特許第6868306号(P6868306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868306
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】細胞導入剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/32 20060101AFI20210426BHJP
   C12N 15/87 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C01B25/32 B
   !C12N15/87 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-521531(P2019-521531)
(86)(22)【出願日】2017年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2017019853
(87)【国際公開番号】WO2018220665
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】596036256
【氏名又は名称】株式会社ビーエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】赤池 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光昭
(72)【発明者】
【氏名】関 禎子
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−509838(JP,A)
【文献】 特開2009−007547(JP,A)
【文献】 特開2017−088601(JP,A)
【文献】 後藤光昭 他,セラミックス,Vol.52, No.3 (2017 Mar),p.138-141
【文献】 平塚崇浩 他,化学工業,Vol.59 No.4 (2008),p.280-285
【文献】 RUSSO L. et al.,Carbohydrate Research,346 (2011),p.1564-1568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/32
C12N 15/87
A61K 9/51
A61K 47/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸、炭酸、及びカルシウムを含むアパタイトからなる複合体粒子の製造方法であって、該複合体粒子の平均粒径が、10nm以下であり、
カルシウムイオン、リン酸イオン、及び炭酸水素イオンを含有する組成物を調製することにより、前記複合体粒子を形成する工程であって、リン酸イオンが10倍濃度のPBSである工程、そして
得られた複合体粒子を1/10に希釈する工程
を含む、複合体粒子の製造方法。
【請求項2】
リン酸、炭酸、及びカルシウムを含むアパタイトからなる複合体粒子の製造方法であって、該複合体粒子の平均粒径が、70〜130nmであり、
カルシウムイオン、リン酸イオン、及び炭酸水素イオンを含有する組成物を調製することにより、前記複合体粒子を形成する工程であって、リン酸イオンが10倍濃度のPBSであり、該工程が、4℃〜20℃で行われる工程
を含む、複合体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖高分子で被覆された複合体粒子を含む、細胞導入剤であって、複合体粒子が、リン酸、炭酸、及びカルシウムを含むアパタイトからなる、細胞導入剤に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞へのDNAの導入は遺伝子の構造、機能および制御に関する極めて有効な研究手法となっており、遺伝子治療やDNAワクチンなどの分野で期待されている。従来の遺伝子導入法としては、レトロウイルス、アデノウイルスなどの組換え体を遺伝子治療用のベクターとして用いるウイルス法が一般的である。
【0003】
しかし、ウイルスは、それ自体の毒性や免疫原性等の危険性が問題として指摘されている。また、適用可能な遺伝子のサイズの制限や高価格等の問題点が知られている。
【0004】
このため、基礎研究や遭伝子治療への応用のために、ウイルスベクターに代わるウイルスを用いない遺伝子導入(トランスフェクション)技術の開発が現在盛んになされている。非ウイルス性遺伝子導入方法としては、DNAとカルシウムの共沈物を用いるリン酸カルシウム法、リポソーム等のカチオン性脂質とアニオン性のDNAとの複合体粒子を形成するリポフェクション法等が様々な方法が知られている。
【0005】
ポリヌクレオチド等の目的の物質を細胞内導入するための細胞導入剤として、リン酸カルシウム系材料からなる細胞導入が知られている(特許文献1)。
【0006】
