特許第6868520号(P6868520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868520
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】機能性成分の吸着に用いる吸着剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/10 20060101AFI20210426BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/661 20060101ALN20210426BHJP
   A61K 31/122 20060101ALN20210426BHJP
   A61K 31/353 20060101ALN20210426BHJP
   A61K 31/7012 20060101ALN20210426BHJP
   A61K 31/202 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 9/14 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 15/00 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 19/10 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20210426BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   B01J20/10 C
   B01J20/28 Z
   !A61K31/661
   !A61K31/122
   !A61K31/353
   !A61K31/7012
   !A61K31/202
   !A61P9/14
   !A61P17/00
   !A61P39/06
   !A61P29/00
   !A61P9/10 101
   !A61P9/00
   !A61P15/00
   !A61P19/10
   !A61P9/12
   !A61P3/10
   !A61P3/06
   !A61P31/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-181518(P2017-181518)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-55369(P2019-55369A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000193601
【氏名又は名称】水澤化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】村上 達朗
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 祐太
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−116373(JP,A)
【文献】 特開2005−008675(JP,A)
【文献】 特開2005−008676(JP,A)
【文献】 特開2005−006510(JP,A)
【文献】 特開平05−084283(JP,A)
【文献】 特開2016−040366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
A61K 31/00−31/327、31/33−33/44
A61P 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシチン、アスタキサンチン、ケルセチン配糖体、クロロゲン酸、イソフラボン、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、カテキン及びその誘導体、並びにガンマオリザノールからなる群より選択される機能性成分の吸着に用いる吸着剤であって、シリカ粒子とマグネシア粒子とが一体複合化したシリカ・マグネシア複合粒子から成り、オレンジII吸着量で表されるアニオン吸着能が18〜74mmol/100gの範囲にあることを特徴とする吸着剤。
【請求項2】
シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式(1):
R=Sm/Mm (1)
式中、Smは、SiO換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比(R)が0.1≦R≦3.5となる割合で含有している、請求項1に記載の吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種動植物に含まれ、サプリメントや飲料等に添加して使用され、或いは医薬品などとして使用される機能性成分の吸着に用いる吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における健康志向は、各種動植物に含まれる医療効果を有する成分を抽出し、これをサプリメントや飲料等に添加され、或いは医薬品等として使用されており、このような医療効果を有する成分は、機能性成分と呼ばれている。
【0003】
