(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダ本体内の一端とピストンとの間に第1シリンダ室が形成されると共に、前記シリンダ本体内の他端と前記ピストンとの間に第2シリンダ室が形成され、流体供給源から前記第1シリンダ室に流体が供給され、又は、前記流体供給源から前記第2シリンダ室に流体が供給されることで、ピストンロッドに連結された前記ピストンが前記シリンダ本体内の一端と他端との間で往復移動するシリンダの動作状態監視装置において、
前記第1シリンダ室の圧力値を検出する第1圧力検出部と、
前記第2シリンダ室の圧力値を検出する第2圧力検出部と、
前記第1圧力検出部が検出した圧力値と前記第2圧力検出部が検出した圧力値との差圧を算出する差圧算出部と、
前記ピストンの往復移動中、前記第1圧力検出部が前記第1シリンダ室の圧力値を検出し、前記第2圧力検出部が前記第2シリンダ室の圧力値を検出し、前記差圧算出部が前記各圧力値の差圧を算出した場合、算出された前記差圧を記憶する記憶部と、
前記ピストンの往復移動の動作の終了後に、前記記憶部に記憶された前記差圧に基づいて、前記ピストンの往復移動の動作について、前記シリンダ本体内の一端と他端との間の前記ピストンの移動時間が第1閾値時間内にある場合には正常状態と判定し、前記移動時間が前記第1閾値時間よりも長い第2閾値時間を超える場合には異常状態と判定し、前記移動時間が前記第1閾値時間を超えているが前記第2閾値時間内にある場合には前記シリンダの性能劣化が発生している中間状態と判定する判定部と、
をさらに有することを特徴とするシリンダの動作状態監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、シリンダの近傍に位置検出センサが設置されているので、例えば、食品関係の設備にシリンダを使用した場合、食品等に対する洗浄液をシリンダが浴びると、位置検出センサ及び該位置検出センサの配線が腐食する可能性がある。そこで、位置検出センサ及びその配線の耐液性を確保しようとすれば、コストがかかる。
【0005】
また、特許文献1の技術では、シリンダ本体内の一端と他端との間のピストンの移動時間を計測し、計測した移動時間が規定値から外れたときには、エラーとしてカウントする。そして、カウントしたエラー回数が許容エラー回数に到達すれば、シリンダの故障と判断する。従って、ピストンの往復移動の動作について、正常状態と異常状態との間の中間状態に対する判断基準がない。この結果、正常な動作であっても、初期状態から性能が劣化した中間状態を判断することができない。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、シリンダの近傍にセンサを設置することなく、正常状態と異常状態との間の中間状態を判断することができるシリンダの動作状態監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリンダ本体内の一端とピストンとの間に第1シリンダ室が形成されると共に、前記シリンダ本体内の他端と前記ピストンとの間に第2シリンダ室が形成され、流体供給源から前記第1シリンダ室に流体が供給され、又は、前記流体供給源から前記第2シリンダ室に流体が供給されることで、ピストンロッドに連結された前記ピストンが前記シリンダ本体内の一端と他端との間で往復移動するシリンダの動作状態監視装置に関する。
【0008】
そして、上記の目的を達成するため、本発明に係るシリンダの動作状態監視装置は、前記第1シリンダ室の圧力値を検出する第1圧力検出部と、前記第2シリンダ室の圧力値を検出する第2圧力検出部と、前記第1圧力検出部が検出した圧力値と前記第2圧力検出部が検出した圧力値との差圧を算出する差圧算出部と、前記差圧算出部が算出した差圧に基づいて前記ピストンの往復移動の動作が正常状態と異常状態との間の中間状態にあるか否かを判定する判定部とをさらに有する。
【0009】
この構成によれば、前記流体供給源から前記第1シリンダ室又は前記第2シリンダ室への流体の供給経路の圧力を検出すれば、前記第1シリンダ室又は前記第2シリンダ室の圧力値を検出することが可能となる。従って、本発明では、前記シリンダの近傍にセンサを設置することが不要となる。
【0010】
また、前記判定部は、前記第1シリンダ室の圧力値と前記第2シリンダ室の圧力値との前記差圧に基づいて、前記ピストンの往復移動の動作が前記中間状態にあるか否かを判定する。このように、前記中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が付加されることにより、正常な動作であっても初期状態から性能が劣化した前記中間状態を判断することができる。
【0011】
ここで、前記動作状態監視装置は、前記ピストンの往復移動中、前記第1圧力検出部が前記第1シリンダ室の圧力値を検出し、前記第2圧力検出部が前記第2シリンダ室の圧力値を検出し、前記差圧算出部が前記各圧力値の差圧を算出した場合、算出された前記差圧を記憶する記憶部をさらに有してもよい。この場合、前記判定部は、前記往復移動の動作の終了後に、前記記憶部に記憶された前記差圧に基づいて前記往復移動の動作が前記中間状態にあるか否かを判定する。
【0012】
これにより、前記往復移動中に算出した前記差圧を、前記往復移動の動作終了後に解析するので、前記往復移動の動作が前記中間状態にあるか否かの判定を精度良く行うことができる。この結果、判定結果の信頼性を高めることができる。
【0013】
また、前記ピストンの往復移動中の差圧は、略一定であることが知られている。そのため、前記差圧のレベルが変化することは、前記シリンダ(の動作に関わる部品)の劣化又は故障等の異常が発生していると捉えることができる。従って、前記差圧に基づいて判定することにより、前記往復移動の動作に対する判定処理を効率よく行うことができる。
【0014】
また、前記流体供給源は、第1配管を介して前記第1シリンダ室に流体を供給するか、又は、第2配管を介して前記第2シリンダ室に流体を供給する。この場合、前記第1圧力検出部は、前記第1シリンダ室の圧力値に応じた前記第1配管内の流体の第1圧力値を検出し、前記第2圧力検出部は、前記第2シリンダ室の圧力値に応じた前記第2配管内の流体の第2圧力値を検出し、前記差圧算出部は、前記第1圧力値と前記第2圧力値との差圧を算出すればよい。
【0015】
これにより、前記第1圧力値及び前記第2圧力値に基づく前記差圧を用いて、判定処理を効率よく行うことができる。また、前記第1配管に前記第1圧力検出部が設けられると共に、前記第2配管に前記第2圧力検出部が設けられるので、前記シリンダの近傍へのセンサの設置、及び、該センサに対する配線が不要となる。この結果、食品関係の設備に前記シリンダを好適に用いることができ、その洗浄工程でのセンサ及び配線の腐食等の発生を回避することができる。
【0016】
そして、前記判定部は、前記差圧が第1差圧閾値未満である場合には、前記ピストンの往復移動の動作が前記正常状態にあると判定する。また、前記判定部は、前記差圧が前記第1差圧閾値以上且つ第2差圧閾値未満である場合には、前記往復移動の動作が正常であるものの前記シリンダの性能劣化が発生している前記中間状態にあると判定する。さらに、前記判定部は、前記差圧が前記第2差圧閾値以上である場合には、前記往復移動の動作が前記異常状態にあると判定する。
