(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、前記第1集団からドナー非ヒト哺乳動物XY ES細胞を選択し、前記F0世代における前記繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に逆相関すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、前記第1集団からドナー非ヒト哺乳動物XY ES細胞を選択し、前記F0世代における前記繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に逆相関すること、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
前記第1集団が、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記標的化合物の存在下で培養される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
ステップ(b)が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、前記第1集団における少なくとも2種の前記非ヒト哺乳動物XY ES細胞をアッセイすることを含み、ステップ(c)が、前記ドナー非ヒト哺乳動物XY ES細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)の前記アッセイした細胞を選択することを含む、請求項2〜10および12〜33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を生成することができるドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製するための方法及び組成物が提供される。一態様では、本発明は、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における雌化活性について標的化合物をスクリーニングする方法を提供し、本方法は以下を含む:(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1集団及び第2集団を培養し、第1集団は、標的化合物の存在下で培養され、第2集団は、標的化合物の不存在下で培養されること、ならびに(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1及び第2集団の各々で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞のうち1種以上をアッセイし、それによって雌化活性が、第2集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞におけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性の減少によって同定されること。場合により、このような方法は、さらに以下を含む:(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、第1集団からドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、F0世代における繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に逆相関すること。場合により、このような方法は、さらに以下を含む:(d)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入すること、(e)ステップ(d)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、及び(f)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になる、または繁殖可能かつ妊孕可能になること。
【0007】
いくつかのこのような方法では、ステップ(b)のアッセイによって、mRNAレベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現が検出される。いくつかのこのような方法では、ステップ(b)のアッセイによって、タンパク質レベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現が検出される。
【0008】
いくつかの方法では、雌化活性は、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性の欠如によってステップ(b)で同定される。いくつかの方法では、雌化活性は、第2集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性の減少によってステップ(b)で同定される。いくつかの方法では、雌化活性は、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性の欠如によってステップ(b)で同定される。
【0009】
いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地中で培養された対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、第2集団からの対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ステップ(b)は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、第1集団における少なくとも2種の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすることを含み、ステップ(c)は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)のアッセイした細胞を選択することを含む。いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を欠いている。いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている。
【0010】
いくつかの方法では、第1集団は、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、標的化合物の存在下で培養される。
【0011】
いくつかの方法では、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。場合により、多能性細胞は、VGF1マウスES細胞である。
【0012】
いくつかの方法では、標的化合物の不存在下で、ステップ(a)の培地は、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない。
【0013】
いくつかの方法では、標的化合物の不存在下で、ステップ(a)の培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する低オスモル濃度培地である。場合により、低オスモル濃度培地は、以下の特性のうち1つ以上を有する:(I)低オスモル濃度培地は、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(II)低オスモル濃度培地は、218mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(III)低オスモル濃度培地は、約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有する、(IV)基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む、(V)基本培地は、塩化ナトリウムを約50mM〜約110mMの濃度で含む、(VI)基本培地は、炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含む、(VII)基本培地は、重炭酸ナトリウムを約13mM〜約25mMの濃度で含む、(VIII)基本培地は、約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度を有する、(IX)基本培地は、塩化ナトリウムを87±5mMの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(X)基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で、及び炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有する、ならびに(XI)低オスモル濃度培地は、218mOsm/kgのオスモル濃度を有し、基本培地は、塩化ナトリウムを50mM〜110mMの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを13mM〜25mMの濃度で含む。場合により、基本培地は、炭酸塩を約18mM〜約44mMの濃度で含む。場合により、基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む。場合により、炭酸塩は重炭酸ナトリウムであり、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩は塩化ナトリウムであり、低オスモル濃度培地は、約216mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する。場合により、基本培地は、塩化ナトリウムを約3mg/mLの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを約2.2mg/mLの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有する。
【0014】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である。場合により、げっ歯類はラットまたはマウスである。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統を含むマウスである。場合により、Y染色体はC57BL/6系統からのものである。いくつかの方法では、げっ歯類は129系統を含むマウスである。場合により、Y染色体は129系統からのものである。場合により、Y染色体はBALB/c系統からのものである。いくつかの方法では、マウスは129系統を含まない。いくつかの方法では、Y染色体は129系統からのものではない。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統及び129系統を含むマウスである。
【0015】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0016】
いくつかの方法は、以下をさらに含む:(g)子孫を生成するために繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物を交配させること。場合により、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または全てのXY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である。場合により、XY子孫には表現型的に雌はいない。場合により、全てのXY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である。場合により、交配は、繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物をコホートF0 XY雄非ヒト哺乳動物と交雑させて、ここで繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物及びF0 XY雄非ヒト哺乳動物が各々、遺伝子改変についてヘテロ接合体であること、ならびに遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫非ヒト哺乳動物を得ることを含む。
【0017】
いくつかの方法では、宿主胚は前桑実期胚であり、ステップ(d)は、宿主胚を胚盤胞期まで培養することをさらに含む。
【0018】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、標的化合物の存在下で培養される。
【0019】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。場合により、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0020】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。
【0021】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、繁殖可能である。場合により、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0022】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。場合により、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0023】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。場合により、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0024】
いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0025】
別の態様では、本発明は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する方法を提供し、本方法は以下を含む:(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む低オスモル濃度培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の集団を培養し、低オスモル濃度培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有すること、(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の集団において非ヒト哺乳動物XY多能性細胞のうち1種以上をアッセイすること、ならびに(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、F0世代における繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に逆相関すること。
【0026】
いくつかのこのような方法では、ステップ(b)のアッセイによって、mRNAレベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現が検出される。いくつかのこのような方法では、ステップ(b)のアッセイによって、タンパク質レベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現が検出される。
【0027】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地中で培養された対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性に基づいて選択される。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ステップ(b)は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の集団における少なくとも2種の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすることを含み、ステップ(c)は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)のアッセイした細胞を選択することを含む。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を欠いている。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている。
【0028】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で培養される。
【0029】
いくつかの方法では、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。場合により、多能性細胞は、VGF1マウスES細胞である。
【0030】
いくつかの方法では、低オスモル濃度培地は、以下の特性のうち1つ以上を有する:(I)低オスモル濃度培地は、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(II)低オスモル濃度培地は、218mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(III)低オスモル濃度培地は、約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有する、(IV)基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む、(V)基本培地は、塩化ナトリウムを約50mM〜約110mMの濃度で含む、(VI)基本培地は、炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含む、(VII)基本培地は、重炭酸ナトリウムを約13mM〜約25mMの濃度で含む、(VIII)基本培地は、約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度を有する、(IX)基本培地は、塩化ナトリウムを87±5mMの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(X)基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で、及び炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有する、ならびに(XI)低オスモル濃度培地は、218mOsm/kgのオスモル濃度を有し、基本培地は、塩化ナトリウムを50mM〜110mMの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを13mM〜25mMの濃度で含む。場合により、基本培地は、炭酸塩を約18mM〜約44mMの濃度で含む。場合により、基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む。場合により、炭酸塩は重炭酸ナトリウムであり、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩は塩化ナトリウムであり、低オスモル濃度培地は、約216mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する。場合により、基本培地は、塩化ナトリウムを約3mg/mLの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを約2.2mg/mLの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有する。
【0031】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である。場合により、げっ歯類はラットまたはマウスである。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統を含むマウスである。場合により、Y染色体はC57BL/6系統からのものである。いくつかの方法では、げっ歯類は129系統を含むマウスである。場合により、Y染色体は129系統からのものである。場合により、Y染色体はBALB/c系統からのものである。いくつかの方法では、マウスは129系統を含まない。いくつかの方法では、Y染色体は129系統からのものではない。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統及び129系統を含むマウスである。
【0032】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0033】
いくつかの方法は、以下をさらに含む:(d)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入すること、(e)ステップ(d)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、及び(f)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になる、または繁殖可能かつ妊孕可能になること。いくつかの方法は、以下をさらに含む:(g)子孫を生成するために繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物を交配させること。場合により、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または全てのXY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である。場合により、XY子孫には表現型的に雌はいない。場合により、全てのXY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である。場合により、交配は、繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物をコホートF0 XY雄非ヒト哺乳動物と交雑させて、ここで繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物及びF0 XY雄非ヒト哺乳動物が各々、遺伝子改変についてヘテロ接合体であること、ならびに遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫非ヒト哺乳動物を得ることを含む。
【0034】
いくつかの方法では、宿主胚は前桑実期胚であり、ステップ(d)は、宿主胚を胚盤胞期まで培養することをさらに含む。
【0035】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で培養される。
【0036】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。場合により、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0037】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。
【0038】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、繁殖可能である。場合により、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0039】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。場合により、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0040】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。場合により、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0041】
いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0042】
別の態様では、本発明は、以下を含むキットを提供する:(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞においてDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性レベルを検出するための検出試薬、ならびに(b)検出試薬を使用して、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞がF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成する予測傾向と検出を相互に関連付けるための説明書。場合により、検出試薬は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現を検出するための、1つ以上のプライマーセット及び/または1つ以上のプローブを含む。
【0043】
別の態様では、本発明は、雌化培地において標的培地成分の濃度を最適化する方法を提供し、本方法は以下を含む:(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1集団及び第2集団を培養し、第1集団は、第1濃度の標的培地成分の存在下で培養され、第2集団は、第1濃度とは異なる第2濃度の標的培地成分の存在下で培養されること、(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1及び第2集団の各々で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞のうち1種以上をアッセイすること、ならびに(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性が、第2集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞で減少する場合に、第1濃度を選択すること。いくつかのこのような方法は、さらに以下を含む:(d)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、第1集団からドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、F0世代における繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に逆相関すること。いくつかのこのような方法は、さらに以下を含む:(e)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入すること、(f)ステップ(e)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、及び(g)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になる、または繁殖可能かつ妊孕可能になること。
【0044】
いくつかの方法では、ステップ(b)のアッセイによって、mRNAレベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現が検出される。いくつかの方法では、ステップ(b)のアッセイによって、タンパク質レベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現が検出される。
【0045】
いくつかの方法では、第1濃度は、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を欠いている場合に、ステップ(c)で選択される。いくつかの方法では、第1濃度は、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、第2集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する場合に、ステップ(c)で選択される。いくつかの方法では、第1濃度は、第1集団からの1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている場合に、ステップ(c)で選択される。
【0046】
いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地中で培養された対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ステップ(c)のドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、第2集団からの対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ステップ(b)は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1集団における少なくとも2種の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすることを含み、ステップ(d)は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)のアッセイした細胞を選択することを含む。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を欠いている。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている。
【0047】
いくつかの方法では、第1及び第2集団は、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、標的培地成分の存在下で培養される。
【0048】
いくつかの方法では、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。場合により、多能性細胞は、VGF1マウスES細胞である。
【0049】
いくつかの方法では、ステップ(a)の培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する低オスモル濃度培地である。場合により、低オスモル濃度培地は、以下の特性のうち1つ以上を有する:(I)低オスモル濃度培地は、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(II)低オスモル濃度培地は、218mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(III)低オスモル濃度培地は、約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有する、(IV)基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む、(V)基本培地は、塩化ナトリウムを約50mM〜約110mMの濃度で含む、(VI)基本培地は、炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含む、(VII)基本培地は、重炭酸ナトリウムを約13mM〜約25mMの濃度で含む、(VIII)基本培地は、約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度を有する、(IX)基本培地は、塩化ナトリウムを87±5mMの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有する、(X)基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で、及び炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有する、ならびに(XI)低オスモル濃度培地は、218mOsm/kgのオスモル濃度を有し、基本培地は、塩化ナトリウムを50mM〜110mMの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを13mM〜25mMの濃度で含む。場合により、基本培地は、炭酸塩を約18mM〜約44mMの濃度で含む。場合により、基本培地は、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む。場合により、炭酸塩は重炭酸ナトリウムであり、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩は塩化ナトリウムであり、低オスモル濃度培地は、約216mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する。場合により、基本培地は、塩化ナトリウムを約3mg/mLの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを約2.2mg/mLの濃度で含み、低オスモル濃度培地は、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有する。
【0050】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である。場合により、げっ歯類はラットまたはマウスである。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統を含むマウスである。場合により、Y染色体はC57BL/6系統からのものである。いくつかの方法では、げっ歯類は129系統を含むマウスである。場合により、Y染色体は129系統からのものである。場合により、Y染色体はBALB/c系統からのものである。いくつかの方法では、マウスは129系統を含まない。いくつかの方法では、Y染色体は129系統からのものではない。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統及び129系統を含むマウスである。
【0051】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0052】
いくつかの方法は、以下をさらに含む:(h)子孫を生成するために繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物を交配させること。場合により、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または全てのXY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である。場合により、XY子孫には表現型的に雌はいない。場合により、全てのXY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である。場合により、交配は、繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物をコホートF0 XY雄非ヒト哺乳動物と交雑させて、ここで繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物及びF0 XY雄非ヒト哺乳動物が各々、遺伝子改変についてヘテロ接合体であること、ならびに遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫非ヒト哺乳動物を得ることを含む。
【0053】
いくつかの方法では、宿主胚は前桑実期胚であり、ステップ(e)は、宿主胚を胚盤胞期まで培養することをさらに含む。
【0054】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、標的培地成分の存在下で培養される。
【0055】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。場合により、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0056】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。
【0057】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、繁殖可能である。場合により、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0058】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。場合により、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0059】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。場合により、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0060】
いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0061】
一態様では、本発明は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する方法を提供し、本方法は以下を含む:Y染色体の領域をサイレンシングして、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を生成するために非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を改変し、サイレンシングは、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持すること以外の手段によって達成され、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を生成することができること。場合により、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。
【0062】
いくつかの方法では、領域は、Y染色体の短腕の全てまたは一部を含む。いくつかの方法では、領域は、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上を除外する。いくつかの方法では、領域は、マウスY染色体のSxr
a領域及び/またはSxr
b領域に対応するY染色体の区画の全てまたは一部を含む。いくつかの方法では、領域は、マウスY染色体上の欠失区間1、欠失区間2、及び欠失区間3のうち1つ以上に対応するY染色体の区画の全てまたは一部を含む。いくつかの方法では、領域は、マウスY染色体上の欠失区間2に対応するY染色体の区画の全てまたは一部を含む。いくつかの方法では、領域は、Kdm5dのテロメア側またはUsp9yのセントロメア側におけるY染色体の一部を含む。いくつかの方法では、領域は、Zfy2、Sry、またはRbmyクラスターのテロメア側である。いくつかの方法では、領域は、Zfy2遺伝子のテロメア側である。
【0063】
いくつかの方法では、サイレンシングは、Y染色体の短腕の領域上に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる。いくつかの方法では、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/または活性が減少する。場合により、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/または活性が排除される。いくつかの方法では、Sry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/または活性が減少する。場合により、Sry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/または活性が排除される。
【0064】
いくつかの方法では、サイレンシングは永久的である。いくつかの方法では、サイレンシングは、以下のうち1つ以上によって達成される:(1)標的遺伝子改変、(2)領域の欠失または破壊、(3)領域内の1つ以上の遺伝子から転写されるmRNAのRNA干渉またはアンチセンス阻害、(4)領域内の1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の指向性分解、(5)ヘテロクロマチン媒介性サイレンシング、(6)Y染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加、及び(7)領域内における1つ以上の遺伝子の転写減少。場合により、領域は、標的ヌクレアーゼで欠失または破壊される。場合により、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質及びガイドRNA(gRNA)である。
【0065】
いくつかの方法では、サイレンシングは、以下のタイミングのうち少なくとも1つの間に生じる:(1)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が宿主胚に導入された後、(2)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を含む宿主胚が、レシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入された後、(3)雄の性決定プログラムが実行される場合の胚発生中、(4)少なくともマウスのE11〜E12に対応する発達段階までの胚発生中、(5)少なくともマウスのE17〜E19に対応する発達段階までの胚発生中、(6)胚発生の全体を通して、(7)卵形成期の全体を通して、(8)卵母細胞発生における減数分裂前期中、(9)卵母細胞が受精した後の最初の2細胞分裂中、及び(10)受精後の最初の2細胞分裂を経た排卵後の卵母細胞において。いくつかの方法では、性転換は、F1子孫に伝達されることができる。
【0066】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地中で培養されない。その他の方法は、培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を培養することをさらに含み、培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地である。いくつかの方法では、領域としては、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上が挙げられ、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で培養され、培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地である。場合により、低オスモル濃度培地は、以下のうち1つ以上を含む基本培地を含む:(1)約218mOsm/kg〜約322mOsm/Kgのオスモル濃度、(2)218mOsm/kgのオスモル濃度、(3)約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度、(4)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(5)約50mM〜約110mMの塩化ナトリウム濃度、(6)約17mM〜約30mMの炭酸塩濃度、(7)約13mM〜約25mMの重炭酸ナトリウム濃度、(8)約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度、(9)87±5mMの塩化ナトリウム濃度及び261±26mOsm/kgのオスモル濃度、(10)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、約17mM〜約30mMの濃度の炭酸塩、ならびに約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度、ならびに(11)218mOsm/kgのオスモル濃度、50mM〜110mMの塩化ナトリウム濃度、及び13mM〜25mMの重炭酸ナトリウム濃度。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。
【0067】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である。場合により、げっ歯類はラットまたはマウスである。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統を含むマウスである。場合により、Y染色体はC57BL/6系統からのものである。いくつかの方法では、げっ歯類は129系統を含むマウスである。場合により、Y染色体は129系統からのものである。いくつかの方法では、マウスは129系統を含まない。いくつかの方法では、Y染色体は129系統からのものではない。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統及び129系統を含むマウスである。場合により、多能性細胞は、VGF1マウスES細胞である。
【0068】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0069】
いくつかの方法では、領域はZfy2を含み、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変をさらに含む。場合により、非ヒト哺乳動物はC57BL/6系統を含むマウスであり、非ヒト哺乳動物は129系統を含まないマウスであり、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体はC57BL/6系統からのものである、または非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体は129系統からのものではない。場合により、このような方法は、培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を培養することをさらに含み、培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地である。
【0070】
本発明は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する上記方法のいずれかによって生成されるドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を含むインビトロ培養物もまた提供する。
【0071】
本発明は、胚を生成する方法もまた提供し、本方法は、上記方法のいずれかによって生成されるドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入することを含み、宿主胚は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成することができる。
【0072】
本発明は、胚を生成する上記方法によって生成される改変非ヒト哺乳動物胚もまた提供する。本発明は、細胞のゲノム中にY染色体の領域をサイレンシングする改変を有する細胞を含む改変非ヒト哺乳動物胚もまた提供する。
【0073】
本発明は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製する方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)宿主胚に、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する上記方法のいずれかによって生成されるドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を導入すること、(b)ステップ(a)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、及び(c)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になること。あるいは、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製するための方法が提供され、本方法は以下を含む:(a)改変胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、胚を懐胎させ、胚は上記方法によって生成されること、及び(b)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になること。
【0074】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、繁殖可能である。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。
【0075】
本発明は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製する上記方法のいずれかによって生成される繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物もまた提供する。
【0076】
本発明は、F1世代において標的ゲノム遺伝子座の標的遺伝子改変についてホモ接合体のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成する方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)上記方法によって生成される繁殖可能なF0 XY雌をF0 XY雄非ヒト哺乳動物と交雑させて、ここで繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物及びF0 XY雄非ヒト哺乳動物が各々、標的遺伝子改変についてヘテロ接合体であること、ならびに(b)標的遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫非ヒト哺乳動物を得ること。場合により、F0 XY雄は、繁殖可能なF0 XY雌と同じ多能性細胞クローンに由来するコホートクローン兄弟である。
【0077】
本発明は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製する方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含むY染色体の領域をサイレンシングするために、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を改変することによってドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を生成し、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変をさらに含むこと、(b)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入すること、(c)ステップ(b)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、ならびに(d)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になること。場合により、多能性細胞は胚性幹細胞である。
【0078】
いくつかの方法では、領域は、Y染色体の短腕の全てもしくは一部を含み、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上を除外し、マウスY染色体のSxr
a領域及び/もしくはSxr
b領域に対応するY染色体の区画の全てもしくは一部を含み、マウスY染色体上の欠失区間1、欠失区間2、及び欠失区間3のうち1つ以上に対応するY染色体の区画の全てもしくは一部を含み、Kdm5dのテロメア側もしくはUsp9yのセントロメア側におけるY染色体の一部を含み、またはZfy2、Sry、もしくはRbmyクラスターのテロメア側である。
【0079】
いくつかの方法では、サイレンシングは、領域中に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる。場合により、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少し、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が排除され、Sry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少し、またはSry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が排除される。いくつかの方法では、サイレンシングは永久的である。
【0080】
いくつかの方法では、サイレンシングは、以下のうち1つ以上によって達成される:(1)標的遺伝子改変、(2)領域の欠失または破壊、(3)領域内の1つ以上の遺伝子から転写されるmRNAのRNA干渉またはアンチセンス阻害、(4)領域内の1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の指向性分解、(5)ヘテロクロマチン媒介性サイレンシング、(6)Y染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加、及び(7)領域内における1つ以上の遺伝子の転写減少。場合により、領域は、標的ヌクレアーゼで欠失または破壊される。場合により、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質及びガイドRNA(gRNA)である。
【0081】
いくつかの方法では、サイレンシングは、以下のタイミングのうち少なくとも1つの間に生じる:(1)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が宿主胚に導入された後、(2)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を含む宿主胚が、レシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入された後、(3)雄の性決定プログラムが実行される場合の胚発生中、(4)少なくともマウスのE11〜E12に対応する発達段階までの胚発生中、(5)少なくともマウスのE17〜E19に対応する発達段階までの胚発生中、(6)胚発生の全体を通して、(7)卵形成期の全体を通して、(8)卵母細胞発生における減数分裂前期中、(9)卵母細胞が受精した後の最初の2細胞分裂中、及び(10)受精後の最初の2細胞分裂を経た排卵後の卵母細胞において。いくつかの方法では、性転換は、F1子孫に伝達されることができる。
