特許第6868362号(P6868362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6868362-吸収性物品 図000002
  • 特許6868362-吸収性物品 図000003
  • 特許6868362-吸収性物品 図000004
  • 特許6868362-吸収性物品 図000005
  • 特許6868362-吸収性物品 図000006
  • 特許6868362-吸収性物品 図000007
  • 特許6868362-吸収性物品 図000008
  • 特許6868362-吸収性物品 図000009
  • 特許6868362-吸収性物品 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868362
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20210426BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20210426BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20210426BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61F13/532 200
   A61F13/15 144
   A61F13/15 140
   A61F13/511 200
   A61F13/47 100
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-190973(P2016-190973)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-50988(P2018-50988A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】永島 真里子
【審査官】 住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−033325(JP,A)
【文献】 特開2016−077857(JP,A)
【文献】 特開2015−047432(JP,A)
【文献】 特開2004−255164(JP,A)
【文献】 特表2005−511246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートの肌当接面であって着用者の排尿口対応領域の少なくとも一部を含む領域に、前記裏面シート側に窪む窪み部が形成されるとともに、前記透液性表面シートの排尿口対応領域及び前記窪み部以外の領域に吸収性物品の性能を高める薬剤が塗布され、前記排尿口対応領域及び前記窪み部には前記薬剤が塗布されていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記薬剤は、撥水剤、親水剤又はスキンケア剤からなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記窪み部は、吸収性物品の長手方向に長い溝形、円形、楕円形、多角形及び星形のいずれか又はこれらの群の中から選択した複数の形状を組み合わせた形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記薬剤の塗布面積は、前記透液性表面シートが肌側に露出する部分の面積の50%以上である請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記薬剤を塗布しない領域は、前記排尿口対応領域及び前記窪み部より広い範囲とされている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記透液性表面シートは、前記薬剤を塗布しない領域の非肌側に間欠的なパターンで設けられた接着部により、下層側の部材と接合されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には失禁パッド、生理用ナプキン、おりものシート、医療用パッド、トイレタリー、使い捨ておむつ等に使用される吸収性物品に係り、排尿口部に対応する領域に窪み部が形成されるとともに、表面シートの所定領域に吸収性物品の性能を高める薬剤が塗布された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、表面シートとの間に粉砕パルプ等の紙綿からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
