特許第6868541号(P6868541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6868541修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868541
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20210426BHJP
   C07H 19/20 20060101ALI20210426BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20210426BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20210426BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20210426BHJP
   C12N 15/00 20060101ALN20210426BHJP
   C12P 19/34 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C07H19/10CSP
   C07H19/20
   C12Q1/6869
   !C12M1/00 A
   !C12M1/34 Z
   !C12N15/00
   !C12P19/34 A
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-233295(P2017-233295)
(22)【出願日】2017年12月5日
(62)【分割の表示】特願2015-561957(P2015-561957)の分割
【原出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-39842(P2018-39842A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年1月4日
【審判番号】不服2019-13260(P2019-13260/J1)
【審判請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】シャオハイ リュー
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジョフリー ポール スミス
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−509040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
REGISTRY/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸塩基と、3’−炭素原子に共有結合した構造−O−CH(R)Nを形成する除去可能な3’−ヒドロキシ保護基を有する2’−デオキシリボースの糖部分とを含む修飾されたヌクレオチド分子であって、ここで
Rは、−C(R(Rおよび−C(=O)NRからなる群から選択され、
は、水素であり、
は、ハロゲンであり、
は、水素であり、
は、C1〜6アルキルであり、
mは、1または2の整数であり、
nは、1または2の整数であり、但し、m+nの合計は3に等しく、かつ
前記核酸塩基は、プリン、デアザプリン、シトシン、チミン、またはウラシルを含み、ここで、検出可能な標識は、プリンまたはデアザプリンの7位においてリンカーを介して前記プリンまたはデアザプリンに結合するか、あるいは、シトシン、チミンまたはウラシルの5位においてリンカーを介して前記シトシン、チミンまたはウラシルに結合する、修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項2】
前記核酸塩基がデアザプリンである、請求項1に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項3】
Rが、−CHFまたは−CHFである、請求項1または2に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項4】
Rが、−C(=O)NRであり、Rは水素であり、RはC1〜6アルキルである、請求項1または2に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項5】
前記核酸塩基が、切断可能なリンカーを介して検出可能な標識に結合している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項6】
前記切断可能なリンカーは、酸に不安定であるか、光に不安定であるか、またはジスルフィド部分を含有する、請求項5に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項7】
前記切断可能なリンカーがジスルフィド部分を含有する、請求項6に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項8】
前記切断可能なリンカーが、前記3’−ヒドロキシ保護基に類似する部分を含む、請求項5に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項9】
前記切断可能なリンカーが、前記3’−ヒドロキシ保護基と同じ条件下で切断される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項10】
前記検出可能な標識がフルオロフォアである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の修飾されたヌクレオチド分子。
【請求項11】
ヌクレオチド残基を含むオリゴヌクレオチドであって、該ヌクレオチド残基が、請求項1〜10のいずれか1項に記載の修飾されたヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが固体支持体に結合している、請求項11に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
配列決定反応における標的一本鎖ポリヌクレオチドと相補的な成長中のポリヌクレオチドを調製する方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子を該成長中の相補的なポリヌクレオチドに取り込む工程を含み、ここで、該修飾されたヌクレオチド分子の取り込みは、該成長中の相補的なポリヌクレオチドへのいかなるその後のヌクレオチドの導入も防止する、方法。
【請求項14】
前記修飾されたヌクレオチド分子の取り込みが、末端トランスフェラーゼ、末端ポリメラーゼまたは逆転写酵素によって達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記修飾されたヌクレオチド分子の取り込みが、末端ポリメラーゼによって達成される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
標的一本鎖ポリヌクレオチドの配列を決定するための方法であって、
相補的なヌクレオチド分子の連続的な取り込みをモニターする工程であって、ここで、取り込まれる少なくとも1つの相補的なヌクレオチド分子が、請求項5〜10のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子である工程、および
該修飾されたヌクレオチド分子のアイデンティティーを検出する工程
を含む、方法。
【請求項17】
前記修飾されたヌクレオチドのアイデンティティーが、前記検出可能な標識を検出することによって判定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記3’−ヒドロキシ保護基および前記検出可能な標識が、次の相補的なヌクレオチド分子を導入する前に除去される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記3’−ヒドロキシ保護基および前記検出可能な標識が、単一工程の化学反応において除去される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
複数の請求項1〜10のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子を含み、該修飾されたヌクレオチド分子のそれぞれは異なる検出可能な標識を含む、キット。
【請求項21】
4つの修飾されたヌクレオチド分子を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
酵素と、該酵素の作用に適した緩衝液とをさらに含む、請求項20または21に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
発明の分野
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、3’−ヒドロキシ保護基を含む修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオシド、およびポリヌクレオチド配列決定方法における該ヌクレオチドまたはヌクレオシドの使用に関する。本明細書に記載するいくつかの実施形態は、3’−ヒドロキシ保護したヌクレオチドまたはヌクレオシドを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
分子の研究の進歩は、一部は、分子または分子の生物学的反応を特徴づけるのに使用される技術の改良によってもたらされてきた。特に、核酸であるDNAおよびRNAの研究は、配列分析におよびハイブリッド形成事象の研究に使用される技術を開発することによって利益を受けてきた。
【0003】
核酸研究を改良してきた技術の一例は、作製された固定した核酸のアレイの開発である。これらのアレイは典型的には、固体支持材料上に固定したポリヌクレオチドの高密度マトリックスからなる。例えば、Fodorら、Trends Biotech.12:19〜26、1994を参照のこと。この文献は、マスクによって保護されているが、適切に修飾されたヌクレオチドホスホルアミダイトの結合を許容するよう規定された領域で曝露されている、化学的に増感されたガラス表面を用いて核酸をアセンブリする方法を記載している。作製されたアレイはまた、事前に決めておいた位置で固体支持体上に既知のポリヌクレオチドを「点形成する」技術によって製造することができる(例えば、Stimpsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.92:6379〜6383、1995)。
【0004】
アレイに結合した核酸のヌクレオチド配列を決定する1つの方法は、「合成による配列決定」または「SBS」と呼ばれる。DNAの配列を決定するためのこの技術は、理想的には、配列決定中の核酸とは反対側の正しい相補的ヌクレオチドの制御された(すなわち、一度に1つの)取り込みを必要とする。このことによって、各ヌクレオチド残基が一度に1つ配列決定されるため、複数サイクルにおいてヌクレオチドを付加することによる正確な配列決定が可能となり、したがって、制御されていない一連の取り込みが生じることを防止する。取り込まれたヌクレオチドは、標識部分の除去およびその後の次のラウンドの配列決定の前に、該ヌクレオチドに結合する適切な標識を用いて読み取られる。
【0005】
単一の取り込みのみが生じることを確実にするために、構造修飾(「保護基」)が、成長している鎖に付加される各標識されたヌクレオチドに付加され、ヌクレオチドが1つだけ取り込まれることを確実にする。保護基を有するヌクレオチドが付加された後、次に保護基は、配列決定中のDNAの完全性を妨げない反応条件下で除去される。次に、配列決定サイクルは、次の保護され標識されたヌクレオチドの取り込みを続行することができる。
【0006】
DNA配列決定において有用であるために、ヌクレオチド、より一般的にはヌクレオチドトリホスフェートは、概して、ヌクレオチド上の塩基が一度付加されたとき、ヌクレオチドをポリヌクレオチド鎖に取り込むのに使用されるポリメラーゼが複製し続けることを防止するような3’−ヒドロキシ保護基を必要とする。ヌクレオチドに付加することができ、かつ依然として適切であり得る基の種類には、多くの制限がある。保護基は、ポリヌクレオチド鎖への損傷を生じることなく糖部分から容易に除去できるとともに、同時に追加的なヌクレオチド分子がポリヌクレオチド鎖に付加されることを防止すべきである。さらに、修飾されたヌクレオチドは、該ヌクレオチドをポリヌクレオチド鎖に取り込むのに使用されるポリメラーゼまたは他の適切な酵素によって許容される必要がある。理想的な保護基はそれゆえ、長期間の安定性を呈し、ポリメラーゼ酵素によって効率的に取り込まれ、二次的なもしくはさらなるヌクレオチドの取り込みの遮断を生じ、ポリヌクレオチド構造に対する損傷を生じない温和な条件下(好ましくは水性条件下)で除去される能力を有する。
可逆的保護基は、以前に記載されている。例えばMetzkerら(Nucleic Acids Research、22(20):4259〜4267、1994)は、8個の3’修飾した2−デオキシリボヌクレオシド5’−トリホスフェート(3’修飾したdNTP)の合成および使用、ならびに取り込み活性についての2つのDNAテンプレートアッセイにおける検査を開示している。WO2002/029003は、ポリメラーゼ反応において成長中のDNA鎖上で3’−OH基をキャッピングするためのアリル保護基の使用を含み得る配列決定方法を記載している。
加えて、本発明者らは、その全体が参照により本明細書により組み込まれる国際出願公開WO2004/018497号において、いくつかの可逆的保護基の開発、およびDNA適合条件下でそれらを脱保護する方法を既に報告した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/029003号
