流れ込む供給原料には、いかなる浮遊固形物も水溶性塩も存在してはならない。
【0029】
いくつかの実施形態において、精製所で受け入れられる前記未処理の炭化水素原料は、密度が0.82〜0.84g/cm未満である該炭化水素原料溶液を得るために、最初(前処理の前)に希釈されてもよい。この未処理の炭化水素原料は、実施形態のプロセスで得られた軽質炭化水素生成物の一部で希釈される。
【0030】
特定の一実施形態において、前記未処理の炭化水素原料の希釈に使用される軽質炭化水素生成物は、軽質ナフサ留分(40℃〜105℃の間で沸騰する留分であり、主としてペンタン、ヘキサンおよびヘプタンの分子からなる)から取得される。前記軽質ナフサ留分は、ガソリンの収率を高める目的で、実施形態のプロセスにおいて廃潤滑油、オイルスラッジおよび他の廃油の希釈に使用することができる。希釈は、炭化水素原料の処理および輸送のあらゆる段階において実施することができ、それによって浮遊固形物および水からの原油の分離の促進や、輸送の間の加熱に要するエネルギーコストの低減が可能となる。これは、重質留分のみを軽質留分で希釈し、また輸送中の凝固を防止するために重質留分の加熱が必要とされる原油産業の現状とは対照的である。
【0031】
未処理の炭化水素原料の希釈に使用される軽質炭化水素生成物が、前記軽質ナフサ留分から取得される場合、希釈プロセス全体はリサイクルされない。あるいは、希釈に使用された軽質炭化水素生成物の一部は、生成物貯蔵タンクから前記油水分離器へと絶えず戻されてリサイクルされる。特定の一実施形態において、得られた軽質炭化水素生成物(軽質ナフサ留分すなわちペンタン、ヘキサンまたはヘプタンを構成しない)は、反応槽への供給に先立って、未処理の炭化水素原料を希釈するために油水分離器に流入するよう戻される。蒸留後に、一定量の軽質炭化水素生成物が、蒸留された軽質炭化水素生成物全体から分離される。次いでこれは、炭化水素原料の新たな部分を希釈するためにパイプを通して油水分離器へと戻される。この一定量の蒸留された軽質炭化水素生成物は、事実上、生成物貯蔵タンクと油水分離器との間を循環する。
【0032】
軽質炭化水素生成物を得るための一実施形態のプロセスは、断熱に近い反応条件で行う必要がある。これは、反応槽内での発熱反応によって放出された熱によって反応混合物が加熱されることを保証するためである。この理由から、反応速度は、形成された軽質炭化水素およびそれらの異性体が蒸発する速度と同等以上でなくてはならない。これは一工程のプロセスであるため、反応槽内で形成された軽質炭化水素生成物は直ちに反応槽から蒸留され、この反応は連続的に進行する。上述のように、本発明のプロセスに伴って、反応の間に芳香族炭化水素が形成される。
【0033】
他の工業的精製プロセスと同様に、実施形態のプロセスは、常圧下、真空中あるいは高圧下のいずれで行われてもよく、分別を行っても行わなくてもよい。高収率(75%を超える)で得られた軽質炭化水素生成物は、さらに蒸留塔に流入させることによって、軽質石油ガス、ナフサ、ガソリン、灯油およびディーゼル燃料のような消費者製品へと分離したり、または他の工業プロセスへと流入させたりすることができる。上述のように、蒸留して得られた軽質炭化水素生成物には重質炭化水素が含まれず、実施形態のプロセスの生成物のみを構成する。その分別は、容易かつ急速に進行し、またこの一工程の精製プロセスにかかるエネルギーコストは、現在工業的に使用されている多工程の精製プロセスよりも明らかに低い。また、上述のように、実施形態のプロセスは、前記得られた炭化水素生成物の流れの少なくとも一部を前記油水分離器へと戻して希釈のためにリサイクルすることをさらに含む。
【実施例】
【0034】
脂肪酸の液体混合物の調製
1.2gのステアリン酸をエタノールのエーテル・アルデヒド留分(濃度94〜98%のエタノールと、2〜6%のエーテル、アルデヒド、ジアセチル、メタノール、硝酸塩および硫酸塩との混合物)25mlに溶解する。得られた溶液を、50mlの工業グレードのオレイン酸と混合し、前記液体混合物の透明な溶液を得る。工業グレードのオレイン酸は、以下の脂肪酸を含む(w/w%):
