(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記棚板当接部は、前記棚板と当接する当接面と、その背中側となる前面との厚さが、当該棚板当接部の上方から前記傾斜支持部が設けられた下方へ向かって次第に増すよう形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の棚板支持具。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
[第1実施形態]
<棚板支持具を備えた家具の全体構成>
図1に示すように、家具100は、棚板支持具1(1a、1b、1c、1d)を用いて形成されている。
【0015】
家具100は、前面が開口した箱状の家具本体2、当該家具本体2の内部に配置される棚板3、及び、棚板3を支持する棚板支持具1(1a〜1d)を備えている。家具本体2は、天板2u、左右一対の側板2l、2r、底板2t及び背板2zが互いに連結して構成されている。なお、側板2l、2rの内側の壁面(以下、これを「内壁面」ともいう。)には、互いに対向する位置に上側から下側へ向かって所定の間隔をあけて形成された複数の挿入孔2aが設けられている。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1乃至
図3の棚板支持具1aにおいて、左側とは、家具本体2の開口を正面として見たときの矢印a方向とし、右側とは、家具本体2の開口を正面として見たときの矢印b方向とする。また前側とは、家具本体2の開口が形成された矢印c方向とし、後側とは、家具本体2の背板2zが設けられた矢印d方向とする。さらに、上側とは家具本体2の天板2uが設けられた矢印e方向とし、下側とは家具本体2の底板2tが設けられた矢印f方向とする。
【0017】
棚板支持具1(1a、1b、1c、1d)は、棚板3の左前側端縁部3a、右前側端縁部3b、左後側端縁部3c及び右後側端縁部3dの計4箇所を挟み付けた状態で支持する家具100の一構成部品である。
【0018】
なお、棚板3の左前側端縁部3aに用いられる棚板支持具1aと、棚板3の右前側端縁部3bに用いられる棚板支持具1bとは互いに左右対称形状である。また、棚板3の左後側端縁部3cに用いられる棚板支持具1cは棚板支持具1bと同じであり、棚板3の右後側端縁部3dに用いられる棚板支持具1dは棚板支持具1aと同じである。したがって、以下においては、棚板支持具1aの構成についてのみ説明し、棚板支持具1b、1c、1dの構成についてはその説明を省略する。
【0019】
<棚板支持具の全体構成>
続いて、
図2〜
図4を参照しながら、第1実施形態における棚板支持具1aの構成について説明する。
【0020】
棚板支持具1aは、本体部10と、本体部10の嵌合孔141に嵌合された後、家具本体2の挿入孔2aに挿入可能な軸部材20とを備える。本体部10は、軸部材20を介して家具本体2の挿入孔2aに着脱自在に取り付けられた状態において棚板3を支持する部材であり、例えばプラスチックや金属等からなる。本体部10は、棚板載置部11と、棚板当接部12と、傾斜支持部13とを備える。
【0021】
棚板載置部11は、棚板3の底面3t(
図4)を支持した状態で棚板3を載置する略長方体状の薄板状部分であり、棚板3の底面3tを支持する平坦な上面11a、当該上面11aの背中側に位置する下面11b、互いに対向する側端面11c、11d、及び、棚板載置部11の後側(矢印d方向)に位置する後端面11eとを有する。
【0022】
また、棚板載置部11は、前側(矢印c方向)寄りの位置に、下側(矢印f方向)へ向かって突設された軸部材保持部14を備えている。軸部材保持部14は、略円筒形状を有し、軸部材20を嵌合固定した状態で保持するための嵌合孔141を備えている。嵌合孔141は、軸部材20の嵌合軸部21と嵌合する小径孔部と、当該小径孔部と連通し軸部材20の鍔部23と係合する拡径孔部とを有する。
【0023】
さらに、棚板載置部11には、家具本体2における側板2lの内壁面と当接する側端面11dに沿って上面11aよりも上側(矢印e方向)へ向かって突出した円弧状の支持板15を備えている。この支持板15は、嵌合孔141と同心円弧状に形成されており、棚板3の左側(矢印a方向)の側端面を当接した状態で支持する部分として機能する。なお、支持板15は、その一部が傾斜支持部13にまで延び、当該傾斜支持部13と一体化されている。