【0082】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地中で培養されない。その他の方法は、培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を培養することをさらに含み、培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地である。場合により、低オスモル濃度培地は、以下のうち1つ以上を含む基本培地を含む:(1)約218mOsm/kg〜約322mOsm/Kgのオスモル濃度、(2)218mOsm/kgのオスモル濃度、(3)約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度、(4)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(5)約50mM〜約110mMの塩化ナトリウム濃度、(6)約17mM〜約30mMの炭酸塩濃度、(7)約13mM〜約25mMの重炭酸ナトリウム濃度、(8)約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度、(9)87±5mMの塩化ナトリウム濃度及び261±26mOsm/kgのオスモル濃度、(10)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、約17mM〜約30mMの濃度の炭酸塩、ならびに約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度、ならびに(11)218mOsm/kgのオスモル濃度、50mM〜110mMの塩化ナトリウム濃度、及び13mM〜25mMの重炭酸ナトリウム濃度。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。
【0083】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類、ラット、またはマウスである。場合により、マウスはC57BL/6系統を含み、マウスは129系統を含み、マウスは129系統を含まず、マウスはC57BL/6系統及び129系統を含み、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体はC57BL/6系統からのものであり、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体は129系統からのものであり、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体は129系統からのものではなく、または非ヒト哺乳動物はマウスであって、多能性細胞はVGF1マウスES細胞である。
【0084】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0085】
いくつかの方法では、領域はZfy2を含む。場合により、非ヒト哺乳動物はC57BL/6系統を含むマウスであり、非ヒト哺乳動物は129系統を含まないマウスであり、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体はC57BL/6系統からのものである、または非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体は129系統からのものではない。場合により、このような方法は、培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を培養することをさらに含み、培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地である。
【0086】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。場合により、繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物であるF0 XY子孫のパーセンテージは、Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含むY染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物のパーセンテージよりも高い。
【0087】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。
【0088】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のF0 XY雌が、繁殖可能である。場合により、繁殖可能なドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌のパーセンテージは、Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含むY染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージよりも高い。
【0089】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。場合により、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される平均産子数は、Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含むY染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される平均産子数よりも多い。
【0090】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。場合により、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される同腹仔の平均数は、Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含むY染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される同腹仔の平均数よりも多い。場合により、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数は、Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含むY染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数よりも多い。
【0091】
本発明は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製する方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)Y染色体の領域をサイレンシングするために非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を改変することによってドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を生成し、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は低オスモル濃度培地中で維持されるが、サイレンシングは、低オスモル濃度培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持すること以外の手段またはそれに加えた手段によって達成され、低オスモル濃度培地は、培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含み、基本培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含むこと、(b)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入すること、(c)ステップ(b)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、ならびに(d)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になること。場合により、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。
【0092】
いくつかの方法では、領域は、Y染色体の短腕の全てもしくは一部を含み、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上を除外し、マウスY染色体のSxr
a領域及び/もしくはSxr
b領域に対応するY染色体の区画の全てもしくは一部を含み、マウスY染色体上の欠失区間1、欠失区間2、及び欠失区間3のうち1つ以上に対応するY染色体の区画の全てもしくは一部を含み、Kdm5dのテロメア側もしくはUsp9yのセントロメア側におけるY染色体の一部を含み、またはZfy2、Sry、もしくはRbmyクラスターのテロメア側である。
【0093】
いくつかの方法では、サイレンシングは、領域中に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる。場合により、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少し、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が排除され、Sry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少し、またはSry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が排除される。いくつかの方法では、サイレンシングは永久的である。
【0094】
いくつかの方法では、サイレンシングは、以下のうち1つ以上によって達成される:(1)標的遺伝子改変、(2)領域の欠失または破壊、(3)領域内の1つ以上の遺伝子から転写されるmRNAのRNA干渉またはアンチセンス阻害、(4)領域内の1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の指向性分解、(5)ヘテロクロマチン媒介性サイレンシング、(6)Y染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加、及び(7)領域内における1つ以上の遺伝子の転写減少。場合により、領域は、標的ヌクレアーゼで欠失または破壊される。場合により、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質及びガイドRNA(gRNA)である。
【0095】
いくつかの方法では、サイレンシングは、以下のタイミングのうち少なくとも1つの間に生じる:(1)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が宿主胚に導入された後、(2)ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を含む宿主胚が、レシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入された後、(3)雄の性決定プログラムが実行される場合の胚発生中、(4)少なくともマウスのE11〜E12に対応する発達段階までの胚発生中、(5)少なくともマウスのE17〜E19に対応する発達段階までの胚発生中、(6)胚発生の全体を通して、(7)卵形成期の全体を通して、(8)卵母細胞発生における減数分裂前期中、(9)卵母細胞が受精した後の最初の2細胞分裂中、及び(10)受精後の最初の2細胞分裂を経た排卵後の卵母細胞において。いくつかの方法では、性転換は、F1子孫に伝達されることができる。
【0096】
いくつかの方法では、低オスモル濃度培地は、以下のうち1つ以上を含む基本培地を含む:(1)約218mOsm/kg〜約322mOsm/Kgのオスモル濃度、(2)218mOsm/kgのオスモル濃度、(3)約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度、(4)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(5)約50mM〜約110mMの塩化ナトリウム濃度、(6)約17mM〜約30mMの炭酸塩濃度、(7)約13mM〜約25mMの重炭酸ナトリウム濃度、(8)約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度、(9)87±5mMの塩化ナトリウム濃度及び261±26mOsm/kgのオスモル濃度、(10)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、約17mM〜約30mMの濃度の炭酸塩、ならびに約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度、ならびに(11)218mOsm/kgのオスモル濃度、50mM〜110mMの塩化ナトリウム濃度、及び13mM〜25mMの重炭酸ナトリウム濃度。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。
【0097】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類、ラット、またはマウスである。場合により、マウスはC57BL/6系統を含み、マウスは129系統を含み、マウスは129系統を含まず、マウスはC57BL/6系統及び129系統を含み、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体はC57BL/6系統からのものであり、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体は129系統からのものであり、非ヒト哺乳動物はマウスであって、Y染色体は129系統からのものではなく、または非ヒト哺乳動物はマウスであって、多能性細胞はVGF1マウスES細胞である。
【0098】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0099】
いくつかの方法では、領域はZfy2を含み、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変をさらに含む。
【0100】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。場合により、繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物であるF0 XY子孫のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物のパーセンテージよりも高い。
【0101】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。
【0102】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のF0 XY雌が、繁殖可能である。場合により、繁殖可能なドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージよりも高い。
【0103】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。場合により、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される平均産子数は、Y染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される平均産子数よりも多い。
【0104】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。場合により、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される同腹仔の平均数は、Y染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される同腹仔の平均数よりも多い。場合により、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数は、Y染色体の領域をサイレンシングすることを含まない非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数よりも多い。
【0105】
本発明は、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞においてY染色体の領域をサイレンシングする方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)多能性を維持しながら培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を成長させるのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持し、基本培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含むこと、ならびに(b)Y染色体の領域におけるサイレンシングを同定するために非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすること。場合により、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。
【0106】
いくつかの方法では、低オスモル濃度培地は、以下のうち1つ以上を含む基本培地を含む:(1)約218mOsm/kg〜約322mOsm/Kgのオスモル濃度、(2)218mOsm/kgのオスモル濃度、(3)約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度、(4)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(5)約50mM〜約110mMの塩化ナトリウム濃度、(6)約17mM〜約30mMの炭酸塩濃度、(7)約13mM〜約25mMの重炭酸ナトリウム濃度、(8)約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度、(9)87±5mMの塩化ナトリウム濃度及び261±26mOsm/kgのオスモル濃度、(10)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、約17mM〜約30mMの濃度の炭酸塩、ならびに約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度、ならびに(11)218mOsm/kgのオスモル濃度、50mM〜110mMの塩化ナトリウム濃度、及び13mM〜25mMの重炭酸ナトリウム濃度。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、アッセイする前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。
【0107】
いくつかの方法では、領域は、Y染色体の短腕の全てもしくは一部を含み、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上を除外し、マウスY染色体のSxr
a領域及び/もしくはSxr
b領域に対応するY染色体の区画の全てもしくは一部を含み、マウスY染色体上の欠失区間1、欠失区間2、及び欠失区間3のうち1つ以上に対応するY染色体の区画の全てもしくは一部を含み、Kdm5dのテロメア側もしくはUsp9yのセントロメア側におけるY染色体の一部を含み、またはZfy2、Sry、もしくはRbmyクラスターのテロメア側である。
【0108】
いくつかの方法では、サイレンシングは、領域中に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる。場合により、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少し、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が排除され、Sry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少し、またはSry及びZfy2のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が排除される。
【0109】
いくつかのこのような方法は、さらに以下を含む:(b)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入すること、及び(c)ステップ(b)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、培地中で維持される。
【0110】
本発明は、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)培養下の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む低オスモル濃度培地中で1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の集団を維持し、基本培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含むこと、(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすること、ならびに(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成することができること。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。場合により、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。
【0111】
いくつかの方法では、低オスモル濃度培地は、以下のうち1つ以上を含む基本培地を含む:(1)約218mOsm/kg〜約322mOsm/Kgのオスモル濃度、(2)218mOsm/kgのオスモル濃度、(3)約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度、(4)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(5)約50mM〜約110mMの塩化ナトリウム濃度、(6)約17mM〜約30mMの炭酸塩濃度、(7)約13mM〜約25mMの重炭酸ナトリウム濃度、(8)約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度、(9)87±5mMの塩化ナトリウム濃度及び261±26mOsm/kgのオスモル濃度、(10)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、約17mM〜約30mMの濃度の炭酸塩、ならびに約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度、ならびに(11)218mOsm/kgのオスモル濃度、50mM〜110mMの塩化ナトリウム濃度、及び13mM〜25mMの重炭酸ナトリウム濃度。場合により、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、アッセイする前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。
【0112】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を欠いている。いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている。
【0113】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である。場合により、げっ歯類はラットまたはマウスである。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統を含むマウスである。場合により、Y染色体はC57BL/6系統からのものである。いくつかの方法では、げっ歯類は129系統を含むマウスである。場合により、Y染色体は129系統からのものである。いくつかの方法では、マウスは129系統を含まない。いくつかの方法では、Y染色体は129系統からのものではない。いくつかの方法では、げっ歯類はC57BL/6系統及び129系統を含むマウスである。場合により、多能性細胞は、VGF1マウスES細胞である。
【0114】
いくつかの方法では、多能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む。場合により、標的遺伝子改変は、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む。
【0115】
本発明は、胚を生成する方法もまた提供し、本方法は宿主胚に、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する上記方法によって生成される、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を導入することを含み、宿主胚は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成することができる。
【0116】
本発明は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製する方法もまた提供し、本方法は以下を含む:(a)宿主胚に、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を作製する上記方法によって生成される、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を導入すること、(b)ステップ(a)の宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、ならびに(c)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になること。あるいは、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を作製するための方法が提供され、本方法は以下を含む:(a)胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して胚を懐胎させ、胚は上記方法によって生成され、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する細胞を含むこと、ならびに(b)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能になること。場合により、宿主胚は前桑実期胚である。場合により、方法は、宿主胚を胚盤胞期まで培養することをさらに含む。
【0117】
いくつかの方法では、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、低オスモル濃度培地中で維持される。
【0118】
いくつかの方法では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である。いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0119】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0雌の全てが、XY遺伝子型を有する。
【0120】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、繁殖可能である。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0121】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0122】
いくつかの方法では、ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のF0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0123】
本発明は、以下を含むキットもまた提供する:(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞においてDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性レベルを検出するための検出試薬、ならびに(b)検出試薬を使用して、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞がF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成する予測傾向と検出を相互に関連付けるための説明書。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における雌化活性に関する標的化合物のスクリーニング方法であって、
(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1集団及び第2集団を、前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で培養し、前記第1集団が、標的化合物の存在下で培養され、前記第2集団が、前記標的化合物の不存在下で培養されることと、
(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記第1及び第2集団の各々で前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞のうち1種以上をアッセイし、それによって雌化活性が、前記第2集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞におけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性の減少によって同定されることと、
(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、前記第1集団からドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、前記F0世代における前記繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に逆相関することと、
(d)前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入することと、
(e)ステップ(d)の前記宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、前記宿主胚を懐胎させることと、
(f)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、性成熟に達すると、前記F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能かつ妊孕可能になること
とを含む、前記方法。
(項目2)
ステップ(b)の前記アッセイによって、mRNAレベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現が検出される、項目1に記載の方法。
(項目3)
ステップ(b)の前記アッセイによって、タンパク質レベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現が検出される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記雌化活性が、前記第2集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの前記発現及び/または活性の減少によってステップ(b)で同定される、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記雌化活性が、前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現及び/または活性の欠如によってステップ(b)で同定される、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記雌化活性が、前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞における、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性の欠如によってステップ(b)で同定される、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
ステップ(c)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞、すなわち、前記対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる前記細胞の能力を変化させない培地中で培養された前記細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
ステップ(c)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記第2集団からの対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
ステップ(c)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する、項目7または8に記載の方法。
(項目10)
ステップ(b)が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、前記第1集団における少なくとも2種の前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすることを含み、ステップ(c)が、前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)の前記アッセイした細胞を選択することを含む、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
ステップ(c)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現及び/または活性を欠いている、項目1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
ステップ(c)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている、項目1〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記第1集団が、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記標的化合物の存在下で培養される、項目1〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記多能性細胞が、胚性幹(ES)細胞である、項目1〜13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記多能性細胞が、VGF1マウスES細胞である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記標的化合物の不存在下で、ステップ(a)の前記培地が、前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる前記細胞の能力を変化させない、項目1〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記標的化合物の不存在下で、ステップ(a)の前記培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する低オスモル濃度培地である、項目1〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記低オスモル濃度培地が、以下の特性:
(I)前記低オスモル濃度培地が、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(II)前記低オスモル濃度培地が、218mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(III)前記低オスモル濃度培地が、約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有すること、
(IV)前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含むこと、
(V)前記基本培地が、塩化ナトリウムを約50mM〜約110mMの濃度で含むこと、
(VI)前記基本培地が、炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含むこと、
(VII)前記基本培地が、重炭酸ナトリウムを約13mM〜約25mMの濃度で含むこと、
(VIII)前記基本培地が、約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度を有すること、
(IX)前記基本培地が、塩化ナトリウムを87±5mMの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(X)前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で、及び炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、ならびに
(XI)前記低オスモル濃度培地が、218mOsm/kgのオスモル濃度を有し、前記基本培地が、塩化ナトリウムを50mM〜110mMの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを13mM〜25mMの濃度で含むこと
のうち1つ以上を有する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記基本培地が、炭酸塩を約18mM〜約44mMの濃度で含む、項目17または18に記載の方法。
(項目20)
前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む、項目17〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記炭酸塩が重炭酸ナトリウムであり、前記アルカリ金属及び前記ハロゲン化物の前記塩が塩化ナトリウムであり、前記低オスモル濃度培地が、約216mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する、項目17〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記基本培地が、塩化ナトリウムを約3mg/mLの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを約2.2mg/mLの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有する、項目17〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記非ヒト哺乳動物が、げっ歯類である、項目1〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記げっ歯類がラットまたはマウスである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記げっ歯類がC57BL/6系統を含むマウスである、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記Y染色体が、C57BL/6系統、129系統、またはBALB/c系統からのものである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記げっ歯類が、C57BL/6系統及び129系統を含むマウスである、項目24〜26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記宿主胚が前桑実期胚であり、ステップ(d)が、前記宿主胚を胚盤胞期まで培養することをさらに含む、項目1〜27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記標的化合物の存在下で培養される、項目1〜28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の作製方法であって、
(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の集団を、前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む低オスモル濃度培地中で培養し、前記低オスモル濃度培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有することと、
(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記集団において前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞のうち1種以上をアッセイすることと、
(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するためにドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、前記F0世代における前記繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の前記比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に逆相関すること
とを含む、前記方法。
(項目31)
ステップ(b)の前記アッセイによって、前記mRNAレベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現が検出される、項目30に記載の方法。
(項目32)
ステップ(b)の前記アッセイによって、前記タンパク質レベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現が検出される、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞、すなわち、前記対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる前記細胞の能力を変化させない培地中で培養された前記細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性に基づいて選択される、項目30〜32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する、項目33に記載の方法。
(項目35)
ステップ(b)が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記集団における少なくとも2種の前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすることを含み、ステップ(c)が、前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)の前記アッセイした細胞を選択することを含む、項目30〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現及び/または活性を欠いている、項目30〜35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている、項目30〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記低オスモル濃度培地中で培養される、項目30〜37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記多能性細胞が、胚性幹(ES)細胞である、項目30〜38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記多能性細胞が、VGF1マウスES細胞である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記低オスモル濃度培地が、以下の特性:
(I)前記低オスモル濃度培地が、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(II)前記低オスモル濃度培地が、218mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(III)前記低オスモル濃度培地が、約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有すること、
(IV)前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含むこと、
(V)前記基本培地が、塩化ナトリウムを約50mM〜約110mMの濃度で含むこと、
(VI)前記基本培地が、炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含むこと、
(VII)前記基本培地が、重炭酸ナトリウムを約13mM〜約25mMの濃度で含むこと、
(VIII)前記基本培地が、約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度を有すること、
(IX)前記基本培地が、塩化ナトリウムを87±5mMの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(X)前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で、及び炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、ならびに
(XI)前記低オスモル濃度培地が、218mOsm/kgのオスモル濃度を有し、前記基本培地が、塩化ナトリウムを50mM〜110mMの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを13mM〜25mMの濃度で含むこと
のうち1つ以上を有する、項目30〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記基本培地が、炭酸塩を約18mM〜約44mMの濃度で含む、項目30〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む、項目30〜42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記炭酸塩が重炭酸ナトリウムであり、前記アルカリ金属及び前記ハロゲン化物の前記塩が塩化ナトリウムであり、前記低オスモル濃度培地が、約216mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する、項目30〜43のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記基本培地が、塩化ナトリウムを約3mg/mLの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを約2.2mg/mLの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有する、項目30〜44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記非ヒト哺乳動物が、げっ歯類である、項目30〜45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記げっ歯類がラットまたはマウスである、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記げっ歯類がC57BL/6系統を含むマウスである、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記Y染色体が、C57BL/6系統、129系統、またはBALB/c系統からのものである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記げっ歯類が、C57BL/6系統及び129系統を含むマウスである、項目47〜49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
(d)前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入することと、
(e)ステップ(d)の前記宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、前記宿主胚を懐胎させることと、
(f)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、
性成熟に達すると、前記F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能かつ妊孕可能になること
とをさらに含む、項目30〜50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記宿主胚が前桑実期胚であり、ステップ(d)が、前記宿主胚を前記胚盤胞期まで培養することをさらに含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記低オスモル濃度培地中で培養される、項目51または52に記載の方法。
(項目54)
(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞においてDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性レベルを検出するための検出試薬と、
(b)前記検出試薬を使用して、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するための前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の予測傾向と検出を相互に関連付けるための説明書
とを含む、キット。
(項目55)
前記検出試薬が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現を検出するための、1つ以上のプライマーセット及び/または1つ以上のプローブを含む、項目54に記載のキット。
(項目56)
雌化培地における標的培地成分の前記濃度の最適化方法であって、
(a)非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の第1集団及び第2集団を、前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で培養し、
前記第1集団が、第1濃度の前記標的培地成分の存在下で培養され、前記第2集団が、前記第1濃度とは異なる第2濃度の前記標的培地成分の存在下で培養されることと、
(b)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記第1及び第2集団の各々で前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞のうち1種以上をアッセイすることと、
(c)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性が、前記第2集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞で減少する場合に、前記第1濃度を選択することと、
(d)Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を生成するために、前記第1集団からドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を選択し、前記F0世代における前記繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物の前記比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の前記発現及び/または活性に逆相関することと、
(e)前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞を宿主胚に導入することと、
(f)ステップ(e)の前記宿主胚をレシピエント雌非ヒト哺乳動物に導入して、前記宿主胚を懐胎させることと、
(g)表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物を含むF0 XY非ヒト哺乳動物子孫を得て、
性成熟に達すると、前記F0の表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物が繁殖可能かつ妊孕可能になること
とを含む、前記方法。
(項目57)
ステップ(b)の前記アッセイによって、前記mRNAレベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現が検出される、項目56に記載の方法。