【0035】
得られた脂肪酸の液体混合物は、潤滑油、重質油留分、残留物、れき青またはタールを含む任意の種類の炭化水素原料に導入することができる。これらの留分は、反応に先立って、周囲温度で希釈、洗浄および脱塩することができる。
【0036】
上記で調製した脂肪酸の液体混合物を炭化水素原料に加えて約0.5〜1.0w/w%の混合物を得た後、固形生成物と、少量の重く蒸発しない炭化水素および他の不純物のみが反応槽に残る状態となるまで、低温分解反応を行う。前記重く蒸発しない炭化水素および他の不純物を除去するために、ガソリンと灯油とを用いて固形生成物を洗浄する。得られた固形生成物を粉砕し、エタノールのエーテル・アルデヒド留分と混合し、再び洗浄して活性化する。得られた乾燥生成物は、金属と錯体を形成している脂肪酸の固形混合物である。これは、分解に供する溶液に直接導入してもよく、蒸留塔に配置することで蒸留された液相と接触させてもよい。
【0037】
低温プロセスのための炭化水素原料の調製
精製所で受け入れる炭化水素原料は、通常、浮遊固形物を除去し、かつ水の含量を0.5w/w%未満とするような前処理が施されている。
【0038】
しかしながら、廃潤滑油、重質原油、オイルスラッジおよびマズートは、特別な前処理を必要とする。廃潤滑油を、本出願の一実施形態の軽質炭化水素生成物で希釈することで、密度が0.82〜0.84g/cmの範囲にある潤滑油溶液が得られる。得られた溶液をろ過した後、油水分離器中で一晩放置して、油相と水相とを分離する。分離された油は、0.5w/w%未満の水をなお含んでいるが、これを該分離器から前記反応槽へと移す。
【0039】
重質原油、オイルスラッジおよびマズートを混合してスラリーを得た後、このスラリーを一実施形態の軽質炭化水素生成物で希釈し、希釈後のスラリーの密度が0.82〜0.84g/cmの範囲となるようにする。希釈後のスラリーをろ過した後、油水分離器中で一晩放置して、浮遊固形物を沈殿させ、かつ油相と水相とを分離する。分離された油相は0.5w/w%未満の水を含んでいるが、これを該分離器から前記反応槽へと移す。
【0040】
炭化水素原料の上記の前処理の理由は、実際には水の除去である。水の総量は反応混合物の0.5w/w%を超えてはならない。ろ過されていない固形微粒子または浮遊固形物についても同じ問題が存在し、これらは分解プロセスの開始前に除去する必要がある。
【0041】
液体混合物と脂肪酸とを使用する低温プロセス
250mlのガラス製ビーカーに100mlの炭化水素原料を入れ、容量で約0.5〜1.0%の脂肪酸の液体混合物を加える。この溶液を、リービッヒ冷却器と温度計とを備えた250mlのウルツフラスコに移す。リービッヒ冷却器の終端部にメスシリンダーを配置し、蒸留して得た液体を集める。脂肪酸と原料溶液とが入ったウルツフラスコを、凝結した液体の最初の1滴がメスシリンダーに現れるまで、油浴を使用して穏やかに加熱する。凝結した液体のメスシリンダーへの滴下が終われば、加熱を強め、ウルツフラスコ内の液体の沸騰温度を高める。このサイクルを数回繰り返す。軽質炭化水素生成物の反応収率が78〜82%に到達すれば、このプロセスを抑制する。
【0042】
液体のほとんど(93〜95%)がウルツフラスコからメスシリンダーへと蒸留されれば、プロセスを停止する。メスシリンダー中の凝結した液体は、分解反応の軽質炭化水素生成物を構成する。この液体の容量を測定し、それに基づいて反応収率を計算する。次の表は、脂肪酸を1%含む混合物の、異なる沸騰温度における軽質炭化水素生成物の収率を示す。
40〜45℃の間、フラスコ内に気泡が見られ、反応混合物の容量が10〜15%増加したが、沸騰が実際に始まったのは55℃であった。蒸留された液体が48〜77%である間、分解プロセスは安定かつ均一であり、温度調節は必要でなかった。蒸留された液体が23%、48%および77%となった時点で加熱温度を高めた。
