特許第6868624号(P6868624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6868624樹脂組成物およびこれを用いた黒色樹脂鋼板、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868624
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびこれを用いた黒色樹脂鋼板、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20210426BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 123/06 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20210426BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20210426BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20210426BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20210426BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20210426BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20210426BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20210426BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20210426BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20210426BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210426BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20210426BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C23C28/00 A
   C09D167/00
   C09D161/28
   C09D123/06
   C09D133/04
   C09D7/20
   C09D7/47
   C08L61/28
   C08L33/04
   C08L23/06
   C08K3/013
   C08K5/42
   C08K5/521
   B05D1/36 Z
   B05D3/10 F
   B05D7/14 J
   B05D7/24 302V
   B32B15/08 G
   B32B15/09 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-529263(P2018-529263)
(86)(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公表番号】特表2019-505608(P2019-505608A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】KR2016014472
(87)【国際公開番号】WO2017099533
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0175376
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】クォン、 ムン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ギ チョル
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ジュン ホ
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/112544(WO,A1)
【文献】 特表2014−515053(JP,A)
【文献】 特開2010−247396(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1383008(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
C09D 101/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全組成物100重量%に対して、ポリエステル樹脂40〜50重量%、メラミン樹脂3〜10重量%、耐摩耗性粒子1〜5重量%、ワックス0.1〜3重量%、酸触媒0.3〜1.5重量%、顔料3〜5重量%、添加剤2〜5重量%および残部の溶媒を含み、
前記ポリエステル樹脂は、第1樹脂および第2樹脂から構成され、
前記第1樹脂は、前記第2樹脂に比べて分子量が高く、
前記第1樹脂のガラス転移温度と前記第2樹脂のガラス転移温度との差は、絶対値で25℃以下であり、
前記第1樹脂の分子量は、15,000Mn超過および80,000Mn以下であり、前記第2樹脂の分子量は、12,000Mn〜20,000Mnであり、
前記第1樹脂のガラス転移温度は5〜20℃であり、前記第2樹脂のガラス転移温度は20〜30℃であり、
