特許第6868430号(P6868430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868430
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】不正読取りが防止された画像付キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/24 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   B65D51/24 200
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-59782(P2017-59782)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-162081(P2018-162081A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】中川 征
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4676558(JP,B1)
【文献】 国際公開第2017/010282(WO,A1)
【文献】 特表2012−509818(JP,A)
【文献】 特開2004−115095(JP,A)
【文献】 特開昭54−072193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
B65D 23/00−25/56
G06K 19/00−19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に、常温環境下で可視可能な画像が形成されたキャップにおいて、
前記画像が情報コードであり、加熱されることによりその30%以上が消失して読み取り不可能になり、且つ常温になった際、読み取り可能になる
ことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記キャップが、少なくとも天面及びスカート部を有し、前記画像が天面に形成されている請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
前記加熱により消失する画像の消失領域が、可逆性の第1の示温インクにより形成されている請求項1又は2記載のキャップ。
【請求項4】
前記画像の少なくとも一部に、冷却されることにより画像を隠蔽可能な隠蔽領域が形成されている請求項1〜の何れかに記載のキャップ。
【請求項5】
前記隠蔽領域が、可逆性の第2の示温インクにより形成される印刷層である請求項記載のキャップ。
【請求項6】
前記画像と前記隠蔽領域の印刷層が同じ色味である請求項又は記載のキャップ。
【請求項7】
前記画像のうち少なくとも加熱により消失する消失領域上に、塗料中に赤色酸化鉄顔料が含有された塗料組成物から成る保護層が形成されている請求項1〜の何れかに記載のキャップ。
【請求項8】
前記保護層が、前記隠蔽領域上にも形成されている請求項記載のキャップ。
【請求項9】
内容物が充填される容器と、該容器の口部に巻き締められる請求項1〜の何れかに記載のキャップとからなる加熱状態で陳列販売されるキャップ付き容器。
【請求項10】
内容物が充填される容器と、該容器の口部に巻き締められる請求項の何れかに記載のキャップとからなる加熱または冷却状態で陳列販売されるキャップ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に情報コード等の画像を有するキャップに関し、より詳細には、前記画像の少なくとも一部が温度によって消失し、情報コード等の不正読取を有効に防止可能なキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、飲食品等の分野において、商品の管理や販促等の目的で、容器やキャップの外面にQRコード(登録商標)等の種々の情報コードが印刷されている。
このような情報コードのうち、商品販売促進の目的でQRコードや抽選番号等を容器の側面やキャップ天面等に印刷して成るものは、商品を購入した消費者がこれを利用して、懸賞等に応募する趣旨で用いられている。
しかしながら、容器やキャップの外面にこのような情報コードが印刷されている場合には、店舗等の商品棚に陳列された状態でかかる情報コードが読み取り可能であることから、実際に商品を購入することなく情報コードを不正に読み取って応募されてしまうおそれがある。
【0003】
このような問題を解決するために、タンパーエビデンス機構を兼ねたシュリンクフィルムやシール等によって情報コードを隠蔽するように、キャップを外側から覆うことや(特許文献1)、或いは情報コードが印刷された個所をシートで隠蔽すること(特許文献2)等が提案されている。
しかしながら、シュリンクフィルムやシートで情報コードを被覆する場合には、シュリンクフィルムやシートを除去及び廃棄する必要が生じてしまうと共に、飲料等に用いられるキャップにおいては、それ自体タンパーエビデンス性を有するものも多く、情報コードを隠蔽する目的のために、更にシュリンクフィルムで容器やキャップを覆ったりすることは、生産性や経済性の点で充分満足するものではない。