【0017】
これにより、前記判定部は、前記往復移動の動作について、前記正常状態、前記中間状態及び前記異常状態の判定をそれぞれ行うことが可能となる。また、基準値としての前記第1差圧閾値及び前記第2差圧閾値を用いて前記中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が行われるので、正常な動作であっても初期状態から性能が劣化した前記中間状態を容易に判定することができる。
【0018】
さらに、前記動作状態監視装置は、前記シリンダ本体内の一端と他端との間の前記ピストンの移動時間を計時する計時部をさらに有する。この場合、前記計時部は、前記ピストンが前記シリンダ本体内の一端又は他端から移動を開始した時点より、該ピストンが前記シリンダ本体内の他端又は一端に到達して前記差圧が一定値から増加する時点までを前記移動時間として計時し、前記判定部は、前記移動時間に基づいて、前記ピストンの往復移動の動作が前記中間状態にあるか否かを判定してもよい。
【0019】
前記移動時間が変化すれば、前記シリンダ(の動作に関わる部品)の劣化又は故障等の異常が発生していると捉えることができるので、前記移動時間に基づいて、前記往復移動の動作に対する判定処理を効率よく行うことができる。
【0020】
そして、前記判定部は、前記移動時間が第1閾値時間内にある場合には、前記ピストンの往復移動の動作が前記正常状態にあると判定する。また、前記判定部は、前記移動時間が前記第1閾値時間を逸脱し且つ第2閾値時間内にある場合には、前記往復移動の動作が正常であるものの前記シリンダの性能劣化が発生している前記中間状態にあると判定する。さらに、前記判定部は、前記移動時間が前記第2閾値時間を逸脱している場合には、前記往復移動の動作が前記異常状態にあると判定する。
【0021】
この場合でも、前記判定部は、前記往復移動の動作について、前記正常状態、前記中間状態及び前記異常状態の判定をそれぞれ行うことができる。また、基準値としての前記第1閾値時間及び前記第2閾値時間を用いて前記中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が行われるので、正常な動作であっても初期状態から性能が劣化した前記中間状態を容易に判定することができる。
【0022】
また、前記動作状態監視装置は、前記判定部の判定結果を外部に報知する報知部をさらに有してもよい。
【0023】
上述の中間状態を故障等の異常に対する警告状態と位置付ければ、前記シリンダが故障に至る前に、前記動作状態監視装置の上位システム等に該シリンダの性能劣化を報知することができる。これにより、前記シリンダのメンテナンス時期をユーザに通知することが可能となり、システム全体のダウンタイムを最小限にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、流体供給源から第1シリンダ室又は第2シリンダ室への流体の供給経路の圧力を検出すれば、第1シリンダ室又は第2シリンダ室の圧力値を検出することが可能となる。従って、本発明では、シリンダの近傍にセンサを設置することが不要となる。
【0025】
また、判定部は、第1シリンダ室の圧力値と第2シリンダ室の圧力値との差圧に基づいて、ピストンの往復移動の動作が中間状態にあるか否かを判定する。このように、中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が付加されることにより、正常な動作であっても初期状態から性能が劣化した中間状態を判断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るシリンダの動作状態監視装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0028】
[1.本実施形態の構成]
図1は、本実施形態に係るシリンダの動作状態監視装置10(以下、本実施形態に係る監視装置10ともいう。)のブロック図である。監視装置10は、シリンダ12の動作状態の監視装置として機能する。
【0029】
シリンダ12は、シリンダ本体14と、該シリンダ本体14の内部で移動自在に設けられたピストン16と、ピストン16に連結されたピストンロッド18とを有する。この場合、シリンダ本体14内において、
図1の左側の一端とピストン16との間には第1シリンダ室20が形成され、
図1の右側の他端とピストン16との間には第2シリンダ室22が形成されている。
【0030】
なお、
図1において、ピストンロッド18は、ピストン16における第2シリンダ室22に臨む側面に連結され、該ピストンロッド18の先端は、シリンダ本体14の右端から外部に延出している。従って、シリンダ12は、片軸型のシリンダである。
【0031】
シリンダ本体14の側面における第1シリンダ室20側には、第1ポート24が形成され、該第1ポート24に第1配管26の一端部が接続されている。一方、シリンダ本体14の側面における第2シリンダ室22側には、第2ポート28が形成され、該第2ポート28に第2配管30の一端部が接続されている。
【0032】
第1配管26の他端部は、切替弁32の第1接続ポート34に接続されている。また、第2配管30の他端部は、切替弁32の第2接続ポート36に接続されている。切替弁32の供給ポート38には、供給配管40が接続されている。供給配管40は、流体供給源42に接続され、該供給配管40の途中には、減圧弁44が設けられている。
【0033】
切替弁32は、単動型の5ポート電磁弁であり、外部から指令信号(電流)がソレノイド46に供給されることにより駆動する。
【0034】
具体的に、指令信号がソレノイド46に供給されていない非通電時には、供給ポート38と第2接続ポート36とが連通すると共に、第1接続ポート34が外部に開放される。これにより、流体供給源42から供給された流体は、減圧弁44によって所定圧力に変換され、供給配管40を介して切替弁32の供給ポート38に供給される。圧力変換後の該流体(圧力流体)は、供給ポート38、第2接続ポート36、第2配管30及び第2ポート28を介して、第2シリンダ室22に供給される。
【0035】
この結果、該圧力流体によってピストン16が第1シリンダ室20側に押圧されて矢印C方向に移動すると共に、ピストン16によって押圧された第1シリンダ室20内の流体(圧力流体)が第1ポート24から第1配管26、第1接続ポート34及び切替弁32を介して外部に排出される。
【0036】
一方、指令信号がソレノイド46に供給される通電時には、供給ポート38と第1接続ポート34とが連通すると共に、第2接続ポート36が外部に開放される。これにより、流体供給源42から供給され、減圧弁44によって所定圧力に変換された圧力流体は、供給配管40から供給ポート38、第1接続ポート34、第1配管26及び第1ポート24を介して、第1シリンダ室20に供給される。
【0037】
