(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の配置領域は、複数の前記配置領域のうち、発熱密度が最も高い前記局所発熱部を含んだ前記冷却対象物が配置される前記配置領域である、請求項1に記載の冷却装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1〜
図8を参照して、第1実施形態による冷却装置100の構成について説明する。冷却装置100は、上面(設置面)上に設置された冷却対象物からの熱を吸収して冷却する水冷式のコールドプレートである。冷却対象物Mは、特に限定されないが、たとえば各種の電子機器や電子回路などの発熱体である。冷却装置100は、たとえば電力変換装置に用いられるパワーモジュールなどの、発熱量の大きい冷却対象物を冷却する場合に特に好適に用いることができる。以下では、冷却対象物Mが、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの電力制御用スイッチング素子を備えたパワーモジュールである例について説明する。
【0024】
図1および
図2に示すように、冷却装置100は、本体部1を備えている。本体部1は、冷却対象物Mが配置される複数の配置領域10を表面に有し、冷媒流路2(
図2参照)を内部に有している。
【0025】
本体部1は、概略で長方形状の平板形状を有する。本体部1は、それぞれ平坦面状の第1面(上面)1aと、第2面(下面)1bとを有する。本体部1の長手方向の一方の端部の側面には、冷媒流路2に対する冷媒の出入口となる2つのヘッダ部3が設けられている。2つのヘッダ部3には、それぞれ開口部からなる冷媒入口3aと冷媒出口3bとが設けられている。冷媒入口3aと冷媒出口3bとは、それぞれ冷媒流路2の一端と他端とに連通している。以下、便宜的に、平面視(上面視)における直交する2方向のうち、本体部1の長手方向をX方向とし、本体部1の短手方向をY方向とする。本体部1の厚み方向(上下方向)をZ方向とする。
【0026】
本体部1の第1面1aには、冷却対象物Mを配置するための配置領域10が複数形成されている。配置領域10は、第1面1a内で、冷却対象物Mが載置されて冷却対象物Mの下面と第1面1aとが接触する領域である。本体部1に4つの配置領域10(以下、配置領域10A〜10Dとする)が設けられており、冷却装置100には、合計4つの冷却対象物Mを配置することが可能である。
【0027】
本体部1には、それぞれの配置領域10に対応するねじ穴15(
図2参照)が設けられ、冷却対象物Mを配置領域10に位置決めして固定することが可能である。冷却対象物Mは、熱伝導性コンパウンドや放熱グリスなどにより隙間をなくした状態で、第1面1a上の配置領域10に密着するように配置(設置)される。
【0028】
冷却対象物Mは、平面視で長方形の板状形状を有する。各配置領域10は、冷却対象物Mが、長辺がX方向に一致し、短辺がY方向に一致して載置されるように形成されている。冷却対象物Mは、均一に発熱するわけではなく、局所発熱部(ヒートスポット)HSを含んでいる。冷却対象物Mがパワーモジュールである場合、冷却対象物Mの内部に配置された1または複数のスイッチング素子が発熱源となる。したがって、冷却対象物Mは、個々のスイッチング素子の配置位置に対応した局所発熱部HSを含んでいる。
図2の場合、冷却対象物Mには、4つの局所発熱部HSが長辺方向(X方向)に直線状に列状に並んでおり、かつ、短辺方向(Y方向)に2列存在しているため、合計8箇所の局所発熱部HSがある。局所発熱部HSは、X方向の長さL1、Y方向の長さL2を有する。
【0029】
局所発熱部HSは、冷却対象物M全体のうちで発熱密度が他の部分よりも高くなる領域である。そのため、冷却対象物Mの発熱量の総量に対して十分な放熱量で冷却対象物Mの下面を均等に冷却しても、発熱密度の高い局所発熱部HSにおいて許容温度を超えてしまうことがある。
【0030】
冷媒流路2は、本体部1の内部に形成された冷媒の流通空間である。
図3では、冷媒流路2は、折り返し部23を有し、X方向の一端側の冷媒入口3aから流入した冷媒が他端側で折り返し、一端側の冷媒出口3bから流入方向の逆方向に排出するように構成されている例を示している。冷媒流路2は、液体の冷媒を流通させる。冷媒としては、たとえばエチレングリコール水溶液などの公知の液冷媒を用いることが可能である。
【0031】
冷媒流路2は、平面視で4つの配置領域10の各々と重なる位置(直下の位置)を通過するように形成されている。冷媒は、冷媒流路2において、配置領域10A、配置領域10B、配置領域10C、配置領域10Dの各々と重なる位置を順に流れていき、それぞれの配置領域10と重なる位置を通過する際に冷却対象物Mから発生した熱を吸収する。これにより、各冷却対象物Mが冷却される。なお、冷媒流路2は、Z方向の厚みが略一定の流路となっている。以下の説明では、冷媒流路2における冷媒の流れに沿った方向を基準として、冷却装置100の各部の位置を、上流側または下流側と表現する場合がある。たとえば4つの配置領域10のうち、配置領域10Aが最も上流側に位置し、配置領域10Dが最も下流側に位置する。
【0032】
冷媒流路2は、複数の配置領域10のうち所定の配置領域DRと重なる位置を通る第1流路部21と、所定の配置領域DR以外の他の配置領域10と重なる位置を通る第2流路部22とを含む。