【特許文献2】国際公開第2004/018497号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Fodorら、Trends Biotech.12:19〜26、1994
【非特許文献2】Stimpsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.92:6379〜6383、1995
【非特許文献3】Metzkerら(Nucleic Acids Research、22(20):4259〜4267、1994)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、プリン塩基またはピリミジン塩基と、3’−炭素原子に共有結合した構造−O−C(R)を形成する除去可能な3’−ヒドロキシ保護基を有するリボースまたはデオキシリボースの糖部分とを含む、修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子に関し、ここで、
Rは、水素、−C(R(R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(RO(CHNRおよび−C(RO−Ph−C(=O)NR1011からなる群から選択され、
各RおよびRは、水素、任意に置換されたアルキル、またはハロゲンから独立して選択され、
は、水素または必要に応じて置換されたアルキルから選択され、
各RおよびRは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、または必要に応じて置換されたアラルキルから独立して選択され、
各RおよびRは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、またはハロゲンから選択され、
各R、R、R10およびR11は、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、または必要に応じて置換されたアラルキルから独立して選択され、
mは、0〜3の整数であり、かつ
nは、0〜3の整数であり、但し、m+nの合計は3に等しく、かつ
pは、0〜6の整数であり、但し、
およびRは両方ともハロゲンであることはできず、かつ
少なくとも1つのRは水素ではない。
【0010】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、本明細書に記載する修飾されたヌクレオチド分子を成長中の相補的なポリヌクレオチドに取り込む工程を含む、配列決定反応における標的一本鎖ポリヌクレオチドと相補的な成長中のポリヌクレオチドを調製する方法に関し、ここで、修飾されたヌクレオチドの取り込みは、成長中の相補的なポリヌクレオチドへのいかなるその後のヌクレオチドの導入も防止する。
【0011】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、相補的なヌクレオチドの連続的な取り込みをモニターする工程であって、ここで、取り込まれる少なくとも1つの相補的なヌクレオチドは、本明細書に記載する修飾されたヌクレオチド分子である工程、および修飾されたヌクレオチド分子のアイデンティティーを検出する工程を含む、標的一本鎖ポリヌクレオチドの配列を決定するための方法に関する。いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオチド分子の取り込みは、末端トランスフェラーゼ、末端ポリメラーゼまたは逆転写酵素によって達成される。
【0012】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、本明細書に記載する複数の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子、およびそのための包装材料を含むキットに関する。いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオチドのアイデンティティーは、塩基に結合した検出可能な標識を検出することによって決定される。いくつかのこのような実施形態において、3’−ヒドロキシ保護基および検出可能な標識は、次の相補的なヌクレオチドを導入する前に除去される。いくつかのこのような実施形態において、3’−ヒドロキシ保護基および検出可能な標識は、単一工程の化学反応において除去される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
プリン塩基またはピリミジン塩基と、3’−炭素原子に共有結合した構造−O−C(R)を形成する除去可能な3’−ヒドロキシ保護基を有するリボースまたはデオキシリボースの糖部分とを含む修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子であって、ここで
Rは、水素、−C(R(R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(RO(CHNRおよび−C(RO−Ph−C(=O)NR1011からなる群から選択され、
各RおよびRは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、またはハロゲンから独立して選択され、
は、水素または必要に応じて置換されたアルキルから選択され、
各RおよびRは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、または必要に応じて置換されたアラルキルから独立して選択され、
各RおよびRは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、またはハロゲンから選択され、
各R、R、R10およびR11は、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、または必要に応じて置換されたアラルキルから独立して選択され、
mは、0〜3の整数であり、
nは、0〜3の整数であり、但し、m+nの合計は3に等しく、かつ
pは、0〜6の整数であり、但し、
およびRは両方ともハロゲンであることはできず、かつ
少なくとも1つのRは水素ではない、修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目2)
Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(R(Rである、項目1に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目3)
−C(R(Rが、−CHF、−CHF、−CHClまたは−CHClから選択される、項目1または2に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目4)
−C(R(Rが−CHFである、項目1〜3のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目5)
−C(R(Rが−CHFである、項目1〜3のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目6)
Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(=O)ORである、項目1に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目7)
が水素である、項目6に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目8)
Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(=O)NRである、項目1に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目9)
およびRが両方とも水素である、項目1または8に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目10)
が水素であり、RがC1−6アルキルである、項目1または8に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目11)
およびRが両方ともC1−6アルキルである、項目1または8に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目12)
Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(RO(CHNRである、項目1に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。(項目13)
が両方とも水素である、項目1または12に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目14)
およびRが両方とも水素である、項目1、12および13のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目15)
pが0である、項目1および12〜14のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目16)
pが6である、項目1および12〜14のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目17)
Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(RO−Ph−C(=O)NR1011である、項目1に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目18)
が両方とも水素である、項目1または17に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目19)
10およびR11が両方とも水素である、項目1、17および18のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目20)
10が水素であり、R11がアミノ置換アルキルである、項目1、17および18のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目21)
前記3’−ヒドロキシ保護基が、ホスフィンを用いた脱保護反応において除去される、項目1〜14のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目22)
前記ホスフィンが、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THP)である、項目21に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目23)
前記塩基が、切断可能なリンカーまたは切断不可能なリンカーを介して検出可能な標識に結合している、項目1〜22のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目24)
前記3’−ヒドロキシ保護基が、切断可能なリンカーまたは切断不可能なリンカーを介して検出可能な標識に結合している、項目1〜22のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目25)
前記リンカーが切断可能である、項目23または24に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目26)
前記検出可能な標識がフルオロフォアである、項目23〜25のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目27)
前記リンカーは、酸に不安定であるか、光に不安定であるか、またはジスルフィド結合を含有する、項目23〜26のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子。
(項目28)
配列決定反応における標的一本鎖ポリヌクレオチドと相補的な成長中のポリヌクレオチドを調製する方法であって、項目1〜27のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子を該成長中の相補的なポリヌクレオチドに取り込む工程を含み、ここで、該修飾されたヌクレオチドの取り込みは、該成長中の相補的なポリヌクレオチドへのいかなるその後のヌクレオチドの導入も防止する、方法。
(項目29)
前記修飾されたヌクレオチド分子の組み込みが、末端トランスフェラーゼ、末端ポリメラーゼまたは逆転写酵素によって達成される、項目28に記載の方法。
(項目30)
標的一本鎖ポリヌクレオチドの配列を決定するための方法であって、
相補的なヌクレオチドの連続的な取り込みをモニターする工程であって、ここで、取り込まれる少なくとも1つの相補的なヌクレオチドが、項目23〜27のいずれか一項に記載の修飾されたヌクレオチド分子である工程、および
該修飾されたヌクレオチド分子のアイデンティティーを検出する工程
を含む、方法。
(項目31)
前記修飾されたヌクレオチドのアイデンティティーが、前記塩基に結合した前記検出可能な標識を検出することによって判定される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記3’−ヒドロキシ保護基および前記検出可能な標識が、次の相補的なヌクレオチドを導入する前に除去される、項目30または31に記載の方法。
(項目33)
前記3’−ヒドロキシ保護基および前記検出可能な標識が、単一工程の化学反応において除去される、項目32に記載の方法。