この結果、該圧力流体によってピストン16が第2シリンダ室22側に押圧されて矢印D方向に移動すると共に、ピストン16によって押圧された第2シリンダ室22内の圧力流体が第2ポート28から第2配管30、第2接続ポート36及び切替弁32を介して外部に排出される。
【0038】
このように、切替弁32の切替動作に起因して、流体供給源42から第1配管26を介して第1シリンダ室20に圧力流体を供給し、又は、第2配管30を介して第2シリンダ室22に圧力流体を供給することにより、ピストン16及びピストンロッド18を矢印C方向及び矢印D方向に往復移動させることができる。すなわち、シリンダ12は、複動型のシリンダである。
【0039】
なお、本実施形態において、矢印C方向に沿ってシリンダ本体14内の一端にピストン16が移動したときのピストンロッド18の先端位置をA位置、矢印D方向に沿ってシリンダ本体14内の他端にピストン16が移動したときのピストンロッド18の先端位置をB位置とする。また、以下の説明において、ソレノイド46の通電時(切替弁32のオン時)に、ピストン16がシリンダ本体14内の一端から矢印D方向に沿って他端に移動する場合を「前進」ともいう。さらに、シリンダ本体14内の他端にピストン16が到達し、且つ、ピストンロッド18の先端位置がB位置に到達する場合、ストローク端である該他端及びB位置を「第1エンド端」ともいう。
【0040】
一方、以下の説明において、ソレノイド46の非通電時(切替弁32のオフ時)に、ピストン16がシリンダ本体14内の他端から矢印C方向に沿って一端に移動する場合を「後退」ともいう。また、シリンダ本体14内の一端にピストン16が到達し、且つ、ピストンロッド18の先端位置がA位置に到達する場合、ストローク端である該一端及びA位置を「第2エンド端」ともいう。
【0041】
また、本実施形態において、切替弁32は、
図1に示す電磁弁に限定されることはなく、他の種類の周知の電磁弁であってもよい。また、切替弁32は、単動型の電磁弁に代えて、複動型の周知の電磁弁を使用してもよい。以下の説明では、
図1に示す単動型の5ポート電磁弁が切替弁32である場合について説明する。
【0042】
このように、シリンダ12が構成されている場合において、本実施形態に係る監視装置10は、前述の流体供給源42、減圧弁44及び切替弁32等に加え、第1圧力センサ50(第1圧力検出部)、第2圧力センサ52(第2圧力検出部)及び検出器54をさらに有する。
【0043】
第1圧力センサ50は、第1配管26内の圧力流体の圧力値(第1圧力値)P1を逐次検出し、検出した第1圧力値P1に応じた第1圧力信号を検出器54に出力する。第2圧力センサ52は、第2配管30内の圧力流体の圧力値(第2圧力値)P2を逐次検出し、検出した第2圧力値P2に応じた第2圧力信号を検出器54に出力する。
【0044】
なお、第1配管26は、第1シリンダ室20に接続されているため、第1圧力値P1は、第1シリンダ室20の圧力値に応じた圧力値である。また、第2配管30は、第2シリンダ室22に接続されているため、第2圧力値P2は、第2シリンダ室22の圧力値に応じた圧力値である。さらに、第1圧力センサ50及び第2圧力センサ52は、公知の種々の圧力検出手段を採用可能であるが、これらの圧力検出手段についての説明は省略する。
【0045】
検出器54は、第1圧力信号及び第2圧力信号が逐次入力される場合に、第1圧力信号に応じた第1圧力値P1と、第2圧力信号に応じた第2圧力値P2とに基づいて、シリンダ本体14の一端(第2エンド端)又は他端(第1エンド端)にピストン16が到達したか否かの判定処理を行う。この判定処理の結果として、検出器54は、ピストン16が第1エンド端に到達したことを示す信号(第1エンド端信号)、又は、ピストン16が第2エンド端に到達したことを示す信号(第2エンド端信号)を出力する。
【0046】
また、検出器54は、ピストン16の往復移動の完了後、ピストン16がシリンダ本体14の一端と他端との間を移動しているときの第1圧力値P1と第2圧力値P2との差圧、及び/又は、シリンダ本体14の一端と他端との間でのピストン16の移動時間Tに基づいて、シリンダ12の動作状態の正常又は異常(故障)の判定処理や、シリンダ12の初期状態からの性能劣化の判定処理(故障前の中間状態の判定処理)を実行し、その判定結果を報知信号として外部に報知する。
【0047】
検出器54における上述の各判定処理の詳細については後述する。
【0048】
図2は、検出器54の内部構成を示すブロック図である。検出器54は、第1圧力信号及び第2圧力信号を用いて、所定のデジタル信号処理(判定処理)を行うことにより、第1エンド端信号又は第2エンド端信号等を生成する。
【0049】
検出器54は、入出力インターフェース部60(報知部)、マイクロコンピュータ62(差圧算出部、判定部)、操作部64、表示部66(報知部)、メモリ部68(記憶部)及びタイマ70(計時部)を備える。
【0050】
入出力インターフェース部60は、第1圧力信号及び第2圧力信号を逐次取り込み、第1圧力信号の示す第1圧力値P1及び第2圧力信号の示す第2圧力値P2をマイクロコンピュータ62に出力する。また、後述するように、マイクロコンピュータ62が第1圧力値P1及び第2圧力値P2に基づき第1エンド端信号又は第2エンド端信号を生成した場合、入出力インターフェース部60は、第1エンド端信号又は第2エンド端信号を外部に出力する。さらに、マイクロコンピュータ62がシリンダ12の動作状態(正常状態、異常状態又は中間状態(故障前の性能劣化))を判定した場合、入出力インターフェース部60は、その判定結果を示す報知信号を外部(例えば、シリンダ12を含む流体システムの上位コンピュータ)に出力する。
【0051】
操作部64は、監視装置10及びシリンダ12のユーザが操作する操作パネル、操作ボタン等の操作手段である。ユーザは、操作部64を操作することにより、マイクロコンピュータ62でのデジタル信号処理(判定処理)に必要な基準値を設定する。設定された基準値は、マイクロコンピュータ62に供給される。従って、ユーザは、操作部64を操作することにより、シリンダ12の動作環境及び該シリンダ12の種類等に応じて、上記の基準値を適宜設定することが可能である。なお、基準値としては、下記(1)〜(6)のようなものがある。
【0052】
(1)第1圧力値P1と第2圧力値P2との第1差圧(P1−P2)=ΔP12に対する基準値としての第1基準差圧ΔP12ref。第1基準差圧ΔP12refは、シリンダ本体14内の他端にピストン16が到達したときの第1差圧ΔP12の最小値(閾値)を示す。従って、第1差圧ΔP12が第1基準差圧ΔP12refより大きければ、シリンダ本体14内の他端にピストン16が到達したと判定することができる。
【0053】
(2)第2圧力値P2と第1圧力値P1との第2差圧(P2−P1)=ΔP21に対する基準値としての第2基準差圧ΔP21ref。第2基準差圧ΔP21refは、シリンダ本体14内の一端にピストン16が到達したときの第2差圧ΔP21の最小値(閾値)を示す。従って、第2差圧ΔP21が第2基準差圧ΔP21refより大きければ、シリンダ本体14内の一端にピストン16が到達したと判定することができる。