【0024】
棚板当接部12は、棚板3の前側(矢印c方向)の端面(以下、これを「前側端面」ともいう。)3fと当接する略直方体形状の薄板状部材である。棚板当接部12は、前面12a、背面12b、互いに対向する側端面12c、12d、及び、互いに対向する上端面12e及び下端面12fを有する。
【0025】
棚板当接部12の前面12a及び背面12b間の幅t1は、棚板載置部11の上面11a及び下面11b間の幅t0よりも薄い。また、棚板当接部12において、側端面12cと下端面12fとが交差する部分12cfはR面取り加工されている。これは、家具本体2の棚板3に載置される収容物を収納する際、又は、取り出す際に引っ掛かりを生じさせないためである。
【0026】
棚板当接部12の下端面12fは、本体部10の軸部材保持部14よりも下側(矢印f方向)に位置付けられている。したがって、棚板支持具1aは、棚板当接部12の前面12aから見た場合、当該前面12aにより本体部10の軸部材保持部14の存在が隠蔽されることになり、美観に優れるという特徴を有している。なお、棚板当接部12の上端面12e及び下端面12fは、当該棚板当接部12をユーザが指で掴む際の接触面である。
【0027】
棚板当接部12において上側(矢印e方向)の端部である上端部には、係止爪16が形成されている。係止爪16は、棚板当接部12の後側(矢印d方向)へ向かって突設された爪状部材であり、棚板3の上側(矢印e方向)の面(以下、これを「上表面」ともいう。)3p(
図4参照)と、棚板載置部11の上面11aとの間に棚板3を挟み付けた把持状態で当該棚板3を係止する。この係止爪16の下端面16aは、棚板載置部11の上面11aと略平行に形成されている。また、係止爪16の先端側には、C面取りされた面取部16bが形成されている。
【0028】
傾斜支持部13は、棚板載置部11の上面11aから前側(矢印c方向)へ向かうにつれて下側(矢印f方向)へ次第に傾斜した薄板状部材であり、棚板載置部11と棚板当接部12とを一体に繋ぐ連結部分として機能する。
【0029】
傾斜支持部13の上面(矢印e方向)及び下面(矢印f方向)間の厚さt2は、棚板載置部11の上面11a及び下面11b間の厚さt0と略同一である。傾斜支持部13と棚板当接部12とをつなぐ接続部分1213の接続面は円弧状に形成されており、当該接続部分1213は傾斜支持部13の厚さt2よりも僅かに肉厚となっている。
【0030】
このように本体部10は、
図4に示すように、棚板載置部11と棚板当接部12とを接続する傾斜支持部13において、棚板載置部11の上面11aと係止爪16の下端面16aとの間で棚板3を把持して保持する際、当該棚板3の底面3tと傾斜支持部13との間に断面略三角形状の非接触空間spcを形成し得るように構成されている。
【0031】
<軸部材の構成>
次に、
図2を参照して、軸部材20の構成について説明する。軸部材20は、本体部10の軸部材保持部14に形成された嵌合孔141に挿入される円柱状の嵌合軸部21と、家具本体2の側板2l、2rの内壁面に形成された挿入孔2aに挿入される円柱状の挿入軸部22と、嵌合軸部21と挿入軸部22との間に形成され嵌合軸部21よりも外径の大きい円盤状の鍔部23とを備えている。なお、嵌合軸部21及び挿入軸部22の外形形状は特に限定されず、嵌合孔141及び挿入孔2aの内形形状に合わせて適宜変更可能である。
【0032】
<使用方法>
図1及び
図4を参照して、第1実施形態における棚板支持具1aの使用方法の一例について説明する。家具本体2に棚板3を取り付ける場合、まず、各棚板支持具1a、1b、1c、1dの挿入軸部22を家具本体2の側板2l、2rの内壁面に形成された同じ高さ位置の4つの挿入孔2aに挿入する。
【0033】
そして、棚板支持具1c、1dの棚板載置部11と係止爪16との間に棚板3の後側(矢印d方向)の端部を把持させた状態で支持した後、棚板支持具1a、1bの係止爪16の面取部16bの上に棚板3を載せた状態で上側(矢印e方向)から下側(矢印f方向)へ向かって当該棚板3の前側(矢印c方向)の端部を押す。
【0034】
このとき、棚板当接部12が破線から実線で示されたように前側(矢印c方向)へ撓むため、棚板支持具1a、1bの棚板載置部11と係止爪16との間に棚板3を把持させた状態で支持させ、棚板載置部11に棚板3が載置された状態を保持することができる。この場合、係止爪16に形成された面取部16bが、棚板3を押す際にガイドの役目を果たすとともに、面取部16bを介して棚板3が棚板当接部12を前側(矢印c方向)へ押すことになるので、棚板3を円滑に取り付けることができる。
