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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非生物的ストレス下でテトラセルミス チュイイ種の微小藻類を培養することを含んでなる、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)に富む前記微小藻類のバイオマスを得るための方法であって、前記非生物的ストレスが、培養培地における少なくとも200mVの酸化還元電位、および前記培養培地における1μM未満の硝酸塩濃度からなる群から選択される、方法。
非生物的ストレス下でテトラセルミス チュイイ種の微小藻類を培養することを含んでなる、前記微小藻類のバイオマスのスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を濃縮する方法であって、前記非生物的ストレスが、培養培地における少なくとも100mVの酸化還元電位、培養培地における28℃超の温度、窒素飢餓、および培養培地における35超の塩分濃度からなる群から選択される、方法。
酸化ストレスおよび/または炎症活性を特徴とする疾患または状態の予防および/または治療に用いられる、または放射線療法に対する耐性を改善する際に用いられる、請求項4に記載のSODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマス、または請求項5に記載のSODに富むT.チュイイ種の微小藻類の脱水またはブライン処理されたバイオマス、または請求項7に記載のSODに富むタンパク質抽出物、または請求項9に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
SODに富むテトラセルミス チュイイ種の微小藻類のバイオマスを得る方法
一つの態様において、本発明は、以下、「本発明の製造方法」と称される、SODに富むテトラセルミス チュイイ種の微小藻類のバイオマスを得るための方法であって、当該微小藻類を非生物的ストレス下で培養することを含み、当該非生物的ストレスは、培養培地における少なくとも100mVの酸化還元電位、培養培地における28℃超の温度、窒素飢餓、および培養培地における35超の塩分濃度からなる群から選択される方法に関する。
【0026】
テトラセルミス チュイイ、またはT.チュイイは、クロロデンドロン藻綱クロロデンドロン目クロロデンドロン科に属する海洋単細胞藻類(微小藻類)であり、緑色で運動性があり、通常長さ10μm×幅14μmに成長する。
【0027】
本発明の製造方法によれば、微小藻類のT.チュイイは非生物的ストレス下で培養される。非生物的ストレスを適用する前に、T.チュイイの培養は、当業者に周知であるように、例えばF/2培養培地[Guilard R.R.L.&Ryther、J.H、1962年、「Studies of marine planktonic diatoms.I.Cyclotela nana Hustedt and Detonula confervaceae (Cleve) Gran.」Can.J.Microbiol.8、229〜239]等の適切な培地で、太陽光または適切な照明条件(光度)および制御されたpH、温度、および供給二酸化炭素(CO
2)の条件下で行う。F/2培養培地は、水性培地中に窒素源、リン源、微量の元素、例えば、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、およびモリブデン、ならびにビタミン混合物、例えば、シアノコバラミン(ビタミンB12)、チアミン(ビタミンB1)、およびビオチンを含む。
【0028】
光度は光合成が可能であるように調整されるため、光度は広い範囲内で変化することができるが、特定の実施形態において、培養培地に適用される光度は、60〜2000μmol光子m
−2s
−1であり、屋内では典型的には約150μmol光子m
−2s
−1である。pHは、通常約7〜約8.5で変化し得、典型的には約7.5である。T.チュイイの増殖を促進する温度は、通常約17℃〜約28℃、典型的には約24℃〜26℃の間で選択される。培養は通気を伴ってまたは伴わずに、典型的には、大気中で約0.5〜5%、好ましくは約1〜2%CO
2の通気を用いて行われる。
【0029】
培養培地の細胞密度が至適であるとき、通常は対数増殖期、すなわち指数増殖期、すなわち培養開始後約2〜7日目の間に、非生物的ストレスが培養培地に適用される。そのために、増殖速度は、従来の技術、例えば、顕微鏡での細胞計数によってモニタすることができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、語句「非生物的ストレス」は、特定の環境における生物に対する非生物因子の負の影響に関する。非生物変量は、その正常な変動範囲を超えてその環境に影響を与え、生物の個体群のパフォーマンスまたは個々の生理機能に相当の悪影響を及ぼさなければならない。
【0031】
微小藻類、例えばT.チュイイの増殖ならびにその化合物および代謝産物の産生に影響を及ぼし得る多くの非生物的ストレス因子が存在するが、本発明の製造方法では、非生物的ストレスは、培養培地における少なくとも100mVの酸化還元電位、培養培地における28℃超の温度、窒素飢餓、および培養培地における35超の塩分濃度からなる群から選択される。
【0032】
本発明によれば、培養培地における少なくとも100mVの酸化還元電位に基づく非生物的ストレスは、少なくとも100mV、少なくとも200mV、少なくとも300mV、少なくとも400mV、少なくとも500mV、少なくとも600mV、少なくとも700mV、少なくとも800mV、少なくとも900mV、少なくとも1000mVの酸化還元電位で培養培地を維持することを含み、当該非生物的ストレスは、例えば空気をUVと反応させることによってオゾン発生器を使用して通常生成されるオゾンの添加によって等、培養培地中で高い酸化還元電位状態を得るための従来の方法によって得ることができる。添加されるオゾンの量は、酸化還元電位が少なくとも100mV、少なくとも200mV、少なくとも300mV、少なくとも400mV、少なくとも500mV、少なくとも600mV、少なくとも700mV、少なくとも800mV、少なくとも900mV、少なくとも1000mVである培養培地を得て維持するために必要な量である。
【0033】
本発明によれば、28℃超の温度に基づく非生物的ストレスは、培養培地を少なくとも28℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃の温度で維持することを含み、培養培地の当該温度は、従来の方法によって得ることができる。培養は屋内または屋外で行うことができるので、屋内培養では培養室の温度を28℃超に設定しなければならないのに対し、屋外培養では、培養を適切な場所で行うべきであり、その場合、当該温度は、環境温度により自然に、例えば、南スペイン、例えば、カディス、マラガ、セビリアにおいて春および夏の間に得られる。
【0034】
本発明によれば、培養培地における35超の塩分濃度に基づく非生物的ストレスは、培養培地を少なくとも35PSU(実用塩分単位)、少なくとも40PSU、少なくとも41PSU、少なくとも45PSU、少なくとも50PSU、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300の塩分濃度で維持することを含む。特定の実施形態において、培養培地の塩分濃度は41PSUよりも高い。当業者は、標準的な技術を用いて培養培地の塩分濃度を求める方法を知っている(UNESCO、1981、「Background papers and supporting data on the practical salinity scale 1978」、Unesco Technical papers in marine science、37)。高塩分濃度条件に基づく非生物的ストレスは、例えば、目標の塩分濃度に達するまで自然海水を蒸発させるか、または市販の海塩を添加することによって、当該塩分濃度条件に達するまで当該培養培地に塩を添加することによって容易に得ることができる。
【0035】
本発明によれば、窒素飢餓に基づく非生物的ストレスは、窒素欠乏、制限、または不足の条件下でT.チュイイを増殖させることを含み、当該非生物的ストレスは、培養培地への窒素の供給を停止することにより(すなわち、培養培地に窒素を添加することをやめることによって)容易に達成することができる。
【0036】
本発明の製造方法の好ましい実施形態において、非生物的ストレスは窒素飢餓を含む。本明細書で使用する場合、「窒素飢餓」という用語は、窒素の供給が、培養培地中の硝酸塩濃度が200μM未満、100μM未満、10μM未満、5μM未満、1μM未満、0.1μM未満、0.001μM未満になるような条件、または窒素の供給が、培養培地中の窒素濃度が10μg/ml未満、5μg/ml未満、3μg/ml未満、1μg/ml未満、0.1μg/ml未満、0.08μg/ml未満、0.05μg/ml未満、0.001μg/ml未満になるような条件を意味する。特定の実施形態において、窒素飢餓は、培養培地中の硝酸塩濃度が5μM未満であることを意味する。別の特定の実施形態において、窒素飢餓は、培養培地中の窒素濃度が10μg/ml未満であることを意味する。別の特定の実施形態において、唯一の窒素源が硝酸塩である場合、窒素飢餓とは、200μM未満、100μM未満、10μM未満、5μM未満、1μM未満、0.1μM未満、または0.001μM未満、好ましくは5μM未満の培養培地中の硝酸塩濃度を意味する。
【0037】
T.チュイイの培養は、連続様式、半連続様式、バッチ様式、または流加様式で行うことができる。特定の実施形態において、T.チュイイの培養は、栄養制限を防止するために、流加様式で行われる。
【0038】
T.チュイイの培養は屋内または屋外で行うことができる。屋外培養は、開放系または閉鎖系で行うことができる。
【0039】
開放系としては、太陽光への適切な曝露を確実にするために、深さ約20〜35cmのレースウェイポンドが挙げられる。パドルホイールは、水中に浮遊している微小藻類に原動力を与え、維持する。ポンドには水および栄養が供給される。
【0040】
閉鎖系としては、水平管型太陽光レシーバを通すように培養培地を駆動するポンプから通常なる管型光バイオリアクタ(PBR)が挙げられる。PBRは、制御された環境を与え、微小藻類の高い生産性を可能にする。閉鎖系であるため、微小藻類のすべての増殖要件が系に導入され、要件に応じて制御される。PBRは、二酸化炭素の供給、水の供給、最適な温度、光に対する効率的な曝露、培養密度、pHレベル、ガス供給速度、混合方式等の培養環境のより良い制御を促す。
【0041】
本発明の製造方法によれば、T.チュイイが非生物的ストレス下で培養されると、SODに富む微小藻類T.チュイイのバイオマスが産生される。
【0042】
本明細書で使用する場合、「バイオマス」という用語は、生きている生物または最近生きていた生物を含む生物学的物質を含む。拡大解釈すれば、この用語には、生物を構成する生物学的物質または有機物だけでなく、自然発生的または自然発生的ではない(すなわち、誘発された)生物学的プロセスで生成された生物学的物質または有機物も含まれる。