【0054】
(3)シリンダ本体14の一端と他端との間をピストン16が移動しているときの第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21に対する第1閾値としての第1差圧閾値X1(
図8参照)。第1差圧閾値X1は、シリンダ12の動作(ピストン16の往復動作)が正常状態であるときの第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21の上限値(閾値)である。従って、当該第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21が第1差圧閾値X1以上であれば、シリンダ12の動作は正常であるが、該シリンダ12の性能が初期状態から劣化している中間状態にあると判定することができる。
【0055】
(4)シリンダ本体14の一端と他端との間をピストン16が移動しているときの第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21に対する第2閾値としての第2差圧閾値X2(
図8参照)。第2差圧閾値X2は、シリンダ12の動作(ピストン16の往復動作)が異常状態であるときの第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21の下限値(閾値)である。従って、当該第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21が第2差圧閾値X2以上であれば、シリンダ12の動作が異常状態にある(シリンダ12が故障している)と判定することができる。
【0056】
(5)ピストン16の移動時間Tに対する第1の許容範囲である第1閾値時間ΔT1(
図10参照)。第1閾値時間ΔT1は、シリンダ12の初期状態での移動時間T0を中心とする所定の時間範囲である。移動時間Tが第1閾値時間ΔT1の範囲内にあれば、ピストン16が正常に動作している(シリンダ12の動作が正常状態にある)と判定することができる。
【0057】
(6)ピストン16の移動時間Tに対する第2の許容範囲である第2閾値時間ΔT2(
図10参照)。第2閾値時間ΔT2は、シリンダ12の初期状態での移動時間T0を中心として、第1閾値時間ΔT1よりも長く設定された所定の時間範囲である。移動時間Tが第2閾値時間ΔT2の範囲内にあれば、ピストン16は正常に動作している(シリンダ12の動作は正常である)が、該シリンダ12の性能が初期状態から劣化している中間状態にあると判定することができる。従って、移動時間Tが第2閾値時間ΔT2から逸脱していれば、シリンダ12の動作が異常状態にある(シリンダ12が故障している)と判定することができる。
【0058】
なお、上述の各基準値の設定作業は、監視装置10やシリンダ12等を含むシステムをユーザが構築し、その後の試運転時に、シリンダ12の動作条件出しを行いながら、ユーザが操作部64を操作することにより実行してもよい。あるいは、外部との通信等により、入出力インターフェース部60を介して、各基準値が設定又は変更されてもよい。
【0059】
マイクロコンピュータ62は、入出力インターフェース部60から逐次入力された第1圧力値P1及び第2圧力値P2を演算して、第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21を算出する。そして、マイクロコンピュータ62は、算出した第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21と、上記の基準値(第1基準差圧ΔP12ref及び第2基準差圧ΔP21ref)との比較に基づいて、シリンダ本体14内の一端(第2エンド端)又は他端(第1エンド端)にピストン16が到達したか否かを判定する。
【0060】
マイクロコンピュータ62は、シリンダ本体14内の他端にピストン16が到達した場合、ピストン16及びピストンロッド18が第1エンド端に到達したことを示す第1エンド端信号を生成する。一方、マイクロコンピュータ62は、シリンダ本体14内の一端にピストン16が到達した場合、ピストン16及びピストンロッド18が第2エンド端に到達したことを示す第2エンド端信号を生成する。生成された第1エンド端信号又は第2エンド端信号は、入出力インターフェース部60を介して外部に出力される。
【0061】
この場合、マイクロコンピュータ62は、シリンダ本体14内の一端又は他端へのピストン16の到達の有無に関わりなく、上記の判定処理を行う毎に、判定結果と、該判定処理に用いた第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21とをメモリ部68に記憶する。
【0062】
また、マイクロコンピュータ62は、入出力インターフェース部60を介して切替弁32のソレノイド46に指令信号を供給することが可能である。
【0063】
さらに、マイクロコンピュータ62からソレノイド46への指令信号の供給開始時刻でタイマ70が計時を開始し、当該時刻からピストン16が第1エンド端に到達するまでの移動時間Tをタイマ70が計時した場合、マイクロコンピュータ62は、タイマ70が計時した移動時間Tをメモリ部68に記憶する。
【0064】
なお、
図4、
図5、
図8及び
図10に示すように、シリンダ本体14内の一端又は他端からピストン16が移動を開始し、シリンダ本体14内の他端又は一端に到達した際、略一定値であった第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21は、時間経過に伴って、急激に増加する。従って、移動時間Tは、指令信号の供給開始時刻(時点t1、t5)から、ピストン16がシリンダ本体14内の他端又は一端に到達することにより、略一定値であった第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21が急激に増加する時刻(時点t4、t8)までの時間である。
【0065】
そして、マイクロコンピュータ62は、ピストン16の往復動作の完了後、メモリ部68に記憶された第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21のうち、ピストン16が第1エンド端又は第2エンド端に到達していない判定結果(ピストン16が往復移動中であったときの判定結果)に応じた第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21を読み出し、読み出した第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21と、第1差圧閾値X1及び第2差圧閾値X2との比較に基づき、シリンダ12の動作が正常状態又は異常状態にあるか、さらには、シリンダ12の性能劣化が発生している中間状態にあるか否かを判定する。
【0066】
あるいは、マイクロコンピュータ62は、ピストン16の往復動作の完了後、メモリ部68に記憶された移動時間Tを読み出し、読み出した移動時間Tと、第1閾値時間ΔT1及び第2閾値時間ΔT2との比較に基づき、シリンダ12の動作が正常状態又は異常状態にあるか、さらには、シリンダ12の性能劣化が発生している中間状態にあるか否かを判定してもよい。