【0004】
一方、所定の温度で変色する可逆性の示温インクを容器に用い、容器内の飲料の飲み頃温度などを表示することが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4676558号
【特許文献2】特開2004−309885号公報
【特許文献3】特開2004−115095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した情報コードを、上記示温インクを用いてキャップに印刷することにより、情報コードの不正読み取りを防止する場合、示温インクは一般に低温時に可視化され、高温になると消失する性質を有するため、例えばコーヒー飲料や茶飲料のように、冷蔵又は加温の何れの状態でも販売される場合には、情報コードの不正読み取りを有効に防止することが困難である。
従って本発明の目的は、シュリンクフィルム等を用いることなく、情報コードの不正読み取りを防止可能であり、加熱販売或いは、加熱又は冷却販売の両方に対応可能な情報コードなどの画像を有するキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、外面に、常温環境下で可視可能な印刷画像が形成されたキャップにおいて、前記画像が情報コードであり、加熱されることによりその30%以上が消失して読み取り不可能になり、且つ常温になった際、読み取り可能になることを特徴とするキャップが提供される。
本発明のキャップにおいては、
1.前記キャップが、少なくとも天面及びスカート部を有し、前記画像が天面に形成されていること、
2.前記加熱により消失する画像の領域が、可逆性の第1の示温インクにより形成されていること、
.前記画像の少なくとも一部に、冷却されることにより画像を隠蔽可能な隠蔽領域が形成されていること、
.前記隠蔽領域が、可逆性の第2の示温インクにより形成される印刷層であること、
.前記画像と前記隠蔽領域の印刷層が同じ色味であること、
.前記画像のうち少なくとも加熱により消失する領域上に、塗料中に赤色酸化鉄顔料が含有された塗料組成物から成る保護層が形成されていること、
.前記保護層が、前記隠蔽領域上にも形成されていること、
が好適である。
本発明によればまた、内容物が充填される容器と、該容器の口部に巻き締められるキャップとからなる、加熱状態で陳列販売されるキャップ付き容器が提供される。
本発明によれば更にまた、内容物が充填される容器と、該容器の口部に巻き締められるキャップとからなる、加熱または冷却状態で陳列販売されるキャップ付き容器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャップにおいては、キャップ外面に印刷された画像の少なくとも一部が、常温では可視化され、加熱環境下では消失する示温インクで形成されているので、加温ケース等で温められた状態で陳列・販売されているときには、画像を視認することができず、店舗等で情報コード等を不正に読み取ることが有効に防止されている。その一方、実際に商品を購入して、キャップを取外した後や、購入後における常温環境下では、画像を視認することができることから、懸賞等の情報コードである画像を読み取ることができる。
本発明のキャップでは、シュリンクフィルムやフィルム等の別部材を用いることなく、情報コード等の画像の少なくとも一部を消失可能であることから生産性及び経済性が顕著に優れている。また情報コード自体をキャップに貼着したものと異なり、画像により提供される情報がキャップから離脱することがないため、情報を確実に消費者に提供することができる。
【0009】
また本発明のキャップにおいては、常温で可視化され加熱環境下で消失する第1の示温インクと、常温では可視化され低温環境下で消失する第2の示温インクとを組み合わせで用いることにより、常温よりも低温及び高温の両方の環境下で画像の少なくとも一部を隠蔽及び消失させることができるため、加温ケース等で加温販売された時だけでなく、冷蔵ケース等で冷却販売された時にも、画像の一部が視認できず、店舗等での不正読み取りを有効に防止できる。
また示温インクとして可逆性のものを使用することにより、温度条件が変動した場合にも、画像の視認、消失、隠蔽を確実に行うことができる。
更に、画像のインク及び隠蔽領域を形成する第2の示温インクが同じ色味のインクで印刷されていることにより、冷却時には隠蔽領域と画像が一体化して、隠蔽領域が確実に画像を隠蔽することができる。
更にまた、第1の示温インクで形成された消失領域及び第2の示温インクで形成された隠蔽領域が、赤色酸化鉄顔料が含有された塗料組成物から成る保護層が形成されていることによって、示温インクの耐候性を顕著に向上させることが可能となり、隠蔽、視認の効果を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のキャップの一例につき、高温時及び常温時のQRコードの状態を示す図である。
図2】本発明のキャップの他の一例につき、高温時、常温時及び低温時のQRコードの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一の態様のキャップは、キャップの外面に形成された、情報コード等の画像の少なくとも一部が、加熱されることにより消失する示温インクで形成されていることが重要な特徴であり、これにより加熱環境下では、この示温インクで形成された個所が消失して画像を視認(読み取り)できなくなると共に、常温になると示温インクが発色して、画像が全体として視認可能になり、情報コード等の情報を読み取ることが可能になる。