上記のような機能性成分としては、レシチン、アスタキサンチン、ケルセチン配糖体、クロロゲン酸及びイソフラボンが代表的であり、さらには、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、茶カテキン及びガンマオリザノールも知られている。
【0004】
レシチンは、例えば下記式で表され、卵黄や大豆などに含まれるリン脂質を含み、皮膚や粘膜を透過する浸透作用を有しており、痔や皮膚病の治療薬として使用されている。また、医薬用リポソームの材料、静脈注射用脂肪乳剤などとしても利用されている。
【化1】
【0005】
アスタキサンチンは、下記式で表され、藻類やエビ、鯛、鮭などに含まれる色素物質である。高い抗酸化作用を有しており、紫外線や脂質過酸化反応から生体を保護する機能を示すと考えられており、サプリメント、健康食品、スキンケア用品などの用途がある。
【化2】
【0006】
ケルセチン配糖体(例えば、ルチンなど)は、下記式で表され、蕎麦や柑橘類に含まれている。抗酸化作用、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、脳血管疾患の予防、抗腫瘍効果、降圧作用、血管弛緩作用などが報告されており、医薬品として使用されている。
【化3】
【0007】
クロロゲン酸は、下記式で表され、コーヒー豆などに含まれている。水などに渋味、酸味、甘味などの雑味を付与しているものと考えられ、各種の飲料などに添加される。
【化4】
【0008】
イソフラボンは、大豆などに含まれており、下記式で表される。化合物としては一般的に、ゲニステインなどとして市販されている。更年期障害の改善や骨粗しょう症の予防効果があるとされ、サプリメントとして使用されている。
【化5】
【0009】
リノレン酸(α−リノレン酸)、即ち、all−cis−9,12,15−オクタデカトリエン酸は、植物油に多く含まれ、下記式で表される。摂取することが必須の栄養素である必須脂肪酸であり、サプリメント、或いは飲料、ゼリーなどの食品類に配合されて使用されている。
【化6】
【0010】
エイコサペンタエン酸(EPA)は、魚油食品、肝油、ニシン、サバ、イワシ、ナンキョクオキアミなどから得られる炭素数20の長鎖不飽和脂肪酸であり、下記式で表される。血小板凝集抑制作用を有しており、高脂血症や動脈硬化症などの治療薬として使用されている。
【化7】
【0011】
ドコサヘキサエン酸(DHA)は、サバやイワシなどの魚油に多く含まれる炭素数22の不飽和脂肪酸であり、下記式で表される。精液、脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要成分であり、学習機能向上作用、制がん作用、血中脂質低下作用、網膜反射向上作用、血圧降下作用など、多くの生理作用を示し、医薬品として研究されている物質である。
【化8】
【0012】
カテキンは、下記式で表されるC1514の化合物である。
【化9】
この化合物の光学異性体(エピカテキン)や、その誘導体、具体的には、ヒドロキシ体(エピガロカテキン)、これらの没食子酸エステル(エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)は、茶カテキンとして知られる緑茶の渋み成分であり、茶葉から抽出される。このような茶カテキンは、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール調節作用、血糖値調節作用などの種々の生理活性を有しており、例えば飲料等に配合して健康食品として、或いはサプリメントとして販売されている。また、抗菌性を有していることも知られており、樹脂に配合して抗菌性部材としての使用も提案されている。
尚、抗菌性部材として使用する場合には、変色や着色を抑え、さらには水による抽出を防止するために、シリカ等の無機材料に担持されて使用される。
【0013】
また、ガンマオリザノールは、米糠の脂質に含まれており、フェルラ酸とステロールとのエステルの総称であり、CAS登録番号[11042−64−1]の物質である。コレステロールの吸収を抑える作用や更年期障害に対する効用を有しており、医薬品として使用されている。また、紫外線防止のため、化粧品にも配合される。
【0014】
上記の何れの機能性成分も、これらを含む動植物類からの抽出により単離されて使用に供されるのであるが(例えば特許文献1〜7参照)、抽出液からの単離に際して使用される吸着剤としては、酸性白土、活性白土、シリカゲル、アルミナ、活性炭等が使用されている程度であり、吸着剤についての詳細な検討は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2015−142560号公報
【特許文献2】特開平05−068585号公報
【特許文献3】特開昭54−101412号公報
【特許文献4】特開2007−54056号公報
【特許文献5】特開平08−283283号公報
【特許文献6】特開2005−82902号公報
【特許文献5】特公昭32−6395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者等は、上記の機能性成分の吸着剤について検討した結果、シリカ粒子とマグネシア粒子とが一体複合化したシリカ・マグネシア複合粒子が、上記の機能性成分の水溶液或いはアルコール溶液から該機能性成分を有効に吸着し得るという知見を得た。
【0017】