【0043】
「SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマス」という表現は、参照であるT.チュイイのバイオマスに対応するSOD活性よりも高いSOD活性を有するT.チュイイのバイオマスを指す。T.チュイイは標準的条件下で培養したときにSODを産生するので、「参照であるT.チュイイのバイオマス」は、T.チュイイを標準的条件下、すなわち150μmol光子m
−2s
−1、24℃〜26℃の温度、pH7.5、および1〜2%のCO
2に富む大気を用いてF/2培養培地中でT.チュイイを培養することによって得られるバイオマスである。これらの条件下では、T.チュイイの培養により、実施例1に記載のように、216mM Pi、pH7.8、25℃でキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを用いて、結合系におけるシトクロムcの還元速度の阻害を追跡することにより測定される場合、約180IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示すバイオマスが提供される。したがって、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスは、通常、SOD活性が上記方法に従ってアッセイされる場合、180IU/mg以上の可溶性タンパク質、通常は200IU/mg以上の可溶性タンパク質、典型的には250IU/mg以上の可溶性タンパク質のSOD活性を示す。一実施形態において、SOD活性が、上記で定義した参照のバイオマスにおけるSOD活性に対して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、少なくとも1000%、またはそれ以上である場合、T.チュイイ種の微小藻類のバイオマスはSODに富む。
【0044】
T.チュイイが本発明の製造方法に従って非生物的ストレス条件下で培養されると、得られたSODに富むT.チュイイのバイオマスが培地から回収され、安定化される。そのようにして製造されたSODに富むT.チュイイのバイオマスは、例えば濾過または遠心分離等の当業者に公知の従来の方法によって回収することができる。次に、回収されたバイオマスは、非生物学的物質(例えば、無機塩沈殿物等)を除去するために洗浄することが好ましく、かつ有利である。続いて、バイオマスは、脱水により、または当該バイオマスをマグネシウムに富むブライン溶液に添加することによって安定化される。「脱水」という用語は、バイオマスの水の部分的および/または完全な除去を指す。例えば、バイオマスから除去される水の量は、バイオマスに元々含まれる水の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%であってよい。バイオマスの脱水は、任意の適切な方法、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥によって行うことができる。
【0045】
特定の実施形態において、脱水は凍結乾燥によって行われる。本明細書で使用される場合、「凍結乾燥(freeze−dryingまたはlyophilisation)」という用語は、昇華技術および真空下での水蒸気の除去による水の除去、すなわち、凍結した水の固体状態から蒸気状態への直接の変化およびその後の蒸気の除去を指す。
【0046】
別の特定の実施形態において、脱水は噴霧乾燥によって行われる。「噴霧乾燥」という用語は、液体混合物を小さな液滴へと分解し(霧化)、液滴からの溶媒の蒸発のために強力な推進力がある容器(噴霧乾燥装置)中の混合物から溶媒を迅速に除去することを含む脱水方法を指す。バイオマスの噴霧乾燥は、例えば、BUCHI社のミニスプレードライヤーB−290を使用し、40%速度のポンプを用い、130℃の入口温度設定、60℃未満の出口温度、および100%速度設定のアスピレータにて、10%乾燥重量の生成物溶液を噴射して行うことできる。
【0047】
特定の実施形態において、バイオマスは、当該バイオマスをマグネシウムに富むブライン溶液に添加することによって安定化される。当該マグネシウムに富むブライン溶液は、10〜18g/Lの全硫黄(S)、40〜55g/Lの硫酸塩(SO
42−)、60〜1,500mg/Lのカルシウム(Ca
2+)、52〜70g/Lのマグネシウム(Mg
2+)、15〜20g/Lのカリウム(K
+)、9〜20g/Lのカリウム(Na
+)、115〜180g/Lの塩化イオン(Cl
−)を含み、20℃で1.25〜1.30g/mlの間の密度を有する。したがって、その詳細は以下で記載される当該マグネシウムに富むブライン溶液は、SODを含有する微小藻類のバイオマスに含まれるSODの安定剤として使用できる。
【0048】
微小藻類バイオマスが安定化されると、バイオマスのSOD活性を測定することができる。特定の実施形態において、SOD活性の決定のためのさまざまな方法およびキットを採用できるが、バイオマスのSOD活性は、実施例1に記載のように、216mM Pi、pH7.8、25℃にてキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを用いて、結合系におけるシトクロムcの還元速度の阻害を追跡することによって測定される。
【0049】
本発明の製造方法によれば、使用する非生物的ストレスに応じて、実施例1に記載のように、216mM Pi、pH7.8、25℃でキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを用いて、結合系におけるシトクロムcの還元速度の阻害を追跡することにより測定される場合、180IU/mg超の可溶性タンパク質のSOD活性を示すSODに富むT.チュイイのバイオマスが得られ、したがって、
図1に示すように、平均して、
− T.チュイイを窒素飢餓条件下で培養すると、約700〜約730IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示すSODに富むT.チュイイのバイオマスが得られ、
− T.チュイイを高温条件下で培養すると、約487.50〜512.5IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示すSODに富むT.チュイイのバイオマスが得られ、
− T.チュイイを高塩分濃度条件下で培養すると、約391.10〜428.9IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示すSODに富むT.チュイイのバイオマスが得られ、
− T.チュイイを高酸化還元電位条件下で培養すると、約454.7〜465.3IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示すSODに富むT.チュイイのバイオマスが得られる。
【0050】
T.チュイイのバイオマスのSOD濃縮方法
別の態様において、本発明は、非生物的ストレス下でテトラセルミス チュイイ種の微小藻類を培養することを含む、以下「本発明の濃縮方法」と称する、当該微小藻類のバイオマスのスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を濃縮する方法に関する。
【0051】
「T.チュイイ種の微小藻類のバイオマス」および「SOD」という用語ならびに非生物的ストレス適用前のT.チュイイの培養条件は、本発明の製造方法との関連で既に定義されている。
【0052】
「
非生物的ストレス」という用語は、特定の環境における生物に対する非生物因子の負の影響に関する。非生物変量は、その正常な変動範囲を超えてその環境に影響を与え、生物の個体群のパフォーマンスまたは個々の生理機能に相当の悪影響を及ぼさなければならない。特定の実施形態において、非生物的ストレスは、高酸化還元電位、高温、高塩分濃度、および窒素飢餓からなる群から選択される。
【0053】
本発明によれば、高酸化還元電位に基づく非生物的ストレスは、少なくとも100mV、少なくとも200mV、少なくとも300mV、少なくとも400mV、少なくとも500mV、少なくとも600mV、少なくとも700mV、少なくとも800mV、少なくとも900mV、少なくとも1000mVの酸化還元電位で培養培地を維持することを含む。当該非生物的ストレスを得るための方法は、既に定義されている。
【0054】
高温に基づく非生物的ストレスは、少なくとも28℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃の温度で培養培地を維持することを含む。当該高温を得るための方法は、既に定義されている。
【0055】
本発明によれば、高塩分濃度に基づく非生物的ストレスは、培養培地を少なくとも35PSU(実用塩分単位)、少なくとも41PSU、少なくとも40PSU、少なくとも45PSU、少なくとも50PSU、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300の塩分濃度で維持することを含む。特定の実施形態において、培養培地の塩分濃度は41PSUよりも高い。当該高塩分濃度を得るための方法は、既に定義されている。
【0056】
窒素飢餓に基づく非生物的ストレスは、本発明の製造方法に関連して既に定義されている。
【0057】
SODに富むT.チュイイのバイオマス
別の態様において、本発明は、本発明の製造方法によって得られた、または本発明の濃縮方法によるSODに富む、以下「本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマス」と称する、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスに関する。
【0058】
上述のように、実施例1に記載のように、216mM Pi、pH7.8、25℃でキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを用いて、結合系におけるシトクロムcの還元速度の阻害を追跡することにより測定される場合、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、約180IU/mg超の可溶性タンパク質、通常、200IU/mg以上の可溶性タンパク質、典型的には250IU/mg以上、通常300IU/mg以上、好ましくは350IU/mg以上、より好ましくは400IU/mg以上、さらにより好ましくは450IU/mg以上、いっそうさらにより好ましくは500IU/mg以上、例えば、550IU/mg以上、600IU/mg以上、650IU/mg以上、700IU/mg以上の可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0059】
特定の実施形態において、本発明の製造方法によって得られたSODに富むT.チュイイのバイオマスは、T.チュイイを窒素飢餓条件下、好ましくは培養培地中の硝酸塩濃度が5μM未満の条件下で培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、窒素飢餓条件下、好ましくは培養培地中の硝酸塩濃度が5μM未満でT.チュイイを培養することによって得られ、約700〜約730IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0060】