吸収スピードの向上や逆戻りの低減、べたつき感の改善など、吸収性物品の性能を高めるため、表面シートに薬剤を塗布(外添)する技術が存在する。このようなものとしては、例えば、(1)綿繊維(コットン)を素材とした親水性の表面シートに撥水剤を塗布したもの、(2)合成繊維を素材とした疎水性の表面シートに親水剤を塗布したもの、などが一般的である。
【0004】
下記特許文献1では、40〜100重量%の綿繊維と60〜0重量%の合成繊維とからなるスパンレース不織布に撥水剤が塗布されてなる吸収性物品が開示されている。また、下記特許文献2では、表面シートの肌面側の面に、38℃でゲル状態を維持することのできる疎水性のゲル状組成物が間欠的に塗工されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−269029号公報
【特許文献2】特開2016−13207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されるように、表面シートが綿繊維からなる吸収性物品は、下着のような柔らかい肌触りを実現できる利点を有するものの、保水性が高いため多量の体液が排出された場合、この体液が表面シートに残り、長時間の着用によりムレやかぶれなどの原因となっていた。上記特許文献1記載の吸収性物品では、このような綿繊維からなる表面シートの液残りを改善するため、撥水剤の塗布により肌当接面の吸水度を十分に低く確保する対策がなされているが、次の問題があった。
(1)排尿により撥水剤が流れ落ちるため、表面シートの撥水効果が最適な初期状態から低下してしまう。
(2)塗布量を多くしたり撥水効果の高い撥水剤を用いることにより表面シートの撥水性を大きくし過ぎた場合には、体液が表面シートの表面をはじいて伝い漏れの原因となるため、撥水性を一定以上に高めることができず、逆戻りや液残りが生じやすい。
(3)排尿口領域にも撥水剤が塗布されているため、排出された直後の体液が撥水剤の撥水作用により表面シートを透過しにくく、吸収体への素早い移行が阻害されていた。
【0007】
一方で、表面シートの素材として合成繊維を用いた軽失禁パッドなどでは、排尿が生じるまで長時間装着し続けることが多く、装着中に汗でムレやすいという問題があった。このムレ対策として、表面シートに親水剤を塗布することによって、表面シートに吸湿効果を持たせ、装着中のムレを軽減する対策が成されているが、排尿により親水剤が流れ落ちるため、表面シートの吸湿効果が最適な初期状態から低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、表面シートのほぼ全面に薬剤が塗布され、表面シートのほぼ全面が肌面に密着しているため、表面シートの体液が浸透しにくい部分(撥水剤が塗布された部分又は疎水性の素材からなる部分)では、吸収体に素早く体液が移行しにくくなる問題があり、表面シートの体液が浸透しやすい部分では、表面シートが肌に密着しているため、排尿後にべたつき感が生じるとともに、逆戻りがあったときに逆戻りした液が肌に付着しやすい問題があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、薬剤の流れ落ちを軽減するとともに、薬剤による効果が最適な所期状態から低下してしまうのを防止し、更に排尿口領域での不快感を防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートの肌当接面であって着用者の排尿口対応領域の少なくとも一部を含む領域に、前記裏面シート側に窪む窪み部が形成されるとともに、前記透液性表面シートの排尿口対応領域及び前記窪み部以外の領域に吸収性物品の性能を高める薬剤が塗布され、前記排尿口対応領域及び前記窪み部には前記薬剤が塗布されていないことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記透液性表面シートの肌当接面であって着用者の排尿口部対応領域の少なくとも一部を含む領域に、前記裏面シート側に窪む窪み部が形成されるとともに、前記透液性表面シートの排尿口対応領域及び前記窪み部以外の領域に吸収性物品の性能を高める薬剤が塗布され、前記排尿口対応領域及び前記窪み部には前記薬剤が塗布されていないため、排尿口対応領域において尿による薬剤の流れ落ちがなく、排尿後も薬剤によって吸収性物品の性能が高められた初期の状態が維持される。また、排尿口対応領域には薬剤が塗布されないため、前記薬剤として撥水剤を用いた場合、排出直後の尿がはじかれるといったデメリットが生じないので、薬剤の塗布量を多くしたり、撥水効果の高い薬剤を用いて、薬剤によって吸収性物品の性能を十分に高めることができるようになるとともに、排尿口対応領域では前記撥水剤によって透液性表面シートの液透過性が低下することがないため、尿が素早く吸収体に吸収されるようになる。