【0033】
所定の配置領域DRは、冷却装置100に設けられる複数の配置領域10のうちで、冷却装置100の冷却能力の余裕が最も少なくなる(冷却能力が不足しやすくなる)位置にある配置領域である。たとえば、各配置領域10に配置される各冷却対象物Mの発熱量に大きな違いがない場合には、最も下流側に位置する配置領域に配置された冷却対象物Mにおいて冷却能力の余裕が少なくなるため、最も下流側に位置する配置領域が所定の配置領域DRとして設定(設計)され得る。また、たとえば各配置領域10に配置される各冷却対象物Mの発熱量が異なる場合には、発熱密度が最も高い局所発熱部HSにおいて冷却装置100の冷却能力の余裕が少なくなるため、発熱密度が最も高い局所発熱部HSを含んだ冷却対象物Mが配置される配置領域が、所定の配置領域DRとして設定(設計)され得る。発熱密度が高い局所発熱部HSを含んだ冷却対象物Mが配置される配置領域が複数ある場合には、それらの配置領域のうちで最も下流側に位置する配置領域が所定の配置領域DRとして設定(設計)され得る。どの配置領域を所定の配置領域DRとして設定するかは、局所発熱部HSの発熱密度と冷媒温度の上昇との関係に基づいて決定することができる。第1実施形態では、各冷却対象物Mが概ね同一である(発熱量が概ね等しい)との前提の下、最も下流側の配置領域10Dが所定の配置領域DRである例について説明する。
【0034】
したがって、第1流路部21は、冷媒流路2の内、最も下流側の所定の配置領域DR(配置領域10D)と重なる位置を通るように設けられている。第2流路部22は、所定の配置領域DR(配置領域10D)以外の他の配置領域10A、10Bおよび10Cと重なる位置を通る。以下、冷媒流路2の流れ方向に沿って各流路部について説明する。
【0035】
第2流路部22は、第1流路部21よりも冷媒流路2の上流側に配置されている。第2流路部22は、X方向において、冷媒入口3aと折り返し部23との間の距離D1の範囲、および、折り返し部23と第1流路部21との間の距離D2の範囲に形成されている。
図4に示すように、第2流路部22は、一定の第2流路幅W2を有する直線状形状に形成されている。第2流路部22は、各配置領域10A、10Bおよび10C(
図3参照)と重なる位置において、同じ流路幅となるように形成されている。なお、流路幅とは、平面視における冷媒の流通方向と直交する方向(Y方向)の幅である。
【0036】
第2流路幅W2は、各配置領域10における局所発熱部HSのY方向の長さL2よりも大きい。また、第2流路幅W2は、Y方向の一方側の局所発熱部HSの一方側端部から、Y方向の他方側の局所発熱部HSの他方側端部までの距離D4(Y方向において複数の局所発熱部HSが占める範囲)よりも大きい。このため、第2流路部22は、各配置領域10A、10Bおよび10Cと重なる位置において、流路幅方向(Y方向)の壁面間の範囲に複数の局所発熱部HSと重なる領域が収まるように形成されている。
【0037】
図3に示すように、第1流路部21は、第2流路部22よりも下流側に配置されている。第1流路部21は、X方向において、折り返し部23から延びる第2流路部22の終端と、冷媒出口3bとの間の距離D3の範囲に形成されている。第1流路部21は、X方向に延びる直線状形状に形成されている。
【0038】
図5に示すように、第1流路部21は、所定の配置領域DR内の一部と重なる所定位置に、第2流路部22よりも集中的に冷媒を通過させるように形成されている。第1流路部21は、所定の配置領域DRに配置された冷却対象物Mの局所発熱部HSと重なる所定位置に配置されている。言い換えると、第1流路部21によって、冷媒流路2には、局所発熱部HSと重なる所定位置において集中的に冷却を行う集中冷却部24が形成されている。
【0039】
第1流路部21は、所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HSと重なる所定位置に配置されている。
図5の例では、冷却対象物Mは、X方向に直線状に4つ並び、Y方向に2列並んだ局所発熱部HSを有している。そのため、第1流路部21は、Y方向の2列の局所発熱部HSに対応した2つの直線状領域からなる集中冷却部24を含んでいる。
【0040】
各集中冷却部24は、一方端(X1方向の端部)の局所発熱部HSから他方端(X2方向の端部)の局所発熱部HSまでの距離D5の範囲を含むように、X方向に直線状に延びている。冷媒の流通方向(X方向)における第1流路部21の長さD3(
図3参照)は、X方向において複数の局所発熱部HSが占める範囲(距離D5の範囲)以上である。第1流路部21は、これらの2本の集中冷却部24(所定位置)に集中的に冷媒を通過させることにより、所定の配置領域DRに配置された冷却対象物Mの各局所発熱部HSを集中的に冷却する。
【0041】
第1流路部21は、2つの集中冷却部24に対応するように2つに分岐している。分岐した各第1流路部21は、第2流路部22の第2流路幅W2よりも小さい第1流路幅W1を有することにより、集中冷却部24に冷媒を集中的に通過させるように構成されている。なお、分岐した各第1流路部21の第1流路幅W1の合計は、第2流路幅W2よりも小さい。
【0042】