また本発明の第二の態様のキャップは、上述した加熱されることにより消失する第1の示温インクで形成された消失領域を含む印刷画像の少なくとも一部を、冷却されると発色して視認可能になる第2の示温インクで隠蔽するように隠蔽領域を形成していることが重要な特徴であり、これにより加熱環境下では、上記第一の態様と同様に、印刷画像の第1の示温インクで形成された個所が消失して画像を視認できないと共に、冷却環境下では、第2の示温インクによる隠蔽領域で画像の一部が隠蔽されるため、画像を視認することができない。その一方、常温になると第1の示温インクは発色し消失領域の画像が出現し、第2の示温インクは発色せず、隠蔽領域は消失するので、画像の全体が視認可能になり、情報コード等の情報を読み取ることが可能になる。
尚、本明細書において、「常温」は特に冷やしたり温めたりしない、平常の温度を意味し、また「加熱」は一般的な加温販売温度である50℃以上に加熱された状態を意味し、「冷却」は食品衛生法で規定する冷蔵温度である10℃以下に冷却された状態を意味している。
【0012】
図1は、本発明のキャップの一例を示す図であり、図1に示すキャップは、螺子部を有する金属缶1に適用されている金属製キャップ2であり、この金属製キャップ2は、概略的に言って天面3及びスカート部4から成り、スカート部4に螺子部5が形成されている。この金属製キャップにおいては、キャップの天面に印刷画像10が形成されている。
この態様においては、キャップの天面にはQRコード11が印刷されており、この印刷画像10のうちQRコード11の左下部分(以下、「消失領域」という)13が、加熱されることにより消失する示温インクで形成されていることから、図1の高温時の印刷画像から明らかなように、QRコード11の消失領域13が欠落して、全体画像が視認できず、QRコードを読み取ることができない。その一方、常温時では、消失領域が発色し、印刷画像10の全体が鮮明に視認され、QRコードを読み取ることが可能になる。
【0013】
図2は、本発明のキャップの他の一例を示す図であり、この第二の態様においては、図1に示した、第1の示温インクで印刷された消失領域13を有する印刷画像10の少なくとも一部を、冷却されると発色して視認可能になる第2の示温インクで隠蔽するように更に印刷されているキャップである。
この態様においては、高温時及び常温時においては上述した図1と同様に、高温時にはQRコード11の消失領域13が欠落した画像が視認され、常温時には、印刷画像10の全体が視認できる。その一方、冷却されると、図2の低温時に示すように、QRコード11の上下部分を隠蔽するように、第2の示温インクによる矩形の画像(隠蔽領域)14a,14bが重ねて印刷されている。この隠蔽領域14a,14bは冷却することで発色することから、隠蔽領域と重なって印刷されているQRコード部分は視認できず、QRコードを読み取ることができない。その結果、この態様においては、常温時以外に、印刷画像10の全体を視認することができず、冷蔵ケース等で冷却された状態や、或いは加温ケース等で加熱された状態で販売されている場合には、印刷画像の全体を視認できず、不正読み取りを防止することが可能になる。
【0014】
(画像)
本発明において、キャップの外面に形成される、QRコード、文字又は数字によるコード等の情報を含んだ画像は、その少なくとも一部が消失領域として第1の示温インクにより印刷され、残りの部分が従来キャップへの印刷に用いられていたインク組成物により印刷することができる。
第1の示温インクにより形成される画像の領域は、画像が有する情報が読み取り不可能になる範囲で形成されていればよく、図1に示すように画像の一部のみを第1の示温インクで形成してもよいが、画像の全体を第1の示温インクで形成しても勿論よい。具体的には、QRコード等の情報コードにおいて読み取り不可能とするためには、情報コードの30%以上を第1の示温インクで印刷することが好適である。
【0015】
画像の印刷箇所は、キャップ外面に印刷し得る限り限定されず、キャップの形状や画像の大きさ、或いは画像印刷のタイミング等に応じて適宜に決定することができる。
例えば、図1に示したような、天面及びスカート部から成り、スカート部に螺子が形成されているような金属製キャップの場合において、キャップの成形に先立って印刷する場合には、スカート部は螺子部形成に際してカシメられる等、キャップの成形加工やキャッピングに際して印刷画像が外部から影響を受けやすいことや、或いは画像の読み取りやすさの点から、印刷画像は曲面ではない天面に形成されていることが好適であるが、画像の印刷をスカート部外面及びTEバンド部外面に形成することもできる。
【0016】
(隠蔽領域)
本発明の第二の態様において、上記第一の態様のキャップの印刷画像に重ねて形成される、第二の示温インクで形成される隠蔽領域も、画像が有する情報が読み取り不可能になる限り、図2に示すように画像の一部と重複する箇所に印刷されていてもよいし、画像の全部と重複するように印刷されていてもよい。