また、このとき問題となる透液性表面シートの液残りや逆戻りに対しては、排尿口対応領域に形成された窪み部によって、透液性表面シートが直接肌面に接触するのが防止されているため、前記窪み部の表面シートに液残りや逆戻りが生じても表面シートに保持された体液を感じにくい構造とすることにより解決が図られている。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記薬剤は、撥水剤、親水剤又はスキンケア剤からなる請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、前記薬剤として撥水剤、親水剤又はスキンケア剤を用いている。透液性表面シートが綿繊維などの親水性の素材からなる場合、前記薬剤として撥水剤を用いるのが好ましい。透液性表面シートが綿繊維からなる場合、綿繊維の保水性により表面シートに液残りが生じるため、綿繊維の保液性を低下させるのに撥水剤を塗布している。このとき、本吸収性物品では、排尿口対応領域及び窪み部には撥水剤を塗布していないため、排尿口対応領域において排尿に伴う撥水剤の流れ落ちがないとともに、透液性表面シートの液透過性を低下させることがなく、素早く吸収体に吸収されるようになる。また、吸収体に吸収された体液が逆戻りしようとしても、排尿口対応領域以外の領域では、透液性表面シートに塗布された撥水剤によって、表面への液戻りが生じにくいとともに、排尿口対応領域では、撥水剤が塗布されないため透液性表面シートへの液戻りが生じるが、この部分が非肌側に窪む窪み部となっているため、表面に逆戻りした体液が肌面に接触しにくく、べた付きなどの不快感が生じることがない。
【0014】
一方、透液性表面シートが合成繊維などの疎水性の素材からなる場合、前記薬剤として親水剤を用いるのが好ましい。軽失禁パッドなどのように失禁があるまで長時間装着し続ける場合には、装着中に汗でムレが生じやすいため、透液性表面シートに親水剤を塗布することにより吸湿効果を高めることができる。このとき、本吸収性物品では、排尿口対応領域及び窪み部には前記親水剤を塗布していないため、排尿によって親水剤が流れ落ちることがなく、初期の最適な吸湿状態が維持できるようになる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記窪み部は、吸収性物品の長手方向に長い溝形、円形、楕円形、多角形及び星形のいずれか又はこれらの群の中から選択した複数の形状を組み合わせた形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記窪み部の平面形状について具体的に規定している。前記窪み部は、排尿口対応領域に排出された尿を素早く吸収体に移行させることができるとともに、着用者の排尿口部に接触しにくい平面形状で形成するのが好ましい。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記薬剤の塗布面積は、前記透液性表面シートが肌側に露出する部分の面積の50%以上である請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、前記薬剤の塗布面積が小さすぎると逆戻りが多くなったり、吸湿効果が十分でないことがあるため、透液性表面シートが肌側に露出する部分の面積の50%以上としている。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記薬剤を塗布しない領域は、前記排尿口対応領域及び前記窪み部より広い範囲とされている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記薬剤を塗布しない領域を、排尿口対応領域及び窪み部より広い範囲とすることによって、排尿口対応領域及び窪み部を確実に薬剤を塗布しない領域としている。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記透液性表面シートは、前記薬剤を塗布しない領域の非肌側に間欠的なパターンで設けられた接着部により、下層側の部材と接合されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、透液性表面シートの前記薬剤を塗布しない領域の非肌側に間欠的なパターンで設けられた接着部により、透液性表面シートを下層側の部材と接合することによって、透液性表面シートと下層側の部材とが薬剤を塗布しない領域で密着するため、体液が表面シートから下層側の部材へと移行しやすくなる。接着部によって体液の透過を妨げないため、接着パターンは間欠的なパターンとしている。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、薬剤の流れ落ちが軽減できるとともに、薬剤によって表面シートの透液性が阻害されず、排尿口領域での不快感が防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る失禁パッド1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】尿の流れを示す、窪み部10の断面斜視図である。