従って、本発明の目的は、動植物から採取される機能性成分の吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、レシチン、アスタキサンチン、ケルセチン配糖体、クロロゲン酸、イソフラボン、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、カテキン及びその誘導体、並びにガンマオリザノールからなる群より選択される機能性成分の吸着に用いる吸着剤であって、シリカ粒子とマグネシア粒子とが一体複合化したシリカ・マグネシア複合粒子から成り、オレンジII吸着量で表されるアニオン吸着能が18〜74mmol/100gの範囲にあることを特徴とする吸着剤が提供される。
【0019】
本発明の吸着剤においては、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式(1):
R=Sm/Mm (1)
式中、Smは、SiO換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比(R)が0.1≦R≦3.5となる割合で含有していることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の吸着剤は、前述した各種の機能性成分を含む水溶液或いはアルコール溶液に投入することにより、これらの溶液中に含まれる機能性成分を効果的に吸着することができる。従って、これらの機能性成分を各種動植物から抽出した溶液に投入して、これらの機能性成分を単離することができる。
【0021】
また、本発明において、吸着剤として使用されるシリカ・マグネシア複合粒子は、シリカ粒子とマグネシア粒子とが複合一体化したものであり、食品添加剤として使用が認められていないケイ酸マグネシウムではない。従って、本発明の吸着剤を用いて単離された機能性成分は、格別の制限なく、サプリメント、飲料、医薬品に使用することができる。
さらに、このシリカ・マグネシア複合粒子は、AlイオンやCaイオン、Feイオンといった、飲料の風味を損なう原因となる金属イオンを有していない。従って、この吸着剤から脱離した機能性成分中に、これらの金属イオンが混入することもなく、例えば、単離された機能性成分を、飲料等に添加した場合においても、飲料の風味を損なうという不都合を生じることもない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<吸着剤>
機能性成分の吸着に使用される本発明の吸着剤は、シリカ・マグネシア複合粒子からなる。
即ち、このシリカ・マグネシア複合粒子は、シリカ粒子とマグネシア粒子とが非常に微細なレベル(例えばナノレベル)で粒子同士が密着し、分離せずに一体化した構造を有しており、シリカとマグネシアとが反応してケイ酸マグネシウムが生成したり、反応による原子の組み換え等が生じているものではない。このことは、例えばXRD測定によりケイ酸マグネシウムに特有のピークが発現していないことや、アニオン性色素(オレンジII)に対する吸着量により確認することができる。
【0023】
例えば、吸着剤として使用されるシリカ・マグネシア複合粒子は、後述する実施例で示す方法により測定されるオレンジII吸着量が、18〜74mmol/100gの範囲にある。このようなオレンジII吸着量は、マグネシアに特有のアニオン吸着性に由来するものであり、シリカは、このようなアニオン吸着性は示さず、従って、オレンジII吸着量が上記範囲にあるということは、この複合粒子は、シリカ粒子とマグネシア粒子とが反応せずに複合化していることを意味する。即ち、シリカとマグネシアとが反応してケイ酸マグネシウムが生成していると、マグネシアのアニオン吸着性が損なわれるため、オレンジII吸着量は上記範囲よりもかなり小さな値となる。また、シリカ粒子とマグネシア粒子とが複合一体化しておらず、単なる混合物として存在している場合には、オレンジII吸着量は、上記範囲よりも高い値を示すか、或いは大きくばらついてしまう。アニオン吸着性を示さないシリカ粒子と、アニオン吸着性を示すマグネシア粒子とが独立して存在していることとなるからである。
【0024】
このように、シリカ粒子とマグネシア粒子とが複合一体化している複合粒子は、後述する実施例に示すように、種々の機能性成分に対して優れた吸着性を示し、シリカ粒子或いはマグネシア粒子のみでは、機能性成分に対する吸着性はかなり低く、またシリカ粒子とマグネシア粒子との単なる混合物でも、機能性成分に対する吸着性は低い。このような複合粒子の機能性成分に対する吸着性は、多くの実験により現象として確認されたものであり、優れた吸着性が何故生じているかについては、理論的に解明されるには至っていない。ただ、本発明者等は、シリカ粒子とマグネシア粒子との複合一体化により、シリカ粒子が示す物理的吸着と、マグネシア粒子が示す化学的吸着性とが相乗的に作用して、機能性成分に対する優れた吸着性が発現しているのではないかと推定している。
【0025】
また、本発明の吸着剤においては、シリカ成分とマグネシア成分とが、下記式(1):
R=Sm/Mm (1)
式中、Smは、SiO換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比(R)が0.1≦R≦3.5となる割合で含有していることが好適である。
即ち、シリカとマグネシアとが上記の量比で存在していることにより、複合一体化した状態が安定に保持される。例えば、上記の質量比(R)が3.5を超える場合或いは0.1未満の場合、シリカ或いはマグネシアの脱落を生じ易く、このため、機能性成分に対する吸着性が不安定となり、バラツキを生じ易くなるからである。
【0026】