(項目34)
項目1〜27のいずれか一項に記載の複数の修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子と、そのための包装材料とを含む、キット。
(項目35)
酵素と、該酵素の作用に適した緩衝液とをさらに含む、項目34に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、種々の3’−OH保護基を図示する。
【0014】
図1B図1Bは、種々の3’−OH保護基の熱安定性を図示した。
【0015】
図2A図2Aは、3つの異なる3’−OH保護基の脱保護速度曲線を図示する。
【0016】
図2B図2Bは、3つの異なる3’−OH保護基の脱保護半減期のチャートを示す。
【0017】
図3図3は、比較における熱安定性の3’−OH保護基および標準的な保護基を有する種々の修飾されたヌクレオチドの位相化(phasing)値および前位相化(prephasing)値を示す。
【0018】
図4A図4Aは、取り込み混合物(IMX)におけるmono−F ffNs−A異性体の2×400bp配列決定データを示す。
【0019】
図4B図4Bは、取り込み混合物(IMX)におけるmono−F ffNs−B異性体の2×400bp配列決定データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
一実施形態は、3’−OH保護基を含む修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオシドである。一実施形態において、3’−OH保護基は、モノフルオロメチル置換したアジドメチル保護基である。別の実施形態において、3’−OH保護基は、C−アミド置換したアジドメチル保護基である。さらに別の実施形態は、ジフルオロメチル置換したアジドメチル3’−OH保護基を有する修飾されたヌクレオチドに関する。
定義
【0021】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。用語「を含んでいる(including)」ならびに「を含む(include)」、「を含む(includes)」および「を含んだ(included)」などの他の形態の使用は、限定的でない。用語「を有している(having)」、ならびに「を有する(have)」、「を有する(has)」、および「を有した(had)」などの他の形態の使用は、限定的でない。本明細書で使用する場合、移行句(transitional phrase)においても特許請求の範囲の本文においても、用語「を含む(comprise(s))」および「を含んでいる(comprising)」は、解放端の意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、句「少なくとも有している(having at least)」または句「少なくとも含んでいる(including at least)」と同義に解釈されるべきである。例えば、プロセスとの関連で使用する場合、用語「を含んでいる(comprising)」は、該プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加的な工程を含むかもしれないことを意味する。化合物、組成物、またはデバイスとの関連で使用する場合、用語「を含んでいる(comprising)」は、該化合物、組成物、またはデバイスが少なくとも列挙された特徴または構成要素を含むが、追加的な特徴または構成要素も含むかもしれないことを意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、一般的な有機物の略語を次のとおり定義する。
Ac アセチル
AcO 無水酢酸
aq. 水性(aqueous)
Bn ベンジル
Bz ベンゾイル
BOCまたはBoc tert−ブトキシカルボニル
Bu n−ブチル
cat. 触媒的
Cbz カルボベンジルオキシ
℃ 摂氏温度
dATP デオキシアデノシントリホスフェート
dCTP デオキシシチジントリホスフェート
dGTP デオキシグアノシントリホスフェート
dTTP デオキシチミジントリホスフェート
ddNTP(s) ジデオキシヌクレオチド(類)
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DCA ジクロロ酢酸
DCE 1,2−ジクロロエタン
DCM 塩化メチレン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMA ジメチルアセトアミド
DME ジメトキシエタン
DMF N,N’−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
ffN 完全機能性ヌクレオチド
g グラム
GPC ゲル浸透クロマトグラフィー
hまたはhr 時間
iPr イソプロピル
KPi pH7.0の10mMリン酸カリウム緩衝液
KPS 過硫酸カリウム
IPA イソプロピルアルコール
IMX 取り込み混合物
LCMS 液体クロマトグラフィー−質量分析
LDA ジイソプロピルアミドリチウム
mまたはmin 分
mCPBA メタ−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH メタノール
MeCN アセトニトリル
Mono−F −CH
Mono−F ffN アジドメチル3’−OH保護基のメチレン位において置換した−CHFを有する修飾されたヌクレオチド
mL ミリリットル
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
NaN アジ化ナトリウム
NHS N−ヒドロキシスクシンイミド
PG 保護基
Ph フェニル
ppt 沈殿物
rt 室温
SBS 合成による配列決定
TEA トリエチルアミン
TEMPO (2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル
TCDI 1,1’−チオカルボニルジイミダゾール
Tert、t 三級
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TEMED テトラメチルエチレンジアミン
μL マイクロリットル
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「アレイ」とは、1つもしくはそれより多くの基質に結合している異なるプローブ分子の集団であって、この異なるプローブ分子が、相対的な位置に従って互いに区別することができるような、プルーブ分子の集団を指す。アレイには、基質上の異なるアドレス指定可能な位置に各々位置付けられる異なるプローブ分子が含まれ得る。あるいは、またはさらに、アレイは、異なるプローブ分子を各々担持する個別の基質を含むことができ、ここで、この異なるプローブ分子は、基質が結合している表面上の基質の位置、もしくは液体中の基質の位置によって識別することができる。個別の基質が表面上に位置付けられている例示的なアレイとして、例えば、米国特許第6,355,431B1号、US2002/0102578およびPCT公開WO00/63437号に記載されるような、ウェル中にビーズを含むものが挙げられるが、これに限定されない。液体アレイ(例えば、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)などのマイクロ流体デバイスを用いたもの)中のビーズを区別するために本発明で使用することができる例示的なフォーマットは、例えば、米国特許第6,524,793号に記載されている。本発明において使用することができるアレイのさらなる例としては、米国特許第5,429,807号、第5,436,327号、第5,561,071号、第5,583,211号、第5,658,734号、第5,837,858号、第5,874,219号、第5,919,523号、第6,136,269号、第6,287,768号、第6,287,776号、第6,288,220号、第6,297,006号、第6,291,193号、第6,346,413号、第6,416,949号、第6,482,591号、第6,514,751号および第6,610,482号、ならびにWO93/17126、WO95/11995、WO95/35505、欧州特許第742 287号および欧州特許第799 897号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「共有結合した(covalently attached)」または「共有結合した(covalently bonded)」とは、原子間における電子対の共有を特徴とする化学結合の形成を指す。例えば、共有結合したポリマー被膜とは、他の手段、例えば付着または静電相互作用による表面への結合と比較して、基質の官能化した表面との化学結合を形成するポリマー被膜を指す。表面に共有結合したポリマーは、共有結合に加えた手段によって結合することもできることが認識される。
【0025】
本明細書で使用する場合、あらゆる「R」基(例えば、R、R、R、R、R、R、およびRであるが、これらに限定されない)は、示される原子に結合することができる置換基を表す。R基は、置換されていても、非置換であってもよい。2つの「R」基が「一体となって」いると記載される場合、該R基および該R基が結合する原子は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環を形成することができる。例えば、限定されないが、RおよびR、またはR、R、もしくはRと、これらが結合する原子とが「一体となって」いるまたは「互いに結合して」いると示される場合、それらは環を形成するように互いに共有結合していることを意味し、その一例を以下に示す。
【化1】
【0026】
基が「必要に応じて置換されて」いると記載される場合は常に、該基は、非置換であってもよく、または示される置換基のうちの1つもしくはそれより多くで置換されていてもよい。同様に、基が「非置換または置換」と記載される場合、置換されているとき、置換基は、1つもしくはそれより多くの示される置換基から選択されてよい。置換基が示されていない場合、示された「必要に応じて置換された」または「置換された」基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、アミノ、一置換アミノ基、二置換アミノ基、およびこれらの保護された誘導体を含むがそれらに限定されない官能基の群から個々にかつ独立して選択される1つもしくはそれより多くの基で、個々にかつ独立して置換されていてもよいことが意味される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「アルキル」とは、完全に飽和した(二重結合も三重結合もない)炭化水素基を含む直鎖または分岐鎖炭化水素鎖を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有してもよい(これが本明細書で現れる場合は常に、「1〜20」などの数値範囲は、終点(endpopint)を含む与えられた範囲における各整数を指し、例えば、「1〜20個の炭素原子」とは、該アルキル基は1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、最多20個の(かつ20を含む)炭素原子からなっていてもよいことを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「アルキル」の出現時にもあてはまる)。アルキル基はまた、約7〜約10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってよい。アルキル基はまた、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルであってよい。化合物のアルキル基は、「C−Cアルキル」または類似の呼称で指定されてもよい。例に過ぎないが、「C−Cアルキル」は、アルキル鎖中に1〜4個の炭素原子がある、すなわち、該アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルから選択されることを示す。典型的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられるが、決してこれらに限定されない。該アルキル基は、置換または非置換であってよい。
【0028】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」とは、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖において1つもしくはそれより多くの二重結合を含有するアルキル基を指す。アルケニル基は、非置換または置換されていてよい。
【0029】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」とは、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖において1つもしくはそれより多くの三重結合を含有するアルキル基を指す。アルキニル基は、非置換または置換されていてよい。