図4】(A)〜(D)は、窪み部10の平面パターンを示す失禁パッド1の平面図である。
図5】窪み部10の作製要領を示す斜視図である。
図6】失禁パッド1の平面図である。
図7】(A)〜(C)は、薬剤の塗布範囲を示す失禁パッド1の平面図である。
図8】(A)、(B)は、本発明に含まれない薬剤の塗布範囲を示す失禁パッドの平面図である。
図9】透液性表面シート3とセカンドシート6との接着領域を示す、窪み部10の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る失禁パッド1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、必要に応じて前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性のセカンドシート6と、肌当接面の両側にそれぞれ配設されたサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。前記吸収体4は、形状保持および拡散性向上のために、クレープ紙や不織布等の被包シート5によって囲繞するのが好ましい。
【0027】
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0028】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3の肌当接面に窪み部10が形成されるとともに、前記透液性表面シート3の所定領域に失禁パッド1の性能を高める薬剤が塗布されている。これら窪み部10及び薬剤については後段で詳細に説明する。
【0029】
前記吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性ポリマーとにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性ポリマーは例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。
【0030】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。図示しないが、吸収体4を被包シートで囲繞する場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シートが介在することになり、吸収性に優れる前記被包シートによって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。前記パルプの目付は、100g/m〜600g/m、好ましくは200g/m〜500g/mとするのがよい。
【0031】
前記高吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記ポリマーの目付は、100g/m〜500g/m、好ましくは200g/m〜400g/mとするのがよい。
【0032】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0033】
前記セカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。また、前記セカンドシート6は、コシを持たせるため、裏面側(吸収体4)に多孔のフィルム層を有していてもよく、また被包シートとの積層シートとしてもよく、更にはパルプを含む素材を用いてもよい。
【0034】
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0035】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0036】
前記サイド不織布7、7は、図示例では、肌側に突出せず失禁パッド1の両側部にそれぞれ積層した構造としてあるが、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の立体ギャザーを構成するようにしてもよい。
【0037】
〔窪み部10〕
本失禁パッド1では、前記透液性表面シート3の肌当接面であって着用者の排尿口対応領域Hの少なくとも一部を含む領域に、前記不透液性裏面シート2側に窪む窪み部10が形成されている。
【0038】