しかし、これらの細胞導入剤には、生体適合性に欠けるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/043376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生体適合性に優れた細胞導入剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、リン酸カルシウム系材料からなる複合体粒子を糖鎖高分子で被覆することによって、生体適合性を付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の細胞導入剤は、生体適合性に優れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ポリリジン−ラクトビオン酸のH−NMRスペクトルである。1.3〜1.8ppmは、ポリリジンに由来するピーク、2.7〜4.2ppmは糖鎖に由来するピークである。
図2】ポリリジン−N−アセチルグルコサミンのH−NMRスペクトルである。0.3〜1.8ppmは、ポリリジンに由来するピーク、2.7〜4.2ppmは糖鎖に由来するピークである。
図3】3T3細胞と、実施例で作成したpEGFP−N2プラスミドを含有する各種糖鎖高分子コートの炭酸アパタイトナノ粒子と相互作用させた後、24時間後の蛍光写真である。
図4】Hela細胞と、実施例で作成したpEGFP−N2プラスミドを含有する各種糖鎖高分子コートの炭酸アパタイトナノ粒子と相互作用させた後、24時間後の蛍光写真である。
図5】HepG2細胞と、実施例で作成したpEGFP−N2プラスミドを含有する各種糖鎖高分子コートの炭酸アパタイトナノ粒子と相互作用させた後、24時間後の蛍光写真である。
図6】3T3細胞と、実施例で作成したpT2−RFPプラスミドを含有する各種糖鎖高分子コートの炭酸アパタイトナノ粒子と相互作用させた後、24時間後の蛍光写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の細胞導入剤は、目的物質を極めて効率的に細胞内に導入することができる。目的物質は、限定されることはないが、薬剤、タンパク質、及びポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0014】
本発明の細胞導入剤は、糖鎖高分子で被覆された複合体粒子を含むことを特徴とする。この複合体粒子は、リン酸、炭酸、及びカルシウムを含むアパタイトからなる。
【0015】
本発明の複合体粒子は、従来公知の方法によって製造することができる。たとえば、リン酸イオン及び炭酸イオンを含む溶液にカルシウムイオンを含む溶液を加えることによって、本発明のアパタイトを製造することができる。
【0016】
本発明において、複合体粒子を構成するリン酸カルシウム系材料は、CaとPO4を主要成分とする材料である。本発明においては、リン酸カルシウム系材料がアパタイト類であることが好ましい。アパタイト類としては、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト等を用いることができるが、特に炭酸アパタイトを用いることが好ましい。
【0017】
本発明に好適に用いられる炭酸アパタイトは、Ca10-mm(PO46(CO31-nnで表される。ここで、Xは、炭酸アパタイトにおけるCaを部分的に置換しうる元素であり、例えばSr、Mn、希土類元素等を例示できる。mは、0以上1以下の正数であり、0以上0.1以下であることが好ましく、0以上0.01以下であることがより好ましく、0以上0.001以下であることが特に好ましい。また、Yは、炭酸アパタイトにおけるCO3を部分的に置換しうる単位であり、OH、F、Cl等を例示できる。nは、0以上0.1以下の正数であり、0以上0.01以下であることが好ましく、0以上0.001以下であることがより好ましく、0以上0.0001以下であることが特に好ましい。
【0018】
本発明の複合体粒子は、それを含む溶液に糖鎖高分子を加えることによって、糖鎖高分子によって被覆することができる。
【0019】
本発明の糖鎖高分子の主鎖は、従来公知の任意の高分子であることができる。好ましくは、糖鎖高分子の主鎖は、ポリリジン、キトサン、ポリグルタミン酸又はポリエチレンイミンである。
【0020】
本発明の細胞導入剤に含まれる複合体粒子の平均粒径は、500nm以下であることが好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。複合体粒子の平均粒径が小さいほど、複合体粒子の細胞内への取り込み効率を向上させることができる。複合体粒子の平均粒径の下限については特に限定はないが、通常は1nm以上である。
【0021】
本発明の糖鎖高分子に導入する糖鎖は、従来公知の任意の糖鎖を用いることができる。本発明で糖鎖とは、各種の糖がグリコシド結合によってつながりあった化合物であり、結合した等の数は、2つ以上である。本発明の糖鎖高分子に導入する糖鎖の末端は、ガラクトース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、フコース、又はシアル酸であることが好ましい。
【0022】