【0030】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」とは、完全に飽和した(二重結合も三重結合もない)単環式または多環式の炭化水素環系を指す。2つもしくはそれより多くの環から構成される場合、該環は縮合した様式で互いに結合していてもよい。シクロアルキル基は、環の中に3〜10個の原子を含有することができる。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、環の中に3〜8個の原子を含有することができる。シクロアルキル基は非置換または置換されていてよい。典型的なシクロアルキル基として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられるが、決してこれらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用する場合、「アリール」とは、その環のうちの少なくとも1つの全体にわたって完全に非局在化したπ電子系を有する炭素環式(すべて炭素)、単環式、または多環式の芳香環系(例えば、2つの炭素環式環が化学結合を共有する、縮合環系、架橋環系またはスピロ環系(例えば、1つもしくはそれより多くのアリール環とともに、1つもしくはそれより多くのアリール環もしくは非アリール環)が挙げられる)を指す。アリール基における炭素原子の数は、変化し得る。例えば、いくつかの実施形態において、アリール基は、C−C14アリール基、C−C10アリール基、またはCアリール基であることができる。アリール基の例としては、ベンゼン、ナフタレン、およびアズレンが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は、置換または非置換であってよい。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ヘテロシクリル」とは、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、S)を含む環系を指す。このような系は、不飽和であることができ、何らかの不飽和を含むことができ、または何らかの芳香族ポーションを含有することができ、もしくは全部芳香族であることができる。ヘテロシクリル基は、非置換または置換されていてよい。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」とは、1つもしくはそれより多くのヘテロ原子、すなわち、窒素、酸素、および硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素と、少なくとも1つの芳香環とを含有する単環式もしくは多環式の芳香環系(完全に非局在化したπ電子系を有する少なくとも1つの環を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環における原子の数は、変化し得る。例えば、いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、その環に4〜14個の原子を、その環に5〜10個の原子を、またはその環に5〜6個の原子を含有することができる。さらに、用語「ヘテロアリール」は、少2つの環(例えば、なくとも1つのアリール環および少なくとも1つのヘテロアリール環、または少なくとも2つのヘテロアリール環)が少なくとも1つの化学結合を共有する縮合環系を含む。ヘテロアリール環の例としては、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソキサゾール、ベンゾイソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、およびトリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換または非置換であってよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、「複素脂環式」または「ヘテロアリシクリル」とは、3員、4員、5員、6員、7員、8員、9員、10員、最大18員の単環式、二環式、および三環式の環系を指し、ここで、炭素原子は1〜5個のヘテロ原子とともに、該環系を構成する。しかしながら、複素環は、完全に非局在化したπ電子系が全ての環全体にわたっては生じないような方法で置かれた1つもしくはそれより多くの不飽和結合を必要に応じて含有してもよい。ヘテロ原子は、酸素、硫黄、および窒素から独立して選択される。複素環はさらに、オキソ系およびチオ系(例えば、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、および環状カルバマート)を定義に含めるように、1つもしくはそれより多くのカルボニル官能基またはチオカルボニル官能基を含有してもよい。2つもしくはそれより多くの環から構成される場合、該環は、縮合した様式で互いに結合していてもよい。追加的に、複素脂環式中のいずれの窒素も四級化されていてよい。ヘテロアリシクリル基または複素脂環式基は、非置換または置換されていてよい。このような「複素脂環式」基または「ヘテロアリシクリル」基の例としては、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,3−オキサチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソキサゾリン、イソキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルフォリン、オキシラン、ピペリジンN−オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、4−ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2−オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H−ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルフォリン、チアモルフォリンスルホキシド、チアモルフォリンスルホン、およびこれらのベンゾ縮合類似体(例えば、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3,4−メチレンジオキシフェニル)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用する場合、「アラルキル」および「アリール(アルキル)」とは、低級アルキレン基を介して置換基として結合したアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン基およびアリール基は、置換または非置換であってよい。例としては、ベンジル、2−フェニルアルキル、3−フェニルアルキル、およびナフチルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアラルキル」および「ヘテロアリール(アルキル)」とは、低級アルキレン基を介して置換基として結合したヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキルの低級アルキレン基およびヘテロアリール基は、置換または非置換であってよい。例としては、2−チエニルアルキル、3−チエニルアルキル、フリルアルキル、チエニルアルキル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキル、ならびにこれらのベンゾ縮合類似体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用する場合、「アルコキシ」とは、式−ORを指し、式中Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはシクロアルキニルであり、上記のとおり定義される。アルコキシの非限定的なリストは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、およびtert−ブトキシである。アルコキシは、置換または非置換であってよい。
【0038】
本明細書で使用する場合、「C−アミド」基とは、「−C(=O)N(R)」基を指し、式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、または(ヘテロアリシクリル)アルキルであることができる。C−アミドは、置換または非置換であってよい。
【0039】
本明細書で使用する場合、「N−アミド」基とは、「RC(=O)N(R)−」基を指し、式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、または(ヘテロアリシクリル)アルキルであることができる。N−アミドは、置換または非置換であってよい。
【0040】
用語「ハロゲン原子」、「ハロゲン」または「ハロ」は、本明細書で使用する場合、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素などの、元素周期表の7列目の放射線安定性原子のうちのいずれか1つを意味する。
【0041】
用語「アミン」とは、本明細書で使用する場合、−NH基を指し、式中、1つもしくはそれより多くの水素はR基によって必要に応じて置換することができる。Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、または(ヘテロアリシクリル)アルキルであることができる。
【0042】
用語「アルデヒド」とは、本明細書で使用する場合、−R−C(O)H基を指し、式中Rは、存在しなくてもよく、またはアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、シクロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、ヘテロアリシクリレン、アラルキレン、もしくは(ヘテロアリシクリル)アルキレンから独立して選択されてもよい。
【0043】
用語「アミノ」とは、本明細書で使用する場合、−NH基を指す。
【0044】
用語「ヒドロキシ」とは、本明細書で使用する場合、−OH基を指す。
【0045】
用語「シアノ」基とは、本明細書で使用する場合、「−CN」基を指す。
【0046】
用語「アジド」とは、本明細書で使用する場合、−N基を指す。
【0047】
用語「チオール」とは、本明細書で使用する場合、−SH基を指す。
【0048】
用語「カルボン酸」とは、本明細書で使用する場合、−C(O)OHを指す。
【0049】
用語「チオシアネート」とは、本明細書で使用する場合、−S−C≡N基を指す。
【0050】
用語「オキソアミン」とは、本明細書で使用する場合、−O−NH基を指し、式中−NHのうちの1つもしくはそれより多くの水素は、R基によって必要に応じて置換することができる。Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、または(ヘテロアリシクリル)アルキルであることができる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、および1つもしくはそれより多くのリン酸基を含む。これらは、核酸配列の単量体単位である。RNAにおいて、この糖はリボースであり、DNAにおいて、デオキシリボース、すなわちリボース中に存在するヒドロキシル基を欠いている糖である。この窒素含有複素環式塩基は、プリン塩基またはピリミジン塩基であることができる。プリン塩基として、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにこれらの修飾された誘導体もしくは類似体が挙げられる。ピリミジン塩基として、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、ならびにこれらの修飾された誘導体もしくは類似体が挙げられる。デオキシリボースのC−1原子は、ピリミジンのN−1またはプリンのN−9に結合している。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドと構造上類似しているが、リン酸部分を失っている。ヌクレオシド類似体の一例は、標識がその塩基に結合していて、その糖分子に結合したリン酸基がないものである。用語「ヌクレオシド」は、本明細書において、当業者によって理解されるとおりの通常の意味で使用される。例としては、リボース部分を含むリボヌクレオシドおよびデオキシリボース部分を含むデオキシリボヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。修飾されたペントース部分は、酸素原子が炭素と置換されており、そして/または炭素が硫黄または酸素原子と置換されている、ペントース部分である。「ヌクレオシド」は、置換された塩基および/または糖部分を有することができる単量体である。追加的に、ヌクレオシドは、より大きなDNAおよび/またはRNAのポリマーおよびオリゴマーへと取り込まれていてよい。
【0053】
用語「プリン塩基」は、本明細書において、当業者によって理解されるとおりの通常の意味で使用され、その互変異性体を含む。同様に、用語「ピリミジン塩基」は、本明細書において、当業者によって理解されるとおりの通常の意味で使用され、その互変異性体を含む。必要に応じて置換されたプリン塩基の非限定的なリストとして、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、アロキサンチン、7−アルキルグアニン(例えば、7−メチルグアニン)、テオブロミン、カフェイン、尿酸およびイソグアニンが挙げられる。ピリミジン塩基の例としては、シトシン、チミン、ウラシル、5,6−ジヒドロウラシルおよび5−アルキルシトシン(例えば、5−メチルシトシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用する場合、「誘導体」または「類似体」は、修飾された塩基部分および/または修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチド誘導体または合成ヌクレオシド誘導体を意味する。このような誘導体および類似体は、例えば、Scheit、Nucleotide Analogs(John Wiley & Son,1980)およびUhlmanら、Chemical Reviews 90:543〜584、1990において論議されている。ヌクレオチド類似体はまた、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、ホスホルアニリデートおよびホスホルアミデート結合を含む修飾されたホスホジエステル結合を含むことができる。「誘導体」、「類似体」および「修飾された」は、本明細書で使用する場合、交換可能に使用してもよく、本明細書に定義される用語「ヌクレオチド」および「ヌクレオシド」によって包含される。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「ホスフェート」は、当業者によって理解されるとおりの通常の意味で使用され、そのプロトン化形態(例えば、