(項目58)
ステップ(b)の前記アッセイによって、前記タンパク質レベルでDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現が検出される、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記第2集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する場合に、前記第1濃度がステップ(c)で選択される、項目56〜58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現及び/または活性を欠いている場合に、前記第1濃度がステップ(c)で選択される、項目56〜59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記第1集団からの前記1種以上の非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている場合に、前記第1濃度がステップ(c)で選択される、項目56〜60のいずれか1項に記載の方法。
(項目62)
ステップ(d)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞、すなわち、前記対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記多能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる前記細胞の能力を変化させない培地中で培養された前記細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する、項目56〜61のいずれか1項に記載の方法。
(項目63)
ステップ(d)の前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記第2集団からの対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する、項目56〜62のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記対照非ヒト哺乳動物XY多能性細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有する、項目62または63に記載の方法。
(項目65)
ステップ(b)が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、非ヒト哺乳動物XY多能性細胞の前記第1集団における少なくとも2種の前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞をアッセイすることを含み、ステップ(d)が、前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞として、他方のアッセイした細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有するステップ(b)の前記アッセイした細胞を選択することを含む、項目56〜64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の発現及び/または活性を欠いている、項目56〜65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現及び/または活性を欠いている、項目56〜66のいずれか1項に記載の方法。
(項目68)
前記第1及び第2集団が、アッセイステップ(b)の前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記標的培地成分の存在下で培養される、項目56〜67のいずれか1項に記載の方法。
(項目69)
前記多能性細胞が、胚性幹(ES)細胞である、項目56〜68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
前記多能性細胞が、VGF1マウスES細胞である、項目69に記載の方法。
(項目71)
ステップ(a)の前記培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する低オスモル濃度培地である、項目56〜70のいずれか1項に記載の方法。
(項目72)
前記低オスモル濃度培地が、以下の特性:
(I)前記低オスモル濃度培地が、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(II)前記低オスモル濃度培地が、218mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(III)前記低オスモル濃度培地が、約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有すること、
(IV)前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含むこと、
(V)前記基本培地が、塩化ナトリウムを約50mM〜約110mMの濃度で含むこと、
(VI)前記基本培地が、炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含むこと、
(VII)前記基本培地が、重炭酸ナトリウムを約13mM〜約25mMの濃度で含むこと、
(VIII)前記基本培地が、約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度を有すること、
(IX)前記基本培地が、塩化ナトリウムを87±5mMの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、
(X)前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で、及び炭酸塩を約17mM〜約30mMの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有すること、ならびに
(XI)前記低オスモル濃度培地が、218mOsm/kgのオスモル濃度を有し、前記基本培地が、塩化ナトリウムを50mM〜110mMの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを13mM〜25mMの濃度で含むこと
のうち1つ以上を有する、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記基本培地が、炭酸塩を約18mM〜約44mMの濃度で含む、項目71または72に記載の方法。
(項目74)
前記基本培地が、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩を約50mM〜約110mMの濃度で含む、項目71〜73のいずれか1項に記載の方法。
(項目75)
前記炭酸塩が重炭酸ナトリウムであり、前記アルカリ金属及び前記ハロゲン化物の前記塩が塩化ナトリウムであり、前記低オスモル濃度培地が、約216mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有する、項目71〜74のいずれか1項に記載の方法。
(項目76)
前記基本培地が、塩化ナトリウムを約3mg/mLの濃度で、及び重炭酸ナトリウムを約2.2mg/mLの濃度で含み、前記低オスモル濃度培地が、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有する、項目71〜75のいずれか1項に記載の方法。
(項目77)
前記非ヒト哺乳動物が、げっ歯類である、項目56〜76のいずれか1項に記載の方法。
(項目78)
前記げっ歯類がラットまたはマウスである、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記げっ歯類がC57BL/6系統を含むマウスである、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記Y染色体が、C57BL/6系統、129系統、またはBALB/c系統からのものである、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記げっ歯類が、C57BL/6系統及び129系統を含むマウスである、項目78〜80のいずれか1項に記載の方法。
(項目82)
前記宿主胚が前桑実期胚であり、ステップ(e)が、前記宿主胚を前記胚盤胞期まで培養することをさらに含む、項目56〜81のいずれか1項に記載の方法。
(項目83)
前記非ヒト哺乳動物XY多能性細胞が、前記宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、前記標的培地成分の存在下で培養される、項目56〜82のいずれか1項に記載の方法。
(項目84)
前記多能性細胞が、標的ゲノム遺伝子座に標的遺伝子改変を含む、項目1〜53及び56〜83のいずれか1項に記載の方法。
(項目85)
前記標的遺伝子改変が、挿入、欠失、ノックアウト、ノックイン、点変異、またはこれらの組合せを含む、項目84に記載の方法。
(項目86)
(h)子孫を生成するために前記繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物を交配させること
をさらに含む、項目1〜29、51〜53、及び56〜85のいずれか1項に記載の方法。
(項目87)
少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または全ての前記XY子孫が、表現型的に雄かつ繁殖可能である、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記XY子孫には表現型的に雌がいない、項目86または87に記載の方法。
(項目89)
前記交配が、前記繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物をコホートF0 XY雄非ヒト哺乳動物と交雑させて、ここで前記繁殖可能なF0 XY雌非ヒト哺乳動物及び前記F0 XY雄非ヒト哺乳動物が各々、遺伝子改変についてヘテロ接合体であること、ならびに前記遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫非ヒト哺乳動物を得ることを含む、項目86〜88のいずれか1項に記載の方法。
(項目90)
少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の前記F0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY非ヒト哺乳動物である、項目1〜29、51〜53、及び56〜89のいずれか1項に記載の方法。
(項目91)
繁殖可能な表現型的に雌のXY動物である前記F0 XY子孫の前記パーセンテージが、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する前記F0雌の全てが、XY遺伝子型を有する、項目1〜29、51〜53、及び56〜91のいずれか1項に記載の方法。
(項目93)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の前記F0 XY雌が、繁殖可能である、項目1〜29、51〜53、及び56〜92のいずれか1項に記載の方法。
(項目94)
繁殖可能な前記F0 XY雌の前記パーセンテージが、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の前記F0 XY雌が、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の仔を有する同腹仔を産生することができる、項目1〜29、51〜53、及び56〜94のいずれか1項に記載の方法。
(項目96)
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される前記平均産子数が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い、項目95に記載の方法。
(項目97)
前記ドナー非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の前記F0 XY雌が、それらの生涯において少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる、項目1〜29、51〜53、及び56〜96のいずれか1項に記載の方法。
(項目98)
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における同腹仔の前記平均数が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い、項目97に記載の方法。
(項目99)
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌により産生される一生涯における子孫の前記平均数が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上のより高い発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち前記1つ以上の減少した発現及び/または活性を有する非ヒト哺乳動物XY多能性細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い、項目1〜29、51〜53、及び56〜98のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0125】
定義
「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」という用語は、本明細書では同じ意味として使用され、コード及び非コードアミノ酸ならびに化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸を含む、任意の長さのアミノ酸ポリマー形態を含む。本用語は、修飾されているポリマー、例えば、修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドなども含む。
【0126】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では同じ意味として使用され、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはこれらの類似体もしくは修飾型を含む、任意の長さのヌクレオチドポリマー形態を含む。それらは、プリン塩基、ピリミジン塩基、またはその他の天然の、化学的に修飾された、生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む、一本鎖、二本鎖、及び多重鎖DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、ならびにポリマーを含む。
【0127】
「遺伝子」という用語は、産物(例えば、RNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードし、非コードイントロンが割り込むコード領域、ならびに遺伝子が全長mRNAに対応するように5’末端及び3’末端上の両方のコード領域に隣接して位置する配列(5’及び3’非翻訳配列を含む)を含む染色体中のDNA配列を指す。「遺伝子」という用語はまた、調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、及び転写因子結合部位)、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入部位、サイレンサー、遮断配列、ならびにマトリックス結合領域を含むその他の非コード配列も含む。これらの配列は、遺伝子のコード領域に近接している(例えば、10kb以内)、または遠隔部位に存在する場合もあり、それらは遺伝子の転写及び翻訳のレベルまたは率に影響を与える。
【0128】
「野生型」という用語は、正常な(変異体、罹患したもの、変化したものなどと対比した場合の)状態または文脈に見られるような構造及び/または活性を有する実体を含む。野生型遺伝子及びポリペプチドは、多くの場合に複数の異なる形態(例えば、対立遺伝子)中に存在する。
【0129】
「繁殖力」及び「繁殖可能な」は、交配する、妊娠する、かつ生産子孫を産む雌動物の能力を指す。動物が繁殖可能であると見なされるには、生産子孫を1匹産生することが唯一必要である。
【0130】
「妊孕力」及び「妊孕可能な」は、繁殖力の質を指す。妊孕力は定量的尺度であり得て、例えば、動物の一生涯における、または規定の実験時間枠内で産まれる生存子孫の総数などである。同腹仔の数及び頻度ならびに一腹当たりの子孫の数も、妊孕力の尺度である。動物は繁殖可能であり得るが、大いに妊孕可能であるというわけではない(例えば、1匹のみ、またはわずか数匹の同腹仔)。
【0131】
1つ以上の列挙された要素を「comprising(含む)」または「including(含む)」組成物または方法は、具体的に列挙されていないその他の要素を含んでよい。例えば、タンパク質を「comprise(含む)」または「include(含む)」組成物は、そのタンパク質を単独でまたはその他の構成成分と組み合わせて含有してよい。
【0132】
値の範囲の指定は、その範囲内の、またはその範囲を規定する全ての整数、及びその範囲内の整数によって規定される全ての部分範囲を含む。
【0133】
文脈から別の意味が明らかでない限り、「約」という用語は、記載値の測定の標準誤差(例えば、SEM)内の値を包含する。
【0134】
冠詞「a」、「an」、及び「the」の単数形は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「a Cas protein(Casタンパク質)」または「at least one Cas protein(少なくとも1種のCasタンパク質)」という用語は、それらの混合物を含む、複数のCasタンパク質を含み得る。
【0135】
統計的に有意とは、p≦0.05を意味する。
【0136】
I.概要
繁殖可能なF0 XY雌動物を生成するための方法及び組成物が提供される。方法及び組成物は、F0世代において繁殖可能な雌XY動物を生成することができるXY多能性もしくは全能性動物細胞、インビトロ細胞培養物、または胚を作製することを伴う。このような細胞(ならびに胚及びそれらに由来する動物)は、雌化培地中でXY多能性または全能性細胞を培養すること、ならびにDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を評価することによって作製され得る。動物XY多能性または全能性細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向は、これらのクローンにおけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現または活性と逆相関する。あるいは、このような細胞(ならびに胚及びそれらに由来する動物)は、Y染色体の領域をサイレンシングすることによって作製され得る。場合により、細胞はまた、雌化培地中で培養され得る、ならびに/またはSryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させるように改変され得る。低オスモル濃度培地などの雌化培地中でXY多能性または全能性動物細胞を維持することによって、XY多能性もしくは全能性動物細胞(またはインビトロ細胞培養物、胚、もしくはそれらに由来する動物)におけるY染色体の領域をサイレンシングするための方法及び組成物もまた提供される。雌化培地中でXY多能性または全能性動物細胞の集団を維持するため、及びF0世代において繁殖可能な雌XY動物を生成する高い能力を有する細胞またはクローンを選択するための方法及び組成物もまた提供される。雌化活性を有する化合物についてスクリーニングするため、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性の評価によって雌化培地中で成分の濃度を最適化するための方法及び組成物もまた提供され、XY多能性または全能性細胞におけるその発現及び/または活性は、動物XY多能性または全能性細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向と逆相関する。
【0137】
非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)を作製するための大多数のES細胞株は、雄のXY遺伝子型を有する。哺乳動物の性決定におけるY染色体の優性のため、XY ES細胞を宿主胚に導入して懐胎させる場合、ほぼ常に、第1世代(F0)は、雄ドナーES細胞(XY)に由来する細胞及び雄(XY)または雌(XX)のいずれかであり得る、宿主胚に由来する細胞を含有するキメラである表現型的に雄の動物であるということになる。表現型的に雌がF0世代で観察される場合には、これらは、キメラをもたらす雌XX胚へのXY ES細胞の導入から典型的には生じるが、そのES細胞寄与は、胚の生殖隆起を雄化するには不十分である。ほとんどの場合、このような雌キメラは、XY ES細胞に由来する卵母細胞を生成せず、それゆえ、ES細胞ゲノムを次世代に伝達することができない。
【0138】
VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、米国特許第7,659,442号明細書、同第7,576,259号明細書、及び同第7,294,754号明細書、ならびにPoueymirou et al.(2007)Nat.Biotech.25(1):91−99を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる)を使用すると、ドナーES細胞に完全に由来するF0世代マウスを得ることができる。通常の状況及び標準的な実験条件下では、XYドナーES細胞が、表現型的に雄の完全にES細胞由来のマウスのみを生成する一方で、XXまたはXOであるES細胞(Y染色体を消失したXY ES細胞)は、表現型的に雌の完全にES細胞由来のマウスのみを生成する。ホモ接合標的変異を有するマウスを、雄及び雌の完全にES細胞由来のマウスから産生させるには、交配させて最初にF1世代ヘテロ接合体の雄及び雌を産生させて、互いに交雑させた場合に、それらがF2世代でホモ接合体子孫を産生する能力を有する2つの後続世代を必要とする。
【0139】
XY遺伝子型を有する表現型的に雌のマウスは、特異的変異の結果として生じ得る。例えば、Lovell−Badge et al.(1990)Development 109:635−646を参照し、Colvin et al.(2001)Cell 104(6):875−889も参照のこと。しかしながら、このようなXY雌マウスは、多くの場合に生殖不能である、または非常に限られた繁殖力を有する。
【0140】
WO2011/156723(その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる)は、宿主胚へのXYドナー細胞の導入及び好適な宿主での懐胎後、繁殖可能なXY雌動物がF0集団において産生され得るように培養下でXYドナー細胞を維持するために、雌化培養培地(例えば、本明細書内の他の箇所に開示されるような低オスモル濃度培地または低塩培地)を用いる方法及び組成物を提供する。このような組成物は、標的ゲノム遺伝子座における所与の標的遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫の作製に用途を見出す。
【0141】
本出願は、XYドナー細胞(例えば、表現型的に雄のマウスに由来するXYドナー細胞)及び好適な宿主胚から表現型的に雌の繁殖可能なXY非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)を作製する方法を提供する。本方法は、F0世代においてこのような非ヒト哺乳動物を作製することを含み、これにより、F0世代において交配対(雄F0及び雌F0)の形成が可能になる。このことは、ドナー細胞がヘテロ接合遺伝子改変を含む場合、及び遺伝子改変についてホモ接合体の非ヒト哺乳動物が望ましい場合に特に有用である。本開示は、ドナーマウスXY ES細胞から表現型的に雌の繁殖可能なXYマウスを作製することと関連して本発明を例証するが、本明細書に記載される方法及び組成物は、任意の好適な非ヒト哺乳動物細胞(例えば、人工多能性幹(iPS)細胞、ES細胞、または多能性細胞)及び任意の好適な非ヒト哺乳動物胚から表現型的に雌の繁殖可能なXY非ヒト哺乳動物を作製することに適用されてよい。
【0142】
本出願は、Y染色体の領域をサイレンシングし、解剖学的に正常で繁殖可能、かつ妊孕可能なXY F0雌の生成を促進する改変を有するXYドナー細胞を用いる方法及び組成物を提供する。このような方法及び組成物は、F0世代において繁殖可能な雌のXY非ヒト動物の作製を可能にする。方法及び組成物は、F0世代において繁殖可能な雌XY子孫のパーセンテージを著しく増加させるために、組み合わせてSryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させる改変ならびに/または本明細書内の他の箇所に開示される雌化培養培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養することと組み合わせてさらに用いられ得る。これらの表現型的に雌の繁殖可能なXY非ヒト哺乳動物は、排卵して、動物の排卵によって生成された卵子の受精時に胚を懐胎し、予定日まで胚を懐胎して生産動物を出産するのに十分な表現型的に雌の特性を示す非ヒト哺乳動物を含む。
【0143】
効率的な雄から雌への性転換方法は、家畜産業にとって有益である。例えば、雌の仔牛は、雄よりも乳牛産業にとってはるかに有益である。同じことが家禽にも当てはまる。交配目的で、それがウシまたはブタまたはヒツジであろうと、多くの雌をほんのわずかな雄ウシ、雄ブタ、または雄ヒツジと交配させることが好ましい。したがって、本明細書で提供される様々な方法は、様々な商業的に重要な交配産業において用途を見出す。
【0144】
II.F0世代において繁殖可能なXY動物を作製するための方法及び組成物
A.F0世代において繁殖可能なXY雌を生成することができるXY多能性または全能性細胞を作製する方法
XY遺伝子型を有する表現型的に雌の動物(例えば、マウス)は、特異的変異の結果として生成され得る。例えば、Lovell−Badge et al.(1990)Development 109:635−646を参照し、Colvin et al.(2001)Cell 104(6):875−889も参照のこと。しかしながら、このようなXY雌動物は、多くの場合に生殖不能である、または繁殖可能である場合、非常に不十分な妊孕力を有する。標的ゲノム遺伝子座の標的遺伝子改変についてホモ接合体の動物を生成することと関連して最も有用であるには、性転換及び繁殖力の両方が、XY雌で達成される必要がある。本明細書で提供される方法及び組成物によって、F0世代において繁殖可能な雌XYを生成することができるXY多能性もしくは全能性動物細胞または胚が作製され得る。このような細胞(ならびにインビトロ細胞培養物、胚、及びそれらに由来する動物)は、Y染色体の領域をサイレンシングすることによって作製され得る。場合により、細胞はまた、雌化培地中で培養され得る、ならびに/またはSryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させるように改変され得る。
【0145】
i.Y染色体の領域のサイレンシング
Y染色体の領域をサイレンシングするためにXY動物細胞(例えば、XY多能性または全能性細胞、例えば、XY ES細胞など)を改変し、それによって一部の細胞を、繁殖可能な雌動物に発達する可能性のあるドナーXY多能性または全能性細胞に変換し、その結果、細胞をレシピエント胚に移植して繁殖可能な雌子孫を生じ得るための方法及び組成物が提供される。したがって、ドナーXY多能性または全能性細胞は、繁殖可能な表現型的に雌の動物を含むF0 XY子孫を生成することができる。
【0146】
サイレンシングされる領域は、Y染色体の任意の一部、例えば、Y染色体の短腕の全てもしくは一部を含む領域または本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地で処理することによってサイレンシングされる領域などであり得る。サイレンシングは、Y染色体のその他の部分(例えば、長腕(Yq))、特に雄の繁殖力及び精子形成に必要な遺伝子を持つ部分にも影響を及ぼし得る。例えば、領域は、Sxr
a領域の全てもしくは一部(例えば、Sry遺伝子を含有する部分)を含み得る、ならびに/または領域は、マウスY染色体のSxr
b領域(例えば、Zfy2遺伝子を含有する部分)(
図1Aを参照のこと)もしくはその他の種からのY染色体の対応する領域(例えば、ヒトY染色体のAZFa、AZFb、もしくはAZFc領域)の全てもしくは一部を含み得る。例えば、領域は、Sxr
a領域及びSxr
b領域の両方の一部または全てを含み得る。例えば、Sxr
b領域の境界は、Zfy1及びZfy2である(
図1A及びMazeyrat et al.(1998)Human Molecular Genetics 7(11):1713−1724を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる)。その他の動物種からの対応する領域としては、マウスY染色体上の領域における遺伝子とオルソロガスまたは相同である1つ以上の遺伝子を有する領域が挙げられる。例えば、ヒト領域のAZFa領域は、各領域がUty、Dby(Ddx3y)、及びDffry(Usp9y)を含有するという点で、マウスY染色体のSxr
b領域と対応する。例えば、Affara(2001)Expert Rev.Mol.Med.,Jan.3、2001:1−16、Mazeyrat et al.(1998)Human Molecular Genetics 7(11)、1713−1724、及びSargent et al.(1999)J.Med.Genet.36:370−377を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって組み込まれる。領域は、Smy領域またはSpy領域の全てまたは一部も含み得る(
図1A及びAffara(2001)Expert Rev.Mol.Med.,Jan.3、2001:1−16を参照のこと)。同様に、領域は、マウスY染色体の欠失区間1、欠失区間2、欠失区間3、欠失区間4、欠失区間5、欠失区間6、及び欠失区間7のうち1つ以上またはその他の動物種からのY染色体の対応する領域の全てもしくは一部を含み得る(例えば、
図1A及びAffara(2001)Expert Rev.Mol.Med.,Jan.3、2001:1−16を参照のこと)。例えば、領域は、マウスY染色体の欠失区間1、欠失区間2、及び欠失区間3のうち1つ以上またはその他の動物種からのY染色体の対応する領域の全てもしくは一部を含み得る(例えば、
図1Aを参照のこと)。一例では、領域は、欠失区間2及び欠失区間3、または欠失区間2の一部及び欠失区間3の一部を含み得る。
【0147】
領域は、以下のうち1つ以上を含み得る:Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1(表Aを参照のこと)。領域は、Rbmyクラスターまでのテロメア側であり得る、またはH2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、もしくはZfy1までのセントロメア側もしくはテロメア側であり得る。例えば、領域は、Kdm5dのテロメア側もしくはUspy9yのセントロメア側におけるY染色体の一部を含み得る、または領域は、Zfy2、Sry、もしくはRbmyクラスターのテロメア側であり得る。領域は、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上を除外し得る。例えば、領域は、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上を除外し得る。同様に、領域は、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上以外のY染色体の一部を含み得る。例えば、領域は、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上以外のY染色体の一部を含み得る。
【0149】
サイレンシングは、Y染色体上に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル及び/または活性を減少させ得る。例えば、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1によってコードされるタンパク質のうち1つ以上のレベル及び/または活性が減少し得る。あるいは、サイレンシングは、Y染色体上に位置する遺伝子の発現の排除をもたらし得る(すなわち、遺伝子が発現されない、または細胞が遺伝子の検出可能な発現を欠いている)。いくつかの方法では、例えば、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上のうち1つ以上は、サイレンシング時に発現されない。いくつかの方法では、Ddx3y、Eif2s3y、Uty、Zfy2、及びSryによってコードされるタンパク質のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少する、またはDdx3y、Eif2s3y、Uty、Zfy2、及びSryのうち1つ以上が発現されない。
【0150】
領域のサイレンシングとしては、例えば、ゲノムからの領域の除去、低減した領域内における1つ以上の遺伝子の発現を減少させること、または領域内の遺伝子によってコードされる1種以上のタンパク質もしくはRNAの活性を減少させることを挙げることができる。対象細胞における発現または活性の減少としては、適切な対照細胞と比較した場合の、発現または活性レベルの任意の統計的に有意な低減を挙げることができる。一般に、発現または活性は、発現または活性が、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていない適切な対照細胞における発現または活性よりも統計的に低い場合に、減少する。このような減少は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていない対照細胞と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれを超える低減を含む。統計的有意性は、p≦0.05を意味する。発現または活性の減少は、任意の段階で任意の機構によって生じ得る。例えば、発現の減少は、領域に対して直接的もしくは間接的に作製された改変によって、または転写中、転写後、翻訳中、もしくは翻訳後に生じる事象もしくは制御によって生じ得る。
【0151】
いくつかの場合には、サイレンシングされた領域内の遺伝子は、発現されない(例えば、発現が排除される、または細胞が遺伝子の検出可能な発現を欠いている)。遺伝子は、遺伝子の転写が実施されない場合、または当該技術分野において既知の一般的な技術による遺伝子産物(例えば、mRNAもしくはタンパク質)の検出可能なレベルが一切存在しない場合、発現されない。ポリペプチドの発現レベルは、直接的に、例えば、細胞もしくは生物中のポリペプチドレベルについてアッセイすることにより(例えば、ウェスタンブロット分析、FACS分析、ELISA)、または間接的に、例えば、ポリペプチドの活性を測定することにより測定されてよい。その他の場合では、遺伝子の発現及び/または活性の低減は、例えば、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、ノーザンブロット分析、定量的RT−PCR分析、次世代シーケンシング(NGS)、マイクロアレイ分析、または表現型分析を含む方法を使用して測定され得る。
【0152】
「対象細胞」は、本明細書に開示される遺伝子改変などの遺伝子変化が行われている細胞である、またはそのように変化された細胞の子孫であり、その変化を含む細胞である。「対照」または「対照細胞」は、対象細胞の表現型における変化を測定するための基準点を提供する。対照細胞は、それが、レベルまたは活性の低減をもたらす遺伝子改変または変異を欠いていることを除いて、タンパク質の低減したレベル及び/または活性を有する細胞と可能な限り厳密に合致し得る(例えば、個々の細胞は、同じ細胞株に由来し得る)。その他の場合では、対照細胞は、例えば、以下を含んでよい:(a)野生型細胞(すなわち、対象細胞をもたらす遺伝子変化のための出発物質と同じ遺伝子型の細胞)、(b)出発物質と同じ遺伝子型であるが、ヌル構築物で(すなわち、対象となる形質に対して既知の効果を有しない構築物、例えば、マーカー遺伝子を含む構築物などで)遺伝子改変されている細胞、(c)対象細胞の非遺伝子改変子孫である細胞(すなわち、対照細胞及び対象細胞が同じ細胞株に由来する)、(d)対象細胞と遺伝的に同一であるが、タンパク質レベル及び/もしくは活性レベルを変化させることになる条件もしくは刺激に曝露されていない細胞、または(e)遺伝子改変が、タンパク質レベル及び/もしくは活性レベルの発現に変化をもたらさない条件下における対象細胞それ自体。
【0153】
サイレンシングは、永久的な遺伝子変化または一過性であり得る。永久的な遺伝子変化は、例えば、追加のステップが変化を覆すために行われる(例えば、追加の改変による)ことなく存続する変化であり得るのに対して、一過性の変化は、たとえ、追加のステップが変化を覆すために行われないとしても、一定の期間だけ持続する変化(例えば、雌化培地中での培養によって達成されるサイレンシング)であり得る。いくつかの方法では、サイレンシングは、本明細書内の他の箇所に開示される雌化培地(例えば、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地)中でXY多能性または全能性細胞を維持すること以外の手段によって達成される。その他の方法では、サイレンシングは、本明細書内の他の箇所に開示される雌化培地(例えば、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する低オスモル濃度培地または約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する基本培地を含む低オスモル濃度培地)中でXY多能性または全能性細胞を培養することによって達成される。例えば、サイレンシングは、以下のうち1つ以上によって達成され得る:(1)領域の欠失もしくは破壊などの標的遺伝子改変、(2)領域内の1つ以上の遺伝子から転写されるmRNAのRNA干渉もしくはアンチセンス阻害、(3)領域内の1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の指向性分解もしくは阻害、(4)ヘテロクロマチン媒介性サイレンシングもしくはY染色体上の1つ以上の位置でヘテロクロマチン形成を変化させること、(5)Y染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加、または(6)領域内における1つ以上の遺伝子の転写減少。標的遺伝子改変及びそれらを生成する方法は、本明細書内の他の箇所に開示されている。サイレンシングはまた、阻害核酸、例えば、低分子干渉核酸(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び短ヘアピンRNA(shRNA))または遺伝子転写物に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドなどを使用して達成され得る。サイレンシングはまた、領域内の1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の阻害剤の使用または例えば、リン酸化、ユビキチン化、及びsumo化による翻訳後修飾によるタンパク質の上流制御によって達成され得る。Y染色体上でヘテロクロマチン形成を変化させることもまた、サイレンシングをもたらし得る。例えば、Y染色体の第1領域の欠失は、第2領域をセントロメアのヘテロクロマチンドメインに近付けて、第2領域のサイレンシングをもたらし得る。Y染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加もまた、Y染色体の領域のサイレンシングをもたらし得る。リン酸化ヒストンγH2AXは、転写抑制と関連することが知られていて、減数分裂前期中のXY性体におけるX及びY染色体の転写抑制と関連する。例えば、Alton et al.(2008)Reproduction 135:241−252を参照のこと。領域内における1つ以上の遺伝子の転写減少もまた、Y染色体の領域のサイレンシングをもたらし得る。1つ以上の遺伝子の転写抑制は、例えば、転写リプレッサードメインまたはエピジェネティック改変ドメインに融合されるDNA結合タンパク質を使用して行われ得る(例えば、WO2014/089290を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0154】
タンパク質のレベル及び/または活性の減少は、タンパク質をコードする遺伝子に対する、またはタンパク質のレベルもしくは活性に影響を及ぼす、もしくはそれらを制御するゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変によって達成され得る。このような標的改変としては、例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、1つ以上のヌクレオチドの欠失、1つ以上のヌクレオチドの置換、対象となるポリヌクレオチドもしくはその一部のノックアウト、対象となるポリヌクレオチドもしくはその一部のノックイン、内因性核酸配列と異種核酸配列との置換え、またはこれらの組合せを挙げることができる。例えば、少なくとも1、2、3、4、5、7、8、9、10またはそれを超えるヌクレオチドが、標的ゲノム改変を形成するために変化され得る。様々な方法が、標的遺伝子改変を生成するために使用され得る。例えば、Wang et al.(2013)Cell 153:910−918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1−9、及びWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530−532を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。加えて、本明細書に記載される様々な方法が、標的遺伝子改変を、タンパク質をコードする遺伝子またはその他のゲノム遺伝子座に導入するために使用され得る。
【0155】
タンパク質のレベル及び/または活性を減少させる標的遺伝子改変を作製する様々な方法が使用され得、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0156】
タンパク質をコードする遺伝子の、または任意のその他の標的ゲノム遺伝子座における標的遺伝子改変は、細胞(例えば、ES細胞)が、本明細書内の他の箇所に開示される雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)(例えば、繁殖可能なXY F0雌の発達を促進する培地)中で維持されている間に生じ得る。逆に、細胞は、本明細書に開示される雌化培地ではない(例えば、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む基本培地を含む低オスモル濃度培地ではない)培地中で培養され得る。あるいは、遺伝子またはその他の標的ゲノム遺伝子座の標的遺伝子改変は、細胞が異なる培養培地中で維持されていて、続いて本明細書に開示される雌化培養培地(例えば、低オスモル濃度)に移している間に生じ得る。
【0157】
タンパク質の活性及び/またはレベルはまた、タンパク質のレベルまたは活性を阻害するポリヌクレオチドを細胞中に導入することによって低減または排除され得る。ポリヌクレオチドは、SryメッセンジャーRNAの翻訳を防止することによって直接的に、またはタンパク質をコードする遺伝子の転写を阻害するポリペプチドをコードすることによって間接的にタンパク質の発現を阻害してよい。あるいは、タンパク質の活性は、タンパク質の活性を阻害するポリペプチドをコードする配列を細胞中に導入することによって低減または排除される。
【0158】
タンパク質のレベル及び/または活性はまた、タンパク質の活性及び/またはレベルを低減させる条件付き対立遺伝子の使用によって制御され得る。条件付き対立遺伝子としては、所望の発達時点で、かつ/または所望の対象となる組織内においてタンパク質の減少したレベル及び/または活性を有するように設計された、タンパク質をコードする改変遺伝子が挙げられる。レベル及び/または活性の低減は、条件付き対立遺伝子を生じる改変を欠いている対照細胞と、または所望の発達時点における活性低減の場合、先行する、かつ/もしくは後続する時点と、または所望の組織の場合、全ての組織の平均活性と比較され得る。例えば、条件付き対立遺伝子は、所望の発達時点で、かつ/または特定の組織中で停止され得る、タンパク質をコードする遺伝子の条件付きヌル対立遺伝子を含み得る。このような条件付き対立遺伝子は、任意の遺伝子標的クローンに由来する繁殖可能なXY雌を作製するために使用され得る。本明細書内の他の箇所に記載されるように、このような方法は、F1世代において所望のホモ接合遺伝子改変の作製を可能にする。このような方法は、F2世代まで交配させる必要なく、表現型の迅速な調査を提供する。
【0159】
条件付き対立遺伝子はまた、US2011/0104799に記載されているように多機能性対立遺伝子であり得、その全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる。例えば、このような条件付き対立遺伝子は、以下を含み得る:(a)標的遺伝子の転写に関するセンス配向における作動配列、及びセンスまたはアンチセンス配向における薬物選択カセット(DSC)、(b)アンチセンス配向における、対象となるヌクレオチド配列(NSI)及び反転モジュールによる条件付き(COIN)、これはエクソン分割イントロン及び反転可能な遺伝子トラップ様モジュールを利用する(例えば、US2011/0104799を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる)、ならびに(c)(i)作動配列及びDSCを欠き、(ii)センス配向にNSI及びアンチセンス配向にCOINを含有する条件付き対立遺伝子を形成するために、第1リコンビナーゼへの曝露時に組み換えられる組換え可能な単位。
【0160】
タンパク質をコードする遺伝子の条件付き対立遺伝子は、任意の細胞型で生成され得、XY多能性または全能性細胞に限定されない。このような細胞型は、Y染色体上のゲノム遺伝子座を標的とする非限定的な方法と共に、本明細書内の他の箇所でさらに詳しく述べられる。
【0161】
サイレンシングは、XY多能性または全能性細胞が培養されている場合、ドナーXY多能性もしくは全能性細胞が宿主胚に導入された後、またはドナーXY多能性もしくは全能性細胞を含む宿主胚が、レシピエント雌動物に導入された後に生じ得る。サイレンシングはまた、異なる胚発生期中に、または胚発生の全体にわたって生じ得る。いくつかの場合には、サイレンシングは出生後も継続する。例えば、卵母細胞が受精した後、一部のサイレンシングは最初の2細胞分裂を経ても維持され得る。サイレンシングにより引き起こされる性転換はまた、F1子孫に伝達されることが可能であり得る。サイレンシングが生じる期間のいくつかの例としては、以下のうち1つ以上が挙げられる:(1)雄の性決定プログラムが実行される場合の胚発生中、(2)少なくともマウスのE11〜E12に対応する発達段階(例えば、性決定もしくは性転換に重要な発達段階)までの胚発生中、(3)少なくともマウスのE17〜E19に対応する発達段階(例えば、胚の卵母細胞における繁殖力に重要な発達段階)までの胚発生中、(4)卵形成期の全体を通して、(5)卵母細胞発生における減数分裂前期中、これは出生直前の胚で開始する、(6)卵母細胞が受精した後(例えば、その最初の2細胞分裂中)、または(7)受精後の最初の2細胞分裂を経た排卵後の卵母細胞において。
【0162】
ii.雌化培地中における培養及び維持
F0世代において繁殖可能なXY雌を促進する様々な方法及び組成物で用いられる培養培地は、それが多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞、iPS細胞、XY ES細胞、XY iPS細胞など)を維持するというようなものである。「維持する」、「維持すること」、及び「維持」という用語は、本明細書に記載される多能性または全能性細胞(ES細胞またはiPS細胞を含む)の特性または表現型のうち少なくとも1つ以上の安定した保存を指す。このような表現型は、細胞の多能性または全能性、細胞形態、遺伝子発現プロファイル、及びその他の機能的特性を維持することを含み得る。「維持する」、「維持すること」及び「維持」という用語はまた、細胞の増殖または培養されている細胞数の増加を包含し得る。本用語は、細胞が分裂して数が増加し続ける場合もあり、またはそうでない場合もある一方で、細胞が多能性のままであることを可能にする培養条件をさらに考慮する。細胞は、様々な濃度の二酸化炭素中で培養され得る。一例では、細胞は5%二酸化炭素中で培養される。
【0163】
Y染色体の領域をサイレンシングする改変を有するXY多能性または全能性細胞は、培養下で多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞、iPS細胞、XY ES細胞、XY iPS細胞など)を成長させる、または維持する際の使用(添加物を添加して)に好適である、当該技術分野において既知の任意の基本培地(例えば、DMEM)中で培養することによって維持され得る。このような培養されたXY多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞)は、Y染色体の領域のサイレンシングによって、繁殖可能な雌動物へと発達し、かつ多能性または全能性を保持する可能性を有するため、結果として細胞は、レシピエント胚に移植されて繁殖可能な雌子孫を生じ得る。
【0164】
1.雌化培地
Y染色体の領域のサイレンシングは、以下でさらに定義されるような雌化培地中でXY多能性または全能性細胞を培養または維持することによって達成され得る。同様に、Y染色体の領域をサイレンシングするさらなる改変を有するXY多能性または全能性細胞もまた、以下でさらに定義されるような雌化培地中で培養することによって維持され得る。培地中において十分な時間、細胞を培養することによって、細胞は、繁殖可能な雌動物へと発達する可能性を有するXY多能性または全能性細胞へと変換され得るため、結果として細胞は、レシピエント胚に移植されて繁殖可能な雌子孫を生じ得る。WO2011/156723及びKuno et al.(2015)Transgenic Res.24(1):19−29(その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる)は、宿主胚へのXYドナー細胞の導入及び好適な宿主での懐胎後、繁殖可能なXY雌動物が、F0集団において産生され得るように培養下でXYドナー細胞を維持するために、このような雌化培養培地(例えば、本明細書内の他の箇所に開示されるような低オスモル濃度培地または低塩培地)を用いる方法及び組成物を提供する。いくつかのこのような方法では、特定のXY多能性または全能性細胞クローンが繁殖可能なXY雌動物を生成する傾向は、0%〜60%であり得、これらの雌化効果は、対照非雌化培地中でクローンを再成長させることによって反転され得ない。このようなF0 XY雌は、正常な雌の外的及び内的構造を有し得、宿主胚の寄与及びキメラ現象が一切ない、完全にドナー細胞由来であり得、生殖器を含む全ての組織中に1本のX染色体及び1本のY染色体を有し得、かつ可視の染色体異常もなく、正常なXY雄の核型を有し得る。雌化培地中で培養されたXY多能性または全能性細胞に由来するF0 XY雌は、XX雌と同等の繁殖力及び妊孕力を有し得る。例えば、いくつかのこのような方法では、F0 XY雌は、F1 XX雌対照物のおよそ90%の繁殖力と比較して60〜70%の繁殖力を有する。いくつかのこのような方法では、9か月の交配試験においてF0 XY雌とF1 XX雌との間で妊孕力には全く差がない。
【0165】
雌化培地中での培養は、Y染色体遺伝子の抑制またはサイレンシングをもたらし得る(実施例1を参照のこと)。例えば、Y染色体の領域は、Y染色体の短腕の全てまたは一部などでサイレンシングされ得る。機構の理解は実践に必要ではないが、Y染色体の短腕におけるサイレンシングは、雄の性決定経路において重要な調節因子であるSry遺伝子まで拡大され得、これにより、マウスの胚発生中、E11〜E12の正確な時点で十分に発現されないため、両能性生殖隆起において雌の性決定プログラムの発現をもたらす(実施例1及び
図2A〜
図2Dを参照のこと)。Ddx3y及びEif2s3yなどのその他の遺伝子も、発現できない(実施例1ならびに
図3及び
図4を参照のこと)。それ以降、性転換胚は雌として出生し(F0世代)、次いで、そのXY遺伝子型にもかかわらず、正常で繁殖可能な雌マウスに成長し得る。いくつかの方法では、雌化培地誘導Y染色体サイレンシングは、永久的な遺伝子変化ではなく、F1世代まで持続しない(すなわち、XY雌は、F0 XY雌のF1子孫の中には一切見られない)。
【0166】
機構の理解は実践に必要ではないが、クロマチンの変化及び/またはY染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加は、サイレンシングに寄与し得る。リン酸化ヒストンγH2AXは、転写抑制と関連することが知られていて、減数分裂前期中のXY性体におけるX及びY染色体の転写抑制と関連する。例えば、Alton et al.(2008)Reproduction 135:241−252を参照のこと。
【0167】
いくつかの場合には、XY多能性または全能性細胞におけるY染色体の最初の雌化培地誘導サイレンシングは、クローンの全ての細胞全体で完了していないため、クローンの細胞を注入された一部の胚は、正常な雄へと発達することになる。これらのF0雄を、それらの遺伝的に同一な性転換した雌のクローン兄弟と交配して、第1(F1)世代においてホモ接合体遺伝子改変マウスを生成し、それによって、通常はホモ接合体マウスを生成するのに必要となる交配の追加世代(F2)にかかる時間と費用を排除することができる。