【0043】
金属と錯体を形成している脂肪酸の固形混合物を用いた低温プロセス
250mlのガラス製ビーカーに100mlの炭化水素原料を入れ、金属と錯体を形成している脂肪酸の固形混合物を2〜3g加える。次いで、上述の脂肪酸の液体混合物と同じ手順を実施して、同じ結果を得る。
【0044】
実験室における実験−反応物触媒を加えた蒸留
認可を受けた試験研究所である「West−Inos」(リヴィウ、ウクライナ)で実施した試験の結果を以下に示す。それぞれの試験の条件は、試験および関連する実験装置のための標準的文書の要件を満たすものであった。提出された油試料の蒸留は、GOST11011−85に従って実施した。
【0045】
温度20℃(GOST3900)における試料原油の密度が856.2kg/mと測定されたのに対し、温度15℃(GOST31072)における同じ原油の密度は859.5kg/mと測定された。
【0046】
原油試料の重量は2800gであった。蒸留器(distillation cube)に導入された反応物触媒の量は、33ml(原油の容量の1%)であった。反応物触媒および原油の撹拌は行わなかった。反応物触媒を用いた原油の蒸留の結果を表1に示す。
【表1】
【0047】
表1に示すように、軽質留分の全収率は88.86%であり、これには以下の軽質炭化水素生成物、すなわち重量で18.34%のガソリン、重量で12.38%の灯油、および重量で58.14%のディーゼル油が含まれていた。蒸留器内の残留物は230g(重量で8.21%)であり、重量の損失はわずか82g(重量で2.93%)であった。
【0048】
蒸留後、ガソリン1試料、灯油留分1試料、およびディーゼル燃料3試料が得られ、それぞれについてオクタン価(ガソリン、灯油)およびセタン価(ディーゼル燃料)を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0049】
さらに、試料2〜4(ディーゼル燃料)を合わせて1つにした。合わせた試料をさらに蒸留して2つの留分を得た。沸点が300℃(蒸気温度)までの軽質ディーゼル燃料留分、シリカゲル上でのさらなる精製、および沸点が300℃(蒸気温度)を超える重質ディーゼル燃料留分である。これら2つの留分を試験に供した。ガソリンおよび灯油の試料のシリカゲルを用いた精製もまた「West−Inos」研究所で実施した。
【0050】
4つの試料、すなわちガソリン、灯油、ディーゼル燃料および油が得られた。これらの試験の結果を、以下の表3、表4、表5および表6に示す。
【表3】
【表5】
【表6】
【表7】
【0051】
次の表8に、軽質ナフサ留分をヘキサンとヘプタンに関して蒸留した結果を示す。実験は以下のように実施した。120mlのn−ヘキサンに1mlの反応物触媒を添加し、この混合物を加熱してウルツフラスコへと留出した。110mlの留出物試料「G」が得られた。
【0052】
別の実験では、120mlのn−ヘキサンと1mlの反応物触媒とを、前処理を施したオイルスラッジに添加した。前処理には、浮遊固形物と水分の除去が含まれる(オイルスラッジの前処理のための上記プロトコルを参照のこと)。さらに、軽質炭化水素(沸点125℃)を除去した。前処理後のオイルスラッジをウルツフラスコへと留出した。得られた留出物試料は、表8では「G.Sys」として示される。
【0053】
第3の実験では、120mlのn−ヘプタンと1mlの反応物触媒とを、上記と同様の前処理を施したオイルスラッジに添加し、ウルツフラスコへと留出した。得られた留出物試料は、表8では「H」として示される。
【表8】
【0054】
以下の表9は、上記の結果すべてをまとめたものである。
【表9】
【0055】
本出願の特定の特徴についてここに記載し、説明したが、多くの改良、置換、変更および等価物が当業者には明らかであろう。したがって、添付の請求項は、そのような改良および変更のすべてを、本出願の真の精神の範囲内にあるものとして包含するものと解されるべきである。