【0067】
マイクロコンピュータ62は、この判定結果(正常状態、異常状態又は中間状態)を示す報知信号を表示部66に出力することにより、表示部66に判定結果を表示させ、ユーザに報知する。あるいは、入出力インターフェース部60を介して外部の上位コンピュータ等に報知信号を出力し、判定結果を報知する。
【0068】
表示部66は、ユーザの操作部64の操作により設定された基準値を表示し、又は、マイクロコンピュータ62での各種の判定処理の結果を表示する。メモリ部68は、操作部64で設定された各基準値や、上述の判定結果、第1差圧ΔP12、第2差圧ΔP21及び移動時間Tを格納する。タイマ70は、前述のように、マイクロコンピュータ62からソレノイド46への指令信号の供給開始時刻から計時を開始することで、シリンダ本体14内におけるピストン16の移動時間Tを計時する。
【0069】
[2.本実施形態の動作]
本実施形態に係る監視装置10は、以上のように構成される。次に、監視装置10の動作について、
図3〜
図10を参照しながら説明する。この説明では、必要に応じて、
図1及び
図2も参照しながら説明する。
【0070】
ここでは、ピストン16の往復移動の動作中、マイクロコンピュータ62において、第1差圧ΔP12(=P1−P2)と第1基準差圧ΔP12refとの比較、及び/又は、第2差圧ΔP21(=P2−P1)と第2基準差圧ΔP21refとの比較のみに基づいて、シリンダ本体14内の一端(第2エンド端)又は他端(第1エンド端)にピストン16が到達したか否かを繰り返し判定し(
図3のステップS1〜S6)、その判定結果と、第1差圧ΔP12、第2差圧ΔP21及び移動時間Tとをメモリ部68に順次格納する。
【0071】
そして、ピストン16の往復移動の動作完了後、マイクロコンピュータ62において、シリンダ本体14内の一端と他端との間をピストン16が往復移動中であったときの第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21、又は、移動時間Tを用いて、シリンダ12の動作状態に対する判定処理(正常状態、異常状態又は中間状態の判定)が行われる(ステップS7)。
【0072】
具体的に、
図3、
図7及び
図9のフローチャートと、
図4〜
図6、
図8及び
図10のタイミングチャートとを参照しながら説明する。なお、
図3は、マイクロコンピュータ62での判定処理を示すフローチャートである。
【0073】
図4は、
図1のシリンダ12において、ピストン16及びピストンロッド18を矢印D方向に前進させたときの第1圧力値P1及び第2圧力値P2の時間変化を示すタイミングチャートである。
図5は、シリンダ12において、ピストン16及びピストンロッド18を矢印C方向に後退させたときの第1圧力値P1及び第2圧力値P2の時間変化を示すタイミングチャートである。ここでは、
図4及び
図5のタイミングチャートをそれぞれ説明した後に、
図3の判定処理について説明する。
【0074】
図4のピストン16の前進動作の場合、
図1の切替弁32のオフ時(時点t1前の時間帯)には、流体供給源42から減圧弁44、供給ポート38、第2接続ポート36及び第2配管30を介して第2シリンダ室22に圧力流体が供給される。これにより、ピストン16は、シリンダ本体14内の一端に押圧される。一方、第1シリンダ室20は、第1配管26及び第1接続ポート34を介して大気に連通しているので、第1シリンダ室20の流体は、第1配管26から切替弁32を介して排出されている。従って、時点t1前の時間帯では、第1圧力値P1が略0である共に、第2圧力値P2が所定圧力値(減圧弁44から出力される圧力流体の圧力値Pv)となる。
【0075】
次に、時点t1で
図2のマイクロコンピュータ62からソレノイド46に指令信号を供給すると、切替弁32が駆動してオンとなる。この結果、切替弁32での接続状態が切り替わり、流体供給源42から減圧弁44、供給ポート38、第1接続ポート34及び第1配管26を介した第1シリンダ室20への圧力流体の供給が開始される。一方、第2シリンダ室22が第2配管30及び第2接続ポート36を介して大気に連通することにより、第2配管30から切替弁32を介した外部への第2シリンダ室22の圧力流体の排出が開始される。
【0076】
これにより、時点t1から、第1配管26内の圧力流体の第1圧力値P1は、時間経過に伴って急激に増加すると共に、第2配管30内の圧力流体の第2圧力値P2は、時間経過に伴って急激に減少する。時点t2で第1圧力値P1が第2圧力値P2を上回る。
【0077】
その後、時点t3で、第1圧力値P1は、所定圧力値(例えば、時点t1以前の第2圧力値P2(圧力値Pv))まで上昇し、ピストン16は、矢印D方向への前進を開始する。この場合、ピストン16が矢印D方向への前進を開始すると、第1シリンダ室20の体積変化によって、第1圧力値P1は圧力値Pvから下降すると共に、第2圧力値P2も減少する。
【0078】
なお、
図4では、時点t3で第1圧力値P1が圧力値Pvまで上昇する場合を例示しているが、実際には、第1圧力値P1が圧力値Pvまで上昇する前にピストン16が矢印D方向への前進を開始する場合もある。以下の説明では、第1圧力値P1又は第2圧力値P2が圧力値Pv又はその近傍の値にまで上昇した後にピストン16が前進又は後退を開始する場合について説明する。
【0079】
ピストン16の前進中、第1シリンダ室20及び第2シリンダ室22の体積変化により、第1圧力値P1及び第2圧力値P2は、時間経過に伴って緩やかに減少する。この場合、第1圧力値P1及び第2圧力値P2は、略一定の第1差圧ΔP12(=P1−P2)を維持しながら減少する。
【0080】
時点t4でピストン16がシリンダ本体14内の他端(第1エンド端)に到達すると、第2シリンダ室22の体積は略0となる。そのため、時点t4以降、第2圧力値P2は、略0(大気圧)に低下すると共に、第1圧力値P1は、圧力値Pvに向かって上昇する。すなわち、ピストン16がシリンダ本体14内の他端に到達すると、第1差圧ΔP12は、一定値から急激に増加する。
【0081】
一方、
図5のピストン16の後退動作の場合、
図1の切替弁32のオン時(t5前の時間帯)には、流体供給源42から減圧弁44、供給ポート38、第1接続ポート34及び第1配管26を介して第1シリンダ室20に圧力流体が供給されており、ピストン16は、シリンダ本体14内の他端に押圧されている。一方、第2シリンダ室22は、第2配管30及び第2接続ポート36を介して大気に連通しているので、第2シリンダ室22の圧力流体は、第2配管30から切替弁32を介して排出されている。従って、時点t5前の時間帯では、第1圧力値P1が圧力値Pvであると共に、第2圧力値P2が略0である。
【0082】
次に、時点t5で