【0168】
雌化培地は、繁殖可能なXY F0雌の発達を促進し得る。したがって、このような培地中での培養は、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地など)中で培養されたXY多能性もしくは全能性細胞と比較した場合、またはクローンが雌化培地中で培養されたにもかかわらず、XY雌マウスを生成する能力を欠いている、もしくは低減したその能力を有するXY多能性もしくは全能性細胞クローンと比較した場合、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のパーセンテージ、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージ、または正常な同腹仔数、産子数、及び一生涯における子孫(例えば、野生型雌動物と比較して)を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージを増加させ得る。
【0169】
XY多能性または全能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に対して少なくとも1つの追加の標的遺伝子改変をさらに含み得る。少なくとも1つの追加の標的ゲノム遺伝子座を改変することを含む方法では、XY多能性または全能性細胞は、標的化プロセス全体、例えば、エレクトロポレーション、薬物耐性コロニーの選択、標的変異についてのスクリーニング、増殖、及び凍結保存、または標的化プロセス全体のうち1つ以上の部分のみにおいて雌化培地中で培養され得る。同様に、細胞は、標的化プロセスの前に、かつ/またはその間に、かつ/またはその後に雌化培地中で培養され得る。
【0170】
「基本培地(base medium)」または「基本培地(base media)」としては、例えば、培養下で多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞、iPS細胞、XY ES細胞、XY iPS細胞など)を成長させる、または維持する際の使用(添加物を添加して)に好適である、当該技術分野において既知の基本培地(例えば、DMEM)が挙げられる。繁殖可能なXY雌の作製を促進する基本培地(すなわち、「雌化培地」(例えば、「低塩培地」または「低オスモル濃度培地」))は、培養下でES細胞を維持するために典型的に使用される基本培地とは異なる。基本培地について一般に述べるために、繁殖可能なXY雌の作製を促進しない基本培地は、「DMEM」(例えば、典型的なDMEM培地)として本節及び表1に記載されている。繁殖可能なXY雌の作製を促進する基本培地について述べるために、「雌化培地」という語句(例えば、「低塩培地」、「低塩DMEM」、「低オスモル濃度培地」、または「低オスモル濃度DMEM」)が使用される。培養下で多能性または全能性細胞を維持するために典型的に使用される基本培地(例えば、DMEM)と、繁殖可能なXY雌の作製を促進する基本培地(例えば、「低塩DMEM」などの「雌化培地」)との差異は、本明細書で明確に表される。「低塩培地」という語句は便宜上使用され、繁殖可能なXY雌を作製するのに好適なDMEMは、「低塩」に限定されない特性を示し、本明細書に記載される特性を含む。例えば、表1に示されるDMEMは、本明細書で提供されるような塩化ナトリウム及び/または重炭酸ナトリウム濃度を変化させることによって、繁殖可能なXY雌を作製するのに好適にされ得、それはまた、表1に示されるDMEMと比較した場合、異なるオスモル濃度及び異なる伝導度をもたらすことになる。基本培地の一例は、様々な形態のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)である(例えば、Invitrogen DMEM、カタログ番号1 1971−025、表1)。好適な低塩DMEMは、KO−DMEM(商標)(Invitrogenカタログ番号10829−018)として市販されている。基本培地は、ドナー細胞として使用するための細胞を培養下で維持するために使用される場合、当該技術分野において既知の多数の添加物が典型的には補充される。このような添加物は、本開示において「添加物」または「+添加物」として示される。
【0172】
「添加物」または「+添加物」という語句は、培養下で多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞またはXY iPS細胞)を成長させる、または維持するために(例えば、培養下でドナー細胞の多能性または全能性を維持するために)基本培地に添加される要素を含む。例えば、培養下で多能性または全能性細胞を成長させる、または維持するのに好適な培地添加物としては、ウシ胎児血清(FBS)、グルタミン、抗生物質(複数可)、ペニシリン及びストレプトマイシン(例えば、penstrep)、ピルビン酸塩(例えば、ピルビン酸ナトリウム)、非必須アミノ酸(例えば、MEM NEAA)、2−メルカプトエタノール、ならびに白血病抑制因子(LIF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
いくつかの方法では、基本培地は、多能性または全能性細胞、例えば、胚への注入及び代理母マウスへの子宮内移入後に、雄の性決定発達プログラムに寄与する能力が低減したXY ES細胞またはXY iPS細胞を含む細胞を、培養下で維持するのに好適な1種以上の添加物を含む。一部の細胞株については、培地は、Wnt馴化培地、例えば、Wnt−3a馴化培地である。
【0174】
例えば、基本培地は、以下の添加物のうち1種以上を含み得る:FBS(90mLのFBS/0.5Lの基本培地)、グルタミン(2.4mmol/0.5Lの基本培地)、ピルビン酸ナトリウム(0.6mmol/0.5Lの基本培地)、非必須アミノ酸(<0.1mmol/0.5Lの基本培地)、2−メルカプトエタノール、LIF、及び1種以上の抗生物質。多能性または全能性細胞、例えば、胚への注入及び代理母マウスへの子宮内移入後に、雄の性決定発達プログラムに寄与する能力が低減したXY ES細胞またはXY iPS細胞を含む細胞を、培養下で維持するための培地の一例は、以下の添加物が添加される約500mlの基本培地を含む:約90mLのFBS(例えば、Hylcone FBSカタログ番号SH30070.03)、約2.4ミリモルのグルタミン(例えば、約12mlの200mMグルタミン溶液、例えば、Invitrogenカタログ番号25030−081、ペニシリン:ストレプトマイシン(例えば、約51mgのNaClを含む60,000単位のペニシリンGナトリウム及び60mgの硫酸ストレプトマイシン、例えば、約6mlのInvitrogen pennstrep、カタログ番号15140−122)、約0.6ミリモルのピルビン酸ナトリウム(例えば、6mlの100mMピルビン酸ナトリウム、Invitrogenカタログ番号1 1360−070)、約0.06ミリモルの非必須アミノ酸(例えば、約6mlのMEM NEAA、例えば、Invitrogenカタログ番号1 1 140−050からのMEM NEAA)、約1.2mlの2−メルカプトエタノール、ならびに約1.2マイクログラムのLIF(例えば、約120マイクロリットルの106単位/mLのLIF調製物、例えば、約120マイクロリットルのMillipore ESGRO(商標)−LIF、カタログ番号ESG1 107)。繁殖可能なXY雌を作製するためのXY多能性または全能性細胞(例えば、XY ESまたはXY iPS細胞)を維持するための基本培地を構成する場合、ほぼ同じ量の典型的には同じ添加物が用いられるが、基本培地の組成は(DMEMとは、例えば、表1に記載されている培地とは)異なることになり、差異(複数可)は、本明細書で教示される差異(複数可)に対応する。
【0175】
変化され得る雌化培地のその他の特性としては、オスモル濃度、伝導度、塩濃度、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩の濃度、炭酸塩の濃度、アルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度、ならびにアルカリ金属及びハロゲン化物の塩と炭酸の塩とのモル比が挙げられる。例えば、基本培地は、低塩培地(例えば、85〜130mM(約5.0〜7.6mg/mL)のNaCl濃度を有する低塩DMEM)、低オスモル濃度培地(例えば、250〜310mOsm/kgもしくは218〜322mOsm/kgのオスモル濃度を有する低オスモル濃度DMEM)、または低伝導度培地(例えば、11〜13mS/cmの伝導度を有する低伝導度DMEM)であり得る。
【0176】
基本培地または基本培地及び添加物を含む培地のオスモル濃度は、例えば、約320、310、300、290、280、275、270、260、250、240、230、220、210、または200mOsm/kg以下であり得る。あるいは、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地のオスモル濃度は、例えば、約340mOsm/kgまたは330mOsm/kg以下であり得る。場合により、基本培地は、約340、330、320、310、300、290、280、275、270、260、250、240、230、220、210、または200mOsm/kg以下のオスモル濃度を有し、オスモル濃度は、非ヒト動物XY多能性または全能性細胞の多能性または全能性を維持するのに好適な添加物を基本培地に添加する時、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、または25%を超えて変化しない。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約200〜329、218〜322、240〜320、250〜310、275〜295、または260〜300mOsm/kgのオスモル濃度を含み得る。場合により、基本培地は、約200〜329、218〜322、240〜320、250〜310、275〜295、または260〜300mOsm/kgのオスモル濃度を有し、オスモル濃度は、非ヒト動物XY多能性または全能性細胞の多能性または全能性を維持するのに好適な添加物を基本培地に添加する時、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、または25%を超えて変化しない。あるいは、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約214、約216、約200〜322、約200〜340、約200〜292、約214〜322、約216〜322、約218〜322、約214〜332、約216〜332、または約218〜332mOsm/kgのオスモル濃度を含み得る。場合により、基本培地は、約214、約216、約200〜322、約200〜340、約200〜292、約214〜322、約216〜322、約218〜322、約214〜332、約216〜332、または約218〜332mOsm/kgのオスモル濃度を有し、オスモル濃度は、非ヒト動物XY多能性または全能性細胞の多能性または全能性を維持するのに好適な添加物を基本培地に添加する時、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、または25%を超えて変化しない。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約270mOsm/kgまたは218mOsm/kgのオスモル濃度を含み得る。あるいは、オスモル濃度は、218±22mOsm/kg、261±26mOsm/kg、294±29mOsm/kg、または322±32mOsm/kgであり得る。あるいは、オスモル濃度は、約216もしくは214mOsm/kgまたは216±22mOsm/kgもしくは214±22mOsm/kgであり得る。場合により、基本培地は、約270mOsm/kg、約218mOsm/kg、216mOsm/kg、214mOsm/kg、218±22mOsm/kg、261±26mOsm/kg、294±29mOsm/kg、322±32mOsm/kg、216±22mOsm/kg、または214±22mOsm/kgのオスモル濃度を有し、オスモル濃度は、非ヒト動物XY多能性または全能性細胞の多能性または全能性を維持するのに好適な添加物を基本培地に添加する時、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、または25%を超えて変化しない。
【0177】
基本培地または基本培地及び添加物を含む培地の伝導度は、例えば、約10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、または14.0mS/cm以下であり得る。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約10〜14mS/cm、約11〜13mS/cm、または約12〜13mS/cm以下の伝導度を示し得る。
【0178】
基本培地または基本培地及び添加物を含む培地のpHは、例えば、約6.9〜約7.5、約6.98〜約7.41、約7.0〜約7.4、約7.05〜約7.35、約7.1〜約7.3、約7.15〜約7.25、約7.18〜約7.22、約7.19〜約7.23、もしくは約7.2〜約7.22であり得る、またはpHは、約7.21、約7.17、約7.38、約6.99、約6.98、約7.40、約7.41、約7.34、もしくは約7.37であり得る。
【0179】
一部の培地は、NaClなどのアルカリ金属及びハロゲン化物の塩の濃度を示す。基本培地または基本培地及び添加物を含む培地中のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩の濃度は、例えば、約100、90、80、70、60、または50mM以下であり得る。例えば、NaClについては、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地の濃度は、例えば、約5.8、5.3、4.7、4.1、3.5、または2.9mg/mL以下であり得る。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約50〜110、60〜105、70〜95、80〜90、90、または85mMのアルカリ金属及びハロゲン化物の塩の濃度を含み得る。例えば、NaClについては、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地の濃度は、例えば、約2.9〜6.4、3.5〜6.1、4.1〜5.6、4.7〜5.3、5.3、または5.0mg/mLであり得る。あるいは、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩の濃度は、50±5mM、87±5mM、110±5mM、約3mg/mL、約5.1mg/mL、または約6.4mg/mLであり得る。
【0180】
一部の培地は、ナトリウム塩(例えば、重炭酸ナトリウム)などの炭酸の塩(炭酸塩)の濃度を示す。基本培地または基本培地及び添加物を含む培地中における炭酸の塩の濃度は、例えば、45、40、35、30、25、または20mM以下であり得る。例えば、重炭酸ナトリウムについては、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地の濃度は、例えば、3.8、3.4、2.9、2.5、2.1、または1.7mg/mL以下であり得る。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約10〜40、18〜44、17〜30、18〜26、13〜25、20〜30、25〜26、18、または26mMの基本培地における炭酸塩の濃度を含み得る。例えば、重炭酸ナトリウムについては、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地の濃度は、例えば、約0.8〜3.4、1.5〜3.7、1.4〜2.5、1.5〜2.2、1.1〜2.1、1.7〜2.5、2.1〜2.2、1.5、または2.2mg/mLであり得る。あるいは、炭酸塩の濃度は、18±5mM、26±5mM、約1.5mg/mL、または約2.2mg/mLであり得る。
【0181】
基本培地または基本培地及び添加物を含む培地中のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩ならびに炭酸の塩における濃度の和は、例えば、140、130、120、110、100、90、または80mM以下であり得る。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約80〜140、85〜130、90〜120、95〜120、100〜120、または115mMのアルカリ金属及びハロゲン化物の塩ならびに炭酸の塩における濃度の和を含み得る。
【0182】
基本培地または基本培地及び添加物を含む培地中のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩と炭酸の塩とのモル比は、例えば、2.5超であり得る。例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約2.6〜4.0、2.8〜3.8、3.0〜3.6、3.2〜3.4、3.3〜3.5、または3.4のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩と炭酸の塩とのモル比を含み得る。
【0183】
雌化培地の一例(例えば、低オスモル濃度培地)は、以下の特性のうち1つ以上を含む基本培地を含む培地である:(a)約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度、(b)約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度、(c)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(d)約17mM〜約30mMの炭酸塩濃度、ならびに(e)約85mM〜約130mMのアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度または約11mS/cm〜約13mS/cmの伝導度を有し得る。
【0184】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、以下の特性のうち1つ以上を含む基本培地を含む培地である:(a)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩、(b)約17mM〜約30mMの濃度の炭酸塩、ならびに(c)約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度。例えば、基本培地は、NaClを約2.9〜6.4mg/mLの濃度で含み得る、かつ/または重炭酸ナトリウムを約1.4〜2.5mg/mLの濃度で含み得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0185】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、以下の特性のうち1つ以上を含む基本培地を含む培地である:(a)約50mM〜約110mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩(例えば、NaCl)、(b)約18mM〜約44mMまたは約18mM〜約26mMの濃度の炭酸塩(例えば、NaHCO
3)、ならびに(c)約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度。例えば、基本培地は、NaClを約2.9〜6.4mg/mLの濃度で含み得る、かつ/または重炭酸ナトリウムを約1.5〜3.7mg/mLもしくは1.5〜2.2mg/mLの濃度で含み得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約218mOsm/kg〜約322mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0186】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、以下の特性のうち1つ以上を含む基本培地を含む培地である:(a)約250〜310mOsm/kgのオスモル濃度、(b)約11〜13mS/cmの伝導度、(c)約60〜105mMの濃度のアルカリ金属及びハロゲン化物塩、(d)約20〜30mMの炭酸塩濃度、ならびに(e)約85〜130mM以下のアルカリ金属ハロゲン化物塩及び炭酸塩の総濃度。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約250〜310mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0187】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約12〜13mS/cmの伝導度及び約260〜300mOsm/kgのオスモル濃度を含む基本培地を含む培地である。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約12〜13mS/cmの伝導度及び約260〜300mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、塩化ナトリウムを約70〜95mM(すなわち、約4.1〜5.6mg/mL)の濃度で、または約90mMのNaCl(すなわち、約5.3mg/mL)をさらに含む。場合により、基本培地は、重炭酸ナトリウムを約35mM未満(すなわち、約2.9mg/mL)または約20〜30mM(すなわち、約1.7〜2.5mg/mL)の濃度でさらに含む。
【0188】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約250〜310mOsm/kgのオスモル濃度ならびに約60〜105mMのアルカリ金属及びハロゲン化物の塩の濃度を含む基本培地を含む培地である。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約250〜310mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約3.5〜6.1mg/mLのNaClを含み、約250〜310mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る、または基本培地は、約3.5〜6.1mg/mLのNaClを含み得、基本培地及び添加物を含む培地は、約250〜310mOsm/kgのオスモル濃度を有する。場合により、基本培地は、約20〜30mMの炭酸塩の濃度を含む。例えば、基本培地は、約1.7〜2.5mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得る。場合により、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩ならびに炭酸の塩における濃度の和は、約80〜140mMである。場合により、基本培地の伝導度は、約12〜13mS/cmである。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地の伝導度は、約12〜13mS/cmである。
【0189】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約50±5mMのNaCl及び約26±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)を含む基本培地を含む培地であり、約218±22mOsm/kgのオスモル濃度を有する。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約218±22mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、培地は、約2.6〜3.2mg/mLのNaCl及び約1.8〜2.6mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約218±22mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約3mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み、約218mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約218mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0190】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約87±5mMのNaCl及び約18±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)を含む基本培地を含む培地であり、約261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有する。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約4.8〜5.4mg/mLのNaCl及び約1.1〜1.9mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約261±26mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl及び約1.5mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み、約261mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約261mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、4.5mg/mLのグルコースをさらに含み得る。
【0191】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約110±5mMのNaCl及び約18±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)を含む基本培地を含む培地であり、約294±29mOsm/kgのオスモル濃度を有する。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約294±29mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約6.1〜6.7mg/mLのNaCl及び約1.1〜1.9mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約294±29mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約6.4mg/mLのNaCl及び約1.5mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み、約294mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約294mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、4.5mg/mLのグルコースをさらに含み得る。
【0192】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約87±5mMのNaCl及び約26±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)を含む基本培地を含む培地であり、約270±27mOsm/kgのオスモル濃度を有する。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約270±27mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、培地は、約4.8〜5.4mg/mLのNaCl及び約1.8〜2.6mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約270±27mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み、約270mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約270mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。別の例として、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約275mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。別の例として、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約268mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。別の例として、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約280mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、4.5mg/mLのグルコースをさらに含み得る。
【0193】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約87±5mMのNaCl、約26±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)、及び約86±5mMのグルコースを含む基本培地を含む培地であり、約322±32mOsm/kgのオスモル濃度を有する。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約322±32mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、培地は、約4.8〜5.4mg/mLのNaCl及び約1.8〜2.6mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約322±32mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl、約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウム、及び約15.5mg/mLのグルコースを含み、約322mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約322mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0194】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、50±5mMのNaCl及び26±5mMの炭酸塩を含む基本培地を含む培地であり、218±22mOsm/kgのオスモル濃度を有する。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約218±22mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、培地は、約2.6〜3.2mg/mLのNaCl及び約1.8〜2.6mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、218±22mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約3mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み、約218mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地及び添加物を含む培地は、約218mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地は、約3mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約216mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。あるいは、基本培地は、約3mg/mLのNaCl及び約2.2mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約214mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、4.5mg/mLのグルコースをさらに含み得る。
【0195】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約50±5mMのNaCl及び約44±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)を含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約238±24mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、培地は、約2.6〜3.2mg/mLのNaCl及び約3.3〜4.1mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約238±24mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約3mg/mLのNaCl及び約3.7mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約238mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、4.5mg/mLのグルコースをさらに含み得る。
【0196】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約87±5mMのNaCl及び約44±5mMの炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)を含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約288±29mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、培地は、約4.8〜5.4mg/mLのNaCl及び約3.3〜4.1mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約288±29mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。例えば、基本培地は、約5.1mg/mLのNaCl及び約3.7mg/mLの重炭酸ナトリウムを含み得、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約288mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。場合により、基本培地は、4.5mg/mLのグルコースをさらに含み得る。
【0197】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約3mg/mLのNaCl及び約1.5mg/mLの重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約203mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0198】
雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約44mMの重炭酸ナトリウム(すなわち、約3.7mg/mL)を含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約290mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約26mM(すなわち、約2.2mg/mL)の重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約264mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約18mM(すなわち、約1.5mg/mL)の重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約292mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。雌化培地の別の例(例えば、低オスモル濃度培地)は、約18mM(すなわち、約1.5mg/mL)の重炭酸ナトリウムを含む基本培地を含む培地であり、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約251mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0199】
使用され得るその他の培地は、高グルコースDMEM培地(LifeTech)を、本明細書に開示されるようなNaHCO
3濃度(例えば、44mM、26mMまたは18mM)で、0.1mMの非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、50ug/mlのペニシリン及びストレプトマイシン(LifeTech)を各々、15%FBS(Hyclone)、ならびに2000U/mlのLIF(Millipore)を補充して含む。
【0200】
雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)のその他の例は、WO2011/156723、US2011/0307968、及びUS2015/0067901に記載されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、雌化培地のその他の例は、Kuno et al.(2015)Transgenic Res.24(1):19−29に記載されていて、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0201】
2.繁殖可能なXY雌動物を生成するための向上した能力を有するXY多能性または全能性細胞またはクローンの選択
動物XY多能性または全能性細胞またはクローンが、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向を決定するための方法及び組成物が提供される。動物XY多能性または全能性細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向は、これらのクローンにおけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現または活性と逆相関する。動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)におけるこれらの遺伝子のうち1つ以上の発現喪失は、どの細胞クローンがF0世代においてXY雌動物を生成することになるかを予測し得る:観察されるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのサイレンシングが強くなるほど、XY ES細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向がますます高くなる(例えば、実施例3を参照のこと)。同様に、動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)におけるこれらの遺伝子のうち1つ以上の活性喪失または発現及び/もしくは活性の減少は、どの細胞クローンがF0世代においてXY雌動物を生成することになるかを予測し得る:観察されるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現が低下するほど、XY ES細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向がますます高くなる(例えば、実施例3を参照のこと)。言い換えれば、これらの遺伝子のうち1つ以上の発現及び/または活性は、XY雌生成を予測するための代理マーカーであり得る。
【0202】
この情報は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向が高い動物XY多能性または全能性細胞を選択するために使用され得る。例えば、1種以上の動物XY多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞)の集団が、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で維持される場合、このような方法は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、1種以上の動物XY多能性または全能性細胞をアッセイすること、ならびにDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することを含み得、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。例えば、このようなドナー動物XY多能性または全能性細胞は、Ddx3yの、Utyの、Eif2s3yの、Ddx3y及びUtyの、Ddx3y及びEif2s3yの、Uty及びEif2s3yの、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yの減少した発現及び/または活性を有し得る。
【0203】
次いで、ドナー動物XY多能性または全能性細胞が宿主胚に導入され得、宿主胚は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。例えば、宿主胚は前桑実期胚であり得、宿主胚は、ドナー動物XY多能性または全能性細胞の導入時に胚盤胞期まで培養され得る。動物、胚、ドナーXY多能性または全能性細胞を胚に導入する方法、及びF0動物を生成する方法は、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0204】
雌化培地(例えば、培養下で動物XY多能性または全能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物、ここで基本培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を含む)ならびにこのような培地中で細胞を維持する方法は、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0205】
動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ前に、及び/または宿主胚への導入前に、様々な時間で培地中において維持され得る。例えば、動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ及び/または宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、雌化培地中で維持され得る。あるいは、動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ及び/または宿主胚への導入前に1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間以下の間、雌化培地中で維持され得る。いくつかの方法では、XY多能性または全能性細胞は、細胞を胚に注入するまで雌化培地中で培養または維持される。その他の方法では、XY多能性または全能性細胞が注入された胚は、代理母に移入されるまで雌化培地中で培養または維持される。
【0206】
アッセイステップは、クローンそれ自体をアッセイすること、ならびにDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現または活性のレベルを決定することを含み得る。あるいは、アッセイステップは、クローンに由来するいくつかのサブクローンをアッセイすること、ならびに例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の低減した発現及び/もしくは活性を有する、またはその発現及び/もしくは活性を欠いているサブクローンのパーセンテージを決定することを含み得る。あるいは、アッセイステップは、クローンに由来するいくつかのサブクローンをアッセイすること、ならびにサブクローンの中でもDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の比較発現及び/または活性を決定することを含み得る。Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性が減少し得る、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての発現及び/もしくは活性が減少し得る。あるいは、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性を欠いている、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての発現及び/もしくは活性を欠いている。例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての検出可能な発現の欠如であり得る。
【0207】
発現は、タンパク質レベルまたはmRNAレベルで評価され得る。ポリペプチドの発現レベルは、直接的に、例えば、細胞もしくは生物中のポリペプチドレベルについてアッセイすることにより(例えば、ウェスタンブロット分析、FACS分析、ELISA)、または間接的に、例えば、ポリペプチドの活性を測定することにより測定されてよい。その他の場合では、遺伝子の発現及び/または活性の低減は、例えば、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、ノーザンブロット分析、定量的RT−PCR分析、次世代シーケンシング(NGS)、マイクロアレイ分析、または表現型分析を含む方法を使用して測定され得る。例えば、遺伝子の発現は、RT−PCR、RNA−seq、デジタルPCR、またはmRNAレベルを測定する任意のその他の好適な方法によって、mRNAレベルを測定することにより評価され得る。一例として、RNAレベルは、B2mなどの対照遺伝子と比較してRT−PCRにより測定され得る。いくつかの場合には、例えば、対照遺伝子(例えば、B2m)と標的遺伝子との間のΔCtは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、または少なくとも8であり得る。同様に、いくつかの場合には、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40サイクル後、標的遺伝子の検出可能なRNAは、一切存在しないことになる。
【0208】
場合により、mRNAまたはポリペプチドの発現レベルを測定する場合、対照実験は、Y染色体の存在を確認するために行われ得る。例えば、TAQMAN(登録商標)コピー数アッセイは、Y染色体上の異なるゲノム配列に対するプローブを使用することによって、Y染色体の1コピーの存在を確認するために行われ得る。このようなアッセイは、ゲノム内におけるコピー数変化を測定するように設計される。
【0209】
対象細胞、胚、または動物における遺伝子またはそれがコードするタンパク質の発現または活性の減少としては、適切な対照細胞、胚、もしくは動物または対照細胞、胚、もしくは動物の集団と比較した場合の、発現または活性レベルの任意の統計的に有意な低減を挙げることができる。一般に、発現または活性は、発現または活性が、雌化培地ではない適切な対照培地中で培養された適切な対照細胞、胚、またはそれらに由来する動物(例えば、動物XY多能性細胞)、すなわち、細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、歴史的に完全に雄マウスを生成する動物XY多能性細胞)における発現または活性よりも、統計的に低い場合に減少する。このような減少は、対照細胞と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれを超える低減を含む。統計的有意性は、p≦0.05を意味する。発現または活性の減少は、任意の段階で任意の機構によって生じ得る。例えば、発現の減少は、転写中、転写後、翻訳中、または翻訳後に生じる事象または制御によって生じ得る。
【0210】
「対象細胞」は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養された細胞または雌化培地中で培養された細胞の子孫である細胞である。「対照」または「対照細胞」は、対象細胞の表現型における変化を測定するための基準点を提供する。対照細胞は、それが雌化培地中で培養されなかったこと、または細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、XY雌マウスを生成する能力を欠いている、もしくは低減したその能力を有することのいずれかを除いて、好ましくは対象細胞と可能な限り厳密に合致する(例えば、個々の細胞は、同じ細胞株もしくは同じクローンに由来し得る、または同じ遺伝子型を有し得る)。例えば、対照細胞は、以下を含んでよい:(a)同じ遺伝子型である、または対象細胞と同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、雌化培地ではない適切な対照培地(例えば、DMEMもしくは動物XY多能性もしくは全能性細胞の多能性もしくは全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる能力を細胞に付与することにより細胞を変化させない別の種類の培地)中で培養された細胞、(b)対象細胞と遺伝的に同一である、または同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、遺伝子改変されていない、もしくは繁殖可能な雌XY動物を生成する能力を細胞に付与することになる条件もしくは刺激に曝露されていない動物XY多能性または全能性細胞、ならびに(c)雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養されるが、細胞が雌化培地中で培養されるにもかかわらず、歴史的に完全に雄動物を生成する動物XY多能性及び全能性細胞。
【0211】
いくつかの実験では、動物XY多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞)またはクローンの集団は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で維持され、細胞またはクローンのうち2種以上が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性についてアッセイされる。次いで、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有する細胞またはクローンが、ドナー動物XY多能性または全能性細胞またはクローンであると選択され得、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。
【0212】
Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することは、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能なF0 XY雌のより高いパーセンテージ、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌の一生涯における同腹仔のより高い平均数、及びF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌のより高い平均産子数をもたらし得る。このようなF0子孫は、本明細書内の他の箇所に開示される方法を使用した、宿主胚への細胞の導入及び宿主胚の懐胎後、ドナーXY多能性または全能性動物細胞から生成され得る。
【0213】
増加は、適切な対照物と比較した場合の、任意の統計的に有意な増加であり得る。例えば、増加は、適切な対照物と比較した場合、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍であり得る。
【0214】
例えば、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0215】
繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0216】
繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0217】
正常な同腹仔数及び/または正常な産子数(例えば、野生型雌動物と比較して)を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0218】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0219】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0220】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0221】
動物XY多能性または全能性細胞またはクローンが、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向を決定するためのキットもまた提供される。このようなキットは、例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の検出試薬を含み得る。検出試薬は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性レベルを測定し得る。例えば、検出試薬は、動物多能性または全能性細胞においてDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上から、mRNAまたはタンパク質発現のレベルを検出するために使用され得る。このような検出試薬は、動物多能性または全能性細胞においてDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現を検出するための、1つ以上のプライマーセット及び/または1つ以上のプローブを含み得る。