第1流路部21は、冷媒流路2(第2流路部22)の流路幅を絞るように設けられた案内壁部26および27によって、第1流路幅W1となるように形成されている。第2流路部22の内壁面25よりもY方向内側に突出する案内壁部26と、冷媒流路2中に配置されて第1流路部21を2つに分岐した流路として形成する案内壁部27とによって、幅狭の第1流路部21が形成されている。
【0043】
また、第1流路部21の第1流路幅W1は、流路幅方向(Y方向)における局所発熱部HSの幅以上(長さL2以上)の大きさを有する。第1流路幅W1は、局所発熱部HSの幅(長さL2)と略一致する。したがって、
図6に示すように、第1流路部21は、所定の配置領域DRに配置された冷却対象物Mの局所発熱部HSの幅(長さL2)と略等しい第1流路幅W1を有し、かつ、局所発熱部HSの直下を通るように形成されている。
【0044】
(伝熱フィン)
図3に戻り、冷媒流路2内には、板状の伝熱フィンが設けられている。すなわち、第1流路部21内には伝熱フィン31が設けられ、第2流路部22内には伝熱フィン32が設けられている。なお、図示の都合上、
図3では伝熱フィン(31、32)を模式的に図示している。また、
図4および
図5では、伝熱フィンの図示を省略している。第1流路部21内の伝熱フィン31および第2流路部22内の伝熱フィン32は、たとえばコルゲートフィン(
図7および
図8参照)からなる。
【0045】
第2流路部22内の伝熱フィン32は、第1流路部21内の伝熱フィン31よりも圧力損失が小さいフィンにより構成されている。伝熱フィンの圧力損失は、主として伝熱フィンの種類(フィン形状)および流路幅方向のピッチによって調整することができ、圧力損失と伝熱性能とがトレードオフの関係にある。
【0046】
伝熱フィンの種類(フィン形状)としては、一定ピッチで流路長さ方向に直線状に延びるプレーンフィン(図示せず)や、たとえば
図7に示すように、プレーンフィンに複数の貫通孔が設けられたパーフォレートフィンなどの直線状フィン33を採用することができる。また、たとえば
図8に示すように、冷媒の流通方向に並ぶ複数のフィン部34を含み、複数のフィン部34が互いに流路幅方向にずれるように形成されたオフセットフィン(セレートフィン)35を採用することができる。ピッチや板厚が同一の場合、圧力損失および伝熱性能が小さい方から、プレーンフィン、パーフォレートフィン、オフセットフィンの順で圧力損失および伝熱性能が大きくなる。流路幅方向のピッチは、小さいほど圧力損失および伝熱性能が大きくなる。
【0047】
第1流路部21内の伝熱フィン31および第2流路部22内の伝熱フィン32としては、共に、同一種類のフィンが設けられており、たとえばパーフォレートフィンなどの直線状フィン33(
図7参照)が設けられている。一方、第1流路部21内の伝熱フィン31および第2流路部22内の伝熱フィン32とで、流路幅方向のピッチが異なる。すなわち、伝熱フィン32は、伝熱フィン31のピッチよりも大きなピッチを有している。
【0048】
さらに、第2流路部22には、上流側ほど圧力損失が低くなるように、フィン形状または流路幅方向のピッチが異なる複数の伝熱フィン32a、32bが設けられている。つまり、伝熱フィン32は、複数種類の伝熱フィン32aおよび32bによって構成されている。具体的には、第2流路部22内において、配置領域10Aおよび10Bと重なる位置を通過するX方向の距離D1の範囲では、ピッチP2aを有する伝熱フィン32aが設けられており、配置領域10Cと重なる位置を通過するX方向の距離D2の範囲では、ピッチP2bを有する伝熱フィン32bが設けられている。上流側の伝熱フィン32aのピッチP2aは、下流側の伝熱フィン32bのピッチP2bよりも大きい。
【0049】
第1流路部21の伝熱フィン31のピッチP1は、第2流路部22の上流側の伝熱フィン32aのピッチP2aよりも小さい。なお、
図3の構成例では、第1流路部21の伝熱フィン31のピッチP1は、第2流路部22の下流側の伝熱フィン32bのピッチP2bと概ね一致する。したがって、冷媒流路2の前半(上流側)部分と後半(下流側)部分とで、ピッチを異ならせている。
【0050】
各伝熱フィンのピッチP1、P2aおよびP2bは、第1流路部21における流路抵抗の増大分を相殺するように設定されている。つまり、冷媒流路2の全体が第2流路幅W2の一定幅である場合を基準として、第1流路部21によって流路幅が絞られることによる圧力損失の増大分が、伝熱フィン32aのピッチP2aを他の伝熱フィンのピッチP2b、P1よりも大きくすることによる圧力損失の減少分によって補われている。ピッチの一例として、第2流路部22の上流側の伝熱フィン32aのピッチP2aは、たとえば約2.1mmであり、下流側の伝熱フィン32bのピッチP2bおよび第1流路部21の伝熱フィン31のピッチP1は、たとえば約1.4mmである。
【0051】
(冷却装置の作用)
以上の構成により、ヘッダ部3の冷媒入口3aから、冷媒流路2に冷媒が供給される。冷媒は、冷媒流路2の第2流路部22に流入し、X1方向に距離D1だけ進んで折り返し部23まで流れる。冷媒は、折り返し部23でY1方向に流れた後、第2流路部22の下流側の距離D2の範囲をX2方向に逆向きに流れた後、第1流路部21に流入する。第1流路部21は2つに分岐すると共に、それぞれ流路幅が絞られていることにより、第1流路部21において冷媒の流速が増大する。第1流路部21を通過した冷媒は、冷媒出口3bから流出する。