【化2】
)を含む。本明細書で使用する場合、用語「モノホスフェート」、「ジホスフェート」、および「トリホスフェート」は、当業者によって理解されるとおりの通常の意味で使用され、プロトン化形態を含む。
【0056】
用語「保護基(protecting group)」および「保護基(protecting groups)」とは、本明細書で使用する場合、分子中に存在する基が望まない化学反応を起こすことを防止するために、分子に付加される任意の原子または原子の群を指す。「保護基」および「ブロッキング基」は、交換可能に使用することができる場合がある。
【0057】
本明細書で使用する場合、接頭辞「光(photo)」または「光(photo−)」は、光または電磁放射に関することを意味する。この用語は、スペクトルの放射線部分、マイクロ波部分、赤外線部分、可視光線部分、紫外線部分、X線もしくはγ線部分として一般に公知の範囲のうちの1つもしくはそれより多くを含むがこれらに限定されない電磁スペクトルの全部または一部を包含することができる。スペクトルの部分は、本明細書に示す金属などの、表面の金属領域によって遮断されるものであることができる。あるいは、またはさらに、スペクトルの部分は、表面の介在性領域(例えば、ガラス、プラスチック、シリカ、または本明細書に示す他の材料でできた領域)を通過するものであることができる。特定の実施形態において、金属を通過できる放射線を使用することができる。あるいは、またはさらに、ガラス、プラスチック、シリカ、または本明細書に示す他の材料によって遮蔽される放射線を使用することができる。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「位相化」とは、3’終結因子およびフルオロフォアの不完全な除去、ならびに与えられた配列決定サイクルにおいてポリメラーゼによるクラスター内へのDNA鎖のポーションの取り込みを完了し損ねることによって生じる、SBSにおける現象を指す。前位相化は、有効な3’終結因子なしでのヌクレオチドの取り組みによって生じ、そしてこの取り込み事象は1サイクルだけ進める。位相化および前位相化が原因となり、特定のサイクルについて抽出した強度は、現行サイクルのシグナルならびにその前後のサイクルからのノイズからなるようになる。サイクル数が増すにつれ、位相化によって影響を受けるクラスター当たりの配列の割合が増え、正しい塩基の識別を妨害する。前位相化は、合成による配列決定(SBS)の間に保護されていないもしくはブロックされていない微量の3’−OHヌクレオチドの存在によって生じ得る。保護されていない3’−OHヌクレオチドは、製造プロセス中に、またはおそらくは保管プロセスおよび試薬取り扱いプロセスの間に生じ得る。したがって、前位相化の発生を減少させるヌクレオチド類似体の発見は、驚くべきことであり、既存のヌクレオチド類似体を上回る、SBS適用における優れた利点を提供する。例えば、提供されるヌクレオチド類似体は結果的に、SBSサイクル時間をより短くさせることができ、位相化値および前位相化値を低下させることができ、配列決定読み取り長を長くすることができる。
3’−OH保護基−C(R)
【0059】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は、除去可能な3’−ヒドロキシ保護基−C(R)を有する修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子に関し、式中Rは、水素、−C(R(R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(RO(CHNRおよび−C(RO−Ph−C(=O)NR1011からなる群から選択され、ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、m、nおよびpは上記に定義されている。
【0060】
いくつかの実施形態において、Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(R(Rである。いくつかのこのような実施形態において、−C(R(Rは、−CHF、−CHF、−CHClまたは−CHClから選択される。一実施形態において、−C(R(Rは、−CHFである。別の実施形態において、−C(R(Rは、−CHFである。
【0061】
いくつかの実施形態において、Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(=O)ORである。いくつかのこのような実施形態において、Rは水素である。
【0062】
いくつかの実施形態において、Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(=O)NRである。いくつかのこのような実施形態において、RおよびRは両方とも水素である。いくつかの他のこのような実施形態において、Rは水素でありかつRはC1−6アルキルである。さらにいくつかの他の実施形態において、RおよびRは両方ともC1−6アルキルである。一実施形態において、Rはn−ブチルである。別の実施形態において、RおよびRは両方ともメチルである。
【0063】
いくつかの実施形態において、Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(RO(CHNRである。いくつかのこのような実施形態において、Rは両方とも水素である。いくつかのこのような実施形態において、RおよびRは両方とも水素である。いくつかのこのような実施形態において、pは0である。いくつかの他のこのような実施形態において、pは6である。
【0064】
いくつかの実施形態において、Rのうちの1つは水素であり、他方のRは−C(RO−Ph−C(=O)NR1011である。いくつかのこのような実施形態において、Rは両方とも水素である。いくつかのこのような実施形態において、R10およびR11は両方とも水素である。いくつかの他のこのような実施形態において、R10は水素でありかつR11は置換アルキルである。一実施形態において、R11はアミノ置換アルキルである。
3’−OH保護基の脱保護
【0065】
いくつかの実施形態において、3’−OH保護基は、ホスフィンを用いた脱保護反応において除去される。−C(R)におけるアジド基は、修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子をホスフィンと接触させることによって、アミノ基へと転換することができる。あるいは、−C(R)におけるアジド基は、このような分子をチオール、特にジチオトレイトール(DTT)などの水溶性チオールと接触させることによって、アミノ基へと転換され得る。一実施形態において、ホスフィンは、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THP)である。別段の指示がない限り、ヌクレオチドに対する言及はまた、ヌクレオシドにも適用可能であることが意図される。
検出可能な標識
【0066】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、従来の検出可能な標識の使用に関する。検出は、蛍光分光法または他の光学手段を含む任意の適切な方法によって実施することができる。好ましい標識は、フルオロフォアであり、これはエネルギー吸収後に規定の波長の放射線を放射する。多くの適切な蛍光標識が公知である。例えば、Welchら(Chem.Eur.J.5(3):951〜960、1999)は、本発明において使用することができるダンシル官能化蛍光部分を開示している。Zhuら(Cytometry 28:206〜211、1997)は、また本発明において使用することができる蛍光標識Cy3およびCy5の使用を記載している。使用に適した標識はまた、Proberら(Science 238:336〜341、1987)、Connellら(BioTechniques 5(4):342〜384、1987)、Ansorgeら(Nucl.Acids Res.15(11):4593〜4602、1987)およびSmithら(Nature 321:674、1986)において開示されている。他の市販の蛍光標識として、フルオレセイン、ローダミン(TMR、テキサスレッドおよびRoxを含む)、アレクサ、ボディパイ、アクリジン、クマリン、ピレン、ベンズアントラセンおよびシアニンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
複数の標識、例えば、二重フルオロフォアFRETカセット(Tet.let.46:8867〜8871、2000)もまた、本出願において使用することができる。多重蛍光デンドリマー系(J.Am.Chem.Soc.123:8101〜8108、2001)も使用することができる。蛍光標識が好ましいが、他の形態の検出可能な標識は、当業者に有用であるものとして明らかであろう。例えば、量子ドット(Empodoclesら、Nature 399:126〜130、1999)、金ナノ粒子(Reichertら、Anal.Chem.72:6025〜6029、2000)、およびマイクロビーズ(Lacosteら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 97(17):9461〜9466、2000)を含む微小粒子はすべて使用することができる。
【0068】
多成分標識も本出願において使用することができる。多成分標識は、検出のためのさらなる化合物との相互反応に依存しているものである。生物学において使用される最も一般的な多成分標識は、ビオチン−ストレプトアビジン系である。ビオチンは、ヌクレオチド塩基に結合する標識として使用される。次いでストレプトアビジンが個別に添加されて、検出が生じることを可能にする。他の多成分系が利用可能である。例えば、ジニトロフェノールは、検出に使用することができる市販の蛍光抗体を有する。
【0069】
別段の指示がない限り、ヌクレオチドに対する言及はまた、ヌクレオシドにも適用可能であることが意図される。本出願はまた、DNAに対する言及を用いてさらに記載されるが、該記載は、別段の指示がない限り、RNA、PNAおよび他の核酸にも適用可能である。
リンカー
【0070】
本明細書に記載するいくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオチド分子または修飾されたヌクレオシド分子のプリン塩基またはピリミジン塩基は、上記のような検出可能な標識に結合することができる。いくつかのこのような実施形態において、使用されるリンカーは切断可能である。切断可能なリンカーの使用は、標識を必要であれば検出後に除去することができることを確実にし、その後に取り込まれるあらゆる標識されたヌクレオチドもしくはヌクレオシドに対するあらゆる干渉シグナルを回避する。
【0071】
いくつかの他の実施形態において、使用されるリンカーは、切断不可能である。本発明の標識されたヌクレオチドが取り込まれるそれぞれの場合において、ヌクレオチドはその後に取り込まれることを必要としないので、標識は、ヌクレオチドから除去する必要がない。
【0072】
当業者は、特定の型のヌクレオチドにおける無作為な鎖終結に依存するいわゆるサンガー配列決定法および関連プロトコル(サンガー型)におけるジデオキシヌクレオシドトリホスフェートの有用性に気付いている。サンガー型配列決定プロトコルの一例は、Metzkerによって記載されたBASS法である。
【0073】
サンガー法およびサンガー型の方法は概して、8種類のヌクレオチドが提供される実験の実施によって動作し、該ヌクレオチドのうちの4つは、3’−OH基を含有しており、かつ該ヌクレオチドのうちの4つは、OH基がなく、互いに異なって標識されている。3’−OH基のない、使用されるヌクレオチドは、ジデオキシヌクレオチド(ddNTP)である。当業者によって公知のように、ddNTPは異なって標識されているので、取り込まれた末端のヌクレオチドの位置を決定し、この情報を合わせることによって標的オリゴヌクレオチドの配列が決定され得る。
【0074】
本出願のヌクレオチドは、サンガー法及び関連プロトコルにおいて有用であり得ると認識され、その理由は、ddNTPを用いることによって達成される同じ効果が、本明細書で記載される3’−OH保護基を用いることによって達成され得るからであり、両方ともその後のヌクレオチドの取り込みを防止する。
【0075】
その上、3’−OH保護されたヌクレオチドの取り込みのモニタリングが、結合したリン酸基における放射性32Pの使用によって決定され得ることが認識される。これらは、ddNTP自体、または伸長に使用されるプライマーのいずれかに存在し得る。
【0076】
切断可能なリンカーは、当該技術分野で公知であり、慣用的な化学反応を適用して、リンカーをヌクレオチド塩基および標識に結合させることができる。リンカーは、酸、塩基、求核試薬、求電子試薬、ラジカル、金属、還元剤または酸化剤、光、温度、酵素などへの曝露を含む任意の適切な方法によって切断することができる。本明細書で論議されるリンカーはまた、3’−O−保護基結合を切断するのに使用されるものと同じ触媒を用いて切断してもよい。適切なリンカーは、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sonsにおいて開示されているように、標準的な化学保護基から適応させることができる。固相合成において使用されるさらに適切な切断可能なリンカーは、Guillierら(Chem.Rev.100:2092〜2157、2000)において開示されている。