前記ワックスは、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組み合わせを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂100重量%に対して、前記第1樹脂は、15〜50重量%含まれるものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記耐摩耗性粒子は、ポリメチルメタクリレート、アクリル、またはこれらの組み合わせを含むものである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ケトン系、ハイドロカーボン系、二塩基性エステル、またはこれらの組み合わせを含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸触媒は、ジノニルナフタレンスルホン酸を含むものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記顔料は、カーボンブラックおよびチタニウムオキサイドが混合された形態であり、
チタニウムオキサイドに対するカーボンブラックの重量比率は、1〜30である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記添加剤は、付着増進剤、レベリング剤、分散剤、および消光剤を含むものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記付着増進剤は、ヒドロキシルホスフェートエステル、またはこれらの組み合わせを含むものである、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記レベリング剤は、ポリアクリレート、ポリシロキサン、またはこれらの組み合わせを含むものである、請求項7または8に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、鋼板表面処理用樹脂組成物およびこれを用いた黒色樹脂鋼板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒色樹脂鋼板は、LCD、LEDなど各種TVディスプレイのリヤカバー(rear cover)に適用される鋼板である。塗装業者でいわゆるPCM(pre−coated metal)の形態で黒色樹脂後処理され、加工業者に運送されてプレスインチに合わせた大きさに剪断され、最終的にプレス業者に運送される。プレス工程でかつて一般の打抜油が適用され、プレス、脱脂、水洗、乾燥の工程を連続的に経てプレス成形性の確保が容易であった。しかし、最近、プレス後、脱脂、水洗などの後続工程を省略するために、既存の打抜油に比べて揮発速度が速く、粘度が低い速乾性打抜油の適用が拡大されている。速乾性打抜油は、溶媒として、脂肪族炭化水素のほか、トルエン、キシレンなどのような揮発性の大きい溶媒を用いた非水溶性が一般的であるが、プレス時、鋼板とプレス金型との摩擦によって発生した熱を冷却させる機能のほか、鋼板の潤滑性を補完する役割を果たす。
【0003】
このような鋼板の潤滑性補完の側面で、速乾性打抜油は、既存の打抜油に比べて潤滑性補完作用が相対的に小さく、打抜油の揮発後に残存シミが発生し、特に、冬期の場合、シミの発生が深刻化する問題を引き起こしている。したがって、より高い水準の鋼板自体の潤滑性が求められており、特に、冬期のように打抜油の揮発が遅延する環境で鋼板と打抜油との間の反応性を最小化する技術的な進展が求められている。
【0004】
黒色樹脂コーティン後の溶液硬化のために、従来は、一般に熱風硬化を適用してきた。熱風硬化は硬化炉内に温風を吹き込んでストリップに熱を伝達する方式で、韓国内外のカラーコーティング鋼板メーカーの大部分が熱風硬化方式を適用してきている。
【0005】
反面、本発明では、インダクション硬化(Induction heating)を適用したが、この方式は、移動する導体つまり、ストリップが磁場を通過する時に発生する誘導電流によって硬化する方式である。熱風硬化が対流によって熱伝達が行われるのに対し、インダクション硬化は、最初の熱発生が加熱対象の鋼板であり、対流に比べて熱伝達効率の高い伝導方式によって熱伝達が行われるので、硬化効率が相対的に優れている。
【0006】
しかし、素地鉄において黒色樹脂コーティング層の方向に熱が伝達される時、中間層のクロムフリー下塗りの付着量が非常に大きい場合、熱伝導度の急激な減少で黒色樹脂上塗りの硬化不良のような問題点が発生しうる。したがって、インダクション硬化における硬化効率を極大化し、良好な表面品質を確保するための技術的な進展が求められている状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋼板表面処理用樹脂組成物およびこれを用いた黒色樹脂鋼板、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態の樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、ポリエステル樹脂40〜50重量%を含むが、前記ポリエステル樹脂は、主樹脂および補助樹脂から構成され、前記主樹脂は、補助樹脂に比べて分子量が高く、前記主樹脂と補助樹脂とのガラス転移温度の差は、25℃以下である樹脂組成物を提供することができる。
【0009】
前記ポリエステル樹脂100重量%に対して、前記主樹脂は、15〜50重量%含まれ、前記主樹脂の分子量は、15,000Mn超過および80,000Mn以下であり、前記補助樹脂の分子量は、12,000Mn〜20,000Mnであってもよい。
【0010】
前記主樹脂のガラス転移温度は、5〜20℃であり、前記補助樹脂のガラス転移温度は、20〜30℃であってもよい。
【0011】
前記樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、メラミン樹脂3〜10重量%、耐摩耗性粒子1〜5重量%、ワックス0.1〜3重量%、および残部の溶媒をさらに含んでもよい。
【0012】
前記耐摩耗性粒子は、ポリメチルメタクリレート、アクリル、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