【0052】
図9は、冷却装置100の作動中における冷媒流路2の各位置と第1面1aにおける表面温度(取付面温度)との関係を示している。横軸に冷媒入口3aから冷媒出口3bまでの距離(冷媒流路2内の位置)をとり、縦軸に第1面1aにおける温度をとっている。
図9の横軸において、配置領域10Bと配置領域10Cとの間には折り返し部23が存在するが、折り返し部23では冷却対象物Mの冷却が行われないため省略している。第1実施形態の冷却装置100での温度変化を
図9の実線で示し、冷媒平均温度を2点鎖線で示している。また、比較例として、冷媒流路の流路幅が一定(W2)で、かつ、冷媒流路全体にわたって共通の伝熱フィン32b(ピッチP2b)を設けた構成の冷却装置における温度変化を破線で示している。各配置領域10A〜10Dにおける許容温度をTmとする。
【0053】
第1実施形態では、冷媒流路2のうち、上流側の第2流路部22(X方向における距離D1の範囲に形成された第2流路部22)では冷媒温度が低く、配置領域10Aおよび10Bの表面温度と冷媒温度との温度差が大きいため、冷却能力に余裕がある。そのため、上流側の第2流路部22内に大きいピッチP2aを有し伝熱性能が相対的に低い伝熱フィン32aが設けられていても、配置領域10Aおよび10Bに配置される冷却対象物Mに対しては、局所発熱部HSで発生した熱も上流側の第2流路部22内を流れる冷媒に十分に吸収される。冷媒温度は、局所発熱部HSの直下を通過した冷媒と、局所発熱部HS以外の位置を通過した冷媒とで温度分布が生じるが、平均温度としては、下流側に向かうに従って上昇する。
【0054】
上流側の第2流路部22(X方向における距離D1の範囲に形成された第2流路部22)から下流側の第2流路部22(X方向における距離D2の範囲に形成された第2流路部22)に切り替わる時に、ピッチP2aの伝熱フィン32aからピッチP2bの伝熱フィン32bに切り替わる。ピッチP2bの伝熱フィン32bに切り替わることによって、上流側の第2流路部22よりも伝熱性能が向上するため、配置領域10Cの表面温度が一旦低下し、その後上昇する。配置領域10Cでは、許容温度Tmからは余裕があり、配置領域10Cに配置される冷却対象物Mに対しては、十分な冷却能力が得られる。冷媒温度は、平均温度がさらに上昇して、冷却能力の余裕が少なくなる。
【0055】
配置領域10D(所定の配置領域DR)では、冷媒温度(冷媒の平均温度)が上昇した状態となるため、冷却能力の余裕が少なくなる。このため、所定の配置領域DRでは、所定の配置領域DRに配置された冷却対象物Mの局所発熱部HSに重なる位置において表面温度が許容温度Tmに到達しやすくなる。第1実施形態では、第1流路幅W1の第1流路部21によって局所発熱部HSの直下の位置を冷媒が集中的に通過し、冷媒の流速が上昇する。これにより、局所発熱部HSで発生した熱が第1流路部21内を流れる冷媒に効率的に吸収され、冷媒温度が上昇した状態でも局所発熱部HSが十分に冷却される。また、
図5に示したように第1流路幅W1の第1流路部21によって冷媒流路2が絞られるため、第1流路部21では、第2流路部22において局所発熱部HS以外の直下を通過した低温の冷媒と、局所発熱部HSの直下を通過した高温の冷媒とが混合され、概ね平均温度となった冷媒が局所発熱部HSの直下を通過する。そのため、第2流路部22において局所発熱部HSの直下を通過しなかった低温の冷媒を利用して、第1流路部21における局所発熱部HSに対する冷却能力が上昇する。これらにより、冷却装置100は、冷却能力の余裕が少なくなる所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mに対しても、所望の冷却能力が確保される。
【0056】
比較例の場合、上流側の配置領域10Aおよび10Bでは、第1実施形態と比較して冷媒流路内に設置される伝熱フィンのピッチが小さいため、表面温度が低くなる一方、下流側に向かうに従って表面温度が単調増加する。その結果、比較例では、配置領域10Dで表面温度が許容温度Tmに到達する。上記のように、局所発熱部HSの直下を通過した冷媒と、局所発熱部HS以外の直下の位置を通過した冷媒とで温度分布が生じるため、第1流路部21を設けない比較例の場合、局所発熱部HSの直下には高温の冷媒が通過することになる。そのため、特に局所発熱部HSと重なる位置において表面温度が許容温度Tmを超えやすくなる。
【0057】
このように、第1実施形態では、特に冷却能力の余裕が少なくなる配置領域10D(所定の配置領域DR)において、局所発熱部HSを集中的に冷却することによって、表面温度が許容温度Tmを超えることが抑制される。
【0058】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
上記のように、複数の配置領域10のうち所定の配置領域DRと重なる位置を通る第1流路部21と、所定の配置領域DR以外の他の配置領域10と重なる位置を通る第2流路部22とを含む冷媒流路2を設け、第1流路部21を、所定の配置領域DR内の一部と重なる所定位置(集中冷却部24)に、第2流路部22よりも集中的に冷媒を通過させるように形成する。これにより、第1流路部21では、所定位置(集中冷却部24)において冷媒を集中的に流すことにより流速を上昇させ、所定位置(集中冷却部24)の直上に位置する一部分に対する冷却能力を局所的に向上させることができる。したがって、冷却対象物Mの内部での発熱分布を考慮して、特に冷却が必要な部分が第1流路部(集中冷却部24)の直上に位置するように冷却対象物Mを配置することにより、局所的に冷却能力が不足する(冷却対象物Mの温度が局所的に許容温度Tmを超える)ことを抑制することが可能となる。