【0077】
用語「切断可能なリンカー」の使用は、リンカー全体が例えばヌクレオチド塩基から除去される必要があることを暗示することを意図するものではない。検出可能な標識が塩基に結合している場合、ヌクレオシド切断部位が、リンカーの一部が切断後にヌクレオチド塩基に結合したままであることを保証するリンカー上の位置にあることができる。
【0078】
検出可能な標識が塩基に結合している場合、リンカーは、ヌクレオチド塩基上のいかなる位置に結合していてもよく、但し、ワトソン・クリック塩基対形成を依然として実施することができることを条件とする。プリン塩基との関連において、プリンまたは好ましいデアザプリン類似体の7位を介して、8修飾したプリンを介して、N−6修飾したアデノシンもしくはN−2修飾したグアニンを介してリンカーが結合している場合が好ましい。ピリミジンについては、結合は好ましくは、シトシン、チミジンまたはウラシル上の5位およびシトシン上のN−4位を介したものである。
A.求電子的に切断されるリンカー
【0079】
求電子的に切断されるリンカーは、典型的には、プロトンによって切断され、酸に対して感受性のある切断を含む。適切なリンカーとして、トリチル、p−アルコキシベンジルエステルおよびp−アルコキシベンジルアミドなどの修飾されたベンジル系が挙げられる。他の適切なリンカーとして、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基およびアセタール系が挙げられる。
【0080】
チオアセタールもしくは他の含硫保護基の切断におけるチオ親和性(thiophilic)金属(ニッケル、銀または水銀など)の使用も、適切なリンカー分子の調製のために考慮することができる。
B.求核的に切断されるリンカー
【0081】
求核的切断も、リンカー分子の調製において十分に認識された方法である。水中で不安定な(すなわち、塩基性pHにおいて単純に切断することができる)エステルなどの基、および非水性求核試薬に対して不安定な基を使用することができる。フッ化物イオンは、トリイソプロピルシラン(TIPS)またはt−ブチルジメチルシラン(TBDMS)などの基におけるケイ素−酸素結合を切断するために使用することができる。
C.光切断可能なリンカー
【0082】
光切断可能なリンカーは、炭化水素化学において広く使用される。切断を活性化させるのに必要とされる光は、修飾されたヌクレオチドの他の成分に影響しないことが好ましい。例えば、フルオロフォアを標識として使用する場合、これが、リンカー分子を切断するのに必要とされるものとは異なる波長の光を吸収することが好ましい。適切なリンカーとして、O−ニトロベンジル化合物およびニトロベラトリル化合物に基づくものが挙げられる。ベンゾイン化学に基づくリンカーも使用することができる(Leeら、J.Org.Chem.64:3454〜3460、1999)。
D.還元条件下での切断
【0083】
還元的切断を受けやすいことが公知の多くのリンカーがある。パラジウムベースの触媒を用いた触媒的水素化は、ベンジル基およびベンジルオキシカルボニル基を切断するために使用される。ジスルフィド結合の還元も当該技術分野で公知である。
E.酸化条件下での切断
【0084】
酸化に基づくアプローチは、当該技術分野で周知である。これらには、p−アルコキシベンジル基の酸化ならびに硫黄およびセレンのリンカーの酸化が含まれる。ジスルフィドおよび他の硫黄ベースもしくはセレンベースのリンカーを切断するためのヨウ素水溶液の使用も本発明の範囲内である。
F.セーフティーキャッチリンカー
【0085】
セーフティーキャッチリンカーは、2工程で切断するものである。好ましい系において、第一の工程は、反応性求核中心の生成であり、それに続く第二の工程は、切断をもたらす分子内環化に関する。例えば、レブリン酸エステル結合は、活性のあるアミンを放出させるためにヒドラジンまたは光化学反応を用いて処理することができ、これは次に、環化してエステルを該分子中の他の箇所にあるエステルを切断することができる(Burgessら、J.Org.Chem.62:5165〜5168、1997)。
G.脱離機構による切断
【0086】
脱離反応も使用することができる。例えば、Fmocおよびシアノエチルなどの基の塩基触媒による脱離、ならびにパラジウム触媒によるアリル系の還元的脱離を使用することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、リンカーは、スペーサー単位を含むことができる。リンカーの長さは重要ではなく、但し、ヌクレオチドと酵素との間のいかなる相互作用をも妨げることがないよう、標識がヌクレオチドから十分な距離で保持されていることを条件とする。
【0088】
いくつかの実施形態において、リンカーは、3’−OH保護基と類似の官能基からなってもよい。このことは、単一の処理のみが標識および保護基の両方を除去するのに必要とされるので、脱保護および脱保護プロセスをより効率的にする。特に好ましいリンカーは、ホスフィン切断可能なアジド含有リンカーである。
配列決定方法
【0089】
本明細書に記載する修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、種々の配列決定技術とともに使用することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸のヌクレオチド配列を決定するためのプロセスは、自動化されたプロセスであることができる。
【0090】
本明細書において提供されるヌクレオチド類似体は、合成による配列決定(SBS)技術などの配列決定手順において使用することができる。簡潔には、SBSは、標的核酸を1つもしくはそれより多くの標識されたヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどと接触させることによって開始することができる。プライマーが標的核酸をテンプレートとして用いて伸長するという特徴によって、検出することができる標識されたヌクレオチドが取り込まれる。必要に応じて、標識されたヌクレオチドは、一度ヌクレオチドがプライマーに付加されたときにさらなるプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性をさらに含むことができる。例えば、脱ブロッキング剤が可逆的終結因子部分を除去するために送達されるまで、その後の伸長が生じ得ないように、該部分を有するヌクレオチド類似体をプライマーに付加することができる。したがって、可逆的終結を使用する実施形態については、脱ブロッキング試薬をフローセルへと(検出が生じる前または後に)送達することができる。洗浄は、種々の送達工程の間に実施することができる。次に、サイクルは、プライマーをn個のヌクレオチドだけ伸長させるようにn回反復することができ、それにより、長さnの配列を検出する。本開示の方法によって生じるアレイを伴う使用に容易に適応させることができる例示的なSBS手順、流体系および検出プラットフォームは、例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれるBentleyら、Nature 456:53〜59(2008)、WO04/018497、WO91/06678、WO07/123744、米国特許第7,057,026号、第7,329,492号、第7,211,414号、第7,315,019号または第7,405,281号、および米国特許出願公開第2008/0108082 A1号に記載されている。
【0091】
ピロ配列決定などの、サイクル的な反応を使用する他の配列決定手順を使用することができる。ピロ配列決定は、特定のヌクレオチドが新生核酸鎖へと取り込まれるときの無機ピロリン酸(PPi)の放出を検出する(各々が参照により本明細書に組み込まれるRonaghiら、Analytical Biochemistry 242(1)、84〜9(1996)、Ronaghi、Genome Res.11(1)、3〜11(2001)、Ronaghiら Science 281(5375)、363(1998)、米国特許第6,210,891号、第6,258,568号および第6,274,320号)。ピロ配列決定において、放出されるPPiは、ATPスルフリラーゼによってアデノシントリホスフェート(ATP)へと転換することによって検出することができ、結果として生じるATPは、ルシフェラーゼ産生光子を介して検出することができる。したがって、配列決定反応は、ルミネセンス検出系を介してモニターすることができる。蛍光に基づく検出系に使用される励起放射線源は、ピロ配列決定手順に必要ではない。本開示のアレイへのピロ配列決定の適用に使用することができる有用な流体系、検出器および手順は、例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれるWIPO特許出願番号第PCT/US11/57111号、米国特許出願公開第2005/0191698 A1号、米国特許第7,595,883号、および米国特許第7,244,559号に記載されている。
【0092】
例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれるShendureら Science 309:1728〜1732(2005)、米国特許第5,599,675号、および米国特許第5,750,341号に記載されるものを含むライゲーション反応による配列決定も有用である。いくつかの実施形態として、例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれるBainsら、Journal of Theoretical Biology 135(3)、303〜7(1988)、Drmanacら、Nature Biotechnology 16、54〜58(1998)、Fodorら、Science 251(4995)、767〜773(1995)、およびWO1989/10977に記載されるようなハイブリッド形成による配列決定手順が挙げられ得る。ライゲーションによる配列決定およびハイブリッド形成による配列決定の両手順において、ゲル含有ウェル(または他の凹状特徴物)の中に存在する核酸は、オリゴヌクレオチド送達および検出の反復サイクルに供される。本明細書または本明細書に引用される参考文献において示すようなSBS法のための流体系は、ライゲーションによる配列決定またはハイブリッド形成による配列決定の手順のための試薬の送達に容易に適合させることができる。典型的には、オリゴヌクレオチドは、蛍光標識されており、本明細書または本明細書に引用される参考文献におけるSBS手順に関して記載したものと類似の蛍光検出器を用いて検出することができる。
【0093】
いくつかの実施形態には、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムでのモニタリングに関する方法を利用することができる。例えば、ヌクレオチドの取り込みは、フルオロフォア担持ポリメラーゼとγリン酸標識されたヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)相互作用を通じて、またはゼロモードの導波管を用いて検出することができる。FRETに基づく配列決定のための技術および試薬は、例えば、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれるLeveneら Science 299、682〜686(2003)、Lundquistら Opt.Lett.33、1026〜1028(2008)、Korlachら Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105、1176〜1181(2008)に記載されている。
【0094】
いくつかのSGS実施形態には、伸長生成物へのヌクレオチドの取り込みの際に放出されるプロトンの検出が含まれる。例えば、放出されたプロトンの検出に基づく配列決定には、Ion Torrent(Guilford、CT、Life Technologiesの子会社)から市販されている電気的な検出器および関連技術、または各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0026082 A1号、第2009/0127589 A1号、第2010/0137143 A1号、または第2010/0282617 A1号に記載される配列決定方法および配列決定系を使用することができる。
【実施例】
【0095】
追加的な実施形態は、以下の実施例においてさらに詳細に開示され、これは、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。保護された3’−ヒドロキシ基を有する種々の修飾されたヌクレオチドの合成を実施例1〜3において実証する。
【0096】
【化3】
スキーム1は、3’−OH保護基としてモノフルオロメチル置換アジドメチルを有する修飾されたヌクレオチドの調製のための合成経路を示す。化合物1a〜1fは、修飾されたチミン(T−PA)を塩基として使用する。使用することができる塩基の他の非限定的な例としては、Cbz−PA、ADMF−PA、およびGPac−PAが挙げられ、それらの構造は、スキーム1において上記に示す。
実験手順
【0097】