前記窪み部10は、透液性表面シート3の表面側(肌面側)からの圧搾により吸収体4の所定深さまで窪ませた部分である。前記窪み部10の範囲は、図2及び図3に示されるように、周辺の透液性表面シート3の肌側面の平坦な部分より、不透液性裏面シート2側に窪んだ全ての範囲を指し、圧搾時のエンボス凸部の先端によって透液性表面シート3の外面側から直接圧搾した部分に加え、この圧搾に伴って周辺の繊維が引き込まれるようにして窪んだ部分も含まれる。この窪み部10の外縁は、失禁パッド1の肌当接面を弛みなく引き伸ばした状態で、透液性表面シート3の上面に平板を載置し、この平板と透液性表面シート3とが離間する部分を窪み部10の周囲に沿って結んだ線である。
【0039】
前記窪み部10は、排尿口対応領域Hの少なくとも一部を含む領域、つまり排尿口対応領域Hの少なくとも一部と重なる領域、好ましくは排尿口対応領域Hの少なくとも中央部と重なる領域に形成されている。これにより、排尿口部から排出された尿が窪み部10に直接流れ込み、この窪み部10において透液性表面シート3を透過して吸収体4に移行するようになる。前記窪み部10は、排尿口対応領域Hの面積に対して、少なくとも30%の範囲と重なるように配置されている。これによって、より確実に排出された尿が窪み部10に流れ込みやすくなる。
【0040】
ここで、排尿口対応領域Hとは、失禁パッド1の装着時に着用者の排尿口部が当接する領域のことであり、失禁パッド1の幅方向中央部であって、長手方向の中央部より若干前側に位置している。前記排尿口対応領域Hの大きさは、体型や装着位置によって多少のずれはあるものの、直径約25mmの円内におさまることが装着状態の調査によって得られているため、ここでは排尿口対応領域Hとして直径25mmの円を採用する。また、この排尿口対応領域Hが装着時に容易に識別できるようにするため、排尿口対応領域Hと窪み部10とをほぼ一致する大きさで形成してもよいし、排尿口対応領域Hに着色を施すようにしてもよい。
【0041】
図1に示されるように、前記窪み部10のパッド幅方向の長さaは2〜30mm、窪み部10のパッド長手方向の長さbは20〜180mmとするのが好ましい。前記窪み部10は、失禁パッド1の幅方向に対しては中央部に位置し、失禁パッド1の長手方向に対しては、前記排尿口対応領域Hと同様に、長手方向中央部より若干前側に位置している。前記窪み部10が図4(A)に示されるようにパッド長手方向に延びる溝状に形成される場合、排尿口対応領域Hから前側に延在する長さより、後側に延在する長さの方が長くなるように配置することにより、この溝状の窪み部10に沿って流れた尿が吸収体のより広い範囲に拡散しやすくなるため好ましい。
【0042】
前記窪み部10の底面の位置は、吸収体4の厚みの50%以上、好ましくは50%〜90%とするのがよい。50%より浅い位置までしか窪み部が形成されない場合には、窪み部内に貯留可能な体液の容量が小さ過ぎて、窪み部から尿が溢れ出るおそれがある。
【0043】
前記窪み部10の平面形状は、図1に示されるように排尿口対応領域Hとほぼ同じ円形としてもよいし、図4に示されるように、(A)パッド長手方向に長い溝形、(B)排尿口対応領域Hより大きな円形、(C)パッド長手方向に長い溝形と排尿口対応領域Hとほぼ同じ円形との組み合わせ、(D)星形としてもよい。また、この他に、楕円形や多角形などとすることもでき、図4(C)に例示されるように、これらの形状の群の中から選択した複数の形状を組み合わせた形状とすることも可能である。特に前記窪み部10をパッド長手方向に長い溝形とした場合には、吸収体4のより広い範囲に尿を拡散して吸収することができるようになる。
【0044】
前記窪み部10を形成するには、透液性表面シート3の表面側からのエンボスにより、透液性表面シート3及び吸収体4を一体的に圧搾することにより作製してもよいし、予め吸収体4に肌側面から非肌側に向けて窪む吸収体凹部を形成しておき、その上層に透液性表面シート3を積層した状態で、透液性表面シート3の表面側からのエンボスにより、少なくとも前記吸収体凹部を含む位置の透液性表面シート3を圧搾することにより作製してもよい。後者の場合、透液性表面シート3の表面側からのエンボスは、前記吸収体凹部の形状とほぼ同形状又はこれより小さな形状とし、透液性表面シート3を前記吸収体凹部の内部に凹陥させるように形成してもよいし、図5及び図6に示されるように、吸収体4に円形の吸収体凹部11を形成しておき、この吸収体凹部11の両側縁を含む左右2条の線状エンボス12、12により、透液性表面シート3から吸収体4にかけて、前記吸収体凹部11を含む左右の線状エンボス12、12で囲まれた四角形領域を一体的に圧搾することにより形成してもよい。これにより、窪み部10の底面に存在する吸収体4部分が過度に圧搾されるのが抑えられ、窪み部10の底面からも尿が吸収されやすくなる。