【0060】
そして、
図3のように、複数の配置領域10のうちで、最も冷却能力が必要な所定の配置領域DRに合わせて第1流路部21を配置する場合には、最も冷却が必要な部分での冷却能力の不足を抑制することができるので、各々の冷却対象物Mに対して冷媒流路2全体で十分な冷却能力を確保することが可能となる。さらに、冷却能力に余裕がある他の配置領域10(10A、10B、10C)に重なる位置には、第1流路部21ほど冷媒を集中的に流さずに圧力損失を低く抑えることが可能な第2流路部22を設けることによって、第1流路部21による圧力損失の増大分を相殺して、冷却装置100全体での圧力損失の上昇を抑制することができる。これらの結果、冷却装置100全体の圧力損失が増大するのを抑制しつつ、局所的に冷却能力が不足することを抑制することによって冷却対象物Mに対して十分な冷却能力を確保することができる。
【0061】
また、上記のように、第1流路部21を、所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HSと重なる所定位置に配置する。これにより、冷却対象物Mのうちで特に発熱密度が大きくなる局所発熱部HSと重なる位置に第1流路部21を配置することができるので、冷却対象物Mの局所的な発熱によって冷却能力が不足することを確実かつ効果的に抑制することができる。
【0062】
また、上記のように、第1流路部21を、第2流路部22の第2流路幅W2よりも小さい第1流路幅W1を有するように形成することにより、所定位置(集中冷却部24)に冷媒を集中的に通過させるように構成する。これにより、容易に、所定位置(集中冷却部24)に冷媒を集中させて流速を増大させ、局所的な冷却能力を増大させることができる。また、第2流路部22の第2流路幅W2を相対的に大きくすることができるので、第2流路部22の圧力損失を低く抑えて冷却装置100全体での圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0063】
また、上記のように、第1流路部21の第1流路幅W1を、流路幅方向(Y方向)における局所発熱部HSの幅(L2)以上の大きさにする。これにより、第1流路幅W1を第2流路幅W2よりも小さくする場合でも、少なくとも局所発熱部HSの全体と重なる範囲に第1流路部21を形成することができる。その結果、第1流路部21における冷媒の流速を上げつつ、局所発熱部HSの全体を冷却することにより、局所発熱部HSを効果的に冷却することができる。
【0064】
また、上記のように、第2流路部22内の伝熱フィン32aを、第1流路部21内の伝熱フィン31よりも圧力損失が小さいフィンにより構成する。これにより、第2流路部22内の第2流路幅W2を相対的に大きくするだけでなく、第1流路部21内の伝熱フィン31よりも圧力損失が小さい伝熱フィン32aを第2流路部22内に設けることによって、冷却能力に余裕がある第2流路部22における圧力損失を低く抑えることができる。この結果、冷却装置100全体での圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0065】
また、上記のように、第2流路部22に、上流側ほど圧力損失が低くなるように、伝熱フィン32aおよび32bを設ける。
図3に示した例では、第2流路部22に上流側ほど圧力損失が低くなるように、流路幅方向のピッチが異なる複数の伝熱フィン32aおよび32bを設けている。冷却能力に余裕がある上流側ほど圧力損失が低く伝熱性能が低くなるように伝熱フィン32a、32bを設けることにより、冷却能力の余裕に応じて圧力損失および伝熱性能を調整できるので、より効果的に、冷却能力を確保しつつ冷却装置100の圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0066】
また、上記のように、複数の配置領域10のうち、冷媒流路2の最も下流側に位置する配置領域10Dを、所定の配置領域DRとする。ここで、複数の配置領域10に配置される各冷却対象物Mの発熱量に大きな違いがない場合には、最も下流側の配置領域10Dに配置される冷却対象物Mにおいて冷却能力が不足しやすくなる。そのため、冷媒流路2の最も下流側に位置する配置領域10Dを所定の配置領域DRとし、所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HSと重なる所定位置(集中冷却部24)に第1流路部21を配置することによって、冷却対象物Mの局所的な発熱によって冷却能力が不足することをより一層効果的に抑制することができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、