また隠蔽領域を形成するインク組成物は、情報コード等の画像を形成するインク組成物と同じ色味であることが好ましい。これにより隠蔽画像により画像を確実に隠蔽することが可能になる。また異なる色のインク組成物を用いる場合には、隠蔽領域を形成するインク組成物の色を、画像を形成する色よりも濃い色を使用することが望ましい。
尚、隠蔽領域は、画像の下に印刷されていてもよいし、画像の上から印刷されていてもよいが、異なる色で形成する場合には、画像の上から形成されていることが望ましい。
【0017】
(示温インク)
本発明に使用される示温インクは、後述するバインダー樹脂や有機溶媒等から成る公知のインク組成物中に熱変色材料が分散されて成り、熱変色材料としては、温度変化により可逆性又は不可逆性の変色を行う公知の材料を使用することができる。
第1の示温インクとしては、加温ケース内で温められた状態(50〜70℃)で、変色のピークを有する熱変色材料を用いることが好ましく、第2の示温インクとしては、冷蔵ケース内で冷却された状態(1〜10℃)で、変色のピークを有する熱変色材料を用いることが好ましい。
また、内容品の充填工程や、輸送・保管工程、及び販売工程において、温度条件が変動するおそれもあるので、熱変色材料は可逆性のものであることが望ましい。
【0018】
このような公知の可逆性熱変色性材料としては、以下のものを例示することができる。
(1)(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)フェノール性水酸基を有する化合物と、(ハ)極性の置換基を有さない鎖式脂肪族1価アルコールと、を必須成分とした可逆性熱変色材料。
(2)(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)フェノール性水酸基を有する化合物と、(ハ)極性の置換基を有さない鎖式脂肪族1価アルコールと極性の置換基を有さない脂肪族モノカルボン酸から得た極性の置換基を有さないエステルと、を必須成分とした可逆性熱変色材料。
(3)上記の(1)または(2)の可逆性熱変色材料を微小カプセルに内包したもの。
(4)上記の(1)または(2)の可逆性熱変色材料をビヒクル中に溶解又は分散させたもの。
具体的には、上記電子供与性呈色性有機化合物(イ)として、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロフタランキサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等の従来公知のロイコ色素を例示でき、また上記フェノール性水酸基を有する化合物として、4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール2,2′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール4,4′,4″−エチリジントリスフェノール4,4′−〔1−(4−メチルフェニル)エチリデン〕ビスフェノール4,4′−〔1−(4−エチルフェニル)エチリデン〕ビスフェノール4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)等を例示でき、鎖式脂肪族1価アルコール(ハ)としては、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ウンデシルアルコール、デシルアルコール等を例示することができる。
【0019】
(インク組成物)
情報コード等の画像を形成するためのインク組成物としては、キャップ等に使用されていた従来公知のインク組成物を用いることができ、これに限定されないが、金属製キャップの場合には熱硬化型インク組成物を用いることが好ましく、プラスチックキャップの場合には、紫外線硬化型インク組成物を用いることが好ましい。
画像形成に用いられる熱硬化型インク組成物としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等から成るバインダー樹脂、着色剤及び有機溶剤から成り、必要によりレベリング剤、可塑剤、界面活性剤、粘着剤、粘稠剤、高沸点溶剤、助色剤、安定剤等の従来公知の塗料用添加剤が配合されて成るものを例示することができる。
【0020】
着色剤としては、従来公知のものを使用することができ、これに限定されないが、カーボンブラック、アセチレンブラック等の黒色顔料;亜鉛黄、黄色酸化鉄等の黄色系染顔料;赤口黄鉛、モリブテンオレンジ等の橙色染顔料;ベンガラ、ブリリアントカーミン3B等の赤色染顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB等の紫色染顔料;紺青、コバルトブルー等の青色染顔料;ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色染顔料;亜鉛華、酸化チタン等の白色系顔料、等を例示できる。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のグリコールエーテル類等が挙げられることができ、これらを単独または2種以上を混合して使用できる。
【0021】
また紫外線硬化型インク組成物も、従来公知のものを制限なく使用することができ、紫外線硬化型樹脂組成物、及び上述した着色剤、有機溶剤、塗料用添加剤が配合されて成るものを例示できる。
