(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868644
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置のための駆動アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20210426BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A61M5/315 550A
A61M5/20 510
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-558157(P2018-558157)
(86)(22)【出願日】2017年5月3日
(65)【公表番号】特表2019-514590(P2019-514590A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017060471
(87)【国際公開番号】WO2017191159
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】1650616-4
(32)【優先日】2016年5月6日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】318014474
【氏名又は名称】エス・ハー・エル・メディカル・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SHL MEDICAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュ,チュン
(72)【発明者】
【氏名】ホルムクビスト,アンデシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,エリーカ
(72)【発明者】
【氏名】レアンデル,ペール
(72)【発明者】
【氏名】オーデルバリ,リンダ
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0137801(US,A1)
【文献】
特表2013−534164(JP,A)
【文献】
特表2012−532635(JP,A)
【文献】
特表2013−526904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置とともに用いられるパワーパック(10)であって、前記パワーパックは、
− 長手方向軸(L)に沿って移動可能なプランジャロッド(12)と、
− 前記プランジャロッド(12)に動作可能に接続される駆動ばね(36)と、
− 張力がかけられた状態の前記駆動ばね(36)で前記プランジャロッド(12)を解放可能に保持するための保持要素(88,90;102,104;122,124)が設けられたプランジャロッドスリーブ(82;100;120)とを備え、前記パワーパックは、
− 前記プランジャロッド(12)に配置される信号開始要素(80;112;140)と、
− 前記プランジャロッドスリーブ(82;100;120)に設けられた信号発生要素(84,86;108,110;138)とを備え、前記信号発生要素は、前記プランジャロッドスリーブ(82;100;120)が起動されて前記保持要素(88,90;102,104;122,124)から前記プランジャロッド(12)が解放されると、前記信号開始要素(80;112;140)と協動して、前記プランジャロッド(12)の移動についての情報を薬剤送達装置のユーザに与えるように構成され、
前記保持要素(88,90;102,104;122,124)と前記信号発生要素(84,86;108,110;138)とは、前記プランジャロッドスリーブ(82;100;120)における互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする、パワーパック。
【請求項2】
前記信号開始要素(112;140)は、前記長手方向軸(L)に沿って配置される多数の突起を備え、前記多数の突起に対して前記信号発生要素が繰り返し接触することで、前記プランジャロッド(12)の移動についての情報を薬剤送達装置のユーザに与える、請求項1に記載のパワーパック。
【請求項3】
前記突起(140)は楔形である、請求項2に記載のパワーパック。
【請求項4】
前記突起(140)は互いに等間隔で配置される、請求項2に記載のパワーパック。
【請求項5】
前記突起(140)は、互いに近位方向において減少する間隔で配置される、請求項2に記載のパワーパック。
【請求項6】
前記信号開始要素(80)は、前記長手方向軸(L)に沿って配置される多数の切欠き(80)を備え、前記多数の切欠き(80)に対して前記信号発生要素が繰り返し接触することで、前記プランジャロッド(12)の移動についての情報を薬剤送達装置のユーザに与える、請求項1に記載のパワーパック。
【請求項7】
前記信号発生要素(84,86;108,110;138)は、前記信号開始要素に機械的に係合して情報を提供する、可撓性である要素を備える、請求項2から6のいずれか1項に記載のパワーパック。
【請求項8】
前記保持要素(88,90;122,124)は、概して長手方向に延在する可撓性であるアームを備え、前記アームには、前記プランジャロッド(12)の凹部(80)に係合するように設計されたレッジ(90;124)が設けられ、前記レッジ(90;124)はさらに前記信号開始要素(80;140)と協動するように配置される、請求項7に記載のパワーパック。
【請求項9】
前記信号発生要素(108,110)は、少なくとも1列の長手方向(L)に互いに配置される複数の可撓性である要素(108,110)を備え、複数の前記要素(108,110)に対して前記信号開始要素が繰り返し接触することで、前記プランジャロッド(12)の移動についての情報を薬剤送達装置のユーザに与える、請求項2に従属する場合の請求項7に記載のパワーパック。
【請求項10】
前記情報は可聴情報を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載のパワーパック。
【請求項11】
前記情報は触覚情報を備える、請求項1から10のいずれか1項に記載のパワーパック。
【請求項12】
前記プランジャロッドスリーブ(82;100;120)の外部に同軸配置されるアクチュエータ(46)をさらに備え、前記アクチュエータ(46)は阻止位置から解放位置に移動可能である、請求項1から11のいずれか1項に記載のパワーパック。
【請求項13】
前記アクチュエータ(46)は前記阻止位置と前記解放位置との間を回転可能に配置される、請求項12に記載のパワーパック。
【請求項14】