図10を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、複数の配置領域10のうち冷媒流路2の最も下流側に位置する配置領域10Dを所定の配置領域DRとした上記第1実施形態と異なり、複数の配置領域10のうち、発熱密度が最も高い局所発熱部HSを含んだ冷却対象物Mが配置される配置領域(配置領域10C)を所定の配置領域DRとした例について説明する。
【0068】
第2実施形態では、各配置領域10に配置される各冷却対象物Mの発熱量が異なることを前提とする。一例として、各冷却対象物Mのうちで、配置領域10Cに配置される冷却対象物Mの発熱量が最大となる例を示す。より具体的には、配置領域10Cに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HSの発熱密度が、各冷却対象物Mのうちで最大の発熱密度となる。そこで、発熱密度が最も高い局所発熱部HSを含んだ冷却対象物Mが配置される配置領域10Cが所定の配置領域DRとして設定(設計)されている。
【0069】
図10に示すように、冷却装置200では、第1流路部121が、複数の配置領域10のうち、所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HS(発熱密度が最も高い局所発熱部HS)と重なる所定位置に配置されている。つまり、
図10の冷媒流路2の構成例では、第1流路部121によって、配置領域10Cに配置される冷却対象物Mの各局所発熱部HSと重なる所定位置に集中冷却部24が形成されている。
【0070】
第2流路部122は、複数の配置領域10のうち、配置領域10A、10Bおよび10Dと重なる位置に配置されている。このため、第2流路部122は、第1流路部121の上流側および下流側にそれぞれ配置されており、第1流路部121が、冷媒流路2の最下流ではなく途中の位置に配置されている。
【0071】
第1流路部121の形状や流路幅は、上記第1実施形態における第1流路部21と同様である。発熱量の異なる冷却対象物Mは形状や局所発熱部HSの配置が他の冷却対象物Mとは異なることがあるため、その場合には、第1流路部121の形状や流路幅は、所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HSに合わせて形成される。
【0072】
また、第2流路部122内の伝熱フィン132と、第1流路部121内の伝熱フィン131とで異なる種類(形状)のフィンが採用されている。たとえば、第2流路部122内の伝熱フィン132は、冷媒の流通方向に延びる直線状フィン33(
図7参照)である。直線状フィン33は、たとえば上記のプレーンフィンやパーフォレートフィンである。第1流路部121内の伝熱フィン131は、たとえばオフセットフィン35(
図8参照)である。
【0073】
第2流路部122において、配置領域10Aおよび10Bと重なる位置を通過する上流側の第2流路部122内の伝熱フィン132aは、ピッチP12aを有する。配置領域10Dと重なる位置を通過する下流側の第2流路部122内の伝熱フィン132bは、ピッチP12bを有する。上流側の伝熱フィン132aのピッチP12aは、下流側の伝熱フィン132bのピッチP12bよりも大きい。
【0074】
第1流路部121内の伝熱フィン131は、ピッチP11を有する。伝熱フィン131のピッチP11は、たとえば、下流側の伝熱フィン132bのピッチP12bと等しい。
【0075】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0076】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、第1流路部121を、所定の配置領域DR内の一部と重なる所定位置(集中冷却部24)に、第2流路部122よりも集中的に冷媒を通過させるように形成することによって、冷却装置200全体の圧力損失が増大するのを抑制しつつ、局所的に冷却能力が不足することを抑制することによって冷却対象物Mに対して十分な冷却能力を確保することができる。
【0077】
また、上記のように、複数の配置領域10のうち、発熱密度が最も高い局所発熱部HSを含んだ冷却対象物Mが配置される配置領域10Cを、所定の配置領域DRとする。ここで、複数の配置領域10に配置される各冷却対象物Mの発熱量が異なる場合には、発熱密度が最も高い局所発熱部HSにおいて冷却能力が不足しやすくなる。そのため、発熱密度が最も高い局所発熱部HSを含んだ冷却対象物Mが配置される配置領域10Cを所定の配置領域DRとし、所定の配置領域DRに配置される冷却対象物Mの局所発熱部HSと重なる所定位置(集中冷却部24)に第1流路部121を配置することによって、冷却対象物Mの局所的な発熱によって冷却能力が不足することをより一層効果的に抑制することができる。
【0078】
また、上記のように、第2流路部122内の伝熱フィン132を直線状フィン33により構成し、第1流路部121内の伝熱フィン131をオフセットフィン35により構成する。つまり、相対的に冷却能力に余裕がある第2流路部122には低圧力損失で低伝熱性能の直線状フィン33を設け、相対的に冷却能力が必要な第1流路部121には高圧力損失で高伝熱性能のオフセットフィン35を設けている。その結果、冷却装置200全体での圧力損失の上昇を抑制しつつ、複数の冷却対象物Mの各々に対する冷却能力を各々の発熱に応じて最適化することができる。また、例えば、第2流路部122において局所発熱部HSと重なる位置を通過して温められた冷媒と、発熱が高くない箇所を通過した(局所発熱部HS以外と重なる位置を通過した)低温の冷媒とが第1流路部121に流入する際など、温度差を有する冷媒が第1流路部121に流