前記ワックスは、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
前記溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ケトン系、ハイドロカーボン系、二塩基性エステル、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
前記樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、酸触媒0.3〜1.5重量%、顔料3〜5重量%、および添加剤2〜5重量%をさらに含んでもよい。
【0016】
前記酸触媒は、ジノニルナフタレンスルホン酸であってもよい。
【0017】
前記顔料は、カーボンブラックおよびチタニウムオキサイドが混合された形態であってもよく、チタニウムオキサイドに対するカーボンブラックの重量比は、1〜30であってもよい。
【0018】
前記添加剤は、付着増進剤、レベリング剤、分散剤、および消光剤を含むことができる。
【0019】
前記付着増進剤は、ヒドロキシルホスフェートエステル、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0020】
前記レベリング剤は、ポリアクリレート、ポリシロキサン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0021】
本発明の他の実施形態の黒色樹脂鋼板は、素地鋼板;前記素地鋼板の一面または両面に位置するクロムフリー下塗り被膜;および前記クロムフリー下塗り被膜上に位置するコーティング層;を含むことができ、
前記コーティング層の全元素組成100重量%に対して、炭素(C):70〜80重量%、シリコン(Si):1〜4重量%、チタニウム(Ti):1〜5重量%、および残部酸素(O)を含むことができる。
【0022】
前記耐摩耗性粒子は、前記コーティング層の厚さに対する平均粒子径が0.2〜0.8倍の粒子、および前記コーティング層の厚さに対する平均粒子径が1.0〜2.0倍の粒子が混合されたものであってもよい。
【0023】
前記耐摩耗性粒子中、平均粒子径が大きい粒子は、前記耐摩耗性粒子の総重量%に対して、60〜80重量%含まれる。
【0024】
前記クロムフリー下塗り被膜上に位置する前記コーティング層の厚さは、3〜20μmであってもよい。
【0025】
前記クロムフリー下塗り被膜上に位置する前記コーティング層の表面粗さ(Ra)は、1μm未満であってもよい。
【0026】
前記素地鋼板の一面または両面に位置するクロムフリー下塗り被膜の付着量は、500〜2,000mg/mであってもよい。
【0027】
前記素地鋼板は、炭素鋼、アルミニウム鋼、アルミニウム合金鋼、ステンレス鋼、銅鋼、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛を含む二元系または三元系合金メッキ鋼板、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0028】
本発明のさらに他の実施形態の黒色樹脂鋼板の製造方法は、素地鋼板を準備する段階;前記素地鋼板の一面または両面にクロムフリー下塗り被膜を形成する段階;および前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティング層を形成する段階;を含むことができる。
【0029】
この時、前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティング層を形成する段階;は、前記組成物を前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティングする段階;前記組成物がコーティングされた素地鋼板を硬化する段階;および前記硬化した素地鋼板を水洗および乾燥する段階;を含むことができ、前記コーティング層は、樹脂組成物を塗布して形成され、前記樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、ポリエステル樹脂40〜50重量%を含むが、前記ポリエステル樹脂は、主樹脂および補助樹脂から構成され、前記主樹脂は、補助樹脂に比べて分子量が高く、前記主樹脂と補助樹脂とのガラス転移温度の差は、25℃以下である黒色樹脂鋼板の製造方法を提供することができる。
【0030】
前記ポリエステル樹脂100重量%に対して、前記主樹脂は、15〜50重量%含まれる。
【0031】
前記主樹脂の分子量は、15,000Mn超過および80,000Mn以下であり、前記補助樹脂の分子量は、12,000Mn〜20,000Mnであってもよい。
【0032】
前記主樹脂のガラス転移温度は、5〜20℃であり、前記補助樹脂のガラス転移温度は、20〜30℃であってもよい。
【0033】
前記組成物がコーティングされた素地鋼板を硬化する段階;により、前記素地鋼板は、210〜240℃まで熱処理される。
【0034】
前記素地鋼板の一面または両面にクロムフリー下塗り被膜を形成する段階;において、前記クロムフリー下塗り被膜の付着量は、500〜2,000mg/mであってもよい。
【0035】
素地鋼板を準備する段階;において、前記素地鋼板は、炭素鋼、アルミニウム鋼、アルミニウム合金鋼、ステンレス鋼、銅鋼、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛を含む二元系または三元系合金メッキ鋼板、またはこれらの組み合わせを含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた黒色樹脂鋼板は、速乾性打抜油の塗布後にもプレス加工性に優れたものになる。
【0037】