【0222】
このようなキットはラベルも含み得る。キットは、典型的には、キットの使用に指示を提供するラベリングを含有する。ラベリングは、キットの製造中、輸送中、販売中、または使用中のいつでも、キットに付属される、またはさもなければキットに付随する任意の記載された、または記録された材料を一般に指す。例えば、ラベリングという用語は、広告リーフレット及びパンフレット、包装材料、説明書、オーディオまたはビデオカセット、コンピュータディスク、加えてキット上に直接転写される文書を含む。
【0223】
このようなキットは、検出試薬を使用して、動物XY多能性または全能性細胞またはクローンが、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する予測傾向と検出を相互に関連付けるための説明書をさらに含み得る。
【0224】
iii.Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変
Y染色体の領域をサイレンシングする改変を有するXY多能性または全能性細胞は、レシピエント胚に移植されて繁殖可能な雌子孫を生じ得るように、一部の細胞を、繁殖可能な雌動物へと発達する可能性を有するXY多能性または全能性細胞に変換させるために、Sryタンパク質の減少したレベル及び/または活性をもたらす遺伝子改変をさらに含み得る。同様に、本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地中で培養されるXY多能性または全能性細胞は、Sryタンパク質の減少したレベル及び/もしくは活性をもたらす遺伝子改変を含み得る、またはそれらが、Sryタンパク質の減少したレベル及び/もしくは活性をもたらす遺伝子改変を含まないようにし得る。「性決定領域Y」タンパク質または「Sry」タンパク質は、DNA結合タンパク質の高移動度群(HMG)ボックスファミリーのメンバーである転写因子である。Sryは、雄性決定を開始する精巣決定因子である。様々な生物からのSryタンパク質の配列が既知であり、この配列は、マウス(アクセッション番号Q05738)、ラット(GenBank:CAA61882.1)、ヒト(アクセッション番号Q05066)、ネコ(アクセッション番号Q67C50)、及びウマ(アクセッション番号P36389)からのものを含み、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0225】
Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにXY多能性または全能性細胞を改変することによって、F0世代において表現型的に雌のXY動物を作製する方法は、WO2015/200805及びUS2015/0376651に開示されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって組み込まれる。いくつかの遺伝的背景(例えば、VGB6マウスES細胞株を使用し、この細胞株はC57BL/6系統からのY染色体を有する)では、Sryのレベル及び/または活性を減少させるようにES細胞を改変して、このような細胞を、F0マウスを生成するために使用することによって表現型的に雌のF0 XYマウスがもたらされるが、全てのマウスが不妊または生殖不能である。この不妊または非常に限られた繁殖力は、その他の文献で同様に報告されている。例えば、Kato et al.(2013)Scientific Reports 3:3136及びVernet et al.(2014)Development 141:855−866を参照のこと。しかしながら、その他の遺伝的背景(例えば、VGF1マウスES細胞株を使用し、この細胞株は129系統からのY染色体を有する)では、Sryのレベル及び/または活性を減少させるようにES細胞を改変して、このような細胞を、F0マウスを生成するために使用することによって表現型的に雌のF0 XYマウスがもたらされ、その大半が繁殖可能である。これらのVGF1細胞を、本明細書で開示されるような雌化培地中でさらに培養することによって、さらに高いパーセンテージの表現型的に雌のF0 XYマウスが繁殖可能となり得る。WO2015/200805及びUS2015/0376651を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって組み込まれる。
【0226】
XY多能性または全能性細胞を、Sryタンパク質の減少したレベル及び/または活性をもたらす遺伝子改変だけでなく、Y染色体における追加の領域のサイレンシングも含むように改変することによって、繁殖可能なXY F0雌の発達が促進され得る(例えば、XY F0雌の産生を増加させることによって、ならびに/またはXY F0雌の繁殖力及び/もしくは妊孕力をさらに増加させることによって)。改変のこのような組合せは、Sryタンパク質の減少したレベル及び/または活性をもたらす遺伝子改変を含まないXY多能性または全能性細胞と比較した場合、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のパーセンテージ、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージ、または正常な同腹仔数及び産子数(例えば、野生型雌動物と比較して)を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージを増加させ得る。
【0227】
一般に、Sryタンパク質のレベル及び/または活性は、Sryタンパク質のタンパク質レベル及び/または活性レベルが、Sryタンパク質の発現及び/または活性を阻害するために遺伝子改変されていない、または変異誘発されていない適切な対照細胞において、Sryのタンパク質レベルよりも統計的に低い場合に減少する。例えば、Sryタンパク質の濃度及び/または活性は、Sryタンパク質の減少したレベル及び/または活性を有するように改変されていない対照細胞と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれを超えて減少する。
【0228】
「対象細胞」は、本明細書に開示される遺伝子改変などの遺伝子変化が行われている細胞である、またはそのように変化された細胞の子孫であり、その変化を含む細胞である。「対照」または「対照細胞」は、対象細胞の表現型における変化を測定するための基準点を提供する。対照細胞は、それが、活性の低減をもたらす遺伝子改変または変異を欠いていることを除いて、低減したSry活性を有する細胞と可能な限り厳密に合致し得る(例えば、個々の細胞は、同じ細胞株に由来し得る)。その他の場合では、対照細胞は、例えば、以下を含んでよい:(a)野生型細胞(すなわち、対象細胞をもたらす遺伝子変化のための出発物質と同じ遺伝子型の細胞)、(b)出発物質と同じ遺伝子型であるが、ヌル構築物で(すなわち、対象となる形質に対して既知の効果を有しない構築物、例えば、マーカー遺伝子を含む構築物などで)遺伝子改変されている細胞、(c)対象細胞の非遺伝子改変子孫である細胞(すなわち、対照細胞及び対象細胞が同じ細胞株に由来する)、(d)対象細胞と遺伝的に同一であるが、Sryタンパク質レベル及び/もしくは活性レベルを変化させることになる条件もしくは刺激に曝露されていない細胞、または(e)遺伝子改変が、Sryタンパク質レベル及び/もしくは活性レベルの発現に変化をもたらさない条件下における対象細胞それ自体。
【0229】
Sryポリペプチドの発現レベルは、直接的に、例えば、細胞もしくは生物中のSryポリペプチドレベルについてアッセイすることにより、または間接的に、例えば、Sryポリペプチドの活性を測定することにより測定されてよい。Sryタンパク質の活性を決定する様々な方法が知られている。Wang et al.(2013)Cell 153:910−918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1−9、及びWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530−532を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0230】
その他の場合では、Sryポリペプチドの活性及び/またはレベルを低減させる標的遺伝子改変を有する細胞は、例えば、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、ノーザンブロット分析、定量的RT−PCR分析、次世代シーケンシング(NGS)、マイクロアレイ分析、または表現型分析を含む方法を使用して選択される。
【0231】
Sryタンパク質のレベル及び/または活性の減少は、Sry遺伝子に対する、またはSryタンパク質のレベルもしくは活性に影響を及ぼす、もしくはそれらを制御するゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変によって達成され得る。このような標的改変としては、例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、1つ以上のヌクレオチドの欠失、1つ以上のヌクレオチドの置換、対象となるポリヌクレオチドもしくはその一部のノックアウト、対象となるポリヌクレオチドもしくはその一部のノックイン、内因性核酸配列と異種核酸配列との置換え、またはこれらの組合せを挙げることができる。例えば、少なくとも1、2、3、4、5、7、8、9、10またはそれを超えるヌクレオチドが、標的ゲノム改変を形成するために変化され得る。様々な方法が、標的遺伝子改変を生成するために使用され得る。例えば、Wang et al.(2013)Cell 153:910−918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1−9、及びWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530−532を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。加えて、本明細書に記載される様々な方法が、標的遺伝子改変を、Sry遺伝子またはその他のゲノム遺伝子座に導入するために使用され得る。
【0232】
Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる標的遺伝子改変を作製する様々な方法が使用され得、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0233】
Sry遺伝子の、または任意のその他の標的ゲノム遺伝子座における標的遺伝子改変は、細胞(例えば、ES細胞)が、本明細書内の他の箇所に開示される雌化培養培地(例えば、低オスモル濃度培地)(例えば、繁殖可能なXY F0雌の発達を促進する培地)中で維持されている間に生じ得る。あるいは、Sry遺伝子またはその他の標的ゲノム遺伝子座の標的遺伝子改変は、細胞が異なる培養培地中で維持されていて、場合により、続いて本明細書内の他の箇所に開示される雌化培養培地(例えば、低オスモル濃度培地)(例えば、繁殖可能なXY F0雌の発達を促進する培地)に移されている間に生じ得る。
【0234】
Sryポリペプチドの活性及び/またはレベルはまた、Sryポリペプチドのレベルまたは活性を阻害するポリヌクレオチドを細胞中に導入することによって低減または排除され得る。ポリヌクレオチドは、SryメッセンジャーRNAの翻訳を防止することによって直接的に、またはSryタンパク質をコードする遺伝子の転写を阻害するポリペプチドをコードすることによって間接的にSryポリペプチドの発現を阻害してよい。あるいは、Sryポリペプチドの活性は、Sryポリペプチドの活性を阻害するポリペプチドをコードする配列を細胞中に導入することによって低減または排除される。
【0235】
Sryタンパク質のレベル及び/または活性はまた、Sryタンパク質の活性及び/またはレベルを低減させる条件付きSry対立遺伝子の使用によって制御され得る。「条件付きSry対立遺伝子」は、所望の発達時点で、かつ/または所望の対象となる組織内においてSryタンパク質の減少したレベル及び/または活性を有するように設計された改変Sry遺伝子を含む。レベル及び/または活性の低減は、条件付き対立遺伝子を生じる改変を欠いている対照細胞と、または所望の発達時点における活性低減の場合、先行する、かつ/もしくは後続する時点と、または所望の組織の場合、全ての組織の平均活性と比較され得る。例えば、条件付きSry対立遺伝子は、所望の発達時点で、かつ/または特定の組織中で停止され得るSryの条件付きヌル対立遺伝子を含み得る。このような条件付き対立遺伝子は、任意の遺伝子標的クローンに由来する繁殖可能なXY雌を作製するために使用され得る。本明細書内の他の箇所に記載されるように、このような方法は、F1世代において所望のホモ接合遺伝子改変の作製を可能にする。このような方法は、F2世代まで交配させる必要なく、表現型の迅速な調査を提供する。
【0236】
条件付きSry対立遺伝子はまた、US2011/0104799に記載されているように多機能性対立遺伝子であり得、その全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる。例えば、このような条件付き対立遺伝子は、以下を含み得る:(a)標的遺伝子の転写に関するセンス配向における作動配列、及びセンスまたはアンチセンス配向における薬物選択カセット(DSC)、(b)アンチセンス配向における、対象となるヌクレオチド配列(NSI)及び反転モジュールによる条件付き(COIN)、これはエクソン分割イントロン及び反転可能な遺伝子トラップ様モジュールを利用する(例えば、US2011/0104799を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる)、ならびに(c)(i)作動配列及びDSCを欠き、(ii)センス配向にNSI及びアンチセンス配向にCOINを含有する条件付き対立遺伝子を形成するために、第1リコンビナーゼへの曝露時に組み換えられる組換え可能な単位。
【0237】
Sry遺伝子の条件付き対立遺伝子は、任意の細胞型で生成され得、XY多能性または全能性細胞に限定されない。このような細胞型は、Y染色体上のゲノム遺伝子座を標的とする非限定的な方法と共に、本明細書内の他の箇所でさらに詳しく述べられる。
【0238】
iv.組合せ
Y染色体の領域をサイレンシングするようにXY多能性または全能性動物細胞を改変するために提供される方法及び組成物は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中でXY多能性もしくは全能性動物細胞を培養することを伴う方法ならびに/またはSryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させるようにXY多能性もしくは全能性動物細胞を改変することを伴う方法と組み合わされ得る。同様に、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中でXY多能性または全能性動物細胞を培養することを伴う方法は、Y染色体の領域をサイレンシングするようにXY多能性もしくは全能性動物細胞を改変するために提供される方法及び組成物ならびに/またはSryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させるようにXY多能性もしくは全能性動物細胞を改変することを伴う方法と組み合わされ得る。XY多能性または全能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に対して少なくとも1つの追加の標的遺伝子改変をさらに含み得る。
【0239】
XY多能性または全能性細胞が雌化培地中で培養される方法では、細胞は、サイレンシングプロセス全体にわたって、またはサイレンシングプロセス全体のうち1つ以上の部分のみにおいて雌化培地中で培養され得る。すなわち、XY多能性または全能性細胞が雌化培地中で培養されて、Y染色体の領域が別のサイレンシングプロセスによってサイレンシングされる方法では、細胞は、サイレンシングプロセス全体にわたって、またはサイレンシングプロセス全体のうち1つ以上の部分のみにおいて雌化培地中で培養され得る。同様に、細胞は、サイレンシングプロセスの前に、かつ/またはその間に、かつ/またはその後に雌化培地中で培養され得る。雌化培地中で細胞を維持すること、ならびにSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させることの両方をさらに含む方法では、細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させるプロセス全体にわたって、またはそのプロセスのうち1つ以上の部分のみにおいて雌化培地中で培養され得る。同様に、細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるプロセスの前に、かつ/またはその間に、かつ/またはその後に雌化培地中で培養され得る。
【0240】
雌化培地中でXY多能性または全能性細胞を培養することを伴う方法との、いくつかのこのような組合せでは、XY多能性または全能性細胞は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で維持され得るが、Y染色体の領域のサイレンシングは、雌化培地中で細胞を維持すること以外の手段またはそれに加えた手段によって達成される。Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにXY多能性または全能性細胞を改変することを伴う方法との、いくつかのこのような組合せでは、Y染色体の領域のサイレンシングは、Sry遺伝子以外のY染色体の一部を含む領域のサイレンシングであり得る。
【0241】
一例では、Sry遺伝子は、Y染色体上における1つ以上の追加の遺伝子に加えてサイレンシングされる。機構の理解は実践に必要ではないが、Sryのサイレンシングは、このようなXY胚の性転換を増強し得(例えば、約11.0dpcでの生殖腺体細胞におけるサイレンシングによって)、Y染色体上における1つ以上のその他の遺伝子のサイレンシングは、性転換XY胚から生成されるXY雌の繁殖力及び/または妊孕力を増強し得る(例えば、約18.5dpc以上での卵母細胞におけるサイレンシングによって)。例えば、Zfy2及びSry遺伝子の両方が、サイレンシングされ得(例えば、C57BL系統、C57BL/6系統、もしくは129以外の系統からのマウスXY ES細胞、またはC57BL系統、C57BL/6系統、もしくは129以外の系統からのY染色体を有するマウスXY ES細胞において)、XY多能性または全能性動物細胞は、本明細書で開示される雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で場合により培養される。いくつかの方法では、Sryのサイレンシングは、XY胚の性転換を増強し得(例えば、約11.0dpcでの生殖腺体細胞におけるサイレンシングによって)、Zfy2のサイレンシングは、XY雌の繁殖力及び/または妊孕力を増強し得る(例えば、約18.5dpc以上での卵母細胞におけるサイレンシングによって)。
【0242】
このような組合せは、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能なF0 XY雌のより高いパーセンテージ、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌の一生涯における同腹仔のより高い平均数、及びF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌のより高い平均産子数をもたらし得る。このようなF0子孫は、本明細書内の他の箇所に開示される方法を使用した、宿主胚への細胞の導入及び宿主胚の懐胎後、ドナーXY多能性または全能性動物細胞から生成され得る。
【0243】
増加は、適切な対照物と比較した場合の、任意の統計的に有意な増加であり得る。例えば、増加は、適切な対照物と比較した場合、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍であり得る。
【0244】
例えば、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0245】
いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0246】
繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージはまた、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0247】
いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0248】
繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージはまた、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0249】
いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0250】
正常な同腹仔数及び/または正常な産子数(例えば、野生型雌動物と比較して)を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージはまた、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0251】
いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。同様に、いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0252】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数はまた、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。同様に、いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0253】
いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。同様に、いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0254】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数はまた、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。同様に、いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0255】
いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。同様に、いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0256】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数はまた、本明細書に開示される組合せを使用することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。同様に、いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させるようにさらに改変されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0257】
いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、適切な対照培地(例えば、DMEMに基づく培地)中で培養されるXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。同様に、いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されていないXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Y染色体の領域をサイレンシングするように改変され、かつ雌化培地中で培養されたドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0258】
B.インビトロ細胞培養物及び培養下で多能性または全能性細胞を培養して維持する方法
Y染色体の領域をサイレンシングするように改変されたドナーXY多能性または全能性細胞を含むインビトロ細胞培養物がさらに提供される。本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地中で培養されるドナーXY多能性または全能性を含むインビトロ細胞培養物もまた提供される。このような細胞を維持または培養するための方法及び組成物もまた提供される。細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変をさらに含み得る。同様に、XY多能性または全能性細胞は、標的ゲノム遺伝子座に対して少なくとも1つの追加の標的遺伝子改変をさらに含み得る。
【0259】
インビトロ培養物中でXY多能性または全能性細胞を維持または培養する方法が提供され、細胞は、本明細書に記載されるような雌化培地の存在下においてインビトロ培養物中で維持される。同様に、インビトロ培養物中でXY多能性または全能性細胞を維持または培養する方法が提供され、細胞は、Y染色体の領域をサイレンシングする改変を含み、細胞は、本明細書に記載される条件下においてインビトロ培養物中で維持される。インビトロ培養物中でXY多能性または全能性細胞を維持または培養するこのような方法は、宿主胚への非ヒト動物XY ES細胞の導入時、及び宿主胚の懐胎後、繁殖可能なXY F0雌動物数の増加を促進することなどである。
【0260】
本明細書に開示される任意の培地が、このような維持または培養方法のために用いられ得るが、1つの非限定的な例としては、培養下でXY多能性または全能性細胞を維持または培養するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で培養することが挙げられる。例えば、培地は、本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地(例えば、基本培地または基本培地及び添加物を含む培地が、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を示す低オスモル濃度培地)を含み得る。
【0261】
XY多能性または全能性細胞が雌化培地中で維持される時間は、変動し得る。例えば、XY多能性または全能性細胞は、宿主胚への導入前に約または少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、もしくは13日間、または2週間、3週間、もしくは4週間の間、培地中で維持され得る(例えば、宿主胚への導入前に約もしくは少なくとも3日間、約もしくは少なくとも1週間、または約もしくは少なくとも2〜4週間、培地中で維持される)。同様に、XY多能性または全能性細胞は、宿主胚への導入前に1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、もしくは13日間、または2週間、3週間、もしくは4週間以下の間、培地中で維持され得る。あるいは、XY多能性または全能性細胞は、雌化培地(例えば、繁殖可能なXY F0雌を促進する)中で維持(例えば、凍結)され得、次いで、雌化培地(例えば、繁殖可能なXY F0雌を促進する)中で解凍されて、XY多能性または全能性細胞が宿主胚に導入される前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、またはそれを超える日数の間、その培地中で維持され得る。同様に、XY多能性または全能性細胞は、雌化培地(例えば、繁殖可能なXY F0雌を促進する)中で維持(例えば、凍結)され得、次いで、雌化培地(例えば、繁殖可能なXY F0雌を促進する)中で解凍されて、XY多能性または全能性細胞が宿主胚に導入される前に1日間、2日間、3日間、4日間、またはそれを超える日数以下の間、その培地中で維持され得る。例えば、XY多能性または全能性細胞は、雌化培地中で少なくとも1回継代され得、その後、細胞が雌化培地中で凍結されて、その後、細胞が雌化培地中で解凍されて、宿主胚への導入前に約または少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、もしくは13日間、または2週間、3週間、もしくは4週間の間、成長させる。あるいは、XY多能性または全能性細胞は、雌化培地中で少なくとも1回継代され得、その後、細胞が雌化培地中で凍結されて、その後、細胞が雌化培地中で解凍されて、宿主胚への導入前に1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、もしくは13日間、または2週間、3週間、もしくは4週間以下の間、成長させる。
【0262】
いくつかの方法では、XY多能性または全能性細胞は、細胞を胚に注入するまで雌化培地中で培養または維持される。その他の方法では、XY多能性または全能性細胞が注入された胚は、代理母に移入されるまで雌化培地中で培養または維持される。
【0263】
C.F0世代において繁殖可能なXY雌を生成することができる胚
Y染色体の領域をサイレンシングするように改変された少なくとも1種の異種ドナー多能性または全能性XY細胞を有する内部細胞塊を含むF0胚がさらに提供される。同様に、本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地中で培養または維持された少なくとも1種の異種ドナー多能性または全能性XY細胞を有する内部細胞塊を含むF0胚がさらに提供される。異種ドナー多能性または全能性XY細胞は、本明細書に開示される方法によって生成され得る。異種ドナー多能性または全能性XY細胞は、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変をさらに含み得る。同様に、異種ドナー多能性または全能性XY細胞は、標的ゲノム遺伝子座に対して少なくとも1つの追加の標的遺伝子改変をさらに含み得る。
【0264】
このような胚は、ドナーXY多能性または全能性動物細胞を宿主胚に導入することによって生成され得る。例えば、胚は前桑実期胚であり得、胚は、ドナーXY多能性または全能性細胞の導入後に胚盤胞期まで培養され得る。ドナー動物XY多能性または全能性細胞が雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養される方法では、動物XY多能性または全能性細胞は、宿主胚に導入される前に、任意の時間で雌化培地中において維持され得る。例えば、動物XY多能性または全能性細胞は、宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、雌化培地中で維持され得る。あるいは、動物XY多能性または全能性細胞は、宿主胚への導入前に1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間以下の間、雌化培地中で維持され得る。
【0265】
一部のF0胚では、異種ドナー多能性もしくは全能性XY細胞及び/または宿主胚は、以下のうち1種以上に由来していない:Akodon属種、Myopus属種、Microtus属種、Talpa属種。同様に、いくつかの方法では、異種ドナー多能性もしくは全能性XY細胞及び/または宿主胚は、正常な野生型の特性がXY雌の繁殖力である任意の種に由来していない。異種ドナー多能性もしくは全能性細胞及び/または宿主胚が追加の遺伝子改変を含む、いくつかの方法では、遺伝子改変は、XYYもしくはXXY、Tdy陰性(すなわち、Sry陰性)性転換、Tdy陽性性転換、X0改変、異数性、Fgf9
−/−遺伝子型、またはSox9改変ではない。
【0266】
D.繁殖可能なF0 XY雌及びF1子孫を生成する方法
Y染色体の領域のサイレンシングを含む改変を有するXY多能性または全能性細胞を用いる様々な方法及び組成物が、標的ゲノム遺伝子座に対して追加の標的遺伝子改変を場合により含む繁殖可能なF0 XY雌動物を生成するために使用され得る。同様に、本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地中で培養または維持されるXY多能性または全能性細胞を用いる様々な方法及び組成物が、標的ゲノム遺伝子座に対して追加の標的遺伝子改変を場合により含む繁殖可能なF0 XY雌動物を生成するために使用され得る。例えば、本明細書に開示される方法によって生成されるF0 XY雌動物は、F1世代を生成するために野生型動物と交雑させた場合に繁殖可能であり得る。
【0267】
i.F0世代において繁殖可能な雌XY動物を作製する方法
F0世代において繁殖可能な雌XY動物を作製するための方法及び組成物が提供される。このような方法によって生成され、得られた繁殖可能な表現型的に雌のXY動物もまた提供される。F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を作製する方法は、(a)本明細書内の他の箇所に開示される改変ドナーXY多能性または全能性細胞(すなわち、F0世代において繁殖可能なXY雌を生成することができるドナーXY多能性または全能性細胞)のいずれかを宿主胚に導入すること、(b)ステップ(a)の宿主胚をレシピエント雌動物に導入して、宿主胚を懐胎させること、及び(c)表現型的に雌のXY動物を含むF0 XY動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY動物が繁殖可能になることを含み得る。F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を作製するその他の方法は、(a)本明細書内の他の箇所に開示される改変胚のいずれかをレシピエント雌動物に導入して、胚を懐胎させること、及び(b)表現型的に雌のXY動物を含むF0 XY動物子孫を得て、性成熟に達すると、F0の表現型的に雌のXY動物が繁殖可能になることを含み得る。
【0268】
胚に移植された細胞は「ドナー細胞」と称され得、細胞を受容した胚は「宿主胚」と称され得る。いくつかの方法では、ドナーXY多能性もしくは全能性細胞または宿主胚は、標的ゲノム遺伝子座に対して少なくとも1つの追加の標的遺伝子改変を含み得る。例えば、用いられるXY多能性または全能性細胞は、(1)Y染色体の領域をサイレンシングするための改変及び(2)1つ以上の標的ゲノム遺伝子座に対する1つ以上の追加の標的遺伝子改変を含み得る。このような改変は、本明細書内の他の箇所で詳細に開示される。本明細書内の他の箇所で概略が述べられるように、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれを超える追加の標的遺伝子改変が、XY多能性または全能性細胞で行われ得る。このような場合では、F0の繁殖可能な雌XY動物は、これらの追加の標的遺伝子改変のうち1つ以上を含み得る。遺伝子改変ゲノム遺伝子座を持つ動物は、本明細書に記載されるような対立遺伝子の改変(MOA)アッセイによって同定され得る。
【0269】
ドナーXY多能性または全能性細胞は、宿主胚と同じ系統に由来し得る、または宿主胚とは異なる系統に由来し得る。同様に、代理母は、ドナーXY多能性もしくは全能性細胞及び/もしくは宿主胚と同じ系統に由来し得る、または代理母は、ドナーXY多能性もしくは全能性細胞及び/もしくは宿主胚の系統とは異なる系統に由来し得る。
【0270】
XY多能性または全能性細胞の遺伝子型は、宿主胚の遺伝子型と同じ、または異なるものであり得る。例えば、XYドナー細胞は、XX宿主胚に移植され得る。
【0271】
様々な宿主胚が用いられ得る。XYドナー細胞は、例えば、2細胞期、4細胞期、8細胞期、16細胞期、32細胞期、または64細胞期の宿主胚に移植され得る。例えば、XY多能性または全能性細胞は、対応する生物からの前桑実期胚(例えば、8細胞期胚)中に導入され得る。例えば、US7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、及びUS2008−0078000A1を参照し、その各々全体が参照によって本明細書に組み込まれる。同様に、宿主胚は、例えば、胚盤胞、前胚盤胞胚、前桑実期、桑実期、非小型化桑実期、または小型化桑実期であり得る。あるいは、宿主胚は、凝集した桑実期宿主胚であり得る。マウスの場合には、宿主胚期は、Theiler(1989)“The House Mouse:Atlas of Mouse Development”,Springer−Verlag,New Yorkに記載されているタイラーステージを参照して、例えば、タイラーステージ1(TS1)、TS2、TS3、TS4、TS5、またはTS6胚であり得る(例えば、TS1、TS2、TS3、及びTS4から選択される)。宿主胚が透明帯を含む方法では、ドナー細胞(例えば、及びXY ES細胞)は、透明帯の穴を通して宿主胚に導入され得る。透明帯のない胚も使用され得る。
【0272】
いくつかの方法では、ドナー多能性もしくは全能性細胞及び/または宿主胚は、以下のうち1種以上に由来していない:Akodon属種、Myopus属種、Microtus属種、Talpa属種。同様に、いくつかの方法では、ドナー細胞及び/または宿主胚は、正常な野生型の特性がXY雌の繁殖力である任意の種に由来していない。ドナー細胞及び/または宿主胚が追加の遺伝子改変を含む、いくつかの方法では、遺伝子改変は、XYYもしくはXXY、Tdy陰性(すなわち、Sry陰性)性転換、Tdy陽性性転換、X0改変、異数性、Fgf9
−/−遺伝子型、またはSox9改変ではない。
【0273】
核移植技術もまた、動物を生成するために使用され得る。簡潔に述べると、核移植の方法は、以下のステップを含み得る:(1)卵母細胞を除核すること、(2)除核卵母細胞と組み合わせるためにドナー細胞または核を単離すること、(3)細胞または核を除核卵母細胞に挿入して、再構成細胞を形成すること、(4)再構成細胞を動物の子宮に移植して、胚を形成すること、及び(5)胚を発達させること。このような方法では、卵母細胞は一般に死亡動物から回収されるが、それらはまた、生存動物の卵管及び/または卵巣のいずれかから単離されてもよい。卵母細胞は、除核前に当業者に既知の様々な培地中で成熟させられ得る。卵母細胞の除核は、当業者に周知の多数の手法で実施され得る。再構成細胞を形成するための除核卵母細胞へのドナー細胞または核の挿入は、通常、融合前の透明帯下におけるドナー細胞のマイクロインジェクションによるものである。融合は、接触/融合面(電気融合)に対するDC電気パルスの印加によって、ポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質への細胞の曝露によって、またはセンダイウイルスなどの不活化ウイルスによって誘導されてよい。再構成細胞は、典型的には、核ドナー及びレシピエント卵母細胞の融合前、融合中、及び/または融合後に電気的及び/または非電気的手段によって活性化される。活性化方法としては、電気パルス、化学的誘導ショック、精子による侵入、卵母細胞中の二価カチオンのレベル増加、及び卵母細胞中の(キナーゼ阻害剤によるような)細胞タンパク質のリン酸化低減が挙げられる。活性化再構成細胞、または胚は、典型的には当業者に周知の培地中で培養され、次いで、動物の子宮に移入される。例えば、US2008/0092249、WO1999/005266A2、US2004/0177390、WO2008/017234A1、及び米国特許第7,612,250号明細書を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0274】
ドナーXY多能性または全能性細胞を含む宿主胚は、胚盤胞期までインキュベートされ、次いで、代理母に移植されてF0動物を生成し得る。次いで、宿主胚は代理母内で懐胎され得る。
【0275】
いくつかの方法では、ドナーXY多能性または全能性細胞を含む宿主胚は、好適な宿主への移植前に1日間、2日間、3日間、もしくは4日間またはそれを超える日数にわたって、繁殖可能なXY雌ES細胞の発達を促進する雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地または低塩基本培地)中で維持され得る。あるいは、ドナーXY多能性または全能性細胞を含む宿主胚は、好適な宿主への移植前に少なくとも1日間、2日間、3日間、もしくは4日間もしくはそれを超える日数または1日間、2日間、3日間、もしくは4日間もしくはそれを超える日数以下にわたって、繁殖可能なXY雌ES細胞の発達を促進する雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地または低塩基本培地)中で維持され得る。提供されるこのような方法は、繁殖可能なF0の雌動物の生成を促進し得る。
【0276】
いくつかの方法では、宿主胚へのドナー非ヒト動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞またはXY iPS細胞)の導入及び宿主胚の懐胎時に、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または全てのF0子孫またはF0 XY子孫が、表現型的に雌のXY動物である。
【0277】
これらの方法によって生成されるF0 XY雌動物の繁殖力及び妊孕力は、野生型XX雌動物と同等であり得る。いくつかの方法では、宿主胚へのドナー非ヒト動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞またはXY iPS細胞)の導入及び宿主胚の懐胎時に、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または全てのF0子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY動物である。
【0278】
いくつかの方法では、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全てのF0 XY子孫が、性成熟に達すると繁殖可能になる表現型的に雌のXY動物である。
【0279】
いくつかの方法では、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全ての、ドナーXY多能性または全能性細胞に由来するF0雌が、XY遺伝子型を有する。
【0280】
いくつかの方法では、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全ての、ドナーXY多能性または全能性細胞に由来するF0雌が、繁殖可能である。
【0281】
いくつかの方法では、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全ての、ドナーXY多能性または全能性細胞に由来するF0雌が、野生型XX雌マウスと同等の同腹仔数及び/または一腹当たりの仔数及び/または一生涯における子孫数を産生することができる。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌非ヒト動物は、その生涯の間に1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生し得る(例えば、2〜6匹の同腹仔)。いくつかの方法では、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全ての、ドナーXY多能性または全能性細胞に由来するF0雌が、それらの生涯において1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の同腹仔を産生することができる(例えば、2〜6匹の同腹仔)。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌非ヒト動物は、一腹当たり少なくとも1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の子孫(すなわち、仔)を産生し得る(例えば、一腹当たり4〜6匹の子孫)。いくつかの方法では、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全ての、ドナーXY多能性または全能性細胞に由来するF0雌が、一腹当たり少なくとも1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、8匹、9匹、または10匹の子孫(すなわち、仔)を有する同腹仔を産生することができる(例えば、一腹当たり4〜6匹の子孫)。例えば、繁殖可能なF0 XY雌非ヒト動物は、2〜6匹の同腹仔を産生し得、各同腹仔は、少なくとも2匹、3匹、4匹、5匹、または6匹の子孫を有する。いくつかの方法では、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または100%の子孫が、繁殖可能なXY雌子孫である(例えば、15%〜25%の子孫が繁殖可能なXY雌子孫である)。
【0282】
その他の実施形態では、このような方法から生成されるF0子孫は、約3%、約10%以上、または約63%以上ドナーXY多能性または全能性細胞に由来する。
【0283】
本明細書で提供される方法及び組成物は、少なくとも1%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%またはそれを超えるF0動物が、F1子孫に遺伝子改変を伝達するために、標的遺伝子改変(例えば、Y染色体の領域のサイレンシングをもたらす標的遺伝子改変及び/または別の標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変)を有することを可能にする。
【0284】
いくつかの方法では、1匹以上のF0世代雌XY非ヒト動物(例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全てのF0世代雌XY非ヒト動物)は、少なくとも90%、92%、94%、96%、98%、99%、または99.8%ドナーXY多能性または全能性細胞に由来する。例えば、1匹以上のF0雌XY非ヒト動物は、ドナーXY多能性または全能性細胞に100%由来する毛色を有し得る。F0世代における非ヒト雌XY動物に対する宿主胚細胞の寄与は、例えば、2,000分の1細胞(0.05%)を検出することができる定量アッセイによって決定され得、雌XY動物の組織には、宿主胚細胞の寄与について陽性であるものは一切ない。
【0285】
ii.繁殖可能な雌XY F0世代を交配させる方法
いくつかの方法では、Y染色体の領域をサイレンシングする遺伝子改変を有するXY多能性または全能性細胞(すなわち、XY ES細胞またはXY iPS細胞)に由来する、得られた繁殖可能なXY雌F0世代を動物と交雑させて、F1世代子孫を得る。F0世代雌XY非ヒト動物は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または完全にドナーXY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)に由来し得る。
【0286】
同様に、本明細書に開示される任意のその他の方法による(例えば、本明細書内の他の箇所に開示されるような低オスモル濃度培地またはその他の雌化培地の使用によって)XY多能性または全能性細胞に由来する、得られた繁殖可能なXY雌F0世代を動物と交雑させて、F1世代子孫を得ることができる。F0世代雌XY非ヒト動物は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または完全にドナーXY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)に由来し得る。子孫(例えば、F1子孫及び/または子孫のうち任意の、もしくは全てのその他の世代)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または全てのXY子孫が、正常な雄の表現型を有する、または正常な雄の表現型を有し、かつ繁殖可能であるようにし得る。いくつかの場合には、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、または0%のXY子孫(例えば、F1子孫及び/または子孫のうち任意の、もしくは全てのその他の世代)が、表現型的に雌である。いくつかの場合には、全てのXY子孫(例えば、F1子孫及び/または子孫のうち任意の、もしくは全てのその他の世代)が、正常な雄の表現型を有する、または正常な雄の表現型を有し、かつ繁殖可能である。いくつかの場合には、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または全ての子孫が、遺伝子型(すなわち、XYまたはXX)に基づいて予想された性表現型(すなわち、雄または雌)を有する。
【0287】
F0世代雌XY非ヒト動物が交配され得る非ヒト動物は、これもまた、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または完全にドナーXY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)に由来する雄XY非ヒト動物であり得る。例えば、F0雌XY非ヒト動物及び/または雄XY非ヒト動物は、ドナーXY多能性または全能性細胞に100%由来する毛色を有し得る。F1世代子孫を得るために使用される交配対は各々、同じF0世代においてドナーXY多能性または全能性細胞(例えば、ES細胞またはiPS細胞)に完全に由来し得る。例えば、F0 XY雄は、繁殖可能なF0 XY雌と同じXY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)クローンに由来するコホートクローン兄弟であり得る。次いで、F1世代子孫は、ドナーES細胞に完全に由来するゲノムを含み得る。いくつかの場合には、完全にES細胞由来のマウスを生じるF0世代雄及びF0世代雌マウスの交雑頻度は、100%である。
【0288】
F1子孫は、Y染色体の領域のサイレンシングを含む標的遺伝子改変が存在するかどうかを決定するために特異的プライマー及び/またはプローブを使用して、その遺伝子型が同定され得る。追加の標的遺伝子改変がF0世代中に存在した場合(例えば、Sryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させる改変、または標的ゲノム遺伝子座に対する1つ以上の追加の標的遺伝子改変)、F1子孫は、このような改変が存在するかどうかを決定する特異的プライマー及び/またはプローブを使用して、その遺伝子型が同定され得る。次いで、所望の使用のために適切なF1子孫が同定され得る。例えば、Y染色体の領域のサイレンシングを含む遺伝子改変を欠いているF1子孫が選択され得る、またはYの領域のサイレンシングを含む遺伝子改変を欠いているが、標的ゲノム遺伝子座に対して少なくとも1つの追加の標的遺伝子改変を含むF1子孫が選択され得る。特異的プライマー及び/またはプローブで遺伝子型を同定した後、標的ゲノム遺伝子座に対する追加の標的遺伝子改変についてヘテロ接合体であり、Y染色体の領域のサイレンシングを含む遺伝子改変を欠いているF1動物を互いに交雑させ得る。このような交雑によって、対象となる遺伝子改変ゲノム遺伝子座についてホモ接合体であり、Y染色体の領域をサイレンシングするための遺伝子改変を含まないF2子孫が生成される。
【0289】
F1世代において標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変についてホモ接合体のトランスジェニック非ヒト動物を生成する方法がさらに提供される。本方法は、(a)Y染色体の領域のサイレンシングを含む改変を有する繁殖可能なF0 XY雌非ヒト動物を、F0 XY雄非ヒト動物と交雑させて、ここで繁殖可能なF0 XY雌非ヒト動物及びF0 XY雄非ヒト動物が各々、標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変についてヘテロ接合体であること、ならびに(b)標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変についてホモ接合体であるF1子孫を得ることを含む。いくつかの方法では、F0 XY雄は、繁殖可能なF0 XY雌と同じ多能性または全能性細胞クローンに由来するコホートクローン兄弟である。例えば、標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変についてホモ接合体であるが、Y染色体の領域をサイレンシングする改変を欠いているF1子孫が選択され得る。繁殖可能なF0 XY雌が、Sryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変をさらに含む場合、標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変についてホモ接合体であるが、Y染色体の領域をサイレンシングする改変ならびにSryタンパク質のレベル及び/または活性を減少させる改変の一方または両方を欠いているF1子孫が選択され得る。
【0290】
E.標的遺伝子改変を作製する方法
標的遺伝子改変(例えば、Y染色体の領域をサイレンシングする、Sryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させる、または本明細書内の他の箇所に開示されるような任意の追加の標的ゲノム遺伝子座を改変する)を作製するための様々な方法及び組成物が使用され得る。標的遺伝子改変を作製する1つの手段は組換えによるものであり、これは2つのポリヌクレオチド間における遺伝情報の交換という任意のプロセスを含む。二本鎖切断(DSB)に応答する組換えは、主として2つの保存されたDNA修復経路:すなわち、非相同末端結合(NHEJ)及び相同組換え(HR)によって生じる。Kasparek&Humphrey(2011)Seminars in Cell&Dev.Biol.22:886−897を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。NHEJは、相同鋳型の必要なく、切断末端を互いに直接連結することによる核酸の二本鎖切断の修復を含む。NHEJによる不連続配列の連結によって、多くの場合に二本鎖切断部位の近傍に欠失、挿入、または転座がもたらされ得る。このようなシステムは、例えば、標的機能喪失遺伝子改変の生成に用途を見出す。