別の特定の実施形態において、本発明の製造方法によって得られるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、28℃超の温度条件下でT.チュイイを培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、28℃超の温度条件下でT.チュイイを培養することによって得られ、約487.50〜500.5IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0061】
別の特定の実施形態において、本発明の製造方法によって得られるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、T.チュイイを培養培地において35超の塩分濃度条件下で培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、T.チュイイを培養培地において35超の塩分濃度条件下で培養することによって得られ、約391.10〜428.9IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0062】
別の特定の実施形態において、本発明の製造方法によって得られるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、少なくとも100mVの酸化還元電位条件下でT.チュイイを培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、少なくとも100mVの酸化還元電位条件下でT.チュイイを培養することによって得られ、約417〜460IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0063】
特定の実施形態において、本発明の濃縮方法によるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、T.チュイイを窒素飢餓条件下、好ましくは培養培地において5μM未満の硝酸塩濃度で培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、窒素飢餓条件下、好ましくは培養培地中の硝酸塩濃度が5μM未満でT.チュイイを培養することによって得られ、約700〜約730IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0064】
別の特定の実施形態において、本発明の濃縮方法によるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、高温条件下でT.チュイイを培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、T.チュイイを高温条件下で培養することによって得られ、約487.50〜約500.5IU/mgに含まれる可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0065】
別の特定の実施形態において、本発明の濃縮方法によるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、高塩分濃度条件下でT.チュイイを培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、T.チュイイを高塩分濃度条件下で培養することによって得られ、約391.10〜428.9/mgの可溶性タンパク質に含まれるSOD活性を示す。
【0066】
別の特定の実施形態において、本発明の濃縮方法によるSODに富むT.チュイイのバイオマスは、高酸化還元電位条件下でT.チュイイを培養することによって得られる。さらなる特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、高酸化還元電位条件下でT.チュイイを培養することによって得られ、約417〜460IU/mgに含まれる可溶性タンパク質のSOD活性を示す。
【0067】
本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、H
2O
2によって誘発される酸化損傷に対して保護効果を発揮する。したがって、美容活性成分として化粧品産業において、または薬学的活性成分として医薬品産業において、抗酸化剤として、抗炎症剤等として使用することができ、さらに、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、当該バイオマスを含む食品の製造に使用することができる。
【0068】
本発明によるSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマス
上述のように、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマス、すなわち、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、凍結乾燥により、または当該バイオマスをマグネシウムに富むブライン溶液に添加することによって安定化できる。
【0069】
したがって、別の態様において、本発明は、以下、「本発明のSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマス」と称される、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類の脱水またはブライン処理されたバイオマスに関する。
【0070】
本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスの詳細は、既に述べられており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、凍結乾燥によって安定化される。凍結乾燥プロセスは、マニホールド型またはトレー型のいずれかの凍結乾燥機で行うことができる。これらの凍結乾燥機は、周囲圧力よりも低い値へ減圧するための真空ポンプと、−35〜−80℃の温度に冷却された凝縮器とを有する。バイオマスは凍結され、凍結乾燥プロセスは−35℃で開始される。水がすべてバイオマスから除去されるまで、数日間、温度を20〜30℃までゆっくりと上昇させる。
【0072】
別の特定の実施形態において、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスは、当該バイオマスをマグネシウムに富むブライン溶液に添加することによって安定化される。特定の実施形態において、当該マグネシウムに富むブライン溶液は、10〜18g/Lの全硫黄(S)、40〜55g/Lの硫酸塩(SO
42−)、60〜1,500mg/Lのカルシウム(Ca
2+)、52〜70g/Lのマグネシウム(Mg
2+)、15〜20g/Lのカリウム(K
+)、9〜20g/Lのカリウム(Na
+)、115〜180g/Lの塩化イオン(Cl
−)を含み、20℃で1.25〜1.30g/mlの間の密度を有する。
【0073】
本発明のSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマスは、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスに関連して上述したものと同じ用途で使用することができる。
【0074】
SODの精製方法
T.チュイイバイオマスからのSOD活性の分画および部分精製のための抽出戦略、すなわち、ポリエチレングリコール/リン酸塩(PEG/Pi)水性二相系(ATPS)に基づく系が発明者らによって開発された。ATPS系は、SOD活性を含むリン酸塩画分が、SOD調製において望ましくない顔料(クロロフィル)およびポリフェノールのような低分子量化合物を事実上欠いているという利点を有する。
【0075】
このように、別の態様において、本発明は、本発明の製造方法によって得られた、または本発明の濃縮方法によるSODに富む、以下「本発明のSOD精製方法」と称する、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスからSODを精製する方法に関し、当該方法は、
(i)T.チュイイ種の微小藻類の当該バイオマスをホモジナイズしてホモジネートを得る工程と、
(ii)工程(i)で得られたホモジネートをポリエチレングリコール/リン酸塩水性二相分配系により分画することによって、リン酸塩水性画分中のSODに富むタンパク質抽出物を得る工程と
を含む。
【0076】
本発明のSOD精製方法の文脈内で使用される場合、T.チュイイ種の微小藻類の当該バイオマスは、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマス(すなわち、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマス)、およびSODに富むT.チュイイ種の微小藻類の脱水またはブライン処理されたバイオマス(すなわち、本発明のSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマス)からなる群から選択される。
【0077】
本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスの詳細および本発明のSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマスの詳細は、既に述べられており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本発明のSOD精製方法の工程(i)によると、T.チュイイ種の微小藻類のバイオマスをホモジナイズすることによって、ホモジネートを得る。T.チュイイ種の微小藻類のバイオマスのホモジナイズは、従来の方法、例えば、超音波処理、高圧ホモジナイズ、ビーズ粉砕、または一般に細胞を機械的に溶解する任意の方法によって行うことができる。特定の実施形態において、T.チュイイ種の微小藻類のバイオマスのホモジナイズは、抽出緩衝液を当該バイオマスに添加し、微小藻類細胞を溶解することによって実施される。さまざまな抽出緩衝液が使用可能であるが、特定の実施形態において、当該抽出緩衝液は7.8のpHを有し、220mM KH
2PO
4を含む。微小藻類細胞は、従来の方法、例えば、超音波によって溶解することができ、特定の実施形態において、10秒間隔で2分間(各30秒ずつ4サイクル、20%増幅)超音波を適用することにより細胞を溶解する。次いで、バイオマスを除去し、上清を回収する。バイオマスの除去は、従来の方法、例えば、遠心分離によって行うことができ、特定の実施形態において、バイオマスを室温で10分間、16,000rpmで遠心分離し、上清を回収する。
【0079】
本発明のSDO精製方法の工程(ii)によれば、工程(i)で得たホモジネートは、時に「PEG/Pi ATPS」と呼ぶポリエチレングリコール/リン酸塩(PEG/Pi)水性二相分配系によって分画され、これにより、リン酸塩水性画分中のSODに富むタンパク質抽出物を得る。
【0080】
PEG/Pi ATPSは、50%(w/w)PEG原液および40%(w/w)のリン酸カリウム原液、pH 7.0から調製することができる。