分子量およびガラス転移温度が異なる2種の樹脂を含むポリエステル樹脂が含まれている樹脂組成物を用いて、高い硬度と優れた柔軟性を有する黒色樹脂鋼板を提供することができる。また、前記鋼板の架橋度を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、インダクション硬化における熱伝達を示すものである。
図2図2は、インダクション硬化前後のコーティング層を模式図に示すものである。
図3図3は、ドロービード評価装置を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面とともに詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0040】
したがって、いくつかの実施例において、よく知られた技術は本発明が曖昧に解釈されることを避けるために具体的に説明されない。別の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解される意味で使用できる。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。また、単数形は、文章で特に言及しない限り、複数形も含む。
【0041】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、ポリエステル樹脂40〜50重量%を含むが、前記ポリエステル樹脂は、主樹脂および補助樹脂から構成され、前記主樹脂は、補助樹脂に比べて分子量が高く、前記主樹脂と補助樹脂とのガラス転移温度の差は、25℃以下である樹脂組成物を提供することができる。
【0042】
より具体的には、前記ポリエステル樹脂は、主樹脂および補助樹脂の2種から構成される。さらにより具体的には、前記主樹脂の分子量は、15,000Mn超過および80,000Mn以下であり、前記補助樹脂の分子量は、12,000Mn〜20,000Mnであってもよい。また、前記主樹脂は、補助樹脂に比べて分子量が高くてよい。
【0043】
加えて、前記主樹脂のガラス転移温度は、5〜20℃であってもよく、前記補助樹脂のガラス転移温度は、20〜30℃であってもよい。また、前記主樹脂と補助樹脂とのガラス転移温度の差は、25℃以下であってもよい。
【0044】
この時、前記ガラス転移温度は、高分子の分子鎖が自由に動ける状態転移温度を意味する。より具体的には、ガラス転移温度が低いほど硬度が低くなって加工性に優れているのに対し、ガラス転移温度が高いほど硬度の増加で加工性に劣ることがある。したがって、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、「低ガラス転移温度−高分子量」および「高ガラス転移温度−低分子量」の2種のポリエステル樹脂を混合して、優れた硬度、架橋度および柔軟性を同時に確保することができる。
【0045】
より具体的には、主樹脂の分子量が少ない場合、短い高分子の長さによって柔軟性および加工性の確保が困難になりうる。また、ロールコーティング方法を利用してコーティングする時、ピックアップ性(Pick−up)が低下しうる。反面、主樹脂の分子量が多い場合、加工性の向上効果がわずかでありうる。さらに、粘度上昇によって塗料の拡散性が低下し、硬化後、架橋度の低下をもたらすことがある。
【0046】
また、本発明の明細書中において、ピックアップ性(Pick−up)性とは、黒色樹脂溶液がピックアップロールによってアプリケータロールに伝達される時、適正な粘度によって途切れなく伝達される特性を指すものである。したがって、ピックアップ性に優れている場合、黒色樹脂コーティング溶液が途切れ現象なく鋼板に伝達される。
【0047】
さらに、前記主樹脂のガラス転移温度が低すぎる場合、柔軟性には優れているものの、硬化後、硬度が低くなってコーティング層が損傷しやすくなりうる。反面、主樹脂のガラス転移温度が高い場合、硬化後、コーティング層の硬度が急激に増加して加工性が低下しうる。したがって、0t−ベンディング(bending)時、クラックが発生し、密着性が低下しうる。
【0048】
本発明の明細書中において、0t−ベンディング(bending)とは、鋼板の加工性評価のためのベンディング(bending)試験時、最も苛酷な条件を意味するものである。より具体的には、ベンディング(bending)材の間に入る鋼板の数に応じてt−ベンディング(bending)が決定されるので、0t−ベンディング(bending)条件を満足する鋼板は、加工性が非常に優れているものを意味する。
【0049】
また、前記補助樹脂の分子量が少ない場合、加工性の確保が困難になりうる。ロールコーティング方法を利用してコーティングする時、ピックアップ性(Pick−up)が低下しうる。反面、補助樹脂の分子量が多い場合、加工性向上効果がわずかであり、硬化度が低下しうる。
【0050】
さらに、前記補助樹脂のガラス転移温度が低すぎる場合、硬化後、硬度が低くなってコーティング層が損傷しやすくなりうる。反面、補助樹脂のガラス転移温度が高い場合、硬化後、コーティング層の硬度が急激に増加して加工性が低下しうる。なお、0t−ベンディング(bending)時、クラックが発生し、密着性が低下しうる。
【0051】
また、前記ポリエステル樹脂100重量%に対して、前記主樹脂は、15〜50重量%含まれ、前記補助樹脂は、50〜85重量%含まれる。
【0052】
補助樹脂に比べて分子量が高くてガラス転移温度が低い前記主樹脂の含有量が少なすぎる場合、高分子の含有量減少によって、硬化後、コーティング層の柔軟性が低下しうる。これによってコーティング作業性が低下しうる。反面、主樹脂の含有量が多すぎる場合、柔軟性は向上できるものの、架橋密度の低下によって耐食性および打抜油の洗浄性が低下しうる。
【0053】
本発明の明細書中において、打抜油とは、鋼板を連続プレスする場合、金型の発熱を冷却させるための目的で使用されるプレス油を意味する。あるいは、プレス時、金型と鋼板との間の潤滑作用のために、鋼板の表面またはプレス金型に塗布するプレス油を意味する。
【0054】