【0291】
組換えはまた、相同組換え修復(HDR)または相同組換え(HR)によって生じ得る。HDRまたはHRは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし得る核酸修復の形態を含み、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経た分子)の鋳型修復に「ドナー」分子を使用して、ドナーから標的に遺伝情報の移動をもたらす。任意の特定の理論に束縛されることを望むものではないが、このような移動は、切断された標的とドナーとの間で形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、及び/または標的の一部となることになる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される合成依存性鎖アニーリング、及び/または関連プロセスを伴い得る。いくつかの場合には、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部は、標的DNA中に組み込まれる。このような標的遺伝子改変を生成する非限定的な方法は、本明細書内の他の箇所で詳細に述べられ、例えば、標的化プラスミド、小さな標的化ベクター(smallTVEC)、または大きな標的化ベクターの使用を含む。また、Wang et al.(2013)Cell 153:910−918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1−9、及びWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530−532も参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0292】
標的遺伝子改変を作製する方法は、例えば、標的化ベクター(例えば、smallTVECまたはLTVEC)を、単独でまたは本明細書内の他の箇所に記載されるような1種以上のヌクレアーゼと組み合わせたいずれかで使用することを含み得る。例えば、US2015/0159175、US2015/0159174、US2014/0310828、US2014/0309487、及びUS2013−0309670を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。同様に、標的遺伝子改変を作製する方法は、1種以上のヌクレアーゼを、単独でまたは標的化ベクターと組み合わせたいずれかで使用することを含み得る。
【0293】
例えば、細胞において標的ゲノム遺伝子座(例えば、Y染色体上の)を改変するための方法が提供され、本方法は以下を含む:(a)細胞に、標的ゲノム遺伝子座の、またはその近傍の認識部位に1つ以上のニックまたは二本鎖切断を誘導する1種以上のヌクレアーゼ剤を導入すること、及び(b)細胞のゲノム中、標的ゲノム遺伝子座に改変を含む少なくとも1種の細胞を同定すること。
【0294】
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を改変するその他の方法は、以下を含む:(a)細胞に、5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’相同腕に隣接する挿入ポリヌクレオチドを含む標的化ベクターを導入すること、ならびに(b)細胞のゲノム中、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた挿入ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種の細胞を同定すること。
【0295】
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を改変するその他の方法は、以下を含む:(a)細胞に、以下を導入すること、(i)ヌクレアーゼ剤、ここでヌクレアーゼ剤は、標的ゲノム遺伝子座内の認識部位にニックまたは二本鎖切断を誘導する、ならびに(ii)認識部位に十分に近接して位置する5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’相同腕に隣接する挿入核酸を含む標的化ベクター、ならびに(c)標的ゲノム遺伝子座に改変(例えば、挿入核酸の組込み)を含む少なくとも1種の細胞を同定すること。
【0296】
Y染色体の領域をサイレンシングする標的遺伝子改変ならびに任意のその他の標的遺伝子改変(例えば、Sryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させる改変、または任意の標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変)は、多能性または全能性XY細胞が、本明細書内の他の箇所に開示される雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)(例えば、繁殖可能なXY F0雌の発達を促進する培地)中で維持されている間に生じ得る。あるいは、Y染色体の領域をサイレンシングする標的遺伝子改変及び/または任意のその他の標的ゲノム遺伝子座における標的遺伝子改変は、多能性または全能性XY細胞が、異なる培養培地中で維持されている間に生じ得る。場合により、細胞は、続いて本明細書内の他の箇所に開示される雌化培養培地(例えば、低オスモル濃度培地)(例えば、繁殖可能なXY F0雌の発達を促進する培地)に移され得る。
【0297】
Y染色体の領域をサイレンシングする標的遺伝子改変ならびに任意のその他の標的遺伝子改変(例えば、Sryタンパク質のレベル及び/もしくは活性を減少させる改変、または任意のその他の標的ゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変)は、同時にまたは連続して導入され得る。
【0298】
i.ヌクレアーゼ剤
所望の認識部位にニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤が、本明細書に開示される方法及び組成物で使用され得る。天然に存在する、もしくは天然ヌクレアーゼ剤が用いられ得る、または改変もしくは操作ヌクレアーゼ剤(例えば、所望の認識部位におけるニックもしくは二本鎖切断を特異的に認識して誘導するために、その天然型から操作される(改変もしくは誘導される)ヌクレアーゼ)が用いられ得る。
【0299】
1種のヌクレアーゼ剤は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。TALエフェクターヌクレアーゼは、天然もしくは操作転写活性化因子様(TAL)エフェクター、またはその機能部分を、例えば、FokIなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに融合させることによって作製される。WO2010/079430、Morbitzer et al.(2010)PNAS 10.1073/pnas.1013133107、Scholze&Boch(2010)Virulence 1:428−432、Christian et al.Genetics(2010)186:757−761、Li et al.(2010)Nuc.Acids Res.(2010)doi:10.1093/nar/gkq704、及びMiller et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143−148を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。好適なTALヌクレアーゼの例、及び好適なTALヌクレアーゼを調製する方法は、例えば、US2011/0239315A1、US2011/0269234A1、US2011/0145940A1、US2003/0232410A1、US2005/0208489A1、US2005/0026157A1、US2005/0064474A1、US2006/0188987A1、及びUS2006/0063231A1に開示され、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0300】
別の種類のヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。一部のZFNでは、ZFNの各モノマーは、3つ以上のジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含み、各ジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインは、3bpのサブサイトに結合する。その他のZFNでは、ZFNは、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立ヌクレアーゼに機能的に連結されるジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は、第1ZFN及び第2ZFNを含み得、第1ZFN及び第2ZFNの各々は、FokIヌクレアーゼサブユニットに機能的に連結され、第1及び第2ZFNは、約5〜7bpスペーサーによって分離される標的DNA配列の各鎖において2つの隣接標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、二本鎖切断を行う活性ヌクレアーゼを作製する。例えば、US20060246567、US20080182332、US20020081614、US20030021776、WO/2002/057308A2、US20130123484、US20100291048、WO/2011/017293A2、及びGaj et al.(2013)Trends in Biotechnology,31(7):397−405を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0301】
別の種類のヌクレアーゼ剤は、メガヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づく4つのファミリーに分類されていて、このファミリーは、LAGLIDADG、GIY−YIG、H−N−H、及びHis−Cysボックスファミリーである。これらのモチーフは、金属イオンの配位及びホスホジエステル結合の加水分解に関与する。メガヌクレアーゼは、それらの長い認識部位、及びそれらのDNA基質におけるいくつかの配列多型に対する耐性が注目すべき点である。メガヌクレアーゼドメイン、構造及び機能が知られている。例えば、Guhan and Muniyappa(2003)Crit Rev Biochem Mol Biol 38:199−248、Lucas et al.,(2001)Nucleic Acids Res 29:960−9、Jurica and Stoddard,(1999)Cell Mol Life Sci 55:1304−26、Stoddard,(2006)Q Rev Biophys 38:49−95、及びMoure et al.,(2002)Nat Struct Biol 9:764を参照のこと。
【0302】
ヌクレアーゼ剤は制限エンドヌクレアーゼをさらに含み得、これはI型、II型、III型、及びIV型エンドヌクレアーゼを含む。I型及びIII型制限エンドヌクレアーゼは、特異的認識部位を認識するが、典型的には、ヌクレアーゼ結合部位からの可変位置で切断し、これは切断部位(認識部位)から離れた数百もの塩基対であり得る。II型系では、制限活性はいずれのメチラーゼ活性にも依存せず、切断は、典型的には結合部位内またはその近傍の特定部位で生じる。大半のII型酵素が回文配列を切り離すが、IIa型酵素は非回文認識部位を認識して、認識部位の外側で切断し、IIb型酵素は認識部位の外側両方の部位で配列を2回切り離し、IIs型酵素は非対称認識部位を認識し、片側で、かつ認識部位から約1〜20ヌクレオチドの規定の距離で切断する。IV型制限酵素は、メチル化DNAを標的とする。制限酵素は、例えば、REBASEデータベース(rebase.neb.comのウェブページ、Roberts et al.,(2003)Nucleic Acids Res 31:418−20)、Roberts et al.,(2003)Nucleic Acids Res 31:1805−12、及びBelfort et al.,(2002)in Mobile DNA II,pp.761−783,Eds.Craigie et al.,(ASM Press,Washington,DC)でさらに記載かつ分類されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0303】
ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系またはこのような系の成分をさらに含み得る。CRISPR/Cas系は、Cas遺伝子の発現に関与する、またはその活性を誘導する転写物及びその他の要素を含む。CRISPR/Cas系は、核酸の部位特異的切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合化されたガイドRNA(gRNA)を含む)を利用する。例えば、WO/2013/176772A1、WO/2014/065596A1、WO/2014/089290A1、WO/2014/093622A2、WO/2014/099750A2、WO/2013142578A1、WO2014/131833A1、US2015/0159175、US2015/0159174、US2014/0310828、及びUS2014/0309487を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0304】
Cas9などのCasタンパク質は一般に、ガイドRNA(gRNA)と相互作用する少なくとも1つのRNA認識または結合ドメイン、及び1つ以上のヌクレアーゼドメインを含む。Casタンパク質は融合タンパク質でもあり得、例えば、遺伝子の転写または発現を制御する。例えば、Casタンパク質は、切断ドメイン、エピジェネティック改変ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写リプレッサードメインに融合され得る。WO2014/089290を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。Cas9ファミリーメンバーの例は、WO2014/131833に記載されていて、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0305】
「ガイドRNA」または「gRNA」は、Casタンパク質に結合し、Casタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子を含む。ガイドRNAは、2つのセグメント、すなわち「DNA標的化セグメント」及び「タンパク質結合セグメント」を含み得る。一部のgRNAは、2つの別個のRNA分子を含む:(1)「アクチベーターRNA」(「トランス活性化CRISPR RNA」または「tracrRNA」または「足場」)、及び(2)「ターゲッターRNA」(「CRISPR RNA」または「ターゲッターRNA」または「crRNA」または「crRNA反復」)。crRNAは、gRNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)及びgRNAのタンパク質結合セグメントにおけるdsRNA二本鎖のうち半分を形成するヌクレオチドのストレッチの両方を含む。対応するtracrRNA(アクチベーターRNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントにおけるdsRNA二本鎖のうち他方の半分を形成するヌクレオチドのストレッチを含む。crRNAのヌクレオチドのストレッチは、tracrRNAのヌクレオチドのストレッチに相補的であり、それとハイブリダイズしてgRNAのタンパク質結合ドメインにおけるdsRNA二本鎖を形成する。したがって、各crRNAは、対応するtracrRNAを有すると言われ得る。
【0306】
その他のgRNAは、単一RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)であり、これは「単一分子gRNA」、「単一ガイドRNA」、または「sgRNA」とも呼ばれ得る。例えば、WO/2013/176772A1、WO/2014/065596A1、WO/2014/089290A1、WO/2014/093622A2、WO/2014/099750A2、WO/2013142578A1、及びWO2014/131833A1を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。「ガイドRNA」及び「gRNA」という用語は、二重分子gRNA及び単一分子gRNAの両方を含む。
【0307】
crRNA及び対応するtracrRNAは、ハイブリダイズしてgRNAを形成する。crRNAは、標的DNAのCRISPR RNA認識配列にハイブリダイズする一本鎖DNA標的化セグメントをさらに提供する。例えば、Mali et al.(2013)Science 339:823−826、Jinek et al.(2012)Science 337:816−821、Hwang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:227−229、Jiang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:233−239、及びCong et al.(2013)Science 339:819−823を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。Cas9による標的DNAの部位特異的切断は、標的DNA中における(i)gRNAと標的DNAとの間の塩基対合相補性及び(ii)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフの両方によって決定される位置で生じ得る。PAMは、CRISPR RNA認識配列に隣接し得る。
【0308】
ii.標的化ベクター
標的化ベクターは、核酸インサートをゲノム標的遺伝子座中に導入して、核酸インサート及び核酸インサートに隣接する相同腕を含むために用いられ得る。標的化ベクターは、線状形態または環状形態であり得、一本鎖または二本鎖であり得る。参照を容易にするために、相同腕は、本明細書において5’及び3’(すなわち、上流及び下流)相同腕と称される。本用語は、標的化ベクター内の核酸インサートに対する相同腕の相対位置に関する。5’及び3’相同腕は、標的遺伝子座内の領域に対応し、これらは本明細書においてそれぞれ「5’標的配列」及び「3’標的配列」と称される。
【0309】
核酸インサートは、ゲノム標的遺伝子座に組み込まれることになるDNAのセグメントを含む。標的遺伝子座における核酸インサートの組込みは、標的遺伝子座への対象となる核酸配列の付加、標的遺伝子座における対象となる核酸配列の欠失、及び/または標的遺伝子座における対象となる核酸配列の置換えをもたらし得る。さらに、核酸インサートまたは置き換えられる標的遺伝子座の対応する核酸は、任意の所望の長さ、例えば、約10ヌクレオチド長〜約500kb長またはそれを超える長さを含むものであり得る。
【0310】
核酸インサートは、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド、レポーター遺伝子、または1つ以上の発現カセットもしくは欠失カセットを含み得る。所与のカセットは、発現に影響を与える様々な調節成分と共に、対象となるヌクレオチド配列、選択マーカーをコードする核酸、及び/またはレポーター遺伝子を含み得る。
【0311】
挿入核酸は、部位特異的組換え標的配列(例えば、loxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、lox5171、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、FRT、rox)と隣接する核酸を含み得る。挿入核酸の全体が、このような部位特異的組換え標的配列に隣接し得る、または挿入核酸内の対象となる任意の領域もしくは個々のポリヌクレオチドが、このような部位に隣接し得る。例えば、部位特異的組換え部位は、挿入核酸内に含有される選択マーカーをコードするポリヌクレオチド及び/またはレポーター遺伝子に隣接し得る。標的遺伝子座における挿入核酸の組込み後、部位特異的組換え部位間の配列は除去され得る。
【0312】
相同腕及び標的配列は、2つの領域が相同組換え反応の基質として機能するために、互いに十分なレベルの配列同一性を共有する場合、互いに「対応する」または「対応している」。「相同性」という用語は、対応する配列と同一である、またはそれと配列同一性を共有するかのいずれかであるDNA配列を含む。所与の標的配列と標的化ベクター上で見られる対応する相同腕との間の配列同一性は、相同組換えが生じることを可能にする任意の程度の配列同一性であり得る。さらに、相同腕と、対応する標的配列との間における相同性の対応する領域は、切断された認識部位における相同組換えを促進するのに十分な任意の長さであり得る。例えば、所与の相同腕及び/または対応する標的配列は、相同腕が、細胞のゲノム内における対応する標的配列と相同組換えを行うのに十分な相同性を有するように例えば、約5kb〜約300kb長またはそれを超える、相同性の対応する領域を含み得る。
【0313】
ヌクレアーゼ剤(例えば、CRISPR/Cas系)は、標的遺伝子座の改変に役立つように標的化ベクターと組み合わせて用いられ得る。このようなヌクレアーゼ剤は、標的化ベクターと標的遺伝子座との間の相同組換えを促進する場合がある。ヌクレアーゼ剤が標的化ベクターと組み合わせて用いられる場合、標的化ベクターは、ヌクレアーゼ切断部位におけるニックまたは二本鎖切断上で標的配列と相同腕との間の相同組換え事象の発生を促進するように、ヌクレアーゼ切断部位に十分に近接して位置する5’及び3’標的配列に対応する5’及び3’相同腕を含み得る。標的化ベクターの5’及び3’相同腕に対応する標的遺伝子座内の標的配列は、距離が、認識部位におけるニックまたは二本鎖切断上で5’及び3’標的配列と相同腕との間の相同組換え事象の発生を促進するような場合、ヌクレアーゼ切断部位に「十分に近接して位置」する。
【0314】
標的化ベクター(例えば、大きな標的化ベクター(LTVEC)または小さな標的化ベクター(smallTVEC)を含む)とヌクレアーゼ剤との併用は、標的化ベクター単独での使用と比較して、標的化効率の向上をもたらし得る。
【0315】
1.小さな標的化ベクター(SmallTVEC)
いくつかの方法は、小さな標的化ベクターまたはsmallTVECを利用する。Y染色体に対して標的遺伝子改変を作製するためにsmallTVECを使用する例は、例えば、WO2015/200805及びUS2015/0376651に開示されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって組み込まれる。「smallTVEC」は、短い相同腕を含む標的化ベクターを含む。smallTVEC上の相同腕の長さは、例えば、約400bp〜約1000bpであり得る。smallTVECの相同腕は、対応する標的部位との相同組換え事象を促進するのに十分な任意の長さ、例えば、約400bp〜約500bp、約500bp〜約600bp、約600bp〜約700bp、約700bp〜約800bp、約800bp〜約900bp、または約900bp〜約1000bpを含む長さであり得る。smallTVEC上の相同腕の好ましい長さは、約700bp〜約800bpである。smallTVECの5’及び3’相同腕の合計は、例えば、約0.5kb〜約10kbであり得る。このような方法では、短い長さの相同腕は、より長い相同腕を有する標的化ベクターと比較した場合、標的化効率を向上させ得る。高頻度反復配列を有するY染色体の性質によって、smallTVECの短腕は、Y染色体上における高度に特異的な標的化を可能にし得る。
【0316】
2.大きな標的化ベクター(LTVEC)
一部の標的化ベクターは、「大きな標的化ベクター」または「LTVEC」であり、これは、細胞中で相同組換えを実施することを目的とするその他の手法で典型的には使用される配列よりも大きな核酸配列に対応し、かつそれらに由来する相同腕を含む標的化ベクターを含む。LTVECを使用して標的遺伝子改変を生成する例は、例えば、WO2015/088643、US2015/0159175、US2015/0159174、US2014/0310828、US2014/0309487、及びUS2013−0309670に開示されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。LTVECは、細胞中で相同組換えを実施することを目的とするその他の手法で典型的には使用される配列よりも大きな核酸配列を有する核酸インサートを含む標的化ベクターも含む。例えば、LTVECは、従来のプラスミドに基づく標的化ベクターではそれらのサイズ制限のために収容できない大きな遺伝子座の改変を可能にする。例えば、標的遺伝子座は、ヌクレアーゼ剤(例えば、Casタンパク質)によって誘導されるニックまたは二本鎖切断の不存在下では、従来の方法を使用しても標的化できない、または不正確にしか、もしくは大幅に低い効率でしか標的とされ得ない細胞の遺伝子座であり得る(すなわち、5’及び3’相同腕がこの遺伝子座に対応し得る)。
【0317】
LTVECの例としては、細菌人工染色体(BAC)、ヒト人工染色体、または酵母人工染色体(YAC)に由来するベクターが挙げられる。LTVEC及びそれらを作製する方法の非限定的な例は、例えば、米国特許第6,586,251号明細書、米国特許第6,596,541号明細書、米国特許第7,105,348号明細書、及びWO2002/036789に記載されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。LTVECは、線状形態または環状形態であり得る。
【0318】
LTVECは任意の長さ、例えば、少なくとも10kbまたは約50kb〜約400kbまたはそれを超える長さを含むものであり得る。LTVECのサイズは、従来のアッセイ、例えば、サザンブロッティング及び長距離(例えば、1kb〜5kb)PCRによる標的化事象のスクリーニングを可能にするには大きすぎる可能性がある。5’相同腕及び3’相同腕の合計は、例えば、少なくとも10kbであり得る(各相同腕は、例えば、約5kb〜約200kbの範囲であり得る)。LTVEC及び核酸インサートは、ある長さ、例えば、約5kb〜約3Mb(例えば、約500kb以上)の標的遺伝子座における欠失を可能にするように設計され得る。同様に、LTVEC及び核酸インサートは、ある長さ、例えば、約5kb〜約400kbまたはそれを超える範囲の、外来核酸配列における標的遺伝子座への挿入を可能にするように設計され得る。
【0319】
iii.細胞中への成分の導入
細胞中への核酸の導入を可能にする様々な方法及び組成物が、本明細書で提供される。いくつかの場合には、核酸を導入するために用いられるシステムは、特定のゲノム遺伝子座における標的組込みを可能にする。このようなシステムは様々な成分を用いて、参照を容易にするために、「標的ゲノム組込みシステム」という用語は一般に、組込み事象に必要な全ての成分(例えば、ヌクレアーゼ剤、ヌクレアーゼ切断部位、挿入DNAポリヌクレオチド、標的化ベクター、標的ゲノム遺伝子座、及び対象となるポリヌクレオチドのうち1つ以上)を含む。
【0320】
本明細書で提供される方法は、標的ゲノム組込みシステムの1つ以上の成分を含む1種以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド構築物を細胞に導入することを含み得る。「導入すること」は、配列(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)が細胞の内部に到達するような手法で細胞に配列を付与することを含む。本明細書で提供される方法は、核酸またはタンパク質が少なくとも1種の細胞内部に到達するのであれば、細胞に核酸またはタンパク質を導入する特定の方法に依存しない。様々な細胞型に核酸及びタンパク質を導入する方法は、当該技術分野において既知であり、これらとしては、例えば、安定したトランスフェクション法、一過性トランスフェクション法、及びウイルス媒介法が挙げられる。
【0321】
トランスフェクションプロトコールに加えて、細胞にポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を導入するためのプロトコールは、変動する場合がある。非限定的なトランスフェクション法としては、リポソーム、ナノ粒子、リン酸カルシウム(Graham et al.(1973)Virology 52(2):456−67、Bacchetti et al.(1977)Proc Natl Acad Sci USA 74(4):1590−4、及びKriegler,M(1991).Transfer and Expression:A Laboratory Manual.New York:W.H.Freeman and Company.pp.96−97)、デンドリマー、またはDEAE−デキストランもしくはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーを使用する化学物質に基づくトランスフェクション法が挙げられる。非化学的方法としては、エレクトロポレーション法、ソノポレーション法、及び光学的トランスフェクションが挙げられる。粒子に基づくトランスフェクションとしては、遺伝子銃の使用、または磁気補助トランスフェクション(Bertram(2006)Current Pharmaceutical Biotechnology 7,277−28)が挙げられる。ウイルス法もまた、トランスフェクションに使用され得る。
【0322】
いくつかの場合には、細胞への核酸またはタンパク質の導入は、エレクトロポレーション法により、細胞質内注入により、ウイルス感染により、アデノウイルスにより、レンチウイルスにより、レトロウイルスにより、トランスフェクションにより、脂質媒介トランスフェクションにより、またはNucleofection(商標)により媒介される。
【0323】
細胞への核酸またはタンパク質の導入は、一度に、またはある期間にわたって複数回実施され得る。例えば、導入は、ある期間にわたって少なくとも2回、ある期間にわたって少なくとも3回、ある期間にわたって少なくとも4回、ある期間にわたって少なくとも5回、ある期間にわたって少なくとも6回、ある期間にわたって少なくとも7回、ある期間にわたって少なくとも8回、ある期間にわたって少なくとも9回、ある期間にわたって少なくとも10回、少なくとも11回、ある期間にわたって少なくとも12回、ある期間にわたって少なくとも13回、ある期間にわたって少なくとも14回、ある期間にわたって少なくとも15回、ある期間にわたって少なくとも16回、ある期間にわたって少なくとも17回、ある期間にわたって少なくとも18回、ある期間にわたって少なくとも19回、またはある期間にわたって少なくとも20回実施され得る。
【0324】
ヌクレアーゼ剤及び標的化ベクター(例えば、LTVEC)が両方とも細胞に導入される場合、これらは同時に導入され得る。あるいは、ヌクレアーゼ剤は、標的化ベクターとは別々に導入され得る。例えば、ヌクレアーゼ剤は、標的化ベクターの導入前に導入され得る、またはそれは標的化ベクターの導入後に導入され得る。
【0325】
iv.改変の種類
様々な種類の標的遺伝子改変が、Y染色体の領域をサイレンシングするために(例えば、Y染色体の領域の欠失または破壊によって)使用され得る。例えば、タンパク質のレベル及び/または活性の減少は、タンパク質をコードする遺伝子に対する、またはタンパク質のレベルもしくは活性に影響を及ぼす、もしくはそれらを制御するゲノム遺伝子座に対する標的遺伝子改変によって達成され得る。このような標的改変としては、例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、1つ以上のヌクレオチドの欠失、1つ以上のヌクレオチドの置換、点変異、対象となるポリヌクレオチドもしくはその一部のノックアウト、対象となるポリヌクレオチドもしくはその一部のノックイン、内因性核酸配列と異種、外因性、もしくはオルソロガス核酸配列との置換え、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、またはこれらの組合せを挙げることができる。例えば、少なくとも1、2、3、4、5、7、8、9、10またはそれを超えるヌクレオチドが、標的ゲノム改変を形成するために変化され得る。欠失、挿入、または置換えは、本明細書内の他の箇所に開示されるような任意のサイズのものであり得る。様々な方法が、標的遺伝子改変を生成するために使用され得る。例えば、Wang et al.(2013)Cell 153:910−918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1−9、及びWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530−532を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0326】
Y染色体上の欠失は、任意の核酸配列、例えば、繁殖力/不妊と、または性発達と関連する遺伝子などの欠失であり得る。Y染色体上の欠失は、複数の遺伝子の欠失を含み得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える遺伝子が欠失され得る。2種のヌクレアーゼ剤が使用される場合、それらの対応する認識部位間における配列が欠失され得る。欠失は、例えば、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、約700kb〜約800kb、約800kb〜約900kb、約900kb〜約1Mb、約500kb〜約1Mb、約1Mb〜約1.5Mb、約1.5Mb〜約2Mb、約2Mb〜約2.5Mb、または約2.5Mb〜約3Mbの範囲であり得る。例えば、欠失は、500kb超、約500kb〜約600kb、または約500kbであり得る。
【0327】
同様に、Y染色体の破壊は、任意の核酸配列、例えば、繁殖力/不妊と、または性発達と関連する遺伝子などの破壊であり得る。Y染色体の破壊は、複数の遺伝子の破壊を含み得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える遺伝子が破壊され得る。内因性核酸配列の破壊は、例えば、ヌクレアーゼにより作製された二本鎖切断が、非相同末端結合(NHEJ)媒介DNA修復によって修復される場合に生じ得、これにより核酸配列の挿入または欠失を含む変異体対立遺伝子が生じ、それによってそのゲノム遺伝子座の破壊を引き起こす。破壊の例としては、調節エレメント(例えば、プロモーターもしくはエンハンサー)の変化、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、切断変異、ヌル変異、または少数のヌクレオチドの挿入もしくは欠失(例えば、フレームシフト変異を引き起こす)が挙げられる。破壊は、対立遺伝子の不活性化(すなわち、機能喪失)または喪失をもたらし得る。
【0328】
v.標的改変を有する細胞の同定
様々な方法が、欠失または挿入などの標的改変を有する細胞を同定するために使用され得る。このような方法は、標的遺伝子座に(例えば、第1及び第2CRISPR RNA認識配列間に)標的改変を有する1つの細胞を同定することを含み得る。スクリーニングは、改変ゲノム遺伝子座を有するこのような細胞を同定するために行われ得る。
【0329】
スクリーニングステップは、親染色体の対立遺伝子の改変(MOA)を評価するための定量アッセイを含み得る。例えば、定量アッセイは、リアルタイムPCR(qPCR)などの定量PCRによって実施され得る。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第1プライマーセット及び非標的参照遺伝子座を認識する第2プライマーセットを利用し得る。プライマーセットは、増幅配列を認識する蛍光プローブを含み得る。
【0330】
好適な定量アッセイのその他の例としては、蛍光媒介in situハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブ(複数可)に対する定量的ハイブリダイゼーション、Invader Probes(登録商標)、MMPアッセイ、TAQMAN(登録商標)Molecular Beacon、またはEclipse(商標)プローブ技術(例えば、US2005/0144655を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0331】
F.細胞及び動物
上記方法及び組成物(例えば、細胞、胚)の動物としては、哺乳動物、魚類、及び鳥類を含む、任意の動物を挙げることができる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類(例えば、サル、マーモセット、アカゲザル、及び類人猿)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、及びモルモット)、家畜または農業哺乳動物(例えば、ヤギ、雄ウシ、シカ、バイソン、ウマなどのウマ種、ウシ及び去勢ウシなどのウシ種、ヒツジなどのヒツジ種、ならびにブタ及び雄ブタなどのブタ種)、ならびに馴化哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、及びフェレット)が挙げられる。鳥類としては、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ダチョウ、ガチョウ、及びアヒルが挙げられる。非ヒト動物は、ヒト以外の任意の動物であり得る。例えば、非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物、げっ歯類、マウス、ラット、ハムスター、サル、農業哺乳動物、馴化哺乳動物、魚類、または鳥類であり得る。
【0332】
上記方法及び組成物中の多能性細胞は、2種以上の分化細胞型に発達する能力を有する任意の未分化細胞を含む。例えば、上記方法及び組成物中の多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞または人工多能性幹(iPS)細胞であり得る。ES細胞は、胚への導入時に発達する胚の任意の組織に寄与することができる胚由来の全能性または多能性細胞を含む。あるいは、それらは成体幹細胞、または発達制限前駆細胞であり得る。多能性細胞は、任意の動物からの細胞であり得る。例えば、多能性細胞は、ヒトES細胞、非ヒトES細胞、哺乳動物ES細胞、非ヒト哺乳動物ES細胞、げっ歯類ES細胞、マウスES細胞、ラットES細胞、またはハムスターES細胞であり得る。
【0333】
好適な遺伝子改変可能な多能性細胞が容易に入手できないこれらの哺乳動物については、その他の方法が、Oct3/4、Sox2、KLF4、Myc、Nanog、LIN28、及びGlis1を含むが、これらに限定されない多能性誘導因子の組合せを体細胞(例えば、線維芽細胞)に導入することなどによって、体細胞を多能性細胞にリプログラミングするために用いられる。
【0334】
マウス多能性細胞、全能性細胞、または宿主胚は、例えば、近交系統、ハイブリッド系統、及び非近交系統を含む、マウスの任意の系統からのものであり得る。マウス系統の例としては、129系統、C57BL系統(例えば、C57BL/6系統)、129及びC57BL/6の混合(例えば、50%の129及び50%のC57BL/6)、BALB/c系統、ならびにSwiss Webster系統が挙げられる。129系統の例としては、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、12951/SV、12951/SvIm)、129S2、129S4、129S5、12959/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、及び129T2が挙げられる(例えば、Festing et al.(1999)Revised nomenclature for strain 129 mice,Mammalian Genome 10:836を参照のこと)。C57BL系統の例としては、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/01aが挙げられる。マウスは、上述した129系統(例えば、129S6(129/SvEvTac)系統)及び上述したC57BL/6系統の混合、1種以上の上述した129系統の混合、または1種以上の上述したC57BL系統の混合であり得る。マウスはまた、129系統を除く系統からのマウスであり得る。例えば、本明細書で提供される方法に用いられるマウスまたはマウス細胞は、129及びC57BL/6系統の混合、BALB/c及びC57BL/6系統の混合、129及びBALB/c系統の混合、またはBALB/c、C57BL/6、及び129系統の混合であり得る。例えば、本明細書で提供される方法に用いられるマウスまたはマウス細胞は、少なくとも部分的にBALB/c系統からのものであり得る(例えば、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%BALB/c系統に由来する、または約25%、約50%、約75%、もしくは約100%BALB/c系統に由来する)。一例では、マウスまたはマウス細胞は、50%のBALB/c、25%のC57BL/6、及び25%の129を含む系統を有し得る。あるいは、マウスまたはマウス細胞は、BALB/cを除外する系統または系統の組合せを含み得る。
【0335】
マウスXY多能性細胞中のY染色体は、任意の系統からのものであり得る。例えば、マウスXY多能性細胞(例えば、マウスXY ES細胞)中のY染色体は、129系統またはC57BL系統(例えば、C57BL/6系統)からのものであり得る。あるいは、Y染色体は、BALB/c系統からのものであり得る。129系統からのY染色体を有するマウスXY ES細胞の一例は、VGF1マウスES細胞である。VGF1(F1H4としても知られる)マウスES細胞は、雌C57BL/6NTacマウスを雄129S6/SvEvTacマウスと交雑させることによって産生されたハイブリッド胚に由来した。したがって、VGF1 ES細胞は、129S6/SvEvTacマウスからのY染色体を含有する。例えば、Auerbach,W.et al.(2000)Biotechniques 29,1024−1028,1030,1032を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。あるいは、マウスXY多能性細胞中のY染色体は、129系統からのものではない(例えば、C57BL/6系統からのものである)。VGB6 ES細胞株は、C57BL/6NTac系統の雄及び雌マウスの交配から産生された単一の雄(XY)胚盤胞胚に由来した。
【0336】
ラット多能性細胞、全能性細胞、または宿主胚は、例えば、近交系統、ハイブリッド系統、及び非近交系統を含む、任意のラット系統からのものであり得る。ラット系統の例としては、ACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、またはFisher F344もしくはFisher F6などのFischerラット系統が挙げられる。ラット多能性細胞、全能性細胞、または宿主胚はまた、上で列挙された2種以上の系統の混合に由来する系統から得られ得る。例えば、ラット多能性細胞、全能性細胞、または宿主胚は、DA系統及びACI系統から選択される系統に由来し得る。ACIラット系統は、白色の腹部及び足ならびにRT1
av1ハプロタイプを有する、黒色アグーチであると特徴付けられる。このような系統は、Harlan Laboratoriesを含む様々な供給元から入手可能である。ACIラットからのラットES細胞株の一例は、ACI.G1ラットES細胞である。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチ毛及びRT1
av1ハプロタイプを有すると特徴付けられる。このようなラットは、Charles River及びHarlan Laboratoriesを含む様々な供給元から入手可能である。DAラットからのラットES細胞株の例は、DA.2BラットES細胞株またはDA.2CラットES細胞株である。ラット系統のその他の例は、例えば、US2014/0235933、US2014/0310828、及びUS2014/0309487で提供され、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0337】
いくつかの方法及び組成物では、動物は、以下のうち1つ以上からの動物ではない:Akodon属種、Myopus属種、Microtus属種、及びTalpa属種。同様に、いくつかの方法及び組成物では、動物は、正常な野生型の特性がXY雌の繁殖力である任意の種ではない。
【0338】
III.化合物をスクリーニングする方法
細胞またはクローンが化合物の存在下で培養される場合、動物XY多能性または全能性細胞またはクローンに対して雌化活性を有する(すなわち、細胞またはクローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向を高める)化合物についてスクリーニングするための方法及び組成物が提供される。動物XY多能性または全能性細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向は、これらのクローンにおけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現または活性と逆相関する。動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)におけるこれらの遺伝子のうち1つ以上の発現喪失は、どの細胞クローンがF0世代においてXY雌動物を生成することになるかを予測し得る:観察されるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのサイレンシングが強くなるほど、XY ES細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向がますます高くなる(例えば、実施例3を参照のこと)。同様に、動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)におけるこれらの遺伝子のうち1つ以上の活性喪失または発現及び/もしくは活性の減少は、どの細胞クローンがF0世代においてXY雌動物を生成することになるかを予測し得る:観察されるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現が低下するほど、XY ES細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向がますます高くなる(例えば、実施例3を参照のこと)。言い換えれば、これらの遺伝子のうち1つ以上の発現及び/または活性は、XY雌生成を予測するための代理マーカーであり得る。
【0339】
この情報は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向が高い動物XY多能性または全能性細胞を生成する化合物についてスクリーニングするために使用され得る。例えば、このような方法は、細胞の多能性または全能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト動物XY多能性または全能性細胞の第1集団及び第2集団を培養し、第1集団は、標的化合物の存在下で培養され、第2集団は、標的化合物の不存在下で培養されることを含み得る。次いで、本方法は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、第1及び第2集団の各々で非ヒト動物XY多能性または全能性細胞のうち1種以上をアッセイし、それによって雌化活性が、第2集団からの1種以上の細胞と比較して、第1集団からの1種以上の細胞におけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性の減少によって同定されることをさらに含み得る。すなわち、本方法は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、第1及び第2集団の各々で非ヒト動物XY多能性または全能性細胞のうち1種以上をアッセイし、次いで、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性が、第2集団からの1種以上の細胞と比較して、第1集団からの1種以上の細胞で減少する場合に標的化合物を選択することをさらに含み得る。発現及び/または活性の減少は、Ddx3yの、Utyの、Eif2s3yの、Ddx3y及びUtyの、Ddx3y及びEif2s3yの、Uty及びEif2s3yの、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yの減少であり得る。
【0340】
スクリーニングされ得る化合物の例としては、抗体、抗原結合タンパク質、部位特異的DNA結合タンパク質(例えば、CRISPR−Cas複合体、CRISPRiライブラリー、CRISPRaライブラリー)、ポリペプチド、ベータターン模倣体、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN−置換グリシン、及びオリゴカルバメートが挙げられる。化合物の大きなコンビナトリアルライブラリーは、WO1995/012608、WO1993/006121、WO1994/008051、WO1995/035503、及びWO1995/030642に記載されているコード化合成ライブラリー(ESL)法によって構築され得、その文献各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。ペプチドライブラリーも、ファージディスプレイ法によって生成され得る。例えば、US5,432,018を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。CRISPR−Cas系を異なる遺伝子に標的化するためのガイドRNAライブラリーの使用は、例えば、WO2014/204727、WO2014/093701、WO2015/065964、WO2016/011080、Shalem et al.(2014)343(6166):84−87(ゲノムスケールCRISPR−Cas9ノックアウト(GeCKO)ライブラリー)、及びKonermann et al.(2015)517(7536):583−588(CRISPR/Cas9相乗的活性化メディエーター(SAM)プールライブラリー)に開示されていて、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0341】
細胞の第1集団は、標的化合物の存在下において任意の長さの時間で培養され得る。一例として、細胞の第1集団は、アッセイ前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、標的化合物の存在下で培養され得る。
【0342】
培地は、細胞の多能性または全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地であり得る。あるいは、培地は雌化培地であり得る。雌化培地(例えば、培養下で動物XY多能性または全能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物、ここで基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する)ならびにこのような培地中で細胞を維持する方法は、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0343】
標的化合物の雌化活性は、多数の方法で同定され得る。例えば、雌化活性は、第1集団からの細胞におけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性の欠如によって同定され得る。あるいは、雌化活性は、第2集団からの細胞と比較して、第1集団からの細胞におけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの全ての発現及び/または活性の減少によって同定され得る。あるいは、雌化活性は、第1集団からの細胞におけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの全ての発現及び/または活性の欠如によって同定され得る。発現及び/または活性を評価する方法は、以下でさらに詳しく述べられる。
【0344】
いくつかのスクリーニング方法は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト動物を生成するために、第1集団からドナー非ヒト動物XY多能性または全能性細胞を選択し、F0世代における繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に逆相関することをさらに含み得る。
【0345】
次いで、ドナー動物XY多能性または全能性細胞が宿主胚に導入され得、宿主胚は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。例えば、宿主胚は前桑実期胚であり得、宿主胚は、ドナー動物XY多能性または全能性細胞の導入時に胚盤胞期まで培養され得る。動物、胚、ドナーXY多能性または全能性細胞を胚に導入する方法、及びF0動物を生成する方法は、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0346】