図2のマイクロコンピュータ62からソレノイド46への指令信号の供給を停止すると、切替弁32が駆動を停止してオフとなる。この結果、切替弁32のバネの弾発力によって、切替弁32での接続状態が切り替わり、流体供給源42から減圧弁44、供給ポート38、第2接続ポート36及び第2配管30を介した第2シリンダ室22への圧力流体の供給が開始される。一方、第1シリンダ室20が第1配管26及び第1接続ポート34を介して大気に連通することにより、第1配管26から切替弁32を介した外部への第1シリンダ室20の圧力流体の排出が開始される。
【0083】
これにより、時点t5から、第2配管30内の圧力流体の第2圧力値P2は、時間経過に伴って急激に増加する。その後、第1配管26内の圧力流体の第1圧力値P1は、時間経過に伴って急激に減少を開始する。この結果、時点t6で第2圧力値P2が第1圧力値P1を上回る。
【0084】
その後、時点t7で、第2圧力値P2は、所定圧力値(例えば、圧力値Pv)まで上昇し、ピストン16は、矢印C方向への後退を開始する。この場合、第2シリンダ室22の体積変化によって、第2圧力値P2は圧力値Pvから下降すると共に、第1圧力値P1も減少する。
【0085】
ピストン16の後退中、第1シリンダ室20及び第2シリンダ室22の体積変化により、第1圧力値P1及び第2圧力値P2は、時間経過に伴って緩やかに減少する。この場合、第1圧力値P1及び第2圧力値P2は、略一定の第2差圧ΔP21(=P2−P1)を維持しながら減少する。
【0086】
なお、
図4の第1差圧ΔP12の絶対値と、
図5の第2差圧ΔP21の絶対値とは、互いに異なる大きさとなる。これは、
図1のピストン16における第2シリンダ室22の側面(右側面)にピストンロッド18が連結されることにより、ピストン16における第1シリンダ室20の側面(左側面)と右側面との間で、受圧面積が異なることに起因したものである。
【0087】
時点t8でピストン16がシリンダ本体14内の一端に到達すると、第1シリンダ室20の体積は略0となる。そのため、時点t8以降、第1圧力値P1は、略0(大気圧)に低下すると共に、第2圧力値P2は、圧力値Pvに向かって上昇する。すなわち、ピストン16がシリンダ本体14内の一端に到達すると、第2差圧ΔP21は、一定値から急激に増加する。
【0088】
そして、本実施形態では、ピストン16の往復移動の動作中、上述した時点t4、t8での第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21の急激な変化を捉えることにより、シリンダ本体14内の一端(第2エンド端)又は他端(第1エンド端)にピストン16が到達したか否かを判定する。
【0089】
すなわち、
図1の第1圧力センサ50が検出した第1圧力値P1、及び、第2圧力センサ52が検出した第2圧力値P2は、
図2の入出力インターフェース部60を介して、マイクロコンピュータ62に逐次入力される。そこで、マイクロコンピュータ62は、第1圧力値P1及び第2圧力値P2が入力される毎に、
図3に示す判定処理を実行する。
【0090】
具体的に、
図3のステップS1において、マイクロコンピュータ62は、第1圧力値P1から第2圧力値P2を減算して第1差圧ΔP12を算出する。次に、マイクロコンピュータ62は、第1差圧ΔP12が、メモリ部68に予め格納された基準値としての第1基準差圧ΔP12refを超えているか否かを判定する。
【0091】
ΔP12>ΔP12refである場合(ステップS1:YES)、次のステップS2において、マイクロコンピュータ62は、ΔP12及びΔP12refの符号がプラスであるため、シリンダ本体14内の一端から他端に向かってピストン16が前進し、該他端にピストン16が到達した(ピストンロッド18がB位置に到達した)と判定する。
【0092】
そして、マイクロコンピュータ62は、ピストン16が該他端に到達したことを示す第1エンド端信号を生成し、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する。また、マイクロコンピュータ62は、その判定結果を表示部66に表示し、第1エンド端へのピストン16の到達をユーザに通知する。さらに、マイクロコンピュータ62は、この判定結果と、該判定結果に用いた第1差圧ΔP12とをメモリ部68に記憶する。
【0093】
次のステップS3において、ピストン16の往復動作が継続して行われる場合(ステップS3:NO)、マイクロコンピュータ62は、ステップS1の判定処理を繰り返し実行する。
【0094】
一方、ステップS1でΔP12≦ΔP12refの場合(ステップS1:NO)、次のステップS4において、マイクロコンピュータ62は、第2圧力値P2から第1圧力値P1を減算して第2差圧ΔP21を算出する。なお、マイクロコンピュータ62は、第1差圧ΔP12の符号を反転させて第2差圧ΔP21(=−ΔP12)を算出してもよい。次に、マイクロコンピュータ62は、第2差圧ΔP21が、メモリ部68に予め格納された基準値としての第2基準差圧ΔP21refを超えているか否かを判定する。
【0095】
ΔP21>ΔP21refである場合(ステップS4:YES)、次のステップS5において、マイクロコンピュータ62は、ΔP21及びΔP21refの符号がプラスであるため、シリンダ本体14内の他端から一端に向かってピストン16が後退し、該一端にピストン16が到達した(ピストンロッド18がA位置に到達した)と判定する。
【0096】
そして、マイクロコンピュータ62は、ピストン16が該一端に到達したことを示す第2エンド端信号を生成し、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する。また、マイクロコンピュータ62は、その判定結果を表示部66に表示し、第2エンド端へのピストン16の到達をユーザに通知する。さらに、マイクロコンピュータ62は、この判定結果と、該判定結果に用いた第2差圧ΔP21とをメモリ部68に記憶する。
【0097】
その後、ステップS3において、ピストン16の往復動作が継続して行われる場合(ステップS3:NO)、マイクロコンピュータ62は、ステップS1に戻り、該ステップS1の判定処理を繰り返し実行する。
【0098】
また、ステップS4でΔP21≦ΔP21refの場合(ステップS4:NO)、次のステップS6において、マイクロコンピュータ62は、シリンダ本体14内の一端又は他端にピストン16が到達していない(一端と他端との間にピストン16がある)と判定する。この場合、ステップS6での判定結果は、ステップS1、S4の判定処理を経たものであるため、マイクロコンピュータ62は、シリンダ本体14内の一端と他端との間にピストン16が存在する旨の判定結果と、この判定結果に用いられた第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21とをメモリ部68に記憶する。
【0099】
その後、ステップS3において、ピストン16の往復動作が継続して行われる場合(ステップS3:NO)、マイクロコンピュータ62は、ステップS1に戻り、該ステップS1の判定処理を繰り返し実行する。
【0100】
従って、マイクロコンピュータ62は、ピストン16の往復動作中、第1圧力値P1及び第2圧力値P2が入力される毎に、ステップS1〜S6の判定処理を繰り返し実行し、シリンダ本体14内の一端又は他端へのピストン16の到達の有無を判定する。