【0081】
PEG原液は、計算された量のPEGを脱イオン水に溶解することによって調製することができる。本明細書において、「ポリエチレングリコール」または「PEG」という用語は、2個の炭素原子によって連結されたエーテル基、場合により分岐鎖アルキレン基を含有する水溶性の任意の親水性ポリマーであると理解される。PEGの構造は次の通りである(括弧内は繰り返し単位である)。
HO−(CH
2−CH
2−O)
n−H
式中、「n」はEOモノマーまたは単位の数である。
【0082】
したがって、この定義には、分岐鎖または非分岐鎖のポリエチレングリコール、ならびに当該タイプの単位を含むブロックまたはランダムコポリマーが含まれる。この用語はまた、アルコキシ基、アクリレート基、メタクリレート基、アルキル基、アミノ基、ホスフェート基、イソチオシアネート基、スルフヒドリル基、メルカプト基、およびサルフェート基を導入するように(一端または両端が)修飾されていてもよい末端ヒドロキシル基の誘導体を含む。ポリエチレングリコールはアルキレン基に置換基を有することができる。それらが存在する場合、これらの置換基は好ましくはアルキル基である。
【0083】
本発明のSOD精製方法において使用されるPEGの平均分子量は、広い範囲で変化してもよい。それにもかかわらず、特定の実施形態において、PEGは、1500〜6000Da、好ましくは1500〜3000Daの平均分子量を有する。好ましい実施形態において、PEGは3000Daの平均分子量を有する。
【0084】
リン酸カリウム溶液は、計算された量の無水一塩基性リン酸カリウムおよび無水二塩基性リン酸カリウムを脱イオン水に溶解し、必要に応じて、NaOH等の塩基またはHCl等の酸を使用してpHを7.0に調整することにより、7:18の一塩基性:二塩基性の割合で調製することができる。
【0085】
二相分配系における特定のタンパク質の分布は、サイズ、表面電荷、疎水性等のその独自の物理化学的性質に依存し、例えば、二相分配系の成分の詳細、イオン強度、pH等のタンパク質の分布に影響を及ぼす因子の慎重な調整によって適切に最適化された場合、抽出の初期段階で一般的に使用される遠心分離および限外濾過の欠点の多くを回避することができ、したがって部分的に精製され濃縮された最終生成物が得られる。
【0086】
一つの実施形態において、工程(i)で得たホモジネートがATPSを用いて抽出されると、リン酸塩水性画分中のSODに富むタンパク質抽出物を含有する相を、PEGを含有する相から分離しなければならない。一実施形態において、遠心分離を用いて相を分離する。別の実施形態において、2つの相(PEGおよびPi)ならびにそれらの間の界面は、遠心分離なしで形成される。これは大規模な精製を容易にし、プロセスのコストを下げる。
【0087】
したがって、PEG/Pi ATPSのパラメータ、例えば、PEGのPEG平均分子量、濃度、PEG/Pi ATPS中の塩組成およびpH濃度が、タンパク質分布(Kp、分配係数)、すなわち、Pi相におけるSOD活性の分配挙動および全収率に大きな影響を有することを考慮して要因実験を設計し、いくつかの異なる条件をスクリーニングした(実施例2)。工程(i)で得られたT.チュイイホモジネートに添加して、二相系(PEG/Pi ATPS)を生成させた後、Pi相におけるSOD活性について、はっきりと分離されたPEGおよびPi相の形成をもたらす条件を分析した。Pi相におけるSODの精製倍率に関する最良の条件は、さらなる改良のために選択された。
【0088】
したがって、最初に、異なる平均分子量のPEGおよび異なるPEG/Pi相比を含むさまざまなPEG/Pi ATPSを試験した。この目的のために、異なる二相系(PEG/Pi ATPS)を生成するための工程(i)で得られたT.チュイイホモジネートの存在下で、異なる平均分子量(1500、3000、および6000Da)を有するPEGならびに11%〜20%(w/w)のPEGおよびPiの範囲を試験し、Pi相をSOD活性について分析した。続いて、Pi相におけるSOD活性の精製倍率に関する最良の条件を選択し、異なるpH値(6.5、7、7.5、8、および8.5)および異なるNaClの濃度(0%w/w、3.5%w/w、7%w/w、および10%w/w)を用いて追加のPEG/Pi ATPSを生成することによってさらなる試験を行った。工程(i)で得たT.チュイイホモジネートの添加後、SOD活性をPi相で測定した。すべての場合において、異なるPEG/Pi ATPSは、好ましくは22℃〜25℃の温度で穏やかに成分を混合することによって調製した。必要であれば完全な相分離を達成するために低速遠心分離を行ってもよい。
【0089】
実施例2に示されるように、
PEG1500:12%w/wのPEG、10%w/wのNaClを補充した20%w/wのPiと、
PEG3000:12%w/wのPEG、3.5%w/wのNaClを補充した20%w/wのPiと
から構成された2種のPEG/Piの水性二相系は、天然の微小藻類の総タンパク量に対してSODの選択率が最も高い系として選択された。これらの条件下で、下のリン酸塩(Pi)相でのSOD活性について、高い回収率(80%超)で十分な精製(2〜4倍)が達成された。加えて、これらの系は、クロロフィルおよびポリフェノールのような望ましくない低分子量化合物の除去を可能にする。SOD/リン酸塩相は、50℃および60℃で高い熱安定性を示す。
【0090】
相互汚染を避けるために、上部(PEG)および下部(Pi)の相を注意深くピペット操作することによって、異なる相(PEGおよびPi)を分離することができる。
【0091】
したがって、特定の実施形態において、PEG/Pi水性二相系のPEG相は、約1,500Da〜約3,000Da、好ましくは約3,000Daの平均分子量のPEGを含む。
【0092】
別の特定の実施形態において、PEG/Pi水性二相系のPi相は、10%NaCl(w/w)を含有するKH
2PO
4緩衝液(pH7)を含む。
【0093】
本発明のSOD精製方法によると、リン酸塩水性画分中のT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスからSODに富むタンパク質抽出物が得られる。
【0094】
本発明の精製方法に従って得た、以下で「
本発明のSODに富むタンパク質抽出物」と称する、T.チュイイ種の微小藻類のバイオマス由来のSODに富む当該タンパク質抽出物は、本発明のさらなる発明の態様を構成する。
【0095】
本発明のSODに富むタンパク質抽出物中のSOD活性は、広範囲に変化し得る。それにもかかわらず、特定の実施形態において、本発明のSODに富むタンパク質抽出物中のSOD活性は、50%以上、通常60%以上、通常70%以上、好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上である。
【0096】
本発明のSODに富むタンパク質抽出物においてSOD活性が存在するため、当該タンパク質抽出物は、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスに関連して既に述べたものと同じ用途で使用することができる。
【0097】
SODに富むT.チュイイのバイオマス、SODに富むT.チュイイの微小藻類のブライン処理されたバイオマス、およびSODに富むタンパク質抽出物の使用
本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマスにSOD活性が存在するため、本発明のSODに富むT.チュイイの当該バイオマスは、抗酸化活性および/または抗炎症活性を示し、栄養活性成分、美容活性成分、または薬学的活性成分としての食品、化粧品、および/または製薬産業において使用することができる。同様に、本発明のSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマス(すなわち、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類の脱水されたバイオマスおよびSODに富むT.チュイイ種の微小藻類のブライン処理されたバイオマス)および本発明のSODに富むタンパク質抽出物は、抗酸化活性および/または抗炎症活性を示し、食品のサプリメントとして、または美容活性成分として、または薬学的活性成分として、食品、化粧品、および/または製薬産業において使用することができる。
【0098】
簡略さを期して、「本発明の活性生成物」という一般的な用語は、別途明記されない限り、本発明のSODに富むT.チュイイのバイオマス、本発明のSODに富むT.チュイイの安定化されたバイオマス、および本発明のSODに富むタンパク質抽出物を指す。
【0099】
したがって、一態様において、本発明は、食品のサプリメントとしての本発明の活性生成物の使用に関する。
【0100】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の活性生成物を含む食品に関する。本明細書で使用する場合、「食品」という用語は、任意の性質、すなわち固体または液体の、天然または加工済みの任意の物質または生成物を指し、当該物質または生成物は、通常、または理想的には、その特性、用途、構成要素、調製、および保存状態ゆえに、a)ヒトまたは動物のための通常の栄養として、またはおやつ(pleasurable food)として、またはb)ヒトまたは動物用食品の特別な場合におけるダイエット用製品としての目的のいくつかのために使用できる。したがって、この定義は、別々にまたは都合よく互いに混合されて、ヒトまたは動物の食餌に適している、任意の起源の天然材料および完成品のすべてを広く包含する。インスタント食品は、例えば消費に適した水溶液によって希釈する必要がないものである。原則として、インスタント食品中に存在する成分はバランスがとれており、当業者によって考慮されるように、食べられるようにするために食品に追加の成分を加える必要はない。濃縮された食品は、1つまたは複数の成分がインスタント食品よりも高い濃度で存在するものであるため、使用のためには、例えば消費に適した水溶液によって希釈する必要がある。本発明によって提供される食品の非限定的な実例としては、牛乳、ヨーグルト、マーガリン等の乳製品、ジュースおよびスポーツドリンク等の飲料、ビスケット、パン、シリアル、パスタ、ソース等のような食品が挙げられる。
【0101】
特定の実施形態において、食品は、0.001%〜99.998重量%の本発明の活性生成物を含む。
【0102】
本発明の活性生成物を含む食品は、本発明の活性生成物を食品に添加し、得られた混合物を混合することによって容易に調製することができる。
【0103】
別の態様において、本発明は、本発明の活性生成物を含む機能性食品に関する。本明細書で使用される場合、用語「栄養」および「医薬品」に由来する用語「機能性食品」は、食品から製造されるが、通常は食品に関連しないカプセル、粉末、またはその他医薬品形態で見出され、疾患の治療および/または予防に有益な特性を有する製品を指す。したがって、「機能性食品」という用語は、単離または精製された食品、ならびにカプセル、錠剤、サシェ、飲用可能な小瓶等の経口で通常使用される剤形で一般に提示される添加物または食品サプリメントを含み、このような製品は、生理学的効果または疾患に対する保護を提供する。所望であれば、本発明により提供される機能性食品は、本発明の活性生成物に加えて、1つまたは複数の機能性食品(疾患予防または軽減に関連する製品または物質)、例えば、フラボノイド、オメガ−3脂肪酸等、および/または1つまたは複数のプレバイオティクス(プロバイオティクス活性および/または増殖を刺激する非消化性食品成分)、例えば、オリゴフルクトース、ペクチン、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、ラクツロース、ヒト乳オリゴ糖、食物繊維等を含む。