本発明に使用可能な薬剤の具体例としては、抗癌剤および抗腫瘍抗生物質を挙げることができる。抗癌剤の具体例には、メトトレキセート(Methotrexate、抗葉酸剤)、ビンブラスチン(Vinblastine、ビンカアルカロイド)、アントラサイクリン(Antracyclines;ダウノマイシン(Daunomycin)、アドリアマイシン(Adriamysin))が含まれる。抗腫瘍抗生物質にはドゥオカルマイシン(Duocarmycin)、エネダインズ(Enediynes)、ネオカルジノスタチン(Neocarzinostatin)、カリケアマイシン(Calicheamicin)、マクロライド(Macrolide)を含む。このような薬剤を用いて複合体粒子を形成することにより、薬剤の細胞内導入効率を向上させることができるため、各種の疾患治療に好適に利用することができる。
【0023】
ポリヌクレオチドとしては、DNA、RNAのいずれも使用することができる他、DNAおよびRNAからなる混成ポリヌクレオチド等も使用することができる。例えば、本発明の細胞導入剤を用いて遺伝子組換えを行う場合は、発現させようとする遺伝子を含むベクターDNAを用いて複合体粒子を形成すればよい。ここでDNAとしては、環状のプラスミドDNA、直鎖プラスミドDNA、人工染色体、三重鎖DNAなどのいかなるDNAを用いてもよい。あるいは、細胞機能を調整することができるRNA、例えばアンチセンスRNA、RNA干渉を生じさせるsiRNAを用いて複合体粒子を形成してもよい。
【0024】
本発明の細胞導入剤は前記複合体粒子を含有するものである。本発明の細胞導入剤は、目的の物質を変性させることなく細胞に導入できる限り、その剤型には特別の制限がなく、粉末、固形物、溶液等、どのような剤型であっても構わない。
【0025】
本発明において、目的物質を導入する標的となる細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等の各種細胞を使用することができる。このうち、動物細胞、中でも哺乳類細胞を好ましく使用することができる。目的物質を導入する標的となる細胞は、in vitro、in vivoのいずれも含まれる。すなわち、培養細胞、培養組織、生体などいかなる細胞を用いてもよい。
【0026】
培養細胞を用いる場合は、本発明の細胞導入剤を含有する培地を調製し、この培地を用いて通常の培養条件にて培養することによって、細胞内に目的物質を導入することができる。
【0027】
また、本発明の細胞導入剤を各種疾患治療のための医薬として用いる場合は、例えば、薬理活性を有する物質とリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子を含む細胞導入剤を調製し、これを哺乳類動物(ヒトを含む)の皮下や筋肉内、腹腔内あるいは血管内等に投与して、生体細胞に薬理活性を有する物質を直接導入することもできる。
【0028】
また、遺伝子治療のための医薬として用いる場合、細胞機能を調整することができるポリヌクレオチド(例えば、ベクターDNA、アンチセンスRNA、RNAi等)とリン酸カルシウム系材料から構成される複合体粒子を含む細胞導入剤を調製し、対象とする細胞への導入及び発現させることができる。遺伝子治療を行う対象となる疾患としては、例えば、癌又は遺伝病などの疾患が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0030】
市販のPBS粉末(Gibco)を濃度10倍になるように作成し、その50mlに炭酸水素ナトリウム2.05gを溶解し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−GFP)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、塩化カルシウム溶液(1M)を5.2ml添加し、30分、37℃でインキュベートした。その後、生理食塩水9mlに上記溶液を1ml添加し、直ちにバス型ソニケーター(US−10PS、エスエヌディー)にて一分間超音波処理した。その後、すぐにDLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。糖鎖コーティングを施す場合には、生理食塩水で希釈する際に糖鎖高分子を所定量(5.2ml)添加した。
この10倍濃度のPBSから作製した炭酸アパタイトナノ粒子の希釈前の粒径(nm)の平均値(散乱強度)は、2343.6±4071.0(ピーク1:247.2±154.9、ピーク2:7775.5±4308.1)であるのに対し、希釈後では、平均値(個数換算)8.5±2.2であった。このように高濃度で作成した炭酸アパタイトナノ粒子を希釈することにより簡便に平均粒径が、6〜11nmの炭酸アパタイトナノ粒子を作成することができた。
【0031】
市販のPBS粉末(Gibco)を濃度10倍になるように作成し、その50mlに炭酸水素ナトリウム2.05gを溶解し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−GFP)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、塩化カルシウム溶液(20mM)を5.2ml添加し、30分、4,20,37℃でインキュベートした。その後、生理食塩水9mlに上記溶液を1ml添加し、その後、すぐにDLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。糖鎖コーティングを施す場合には、生理食塩水で希釈する際に糖鎖高分子を所定量(5.2ml)添加した。