【0035】
一方、家具本体2から棚板3を取り外す場合、棚板支持具1aに着目すると、
図4に示すように、ユーザは係止爪16を前側(矢印c方向)へ押すことにより、棚板当接部12を棚板3から離れるように前側(矢印c方向)へ傾倒させながら撓ませる。
【0036】
このとき棚板支持具1aは、傾斜支持部13の存在により、棚板当接部12が前側(矢印c方向)へ傾倒しながら撓み易くなっており、かつ、棚板3の底面3tと傾斜支持部13との間に形成された非接触空間spcにより当該棚板3との接触面積を低減させている。
【0037】
これにより棚板支持具1aは、係止爪16による棚板3の上表面3pに対する係止状態を少ない力で容易に解消することができる。同様の操作を棚板支持具1bについても行うことにより、棚板3の前側(矢印c方向)の端部を棚板支持具1a、1bから取り外し、その状態で棚板3を前側(矢印c方向)へ引っ張れば、家具本体2から棚板3を完全に取り外すことができる。
【0038】
また、棚板支持具1aでは、棚板当接部12の下端面12fが傾斜支持部13よりも下側(矢印f方向)へ位置しているため、棚板当接部12の上端面12e及び下端面12fを作業者の指で挟み易く、棚板当接部12を容易に撓ませることができる。すなわち棚板支持具1aは、従来と比較して棚板3を取り外す際の取り扱い性に優れている。
【0039】
また、棚板支持具1aでは、棚板当接部12の下端面12fにおいて、家具本体2の収納空間側に位置する部分12cfがR面取り加工されている。このため、棚板支持具1aでは、棚板3を取り付ける際及び取り外す際に作業者の手が傷付くことを防止し得るとともに、家具本体2の棚板3に載置される収容物を収納する際、又は、取り出す際であっても当該収容物が破損することを防止することができる。
【0040】
さらに、棚板載置部11には、支持板15が設けられているため、この支持板15を介して、棚板支持具1a全体を家具本体2における側板2l、2rの内壁面に対して押接させることができる。これにより、側板2l、2rの内壁面に対する棚板支持具1aの取付状態を安定して維持することができる。
【0041】
<実施例>
第1実施形態の棚板支持具1aは、
図5(A)に示すように、棚板載置部11と棚板当接部12との間を連結する傾斜支持部13を備えている。これに対し、
図5(B)に示すように、従来の棚板支持具1zは、棚板支持具11zと、棚板当接部12zとが直接連結され、棚板支持具1aのような傾斜支持部13を備えていない。このような本発明の棚板支持具1aと従来の棚板支持具1zとを比較する。
【0042】
図5(A)及び(B)に示すように、棚板支持具1a及び棚板支持具1zにおいて、係止爪16,16zを太矢印Aで示す前側(矢印c方向)へ5mmだけ移動させるのに必要な押す力を解析した。
【0043】
その結果、表1に示すように、棚板支持具1aでは、15.25N、従来の棚板支持具1zでは30.7Nの力が必要であることが分かった。したがって、棚板支持具1aでは、従来の棚板支持具1zよりも棚板当接部12を少ない力で撓ませることができる。すなわち、家具100の家具本体2に対して、棚板支持具1aを用いることにより、家具本体2から棚板3を容易に取り外すことができる。
【0044】
次に、
図5(A)及び(B)に示すように、係止爪16の下端面16a及び係止爪16zの下端面16zaに対して太矢印Bで示す上側(矢印e方向)へ、2.7kgの重量を有する棚板の5倍の荷重13.5kgfが加わった場合を想定し、係止爪16、16zの変位量を解析した。なお、家具本体2には棚板支持具1a〜1dが4個設置されるため、1つあたりの係止爪16、16zに対して加わる荷重は2.7kgf×5÷4=3.375kgf=33Nとした。
【0045】
その結果、表1に示すように、棚板支持具1aでは、係止爪16の変位量が0.9794mm、従来の棚板支持具1zでは係止爪16zの変位量が0.8623mmであり、両者に大差はなかった。したがって、棚板支持具1aは、従来の棚板支持具1zと同等の強度を有することが分かった。すなわち、棚板支持具1aを家具本体2に装着し、棚板3を載置した状態で逆さにして運搬する場合、棚板3の荷重が係止爪16の下端面16aにかかっても、棚板支持具1a〜1dにより棚板3を係止した状態を維持することができる。