【0104】
特定の実施形態において、本発明によって提供される機能性食品は、本発明の活性生成物およびそのための許容される経口担体を含む。別の特定の実施形態において、本発明によって提供される機能性食品組成物は、0.001重量%〜99.998重量%の本発明の活性生成物を含む。別の特定の実施形態において、本発明によって提供される機能性食品組成物中の活性生成物は、当該組成物の水性相に含まれる。別の特定の実施形態において、本発明によって提供される機能性食品組成物は、水中油型エマルジョンを含む。
【0105】
別の態様において、本発明は、食品サプリメントとしての本発明の活性生成物の使用に関する。本明細書で使用される場合、「食品サプリメント」という用語は、通常の食事を補うことを目的とする、栄養的または生理学的効果を有する栄養素または他の物質の濃縮源を指す。これらは、「投与」形態、すなわち、丸薬、錠剤、カプセル、測定された用量の液体等として市販されている。
【0106】
別の態様において、本発明は化粧品としての本発明の活性生成物の使用に関する。
【0107】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の活性生成物を美容的に許容されるビヒクルと共に含む化粧品組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「化粧品組成物」または「パーソナルケア組成物」は、ヒトまたは動物の個人衛生における使用に適した、あるいは自然の美しさを向上させ、またはヒトまたは動物の身体の構造または機能に影響を与えずに身体の外観を変化させるための組成物を指し、当該組成物はそのような効果を提供する1つまたは複数の生成物を含む。所望であれば、本発明により提供される化粧品組成物は、本発明の活性生成物に加えて、1つまたは複数の化粧品または化粧製品、すなわち、ヒトまたは動物の体の外部部分(例えば、表皮、毛髪系、爪、唇等)と接触させて、または歯および頬側の粘膜と接触させて、それらのクリーニング、それらに香水をつけること、それらの外観を変化させること、それらの保護、それらを良好な状態で維持すること、または体臭の調整を排他的なまたは主な目的として、意図される物質または混合物を含有できる。化粧製品の実例としては、INCI(化粧品原料国際命名法)リストに含まれる製品が挙げられる。化粧品組成物またはパーソナルケア組成物としては、バルム、パッド、ポマード、クリーム等の製品が挙げられる。
【0108】
特定の実施形態において、本発明によって提供される化粧品組成物は、本発明の活性生成物およびそのための許容される経口または局所用担体を含む。
【0109】
別の特定の実施形態において、本発明によって提供される化粧品組成物は、0.001重量%〜99.998重量%の本発明の活性生成物を含む。
【0110】
本発明の活性生成物を含む化粧品組成物は、当該化粧品組成物のさまざまな成分を添加し、混合することによって容易に調製することができる。
【0111】
本発明によって提供される化粧品組成物は、哺乳動物の皮膚の損傷の予防、改善、または治療において、皮膚の水分補給のため、または老化防止剤として使用することができる。
【0112】
別の態様において、本発明は、抗酸化剤としての本発明の活性生成物の使用に関する。
【0113】
別の態様において、本発明は、薬剤としての本発明の活性生成物の使用、または代替的に述べると医薬品において使用するための本発明の活性生成物に関する。
【0114】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の活性生成物を薬剤として許容されるビヒクル、例えば、許容される経口または局所用担体と共に含む医薬組成物に関する。医薬組成物の処方に適した賦形剤および当該医薬組成物の製造に関する情報は、C.Fauli i Trillo著「Tratado de Farmacia Galenica」、第10版、1993年、Luzzn 5、S.A. de Edicionesに見出すことができる。
【0115】
特定の実施形態において、本発明によって提供される医薬組成物は、0.001重量%〜99.998重量%の本発明の活性生成物を含む。
【0116】
本発明の活性生成物を含む医薬組成物は、当該医薬組成物のさまざまな成分を添加し、混合することによって容易に調製することができる。医薬組成物の処方に適した担体または賦形剤および当該医薬組成物の製造に関する情報は、C.Fauli i Trillo著「Tratado de Farmacia Galenica」、第10版、1993年、Luzzn 5、S.A. de Edicionesに見出すことができる。
【0117】
別の態様において、本発明は、酸化ストレスおよび/または炎症活性を特徴とする疾患または状態の予防および/または治療、または放射線療法に対する耐性の改善における使用のための本発明の活性生成物に関し、または代替的に述べると、本発明は、酸化ストレスおよび/または炎症活性を特徴とする疾患または状態の予防および/または治療のために、または放射線療法に対する耐性の改善における医薬組成物の製造における本発明の活性生成物の使用にも関する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「酸化ストレス活性を特徴とする疾患または状態」という表現は、酸化ストレスが関与する疾患または状態に関する。酸化ストレスは、活性酸素種の全身的な発現と、反応性中間体を容易に解毒し、または結果として生じる損傷を修復する生体系の能力との間の不均衡を反映する。細胞の正常な酸化還元状態の障害は、タンパク質、脂質、およびDNAを含む細胞のすべての成分に損傷を与える過酸化物およびフリーラジカルの生成を通じて毒性作用を引き起こす可能性がある。さらに、いくつかの活性酸素種は、酸化還元シグナル伝達において細胞メッセンジャーとして機能するため、酸化ストレスは、細胞シグナル伝達の正常な機構における混乱を引き起こし得る。ヒトにおいては、酸化ストレスは癌、神経変性病、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ルーゲーリック病、ハンチントン病、および多発性硬化症、心血管疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、心不全、高血圧、心筋梗塞等、ならびにその他の疾患、例えば、脆弱X症候群、鎌状赤血球貧血、扁平苔癬、白斑、自閉症、感染症、および慢性疲労症候群等の発症に関与していると考えられている。
【0119】
本明細書で使用される場合、「炎症活性を特徴とする疾患または状態」という表現は、炎症が関与する疾患または状態に関する。炎症は、免疫細胞、血管、および分子メディエータを含む防御免疫血管応答(protective immunovascular response)である。炎症の目的は、細胞傷害の初期原因を排除し、元の傷害および炎症過程から損傷を受けた壊死細胞および組織を除去し、組織修復を開始することである。炎症性異常は、広範囲のヒト疾患の根底にある障害の大きなグループである。免疫系は、多くの場合、炎症性障害に関与し、アレルギー反応およびいくつかの筋障害の両方において示され、多くの免疫系障害は異常な炎症をもたらす。炎症過程に病因的起源を有する非免疫疾患としては、癌、アテローム性動脈硬化症、および虚血性心疾患(心筋虚血)が挙げられる。炎症に関連する例示的で非限定的な障害の例としては、尋常性挫瘡、急性腎臓損傷、喘息、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、ベーチェット病、セリアック病、慢性前立腺炎、大腸炎、クローン病、皮膚炎、糖尿病性網膜症、気腫、線維症、糸球体腎炎、過敏症(アレルギー)、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、筋障害、骨盤内炎症性疾患、ペイロニー病、虚血再潅流傷害、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、硬化症、皮膚障害、全身性エリテマトーデス、移植片拒絶反応、尿路炎症性疾患、血管炎等が挙げられる。
【0120】
特定の実施形態において、酸化ストレスまたは炎症活性を特徴とする疾患または状態は、癌、パーキンソン病、アルツハイマー病、ルーゲーリック病、ハンチントン病、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、心不全、高血圧、心筋梗塞、脆弱X症候群、鎌状赤血球貧血、扁平苔癬、白斑、自閉症、感染症、慢性疲労症候群、虚血性心疾患、尋常性挫瘡、急性腎臓損傷、喘息、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、ベーチェット病、セリアック病、慢性前立腺炎、大腸炎、クローン病、皮膚炎、糖尿病性網膜症、気腫、線維症、糸球体腎炎、過敏症(アレルギー)、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、筋障害、骨盤内炎症性疾患、ペイロニー病、虚血再潅流傷害、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、硬化症、皮膚障害、全身性エリテマトーデス、移植片拒絶反応、尿路炎症性疾患、血管炎からなる群から選択される。
【0121】
本発明はまた、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の活性生成物を投与することを含む、酸化ストレスおよび/または炎症活性を特徴とする疾患または状態の予防および/または治療のための方法または放射線療法に対する耐性の改善方法に関する。
【0122】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、ヒトを含む任意の哺乳動物を含む。
【0123】
本発明の活性生成物の詳細は、既に上記で定義されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
マグネシウムに富むブライン溶液の使用
別の態様において、本発明は、10〜18g/Lの全硫黄(S)、40〜55g/Lの硫酸塩(SO
42−)、60〜1,500mg/Lのカルシウム(Ca
2+)、52〜70g/Lのマグネシウム(Mg
2+)、15〜20g/Lのカリウム(K
+)、9〜20g/Lのカリウム(Na
+)、115〜180g/Lの塩化イオン(Cl
−)を含み、20℃で1.25〜1.30g/mlの密度を有するブラインの、SODを含有する微小藻類のバイオマスに含まれるSODの安定剤としての使用に関する。
【0125】