この10倍濃度のPBSから作製した炭酸アパタイトナノ粒子の希釈前の粒径(nm)の平均値(散乱強度)は、37℃で作製したとき個数換算で、1170〜1390nmであるのに対し、20℃では、72.2〜106nm、4℃では、101〜127nmであった。このことから、低温下で作製することにより、平均粒径が、70〜130nmの炭酸アパタイトナノ粒子を作成することができた。
【0032】
市販のDMEM50mlに炭酸水素ナトリウム185mg(2.2mmol)を添加し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−GFPあるいは、pT2―RFP、あるいはpEGFP−N2)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、この溶液1mlに塩化カルシウム溶液(1M)を5μl添加し、30分、37℃でインキュベートした。これを所定の細胞数で培養した細胞培養シャーレ(6穴シャーレ、細胞数1x10/ml)に100μlずつ添加し、一昼夜培養した後、GFPの発現量を定量化した。糖鎖コーティングを施す場合には、塩化カルシウムを添加する前に糖鎖高分子を所定量(5μl)添加した。結果を図3〜5に示した。
このデータから3T3細胞、Hela細胞、HepG2細胞のいずれにおいても、糖鎖によって細胞へのプラスミドの導入に差異が生じており、細胞内でのGFPの発光が異なっていた。特に、ラクトース、N-アセチルグルコサミンで増加、マンノースで減少となり、糖鎖間で異なることがわかる。従って、細胞での糖鎖認識とその後の炭酸アパタイトナノ粒子の取り込みが変化していることが明らかになった。
【0033】
市販のPBS粉末(Gibco)を濃度10倍になるように作成し、その50mlに炭酸水素ナトリウム2.05gを溶解し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−GFP)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、塩化カルシウム溶液(1M)を5.2ml添加し、30分、37℃でインキュベートした。その後、純水9mlに上記溶液を1ml添加し、直ちにバス型ソニケーター(US-10PS、エスエヌディー)にて一分間超音波処理した。その後、すぐにDLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。糖鎖コーティングを施す場合には、純水で希釈する際に糖鎖高分子を所定量(5.2ml)添加した。
【0034】
市販のPBS粉末(Gibco)を濃度10倍になるように作成し、その50mlに炭酸水素ナトリウム2.05gを溶解し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−GFP)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、塩化カルシウム溶液(20mM)を5.2ml添加し、30分、37℃でインキュベートした。その後、純水9mlに上記溶液を1ml添加し、直ちにバス型ソニケーター(US−10PS、エスエヌディー)にて10分間超音波処理した。その後、調製した溶液5mlとPLys−LA(0.0001、0.001、0.005、及び0.01%)5mlとを混合し、経時変化(0、5、10、及び15分後)を、DLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。その結果、ポリマー濃度が0.005%以上では、平均粒径が20nm以下の炭酸アパタイトナノ粒子が作製できた(表1)。また、この粒径は他のポリマーを用いても同様の結果を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
市販のPBS粉末(Gibco)を濃度10倍になるように作成し、その50mlに炭酸水素ナトリウム2.05gを溶解し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−GFP)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、塩化カルシウム溶液(20mM)を5.2ml添加し、30分、37℃でインキュベートした。その後、純水9mlに上記溶液を1ml添加し、直ちにバス型ソニケーター(US−10PS、エスエヌディー)にて10分間超音波処理した。その後、経時変化(0、5、10、30、及び35分後)を、DLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。糖鎖コーティングを施す場合には、調製した溶液5mlとPLys−LA(0.005%)5mlとを混合し、経時変化(15、20、25、45及び50分後)を、DLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。その結果、