【0101】
また、ピストン16の往復移動中、タイマ70は、マイクロコンピュータ62からソレノイド46への指令信号の供給開始時刻で計時を開始し、当該時刻からピストン16が第1エンド端に到達するまでの移動時間Tを計時する。従って、マイクロコンピュータ62は、
図3のステップS1〜S6の判定処理と並行して、タイマ70が計時した移動時間Tをメモリ部68に記憶する処理も併せて行う。
【0102】
ステップS3でピストン16の往復移動の動作が完了した場合(ステップS3:YES)、次のステップS7において、マイクロコンピュータ62は、シリンダ12の動作状態の正常又は異常、さらには、初期状態からの性能劣化(中間状態)を判定する。
【0103】
図6は、シリンダ12が正常状態である場合(実線)、初期状態から性能が劣化している中間状態の場合(一点鎖線)、及び、故障等の異常が発生している異常状態の場合(破線)での移動時間Tの相違を図示したタイミングチャートである。
【0104】
シリンダ12の動作が正常状態にある場合、ピストン16は、移動時間T1内でシリンダ本体14内の一端と他端との間を移動する。また、シリンダ12の動作が正常であるものの初期状態から性能が劣化している中間状態の場合、ピストン16は、移動時間T1よりも長い移動時間T2でシリンダ本体14内の一端と他端との間を移動する。この場合、移動時間T1から時間ΔT経過するまでの時間帯が、シリンダ12の性能劣化が発生している時間帯(故障前の中間状態の時間帯)となる。さらに、移動時間T1から時間ΔT経過した移動時間T3を超える時間帯では、シリンダ12の故障等の異常が発生している異常状態の可能性がある。
【0105】
従来、シリンダ12の動作が正常状態にあるか、又は、故障等の異常状態にあるかについての判定処理は行われていた。しかしながら、故障までは至らないものの、シリンダ12の初期状態から性能が劣化している故障前の中間状態については、判断基準がなかったため、該中間状態に対する判定処理は行われていなかった。
【0106】
そこで、本実施形態では、
図7〜
図10に示す中間状態に対する判定処理も加味したシリンダ12の動作状態の判定処理を行う。
【0107】
ここでは、(1)ピストン16の往復動作中の第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21(t3〜t4の時間帯の第1差圧ΔP12、t7〜t8の時間帯の第2差圧ΔP21)を用いてシリンダ12の動作状態の判定処理を行う場合(
図7及び
図8参照)と、(2)ピストン16の往復動作の移動時間Tを用いてシリンダ12の動作状態の判定処理を行う場合(
図9及び
図10参照)とについて、それぞれ説明する。
【0108】
先ず、
図7及び
図8の判定処理について説明する。
【0109】
図7のステップS11において、マイクロコンピュータ62は、メモリ部68から、
図3のステップS6の判定結果に対応する第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21を読み出す。次に、マイクロコンピュータ62は、第1差圧ΔP12又は第2差圧ΔP21が第1差圧閾値X1未満であるか否かを判定する。
【0110】
ΔP12(ΔP21)<X1の場合(ステップS11:YES)、マイクロコンピュータ62は、次のステップS12において、シリンダ12の動作は正常状態にあると判定し、正常状態であった旨の判定結果を示す報知信号を、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する(ステップS13)。また、ステップS13において、マイクロコンピュータ62は、報知信号を表示部66に出力し、シリンダ12の動作が正常状態にあることを表示部66に表示させることにより、ユーザに報知する。
【0111】
ステップS11において、ΔP12(ΔP21)≧X1の場合(ステップS11:NO)、マイクロコンピュータ62は、次のステップS14において、X1≦ΔP12(ΔP21)<X2であるか否かを判定する。
【0112】
ステップS14で肯定的な判定結果であった場合(ステップS14:YES)、マイクロコンピュータ62は、シリンダ12の動作は正常であるものの、初期状態から性能が劣化している中間状態にあると判定する(ステップS15)。その後、マイクロコンピュータ62は、ステップS13において、シリンダ12の性能が劣化している中間状態である旨の判定結果を示す報知信号を、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する一方で、表示部66に出力し、シリンダ12の性能劣化(中間状態)を表示部66に表示させることにより、ユーザに報知する。
【0113】
さらに、ステップS14でΔP12(ΔP21)≧X2であった場合(ステップS14:NO)、マイクロコンピュータ62は、シリンダ12が異常状態にある(故障している)と判定する(ステップS16)。これにより、マイクロコンピュータ62は、ステップS13において、シリンダ12が故障している旨の判定結果を示す報知信号を、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する一方で、表示部66に出力し、シリンダ12の故障(異常状態)を表示部66に表示させることにより、ユーザに報知する。
【0114】
次に、
図9及び
図10の判定処理について説明する。
【0115】
移動時間Tを用いた判定処理では、
図9のステップS21において、マイクロコンピュータ62は、メモリ部68から移動時間Tを読み出し、移動時間Tが第1閾値時間ΔT1の範囲内であるか否かを判定する。
【0116】
移動時間Tが第1閾値時間ΔT1の範囲内にある場合(ステップS21:YES)、マイクロコンピュータ62は、次のステップS22において、シリンダ12の動作は正常状態にあると判定し、正常状態であった旨の判定結果を示す報知信号を、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する(ステップS23)。また、ステップS23において、マイクロコンピュータ62は、報知信号を表示部66に出力し、シリンダ12の動作が正常状態にあることを表示部66に表示させることにより、ユーザに報知する。
【0117】
ステップS21において、移動時間Tが第1閾値時間ΔT1から逸脱している場合(ステップS21:NO)、マイクロコンピュータ62は、次のステップS24において、移動時間Tが第2閾値時間ΔT2の範囲内であるか否かを判定する。
【0118】
移動時間Tが第2閾値時間ΔT2の範囲内にある場合(ステップS24:YES)、マイクロコンピュータ62は、シリンダ12の動作は正常であるものの、初期状態から性能が劣化している中間状態にあると判定する(ステップS25)。その後、マイクロコンピュータ62は、ステップS23において、シリンダ12の性能が劣化している中間状態である旨の判定結果を示す報知信号を、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する一方で、表示部66に出力し、シリンダ12の性能劣化(中間状態)を表示部66に表示させることにより、ユーザに報知する。