SOD活性を含む任意の微小藻類のバイオマスは、当該マグネシウムに富むブライン溶液で安定化させることができる。それにもかかわらず、特定の実施形態において、SODを含有する微小藻類の当該バイオマスは、本発明のSODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスである。
【0126】
別の態様において、本発明は、10〜18g/Lの全硫黄(S)、40〜55g/Lの硫酸塩(SO
42−)、60〜1,500mg/Lのカルシウム(Ca
2+)、52〜70g/Lのマグネシウム(Mg
2+)、15〜20g/Lのカリウム(K
+)、9〜20g/Lのカリウム(Na
+)、115〜180g/Lの塩化イオン(Cl
−)を含み、20℃で1.25〜1.30g/mlの密度を有するブラインによってSODが安定化されることを特徴とする、本発明のSODに富むT.チュイイ種のバイオマスに関する。
【0127】
特定の実施形態において、得られた生成物、すなわち、SODがブラインで安定化されているSODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスが、ブラインの組成と本質的に同じ組成を有するように、培養培地を実質的に含まないSODを含有する微小藻類のバイオマスにブラインを添加する。すなわち、SODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスは、10〜18g/Lの全硫黄(S)、40〜55g/Lの硫酸塩(SO
42−)、60〜1,500mg/Lのカルシウム(Ca
2+)、52〜70g/Lのマグネシウム(Mg
2+)、15〜20g/Lのカリウム(K
+)、9〜20g/Lのカリウム(Na
+)、115〜180g/Lの塩化イオン(Cl
−)を含み、20℃で1.25〜1.30g/mlの密度を有するブラインによってSODが安定化されることを特徴とする。
【0128】
別の特定の実施形態において、生成物、すなわち、SODがブラインで安定化されているSODに富むT.チュイイ種の微小藻類のバイオマスが、ブラインの組成とは本質的に異なる組成を有するように、一定量の培養培地を含むSODを含有する微小藻類のバイオマスにブラインを添加する。当該得られた生成物の組成は、当該生成物を得るために混合されるブラインとバイオマスとの相対量に依存する。特定の実施形態において、ブラインとSODを含有する微小藻類のバイオマスとの比は、約1000:1〜約1:1000、約100:1〜約1:100、約50:1〜約1:50、約25:1〜約1:25、約10:1〜約1:10、約5:1〜約1:5、約1:1である。
【0129】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものとみなしてはならない。
【0130】
実施例1:
種々の培養系および条件の下の微小藻類の種々の種におけるSODの産生
このアッセイは、種々の培養系および条件の下で微小藻類の種々の種におけるSODの産生を研究するために行った。その目的で、屋内培養および屋外培養を含む種々の培養系において、異なる非生物的ストレス条件下で合計11種の微小藻類株を試験し、これらが異なる菌株のSOD活性にどのように影響するかを調べた。以下に示すように、テトラセルミス チュイイは、試験したすべての非生物的条件において最高のSOD活性を有することが見出されたが、窒素飢餓下で最高の活性が得られた。
【0131】
1.材料および方法
1.1 微小藻類培地
藻類であるクロレラ ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ ピレノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)、テトラセルミス スエシカ、テトラセルミス チュイイ、テトラセルミス種、ナンノクロロプシス ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、フェオダクチラム トリコルヌティウム(Phaeodactylum tricornutum)、イソクリシス ガルバナ(Isochrysis galbana)(Clon T−ISO)、ポルフィリジウム クルエンタム、およびセネデスムス オブリカス(Scenedesmus obliquous)はFitoplancton Marino,S.L.の微小藻類培養コレクションから得た。
【0132】
T.スエシカ、T.チュイイ、テトラセルミス種、N.ガジタナ、I.ガルバナ(Clon T−ISO)、およびP.クルエンタムをF/2培養培地で培養した[Guilard R.R.L.&Ryther,J.H.1962年、「Studies of marine planktonic diatoms.I.Cyclotela nana Hustedt and Detonula confervaceae(Cleve) Gran.」Can.J.Microbiol.8、229〜239]。P.トリコヌタムをF/2+Si培養培地で培養した[上記で引用したGuilard&Ryther、1962年]。Ch.ブルガリス、Ch.ピレノイドーサ、およびS.オブリカスをビタミン類を含むBold Basal培地で培養した[Bischoff,H.W.&Bold,H.C.1963年「Phycological Studies IV.Some Soil Algae from Enchanted Rock and Related Algal Species.」 University of Texas Publication No.6318、テキサス州オースティン;Starr R.C.&Zeikus J.A.1993年「UTEX−The Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin」 J.Phycol.Suppl.29]。すべての培地は対応する乾燥した化学物質から新しく調製した。
【0133】
50mLのスタータカルチャー(中間対数期)を1000mLの三角フラスコ中で800mLの培地に播種した。三角フラスコを、150μmol光子m
−2s
−1の連続した白色蛍光下で25±1℃の温度制御室に置いた。培養液を大気中で約2%CO
2で通気した。毎週50mLの培養液を新しい培地を入れた新しいフラスコに移した。これらの培養液は、毎週継代培養することによって維持され、屋内実験および屋外実験の播種材料として使用された。
【0134】
1.2.培養条件
実験培養条件を確立し、それぞれ3つの複製、すなわち、保存培養株の維持条件に対応する対照条件、培養液が高酸化還元条件、高温条件、窒素飢餓条件、および高塩分濃度条件にさらされた屋内条件および屋外条件を維持した。
【0135】
培養液は、栄養制限を防止するために流加様式で操作した。非生物的条件を適用する前に対数期まで培養物を増殖させた。増殖速度を顕微鏡による細胞計数によりモニタした。これは培養されている株に依存するため、増殖段階の特定を確認するために増殖曲線(図示せず)を構築した。
【0136】
培養培地を少なくとも100mVの酸化還元電位で維持した高酸化還元条件はオゾンの添加により得た。少量の培養では、酸化/還元電位(ORP)コントローラを備えたOZAC−PLUS 200オゾン発生器によって培地中でオゾンが生成された。大量の場合、Oxicom SLV 250オゾン発生器を使用し、培地中の溶存オゾン濃度を、Hannah InstrumentsのmV 600 ORPデジタルコントローラによってORPを連続的に測定することによって制御した。
【0137】
培養が維持される高温条件は、28℃より高い温度で得られた。屋内培養の場合、培養室の温度をこの温度より高く設定した。屋外培養の場合、春期および夏期、すなわち環境温度によって自然に温度に達する間に培養を行わなければならなかった。
【0138】
培養培地を培養する高塩分濃度条件は、培地に塩を添加することにより35を超える塩分濃度で培養培地を培養することによって得られた。Hannah InstrumentsのHI9828マルチパラメータを用いて塩分濃度を測定した。
【0139】
窒素飢餓条件は、培地に窒素を添加しないことによって満たされ、したがって培養物によって消費された。窒素濃度は、SealのAQ2自動分析装置によって測定した。
【0140】
1.3. 培養系
屋内培養は、5Lの三角フラスコで行った。屋外培養は、開放系または閉鎖系で行った。
【0141】
使用した開放系はレースウェイポンドであった。培養は、5Lの培養培地を収容する6Lのアクリル開放レースウェイポンドおよび500Lの培養培地を収容する600Lのアクリル開放レースウェイポンドで培養を行った。培養液を18毎分回転数(rpm)で回転するパドルホイールを用いて動かした。このレースウェイポンドは、先行研究から採用された設計で構築した[Radmann、E.Mら、2007年、Aquaculture 2007年、265:118〜126]。
【0142】
使用した閉鎖系は、水平管型太陽光レシーバを通すように培養培地を駆動するポンプからなる管型光バイオリアクタ(PBR)であった。バイオリアクタ内の全培養液体積は、650Lおよび2,000Lであった。
【0143】
使用したレースウェイポンドおよび光バイオリアクタは両方共、純CO
2注入を使用して、pHコントローラおよび流量計により培地のpHを制御した。pHを7.8に設定した。
【0144】
バッチ式遠心分離機で5,000rpmで15分間遠心分離した種々の培養液からバイオマスを直接回収した。回収されたバイオマスは80%の水分を有していた。バイオマスペーストを蒸留水で洗浄して、無機塩沈殿物等の非生体物質を除去した。水性二相系の調製のために、SOD活性について分析される微小藻類のバイオマス試料は、凍結乾燥か、またはマグネシウムに富むブライン溶液にペーストを添加することによって安定化された。このブライン溶液は海水蒸発によって得られた。
【0145】
1.4. タンパク質抽出物および測定
タンパク質抽出物およびSOD抽出物は、1mLの抽出緩衝液(220mM KH
2PO
4緩衝液、pH7.8)を0.1gの微小藻類のバイオマスに添加することによって得た。10秒間隔で2分間(各30秒ずつ4サイクル、20%増幅)超音波を使用して細胞を溶解した。次いで、バイオマスを室温で10分間、16,000rpmで遠心分離し、上清を回収する。タンパク質濃度は、従来のブラッドフォード法により測定した[Bradford M.M.1976年、「A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein−dye binding.」 Analyt.Biochem.72、248〜254]。
【0146】
1.5. 酵素アッセイ
以下のすべての実験におけるSOD活性を、以下に述べるように、216mM Pi、pH7.8でキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを用いて、結合系におけるシトクロムcの還元速度の阻害後にアッセイした[McCord,J.M.およびFridovich,I.(1969年) J.Biol.Chem.244、6049 6055;SOP10−30−6299およびOP SPCYTO01により更新された手順]。
【0147】
スーパーオキシドジスムターゼの酵素アッセイ
このアッセイの目的は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の酵素的測定のための手順を標準化することである。この手順は、酵素的測定によるスーパーオキシドジスムターゼ活性についての規定を有するすべての製品に適用される。