【0037】
【表2】
【0038】
市販のDMEM50mlに炭酸水素ナトリウム185mg(2.2mmol)を添加し、pHを7.4に調整した。これに、GFPの発現遺伝子を組み込んだベクター(pT2−RFP)を1μg/mlの濃度となるように添加して、30分インキュベートした。その後、この溶液1mlに塩化カルシウム溶液(20mM)を5μl添加し、30分、37℃でインキュベートした。これを所定の細胞数で培養した細胞培養シャーレ(6穴シャーレ、細胞数1x10/ml)に100μlずつ添加し、一昼夜培養した後、RFPの発現量を定量化した。糖鎖コーティングを施す場合には、塩化カルシウムを添加前か、又は塩化カルシウムを添加後30分間インキュベーション前に糖鎖高分子を所定量(5μl)添加した。また、同様にマンノース−6−リン酸等のリン酸化糖を2.2mMの濃度でコーティングした。
【0039】
20mMCaを添加した後にPlys−糖コートすると300〜600nmのアパタイトが形成されるが、20mMCaを添加する前にPLys−糖コートを実施すると30〜50nmのアパタイトが形成された。
【0040】
図6からは、糖鎖認識に応じて3T3細胞への取り込みが変化し、炭酸アパタイトナノ粒子に糖鎖がコーティングされ取り込まれていることがわかる。同様にマンノース−6−リン酸コート炭酸アパタイトナノ粒子も糖鎖認識され細胞に取り込まれている。
【0041】
各種分子量のポリ−L−リジン1g(Sigma−Aldrich)を10mlのTEMEDバッファー(10mM、pH4.0)に溶解し水溶液とした。これにラクトビオン酸500mgを、添加した後、30分間撹拌した後、EDCの500mg(東京化成)を添加した。その後、3日間撹拌、反応させた。得られた糖鎖高分子は、純水60Lに対して透析したのち、凍結乾燥を行って、目的物を得た。
この合成は、公開番号、特開平7−90080の方法に従って行った。
【0042】
糖鎖は、ガラクトース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンの2量体や誘導体を用いて、上記同様にして合成し、目的物を得た。
【0043】
各種分子量のポリ−L−リジン1g(Sigma−Aldrich)を10mlのホウ酸バッファー(100mM、pH8.0)に溶解し水溶液とした。これにラクトビオン酸200mgを、添加した後、2日間撹拌した後、シアノ化ホウ素ナトリウムの200mg(和光)を添加した。その後、3日間撹拌、反応させた。得られた糖鎖高分子は、純水60Lに対して透析したのち、凍結乾燥を行って、目的物を得た(図1及び2)。
【0044】
糖鎖は、ガラクトース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンの2量体や誘導体を用いて、上記同様にして合成し、目的物を得た。
【0045】
各種分子量のポリエチレンイミン1g(Sigma−Aldrich)を10mlのホウ酸バッファー(100mM、pH8.0)に溶解し水溶液とした。これにラクトビオン酸200mgを、添加した後、2日間撹拌した後、シアノ化ホウ素ナトリウムの200mg(和光)を添加した。その後、3日間撹拌、反応させた。得られた糖鎖高分子は、純水60Lに対して透析したのち、凍結乾燥を行って、目的物を得た。
【0046】
糖鎖は、ガラクトース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンの2量体や誘導体を用いて、上記同様にして合成し、目的物を得た。
【0047】
各種分子量のキトサン1g(Sigma−Aldrich)を10mlのTEMEDバッファー(10mM、pH4.0)に溶解し水溶液とした。これにラクトビオン酸500mgを、添加した後、30分間撹拌した後、EDCの500mg(東京化成)を添加した。その後、3日間撹拌、反応させた。得られた糖鎖高分子は、純水60Lに対して透析したのち、凍結乾燥を行って、目的物を得た。
【0048】
糖鎖は、ガラクトース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンの2量体や誘導体を用いて、上記同様にして合成し、目的物を得た。
【0049】
PBS 50mlに炭酸水素ナトリウム0.185gを加えてpH7.4に調整した。これに、ポリリジン−LA(ラクトース結合ポリリジン)を最終濃度0.01、0.001、0.0001w/v%となるように添加した後、塩化カルシウム溶液を所定量添加して、直ちにバス型ソニケーター(US-10PS、エスエヌディー)にて一分間超音波処理した。その後、すぐにDLS(Malvern ゼータサイザーナノZS90及び大塚電子 DLS−1000)で粒径を測定した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の細胞導入剤は、目的の物質を細胞内に導入するために有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6