入する際、オフセットフィン35によって冷媒を攪拌し、冷媒温度を平均化させて冷却能力を維持することができるので、局所発熱部HSを効果的に冷却することができる。
【0079】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0080】
[
参考例]
次に、
図11を参照して、
参考例について説明する。この
参考例では、冷媒流路2に流路幅の異なる第1流路部と第2流路部とを設けた上記第1および第2実施形態と異なり、第1流路部と第2流路部とを設けずに冷媒流路2の流路幅を一定にした例について説明する。
【0081】
参考例では、上記第1実施形態と同様に、各冷却対象物Mが概ね同一である(発熱量が概ね等しい)との前提の下、最も下流側の配置領域10Dを所定の配置領域DRとする例について説明する。
【0082】
冷却装置300では、冷媒流路2は、流路部220と、折り返し部23とを含む。流路部220は、折り返し部23の上流側および下流側において、一定の流路幅W31を有する直線状流路となっている。
【0083】
冷媒流路2は、複数の配置領域10のうち所定の配置領域DR(配置領域10D)と重なる位置に配置された第1伝熱フィン231と、所定の配置領域DR以外の他の配置領域10(10A、10B、10C)と重なる位置に配置された第2伝熱フィン232とを含む。第1伝熱フィン231は、第2伝熱フィン232よりも下流側に配置されている。
【0084】
第1伝熱フィン231および第2伝熱フィン232には、性能が異なるフィンが採用されている。第1伝熱フィン231は、第2伝熱フィン232とは異なるとともに、第2伝熱フィン232よりも圧力損失が大きく伝熱性能が高いオフセットフィン35(
図8参照)からなる。第2伝熱フィン232は、直線状フィン33(
図7参照)からなる。直線状フィン33は、プレーンフィン(図示せず)でもよいし、パーフォレートフィン(
図7参照)でもよい。
【0085】
所定の配置領域DRと重なる位置において、第2伝熱フィン232よりも圧力損失が大きく伝熱性能が高いオフセットフィン35(第1伝熱フィン231)を設けることにより、第1に、他の配置領域10よりも高性能なフィンによって放熱性能が向上する。第2に、オフセットフィン35の攪拌効果によって、冷媒の温度分布が平均化する。上流側の配置領域10Cの局所発熱部HSと重なる位置を通過して温められた高温の冷媒と、局所発熱部HSと重なる位置を通過しなかった(相対的に)低温の冷媒とは、直線状フィン33からなる第2伝熱フィン232から、温度分布を有したまま第1伝熱フィン231に到達する。これらの冷媒が第1伝熱フィン231において攪拌されることによって、温度分布が平均化された相対的に低温の冷媒が所定の配置領域DRの局所発熱部HSの直下に供給される。
【0086】
第2伝熱フィン232は、流路幅方向のピッチが第1伝熱フィン231よりも大きくなっている。第2伝熱フィン232は、第1伝熱フィン231による圧力損失の上昇分を相殺するように構成されている。
【0087】
また、第2伝熱フィン232は、上流側ほど圧力損失が低くなるように、流路幅方向のピッチが異なる複数の伝熱フィン(232a、232b)から構成されている。上流側の配置領域10Aおよび配置領域10Bに対応して設けられた第2伝熱フィン232aと、下流側の配置領域10Cに対応して設けられた第2伝熱フィン232bとで、ピッチが異なっている。
【0088】
具体的には、第2伝熱フィン232aのピッチP32aが、第2伝熱フィン232bのピッチP32bよりも大きい。また、第2伝熱フィン232bのピッチP32bは、第1伝熱フィン231のピッチP31よりも大きい。
【0089】
一例として、第2伝熱フィン232aのピッチP32aは、約2.1mmである。第2伝熱フィン232bのピッチP32bは、約1.4mmである。第1伝熱フィン231のピッチP31は、約1.3mmである。
【0090】
参考例のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0091】
(
参考例の効果)
上記のように、複数の配置領域10のうち所定の配置領域DRと重なる位置に配置された第1伝熱フィン231と、所定の配置領域DR以外の他の配置領域10と重なる位置に配置された第2伝熱フィン232とを含む冷媒流路2を設ける。そして、第1伝熱フィン231を、第2伝熱フィン232よりも圧力損失が大きく伝熱性能が高いオフセットフィン35により構成する。これにより、第1伝熱フィン231では、第2伝熱フィン232よりも伝熱性能が高いことに加えて、オフセットフィン35によって冷媒を攪拌することができる。したがって、冷却対象物Mの内部での発熱分布を考慮して、特に冷却が必要な部分(局所発熱部HS)が第1伝熱フィン231と重なる位置となるように冷却対象物Mを配置することにより、局所的な発熱箇所で温められた冷媒と、発熱が高くない箇所での低温の冷媒とを攪拌し、冷媒温度を平均化させて冷却能力を維持することができるので、局所的な発熱によって冷却能力が不足する(冷却対象物Mの温度が局所的に許容温度Tmを超える)ことを抑制することが可能となる。