【0148】
定義
精製水=脱イオンシステムからの水分、抵抗率は25℃で18MΩ・cm以上
ユニット定義−1つのユニットは、3.0mLの反応体積中においてpH7.8、25℃で、キサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを用いて、シトクロムcの還元速度を結合系において50%阻害する。キサンチンオキシダーゼ濃度では、毎分0.025±0.005の初期(未阻害)ΔA
550nmを生じるはずである。
XOD−キサンチンオキシダーゼ
SOD−スーパーオキシドジスムターゼ
O
2−・−スーパーオキシドラジカル
【0149】
考察
スーパーオキシドラジカルは、キサンチンオキシダーゼによって触媒される反応によって酵素的に生成される。
【化1】
酸化されたシトクロムcは、スーパーオキシドラジカルによって還元される。還元速度は550nmにおいて分光光度法で追跡される。
シトクロム
3+c+O
2−・→シトクロム
2+c+O
2
スーパーオキシドジスムターゼは、スーパーオキシドラジカルと競合することによってシトクロムcの還元を阻害する。
【化2】
【0150】
手順
条件T=25℃、pH=7.8、A
550nm、光路=1cm。
方法:連続分光光度計による速度測定
試薬:
A)25℃で216mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.8)(緩衝液)[49.3mg/mLの二塩基性リン酸カリウム三水和物(Sigma−Aldrich製品番号P5504)の精製水溶液を調製し、1MのKOHまたは1MのHClを用いて25℃でpHを7.8に調整する]、
B)10.7mMのエチレンジアミン四酢酸溶液(EDTA)[4.0mg/mLのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(Sigma−Aldrichストック番号ED2SS)の精製水溶液を調製する]、
C)1.1mMのシトクロムC溶液(Cyt C)[14.6mg/mlのシトクロムC(Sigma−Aldrich製品番号C7752)の精製水溶液を調製する]、
D)0.108mMのキサンチン溶液(キサンチン)[90mLの精製水に1.64mgのキサンチン(Sigma−Aldrich製品番号X0626)を溶解し、撹拌しながら、すべてのキサンチンが溶解するまで少量の1N KOHを添加し、溶液を100mLメスフラスコに定量的に移し、適量の精製水で100mLにする]、
E)キサンチンオキシダーゼ酵素溶液(XOD)[冷たい精製水中に約5単位/mLのキサンチンオキシダーゼ(Sigma−Aldrich製品番号X1875)を含む溶液を調製する。氷の上に置き、使用直前にキサンチンオキシダーゼ(Sigma−Aldrich製品番号X1875)を用いて冷たい精製水中に0.05単位/mLのキサンチンオキシダーゼを含有する溶液を調製する。この濃度は、アッセイ要件を満たすように調整される必要がある場合がある]、および
F)スーパーオキシドジスムターゼ酵素溶液[使用直前に、冷たい精製水中に10単位/mLのスーパーオキシドジスムターゼを含有する溶液を調製する]。
【0151】
アッセイ手順
以下の試薬を適切な容器に(ミリリットル単位で)ピペットで加えることによって反応カクテルを調製する。
【表1】
【0152】
混合してカクテル(「G」)を得、必要に応じて1M HClまたは1M KOHを用いて25℃でpHを7.8に調整する。
【0153】
キサンチンオキシダーゼチェック:
適切なキュベットに以下(mL単位)をピペットで加える。
【表2】
【0154】
適切に温度調節された分光光度計を使用して25℃に平衡化させる。550nmでの吸光度を一定になるまでモニタし、次に以下を添加する。
【表3】
【0155】
反転させて混合し、約5分間の550nmでの吸光度の増加を記録する。未阻害対ブランクの吸光度の変化はこの反応では0.025±0.005であるべきである。そうでない場合は、試薬E(XOD)の濃度を調整し、キサンチンオキシダーゼチェックを繰り返す。
【0156】
以下の試薬を適切なキュベットに(ミリリットル単位で)ピペットで加える。
【表4】
【0157】
適切に温度調節された分光光度計を使用して25℃に平衡化させる。550nmでの吸光度を一定になるまでモニタし、次に以下を添加する。
【表5】
【0158】
反転させて混合し、約5分間の550nmでの吸光度の増加を記録する。未阻害反応について1分間隔で最高線形速度を得る。この時間間隔を用いて、各試験およびブランクの速度を得る。
【0159】
各未阻害試験のΔA
550nmは、未阻害速度の40〜60%以内になるはずである。この範囲外のいかなる値も無効とみなされる。
【0160】
計算
【表6】
【表7】
DF=希釈係数
50%=単位定義あたりのシトクロムc還元速度の阻害率
0.10=各試験で使用した酵素の体積(mL単位)
【0161】
最終アッセイ濃度
3.00mlの反応混合物において、最終濃度は50mM リン酸カリウム、0.1mM エチレンジアミン四酢酸、0.01mM シトクロムc、0.05mM キサンチン、0.005単位のキサンチンオキシダーゼ、および1単位のスーパーオキシドジスムターゼであった。
【0162】
定義:
a)収率(%)=
精製画分中の総酵素活性×100
粗抽出物中の総酵素活性
b)酵素の比活性は以下のように定義される。
比活性(U/mg)=活性(単位)/タンパク質(mg)
c)酵素純度=
所望の酵素(タンパク質)の量
総タンパク量
【0163】
各精製工程の比活性、精製倍率および%収率を最初の出発粗抽出物と比較した。酵素純度は、精製倍率というパラメータを用いて測定した。精製倍率は、粗抽出物と比較した精製工程後の標的タンパク質(すなわち、SOD)がどれだけより純粋であるかの尺度である。精製倍率は、精製された工程の比活性(U/mgタンパク質)を粗抽出物の比活性(U/mgタンパク質)で除することによって計算できる。
【0164】
2.結果
上記の種々の菌株のSODの生産性を、第1表に示す種々の非生物的条件および系の下で試験した。
【表8】
【0165】
標準条件下または非生物的ストレス下で試験した種々の株の平均産生量は、
図1に示すように、微小藻類T.チュイイによって得られたものと比較してSOD産生量の有意な増加を示さなかった。
【0166】
T.チュイイおよび他のテトラセルミス属を除くすべての菌株は、10〜60IU/mgの可溶性タンパク質の範囲でSOD活性の値を示した。P.トリコルヌタムおよびN.ガジタナのようないくつかの種は、約100IU/mgの可溶性タンパク質というより高いSOD活性を示した。しかしながら、T.チュイイは、標準条件下で約180IU/mgの可溶性タンパク質という高いSOD活性に達したが、これは、窒素飢餓の非生物的ストレス下で培養した場合、715±15IU/mgの可溶性タンパク質という最大SOD活性まで増加し、次いで、T.チュイイを高温ストレス条件下で培養した場合、500±12.5IU/mgの可溶性タンパク質のSOD活性であり、高塩分濃度条件下で培養した場合、410±18.9IU/mgの可溶性タンパク質というSOD活性に達した。結果を
図1に示す。したがって、T.チュイイは、窒素飢餓下で最高活性が得られたが、試験したすべての非生物的条件において最高SOD活性を有することが判明した。これらの理由から、T.チュイイは、さらなるアッセイにおいてSOD活性の産生のための微小藻類として選択された。
【0167】
屋外培養で得られたSOD活性の結果は、試験した種々の培養体積について有意差がなかった。
【0168】
実施例2:
微小藻類T.チュイイ無細胞抽出物からのSOD活性の分画および部分精製
この研究は、微小藻類T.チュイイ無細胞抽出物からのSOD活性の分画および部分精製のための経済的な抽出戦略を開発することを目的とした。この目的のために、ポリエチレングリコール/リン酸塩(PEG/Pi)水性二相系を開発した。リン酸塩リッチ相におけるSOD活性の分配挙動に対する系のPEGモル質量、濃度、pH、およびイオン組成の影響を分析するための詳細な研究を行った。以下に示されるように、
PEG1500:12%w/wのPEG、10%w/wのNaClを補充した20%w/wのPiと、
PEG3000:12%w/wのPEG、3.5%w/wのNaClを補充した20%w/wのPiと
から構成された2種のPEG/Piの水性二相系は、天然の微小藻類の総タンパク量に対してSODの選択率が最も高い系として選択された。これらの条件下で、下のリン酸塩相でのSODについて、高い回収率(80%超)で十分な精製(2〜4倍)が達成された。加えて、この系は、クロロフィルおよびポリフェノールのような望ましくない低分子量化合物の除去を可能にする。SOD/リン酸塩相は、50℃および60℃で高い熱安定性を示す。
【0169】
材料および方法
抽出物
すべての場合について、実施例1に記載されるようにして得られた微小藻類T.チュイイ無細胞抽出物を使用した。
【0170】
水性二相系の調製
ポリエチレングリコール/リン酸塩(PEG/Pi)水性二相系は、50%(w/w)のPEG1500、PEG3000、およびPEG6000原液ならびに40%(w/w)のリン酸カリウム原液(pH7.0)から調製した。PEG原液は、計算された量のPEGを脱イオン水に溶解することによって調製した。リン酸カリウム溶液は、計算された量の無水一塩基性リン酸カリウムおよび無水二塩基性リン酸カリウムを脱イオン水に溶解し、1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)または1Mの塩酸(HCl)を使用してpHを7.0に調整することにより、7:18の一塩基性:二塩基性の割合で調製した。
【0171】
異なる濃度のNaClを含有するリン酸カリウム緩衝液は、25gの原液のリン酸カリウム緩衝液に、0.875gのNaCl(3.5%w/w)、1.75gのNaCl(7%w/w)、2.5gのNaCl(10%w/w)を添加して調製した。1MのNaOHまたは1MのHClを使用してpHを7.0に調整した。
【0172】
ポリマー(PEG)の分子量、塩の組成、およびpH等の種々の系パラメータは、タンパク質分布および全収率に大きな影響を有する。
【0173】
必要量のPEG、食塩水、T.チュイイ無細胞抽出物(微小藻類の上清、全系の10%)、および総重量のバランスを取るための脱イオン水を含有する2〜100gの質量のATPSをプラスチック管で調製した。試験管を22〜25℃で1時間穏やかに混合することによりATPSを調製した。完全な相分離を達成するために、1500rpmで10分間の低速遠心分離を行った。相互汚染を避けるために、上部および下部の相を注意深くピペット操作することによって、相を分離した。各相の体積を測定し、収集した。
【0174】
種々のpH(6.5、7、7.5、8、および8.5)および種々の濃度のNaCl(0%w/w、3.5%w/w、7%w/w、および10%w/w)を用いた様々な量および分子量のPEG(1500Da、3000Da、および6000Da)およびK
2HPO
4を微小藻類の抽出物に添加して二相系を生成した。KH
2PO
4の量は、すべての条件において一定であった。
【0175】
結果
2.1 微小藻類抽出物のためのATPSの最適化