【0045】
〔薬剤〕
前記透液性表面シート3の所定領域に薬剤が塗布されている。前記薬剤としては、撥水剤、親水剤又はスキンケア剤など、塗布された透液性表面シート3の機能を向上させたり改質したりすることにより失禁パッド1の性能を高める効果を有するものを広く用いることが可能である。具体的には、透液性表面シート3が綿繊維などの親水性の素材からなる場合、前記薬剤として撥水剤を用いることにより、撥水剤を塗布した部分の透液性表面シート3が撥水機能を有するように改質したり、透液性表面シート3が合成繊維などの疎水性の素材からなる場合、前記薬剤として親水剤を用いることにより、親水剤を塗布した部分の透液性表面シート3が親水機能を有するように改質したりすることができる。また、透液性表面シート3が親水性の素材からなる場合でも、前記薬剤として親水剤を用いて親水機能を向上させたり、透液性表面シート3が撥水性の素材からなる場合でも、前記薬剤として撥水剤を用いて撥水機能を向上させたりすることも可能である。
【0046】
前記撥水剤としては、パラフィン系、シリコン系等の既知のもののうち、肌への刺激性の少ないものを適宜選択して使用することができるが、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム等の刺激性の少ない油脂を適宜選択して使用することがより好ましい。中でも、ステアリン酸アミド(オクタデカンアミド)が含有されたものを用いるのが特に好ましい。このステアリン酸アミドは、肌への刺激が特に少なく、痒みやかぶれなどの肌トラブルが特に生じ難いという利点があり、撥水剤の塗布量を多くした本失禁パッド1においては好適である。前記撥水剤は、前記ステアリン酸アミドの他に牛脂硬化油などの動物性油脂や植物性油脂が配合された複数の油脂からなるものとするのが好ましい。前記牛脂硬化油を配合することにより、撥水剤の塗布のバラツキが低減できるなどの利点がある。
【0047】
前記親水剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩、アシル化加水分解タンパク質、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ポリアルキレノキシドブロック共重合物、陽イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、イミダゾリニウム誘導体等が挙げられ、この他にも繊維に塗布される親水剤として公知の親水剤であればどのようなものを適用しても良い。
【0048】
前記スキンケア剤としては、スキンケア成分を含むローション剤など、失禁パッドの着用中に着用者の肌に移行すると、肌のかぶれ等を防止することができる公知の薬剤を用いることが可能である。前記スキンケア剤は特に限定されず、ビタミンE(トコフェロール同属体中の、α−トコフェロールの割合が90重量%以上のものが好適)の他、石油系炭化水素、動植物性油脂、動植物性ロウ、脂肪酸エステル系化合物、アルキルエトキシレート、脂肪アルコール、ポリシロキサン、グリコサミノグリカン等、公知のスキンケア剤(酸化防止剤、エモリエント剤)の一種、又は二種類以上を混合して使用することができる。
【0049】
前記薬剤の塗布面積は、透液性表面シート3が肌側に露出する部分の面積の50%以上、好ましくは50〜80%程度とするのがよい。50%より小さいと薬剤を塗布した効果が低下する。つまり、前記薬剤が撥水剤の場合、透液性表面シート3の撥水効果が小さく、吸収体4に吸収した尿の逆戻りや透液性表面シート3の液残りが生じるおそれがある。また、前記薬剤が親水剤の場合、透液性表面シート3の吸湿効果が小さく、装着時のムレが生じるおそれがある。透液性表面シート3が肌側に露出する部分とは、透液性表面シート3のうち、両側のサイド不織布7、7と重なる部分を除いた、肌対向面側に露出した部分のことである。
【0050】
前記薬剤の塗布量は任意であるが、通常のものより塗布量を増やすのが好ましい。本失禁パッド1では、排尿口対応領域H及び窪み部10には薬剤が塗布されていないため、薬剤の塗布量を増加させても、体液吸収に影響を及ぼすことはない。すなわち、薬剤として撥水剤を用いた場合、排尿口対応領域Hに多量の撥水剤を塗布した場合には、撥水剤の撥水効果が高すぎて尿が透液性表面シート3を透過しづらくなるが、本失禁パッド1では、排尿口対応領域H及び窪み部10以外の領域に撥水剤を塗布し、排尿口対応領域H及び窪み部10には撥水剤を塗布していないため、撥水剤によって体液の透過が阻害されず、逆に撥水剤の塗布領域において吸収体4に吸収された尿の逆戻りが抑えられるとともに、表面シート3の液残りが生じにくくなり、撥水剤の機能が十分に発揮できるようになる。