そして、それぞれ冷却対象物Mが配置される複数の配置領域10のうちで、最も冷却能力が必要な所定の配置領域DRに合わせて第1伝熱フィン231を配置すれば、各々の冷却対象物Mに対して冷媒流路2全体で十分な冷却能力を確保することが可能となる。さらに、冷却能力に余裕がある他の配置領域10では、第1伝熱フィン231よりも圧力損失が小さい直線状フィン33からなる第2伝熱フィン232を設けることにより、第1伝熱フィン231による圧力損失の増大分を相殺して、冷却装置300全体での圧力損失の上昇を抑制することができる。以上の結果、冷却装置300全体での圧力損失の上昇を抑制しつつ、局所的に冷却能力が不足することを抑制することによって冷却対象物Mに対して十分な冷却能力を確保することができる。
【0092】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0093】
たとえば、上記第1〜第
2実施形態では、冷却対象物Mが電力制御用スイッチング素子を備えたパワーモジュールである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却対象物はどのような物であってもよい。本発明では、冷却対象物の発熱分布に着目して、冷却能力を所定位置に集中させることから、内部に発熱源を含み局所的な発熱が大きい冷却対象物を冷却するのに特に効果的である。
【0094】
また、上記第1〜第
2実施形態では、冷媒流路が1層の板状のコールドプレートに本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本体部に複数層の冷媒流路が形成されてもよい。また、本体部1の第1面(上面)1aに配置領域10を設けるだけでなく、第2面(下面)1bにも配置領域10を設けてもよい。
【0095】
また、上記第1〜第
2実施形態では、4つの配置領域10を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、配置領域は複数あればよく、2つ、3つまたは5つ以上の配置領域を設けてもよい。また、配置領域の大きさや形状も任意であり、配置される冷却対象物の形状に応じて適宜設定されるものである。
【0096】
また、上記第1〜第
2実施形態では、折り返し部23を設けたU字形状の冷媒流路2の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、折り返し部を設けない直線状の冷媒流路であってもよい。また、折り返し部を複数設けて、本体部の一端と他端とで蛇行する形状の冷媒流路であってもよい。
【0097】
また、上記第1〜第
2実施形態では、伝熱フィンの例として、直線状フィン33(プレーンフィンまたはパーフォレートフィン)と、オフセットフィン35とを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、伝熱フィンとして、これら以外のルーバーフィンやヘリンボーンフィンを採用してもよい。
【0098】
また、上記第1および第2実施形態では、第1流路部21の流路幅(第1流路幅W1)を狭めることによって、所定位置(集中冷却部24)に集中的に冷媒を通過させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1流路部21に案内部を設けることによって、所定位置(集中冷却部24)に集中的に冷媒を通過させてもよい。
【0099】
図12に示す変形例では、第1流路部321は、第2流路部322と等しい流路幅W41を有している一方、冷媒を所定位置(集中冷却部24)に集中させるための案内部301を有している。案内部301は、冷媒の流れを所定位置(集中冷却部24)に集中させるように傾斜した板状部(案内壁)により構成することができる。案内部301によって、第1流路部21を流れる冷媒の大部分が集中冷却部24に案内される。その結果、集中冷却部24において流速が上昇して冷却能力が向上する。変形例では、第1流路部21を流れる冷媒の他の一部が、案内部301の外側を通過して集中冷却部24を通らずに第1流路部21から下流側へ流出する。
【0100】
なお、
図12に示したように、局所発熱部HSは、冷却対象物Mに対して2列に並ぶように形成されている必要はないし、局所発熱部HSの形状も任意である。
【0101】
また、上記第1および第2実施形態では、第1流路部21の第1流路幅W1を、流路幅方向(Y方向)における局所発熱部HSの幅(長さL2)と一致させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1流路幅W1が局所発熱部HSの幅(長さL2)よりも大きくてもよい。たとえば、
図13の変形例に示すように、局所発熱部HSと第1流路部21との間における熱の拡散分だけ、第1流路幅W1を局所発熱部HSの幅(長さL2)よりも大きくしてもよい。この場合、局所発熱部HSからの熱拡散の角度θと、局所発熱部HSと第1流路部21との間の距離D11とに基づいて、角度θで拡散した熱が第1流路部21に吸収されるように第1流路幅W1を設定することが好ましい。熱拡散の角度θ=45°とすれば、第1流路幅W1は、局所発熱部HSの幅(長さL2)よりも両側にそれぞれ距離D11分だけ大きく設定することが好ましい。