無水CHCN(25ml)中の出発ヌクレオシド1a(1.54g、2.5mmol)の溶液に、2,6−ルチジン(0.87mL、7.5mmol)、(2−フルオロエチル)(4−メトキシフェニル)スルファン(MPSF)(3.26g、17.5mmol)および次にBz(純度50%、8.47g、17.5mmol)を4℃で添加した。反応混合物を室温へと徐々に加温した。この混合物をさらに6時間撹拌した。TLCで、出発ヌクレオシドの完全な消費を確認するためにモニターした(EtOAc:DCM=2:8v/v)。次に、反応物を減圧下で油状の残渣へと濃縮した。この混合物に、石油エーテル(500ml)を添加し、10分間激しく撹拌した。石油エーテル層をデカントし、残渣を繰り返し石油エーテルで処理した(2回)。油状残渣をDCMとNaHCO(1:1)(300mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をさらにDCM(2×150mL)の中へと抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物1cを、石油エーテルから石油エーテル:EtOAc=1:1(v/v)へと至る勾配を用いてBiotagシリカゲルカラム(50g)によって精製し、1.63gのヌクレオシド1bを淡黄色の泡状物(ジアステレオマー、82%収率)として得た。
1H NMR (d6 DMSO, 400 MHz): δ, 0.95 (s, 9H, tBu), 2.16 − 2.28 (m, 2H, H-2’), 3.67 (s, OMe), 3.65 -3.85 (m, 2H, HH-5’), 3.77 (dd, J = 11.1, 4.5 Hz, 1H, HH-5’), 3.95-3.98 (m, 1H, H-4’), 4.04 (m, 2H, CH2F), 4.63-4.64 (m, 1H, H-3’), 5.01-5.32 (s, 1H, CH), 6.00 (m, 1H, H-1’), 6.72-6.87 (m, 3H, Ar), 7.35-7.44 (m, 7H, Ar), 7.55-7.60 (m, 4H, Ar), 7.88 (s, 1H, H-6), 9.95 (brt, 1H, NH), 11.70 (s, 1H, NH)
【0098】
下で分子ふるい(4Å)含有の無水CHCl(14mL)中の出発ヌクレオシド1b(1.14g、1.4mmol)の溶液に、シクロヘキセン(1.44mL、14mmol)を添加した。混合物をドライアイス/アセトン浴で−78℃まで冷却した。DCM(14ml)中の塩化スルフリルの溶液(580μL、7.2mmol)を90分にわたってN下で緩徐に添加した。その温度で20分後、TLC(EtOAc:石油エーテル=1:1v/v)で、出発ヌクレオシドの完全な消費を示した。揮発性物質を減圧下(および25℃の室温)で蒸発させ、油状残渣を発泡するまでさらに10分間高真空へ迅速に供した。粗生成物をNでパージした後、無水DMF(5mL)中に溶解し、NaN(470mg、7mmol)を一度に添加した。結果として生じた懸濁液を、2時間またはTLCが反応の完了および2つの異性体(aおよびb)としての1cの形成を示すまで、室温で撹拌した。反応混合物をEtOAcとNaHCO(1:1)(200mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をさらにEtOAc(2×100mL)の中へと抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。石油エーテルから石油エーテル:EtOAc=1:1(v/v)に至る勾配を用いて1cの2つのジアステレオ異性体(AおよびB)をBiotagシリカゲルカラム(25g)によって淡黄色の泡状物として分離した。
【0099】
異性体A(370mg、収率:38%)。
1H NMR (d6 DMSO, 400 MHz): δ 1.02 (s, 9H, tBu), 2.35 − 2.43 (m, 2H, H-2’), 3.76-3.80 (m, 1H, H-5’), 3.88 - 3.92 (m, 1H, H-5’), 4.10 - 4.12 (m, 1H, H-4’), 4.14 (d, J = 4.1 Hz 2H, NHCH2), 4.46-4.60 (m, 3H, H-3’, CH2F), 5.05-5.09 (m, 1H, CHN3), 6.11 (t, J = 6.1 Hz, 1H, H-1’), 7.47 - 7.51 (m, 6H, Ar), 7.64 - 7.68 (m, 4H, Ar), 7.97 (s, 1H, H-6), 10.03 (bt, 1H, J = 10.0 Hz, NH), 11.76 (s, 1H, NH). 19F NMR: -74.3 (CF3), -230.2 (CH2F)
【0100】
異性体B(253mg、収率:26%)。
1H NMR (d6 DMSO, 400 MHz): δ 1.01 (s, 9H, tBu), 2.38 − 2.42 (m, 2H, H-2’), 3.74-3.78 (m, 1H, H-5’), 3.86-3.90 (m, 1H, H-5’), 4.00-4.05 (m, 1H, H-4’), 4.12 (d, J = 4.1 Hz 2H, NHCH2), 4.45-4.60 (m, 3H, H-3’, CH2F), 5.00-5.14 (m, 1H, CHN3), 6.09 (t, J = 6.1 Hz, 1H, H-1’), 7.41 - 7.50 (m, 6H, Ar), 7.63-7.66 (m, 4H, Ar), 7.95 (s, 1H, H-6), 10.01 (bs, 1H, NH), 11.74 (s, 1H, NH). 19F NMR: -74.5 (CF3), -230.4 (CH2F)
【0101】
出発材料1c(異性体A)(500mg、0.71mmol)をTHF(3mL)中に溶解し、氷浴中で4℃へと冷却した。次に、TBAF(THF中で1.0M、5重量%水、1.07mL、1.07mmol)を5分間の時間をかけて緩徐に添加した。反応混合物を室温へと緩徐に加温した。反応の進行は、TLC(石油エーテル:EtOAc=3:7(v/v))によってモニターした。反応を、出発材料がもはやTLCによって可視ではない1時間後に停止させた。反応溶液をEtOAc(50mL)中に溶解し、NaHCO(60mL)に添加した。2つの層を分離し、水層を追加的なDCM(50mL×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて、黄色の油を得た。粗生成物1d(異性体A)をBiotagシリカゲルカラム(10g)によって、石油エーテル:EtOAc=8:2(v/v)からEtOAcへと至る勾配を用いて、白色の固体(183mg、収率:56%)として精製した。
【0102】
異性体A:
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 2.24-2.35 (m, 2H, H-2’), 3.56-3.66 (m, 2H, H-5’), 3.96-4.00 (m, 1H, H-4’), 4.23 (s, 2H, CH2NH), 4.33-4.37 (m, 1H, H-3’), 4.43-4.51 (m, CH2F), 5.12 (br.s, 1H, CHN3), 5.23 (br.s, 1H, 5’-OH), 6.07 (t, J=6.7 Hz, 1H, H-1’), 8.26 (s, 1H, H-6), 10.11 (br s, 1H, NH), 11.72 (br s, 1H, NH). 19F NMR: -74.3 (CF3), -230.5 (CH2F)
【0103】
同じ反応を1c(異性体B)について360mg規模で実施し、対応する生成物1d(異性体B、150mg、63%)を得た。
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 2.24-2.37 (m, 2H, H-2’), 3.57-3.70 (m, 2H, H-5’), 3.97-4.01 (m, 1H, H-4’), 4.23 (br.s, 2H, CH2NH), 4.33-4.37 (m, 1H, H-3’), 4.44-4.53 (m, CH2F), 5.11-5.21 (br.s, 1H, CHN3), 5.23 (br.s, 1H, 5’-OH), 6.07 (t, J=6.6 Hz, 1H, H-1’), 8.23 (s, 1H, H-6), 10.09 (br s, 1H, NH), 11.70 (br s, 1H, NH). 19F NMR: -74.1 (CF3), -230.1 (CH2F)
【0104】
対応するトリホスフェート1eの調製、および完全に機能性のヌクレオシドトリホスフェート(ffN)1fを生じるための核酸塩基への色素のさらなる結合は、WO2004/018497において報告されており、概して当業者に公知である。
【0105】
【化4】
スキーム2は、3’−OH保護基としてC−アミド置換アジドメチルを有する修飾されたヌクレオチドの調製のための合成経路を示す。化合物2a〜2iは、修飾されたチミン(T−PA)を塩基として使用する。使用することができる塩基の他の非限定的な例としては、Cbz−PA、ADMF−PA、およびGPac−PAが挙げられ、これらの構造は、上記スキーム1に示されている。実験手順において、N,N−ジメチル−C(=O)−置換アジドメチル保護基(R=NMe)を有する化合物2fおよびその後の反応を報告した。N−エチル−C(=O)−(R=NHEt)などの、他のC−アミド基を有する化合物も調製した。
実験手順
【0106】
無水CHCN(50ml)中の出発ヌクレオシド2a(4.27g、6.9mmol)の溶液に、2,6−ルチジン(2.4mL、20.7mmol)、S(CHCHOAc)(12.2g、69mmol)および次いでBz(純度50%、33.4g、69mmol)を4℃で添加した。反応混合物を室温まで緩徐に加温した。この混合物をさらに12時間撹拌した。TLCで、出発ヌクレオシドの完全な消費を確認するためにモニターした(EtOAc:DCM=4:6v/v)。反応物を次に減圧下で油状残渣へと濃縮した。この混合物に、石油エーテル(800ml)を添加し、10分間激しく撹拌した。石油エーテル層をデカントし、残渣を繰り返し石油エーテルで処理した(2回)。油状残渣を次に、DCMとNaHCO(1:1)(1000mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をDCMの中へとさらに抽出した(2×500mL)。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物2bをBiotagシリカゲルカラム(100g)によって、石油エーテルから石油エーテル:EtOAc2:8(v/v)に至る勾配を用いて、淡黄色の泡状物(4.17g、収率:74%、ジアステレオ異性体)として精製した。
【0107】
下の分子ふるい(4Å)含有無水CHCl(56mL)中の出発ヌクレオシド2b(4.54g、5.56mmol)の溶液に、シクロヘキセン(5.62mL、56mmol)を添加した。この混合物を氷浴で4℃まで冷却した。DCM(25ml)中の塩化スルフリル(1.13mL、13.9mmol)の溶液を90分かけてN下で緩徐に添加した。その温度で30分後、TLC(EtOAc:DCM=4:6v/v)は、出発ヌクレオシド2bの10%が残っていることを示した。追加的な塩化スルフリル(0.1mL)を反応混合物中に添加した。TLCで、2bの完全な転換を示した。揮発性物質を減圧下(および25℃の室温)で蒸発させ、油状残渣を発泡するまでさらに10分間高真空へ迅速に供した。粗生成物をNでパージした後、無水DMF(5mL)中に溶解し、NaN(1.8g、27.8mmol)を一度に添加した。結果として生じた懸濁液を、室温で2時間、またはTLCで反応の完了および2つの異性体(AおよびB)としての2cの形成を示すまで、撹拌した。反応混合物をEtOAcとNaHCO(1:1)(1000mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をさらにEtOAc(2×300mL)中へと抽出した。合わせた有機抽出物を次に、MgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。2つのジアステレオ異性体2c(異性体AおよびB)をBiotagシリカゲルカラム(100g)によって、石油エーテルから石油エーテル:EtOAc1:1(v/v)に至る勾配を用いて、淡黄色の泡状物として分離した。異性体A:1.68g、収率:40.7%。異性体B:1.79g、収率:43.2%。
【0108】
MeOH/THF(1:1)(20mL)中の出発ヌクレオシド2c(異性体A)(1.63g、2.2mmol)の溶液に、NaOH(1M水溶液)(2.2mL、2.2mmol)を緩徐に添加し、4℃で撹拌した。反応の進行はTLC(EtOAc:DCM=4:6v/v)によってモニターした。反応は、出発材料がもはやTLCによって可視ではない1時間後に停止させた。反応混合物をDCMとNaHCO(1:1)(150mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をさらにDCM(2×70mL)の中へと抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物2dを、Biotagシリカゲルカラム(10g)によって、石油エーテル:EtOAc(8:2)(v/v)からEtOAcに至る勾配を用いて淡黄色の泡状物(1.1g、収率:71%)として精製した。
【0109】
同じ反応を2c(異性体B、1.57g)について繰り返し、対応する生成物2d(異性体B、1.01g、69%収率)を得た。
【0110】