加えて、前記樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、メラミン樹脂3〜10重量%、耐摩耗性粒子1〜5重量%、ワックス0.1〜3重量%、および残部の溶媒をさらに含んでもよい。
【0055】
より具体的には、前記耐摩耗性粒子は、アクリルポリマー系であってもよい。さらにより具体的には、前記耐摩耗性粒子は、ポリメチルメタクリレート、アクリル、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0056】
前記耐摩耗性粒子は、耐スクラッチ性または耐摩耗性を向上させる役割を果たす。より具体的には、前記耐摩耗性粒子の融点は、後述するクロムフリー下塗り被膜の硬化温度より高い特徴がある。これによって、前記耐摩耗性粒子は、硬化後にも固状粒子形態で存在する。
【0057】
さらにより具体的には、前記樹脂組成物は、クロムフリー下塗り被膜を含む素地鋼板の一面または両面に塗布およびコーティングされる技術を後述する。
【0058】
ただし、この時、前記樹脂組成物に含まれる耐摩耗性粒子は、前記コーティング層の厚さに対する平均粒子径が0.2〜0.8倍の粒子と、前記コーティング層の厚さに対する平均粒子径が1.0〜2.0倍の粒子とが混合された形態であってもよい。したがって、耐摩耗性粒子の大きさは、素地鋼板上のコーティング層の厚さに応じて異なる。
【0059】
前記耐摩耗性粒子の大きさが異なる2種の粒子を混合する場合、1つの大きさの粒子を適用する場合に比べて表面外観が改善される。
【0060】
より具体的には、前記耐摩耗性粒子のうちのいずれか1つは、黒色であってもよい。さらにより具体的には、平均粒子径の小さい粒子が黒色であってもよい。したがって、平均粒子径が大きい粒子のみを用いる場合と比較した時、コーティング層の表面部が部分的に白くなる現象を抑制し、良好な品質の表面外観を確保することができる。
【0061】
また、前記耐摩耗性粒子中、平均粒子径が大きい耐摩耗性粒子は、前記耐摩耗性粒子の総重量%に対して、60〜80重量%含まれる。
【0062】
前記耐摩耗性粒子の平均粒子径がコーティング層の厚さに比べて大きすぎたり含有量が多すぎる場合、表面粗さを増大させて表面光沢を減少させることがある。また、摩擦測定時、粒子突出部における線状剥離をもたらすことがある。
【0063】
前記ワックスは、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。より具体的には、前記ワックスは、プレス成形時、鋼板が金型の形態に応じて容易に引き込まれるように潤滑性を付与する役割を果たす。また、ワックスは、相対的に比重が小さくて表面浮上の役割を果たす。
【0064】
加えて、ワックスの重量が本願で開示した範囲より少ない場合、硬化後、鋼板の潤滑性が低下しうる。反面、ワックスの重量が多すぎる場合、硬化後、鋼板の潤滑性向上効果はわずかであるのに対し、表面に浮上したワックスによって架橋力が低下して耐食性が減少することがある。さらに、打抜油との反応が容易になって、水洗時、シミなどの表面欠陥が発生しうる。
【0065】
また、前記溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ケトン系、ハイドロカーボン系、二塩基性エステル、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ただし、これに制限されるわけではない。
【0066】
前記溶媒の含有量が少ない場合、粘度が高くなって溶液安定性とレベリング性が低下しうる。また、前記溶媒の含有量が多すぎる場合、溶液硬化時、溶媒の揮発に高い温度または長い時間が要求されるので、生産性が低下しうる。さらに、運送過程中、スティッキング、ブロッキングなどのような表面欠陥が発生しうる。
【0067】
前記樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、酸触媒0.3〜1.5重量%、顔料3〜5重量%、および添加剤2〜5重量%をさらに含んでもよい。
【0068】
前記酸触媒は、ジノニルナフタレンスルホン酸、またはこれらの組み合わせを含むことができる。また、前記酸触媒は、全組成物100重量%に対して、0.3〜1.5重量%を含むことができる。
【0069】
ただし、前記酸触媒の含有量が少ない場合、硬化度およびクロムフリー下塗り被膜の硬度が低下しうる。反面、前記酸触媒の含有量が多い場合、加工性が低下しうる。
【0070】
前記顔料は、カーボンブラック(carbon black)およびチタニウムオキサイド(TiO)が混合された形態であってもよい。また、前記顔料は、3〜5重量%分含まれる。ただし、これに制限されるわけではない。
【0071】
より具体的には、前記顔料のチタニウムオキサイドに対するカーボンブラックの重量比は、1〜30であってもよい。カーボンブラックの重量比が1未満の場合、鋼板の黒色度が低下して十分な隠蔽効果を示すことができず、重量比が30を超える場合、黒色度の増加がわずかであるのに対し、加工性が低下する。
【0072】
前記顔料は、コーティング層に色および不透明性を付与する役割を果たす。ただし、前記顔料が少ない場合、後述するクロムフリー下塗り被膜の隠蔽力が低下するので、表面外観を確保できないことがある。また、前記顔料が多い場合、加工性が低下しうる。
【0073】
前記添加剤は、全組成物100重量%に対して、2〜5重量%含むことができる。また、前記添加剤は、付着増進剤、レベリング剤、分散剤、および消光剤を含むことができる。より具体的には、前記付着増進剤は、ヒドロキシルホスフェートエステル、またはこれらの組み合わせを含むことができる。さらに、前記レベリング剤は、ポリアクリレート、ポリシロキサン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ただし、これに制限されるわけではない。
【0074】