【0119】
さらに、ステップS24で移動時間Tが第2閾値時間ΔT2から逸脱している場合(ステップS24:NO)、マイクロコンピュータ62は、シリンダ12が異常状態にある(故障している)と判定する(ステップS26)。これにより、マイクロコンピュータ62は、ステップS23において、シリンダ12が故障している旨の判定結果を示す報知信号を、入出力インターフェース部60を介して外部に出力する一方で、表示部66に出力し、シリンダ12の故障(異常状態)を表示部66に表示させることにより、ユーザに報知する。
【0120】
従って、
図7〜
図10の処理では、正常状態、中間状態又は異常状態のいずれの判定結果でも、報知信号として外部に出力され、又は、表示部66に表示される。そのため、上位システムの管理者又はユーザは、報知信号の内容又は表示部66の表示内容に基づいて、例えば、異常状態の判定結果であれば、シリンダ12を含む流体システムを停止する等の適切な対応を取ることができる。
【0121】
また、本実施形態では、
図7及び
図8の処理、又は、
図9及び
図10の処理のうち、いずれか一方の処理が行われる。但し、メモリ部68に差圧ΔP12、ΔP21及び移動時間Tが記憶されているので、マイクロコンピュータ62は、ピストン16の往復移動の終了後に、
図7及び
図8の処理と、
図9及び
図10の処理との双方を実行し、正常状態、中間状態又は異常状態の判定を行うことも可能である。
【0122】
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る監視装置10によれば、流体供給源42から第1シリンダ室20又は第2シリンダ室22への流体の供給経路の圧力(第1配管26内の第1圧力値P1、第2配管30内の第2圧力値P2)を検出することにより、第1シリンダ室20又は第2シリンダ室22の圧力値を検出することが可能となる。従って、本実施形態では、シリンダ12近傍にセンサを設置することが不要となる。
【0123】
また、マイクロコンピュータ62は、第1シリンダ室20の圧力値に応じた第1圧力値P1と、第2シリンダ室22の圧力値に応じた第2圧力値P2との第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21に基づいて、ピストン16の往復移動の動作が中間状態にあるか否かを判定する。このように、中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が付加されることにより、シリンダ12が正常な動作であっても、初期状態から性能が劣化した中間状態を判断することができる。
【0124】
また、ピストン16の往復移動中、第1圧力センサ50は、第1圧力値P1を検出し、第2圧力センサ52は、第2圧力値P2を検出し、マイクロコンピュータ62は、第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21を算出してメモリ部68に記憶する。マイクロコンピュータ62は、往復移動の動作の終了後に、メモリ部68に記憶された第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21に基づいて、往復移動の動作が中間状態にあるか否かを判定する。
【0125】
これにより、ピストン16の往復移動中に算出した第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21を、往復移動の動作終了後に解析するので、往復移動の動作が中間状態にあるか否かの判定を精度良く行うことができる。この結果、判定結果の信頼性を高めることができる。
【0126】
また、ピストン16の往復移動中の第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21は、略一定であることが知られている。そのため、第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21のレベルが変化することは、シリンダ12(の動作に関わる部品)の劣化又は故障等の異常が発生していると捉えることができる。そのため、マイクロコンピュータ62は、第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21に基づいて判定することにより、往復移動の動作に対する判定処理を効率よく行うことができる。
【0127】
また、第1配管26に第1圧力センサ50が設けられると共に、第2配管30に第2圧力センサ52が設けられるので、シリンダ12近傍へのセンサの設置、及び、該センサに対する配線が不要となる。この結果、食品関係の設備にシリンダ12を好適に用いることができ、その洗浄工程でのセンサ及び配線の腐食等の発生を回避することができる。
【0128】
そして、マイクロコンピュータ62は、
図7に示す判定処理を行うことにより、往復移動の動作について、正常状態、中間状態及び異常状態の判定をそれぞれ行うことが可能となる。また、基準値としての第1差圧閾値X1及び第2差圧閾値X2を用いて中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が行われるので、正常な動作であっても初期状態から性能が劣化した中間状態を容易に判定することができる。
【0129】
また、タイマ70は、ピストン16がシリンダ本体14内の一端又は他端から移動を開始した時点より、該ピストン16がシリンダ本体14内の他端又は一端に到達して第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP21が一定値から増加する時点までを移動時間Tとして計時し、マイクロコンピュータ62は、移動時間Tに基づいて、ピストン16の往復移動の動作が中間状態にあるか否かを判定する。
【0130】
移動時間Tが変化すれば、シリンダ12(の動作に関わる部品)の劣化又は故障等の異常が発生していると捉えることができる。そのため、マイクロコンピュータ62は、移動時間Tに基づいて、往復移動の動作に対する判定処理を効率よく行うことができる。
【0131】
そして、マイクロコンピュータ62は、
図9に示す判定処理を行うことにより、往復移動の動作について、正常状態、中間状態及び異常状態の判定をそれぞれ行うことができる。また、基準値としての第1閾値時間ΔT1及び第2閾値時間ΔT2を用いて中間状態に対する判定処理(故障予知機能)が行われるので、正常な動作であっても初期状態から性能が劣化した中間状態を容易に判定することができる。
【0132】
また、本実施形態では、上述の中間状態を故障等の異常に対する警告状態と位置付けることで、シリンダ12が故障に至る前に、監視装置10の上位システム等に該シリンダ12の性能劣化を報知することができる。これにより、シリンダ12のメンテナンス時期をユーザに通知することが可能となり、システム全体のダウンタイムを最小限にすることができる。
【0133】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。