【0047】
このように棚板支持具1aでは、棚板3の取り外し易さが向上する一方、棚板3を強固に支持することができるという2つの背反する効果を同時に実現することできた。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の棚板支持具1aの本体部10に改良を加えたものである。
図6を参照して、第2実施形態の棚板支持具1eについて説明する。なお、第1実施形態の棚板支持具1aと同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、第2実施形態の棚板支持具1eは、棚板当接部12、傾斜支持部13及び支持板15と連結された薄板状のリブ17を備えている。リブ17は、棚板当接部12の側端面12d、傾斜支持部13の側端面13d、及び支持板15の上端縁15eと一体に連結されている。ただし、これに限るものではなく、例えば、リブ17は、棚板当接部12の側端面12d及び傾斜支持部13の側端面13dと少なくとも連結していればよく、支持板15の上端縁15eと一体に連結されていなくてもよい。
【0050】
この棚板支持具1eには、棚板当接部12の側端面12d及び傾斜支持部13の側端面13dと少なくとも連結されたリブ17が設けられているため、棚板当接部12の撓み量を第1実施形態の棚板支持具1よりも少なくして棚板3を支持する際の強度を向上させることができる。
【0051】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態の棚板支持具1aの棚板当接部12に改良を加えたものである。
図7を参照して、第3実施形態の棚板支持具1fについて説明する。
図7は第3実施形態の棚板支持具1fを右側から見た側面図である。なお、第1実施形態の棚板支持具1aと同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図7に示すように、第3実施形態の棚板支持具1fの棚板当接部18は、第1実施形態の棚板支持具1aの棚板当接部12とは異なり、背面18b(棚板3と当接する当接面)に対して垂直な前後方向(矢印cd方向)の厚さt3、すなわち前面18a及び背面18b間の厚さt3が上側(矢印e方向)から下側(矢印f方向)へ向かって次第に増すような形状を有している。具体的には、棚板当接部18において棚板当接部18の背面18bは、棚板載置部11の上面11aに対して垂直に形成されているが、棚板当接部18の前面18aは、上側(矢印e方向)から下側(矢印f方向)へ向かうにつれて背面18bから次第に遠ざかるように形成されている。
【0053】
第3実施形態の棚板支持具1fは、棚板当接部18の厚さt3が上側(矢印e方向)から下側(矢印f方向)へ向かって次第に厚くなるよう形成されている。このため、棚板当接部18の撓み量を第1実施形態の棚板支持具1よりも少なくして棚板3を支持する際の強度を向上させることができるとともに、棚板3を載置した状態で逆さにして運搬する場合であっても、棚板支持具1fにより棚板3を係止した状態を維持することができる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態において示した態様に限定されるものではなく、例えば、以下のような実施形態も包含するものである。
【0055】
上述した実施形態においては、傾斜支持部13の上面(矢印e方向)及び下面(矢印f方向)間の厚さt2を、棚板載置部11の上面11a及び下面11b間の厚さt0と略同一にした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、棚板3を開放する際の棚板当接部12及び傾斜支持部13の全体の撓み量をどのように設定するかに応じて適宜設定可能である。
【0056】
また、上述した実施形態においては、棚板当接部12の下端面12fを、傾斜支持部13よりも下側(矢印f方向)へ所定距離だけ離れるように位置付けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、傾斜支持部13から下端面12fまでの距離が離れるほど棚板当接部12の質量が増大して撓み易くなるため、棚板当接部12及び傾斜支持部13の剛性をどのように設定するかに応じて傾斜支持部13から下端面12fまでの距離を適宜設定することが可能である。