また、前記分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記分散剤は、微粒化された顔料を分散させて凝集を防止する役割を果たす。
【0075】
加えて、前記消光剤は、非晶質シリカを含むことができる。前記消光剤は、表面乱反射の誘導による光沢減少の役割を果たす。したがって、目的とする光沢の程度に応じて含有量を調節することができる。
【0076】
本発明の他の実施形態に係る黒色樹脂鋼板は、素地鋼板;前記素地鋼板の一面または両面に位置するクロムフリー下塗り被膜;および前記クロムフリー下塗り被膜上に位置するコーティング層;を含むが、前記コーティング層は、前記コーティング層の全元素組成100重量%に対して、炭素(C):70〜80重量%、シリコン(Si):1〜4重量%、チタニウム(Ti):1〜5重量%、および残部酸素(O)である黒色樹脂鋼板を提供することができる。
【0077】
前記素地鋼板は、炭素鋼、アルミニウム鋼、アルミニウム合金鋼、ステンレス鋼、銅鋼、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛を含む二元系または三元系合金メッキ鋼板、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0078】
前記素地鋼板の一面または両面にクロムフリー下塗り被膜が位置することができる。より具体的には、前記素地鋼板の一面または両面に位置するクロムフリー下塗り被膜の付着量は、500〜2,000mg/mであってもよい。
【0079】
前記クロムフリー下塗り被膜の付着量が少ない場合、耐食性に劣ることがある。反面、付着量が多い場合、下塗り被膜の厚さが厚くなるので、黒色上塗り被膜への熱伝達効率が低下し、これによって硬化力に劣ることがある。
【0080】
前記クロムフリー下塗り被膜の一面または両面にコーティング層が位置することができる。前記クロムフリー下塗り被膜上に位置する前記コーティング層の厚さは、3〜20μmであってもよい。
【0081】
前記コーティング層の厚さが薄すぎる場合、耐食性、およびスクラッチ抵抗性が低下しうる。それだけでなく、クロムフリー下塗り被膜の隠蔽力の低下によって、白色度(L値)が増加することがある。反面、前記コーティング層の厚さが厚すぎる場合、硬化効率が低下して生産性が低下し、スティッキングおよびブロッキングのような抵抗性が低下しうる。
【0082】
本発明の明細書中において、白色度(L値)とは、3次元空間のx、y、z軸が正の方向と負の方向に計6つの軸が存在し、導出された値により鋼板の色感を表示するものを意味する。
【0083】
より具体的には、z軸方向へと100に近い値が導出されるほど鋼板の色は白色に近く、x軸方向に正の値が大きいほど赤色、およびy軸方向に正の値が大きいほど(黄色)に近いことを意味する。
【0084】
加えて、前記クロムフリー下塗り被膜上に位置する前記コーティング層の表面粗さ(Ra)は、1μm未満であってもよい。前記コーティング層の表面粗さが大きい場合、乱反射の促進によって表面光沢度が低くなって表面品質が低下し、表面の質感が粗くなりうる。
【0085】
また、前記樹脂組成物でコーティング層が形成された素地鋼板は、10〜40の表面光沢度を有することができる。
【0086】
本発明のさらに他の実施形態に係る黒色樹脂鋼板の製造方法は、素地鋼板を準備する段階;前記素地鋼板の一面または両面にクロムフリー下塗り被膜を形成する段階;および前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティング層を形成する段階;を含むが、前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティング層を形成する段階;は、前記組成物を前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティングする段階;前記組成物がコーティングされた素地鋼板を硬化する段階;および前記硬化した素地鋼板を水洗および乾燥する段階;を含み、前記コーティング層は、樹脂組成物を塗布して形成され、
前記樹脂組成物は、全組成物100重量%に対して、ポリエステル樹脂40〜50重量%を含むが、前記ポリエステル樹脂は、主樹脂および補助樹脂から構成され、前記主樹脂は、補助樹脂に比べて分子量が高く、前記主樹脂と補助樹脂とのガラス転移温度の差は、25℃以下である黒色樹脂鋼板の製造方法を提供することができる。
【0087】
まず、素地鋼板を準備する段階;において、前記素地鋼板は、炭素鋼、アルミニウム鋼、アルミニウム合金鋼、ステンレス鋼、銅鋼、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛を含む二元系または三元系合金メッキ鋼板、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ただし、これに制限されるわけではない。
【0088】
次に、前記素地鋼板の一面または両面にクロムフリー下塗り被膜を形成する段階;において、前記クロムフリー下塗り被膜の付着量は、500〜2,000mg/mであってもよい。
【0089】
前記クロムフリー下塗り被膜の付着量が少なすぎる場合、耐食性に劣ることがある。反面、付着量が多すぎる場合には、下塗り被膜の厚さが厚くなって黒色上塗り被膜への熱伝達効率が低下し、硬化力に劣ることがある。
【0090】
また、前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティング層を形成する段階;は、前記組成物を前記クロムフリー下塗り被膜上にコーティングする段階;前記組成物がコーティングされた素地鋼板を硬化する段階;および前記硬化した素地鋼板を水洗および乾燥する段階;を含むことができる。
【0091】
この時、前記組成物がコーティングされた素地鋼板を硬化する段階;により、前記素地鋼板は、210〜240℃まで熱処理される。また、前記熱処理は、インダクション硬化装置によって熱処理される。前記素地鋼板を210〜240℃まで熱処理することによって、塗膜が硬化してコーティング層の形成が完全になる効果がある。