動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ前に、及び/または宿主胚への導入前に、様々な時間で培地中において維持され得る。例えば、動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ及び/または宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、雌化培地中で維持され得る。あるいは、動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ及び/または宿主胚への導入前に1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間以下の間、雌化培地中で維持され得る。いくつかの方法では、XY多能性または全能性細胞は、細胞を胚に注入するまで雌化培地中で培養または維持される。その他の方法では、XY多能性または全能性細胞が注入された胚は、代理母に移入されるまで雌化培地中で培養または維持される。
【0347】
ドナー細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、第1集団からの1種以上の細胞をアッセイした後に選択され得る。アッセイステップは、細胞またはクローンそれ自体をアッセイすること、ならびにDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性のレベルを決定することを含み得る。あるいは、アッセイステップは、クローンに由来するいくつかのサブクローンをアッセイすること、ならびに例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の低減した発現及び/もしくは活性を有する、またはその発現及び/もしくは活性を欠いているサブクローンのパーセンテージを決定することを含み得る。あるいは、アッセイステップは、クローンに由来するいくつかのサブクローンをアッセイすること、ならびにサブクローンの中でもDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の比較発現及び/または活性を決定することを含み得る。Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性が減少し得る、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての発現及び/もしくは活性が減少し得る。あるいは、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性を欠いている、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての発現及び/もしくは活性を欠いている。例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての検出可能な発現の欠如であり得る。
【0348】
発現は、タンパク質レベルまたはmRNAレベルで評価され得る。ポリペプチドの発現レベルは、直接的に、例えば、細胞もしくは生物中のポリペプチドレベルについてアッセイすることにより(例えば、ウェスタンブロット分析、FACS分析、ELISA)、または間接的に、例えば、ポリペプチドの活性を測定することにより測定されてよい。その他の場合では、遺伝子の発現及び/または活性の低減は、例えば、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、ノーザンブロット分析、定量的RT−PCR分析、次世代シーケンシング(NGS)、マイクロアレイ分析、または表現型分析を含む方法を使用して測定され得る。例えば、遺伝子の発現は、RT−PCR、RNA−seq、デジタルPCR、またはmRNAレベルを測定する任意のその他の好適な方法によって、mRNAレベルを測定することにより評価され得る。一例として、RNAレベルは、B2mなどの対照遺伝子と比較してRT−PCRにより測定され得る。いくつかの場合には、例えば、対照遺伝子(例えば、B2m)と標的遺伝子との間のΔCtは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、または少なくとも8であり得る。同様に、いくつかの場合には、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40サイクル後、標的遺伝子の検出可能なRNAは、一切存在しないことになる。
【0349】
場合により、mRNAまたはポリペプチドの発現レベルを測定する場合、対照実験は、Y染色体の存在を確認するために行われ得る。例えば、TAQMAN(登録商標)コピー数アッセイは、Y染色体上の異なるゲノム配列に対するプローブを使用することによって、Y染色体の1コピーの存在を確認するために行われ得る。このようなアッセイは、ゲノム内におけるコピー数変化を測定するように設計される。
【0350】
対象細胞、胚、または動物における遺伝子またはそれがコードするタンパク質の発現または活性の減少としては、適切な対照細胞、胚、もしくは動物または対照細胞、胚、もしくは動物の集団と比較した場合の、発現または活性レベルの任意の統計的に有意な低減を挙げることができる。一般に、発現または活性は、発現または活性が、雌化培地ではない適切な対照培地中で培養された適切な対照細胞、胚、またはそれらに由来する動物(例えば、動物XY多能性細胞)、すなわち、細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、歴史的に完全に雄マウスを生成する動物XY多能性細胞における発現または活性よりも、統計的に低い場合に減少する。このような減少は、対照細胞と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれを超える低減を含む。統計的有意性は、p≦0.05を意味する。発現または活性の減少は、任意の段階で任意の機構によって生じ得る。例えば、発現の減少は、転写中、転写後、翻訳中、または翻訳後に生じる事象または制御によって生じ得る。
【0351】
「対象細胞」は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養された細胞または雌化培地中で培養された細胞の子孫である細胞である。「対照」または「対照細胞」は、対象細胞の表現型における変化を測定するための基準点を提供する。対照細胞は、それが雌化培地中で培養されなかったこと、または細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、XY雌マウスを生成する能力を欠いている、もしくは低減したその能力を有することのいずれかを除いて、好ましくは対象細胞と可能な限り厳密に合致する(例えば、個々の細胞は、同じ細胞株もしくは同じクローンに由来し得る、または同じ遺伝子型を有し得る)。例えば、対照細胞は、以下を含んでよい:(a)同じ遺伝子型である、または対象細胞と同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、雌化培地ではない適切な対照培地(例えば、DMEMもしくは動物XY多能性もしくは全能性細胞の多能性もしくは全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる能力を細胞に付与することにより細胞を変化させない別の種類の培地)中で培養された細胞、(b)対象細胞と遺伝的に同一である、または同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、遺伝子改変されていない、もしくは繁殖可能な雌XY動物を生成する能力を細胞に付与することになる条件もしくは刺激に曝露されていない動物XY多能性または全能性細胞、ならびに(c)雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養されるが、細胞が雌化培地中で培養されるにもかかわらず、歴史的に完全に雄動物を生成する動物XY多能性及び全能性細胞。例えば、対照細胞は、細胞の多能性または全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地中で培養された動物XY多能性または全能性細胞であり得る。場合により、発現及び/または活性の減少は、第2集団からの対照非ヒト動物XY多能性または全能性細胞と比較され得る。
【0352】
いくつかの実験では、第1集団における細胞またはクローンのうち2種以上が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性についてアッセイされる。次いで、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有する細胞またはクローンが、ドナー動物XY多能性または全能性細胞またはクローンであると選択され得、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。
【0353】
Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することは、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能なF0 XY雌のより高いパーセンテージ、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌の一生涯における同腹仔のより高い平均数、及びF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌のより高い平均産子数をもたらし得る。このようなF0子孫は、本明細書内の他の箇所に開示される方法を使用した、宿主胚への細胞の導入及び宿主胚の懐胎後、ドナーXY多能性または全能性動物細胞から生成され得る。
【0354】
増加は、適切な対照物と比較した場合の、任意の統計的に有意な増加であり得る。例えば、増加は、適切な対照物と比較した場合、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍であり得る。
【0355】
例えば、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0356】
繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0357】
繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0358】
正常な同腹仔数及び/または正常な産子数(例えば、野生型雌動物と比較して)を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0359】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0360】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0361】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0362】
V.雌化培地中で成分の濃度を最適化する方法
動物XY多能性または全能性細胞またはクローンに対する雌化活性増加(すなわち、細胞またはクローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向の増加)のために、雌化培地中で成分の濃度を最適化するための方法及び組成物が提供される。動物XY多能性または全能性細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向は、これらのクローンにおけるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現または活性と逆相関する。動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)におけるこれらの遺伝子のうち1つ以上の発現喪失は、どの細胞クローンがF0世代においてXY雌動物を生成することになるかを予測し得る:観察されるDdx3y、Uty、及びEif2s3yのサイレンシングが強くなるほど、XY ES細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向がますます高くなる(例えば、実施例3を参照のこと)。同様に、動物XY多能性または全能性細胞(例えば、XY ES細胞)におけるこれらの遺伝子のうち1つ以上の活性喪失または発現及び/もしくは活性の減少は、どの細胞クローンがF0世代においてXY雌動物を生成することになるかを予測し得る:観察されるDdx3y、Uty、及びEif2s3yの発現が低下するほど、XY ES細胞クローンがF0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向がますます高くなる(例えば、実施例3を参照のこと)。言い換えれば、これらの遺伝子のうち1つ以上の発現及び/または活性は、XY雌生成を予測するための代理マーカーであり得る。
【0363】
この情報は、増加した雌化効果を有し、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成する傾向が高い動物XY多能性または全能性細胞を生成するための培地成分の最適濃度についてスクリーニングするために使用され得る。例えば、このような方法は、細胞の多能性または全能性を維持するのに好適な基本培地及び添加物を含む培地中で非ヒト動物XY多能性または全能性細胞の第1集団及び第2集団を培養し、第1集団は、第1濃度の標的培地成分の存在下で培養され、第2集団は、第1濃度とは異なる第2濃度の標的培地成分の存在下で培養されることを含み得る。第1濃度は、第2濃度よりも高く、または低くなり得る。次いで、本方法は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性について、第1及び第2集団の各々で非ヒト動物XY多能性または全能性細胞のうち1種以上をアッセイすることをさらに含み得る。次いで、第1濃度は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性が、第2集団からの1種以上の細胞と比較して、第1集団からの1種以上の細胞で減少する場合に選択され得る。発現及び/または活性の減少は、Ddx3yの、Utyの、Eif2s3yの、Ddx3y及びUtyの、Ddx3y及びEif2s3yの、Uty及びEif2s3yの、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yの減少であり得る。
【0364】
その濃度が変化され得る培地成分の例としては、アルカリ金属及びハロゲン化物の塩(例えば、塩化ナトリウム)、炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)、グルコース、ウシ胎児血清(FBS)、グルタミン、抗生物質(複数可)、ペニシリン及びストレプトマイシン(例えば、penstrep)、ピルビン酸塩(例えば、ピルビン酸ナトリウム)、非必須アミノ酸(例えば、MEM NEAA)、2−メルカプトエタノール、ならびに白血病抑制因子(LIF)が挙げられる。その濃度が変化され得るその他の培地成分は、表1に列挙されている。典型的な培地成分は、本明細書内の他の箇所でさらに詳しく述べられる。
【0365】
細胞の第1集団は、標的化合物の存在下において任意の長さの時間で培養され得る。一例として、細胞の第1集団は、アッセイ前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、標的化合物の存在下で培養され得る。
【0366】
培地は、細胞の多能性または全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地であり得る。あるいは、培地は雌化培地であり得る。雌化培地(例えば、培養下で動物XY多能性または全能性細胞を維持するのに好適な基本培地及び添加物、ここで基本培地または基本培地及び添加物を含む培地は、約200mOsm/kg〜約329mOsm/kg未満のオスモル濃度を有する)ならびにこのような培地中で細胞を維持する方法は、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0367】
第1濃度の培地成分における雌化活性は、多数の方法で同定され得る。例えば、第1濃度は、第1集団からの細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性を欠いている場合に選択され得る。あるいは、第1濃度は、第1集団からの細胞が、第2集団からの細胞と比較して、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの全てについて減少した発現及び/または活性を有する場合に選択され得る。あるいは、第1濃度は、第1集団からの細胞が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの全ての発現及び/または活性を欠いている場合に選択され得る。発現及び/または活性を評価する方法は、以下でさらに詳しく述べられる。
【0368】
いくつかのスクリーニング方法は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に基づいて、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト動物を生成するために、第1集団からドナー非ヒト動物XY多能性または全能性細胞を選択し、F0世代における繁殖可能な表現型的に雌のXY非ヒト動物の比率が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性に逆相関することをさらに含み得る。
【0369】
次いで、ドナー動物XY多能性または全能性細胞が宿主胚に導入され得、宿主胚は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。例えば、宿主胚は前桑実期胚であり得、宿主胚は、ドナー動物XY多能性または全能性細胞の導入時に胚盤胞期まで培養され得る。動物、胚、ドナーXY多能性または全能性細胞を胚に導入する方法、及びF0動物を生成する方法は、本明細書内の他の箇所に開示される。
【0370】
動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ前に、及び/または宿主胚への導入前に、様々な時間で培地中において維持され得る。例えば、動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ及び/または宿主胚への導入前に少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間の間、雌化培地中で維持され得る。あるいは、動物XY多能性または全能性細胞は、アッセイステップ及び/または宿主胚への導入前に1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、または4週間以下の間、雌化培地中で維持され得る。いくつかの方法では、XY多能性または全能性細胞は、細胞を胚に注入するまで雌化培地中で培養または維持される。その他の方法では、XY多能性または全能性細胞が注入された胚は、代理母に移入されるまで雌化培地中で培養または維持される。
【0371】
ドナー細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現または活性について、第1集団からの1種以上の細胞をアッセイした後に選択され得る。アッセイステップは、細胞またはクローンそれ自体をアッセイすること、ならびにDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現または活性のレベルを決定することを含み得る。あるいは、アッセイステップは、クローンに由来するいくつかのサブクローンをアッセイすること、ならびに例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の低減した発現及び/もしくは活性を有する、またはその発現及び/もしくは活性を欠いているサブクローンのパーセンテージを決定することを含み得る。あるいは、アッセイステップは、クローンに由来するいくつかのサブクローンをアッセイすること、ならびにサブクローンの中でもDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の比較発現及び/または活性を決定することを含み得る。Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性が減少し得る、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての発現及び/もしくは活性が減少し得る。あるいは、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/もしくは活性を欠いている、またはDdx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての発現及び/もしくは活性を欠いている。例えば、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち全ての検出可能な発現の欠如であり得る。
【0372】
発現は、タンパク質レベルまたはmRNAレベルで評価され得る。ポリペプチドの発現レベルは、直接的に、例えば、細胞もしくは生物中のポリペプチドレベルについてアッセイすることにより(例えば、ウェスタンブロット分析、FACS分析、ELISA)、または間接的に、例えば、ポリペプチドの活性を測定することにより測定されてよい。その他の場合では、遺伝子の発現及び/または活性の低減は、例えば、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、ノーザンブロット分析、定量的RT−PCR分析、次世代シーケンシング(NGS)、マイクロアレイ分析、または表現型分析を含む方法を使用して測定され得る。例えば、遺伝子の発現は、RT−PCR、RNA−seq、デジタルPCR、またはmRNAレベルを測定する任意のその他の好適な方法によって、mRNAレベルを測定することにより評価され得る。一例として、RNAレベルは、B2mなどの対照遺伝子と比較してRT−PCRにより測定され得る。いくつかの場合には、例えば、対照遺伝子(例えば、B2m)と標的遺伝子との間のΔCtは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、または少なくとも8であり得る。同様に、いくつかの場合には、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40サイクル後、標的遺伝子の検出可能なRNAは、一切存在しないことになる。
【0373】
場合により、mRNAまたはポリペプチドの発現レベルを測定する場合、対照実験は、Y染色体の存在を確認するために行われ得る。例えば、TAQMAN(登録商標)コピー数アッセイは、Y染色体上の異なるゲノム配列に対するプローブを使用することによって、Y染色体の1コピーの存在を確認するために行われ得る。このようなアッセイは周知であり、ゲノム内におけるコピー数変化を測定するように設計される。
【0374】
対象細胞、胚、または動物における遺伝子またはそれがコードするタンパク質の発現または活性の減少としては、適切な対照細胞、胚、もしくは動物または対照細胞、胚、もしくは動物の集団と比較した場合の、発現または活性レベルの任意の統計的に有意な低減を挙げることができる。一般に、発現または活性は、発現または活性が、雌化培地ではない適切な対照培地中で培養された適切な対照細胞、胚、またはそれらに由来する動物(例えば、動物XY多能性細胞)、すなわち、細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、歴史的に完全に雄マウスを生成する動物XY多能性細胞における発現または活性よりも、統計的に低い場合に減少する。このような減少は、対照細胞と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれを超える低減を含む。統計的有意性は、p≦0.05を意味する。発現または活性の減少は、任意の段階で任意の機構によって生じ得る。例えば、発現の減少は、転写中、転写後、翻訳中、または翻訳後に生じる事象または制御によって生じ得る。
【0375】
「対象細胞」は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養された細胞または雌化培地中で培養された細胞の子孫である細胞である。「対照」または「対照細胞」は、対象細胞の表現型における変化を測定するための基準点を提供する。対照細胞は、それが雌化培地中で培養されなかったこと、または細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、XY雌マウスを生成する能力を欠いている、もしくは低減したその能力を有することのいずれかを除いて、好ましくは対象細胞と可能な限り厳密に合致する(例えば、個々の細胞は、同じ細胞株もしくは同じクローンに由来し得る、または同じ遺伝子型を有し得る)。例えば、対照細胞は、以下を含んでよい:(a)同じ遺伝子型である、または対象細胞と同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、雌化培地ではない適切な対照培地(例えば、DMEMもしくは動物XY多能性もしくは全能性細胞の多能性もしくは全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる能力を細胞に付与することにより細胞を変化させない別の種類の培地)中で培養された細胞、(b)対象細胞と遺伝的に同一である、または同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、遺伝子改変されていない、もしくは繁殖可能な雌XY動物を生成する能力を細胞に付与することになる条件もしくは刺激に曝露されていない動物XY多能性または全能性細胞、ならびに(c)雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養されるが、細胞が雌化培地中で培養されるにもかかわらず、歴史的に完全に雄動物を生成する動物XY多能性及び全能性細胞。例えば、対照細胞は、細胞の多能性または全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる細胞の能力を変化させない培地中で培養された動物XY多能性または全能性細胞であり得る。場合により、発現及び/または活性の減少は、第2集団からの対照非ヒト動物XY多能性または全能性細胞と比較され得る。
【0376】
いくつかの実験では、第1集団における細胞またはクローンのうち2種以上が、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の発現及び/または活性についてアッセイされる。次いで、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の最も低い発現及び/または活性を有する細胞またはクローンが、ドナー動物XY多能性または全能性細胞またはクローンであると選択され得、ドナー動物XY多能性または全能性細胞は、F0世代において繁殖可能な表現型的に雌のXY動物を生成することができる。
【0377】
Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することは、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0 XY子孫のより高いパーセンテージ、繁殖可能なF0 XY雌のより高いパーセンテージ、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌の一生涯における同腹仔のより高い平均数、及びF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌のより高い平均産子数をもたらし得る。このようなF0子孫は、本明細書内の他の箇所に開示される方法を使用した、宿主胚への細胞の導入及び宿主胚の懐胎後、ドナーXY多能性または全能性動物細胞から生成され得る。
【0378】
増加は、適切な対照物と比較した場合の、任意の統計的に有意な増加であり得る。例えば、増加は、適切な対照物と比較した場合、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍であり得る。
【0379】
例えば、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0380】
繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能な表現型的に雌のXY動物であるF0子孫またはF0 XY子孫のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0子孫ではより高い。
【0381】
繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、繁殖可能なF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0382】
正常な同腹仔数及び/または正常な産子数(例えば、野生型雌動物と比較して)を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージはまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、正常な同腹仔数及び/または正常な産子数を産生することができるF0 XY雌のパーセンテージは、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY子孫ではより高い。
【0383】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される平均産子数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0384】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における同腹仔の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0385】
F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数はまた、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナー動物XY多能性または全能性細胞を選択することによって増加し得る。いくつかの方法では、F0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌によって産生される一生涯における子孫の平均数は、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上のより高い発現及び/または活性を有するXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌と比較した場合に、Ddx3y、Uty、及びEif2s3yのうち1つ以上の減少した発現及び/または活性を有するドナーXY多能性または全能性動物細胞に由来するF0 XY雌または繁殖可能なF0 XY雌ではより高い。
【0386】
V.その他の用途
本明細書内の他の箇所に開示されるような雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中でXY多能性または全能性動物細胞を維持することによって、XY多能性もしくは全能性動物細胞(またはインビトロ細胞培養物、胚、もしくはそれらに由来する動物)におけるY染色体の領域をサイレンシングするための方法及び組成物ならびにY染色体の領域におけるサイレンシングを同定するためにXY多能性または全能性細胞をアッセイするための方法及び組成物もまた提供される。このような方法は、例えば、標的改変が遺伝子の発現を低減または排除するために使用されることになる状況(例えば、遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害するためのノックアウト)に用途を見出し得る。雌化培地での培養によるサイレンシングに要する時間は、特異的標的改変の生成よりもはるかに短いため、サイレンシングを達成することがより効率的な手段である。
【0387】
雌化培地ならびにそれらの成分及び特性の例は、本明細書内の他の箇所に開示されている。同様に、XY多能性または全能性細胞を雌化培地中で培養するための時間のタイミング及び長さの例が、本明細書内の他の箇所に開示されている。
【0388】
雌化培地中での培養は、Y染色体遺伝子の抑制またはサイレンシングをもたらす。例えば、Y染色体の領域は、Y染色体の短腕の全てまたは一部などでサイレンシングされ得る。Y染色体の短腕におけるサイレンシングは、雄の性決定経路において重要な調節因子であるSry遺伝子まで拡大され得、これにより、マウスの胚発生中、E11〜E12の正確な時点で十分に発現されないため、両能性生殖隆起において雌の性決定プログラムの発現をもたらす(実施例1及び
図2A〜
図2Dを参照のこと)。Ddx3y及びEif2s3yなどのその他の遺伝子も、発現できない(実施例1ならびに
図3及び
図4を参照のこと)。それ以降、性転換胚は雌として出生し(F0世代)、次いで、そのXY遺伝子型にもかかわらず、正常で繁殖可能な雌マウスに成長し得る。いくつかの方法では、雌化培地誘導Y染色体サイレンシングは、永久的な遺伝子変化ではなく、F1世代まで持続しない(すなわち、XY雌は、F0 XY雌のF1子孫の中には見られない)。
【0389】
Y染色体の短腕の全てまたは一部に加えて、その中で、またはそれを含む、雌化培地によってサイレンシングされ得るY染色体のその他の領域は、本明細書内の他の箇所に開示されている。サイレンシングされる領域は、長腕(Yq)、特に精子形成に必要なY染色体上のその他の遺伝子も含み得る。例えば、領域は、Sxr
a領域の全てもしくは一部(例えば、Sry遺伝子を含有する部分)を含み得る、ならびに/または領域は、マウスY染色体のSxr
b領域(例えば、Zfy2遺伝子を含有する部分)(
図1Aを参照のこと)もしくはその他の種からのY染色体の対応する領域(例えば、ヒトY染色体のAZFa、AZFb、もしくはAZFc領域)の全てもしくは一部を含み得る。例えば、領域は、Sxr
a領域及びSxr
b領域の両方の一部または全てを含み得る。例えば、Sxr
b領域の境界は、Zfy1及びZfy2である(
図1A及びMazeyrat et al.(1998)Human Molecular Genetics 7(11):1713−1724を参照し、その全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる)。その他の動物種からの対応する領域としては、マウスY染色体上の領域における遺伝子とオルソロガスまたは相同である1つ以上の遺伝子を有する領域が挙げられる。例えば、ヒト領域のAZFa領域は、各領域がUty、Dby(Ddx3y)、及びDffry(Usp9y)を含有するという点で、マウスY染色体のSxr
b領域と対応する。例えば、Affara(2001)Expert Rev.Mol.Med.,Jan.3、2001:1−16、Mazeyrat et al.(1998)Human Molecular Genetics 7(11)、1713−1724、及びSargent et al.(1999)J.Med.Genet.36:370−377を参照し、その各々の全体が、あらゆる目的のために参照によって組み込まれる。領域は、Smy領域またはSpy領域の全てまたは一部も含み得る(
図1A及びAffara(2001)Expert Rev.Mol.Med.,Jan.3、2001:1−16を参照のこと)。同様に、領域は、マウスY染色体の欠失区間1、欠失区間2、欠失区間3、欠失区間4、欠失区間5、欠失区間6、及び欠失区間7のうち1つ以上またはその他の動物種からのY染色体の対応する領域の全てもしくは一部を含み得る(例えば、
図1A及びAffara(2001)Expert Rev.Mol.Med.,Jan.3、2001:1−16を参照のこと)。例えば、領域は、マウスY染色体の欠失区間1、欠失区間2、及び欠失区間3のうち1つ以上またはその他の動物種からのY染色体の対応する領域の全てもしくは一部を含み得る(例えば、
図1Aを参照のこと)。一例では、領域は、欠失区間2及び欠失区間3、または欠失区間2の一部及び欠失区間3の一部を含み得る。
【0390】
領域は、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上を含み得る。領域は、Rbmyクラスターまでのテロメア側であり得る、またはH2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、もしくはZfy1までのセントロメア側もしくはテロメア側であり得る。例えば、領域は、Kdm5dのテロメア側もしくはUspy9yのセントロメア側におけるY染色体の一部を含み得る、または領域は、Zfy2、Sry、もしくはRbmyクラスターのテロメア側であり得る。領域は、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上を除外し得る。例えば、領域は、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上を除外し得る。同様に、領域は、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上以外のY染色体の一部を含み得る。例えば、領域は、Rbmyクラスター、Zfy2、及びSryのうち1つ以上以外のY染色体の一部を含み得る。
【0391】
サイレンシングは、Y染色体上に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル及び/または活性を減少させ得る。例えば、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1によってコードされるタンパク質のうち1つ以上のレベル及び/または活性が減少し得る。あるいは、サイレンシングは、Y染色体上に位置する遺伝子の発現の排除をもたらし得る(すなわち、遺伝子は発現されない)。いくつかの方法では、例えば、Rbmyクラスター、H2al2y、Sry、Zfy2、Usp9y、Ddx3y、Uty、Tspy−ps、Eif2s3y、Kdm5d、Uba1y、またはZfy1のうち1つ以上のうち1つ以上は、サイレンシング時に発現されない。いくつかの方法では、Ddx3y、Eif2s3y、Zfy2、及びSryによってコードされるタンパク質のうち1つ以上のレベル及び/もしくは活性が減少する、またはDdx3y、Eif2s3y、Zfy2、及びSryのうち1つ以上が発現されない。
【0392】
対象細胞、胚、または動物における発現または活性の減少としては、適切な対照細胞、胚、または動物と比較した場合の、発現または活性レベルの任意の統計的に有意な低減を挙げることができる。一般に、発現または活性は、発現または活性が、雌化培地ではない適切な対照培地中で培養された適切な対照細胞、胚、またはそれらに由来する動物(例えば、動物XY多能性細胞)、すなわち、細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、歴史的に完全に雄マウスを生成する動物XY多能性細胞における発現または活性よりも、統計的に低い場合に減少する。このような減少は、対照細胞と比較して、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれを超える低減を含む。統計的有意性は、p≦0.05を意味する。
【0393】
「対象細胞」は、雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養された細胞または雌化培地中で培養された細胞の子孫である細胞である。「対照」または「対照細胞」は、対象細胞の表現型における変化を測定するための基準点を提供する。対照細胞は、それが雌化培地中で培養されなかったこと、または細胞が雌化培地中で培養されたにもかかわらず、XY雌マウスを生成する能力を欠いている、もしくは低減したその能力を有することのいずれかを除いて、好ましくは対象細胞と可能な限り厳密に合致する(例えば、個々の細胞は、同じ細胞株もしくは同じクローンに由来し得る、または同じ遺伝子型を有し得る)。例えば、対照細胞は、以下を含んでよい:(a)同じ遺伝子型である、または対象細胞と同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、雌化培地ではない適切な対照培地(例えば、DMEMもしくは動物XY多能性もしくは全能性細胞の多能性もしくは全能性を維持するのに十分であるが、繁殖可能な雌子孫を生じる能力を細胞に付与することにより細胞を変化させない別の種類の培地)中で培養された細胞、(b)対象細胞と遺伝的に同一である、または同じ細胞株もしくはクローンに由来するが、遺伝子改変されていない、もしくは繁殖可能な雌XY動物を生成する能力を細胞に付与することになる条件もしくは刺激に曝露されていない動物XY多能性または全能性細胞、ならびに(c)雌化培地(例えば、低オスモル濃度培地)中で培養されるが、細胞が雌化培地中で培養されるにもかかわらず、歴史的に完全に雄動物を生成する動物XY多能性及び全能性細胞。
【0394】
発現または活性の減少は、任意の段階で任意の機構によって生じ得る。例えば、発現の減少は、領域に対して直接的もしくは間接的に作製された改変によって、または転写中、転写後、翻訳中、もしくは翻訳後に生じる事象もしくは制御によって生じ得る。
【0395】
機構の理解は実践に必要ではないが、クロマチンの変化及び/またはY染色体上におけるヒストンバリアントγH2AXのリン酸化型のレベル増加は、サイレンシングに寄与し得る。リン酸化ヒストンγH2AXは、転写抑制と関連することが知られていて、減数分裂前期中のXY性体におけるX及びY染色体の転写抑制と関連する。例えば、Alton et al.(2008)Reproduction 135:241−252を参照のこと。
【0396】
サイレンシングは、XY多能性または全能性細胞が培養されている場合、ドナーXY多能性もしくは全能性細胞が宿主胚に導入された後、またはドナーXY多能性もしくは全能性細胞を含む宿主胚が、レシピエント雌動物に導入された後に生じ得る。サイレンシングはまた、異なる胚発生期中に、または胚発生の全体にわたって生じ得る。いくつかの場合には、サイレンシングは出生後も継続する。例えば、卵母細胞が受精した後、一部のサイレンシングは最初の2細胞分裂を経ても維持され得る。サイレンシングにより引き起こされる性転換はまた、F1子孫に伝達されることが可能であり得る。サイレンシングが生じる期間のいくつかの例としては、以下のうち1つ以上が挙げられる:(1)雄の性決定プログラムが実行される場合の胚発生中、(2)少なくともマウスのE11〜E12に対応する発達段階(例えば、性決定もしくは性転換に重要な発達段階)までの胚発生中、(3)少なくともマウスのE17〜E19に対応する発達段階(例えば、胚の卵母細胞における繁殖力に重要な発達段階)までの胚発生中、(4)卵形成期の全体を通して、(5)卵母細胞発生における減数分裂前期中、これは出生直前の胚で開始する、(6)卵母細胞が受精した後(例えば、その最初の2細胞分裂中)、または(7)受精後の最初の2細胞分裂を経た排卵後の卵母細胞において。
【0397】
当該技術分野において既知の任意の手段が、Y染色体の領域をサイレンシングするための細胞をアッセイするために使用され得る。例えば、サイレンシングされた領域内の遺伝子は、発現されない場合がある(例えば、発現が排除される、または細胞が遺伝子の検出可能な発現を欠いている)。遺伝子は、遺伝子の転写が実施されない場合、または当該技術分野において既知の一般的な技術による遺伝子産物(例えば、mRNAもしくはタンパク質)の検出可能なレベルが一切存在しない場合、発現されない。ポリペプチドの発現レベルは、直接的に、例えば、細胞もしくは生物中のポリペプチドレベルについてアッセイすることにより(例えば、ウェスタンブロット分析、FACS分析、ELISA)、または間接的に、例えば、ポリペプチドの活性を測定することにより測定されてよい。その他の場合では、遺伝子の発現及び/または活性の低減は、例えば、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、ノーザンブロット分析、定量的RT−PCR分析、次世代シーケンシング(NGS)、マイクロアレイ分析、または表現型分析を含む方法を使用して測定され得る。アッセイすることは、Y染色体上のどの領域、小領域、または遺伝子がサイレンシングされているかを同定することも含み得る。
【0398】
上または下で引用される全ての特許申請、ウェブサイト、その他の刊行物、アクセッション番号などは、個々の項目全体が、あらゆる目的のために参照によってそのように組み込まれていると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、それらの内容全体があらゆる目的のために参照によって組み込まれる。ある配列の異なるバージョンが、異なる時点でアクセッション番号と関連付けられている場合、本出願の有効出願日においてアクセッション番号と関連付けられたバージョンを意味する。有効出願日は、実際の出願日、または適用可能な場合、アクセッション番号を参照する優先権出願の出願日のうち早い方を意味する。同様に、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが異なる時点で公開されている場合、別段の指示がない限り、本出願の有効出願日に公開されている最新バージョンを意味する。本発明のあらゆる特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様は、別段の具体的な指示がない限り、その他のいずれとも組み合わせて使用され得る。本発明は、明確化及び理解を促すことを目的として例証及び例示によってある程度詳細に記載されてきたが、何らかの変更及び修正が、添付の特許請求の範囲内で実施されてよいことは明らかだろう。
【0399】
配列の簡単な説明
添付の配列表に列挙されるヌクレオチド及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基の標準文字略号、及びアミノ酸の3文字コードを使用して示される。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端で始まり、3’末端へと進む(すなわち、各ラインの左から右へ)という標準規則に従う。各ヌクレオチド配列の1本鎖のみが示されているが、表示された鎖の任意の参照によって、相補鎖が含まれると理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端で始まり、カルボキシ末端へと進む(すなわち、各ラインの左から右へ)という標準規則に従う。
【実施例】
【0401】
実施例1.XY ES細胞からの繁殖可能かつ妊孕可能なF0 XY雌マウスの生成。
材料及び方法
ES細胞培養。本明細書に記載される全ての結果は、VGF1、すなわち、発明者らのC57BL6NTac/129S6SvEv F1ハイブリッドXY ES細胞株を用いて実施された実験からの結果であった(Poueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:91−99、Valenzuela et al.(2003)Nat.Biotechnol.21:652−659)。ES細胞を、以前に記載された通りに培養した(Matise et al.(2000)Production of targeted embryonic stem cell clones.In:Joyner AL(ed)Gene targeting:a practical approach.Oxford University press,New York,pp101−132)。表3に示したNaHCO
3濃度を有する特注の高グルコースDMEM培地(LifeTech)に、0.1mMの非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの2−メルカプトエタノール、4mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン(Life Technologies)、15%FBS(Hyclone)、ならびに2,000U/mlの白血病抑制因子(LIF、Millipore)を補充した。培地のオスモル濃度を、単一試料用浸透圧計(Advanced Instruments,Inc.モデル3250)で測定した。エレクトロポレーション法では、発明者らは、120μlのエレクトロポレーション緩衝液(Millipore)中に溶解させた1.5μgの標的化ベクターDNAを、7.5×10
6ES細胞と混合して、BTX多層エレクトロポレーションプレート(Harvard Apparatus)に移した。エレクトロポレーション後、細胞を氷上で10分間インキュベートして、その後2つの15cmゼラチン化ディッシュ上に播種した。選択培地を、エレクトロポレーションから48時間後に添加し、それ以降毎日取り替えた。コロニーを、エレクトロポレーションから10日後に選定して、トリプシンを含有する96ウェルプレートの個々のウェルに移し、その後、細胞をゼラチン化96ウェルプレート中に播種した。3日後、細胞を再度トリプシン処理して、3分の2の各ウェルの内容物を凍結し、残存する3分の1をDNA抽出のために新しいプレートに移した。
【0402】
ES細胞スクリーニング、マウス遺伝子型同定、ならびにX及びY染色体の計数。発明者らは、Loss−of−Allele法(Frendewey et al.(2000)Methods Enzymol.476:295−307)を使用して、標的ES細胞クローンを正確に同定し、マウス対立遺伝子の遺伝子型を決定した。発明者らは、以下のTAQMAN(登録商標)定量PCR(qPCR)アッセイ(Biosearch Technologies)によってX及びY染色体数を決定した:Xについては、プライマー(5’−3’)GGAGGGTAGCACGGGAAGAAG(配列番号:45)及びGCTGGCTACCCACTTGATTGG(配列番号:46)ならびにプローブTCAAGCAGTCTCTCCCAGCTAACCTCCCT(配列番号:47)、ならびにYについては、プライマーGATCAGCAAGCAGCTGGGAT(配列番号:48)及びCTCCTGGAAAAAGGGCCTTT(配列番号:49)ならびにプローブCAGGTGGAAAAGCCTTACAGAAGCCGA(配列番号:50)。Swiss Webster系統が持つ、VGF1 ES細胞ゲノム中には存在しないチロシナーゼ遺伝子におけるアルビノ変異についてのqPCRアッセイによって、宿主胚の寄与が定量化された。このアッセイの検出限界は、2,000の半数体ゲノム当量においておよそ1つのアルビノ対立遺伝子である(Poueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:91−99)。切離した脾臓を、スペクトル核型分析(SKY)のためにVan Andel Institute(グランドラピッズ、ミシガン州)に送付した。
【0403】
マイクロインジェクション法。注入の日に、ES細胞をトリプシン処理し、LIFを含まないES細胞培地中に再懸濁した。凍結した8細胞Swiss Webster胚(Charles River Laboratories)を解凍し、マイクロインジェクション前にKSOM培地(Millipore)中において37℃で7.5%CO
2中で90分間インキュベートした。8細胞胚へのES細胞の注入を、以前に記載された通りに実施した(Poueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:91−99)。注入後、胚を一晩培養し、性交後日数2.5日で偽妊娠レシピエント雌マウスに移入した。
【0404】
結果
交配試験及び表現型決定試験の両方についてVELOCIMICE(登録商標)の収率を最適化するために、発明者らは、遺伝子標的化実験中に、及び8細胞胚注入前に様々なES細胞培養培地を試験した。発明者らが評価した1つの成分は、Knockout(商標)DMEM(KO−DMEM、Life Technologies)として既知の基本培地であった。当初、KO−DMEMを用いて調製した培地中で成長させたES細胞では、標準的なDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を用いて作製した培地中で維持した細胞と比較して、発明者らが、より少ない雄VELOCIMICE(登録商標)を得たという点で良い結果にならなかったと思われた。しかし、発明者らは、雌VELOCIMICE(登録商標)の大幅な増加も観察した:34の異なる遺伝子についての標的化実験から得られた78のクローン注入から生成したVELOCIMICE(登録商標)の31%が、雌であった(表3、KO−DMEM)。従来のDMEM培地中で成長させた500を超える標的ES細胞クローンの注入に関する、発明者らのマウス生成データベースで記録した結果の後ろ向き比較によって、全てのVELOCIMICE(登録商標)において1%のみが、雌であると同定されたことが明らかとなった(表3、DMEM)。稀な雌VELOCIMICE(登録商標)は、交配させなかったため、さらに調査しなかった。KO−DMEM培地中で成長させたXY ES細胞クローンからの雌の高発生率にもかかわらず、この実験からの雄と雌のVELOCIMICE(登録商標)における18%全収率は、DMEM培地中で誘導したクローンを用いた発明者らの過去の経験と同一であった(表3、KO−DMEM及びDMEM)。
【0405】
KO−DMEM中で成長させたES細胞クローンは、0〜60%の範囲の割合で雌VELOCIMICE(登録商標)を生成した。雌VELOCIMICE(登録商標)を生成する傾向は、各クローンにとって特異的であった。雌を生成しなかったクローンが、反復マイクロインジェクションにおいてこの形質を維持した一方で、雌を生じたクローンは、反復マイクロインジェクション実験においておよそ同じ比率の雌を生じる傾向があった。発明者らが、雌VELOCIMICE(登録商標)を生成するクローンの能力を変化させ得るかを確認するために、発明者らは培地交換実験を実施した。ES細胞を、標的化プロセス全体、すなわち、エレクトロポレーション、薬物耐性コロニーの選択、標的変異についてのスクリーニング、増殖及び凍結保存において、DMEMに基づく培地またはKO−DMEMに基づく培地のいずれかで成長させて維持した遺伝子標的化実験からのES細胞クローンを解凍し、8細胞胚へのマイクロインジェクションに備えて3日間、反対の培地中で成長させた。胚を、胚盤胞へと分化させるためにKSOM中で一晩インキュベートした後、それらを代理母に移入した。発明者らは、生産VELOCIMICE(登録商標)の間で産生されたXY雌の比率を記録した。
【0406】