さらに、かかるシリカ・マグネシア複合粒子では、シリカ成分とマグネシア成分が互いに遊離しておらず、緊密に複合化しているために、通常、その5質量%濃度の懸濁液のpH(25℃)は6.0〜10.0の範囲にある。
【0027】
本発明において、吸着剤として使用されるシリカ・マグネシア複合粒子は、シリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)とを、水分の存在下で均質に混合して水性スラリーとし(均質混合)、次いで熟成を行い、さらに、水分を除去することにより製造することができる。
尚、シリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)との量比は、前述した式(1)で表される質量比(R)が0.1〜3.5となるように設定すればよい。
【0028】
原料のシリカ(A)としては非晶質の含水タイプのものが好適であり、ゲル法或いは沈降法の何れで製造されたものであってもよいが、一次粒子の小さいものが好適であり、BET比表面積が40m/g以上、特に140m/g以上であるものが好適である。
また、マグネシアもしくはその水和物(B)としては、結晶子の小さく且つ経時による炭酸化が進んでいないものがよい。例えば、BET比表面積が2m/g以上、好ましくは20m/g以上、特に好ましくは50m/g以上であるマグネシア粉末が使用される。
【0029】
上記のシリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)との水分の存在下、例えば水中での均質混合では、原料の一つであるシリカ(二酸化ケイ素)がコロイド粒子乃至微細凝集粒子(1次乃至2次粒子)まで解れる。他方のマグネシア(酸化マグネシウム)も、水中に投入されて撹拌もしくは粉砕されると、溶解は殆ど起こらないが、マグネシア粒子表面の部分的な水和により、その結晶(もしくは新たに生成した水和物の結晶)の一部分或いは全部が崩壊もしくは剥離して、マグネシア(酸化マグネシウム)及び/又は酸化マグネシウム水和物からなる微細な粒子となって水中に分散される。
【0030】
上記のような水分存在下での水性スラリーの調製では、各原料(A)、(B)や水の投入順序等に制限はないが、凝集やゲル化現象(増粘)が起こると、前述した微細粒子化(ナノ粒子化)や一体複合化の進行が妨げられる虞がある。このため、水性スラリーの固形分濃度は低い方が好ましい。一方で、生産性や経済性の見地からは固形分濃度は高い方がよい。従って、固形分濃度は3〜15質量%、特に8〜13質量%であることが好ましい。
【0031】
熟成工程では、これらの微細粒子が均質に分散したスラリーから水分が除去され、固形分濃度が上昇していくと、シリカの粒子(A)とマグネシアの粒子(B)とが徐々に或いは急激に接近し、原子の交換や組み換えを伴うような化学結合を伴うことなく、一体複合化した形態に至り(一体複合化完了)、目的とするシリカ・マグネシア複合粒子が得られる。
【0032】
上記のような均質混合及び熟成は、100℃以下で行い、50〜97℃で行うことが好ましく、50〜79℃で行うことが、ゲル化を有効に防止し且つ短時間で複合一体化を行う上で好適である。
【0033】
尚、均質混合及び熟成は、攪拌翼を備えた攪拌槽中で攪拌下に行うのが一般的であるが、湿式ボールミルやコロイドミルによる粉砕もしくは分散下で行うこともできる
また、温度やスラリーの仕込み容量等によっても異なるが、少なくとも0.5時間かけて均質混合及び熟成を行うことが必要である。また、温度が高いほど、ナノ粒子の流動性が高くなり効率よく均質化するため、より短時間で行うことができる。一般には、1〜24時間、特に3〜10時間程度かけて混合及び熟成が行われる。
【0034】
熟成後には、スプレー乾燥機やスラリー乾燥機等を用いての蒸発乾燥により水分を除去するが、ろ過や遠心分離等の手段によりある程度の脱水を行った後に、箱形乾燥機、バンド乾燥機、流動層乾燥機等を用いて乾燥を行ってもよい。このとき、原料(B)の水和が少なくとも一部乃至は全部解消される。
【0035】
上記のようにして、例えば水分含有率が10質量%以下であり、脱水により原料粒子である二酸化ケイ素(シリカ)粒子とマグネシア粒子とが緊密に複合化したシリカ・マグネシア複合粒子が、顆粒状、粉状、ケーキ状或いは団塊状で得られる。これらは、必要により、粉砕・分級、或いは成形を行い、吸着に好適な粒子形状として使用に供される。
このようなシリカ・マグネシア複合粒子は、例えば水澤化学工業株式会社より、「ミズカライフ」の商品名で市販されている。
【0036】
<吸着剤としての使用>
上記のようにして得られたシリカ・マグネシア複合粒子は、機能性成分、具体的には、レシチン、アスタキサンチン、ケルセチン配糖体、クロロゲン酸、イソフラボン、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、カテキン及び茶カテキンなどのカテキン誘導体、或いはガンマオリザノールの吸着に使用される。
【0037】
即ち、上記の機能性成分の採取過程で得られる機能性成分の水溶液或いはエタノール等のアルコール溶液に、上記の吸着剤を投入し、適宜の時間、撹拌することにより、該液中の機能性成分を吸着することができる。
上記の水溶液或いはアルコール溶液は、機能性成分濃度と吸着剤の使用量に特に制限はないが、好ましくは5質量%以下の希薄溶液であってよく、通常、該溶液100質量部あたり0.001〜25質量部程度の吸着剤を使用すればよい。
【0038】
吸着後は、公知の手段によりろ過を行い、機能性成分が吸着されている吸着剤を単離することができる。