【0092】
以下、実施例を通じて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0093】
実施例1
アルカリ脱脂された0.4mmの厚さの亜鉛メッキ鋼板を準備した。
【0094】
この時、前記亜鉛メッキ鋼板における亜鉛メッキ層の付着量は、20g/mである。
【0095】
前記亜鉛メッキ鋼板の一面にクロムフリー組成物をコーティング、硬化、水洗、および乾燥してクロムフリー下塗り被膜を形成した。
【0096】
この時、前記クロムフリー下塗り被膜の付着量は、1,000mg/mである。
【0097】
その後、樹脂組成物を下記表1の通りに準備した。
【0098】
前記樹脂組成物を前記クロムフリー下塗り被膜の形成された亜鉛メッキ鋼板にコーティング後、誘導加熱硬化装置(induction heating)を用いてピークメタル温度(peak metal temperature)が232℃となるように硬化し、水洗、および乾燥して黒色樹脂鋼板を製造した。この時、前記乾燥したコーティング層の厚さは、10μmである。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例2
前記実施例1と比較した時、実施例2は、分子量が23,000Mn、ガラス転移温度が7℃の主樹脂22.5g、および分子量が12,000Mn、ガラス転移温度が20℃の補助樹脂22.5gであるポリエステル樹脂を使用した。
【0101】
前記ポリエステル樹脂を除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0102】
実施例3
前記実施例1と比較した時、実施例3は、ポリエチレン−ポリテトラフルオロエチレン2gから構成されたワックスを使用した。
【0103】
前記ワックスを除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0104】
実施例4
前記実施例1と比較した時、実施例4は、ポリエチレン2gから構成されたワックスを使用した。
【0105】
前記ワックスを除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0106】
実施例5
前記実施例1と比較した時、実施例5は、分子量が23,000Mn、ガラス転移温度が7℃の主樹脂25g、および分子量が12,000Mn、ガラス転移温度が20℃の補助樹脂25gであるポリエステル樹脂を使用し、溶媒30gを使用した。
【0107】
前記ポリエステル樹脂および溶媒を除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0108】
比較例1
前記実施例1と比較した時、比較例1は、ポリエチレン0.17g、ポリエチレン−ポリテトラフルオロエチレン0.13g、および液状のシリコン1.7gから構成されたワックスを使用した。
【0109】
前記ワックスを除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0110】
比較例2
前記実施例1と比較した時、比較例2は、クロムフリー下塗り被膜の付着量を2,500mg/mで製造した。
【0111】
前記クロムフリー下塗り被膜の付着量を除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0112】
比較例3
前記実施例1と比較した時、比較例3は、前記耐摩耗性粒子が平均粒径15μm、20μmの粒子をそれぞれ2g、1g含んだ。
【0113】
前記耐摩耗性粒子の条件を異ならせたことを除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0114】
比較例4
前記実施例1と比較した時、比較例4は、ポリエステル樹脂が分子量19,000、ガラス転移温度が10℃である1種の樹脂を用いた。
【0115】
前記ポリエステル樹脂の条件を異ならせたことを除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0116】
比較例5
前記実施例1と比較した時、比較例5は、ポリエステル樹脂が分子量12,000、ガラス転移温度が20℃である1種の樹脂を用いた。
【0117】
前記ポリエステル樹脂の条件を異ならせたことを除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0118】
比較例6
前記実施例1と比較した時、比較例6は、分子量が12,000、ガラス転移温度が5℃の樹脂20g、および分子量が10,000、ガラス転移温度が35℃の樹脂25gであるポリエステル樹脂を使用した。
【0119】
前記ポリエステル樹脂を除いて、実施例1と同様の条件下で黒色樹脂鋼板を製造した。
【0120】
[実験例]
実験例1:摩擦係数評価実験
摩擦試験機で黒色樹脂鋼板表面の摩擦係数を評価した。黒色樹脂鋼板試験片を148X290mmの大きさに剪断した後、摩擦係数を測定した。加圧力600kgf、移動速度3.3mm/sの条件で測定した。また、速乾性打抜油の塗布による摩擦係数の影響性確認のために、打抜油塗布後の摩擦係数を比較した。
【0121】
より具体的には、速乾性打抜油は、(株)VS&EinケミカルのMVP840TW非水溶性焼成加工油を使用した。摩擦係数は、総移動距離190mm基準45〜185mmの区間における摩擦係数の平均値で定義した。
【0122】
摩擦係数評価実験で摩擦係数が小さくて移動距離と平行な形態になるほど良い。より具体的には、◎(極めて優秀、0.09未満)、○(優秀、0.09〜0.11)、△(普通、0.11〜0.13)、X(不十分、0.13超過または剥離発生)に区分して、下記表2に評価結果を示した。
【0123】
打抜油塗布後の摩擦係数の測定時、グラフ上で振動(Stick−Slip)が発生した場合、X(不十分)と表示した。