【表3-1】
【表3-2】
【0407】
DMEMからKO−DMEMへの切替えでは、発明者らは、DMEM培地中で実施した5つの異なる遺伝子標的化実験から11のクローンを選択し、それらをKO−DMEMまたは対照としてDMEMのいずれかで解凍し、成長させた。DMEMからKO−DMEMに切り替えたES細胞から移入したおよそ400の胚は、105匹の生産VELOCIMICE(登録商標)を生成し、そのうち2匹(1.9%)のみが雌であって(表4、DMEM中で標的化し、KO−DMEM中で解凍した)、DMEM中で維持したES細胞を用いて注入した対照胚によって生成された雌の比率(2.4%)と類似していた(表4、DMEM中で標的化し、DMEM中で解凍した)。逆の実験では、発明者らは、KO−DMEM中で実施した標的化実験から3つのクローンを選択し、それらをDMEMまたは対照としてKO−DMEMのいずれかで解凍し、成長させた。KO−DMEMからDMEMに切り替えたES細胞から移入した300の胚は、41匹のVELOCIMICE(登録商標)を生成し、そのうち8匹(20%)が雌であって(表4、KO−DMEM中で標的化し、DMEM中で解凍した)、KO−DMEM中で維持したES細胞を用いて注入した対照胚から生成された雌VELOCIMICE(登録商標)の比率(18%)と類似していた(表4、KO−DMEM中で標的化し、KO−DMEM中で解凍した)。
【0408】
【表4】
【0409】
これらの結果は、DMEMに基づく培地中で誘導したクローンが、発明者らの過去の経験と同様に(表3、DMEM)、低頻度の雌VELOCIMICE(登録商標)生成を維持し、発明者らは、KO−DMEMへの短時間曝露によってこの頻度を高めることができなかったことを示した。同様に、KO−DMEMに基づく培地中で誘導したクローンは、より高頻度の雌VELOCIMICE(登録商標)を生成し、DMEMへの短時間曝露によって、雌を生成するXYクローンの傾向が低減することはなかった。実験の両方の群で、DMEMまたはKO−DMEMのいずれかでの誘導にかかわらず、解凍後にKO−DMEMに曝露したクローンは、DMEM培地中で解凍したクローンと比較して(10%及び14%)、全体的なVELOCIMOUSE(登録商標)生成についてより高く、かつ類似した効率を有した(27%及び28%)。
【0410】
XY ES細胞に完全に由来した解剖学的に正常な雌。雌VELOCIMOUSE(登録商標)現象の説明としてキメラ現象を排除するために、発明者らは、毛色の寄与により見かけ上完全にES細胞由来であった全ての雌が、尾部生検に対するqPCRアッセイにより真のVELOCIMICE(登録商標)であって、ES細胞を注入したSwiss Webster 8細胞宿主胚からの遺伝的寄与を一切示さなかったことを確認した(Poueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:91−99)。発明者らは、雌VELOCIMICE(登録商標)がXO ES細胞に由来し得、これは雌VELOCIMICE(登録商標)のみを生成するが、この可能性は、雌VELOCIMICE(登録商標)(以後、XY雌と称される)が、X及びYの各々の1コピーを有していたことを立証したqPCR染色体計数アッセイによって排除されたことが分かった。XY qPCR結果を、5匹のXY雌から採取した脾臓細胞のSKYによって確認し、これによって、検出可能な転座または欠失が一切ない正常な常染色体数も明らかとなった。
【0411】
15匹のXY雌の腹腔における検査によって、それらの外性器において全てのXY雌が示した正常な雌構造が、内部器官まで伸長していたことを確認した。全てが正常な女性生殖器を表し、半陰陽、卵精巣、または不完全な雌の性発達に関するその他の徴候を一切示さなかった。それらは、正常な卵管及び血管に富んだ子宮角を有し、活性な排卵プロセスを示唆する出血黄体を有する機能的な卵巣を有するように見えた。加えて、発明者らは、XY雌が、交配によって得られた野生型雌マウスに見られる値の範囲内にある体重及び血清生化学プロファイルを有したことを見出した。
【0412】
雌の生殖器における組織特異的宿主胚キメラ現象の可能性を排除するために、発明者らは、Swiss Webster宿主胚マーカーについて、ならびに正常な構造に関して検査した15匹のXY雌から切離した組織上のX及びY染色体についてqPCRアッセイを実施した。全てのマウスについて、発明者らは、宿主胚の寄与は一切なく、卵巣、卵管、及び子宮を含む全ての組織においてX及びY染色体の各々の1コピーを見出した。発明者らは、XY雌が正常な雄の核型を有し、注入したXY ES細胞に完全に由来し、かつ宿主胚からの検出可能な遺伝的寄与を一切示さないと結論付ける。それらは、正常な雌マウスと区別ができない外的及び内的構造を提示する。
【0413】
性転換XY雌は、繁殖可能かつ妊孕可能である。XY雌の繁殖力を試験するために、発明者らは、複数の独立したXY遺伝子標的ES細胞クローンに由来した119匹の雌F0 VELOCIMICE(登録商標)(50%のC57BL/6N:50%の129SvEvS6)を、野生型C57BL/6NTac雄と交配させた。63%(75匹)のXY雌が、少なくとも1匹の同腹仔を産生した。このレベルの繁殖力は、発明者らが、同じ親ES細胞株に由来するF1世代(75%のC57BL/6N:25%の129SvEvS6)XX雌との交配による産生で観察する、およそ90%の繁殖力よりも低いが、前述した雄から雌への性転換の場合と比較して非常に高い。XY雌と正常な交配よって生成したXX雌との妊孕力を比較するために、発明者らは、C57BL/6NTac雄を18匹のXY雌と、または14匹の野生型XX F1雌と交配させた。9か月間にわたって、発明者らは、妊孕力の3つの測定値、すなわち、雌当たりの産生した仔及び同腹仔、ならびに産子数(表5)について、XY雌母とXX対照との間に有意な差異を観察することはなかった。
【0414】
【表5】
【0415】
雄から雌への性転換形質は、F1世代に伝達されない。XY雌形質の遺伝について試験するために、発明者らは、XY雌とC57BL/6NTac雄との交配による394匹のF1子孫でX及びY染色体数を定量化した。発明者らは、表現型的に雌の子孫にはXY遺伝子型を有したものはなく、少なくとも1本のY染色体を有するマウスの全ては表現型的に雄であったことを見出した。しかしながら、発明者らは、雌(134匹)よりも2倍多い雄(260匹)及び雄と雌のマウスの両方で異常な性染色体数を観察した。異常な雄の核型(XXY及びXYY)は、XY ES細胞の胚盤胞注入によって生成した雌キメラの交配によるF1子孫で報告されていて(Bronson et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3120−3123)、不妊症と関連した。発明者らは、XY雌のXXY及びXYY雄F1子孫は不妊であり、無精液状態または極めて少ない精子数を有したかのいずれかであった非常に小さな精巣を有したことも見出した。
【0416】
XY ES細胞からのXY雌の生成を促進する培地条件。KO−DMEMに基づく培地中で成長させたES細胞は、従来のDMEM培地中で成長させたクローンよりも、8細胞胚への注入後にXY雌を生成する傾向がはるかに高かった(表3)。供給業者の仕様書には、これらの基本培地間におけるオスモル濃度の差が示されている:DMEMのおよそ340mOsm/kgと比較して、KO−DMEMではおよそ275mOsm/kg。したがって、発明者らは、塩及び糖成分の濃度を変化させることにより、低減した測定オスモル濃度を有するDMEMの改変版(mDMEM)を調製し、次いで、改変培地中で生成した標的ES細胞についてVELOCIMOUSE(登録商標)生成を評価した(表3)。その他の実験では、異なるオスモル濃度、塩濃度、及び炭酸塩濃度を、それらのES細胞から生成したXY ES細胞及びF0マウスに対するそれらの効果について試験した。繁殖可能なF0 XY雌は、218〜322mOsm/kgのオスモル濃度で、3.0〜6.4mg/mL(約51.3mM〜約109.5mM)のアルカリ金属及びハロゲン化物の塩(例えば、NaCl)の濃度で、ならびに1.5〜3.7mg/mL(約17.9mM〜約44.0mM)の炭酸塩(例えば、NaHCO
3)の濃度で生成に成功した(表6及び表7)。表7の2行目について(DMEM)、基本培地の典型的なオスモル濃度は、337〜341または340〜341mOsm/kgであり、完全培地(15%FBS、pen/strep、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、ベータ−メルカプトエタノール、L−グルタミン、及びLIFを加えたDMEM)の典型的なオスモル濃度は、329〜338mOsm/kgの間である。表7の1行目について(KO−DMEM)、基本培地の典型的なオスモル濃度は、271〜278mOsm/kgの間であり、完全培地(15%FBS、pen/strep、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、ベータ−メルカプトエタノール、L−グルタミン、及びLIFを加えたKO−DMEM基本培地)の典型的なオスモル濃度は、278〜280mOsm/kgの間である。表7の4行目について(低NaCl基本培地)、基本培地の典型的なオスモル濃度は、200mOsm/kgであり、完全培地の典型的なオスモル濃度は、約216mOsm/kgである。
【0417】
その変動がXY雌の生成における変化と一貫して相関する唯一の成分は、その他の塩濃度、測定オスモル濃度またはpHにかかわらず、重炭酸ナトリウムであった。重炭酸ナトリウム濃度の効果は、発明者らが試験した改変培地のうち4種を比較する場合に見られる。遺伝子標的化実験における、DMEM培地の濃度に等しい重炭酸ナトリウム濃度(44mM)を有したmDMEM−1(表3)に基づく培地の使用によって、DMEM培地と比較して低減した測定オスモル濃度にもかかわらず、低比率(5.7%)のXY雌を生成したES細胞が生成された。DMEMの濃度未満の重炭酸ナトリウム濃度に低下させると(mDMEM−2については26mMならびにmDMEM−3及び−4については18mM)、発明者らがKO−DMEMで観察した比率と同様に、平均で30%のXY雌を生成した(表3)。mDMEM−4培地は、最も低いオスモル濃度を有し、最高比率のXY雌(34%)及び最高効率の総VELOCIMOUSE(登録商標)生成(25%)の両方を生成した。しかし、低オスモル濃度は、必ずしも高頻度のXY雌と相関するとは限らなかった。mDMEM−1及び−3培地は、ほぼ同一のオスモル濃度を有したが、非常に異なる比率のXY雌を促進した。概して、発明者らは、XY雌を生成する培地の傾向と完全にES細胞由来のF0マウスの収率との間に直接相関を観察した。
【0418】
【表6-1】
【表6-2】
【0419】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0420】
同質遺伝子XY雄及び雌VELOCIMICE(登録商標)の交配から得られたマウスの表現型決定。繁殖可能かつ妊孕可能なXY雌の値を例証する例として、発明者らは、ヘテロ接合体同質遺伝子XY雄及び雌VELOCIMICE(登録商標)の交配から得られたF1世代ノックアウトマウスの表現型を、以下の2つの遺伝子について従来の交配から得られたF2世代ノックアウトマウスの表現型と比較した:カテプシンK、すなわち、骨の恒常性にとって非常に重要なシステインプロテアーゼをコードするCtsk、及びクローディン−7、すなわち、密着結合の主な成分をコードするCldn7。両方について、発明者らは、コード領域全体を、開始コドンとインフレームで融合したベータ−ガラクトシダーゼレポーター、続いてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ薬物選択カセットをコードする配列と置き換えた。発明者らは、F0 XY雌を、それらのクローン兄弟XY雄VELOCIMICE(登録商標)と交配させることによって野生型(+/+)、ヘテロ接合体(+/−)、及びホモ接合体ノックアウト(−/−)マウスのF1世代試験コホートを生成した。Cldn7ノックアウトについて、発明者らは、雄F0 VELOCIMICE(登録商標)をC57BL/6NTac雌と交雑させて、F1ヘテロ接合体マウスを生成し、次いで、これらのマウスを互いに交雑させてF2試験コホートを生成することによって、追加の従来の交配対照群を生成した。
【0421】
Ctskノックアウトマウスに関する過去の報告と一致して、発明者らは、XY雌の交配によって産生されたCtsk
−/−マウスは、生存可能かつ繁殖可能であったが、それらのCtsk
+/+同腹仔と比較して、それらは、BMDの著しい増加及び雌の大腿骨骨梁の保持増加を含む、多数の骨欠損を発現したことを見出した。過去に報告されたCldn7ノックアウトから予想した通り、従来の交配スキーム及びXY雌の交配スキームの両方によるCldn7
−/−マウスは、正常に発育せず、出生から数日後に死亡した。生産マウスの中でも、発明者らは、従来の交配(Cldn7
+/+、32、Cldn7
+/−、74、Cldn7
−/−、13、P=4.2×10
−7、χ
2検定)によって、及びXY雌の交配(Cldn7
+/+、54、Cldn7
+/−、108、Cldn7
−/−、24、P=9.2×10
−4、χ
2検定)の両方によって産生されたホモ接合変異体マウス数の減少を観察し、これは不完全浸透の胚致死を示した。腎臓欠陥と一致し、公開された変異体マウスと同様に、従来の交配スキーム及びXY雌の交配スキームの両方によるCldn7
−/−新生児は、血漿カリウムイオンを適切に制御できなかった。適合した成長及び腎機能表現型に加えて、発明者らは、XY雌及び従来の交配群の両方によるヘテロ接合体の主な成体器官において、同一のベータ−ガラクトシダーゼ全載発現パターンを観察した。
【0422】
考察
不和合性の遺伝的背景(Eicher et al.(1982)Science 217:535−537、Taketo−Hosotani et al.(1989)Development 107:95−105)または性決定に必要な遺伝子の変異(Bagheri−Fam et al.(2008)Dev.Biol.314:71−83、Barrionuevo et al.(2006)Biol.Reprod.74:195−201、Bogani et al.(2009)PLoS Biol 7:e1000196、Chaboissier et al.(2004)Development 131:1891−1901、Colvin et al.(2001)Cell 104:875−889、Gierl et al.(2012)Dev.Cell 23:1032−1042、Hammes et al.(2001)Cell 106:319−329、Katoh−Fukui et al.(1998)Nature 393:688−692、Meeks et al.(2003)Nat.Genet.34:32−33、Tevosian et al.(2002)Development 129:4627−4634、Warr et al.(2012)Dev.Cell 23:1020−1031)によって引き起こされるものであろうと、マウスの雄から雌への性転換は、ほぼ常に不妊症を伴う。主要な雄の性決定遺伝子であるSryに変異を持つ一部のXY雌は、繁殖可能であるが、小さく稀な同腹仔及び短い生殖寿命を有する(Lovell−Badge and Robertson(1990)Development 109:635−646)。最近では、類似した低繁殖力及び妊孕力が、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)での指向性標的化によって生成されたSryの41塩基対(bp)欠失を持つXY雌マウスについて報告された(Wang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:530−532)。TALEN誘導Sry変異の別の例では、2bp欠失を持つ1匹のXY雌マウスが生殖不能であることが見出された(Kato et al.(2013)Sci.Rep.3:3136)。
【0423】
繁殖力に障害のあるこれらの場合とは極めて対照的に、遺伝子標的ES細胞から生成されたXY雌VELOCIMICE(登録商標)は、予想とは逆であると思われる可能性のある前例のないほど高レベルの繁殖力及び正常な妊孕力を示す。正常な20X配偶子に加えて、XY雌は、異常な20Y、19O、及び21XY卵型を産生し得、後者の2種は、XY雌のF1子孫におけるXXY、XYY、及びXO性染色体核型について説明する第一減数分裂の不分離事象に起因する。したがって、XY雌は、低減した数の生存可能かつ機能的な卵を有し得る可能性がある。事実、様々なF1性染色体核型の比率は、3種の異常な配偶子型に由来する生存可能な受精子孫の4種類において25〜30%の損失を仮定するモデルとベストフィットする(χ
2分析による)。このような損失は、全ての卵型から20%の損失のみをもたらすことになり、これによって、発明者らが、発明者らの9か月の交配試験において識別し得る妊孕力の差を引き起こす可能性はないことになる。
【0424】
本明細書に記載されるXY雌の高繁殖力及び妊孕力は、雄から雌への性転換において特有の機構を示唆する。XY雌形質の伝達性の欠如によって、性転換は、遺伝子標的ES細胞クローンの一部の細胞が、エピジェネティックマークまたはXY雌の生成を有利にするように細胞を運命づけるあるその他の生理学的交代を獲得する一過性の事象であることが示される。ES細胞が獲得したマークまたは変化が何であろうと、それは固定されて安定していると思われる。XY雌を生成する傾向は、各遺伝子標的XY ES細胞クローンに特有である。各々は、通常、反復注入実験においてXY雌の再現可能な比率を生成し、個々のクローンは、それらを遺伝子標的化プロセス後に異なる培養条件に切り替えることによって「雌化」または「雄化」され得ない。XY雌現象の特徴は、それが遺伝子標的化のプロセス全体、すなわち、解凍、成長、継代、エレクトロポレーション、抗生物質の選択、増殖、及び凍結を通して雌化培地中で維持されていたES細胞のみに影響を及ぼすことであり、このことは、遺伝子標的化プロセスのストレスが、時としてXY ES細胞に対して「雌化」特性を付与するエピジェネティックマークを誘導する可能性があることを示唆している。
【0425】
発明者らは、発明者らが、DMEMから発明者らの基本培地に、すなわち、高張(>300mOsmol/kg)から等張(275〜295mOsmol/kg)KO−DMEMに切り替えた後に著しい数のXY雌を最初に観察した。細胞は、MAPキナーゼ経路を活性化することによって浸透圧ストレスに応答し、MAPキナーゼ経路のメンバーであるMap3k4及びGadd45cの変異、またはMAPキナーゼを介してシグナル伝達するインスリン経路の変異は、Sryの発現低減をもたらし、未分化生殖隆起において精巣発達を誘導することができない。高張培地中におけるES細胞の培養は、MAPキナーゼ経路を刺激し、細胞が発達中の胚で増殖した後、雄分化を増強する生理学的またはエピジェネティック環境を促進する可能性がある。逆に、等張またはわずかに低張の培地中におけるES細胞の培養は、MAPキナーゼ経路を介するシグナル伝達を抑え、それゆえ、性転換変異の効果を模倣する可能性がある。
【0426】
性決定を理解するためのその含意の他に、発明者らが本明細書で記載する雄から雌への性転換現象は、遺伝子改変マウスの生成について重要で実用的な結果を有する。XY雌は、繁殖可能かつ妊孕可能の両方であるため、発明者らはF0兄弟の相互交配を使用して、F1ホモ接合体ノックアウトマウスを生成することができ、そのマウスの表現型は、発明者らの実験室で、または公開された報告書に記載されているかのいずれかで、天然交配スキームによって生成された表現型を再現した。異常な性染色体核型を持つマウスが除外される場合であっても、試験コホートの集合について十分に正常なF1 XX雌及びXY雄が存在し続ける。発明者らの培養方法は、XO ES細胞クローンから繁殖可能な雌を生成するよりも、より迅速かつ容易であり、その理由とは、サブクローニング、及びY染色体の稀な喪失についてスクリーニングする必要がないからである。性転換を促進する条件及び関与する分子機構のさらなる調査は、任意の標的ES細胞クローンから雄及び雌VELOCIMICE(登録商標)の両方について信頼できる、予測可能かつ効率的な生成における改善された方法の発展を可能にすることもある。
【0427】
実施例2.Ddx3y(Dby)、Eif2s3y、及びSryの発現を、低オスモル濃度培地中で培養したXY ES細胞に由来する胚中でサイレンシングする、または減少させる。
胚を発達段階の性交後日数(dpc)11.5日で切離し、タイラーステージ診断を使用してそれらのおよその段階を決定した。妊娠期間が同腹仔内で大幅に変動するため、個々の胚についてのより正確なステージ診断を、後肢芽の後方から尾部の末端まで尾体節(ts)数を計数することにより達成した。この技術を使用して、8尾体節を有する胚は、10.5dpcであり、18尾体節は11.5dpcであり、30尾体節は12.5dpcである(Hacker,Capel,Goodfellow and Lovell−Badge,Devel 1995から)。
【0428】
B6マウスでは、Sryは、およそ13tsで検出可能になると報告されていて、およそ17〜18tsでピークに到達し、およそ27tsで低下する。12〜27の間のtsを有する胚をマウスから採取し、Sryの全時間経過を捕捉した。生殖隆起(生殖腺及び隣接する中腎を含有する)を、これらの段階で胚から切離し、体壁及び後腎(metanephrous)(発達中の腎臓)から分離して、RNA精製のためにTrizol中で保持した。
【0429】
Y染色体上の性決定遺伝子(Sry)は、哺乳動物において雄の性決定開始に関与する。この遺伝子は、発達の限られた期間の間(マウスのおよそ11.5dpc)に生殖腺における細胞の限られた集団中で発現される。この期間中、Sryは、精巣になる生殖腺及び雄の運命を獲得する生物に必要な全ての変化を開始する。しかしながら、Sry発現がこの期間中に減少する、または数時間後に発現される場合であっても、XY個体は卵巣を発達させて雌になり、これが性転換であると考えられている。
【0430】
なぜ一部のXYクローンが性転換マウスを生成するのかを決定するために、発明者らはRT−PCRを使用して、雄と雌の両方で早期性決定におけるマーカーの発現レベルを決定した。雄経路では、発明者らは、雄性決定の開始に関与する遺伝子:すなわち、Sry、Sox9(Sryの直接標的であると提案されていて、精巣発達の開始及び維持に必要)、雌経路の抑制時に関与する遺伝子(Fgf9)、ならびに早期精巣分化の良好なマーカーである遺伝子(Dhh及びAmh)に注目した。雌経路では、発明者らは、非常に早期な雌発達において活性な遺伝子(Foxl2)及び雄経路の抑制時に関与する遺伝子(Rspo1)に注目した。
図15を参照のこと。
【0431】
RT−PCRの試料を調製するために、組織をTRIzol中で均質化し、クロロホルムを相分離のために使用した。全RNAを含有する水相を、製造業者の仕様書に従って、MagMAX(商標)−96 for Microarrays Total RNA Isolation Kit(Life TechnologiesによるAmbion、カタログ番号AM1839)を使用して精製した。ゲノムDNAを、上に列挙したMagMAXキット(Life TechnologiesによるAmbion、カタログ番号AM1839)からのMagMAX(商標)Turbo(商標)DNase Buffer及びTURBO DNaseを使用して除去した。mRNAを、SuperScript(登録商標)VILO(商標)Master Mix(Life TechnologiesによるInvitrogen、カタログ番号11755500)を使用してcDNAに逆転写した。cDNAを、TAQMAN(登録商標)Gene Expression Master Mix(Life TechnologiesによるApplied Biosystems、カタログ番号4370074)を用いて、ABI 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用して増幅した。サイクリング条件は95℃で10分間からなり、続いて95℃で3秒間及び60℃で30秒間を40サイクルとした。Hprtを、内部標準遺伝子として使用し、任意のcDNA入力差を正規化した。参照試料は、デルタデルタCT比較分析法において全ての他方の試料と比較する#1であった。全てのプローブに、レポーターとして6FAM及びクエンチャーとしてBHQ1を標識した。配列を表8に示す。
【0432】
【表8-1】
【表8-2】
【0433】
RT−PCR試料を正規化するために、発明者らは、一般的なハウスキーピング遺伝子(Hprt)に加えて、生殖隆起に特異的であり、これらの段階で両性において等レベルで発現される遺伝子(Sf1及びGata4)を使用した。
【0434】
過去の実験は、ES細胞中で通常発現されるY染色体上の2つの遺伝子が、性転換株からのES細胞中では下方制御されたことを示した(Ddx3y及びEif2s3y、
図1を参照のこと)。これらの遺伝子は、Sxr
b領域におけるY染色体の短腕上にある。欠失試験によって、この領域は、精子形成に重要であるが、性決定には関与しないことが知られている。これらの遺伝子の両方とも、この発達期中に雄の生殖腺で発現されるが、卵巣では発現されない(GUDMAP.orgからのaffymetrixデータ)ため、発明者らは、これらの遺伝子に対してプローブを使用して、性転換を生じるプロセスが、性決定に関与する遺伝子の他に、Y染色体上におけるその他の遺伝子の発現をもたらすかどうかを示した。
【0435】
2つのクローンを、この実験に使用した:1823CF11は、歴史的にF0世代において雄のVELOCIMICE(登録商標)のみを産生するのに対して、1823CE6は、F0世代において88%、雌XYのVELOCIMICE(登録商標)(性転換した)を産生した。両方のクローンを、KO−DMEMに基づく培地中におけるそれらの単離及び増殖全体を通して同一条件下で成長させた。VELOCIMICE(登録商標)の11匹の同腹仔が、各クローンから産生された:各々からの2匹の同腹仔が予定日になるまで待って、性転換の程度を検証し、生殖隆起収集のために各クローンから9匹の同腹仔を残した(表9を参照のこと)。子孫の性別が決定し得るように予定日まで待った各クローンの同腹仔から、クローンCF11は、11匹のXY雄VELOCIMICE(登録商標)を産生したが、XY雌VELOCIMICE(登録商標)は一切産生せず、加えて2匹の雄キメラ及び1匹の雌キメラを産生した。クローンCE6は、2匹のXY雄VELOCIMICE(登録商標)及び6匹のXY雌VELOCIMICE(登録商標)を産生し、加えて3匹の雄キメラ及び6匹の雌キメラを産生した。
【0436】
各クローンについて、同時刻での胚盤胞注入タイミング及び切離開始時間にもかかわらず、性転換CE6クローンの同腹仔は、CF11と比較して発達的に進行していた(表10を参照のこと)。例えば、8:30AM及び9:30AMに採取したCF11同腹仔は、12〜13tsで始まる体節範囲を有したが、CE6同腹仔は、この時点で16〜20tsの体節範囲を有した。概して、このことは、CF11よりもCE6の方がおよそ8時間先行したことを表し、Sry発現の最初期が、CE6株におけるこの実験では測定不能であることを意味した。しかしながら、17〜18tsにおけるSry発現のピーク時間は、なお表されている。
【0437】
【表9】
【0438】
【表10-1】
【表10-2】
【0439】
対照物については、発明者らは、性決定期間中(20ts)に非近交系統CD1からの生殖隆起も採取した。この非近交系株からのXY試料は、この時点で高レベルのSryを発現し、強力な陽性対照として機能するはずである。XX試料はY染色体を有しないため、Sry、Y染色体上の遺伝子、及び雄経路のその他のマーカーについて陰性対照である。
【0440】
胚盤胞を生成するVELOCIMOUSE(登録商標)法は、注入したES細胞に完全に由来するマウスを主に生成するが、少数の宿主由来の胚ならびに宿主及びES細胞の両方によるキメラが、依然として生成される。考察からこれらの試料を排除するために、発明者らはPCRを使用して、トリオシナーゼ(tryosinase)の異なる対立遺伝子、すなわち、宿主胚盤胞系統Swiss Webster中で変異した毛色遺伝子(TyrMut)及びF1H4 ES細胞中で機能的な毛色遺伝子(TyrWt)の存在を探した。試料が0.5以上のTyrMutを有した場合、または1.5以下のTyrWtレベル及びTyrWtの20%超のTyrMutレベルを有した場合に、試料を排除した。
【0441】
各試料の生殖腺組織の量を基準としてRT−PCRデータを正規化するために、発明者らは、両性の生殖腺で特異的に発現される2つの遺伝子:すなわち、Sf1及びGata4のレベルを検査した。Sf1は、発明者らが検査した発達段階にわたって、ハウスキーピング遺伝子Hprtと比較して生殖腺中で相対的に定常な発現を有するため、これを後続の試料において正規化遺伝子として使用した。Gata4は、初期段階において増加したレベルを有すると思われるため、正規化遺伝子として使用しなかった。
【0442】
図2に示す通り、Sry発現は、性決定の正常な期間中においてCF11株からの生殖腺で検出可能である。
図2のSry発現を、この段階での両性の生殖隆起における体細胞のマーカーであるSf1と比較して示す。同様の結果を、Hprt発現を基準としてSry発現を正規化した場合に観察した(データは示さず)。20tsでのCD1 XY及びXX試料を対照物として使用した(Sry発現の陽性対照としてCD1 XY、及び陰性対照としてCD1 XX)。
図2に示す通り、Sry発現は、およそ13tsから始まって検出可能となり、およそ16〜17tsでピークに到達し、およそ25tsで低下する。しかしながら、性転換CE6クローンに由来する生殖腺において、Sry発現は、検査した性決定の全ての段階(16〜25ts)中でほとんど検出不能である。CE6クローンからの大半の生殖腺は、40サイクル後であっても検出可能なCT値を有しなかった。
【0443】
Y染色体遺伝子のDdx3y及びEif2s3yは、この段階でCF11生殖腺において予想される通りに発現されるが、
図3及び
図4に示す通り、性転換CE6クローンからの生殖腺ではほとんど検出不能である。
図3は、CE6及びCF11中においてSf1と比較したDdx3y発現を示す。
図4は、CE6及びCF11中においてSf1と比較したEif2s3y発現を示す。XY CD1及びXX CD1を、それぞれ陽性及び陰性対照物として使用した(20ts)。Sry発現に関するデータと共に、これらのデータは、Y染色体上の3つの非関連遺伝子が、性転換クローン(CE6)中で強力に抑制されることを示していて、このことは、Y染色体の大部分が、性転換クローン中でサイレンシングされる可能性があることを示唆している。
【0444】
図5A、
図5B、
図5C、及び
図5Dは、Sryの下流にある雄性決定及び精巣発達のマーカーが、非性転換CF11クローンと比較した場合に性転換CE6クローンからの生殖腺で減少することを示す。
図5Aは、Sf1と比較してSox9発現を示し、
図5Bは、Sf1と比較してFgf9発現を示し、
図5Cは、Sf1と比較してmDhh発現を示し、
図5Dは、Sf1と比較してAmh発現を示す。XY CD1及びXX CD1を、それぞれ陽性及び陰性対照物として使用した(20ts)。
【0445】
図6A及び
図6Bは、非性転換CF11クローンと比較して、性転換SE6クローンからの生殖腺における雌性決定及び卵巣発達のマーカーを示す。
図6Aは、Sf1と比較してFoxl2発現を示し、
図6Bは、Sf1と比較してRspo1発現を示す。XY CD1及びXX CD1を、それぞれ陽性及び陰性対照物として使用した(20ts)。雌性決定及び卵巣発達のマーカーは、一般にこれらよりも幾分遅い段階で開始されるが、卵巣発達の最初期マーカーのうち1つ(Foxl2)が、性転換CE6クローンからの生殖腺で強力に増加する。卵巣マーカーのRspo1も、性転換試料においてわずかに上昇している。小さな差とは、単純に、この段階で卵巣特異的発達の大部分を検出するには早すぎるという理由である可能性がある。
【0446】
クローン1823CE6は、ある時点でそのY染色体を喪失したと後になって実証されたため、発現実験を、1種の中程度の性転換株及び1種の強力に性転換する株を含む、追加のXY ES細胞クローンを使用して、両方が実験中の全ての時点でY染色体を依然として有していたかを確かめるために、上記のように反復した。クローンを、KO−DMEMに基づく培地中におけるそれらの単離及び増殖全体を通して同一条件下で成長させた。以下でさらに詳しく説明されるように、これらの実験は、Sry、Y染色体遺伝子、及び雄性決定遺伝子の発現がXY ES細胞性転換株では減少し、低頻度の性転換をもたらす株と比較した場合、最も高い頻度の性転換をもたらす株では、より強力に抑制される傾向があることを確認した。加えて、これらの実験は、Y染色体遺伝子がマウス発達中、及び出生後に試験した全ての器官において性転換株では一貫して抑制されるため、それらは性転換現象に関して報告する上で適切な方法であることを実証した。加えて、決して性転換しない1種のXY ES細胞株では、非常に高レベルのY染色体遺伝子の大半及び雄性決定遺伝子を観察した。
【0447】
図7では、Sry発現を、性決定中の生殖腺で測定した。3種の対照株を使用した:交配によって生成したXYマウス胚、非標的XY ES細胞からのXYマウス胚、及び性転換しないXY ES細胞株(1823−CF11)からのXYマウス胚。これらの対照物は、Sry発現の通常の時間経過を示し、開始はおよそ14ts、ピークは17〜18tsで、26tsで消失する。2種の性転換株は、この臨界期中に著しいSry発現の低下を示した。株#1は、強力に性転換する株(平均で86%のXY雌)であり、この時間経過にわたって、株#2(15069−CD1、45%のXY雌)よりもSry発現が低い。XXマウス胚は一切発現を有しないため(Y染色体の欠如ゆえに)、陰性対照として機能する。
【0448】
図8A〜
図8Cは、性決定中の生殖隆起で、Y染色体上における以下の3つの遺伝子に関する発現レベルを示す:Eif2s3y(
図8A)、Uty(
図8B)、及びDdx3y(
図8C)。3つ全てが、非性転換XY ES細胞株から生成したマウス胚において最も強力な発現、対照物(交配によって生成したXYマウス胚及び非標的XY ES細胞からのXYマウス胚)において中程度のレベルならびに2種の性転換XY ES細胞株から生成したXYマウス胚において最も低いレベルを示し、このことは、Sryだけでなく、Y染色体上の複数の遺伝子が、このプロセスの影響を受けることを示していた。
図9は、
図7及び
図8A〜
図8C中のデータを単に要約しただけの同じデータを示し、これは、胚の生殖隆起でアッセイした4種全てのY染色体遺伝子の平均を示している。
【0449】
Y染色体遺伝子の発現が、性転換株から生成したマウス中で出生後も依然として抑制されるかどうかを決定するために、Ddx3y(
図10A)、Uty(
図10B)、Eif2s3y(
図10C)、及びKdm5d(
図10D)の発現レベルを、非標的XY ES細胞株、非性転換XY ES細胞株、及び性転換株から生成したマウス中において出生から1週間後に複数の器官で決定した。発現レベルを、生殖腺、腎臓、心臓、肝臓、及び手足で試験した。
図10A〜
図10Dは、Y染色体遺伝子が、複数の器官において性転換株から生成したマウス中で出生後も依然として抑制され、これらの遺伝子の発現レベルは、非標的XY ES細胞からのマウス中におけるレベル、及び性転換しないXY ES細胞株からのマウス中におけるレベルよりも低いことを示す。
【0450】
図11A(Sox9)及び
図11B(Fgf9)は、Sryの下流にある雄性決定及び精巣発達のマーカーが、非性転換XY ES細胞株、非標的対照XY ES細胞株、及び交配によって生成したXXマウス胚と比較した場合、性転換XY ES細胞株から生成したマウス胚からの生殖腺で減少することを示す。交配によって生成したXYマウス胚を、追加の対照物として使用した。Sox9及びFgf9の両方とも、雄経路における重要な初期遺伝子であり、両方とも、生殖腺においてSry発現のピークあたり(16〜18ts)で上方制御され、雄の精巣発達に必要である。Sox9及びFgf9のレベルは、性転換しない株からの生殖腺では最も高く、対照物(交配によって生成したXYマウス胚及び非標的XY ES細胞からのマウス胚)では中程度であり、交配によって生成したXXマウス胚では最も低い。XXマウス胚を使用して、この期間中のSox9及びFgf9の発現における雌レベルを示した。2種の性転換株から生成したマウス胚中の発現レベルは、XX対照物とXY対照物との間に収まり、より強力に転換する株#1は、Sox9誘導の期間中に#2よりも低いレベルを示している。
【0451】
Dhh及びAmhは、精巣発達中には強力かつ特異的に上方制御され、卵巣発達中には存在しない精巣発達のマーカーである。
図15を参照のこと。これらの遺伝子の両方とも、雄の対照物(性転換しない株からのXYマウス胚、交配によって生成したXYマウス胚、及び非標的ES細胞からのXYマウス胚)からの生殖腺で最も高く発現された。2種の性転換株から生成したマウスは、XX交配対照物とXY交配対照物との間に収まる発現レベルを有し、より強力に転換する株#1は、#2よりも低く、雌により近いレベルを示した(
図12A(Dhh)及び
図12B(Amh))。
【0452】
Foxl2は、雌発達の最初期マーカーであり、21〜23tsの間で雌の生殖腺において強力に上方制御される。
図15を参照のこと。
図13に示す通り、2種の性転換XY ES細胞株から生成したマウスにおけるこの遺伝子の発現レベルは、XX交配対照物とXY交配対照物との間に収まる。
【0453】
実施例3.XY ES細胞クローンにおけるDdx3y(Dby)、Eif2s3y、及びUty発現の欠如または減少は、これらのXY ES細胞クローンからの繁殖可能なXY F0雌マウスの生成と相関する。
表11は、VGF1 ES細胞株における遺伝子標的化によるXY ES細胞クローンが、8細胞胚へのXY ES細胞クローンのマイクロインジェクション後に雌VELOCIMICE(登録商標)を生成する傾向を示す。全てのクローンを、標的化及びマイクロインジェクションプロセス全体を通して、KO−DMEMに基づく培地中で維持し、培養した。クローンのこの試料から、XY雌VELOCIMICE(登録商標)を生成する能力がクローン特異的であり、0〜60%の範囲であることは明らかである。これらの結果は、複数回のマイクロインジェクション実験で再現可能であった:雌を生成しなかったクローンが、反復マイクロインジェクションにおいてこの形質を維持したのに対して、雌を生じたクローンは、反復マイクロインジェクション実験においておよそ同じ比率の雌を生じる傾向があった。効果を、DMEMに基づく培地中でクローンを再成長させることによって反転できなかった。ES細胞を、標的化プロセス全体、すなわち、エレクトロポレーション、薬物耐性コロニーの選択、標的変異についてのスクリーニング、増殖、及び凍結保存において、DMEMに基づく培地またはKO−DMEMに基づく培地のいずれかで成長させて維持した遺伝子標的化実験からのES細胞クローンを解凍し、8細胞胚へのマイクロインジェクションに備えて3日間、反対の培地中で成長させた。DMEMに基づく培地中で誘導したクローンは、低頻度の雌VELOCIMICE(登録商標)生成を維持し、これは、KO−DMEMへの短時間曝露で増加し得なかった。同様に、KO−DMEMに基づく培地中で誘導したクローンは、より高頻度の雌VELOCIMICE(登録商標)を生成し、DMEMへの短時間曝露によって、雌を生成するXYクローンの傾向が低減することはなかった。
【0454】
【表11】
【0455】
次いで、雌化対非雌化遺伝子標的XY ES細胞クローンにおける遺伝子発現プロファイルを比較した(表12を参照のこと)。4種のES細胞クローンを使用して、各々を全く同じように処理した。4種全てのクローンは、最初の解凍、標的化ベクターを用いたエレクトロポレーション、薬物耐性クローンの選択、及び凍結を含む、プロセス全体を通して、同じKO−DMEMに基づく培地中で成長させたVGF1細胞に由来した。クローンのうち2種は、複数回のマイクロインジェクションでXY雌VELOCIMICE(登録商標)を一切生成せず、2種のクローンは、反復マイクロインジェクションにおいて>50%のXY雌VELOCIMICE(登録商標)を生成した。Y染色体遺伝子Ddx3y、Uty、及びEif2s3yの発現レベルは、非雌化ES細胞と比較した場合、雌化ES細胞では10〜20分の1であった。Y染色体以外の染色体上における2つの遺伝子(Col10a1及びTm4sf1)を対照として使用した。
【0456】
【表12-1】
【表12-2】
【0457】
別の実験では、KO−DMEM培地中で全く同じように誘導した5種の遺伝子標的ES細胞クローンを、サブクローニング実験のために選択した。クローン985−AA8及び1823−CF11が、3回の別々のマイクロインジェクション実験で雄のVELOCIMICE(登録商標)のみを生成したのに対して、クローン15069−CD1、4048−BC4、及び979−AC7は、反復マイクロインジェクションにおいて、平均で30%〜50%のXY雌VELOCIMICE(登録商標)を生成した(表13を参照のこと)。ES細胞クローンを液体窒素保存から解凍し、2つのレプリカ96ウェルプレートにサブクローニングし、プレートのうち1つを−150℃で保存した一方で、他方を成長させてDNA及びRNA調製物用に2つのその他のプレート上に継代した。DNAプレートを使用してY染色体の喪失についてスクリーニングした一方で、RNAプレートを使用して、RT−qPCRによりEif2s3y、Uty、及びDdx3yの発現を検査した。表13に示す通り、クローンがXY雌VELOCIMICE(登録商標)を生成する傾向は、Eif2s3y、Uty、及びDdx3yを発現しない、または減少した発現を有するサブクローンのパーセンテージに正比例し、このことは、サブクローンにおけるY染色体遺伝子発現の喪失によって、クローンがXY雌VELOCIMICE(登録商標)を生成することになる可能性が予測され得ることを示した:Eif2s3y、Uty、及びDdx3yの発現についてサイレンシングされたサブクローンの比率が高まるほど、親ES細胞クローンがXY雌VELOCIMICE(登録商標)を生成する傾向がますます高くなった。
【0458】
【表13-1】
【表13-2】
【0459】
表13の上部のデータを生成するために、雌及び雄XYマウスの両方を生成する3種の親XY ES細胞株からのサブクローンを、Eif2s3y、Uty、及びDdx3y遺伝子発現のRNA分析に供した。試験した3種の部分的に性転換しているクローンは、979−AC7、4048−BC4、及び15069−CD1を含んだ。32のサブクローンを、クローン979−AC7のサブクローンA1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、F1〜F4、G1〜G4、及びH1〜H4、クローン4048−BC4のサブクローンA5〜A8、B5〜B8、C5〜C8、D5〜D8、E5〜E8、F5〜F8、G5〜G8、及びH5〜H8、ならびにクローン15069−CD1のサブクローンA9〜A12、B9〜B12、C9〜C12、D9〜D12、E9〜E12、F9〜F12、G9〜G12、及びH9〜H12を含む、各々について試験した。Droshaの発現を対照として使用し、各遺伝子の発現を、B2m発現と比較して決定した。RT−PCR結果を、
図14A〜
図14CにおいてΔCt(対象となる遺伝子−B2m)という形態で示す。負のΔCtは、より高い相対的発現を示し、正のΔCtは、より低い相対的発現を示す。
図14Aに示す通り、クローン979−AC7の32サブクローンのうち6つ(18.8%)では、Eif2s3y、Uty、またはDdx3yについて一切発現を検出しなかった。
図14Bに示す通り、クローン4048−BC4の32サブクローンのうち18(56.2%)では、Eif2s3y、Uty、またはDdx3yについて一切発現を検出しなかった。
図14Cに示す通り、クローン15069−CD1の32サブクローンのうち22では、Eif2s3y、Uty、またはDdx3yについて一切発現を検出しなかった。しかしながら、32サブクローンの後続の分析によって、32サブクローンのうち1つ、すなわち、クローンD9がY染色体を喪失していたことが示され、このことは、15069 CD1の32サブクローンのうち21(65.6%)がY染色体を有したが、Eif2s3y、Uty、またはDdx3yに関して検出可能な発現を一切有しなかったことを意味した。Y染色体の存在評価を、Y染色体上の2つの遺伝子:すなわち、Sry及びEif2s3yのプローブを用いたコピー数アッセイを行って実施した。クローン979−AC7の32サブクローン全て、クローン4048−BC4の32サブクローン全て、及びクローン15069−CD1の31/32サブクローンを、Y染色体の1コピーを有するかについてコピー数アッセイによって確認した。
【0460】
表13の下部のデータを生成するために、雄XYマウスのみを生成する2種の親XY ES細胞株からのサブクローンを、Eif2s3y、Uty、及びDdx3y遺伝子発現のRNA分析に供した。試験した2種のクローンは、985−AA8及び1823−CF11を含んだ。48のサブクローンを、クローン985−AA8のサブクローンA1〜A6、B1〜B6、C1〜C6、D1〜D6、E1〜E6、F1〜F6、G1〜G6、及びH1〜H6、ならびにクローン1823−CF11のサブクローンA7〜A12、B7〜B12、C7〜C12、D7〜D12、E7〜E12、F7〜F12、G7〜G12、及びH7〜H12を含む、各々について試験した。Droshaの発現を対照として使用し、各遺伝子の発現を、B2m発現と比較して決定した。RT−PCR結果を、
図14D〜
図14EにおいてΔCt(対象となる遺伝子−B2m)という形態で示す。負のΔCtは、より高い相対的発現を示し、正のΔCtは、より低い相対的発現を示す。
図14Dに示す通り、クローン985−AA8の48サブクローンのうち3つ(6.25%、クローンA4、F6、及びH3)では、Eif2s3y、Uty、またはDdx3yについて一切発現を検出しなかった。2種のその他の985−AA8サブクローン、すなわち、D1及びF2は、Y染色体を喪失していたことが分かった。
図14Eに示す通り、クローン1823−CF11の48サブクローンのうち2つ(4.16%、クローンA9及びE8)では、Eif2s3y、Uty、またはDdx3yについて一切発現を検出しなかった。1種のその他の1823−CF11サブクローン、すなわち、C12は、Y染色体を喪失していたことが分かった。Y染色体の存在評価を、Y染色体上の1つの遺伝子:すなわち、Sryのプローブを用いたコピー数アッセイを行って実施した。Y染色体の1コピーの存在を、985 AA8の46/48サブクローン及び1823 CF11の47/48サブクローンにおけるコピー数アッセイによって確認した。
【0461】
実施例4.Y染色体遺伝子SryにTALEN誘導変異を有するF0 XY雌の繁殖力の増加。
SryのlacZ置換対立遺伝子を含む標的欠失を、Sry開始コドンとインフレームで融合したlacZならびに38及び37kbの相同腕に隣接し、bMQライブラリー(129S7/SvEv Brd−Hprt b−m2)からのBACに基づくネオマイシン耐性遺伝子を含む挿入カセットを含む大きな標的化ベクター(LTVEC)を用いて作製した。LTVEC(NIH KOMPプロジェクトVG12778 LTVEC(URL“velocigene.com/komp/detail/12778”のWorld Wide Web(www)上でインターネットによって入手可能)を参照のこと)は、その相同腕において、Sry発現に関する全ての既知の制御エレメントを含む。そのlacZコードベータ−ガラクトシダーゼは、Sry遺伝子の組織特異的かつ発達段階特異的発現のレポーターとして機能する。標的化ベクターを用いたSry遺伝子の正確な標的化によって作製した対立遺伝子は、Sryコード配列の欠失及び挿入カセットによる置換を含む。標的化ベクターを使用して、VGB6(B6A6としても知られる)C57BL/6及びVGF1(F1H4としても知られる)C57BL6/129 F1ハイブリッドES細胞株の両方でSry遺伝子を標的とした。VGF1(F1H4)マウスES細胞は、雌C57BL/6NTacマウスを雄129S6/SvEvTacマウスと交雑させることによって生成したハイブリッド胚に由来した。したがって、VGF1 ES細胞は、129S6/SvEvTacマウスからのY染色体を含有する。VGF1細胞株から生成した雌XYマウスは、129S6/SvEvTacマウスに由来するY染色体を含有する。
【0462】
発明者らは、Sry遺伝子におけるHMGボックスDNA結合モチーフコード配列(上流認識配列:5’−TCCCGTGGTGAGAGGCAC−3’(配列番号:43)、下流認識配列:5’−TATTTTGCATGCTGGGAT−3’(配列番号:44))の部分を標的とするように設計されたTALENを得た。TALEN−1は、複数の実験においてSry遺伝子座にNHEJ変異を作製する際に活性であった。
【0463】
二本鎖DNA切断の非相同末端結合(NHEJ)修復の結果であると推定される欠失変異を、TALENの作用によってSry遺伝子中に作製した。VGB6及びVGF1マウスES細胞の両方とも、TALEN誘導変異を用いて作製した。表14は、全てのクローン及びそれらが持つ欠失変異のサイズ及びそれらがSry遺伝子座にlacZ−neo LTVEC挿入カセットを有するかどうかに関する一覧を含有する。表14は、8細胞胚へのSry変異体ES細胞クローンのマイクロインジェクションによって生成したF0世代VELOCIMICE(登録商標)の結果、及びSry遺伝子中に変異を有するXY雌VELOCIMICE(登録商標)(性転換した雌)の交配結果も含む。
【0464】
VGB6 ES細胞に由来する、Sry変異を有するVELOCIMICE(登録商標)の全てが、Sryの不活性化から予想通り、雌であった。表14に示す通り、Sry変異体雌B6 VELOCIMICE(登録商標)は、試験交配した場合に生殖不能であって、これはSry変異に関する文献と一致している。生殖不能ゆえに、LTVEC標的化(すなわち、正確な標的Sry欠失及びlacZ−neo挿入を有するクローン)を、F1子孫への変異体対立遺伝子の伝達によっては正式に確認しなかった。しかしながら、発明者らのデータは、VGF1クローンを用いて非常に異なる結果を実証した。
【0465】
KO−DMEM様低浸透強度培地中で維持できず、マウスを生成する能力を保持できないVGB6 ES細胞とは異なり、VGF1細胞は、KO−DMEM様低浸透強度培地中で維持され得る。したがって、実験を行って、Sryに変異を有するVGF1 XY ES細胞が培地によって雌化され得るかどうかを決定した(すなわち、それらが、VGB6 Sry変異体XY ES細胞とは異なり、いくつかの繁殖可能なXY Sry変異体雌を生成し得るかどうかを決定した)。最初に、VGF1 ES細胞を、通常通りに、雌化する発明者らのKO−DMEM様低浸透強度増殖培地中で維持した:この培地中で成長させた、マイクロインジェクションしたXYクローンの一部は、それらが変異を持たなくとも、繁殖可能なXY雌を生成することになる。例えば、クローンTH4(データは示さず)は、Sry変異を一切有しないが、2匹の雌と6匹の雄のVELOCIMICE(登録商標)を産生した。
【0466】
5bp〜1kbを超える範囲のTALEN誘導小欠失を有する6種のVGF1 ES細胞クローンをマイクロインジェクションした。LTVEC標的化(すなわち、正確な標的Sry欠失及びlacZ−neo挿入を有するクローン)は、KO−DMEM様低浸透強度増殖培地中で成長させたVGF1 ES細胞中では観察されなかった。全てが雌VELOCIMICE(登録商標)を産生し、そのうち32匹を交配させた。驚いたことに、Sry変異体XY雌VELOCIMICE(登録商標)の全てが繁殖可能であった:各々が少なくとも1匹の同腹仔を産生した(表14)。Sry変異体XY雌の多くが、正常な産子数で複数の同腹仔を産生したが、XY雌の一部は、1匹または2匹の小さな同腹仔のみを産生した。遺伝子型を同定したこれらの交配からのF1マウス299匹のうち、およそ半分(146匹、49%)が正常なXY雄または正常なXX雌である。174匹(58%)のF1マウスが表現型的に雌であったが、125匹(42%)は表現型的に雄であった。26匹の雌(雌の15%、総F1世代の8.6%)は、変異体Sry対立遺伝子が遺伝したXY雌であった。XY卵母細胞と関連する減数分裂の不分離事象ゆえに、多数の異常な遺伝子型、すなわち、XXY、XYY、XO、XXYYの一部が変異体Sry対立遺伝子を含み、その遺伝子型をSry変異体XY雌VELOCIMICE(登録商標)のF1子孫中で観察した。
【0467】
表14は、Sryの変異を有した従来のDMEMに基づく培地中で成長させたES細胞に由来するXY雌の繁殖力結果も報告する。予想外にも、KO−DMEMに基づく培地中で成長させたES細胞を用いた同様の実験に関する結果と比較して、DMEMに基づく培地中でのLTVEC標的化によって、正確な標的Sry欠失及びlacZ−neo挿入(すなわち、TALEN補助LTVEC標的欠失−置換)を有するクローンが生成された。4種の標的クローンに由来する10匹のXY
Sry(lacZ)雌のうち9匹は、交配時に生産仔を産生し、90%の出生率であった。
【0468】
【表14-1】
【表14-2】
【0469】
VGB6 XY ES細胞に由来するSry変異を有するVELOCIMICE(登録商標)の繁殖力を回復させるために、または従来のDMEMに基づく培地中で成長させたVGF1 ES細胞に由来するSry変異を有するVELOCIMICE(登録商標)の繁殖力もしくは妊孕力を増加させるために、Y染色体における追加の領域をXY ES細胞中でサイレンシングする。このような追加のサイレンシングは、XY雌の生成も増加させ得る。一例では、Zfy2遺伝子を、ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ、もしくはCRISPR−Casヌクレアーゼ)及び/またはSry遺伝子の標的化について上に記載したようなLTVECなどの標的化ベクターを用いて生成した標的遺伝子改変によってサイレンシングする。
【0470】
実施例5.ES細胞におけるY染色体遺伝子の発現。
どのY染色体遺伝子がマウス胚性幹(ES)細胞中で発現されて、性転換マーカーの候補であり得るのかを決定するために、RNA−seq分析をF1H4 ES細胞で行った。表15に示す通り、Eif2s3y、Ddx3y、Erdr1、Kdm5d、Uty、Ube1y1、Zfy1、Zfy2、Rbmy1a1、Sly、Usp9y、LOC100041346は、F1H4 ES細胞において検出可能な発現レベルを有する。Sryは、F1H4 ES細胞中で検出可能な発現レベルを有しなかった。
【0471】
【表15-1】
【表15-2】