吸着された機能性成分の放出方法には特に制限がなく、従来公知の溶媒抽出法等により実施される。例えば純水中に投入され、超音波振動等の撹拌操作に供することにより吸着した機能性成分を放出させ、濃縮または溶媒除去することにより機能性成分を回収することができる。
【0039】
本発明の吸着剤は、卵黄レシチン、大豆レシチン、アスタキサンチン、ケルセチン配糖体、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、茶カテキンに対しての特に優れた吸着性を示す。
また、茶カテキンを樹脂に配合して使用する場合、先にも述べたように、着色や変色の防止、或いは耐水性(対水抽出性)を付与するために無機材料に担持させて樹脂に配合されるが、本発明の吸着剤は、茶カテキンに対する吸着性が優れているため、茶カテキンを担持させるための無機材料としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0040】
本発明の優れた効果を、次の実験例により説明する。
【0041】
(1)オレンジII吸着量
本実施例におけるオレンジII吸着能は、10mmol/L濃度のオレンジII水溶液から、1gの試料が吸着できるオレンジIIのmmol数とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、オレンジII(試薬特級、和光純薬工業(株)製)を水に溶かし、10mmol/L濃度のオレンジII水溶液を得る。この10mmol/L濃度のオレンジII水溶液20mlを50ml容の遠沈管に秤取し、試験粉末0.20gを加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により7.5時間振とうする。振とう終了後、12時間以上静置する。次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで15分処理した液の上澄みを0.5mL採取し、これをイオン交換水により200倍に希釈した液の484nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V−630)により測定した。そして、オレンジII水溶液のオレンジII含有量と484nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のオレンジII残存量を算出した。この値を、試料へのオレンジII添加量から差し引いた値をオレンジII吸着量とした。
【0042】
(2)pH
イオン交換水に吸着剤濃度が5質量%になるように吸着剤粉末を添加し、30分間撹拌した後、東亜ディーケーケー製pHメーターHM−30Rにて測定を行った。
【0043】
(3)吸着試験
表1に示す機能性成分と溶媒からなる試験溶液を用いて、各成分にに対する吸着能を評価した。吸着能は、1gの吸着剤が吸着できる量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した値を表2に示した。
先ず、それぞれの機能性成分を溶媒に溶かし、濃度0.2g/Lの機能性成分溶液を得た。この溶液30gを50ml容量の遠沈管に秤取し、吸着剤1g(対液3.3質量%)を加えて水平振とう式振とう機(アズワン シェイキングバスSB―13)により150rpmで2.5時間振とうした。
次に遠心分離機(日立工機製CR22GIII)により遠心加速度18000rpmで20分処理した液の上澄み液(試料液)を得た。試料液の吸光度を分光光度計(島津製作所製SPECTROPHOTOMETER UV―3600)により測定した。このとき、試験粉末の溶脱塩類等の影響がある場合は、あらかじめ各成分未溶解の溶媒に試験粉末を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。そして、予め作成した成分濃度と吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液の成分残存量を算出し、吸着剤添加前の成分量から差し引いた値を吸着剤の成分吸着量とした。試験はすべて2反復行い、平均値を用いた。
【0044】
下記の実施例および比較例に示す吸着剤粉末について、吸着試験の結果を表2に示す。
【0045】
(比較例1)
水澤化学工業(株)製の酸性白土ミズカエースNo.20(pH4.9)。
【0046】
(比較例2)
ビーカーに5質量%硫酸水溶液220mlを採り、90℃に加熱した。そこへ比較例1の酸性白土30gを添加し、液温を90℃に維持した状態で撹拌し、30分間酸処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水でろ過洗浄し、洗浄後のろ過ケーキを110℃にて乾燥し、粉砕、分級して弱酸処理白土粉末を得た(pH3.1)。
【0047】
(比較例3)
水澤化学工業(株)製の二酸化ケイ素ミズカソーブC−6(pH6.5)。
【0048】
(実施例1)
水澤化学工業(株)製の二酸化ケイ素と酸化マグネシウムを主成分とする複合吸着剤ミズカライフF−2G(pH8.9、R=1.9、アニオン吸着能55mmol/100g)をシリカ粒子とマグネシア粒子とが一体複合化したシリカ・マグネシア複合粒子として使用した。
【0049】
(比較例4)
水澤化学工業(株)製の活性白土ガレオンアースV2(pH3.5)。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】