【0124】
実験例2:引張0tベンディング加工性評価実験
前記実施例および比較例で製造された黒色樹脂鋼板を用いて、引張0t−ベンディング(bending)後、テープ剥離およびベンディング部クラックの観察により加工性を評価した。黒色樹脂鋼板試験片を35X150mmの大きさに剪断した後、20%引張し、0t−ベンディングした後、ベンディング部にニチバン(Nichiban)テープを密着後に剥がして、塗膜剥離の有無を検査した。この後、0t−ベンディング部をステレオスコープで観察してクラックの発生程度を検査した。この時、塗膜の密着性が劣る場合、テープに塗膜が付くようになる。また、ベンディング部を顕微鏡で観察すると、加工部が曲げおよびテープ剥離後にも安定的に維持されるか否かを確認することができ、クラックの発生程度を把握することができる。これによって、プレス材周縁のカーリング(Curling)部のように塗膜の変形が激しい部位で良好な加工性の確保が可能である否かを予測することができる。
【0125】
この時、テープ剥離は、○(優秀、剥離なし)、X(不十分、剥離)で評価し、ベンディング部クラックは、◎(極めて優秀、クラックなし)、○(優秀、点クラック)、△(普通、微細クラック)、X(不十分、クラックまたは塗膜面剥離)に区分して、下記表2に評価結果を示した。
【0126】
実験例3:耐沸騰性評価実験
前記実施例および比較例で製造された黒色樹脂鋼板を用いて耐沸騰性を評価した。鋼板を沸騰水に2時間浸漬して取り出した後、表面の変化程度を確認するもので、表面硬化力に劣る場合、沸騰水がコーティング層の内部に侵入して、ブリスター(コーティング層の膨れ現象)のように表面の深刻な変化を誘発することがある。
【0127】
評価方法は、○(優秀、表面変化なし)、X(不十分、ブリスター(blister)発生)に区分して、下記表2に評価結果を示した。
【0128】
実験例4:耐スティッキング性(Sticking)評価実験
黒色樹脂鋼板を100X100mmの大きさに剪断した後、試験片のバリ(Burr)を除去した後、黒色面と非黒色面とを対向させて、ホットプレス(Hot press)機器を用いて、温度80℃、加圧力100kgf/cm、8時間の条件で耐スティッキング性を評価した。実験終了後、ホットプレートの上板は試験片から離隔し、加熱ランプも消えて試験片は常温まで冷却される。この後、対向する一対の試験片を引き離す時の力の程度を評価する。
【0129】
スティッキング点数は、各10点満点でASTM D3003規格により点数を付与する。ASTM規格による点数付与基準は次の通りである。
【0130】
10点:上下の試験片がすでにずれている状態
8点:指で試験片を軽く押した時に試験片分離可能
6点:試験片の変形が発生せず、試験片分離のための器具不要
4点:爪を試験片の間に入れて力を加えることで分離可能であるが、試験片の変形発生(反り)
2点:スパチュラ(Spatula)または類似器具を用いてこそ分離可能
0点:2点に該当する器具を用いたが、分離不可能な場合
前記耐スティッキング性評価は、黒色樹脂鋼板がコイル巻取状態で運送される過程で黒色面−非黒色面が相互反応によってくつっくか否かおよびその程度を評価する方法である。
【0131】
評価方法は、スティッキング点数によって、○(優秀、9−10点)、△(普通、6−8点)、X(不十分、5点以下)に区分して、下記表2に評価結果を示した。
【0132】
実験例5:ドロービード(Drawbead)評価実験
ビード(Bead)は、プレス成形時、素材を固定することで素材が中に吸い込まれるのを固定する役割を果たす部分である。通常、プレス過程で剪断されるが、ビード部塗膜でスクラッチ、剥離などの損傷が発生した場合、剥離物が金型に転写されて、後続の作業材にデントなどの欠陥を誘発する。したがって、本評価によりこれを事前に模写することによって、安定したプレス連続作業が可能か否かを判断することができる。44X250mmの大きさに剪断した後、図3のようにドローイング長さ90mm、加圧荷重1000kgfの条件で評価した。毎評価が終わった後、金型を2000グリット(grit)の紙やすりで拭いてアルコールで洗浄して、前の評価素材の影響を最小化した。この時、速乾性打抜油の塗布による影響性確認のために、打抜油塗布後を基準に評価を進行させた。速乾性打抜油は、(株)VS&EinケミカルのMVP840TW非水溶性焼成加工油を使用した。
【0133】
評価方法は、ドローイング荷重を加圧荷重で割った値によって、○(優秀、0.34未満)、△(普通、0.34以上0.36未満)、X(不十分、0.36以上またはビード部剥離発生)に区分して、下記表2に評価結果を示した。
【0134】
【表2】
【0135】
前記表2に示されているように、実施例1〜4により製造された黒色樹脂鋼板は、打抜油の塗布後、摩擦係数の測定、ドロービード評価ですべて優れた結果を示し、引張0t−ベンディング、耐沸騰、耐スティッキング性評価でもすべて良好な結果を示した。
【0136】
反面、比較例の場合、摩擦測定時、振動(Stick−slip)挙動が観察されたり、ドロービード評価で高いドローイング荷重を示したり、ビード部塗膜の剥離(比較例3)を示し、実施例に比べて劣る物性が現れたことが分かる。
【0137】
特に、比較例2の場合、クロムフリー下塗り被膜付着量の過剰により、インダクション硬化時、黒色上塗りへの熱伝達が不十分で物性全般が非常に劣っていた。これによって、インダクション硬化時、クロムフリー下塗り被膜付着量の適正範囲の導出が硬化効率の確保に極めて重要な条件であることが分かる。
【0138】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。
【0139】
そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるあらゆる変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2
図3