CHCN(10mL)中の出発ヌクレオシド2d(異性体A)(700mg、1mmol)の溶液を、TEMPO(63mg、0.4mmol)およびBAIB(644mg、2mmol)で室温で処理した。反応の進行はTLC(EtOAc:DCM=7:3v/v)によってモニターした。反応は、出発材料がもはやTLCによって可視ではない2時間後に停止させた。反応混合物をDCMとNa(1:1)(100mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をさらにDCM(2×70mL)中へ抽出した。合わせた有機抽出物を次に、NaCl(飽和液)で洗浄した。生成物が沈殿することを防止するために、MgSOでの乾燥無しで、有機層を減圧下で蒸発させた。粗生成物2eを、Biotagシリカゲルカラム(10g)によって、石油エーテル:EtOAc(1:1)(v/v)からEtOAcさらにはMeOH:EtOAc(1:9)へと至る勾配を用いて、淡黄色の泡状物(異性体A、482mg、68%収率)として精製した。
【0111】
同じ反応を2d(異性体B、700mg)について実施し、対応する生成物2e(異性体B、488mg、69%収率)を得た。
【0112】
CHCN(10mL)中の出発ヌクレオシド2e(異性体A)(233mg、0.33mmol)の溶液に、ヒューニッヒ塩基(173μL、1mmol)およびBOP(165mg、0.39mmol)を室温で添加した。5分間撹拌した後、溶液をMe2NH(2MのTHF溶液)(0.41ml、0.82mmol)で処理した。反応の進行は、TLC(MeOH:DCM=1:9v/v)によってモニターした。反応は、出発材料がもはやTLCによって可視ではない2時間後に停止させた。反応混合物をDCMとNaHCO(1:1)(50mL)との間で分画した。有機層を分離し、水層をさらにDCM(2×30mL)中へ抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗生成物2f(R=NMe)をBiotagシリカゲルカラム(10g)によって、DCM:EtOAc(8:2)(v/v)からEtOAcへと至る勾配を用いて、淡黄色の泡状物(異性体A、220mg、90%収率)として精製した。
【0113】
同じ反応を2e(異性体B、249mg)について実施し、対応する生成物2f(異性体B、240mg、92%収率)を得た。
【0114】
出発材料2f(異性体AおよびBの混合物)(455mg、0.61mmol)をTHF(2mL)中に溶解し、氷浴で4℃へと冷却した。次に、TBAF(1.0MのTHF溶液、5重量%水、1.0mL、1.0mmol)を5分間の時間をかけて緩徐に添加した。反応混合物を室温へと緩徐に加温した。反応の進行は、TLC(EtOAc)によってモニターした。反応は、出発材料がもはやTLCによって可視ではない1時間後に停止させた。反応溶液をDCM(30mL)中に溶解し、NaHCO(30mL)に添加した。2つの層を分離し、水層を追加的なDCM(30mL×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて、黄色のオイルを得た。粗生成物2gをBiotagシリカゲルカラム(10g)によって、DCM:EtOAc8:2(v/v)からEtOAcさらにはMeOH:EtOAc(2:8)へと至る勾配を用いて、白色の固体(52%収率、160mg)として精製した。
【0115】
完全に機能性のヌクレオシドトリホスフェート(ffN)2iを得るための、対応するトリホスフェート2hの調製、および核酸塩基への色素のさらなる結合は、WO2004/018497に報告されており、概して、当業者に公知である。
【0116】
【化5】
スキーム3は、ジフルオロメチル置換アジドメチル3’−OH保護基を有する修飾されたヌクレオチドの調製のための合成経路を示す。化合物3a〜3iは、修飾されたチミン(T−PA)を塩基として使用する。使用することができる塩基の他の非限定的な例としては、Cbz−PA、ADMF−PA、およびGPac−PAが挙げられ、これらの構造は、前記スキーム1において示されている。3b、3cおよび3dの合成のための手順は実施例2に記載した。
実験手順
【0117】
無水DCM(5mL)中の出発ヌクレオシド3d(異性体A)(490mg、0.7mmol)およびDBU(209μL、1.4mmol)の溶液に、無水DCM(2ml)中の塩化N−tert−ブチルベンゼンスルフィンイミドイル(181mg、0.84mmol)の溶液を−78℃で緩徐に添加した。この反応混合物を−78℃で2時間撹拌した。反応の進行はTLC(EtOAc:DCM=4:6v/v)によってモニターした。反応は、10%の出発材料が依然としてTLCによって残っている2時間後に停止させて、過剰反応を防止した。この反応混合物をDCMとNaHCO(1:1)(50mL)との間で分画した。水層をさらにDCM中へと抽出した(2×30mL)。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて、黄色のオイルを得た。粗生成物3eをBiotagシリカゲルカラム(10g)によって、石油エーテル:EtOAc(8:2)(v/v)から石油エーテル:EtOAc(2:8)(v/v)への勾配を用いて、淡黄色の泡状物(異性体A、250mg、51%収率)として精製した。
【0118】
同じ反応を3d(異性体B、480mg)について実施し、対応する生成物3e(異性体B、240mg、50%収率)を得た。
【0119】
DCM(2.5mL)中の出発ヌクレオシド3e(異性体A)(342mg、0.49mmol)、EtOH(15μL、0.25mmol)の溶液を、DCM(2.5mL)中のDAST(181mg、0.84mmol)の溶液に4℃(氷浴)で緩徐に添加した。反応混合物を4℃で1時間撹拌した。反応の進行はTLC(EtOAc:石油エーテル=3:7v/v)によってモニターした。反応は、1時間後に停止させた。反応混合物をDCMとNaHCO(1:1)(50mL)との間で分画した。水層をさらにDCM(2×30mL)中へ抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて、黄色のオイルを得た。粗生成物3fをBiotagシリカゲルカラム(10g)によって、石油エーテル:EtOAc(9:1)(v/v)から石油エーテル:EtOAc(2:8)(v/v)へと至る勾配を用いて、淡黄色の泡状物(異性体A、100mg、28%)として精製した。
【0120】
同じ反応を3e(異性体B、480mg)について実施し、対応する生成物3f(異性体B、240mg、50%収率)を得た。
【0121】
出発材料3f(異性体A)(124mg、0.17mmol)をTHF(2mL)中に溶解し、氷浴で4℃まで冷却した。次に、TBAF(1.0MのTHF溶液、5重量%の水、255μL、10.255mmol)を5分間の時間にわたって緩徐に添加した。反応混合物を室温へと緩徐に加温した。反応の進行は、TLC(EtOAc)によってモニターした。反応は、出発材料がもはやTLCによって可視ではない1時間後に停止させた。反応溶液をDCM(30mL)中に溶解し、NaHCO(30mL)に添加した。2つの層を分離し、水層を追加的なDCM(30mL×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて、黄色のオイルを得た。粗生成物3gをBiotagシリカゲルカラム(4g)によって、DCM:EtOAc=8:2(v/v)からEtOAcさらにはMeOH:EtOAc(2:8)へと至る勾配を用いて、淡黄色の泡状物(異性体A、54%収率、44mg)として精製した。
【0122】
異性体A:
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 2.24-2.35 (m, 2H, H-2’), 3.56-3.66 (m, 2H, H-5’), 3.96-4.00 (m, 1H, H-4’), 4.23 (s, 2H, CH2NH), 4.33-4.37 (m, 1H, H-3’), 4.85 (s, 2H, OCH2N3), 5.23 (t, J=5.1 Hz, 1H, 5’-OH), 6.07 (t, J=6.7 Hz, 1H, H-1’), 8.19 (s, 1H, H-6), 10.09 (br s, 1H, NH), 11.70 (br s, 1H, NH). 19F NMR: -74.4 (CF3), -131.6 (CH2F).
【0123】
同じ反応を3f(異性体B、133mg)について実施し、対応する生成物3g(異性体B、48mg、54%収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ 2.27-2.44 (m, 2H, H-2’), 3.58-3.67 (m, 2H, H-5’), 4.00-4.02 (m, 1H, H-4’), 4.24 (d, J=4.1 Hz, 2H, CH2NH), 4.57-4.58 (m, 1H, H-3’), 5.24-5.29 (m, 2H, 5’-OH, OCHN3), 6.07-6.34 (m, 2H, H-1’, CHF2), 8.19 (s, 1H, H-6), 10.09 (br s, 1H, NH), 11.70 (br s, 1H, NH). 19F NMR: -74.2 (CF3), -131.4 (CH2F).
【0124】
完全に機能性のヌクレオチド(ffN)3iを得るための、対応するトリホスフェート3hの調製、および核酸塩基への色素のさらなる結合は、WO2004/018497に報告されており、概して、当業者に公知である。
実施例4
3’−OH保護基の熱安定性試験
【0125】
種々の3’−OH保護基をそれらの熱安定性に関して調査した(図1A)。熱安定性は、pH=9の緩衝液(トリス−HCl50mM、NaCl50mM、tween0.05%、MgSO6mM)中のそれぞれの3’−OH保護されたヌクレオチド0.1mMを60℃で加熱することによって評価した。種々の時点を取り、HPLCを用いて、ブロックされていない材料の形成を分析した。−CHFおよび−C(O)NHBuの安定性は、標準的なアジドメチル(−CH)保護基よりも約2倍大きいことが判った。−CFH基の安定性は、標準物質よりも約10倍大きいことが判った(図1B)。
実施例5
3’−OH保護基の脱保護
【0126】
いくつかの3’−OH保護基の脱保護反応速度も試験した。標準的なアジドメチル保護基の脱保護速度を−CHF置換アジドメチルおよび−C(O)NHBu置換アジドメチルと比較した。より熱安定性の高い3’−OHブロッキング基は両方とも、脱保護剤としてのホスフィン(1mM THP)を用いて、標準的なアジドメチル保護基よりも迅速に除去されることが観察された。図2Aを参照されたい。例えば、−CHFおよび−C(O)NHBuの半減期は、20.4分というアジドメチルの半減期と比較して、それぞれ8.9分および2.9分であった(図2B)。
実施例6
配列決定試験
【0127】
−CHF(mono−F)置換アジドメチル3’−OH保護基を有する修飾されたヌクレオチドを調製し、該ヌクレオチドの配列決定性能をMiseqプラットフォーム上で評価した。3’−OH保護基の熱安定性の増大は、配列決定化学反応についてより高品質なヌクレオチドをもたらし、夾雑する3’ブロックされていないヌクレオチドはより少ないと予想された。SBS配列決定キットにおける3’ブロックされていないヌクレオチドの存在はそれゆえ、前位相化値として数値化される前位相化事象をもたらしたことであろう。
【0128】
短い12サイクルの配列決定実験を、位相化値および前位相化値を生成するために最初に使用した。mono−F置換アジドメチルで保護したffNを、以下の濃度、すなわち、ffA−色素1(2uM)、ffT−色素2(10uM)、ffC−色素3(2uM)およびffG−色素4(5uM)に従って用いた。mono−F置換アジドメチル基は、異性体AおよびBを両方含んでいる。2つの色素、すなわち、標準的なMiseqキットにあるような色素2、および色素5を使用して、ffTを標識した。表1は、位相化および前位相化への影響に関して評価した、mono−F置換アジドメチルのA異性体およびB異性体と種々のヌクレオチドとの組み合わせを示す。すべての場合において、前位相化値は、標準的なV2 Miseqキットのヌクレオチドを使用した対照よりも実質的に低かった(図3)。
【表1】
【0129】
(配列決定品質検査)
2×400bpの配列決定をMiseq上で実施して、配列決定の品質改善についてのこれらのヌクレオチドの能力を評価した。配列決定ランを製造元(Illumina社、カリフォルニア州サンディエゴ市)の説明書に従って実施した。標準的な取り込み緩衝液をすべてのmono−FブロックしたFFN(各々は、個別の色素標識、すなわちffA−色素1(2uM)、ffT−色素2(1uM)、ffC−色素3(2uM)およびffG−色素4(5uM)を有する)を含有する取り込み緩衝液で置換した。使用したDNAライブラリは、B cereusゲノムDNAから標準的なTruSeqHTプロトコルに従って作製した。
【0130】
両配列決定実験(mono−FブロックAおよびB異性体を用いた)において、非常に低い前位相化値を観察した。低い位相化値と結びつけて考えると、これらの新たなヌクレオチドの適用は、優れた2×400bp配列決定データを生じ、両方の場合において80%超の塩基がQ30を上回った(異性体AのQスコアについては図4Aを、異性体BのQスコアチャートについては図4Bを参照されたい)。これらの結果は、Miseqバージョン2キット(2×250bp、典型的なR&D配列決定実験においては80%塩基>Q30、または記載したスペックのように70%塩基>Q30)と比較して大きな改善を実証している。以下に示すように、表2は、IMXにおける全てのmono−F ffN−A−異性体を用いた場合の配列決定データを要約している。表3は、IMXにおける全てのmono−F ffN−B−異性体を用いた配列決定データを要約している。
【表2】
【表3】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B