紫外線硬化型樹脂組成物としては、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等の紫外線硬化型モノマー乃至プレポリマーと光ラジカル重合開始剤から成る紫外線ラジカル硬化型の樹脂組成物、或いは樹脂成分として紫外線硬化型エポキシ樹脂と、光重合開始剤としてカチオン性紫外線重合開始剤、及び必要によりそれ自体公知のカチオン重合性ビニル単量体、希釈剤、他のエポキシ樹脂、増感剤、架橋剤等を含むカチオン硬化型の樹脂組成物を例示できる。
【0022】
(保護層)
本発明のキャップにおいては、少なくとも上述した示温インクにより形成される画像及び隠蔽領域の上に、保護層を形成することが望ましい。すなわち、示温インクは紫外線により変色機能が損なわれるという性質を有することから、保護層により紫外線を反射或いは吸収して、示温インクにより形成された隠蔽領域への紫外線の到達を抑制する。
このような保護層としては、従来より金属製キャップの外面塗料として用いられていたポリエステル系塗料、エポキシフェノール系塗料、エポキシ−アミノ系塗料、ウレタン系塗料等の塗料に、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の芳香族化合物から成る紫外線吸収剤や、二酸化チタン等の無機物から成る紫外線吸収剤等が配合されている塗料組成物により形成することができる。
本発明においては特に、紫外線吸収剤として赤色酸化鉄顔料を使用し、塗料のベース樹脂100質量部に対して5〜10質量部の量で含有する塗料組成物を用いることが好適である。
赤色酸化鉄顔料は、レーザ回折散乱法で位置測定した体積基準の平均粒径が20〜70nmの範囲にあることが、ハンドリング性と分散性の点から好ましい。
かかる塗料組成物から成る保護層は、隠蔽領域を形成する示温インクの色味に影響を与えることなく、隠蔽領域の紫外線による変色機能の低下を抑制することができ、視認性を損なうことなく耐候性を向上できる。また、画像及び隠蔽領域との密着性にも優れており、画像の保護も可能になる。
保護層の厚みは、3〜6μmの範囲にあることが、印刷画像の耐候性及びを向上する上で好ましい。
【0023】
(キャップ)
本発明においては、情報コード等の画像及びこの画像の少なくとも一部を隠蔽する隠蔽領域を印刷できる限り、金属製キャップ又は樹脂製キャップの何れも用いることができる。
金属製キャップとしては、アルミニウム、アルミニウム合金等の軽金属板や、ティンフリースチール、ブリキ等の表面処理鋼板等から成る従来公知のすべての金属製キャップを使用できる。例えば、上記金属基材をプレス成形して成る天面及びスカート部から成る金属製キャップの他、スカート部から天面にかけてキャップを引裂くためのスコアが形成されたキャップ等を挙げることができる。
尚、金属素材の少なくともキャップ外面となる側には、印刷画像との密着性を高めるために、エポキシ−フェノール系塗料やポリエステル塗料等の従来公知の下地塗料から成る下地層を形成しておくことが望ましく、印刷画像の視認性を向上させる観点から、下地層に白色顔料を含有させてもよい。下地塗料の塗布量は一般に20〜65mg/cmの範囲にあることが好ましい。
【0024】
また樹脂製キャップとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の圧縮成形、射出成形、押出成形等によって成形された従来公知のキャップを使用でき、スカート部内面に螺子部を有するキャップの他、ヒンジキャップや容器口部の係合用突起と軸方向で係合する係合突起を有するキャップ等を挙げることができる。
【0025】
(印刷)
本発明のキャップにおいては、第1の示温インクにより形成される消失領域を少なくとも一部に含む情報コード等の画像、更に第2の示温インクによりこの画像の少なくとも一部を隠蔽する隠蔽画像の印刷のタイミングは、キャップの材質、形状、或いは印刷位置などを考慮し、キャップ成形前の金属板上に印刷することもできるし、キャップ成形後に印刷することもできるし、或いは容器口部へのキャッピング終了後に印刷することもできる。
例えば、容器口部へのキャッピングと同時にスカート部をカシメて螺子部の形成を行う金属製キャップの場合には、金属板の状態で複数個のキャップの天面となる部分に同時に印刷することもできるが、樹脂製キャップの場合には、キャップ成形後に天面やスカート部に各キャップに個別に印刷される。
画像及びこの画像の少なくとも一部を隠蔽する隠蔽画像は、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等従来公知の印刷方法により印刷することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のキャップは、加温された状態、或いは冷却又は加温された状態で販売されることがある、茶飲料、コーヒー飲料等の飲食料品において、販促のために懸賞等のプロモーションが行われる際に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 容器、2 金属製キャップ、3 天面、4 スカート部、10 印刷画像、11 QRコード、13 消失領域、14 隠蔽領域。
図1
図2