【0051】
前記撥水剤の塗布領域は、図1及び図7に示されるように、排尿口対応領域H及び窪み部10以外の領域とされている。つまり、図8(A)に示されるように、排尿口対応領域Hと窪み部10とがほぼ同じ大きさで形成された失禁パッド1の幅方向中央部が全長に亘って薬剤非塗布領域とされ、両側がそれぞれ全長に亘って薬剤塗布領域とされた場合において、前記薬剤塗布領域が排尿口対応領域H及び窪み部10の両側と大きく重なるようにしたり、同図8(B)に示されるように、排尿口対応領域Hより窪み部10が大きく形成された失禁パッド1の排尿口対応領域Hが薬剤非塗布領域とされ、それ以外の領域が薬剤塗布領域とされた場合において、前記薬剤塗布領域が排尿口対応領域Hには重なっていないが、窪み部10の外縁部と全周に亘って重なるようにしたものは、本発明の範囲から外れるものである。ただし、ライン操業時の位置ズレなどによって、撥水剤の塗布領域が排尿口対応領域H及び窪み部10の両方又はいずれか一方の外縁部の一部と若干重なっていても構わない。この重なり代は可能な限りゼロであるのが望ましいが、窪み部10又は排尿口対応領域Hのパッド幅方向又は長手方向のそれぞれの方向に対する長さの10%以内であれば、本発明の効果が著しく低下するものではない。
【0052】
前記撥水剤の塗布領域は、図1及び図7(B)に示されるように、窪み部10及び排尿口対応領域H以外の領域が全て撥水剤塗布領域となるようにしてもよいし、図7(A)及び(C)に示されるように、窪み部10及び排尿口対応領域Hより広い範囲を薬剤を塗布しない領域とし(非斜線部分)、それ以外の領域を撥水剤塗布領域としてもよい(斜線部分)。図7(A)では、窪み部10が排尿口対応領域Hとほぼ一致する範囲に形成され、窪み部10(排尿口対応領域H)より幅方向外側がそれぞれ撥水剤塗布領域となっている。図7(C)では、窪み部10がパッド長手方向に長い溝形に形成され、排尿口対応領域Hより幅方向外側及び前記窪み部10の長手方向両端より前後に離間した部分より長手方向外側がそれぞれ撥水剤塗布領域となっている。排尿口対応領域H及び窪み部10より広い範囲を、薬剤を塗布しない領域とすることにより、排尿口対応領域H及び窪み部10を確実に薬剤を塗布しない領域とすることができる。
【0053】
図9に示されるように、前記透液性表面シート3は、前記薬剤を塗布しない領域の非肌側に間欠的なパターンで設けられた接着部13により、下層側のセカンドシート6と接合され、前記接着部13以外の領域では、透液性表面シート3とセカンドシート6とが接合されないようにするのが好ましい。これによって、透液性表面シート3とセカンドシート6とが薬剤を塗布しない領域で密着するため、体液が表面シート3からセカンドシート6へと移行しやすくなる。前記接着部13としては、ホットメルト接着剤や熱融着を用いることができる。前記接着部13のパターンは、スパイラルやドットなど、接着部と非接着部とが混在するパターンとするのが好ましい。全面を接着部とすると尿の移行が阻害されるおそれがある。
【0054】
以上の構造からなる本失禁パッド1では、透液性表面シート3の排尿口対応領域H及び窪み部10以外の領域に前記薬剤が塗布され、排尿口対応領域H及び窪み部10には前記薬剤が塗布されていないため、排尿口対応領域Hにおいて尿による薬剤の流れ落ちがなく、排尿後も薬剤によって失禁パッド1の性能が高められた初期の状態が維持できるようになる。また、所定の領域に薬剤を塗布しないため、薬剤の使用量を抑えることができ、製造コストの削減を図ることができるようになる。
【0055】
また、排尿口対応領域Hには前記薬剤が塗布されないため、前記薬剤として撥水剤を用いた場合、排出直後の尿がはじかれるといったデメリットが生じないので、薬剤の塗布量を多くしたり、撥水効果の高い薬剤を用いることによって、失禁パッド1の性能を十分に高めることができるとともに、排尿口対応領域Hでは撥水剤によって透液性表面シート3の液透過性が低下しないため、尿が素早く吸収体4に吸収されるようになる。
【0056】
また、このとき問題となる透液性表面シート3の液残りや逆戻りに対しては、排尿口対応領域Hに形成された窪み部10によって、透液性表面シート3が直接肌面に接触するのが防止されているため、窪み部10の表面シート3に液残りや逆戻りが生じても、表面シート3に保持された体液を感じにくい構造とすることにより解決が図られている。
【符号の説明】
【0057】
1…失禁パッド、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…セカンドシート、7…サイド不織布、10…窪み部、11…吸収体凹部、12…線状エンボス、13…接着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9