特定のタンパク質の分布は、サイズ、表面電荷、疎水性等のその独自の物理化学的性質に依存する。適切に最適化された場合、タンパク質の分布に影響を与える因子(例えば、PEG分子量、イオン強度、pH)を慎重に調整することによって、遠心分離および限外濾過の欠点の多くを回避することができ、抽出の初期段階で一般的に使用され、部分的に精製され濃縮された最終生成物を提供する。
【0176】
ATPSのパラメータ、例えば、ポリマー(PEG)の平均分子量、濃度、塩組成、およびpHが、タンパク質分布(Kp、分配係数)および全収率に大きな影響を有することを考慮して、要因実験を設計し、いくつかの異なる条件をスクリーニングした(
図2)。PEGおよびPiの両方の試験範囲は11〜20%(w/w)であった。3つのPEG分子量、すなわち1500、3000、および6000を試験した。PEGおよびPiの原液は、それぞれ50%w/wおよび40%w/w、pH7であった。その後、Pi相におけるSODの精製倍率に関する最良の条件は、さらなる改良のために選択された(
図2)。すべての場合について、T.チュイイ無細胞抽出物を使用した。第2表は、最初に試験したPEG/Pi条件を示す。
【0178】
別個の分離されたPEG相およびPi相の形成をもたらす条件をPi相のSOD活性について分析した。結果を
図3および
図4に示す。
【0179】
最初のスクリーニング後に得られた結果に基づいて、以下の条件をさらなる分析のために選択した。
a) PEG1500:ラン10回、すなわち、12%w/wのPEG、20%w/wのPi[PEG1500(10)]
b) PEG3000:ラン10回、すなわち、12%w/wのPEG、20%w/wのPi[PEG3000(10)]
【0180】
選択された条件は、第3表に示されるように、より正確な結果を得るために10gの最終重量までスケールアップした。
【表10】
【0181】
PEG1500およびPEG3000についてはSOD比活性(S.A.、単位/mgタンパク質)の改善が再現された。
図5は、選択された条件のPEG相およびPi相が分離しているFalconチューブを示す。
【0182】
次の工程は、種々のpHおよびNaCl濃度を試験する追加のスクリーニング工程を含んでいた。上記の選択された条件は、SOD純度のさらなる改善のために使用された。第4表は、試験したpH/NaCl条件を示す。
【表11】
【0183】
図6〜
図8は、pH/NaClスクリーニング条件の精製改善を示す。
【0184】
上記の結果に基づいて、スケールアップのために次の条件を選択した。
a) PEG1500:1、2、およびC4
b) PEG3000:1、10、およびC2
c) PEG6000(10):1、7、およびC3
【0185】
図9〜
図11は、上記の選択された条件のスケールアップ実験(10g)の結果を示す。
【0186】
最良のpH/NaCl条件を最終重量10gで試験した場合、すべてのPEG6000(10)条件はPi相でクロロフィル汚染(
図12、13、および14)を示したため、PEG1500およびPEG3000のみがさらなる改善のために選択された。
【0187】
最終的に、スケールアップ試験後の最終選択条件は、以下の通りであった。
PEG1500:C4、すなわち、12%w/wのPEG、10%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi、pH7
PEG3000:C2、すなわち、12%w/wのPEG、3.5%w/wのNaClを補充した20%w/wPi、pH7
【0188】
これらの2種のPEG/Piの水性二相系は、天然の微小藻類T.チュイイの総タンパク量に対してSODの選択率が最も高い系として選択された。これらの条件下で、下のリン酸塩相でのSODについて、高い回収率(80%超)で十分な精製(2〜4倍)が達成された。加えて、両方の系は、クロロフィルおよびポリフェノールのような望ましくない低分子量化合物の除去を可能にする。
【0189】
2.2.最適化されたATPSの再現性
ATPSに最良の条件の再現性を調査した。3つの独立した実験を連続3日間で行った。リン酸塩およびPEG原液を毎回新しく調製した。T.チュイイ細胞(0.1g)を220mMのPi緩衝液(pH7.8)1mLに再懸濁し、超音波(各30秒ずつ4サイクル、20%増幅)を適用することにより溶解した。細胞を沈降させ(16,000xgで20分間)、上清をATPS分配に付した。ATPSの最終重量は10gであり、最終濃度は、
− PEG1500:12%w/wのPEG、10%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi(最終濃度)
− PEG3000:12%w/wのPEG、3.5%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi(最終濃度)
【0190】
Pi相の精製度および精製収率は実験毎に計算した。結果を第5表および
図15に示す。
【表12】
【0191】
2.3.ATPSスケールアップ実験
最適化されたATPS条件の再現性を100gの最終調製物で試験した。最良の精製度および精製収率の向上を示した条件は以下の通りであった。
− PEG1500:12%w/wのPEG、10%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi(最終濃度)
− PEG3000:12%w/wのPEG、3.5%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi(最終濃度)
【0192】
手順:
1gの凍結乾燥T.チュイイ細胞を10mLの220mM Pi(pH7.8)に溶解した。氷中で40秒を10回、小チップを用いて40%振幅で超音波を適用することによって細胞を溶解した。続いて、細胞を16,000xgで20分間遠心分離し、ATPSをセットアップするために上清を使用した。最終的なATPSは、24gのPEG、50gのPi、10gの細胞抽出物、および16gのddH
2Oからなっていた。混合物を室温で1時間回転させた後、相分離を促進するために1500rpmで10分間穏やかに遠心分離した。
【0193】
シトクロムcアッセイ(実施例1)を用いてPi相のSOD活性を測定した(実施例1)。総タンパク濃度をブラッドフォード法(上記引用)により測定した。精製度および精製収率を計算した。結果を
図16に示す。当該
図16に示されているように、下部リン酸塩相でのSODについても、高い収率(80%以上)で十分な精製(3〜5倍)が達成された。
【0194】
2.4.比活性の向上を目的とした粗抽出物およびPi相の熱処理
この実験の目的は、ATPSへの適用前の粗抽出画分の熱処理がSOD比活性を向上できるかどうかを調査することであった。
【0195】
粗抽出物の熱処理のために、0.1gのT.チュイイ細胞を上記のように溶解し、16.000xgで20分間遠心分離した。その後、上清の粗抽出物を40℃および50℃の2つの異なる温度で熱インキュベーションした。異なる時点でアリコートを除去し、総SOD活性をシトクロムcアッセイを用いて測定した。さらに、総タンパク濃度をブラッドフォード法(上記引用)により測定した。結果を
図17および
図18に示す。
【0196】
ATPS後のPi相の熱処理のために、2つの最適化されたATPS条件のPi相(PEG1500およびPEG3000)を用いて同じ仮説を試験した。ATPS後、Pi相を50℃および60℃で熱処理した。PEG1500のPi相の結果を
図19および
図20に示す。PEG3000のPi相の結果を
図21および
図22に示す。これらの結果は、SOD/リン酸塩相が50℃および60℃で高い熱安定性を示すことを示している。
【0197】
2.5. 遠心分離なしのATPSにおける相形成
2つの最適化されたATPS条件を用いて、遠心分離なしで2つの相(PEGおよびPi)ならびにそれらの間の界面が形成される可能性を調査した。これは大規模な精製を容易にし、プロセスのコストを下げる。条件は以下である。
− PEG1500:12%w/wのPEG、10%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi(最終濃度)
− PEG3000:12%w/wのPEG、3.5%w/wのNaClを補充した20%w/wのPi(最終濃度)
混合物(最終重量約40g)を1時間回転させた後、室温に置き平衡化させた。一晩のインキュベーション後にPEG1500の場合にのみ相分離が観察された。結果は65gの系を用いて再現された。2つの系の写真を
図23および
図24に示す。比較のために、遠心分離されたバージョンの試料が含まれる。
【0198】
実施例3:
NHDF細胞におけるH2O2に対するT.チュイイ無細胞抽出物の保護効果のインビトロ評価
材料および方法
抽出物:T.チュイイ無細胞抽出物(実施例1に記載されるようにして得られた)
インビトロ毒性アッセイ
正常なヒト成人の皮膚から単離した初代ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を、Lonza Clonetics(商標)(Lonza、米国ウォーカーズヴィル)から入手した。2%血清を含む推奨培地FGM(商標)−2 BulletKit(商標)を使用して、細胞を37℃、5%CO
2雰囲気中で培養した。H
2O
2により誘発される酸化損傷に対するT.チュイイ無細胞抽出物の保護効果の評価のために、NHDF細胞を、300μg/ml(w/v)の最終濃度にて(実施例1に記載のようにして得られた)T.チュイイ無細胞抽出物を含有する増殖培地中で48時間予めインキュベートした。H
2O
2処理の前に、抽出化合物とH
2O
2との間の直接的な細胞外相互作用を防止するために、細胞を1xPBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na
2HPO
4、2mM KH
2PO
4)で2回洗浄した。最後に、H
2O
2を最終濃度0.5nMで培地に加え、細胞を37℃で3時間インキュベートした。細胞毒性を、ATP Vialight plusキット(Lonza、米国ウォーカーズヴィル)を用いて製造業者の標準プロトコルに従ってATPレベルを測定することによって評価した。
【0199】
結果
単離された初代ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対するインビトロ毒性アッセイを用いて、H
2O
2によって誘発された酸化損傷に対するT.チュイイ無細胞抽出物の保護効果を研究した。NHDF細胞は、T.チュイイを含む増殖培地中で48時間予めインキュベートし、0.5nM H
2O
2の添加により酸化ストレスを誘発した。細胞毒性を評価するために、NHDF細胞はさらに予めT.チュイイ無細胞抽出物を添加することなくH
2O
2で処理し、未処理NHDF細胞を対照として用いた。細胞毒性は、細胞ATPレベルを測定することによって評価した(
図25)。この分析により、NHDF細胞をT.チュイイ無細胞抽出物で前処理すると、予め抽出物を添加することなくH
2O
2に曝露された細胞と比較して、細胞生存性の有意な保護がもたらされることが明らかになった。したがって、T.チュイイ無細胞抽出物は、H
2O
2によって引き起こされる酸化損傷に対して、ヒト初代皮膚線維芽細胞を効果的に保護する。