前記アクチュエータ(46)は前記長手方向軸(L)に沿って移動可能である、請求項12または13に記載のパワーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤容器から投与量の薬剤を放出するためのエネルギを提供可能な薬剤送達装置のためのパワーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
市販の多くの薬剤送達装置は、ユーザが薬剤を自己投与できるように開発されている。これらのユーザの多くは概して薬剤送達装置の取扱いに慣れておらず、特に注射薬剤送達装置に関して、自己投与にはある程度の不安と抵抗があることが多いため、薬剤送達装置の開発者らは、高度な機能と、たとえば注射針の露出を隠すかまたは最小限に抑える特徴とを有する装置の設計を試みることが多い。
【0003】
自己投与用の薬剤送達装置にしばしば伴う別の問題は、意図されている総量の薬剤をユーザが受けたことを確認するための、かつ失敗およびさらには事故の危険性を最小限に抑えるための、正確な取扱いである。この点に関して、装置の取扱いが容易であることだけでなく、ユーザが使用前および使用中の双方に情報を受信することが重要である。たとえば、薬剤送達装置を投与量送達部位から取外すのが早すぎないことが重要である。取外すのが早すぎるということは、ユーザが薬剤送達装置をできる限り早く取外すことを望んでいるという装置の使用の不快感ゆえに、それ自体が問題であり得る。
【0004】
この目的で、多数の信号伝達解決策または情報提供解決策が開発されている。これらの多くは、薬剤送達装置をいつ安全に取外すことができるかをユーザに伝えるために、投与量送達シーケンスの最中のおよび/または最後の情報に関する。
【0005】
米国特許第7,758,550号文献は、信号伝達ユニットを有する薬剤送達装置を開示している。当該信号伝達ユニットは、スイッチスリーブに接続される捕捉ロッドと、捕捉ロッドを取囲み、ピストンロッドに軸方向に固定接続される、たとえば第1のラッチ要素でラッチされる係合スリーブとを含む。
【0006】
送達動作の開始時に、捕捉ロッドと係合要素が設けられた係合スリーブとがさらに引き離されることによって、ラッチ要素が設けられた部分の上を係合要素が動くことにより、係合要素がラッチ要素の上をそれぞれ通過する。係合要素がラッチ要素の各々の上を通過すると、短いクリック信号が発せられる。
【0007】
米国特許第7,758,550号に係る解決策の欠点は、信号を提供するために、薬剤送達装置内に通常存在している構成要素とは別に多数の付加的な構成要素が必要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願において、「遠部/遠端」という用語は、装置を使用する際に、ユーザの送達部位の最も遠くに位置する装置の一部/端部、または装置の部材の一部/端部を指す。同様に、「近部/近端」という用語は、装置を使用する際に、ユーザの送達部位の最も近くに位置する装置の一部/端部、または装置の部材の一部/端部を指す。
【0009】
本発明の目的は、最新技術の薬剤送達装置の欠点を改善し、信頼性があり、明確に理解可能であり、付加的な構成要素の必要性および使用を最小限に抑える信号伝達機能を有する薬剤送達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立特許請求項に係る特徴が設けられた薬剤送達装置によって解決される。好ましい実施形態は従属特許請求項の主題を形成する。
【0011】
本発明によると、薬剤送達装置とともに用いられるパワーパックは、長手方向軸に沿って移動可能なプランジャロッドと、プランジャロッドに動作可能に接続される駆動ばねと、張力がかけられた状態の駆動ばねでプランジャロッドを解放可能に保持するための保持要素が設けられたプランジャロッドスリーブとを含み得る。
【0012】
これらの特徴は、予め張力をかけられた駆動ばねを用いて投与量の薬剤を送達する多くの異なる薬剤送達装置に共通している。パワーパックの起動は、手動で自動的にまたは半自動的に行なうなど、多くの方法で行なわれ得る。
【0013】
好ましい解決策によると、信号開始要素がプランジャロッド上に配置され、信号発生要素がさらに設けられる。信号発生要素は、アクチュエータスリーブが起動されて保持要素が解放されると、信号開始要素と協動して、プランジャロッドの移動についての情報を薬剤送達装置の情報をユーザに与えるように配置される。
【0014】
この解決策では、プランジャロッドを直接用いて、プランジャロッドの移動についてユーザに知らせるためのユーザへの信号が開始される。これは、投与量送達動作の明確な指示である。プランジャロッドをある程度直接的に用いることは、投与量送達機能に加えて付加的な機能性を提供しつつ構成要素の数を減らすことができるため、有利である。
【0015】
ある実現可能な解決策によると、信号伝達要素は、長手方向軸に沿って互いに配置される多数の突起を含み得る。これらの突起は、製造時にプランジャロッドの表面上に直接作成されてもよい。この点に関して、突起は互いに等間隔で配置されてもよい。その一方で、突起は代わりに、互いに近位方向において減少する間隔で配置されてもよいし、ユーザへの意図される情報によってはこれら2つが組合されてもよい。たとえば、突起同士の間が等間隔である場合は、ばねからの力は投与量送達シーケンスが進行するにつれて減少するため、信号周波数が減少する。
【0016】
その一方で、突起同士の間の距離が減少する場合は、力の減少と距離の減少とのバランスに依存して、同一のばねを用いて一定の信号周波数が作り出され得る。さらなるシナリオでは、これもばねの力と距離の減少とのバランスに依存して、投与量送達シーケンスの最後に周波数が増加する。
【0017】
別個の信号を提供するために、突起は楔形に設計されてもよい。この種類の形状を用いる場合、かつ、信号発生要素が、信号開始要素に機械的に係合して情報を提供する機械的に可撓性である要素を含み得る場合は、非常に明確な別個の信号伝達が得られる。
【0018】
突起の代替として、多数の切欠きがプランジャロッドの長手方向軸に沿って配置されてもよい。さらに、付加的な構成要素の数を最小に抑えるために、信号発生要素はアクチュエータの保持要素を含んでもよい。この解決策では、保持要素は、まずプランジャロッドを装填状態に保持し、次にプランジャロッドが解放された後、投与量送達動作の進行を示す信号を発生させるという点で二重の機能を有する。
【0019】
プランジャロッドを保持するための良好なグリップを提供し、かつ明確で別個の信号を提供するために、保持要素は、概して長手方向に延在する可撓性であるアームを含んでもよい。アームには、プランジャロッドの凹部に係合するように設計されたレッジが設けられてもよい。当該レッジは信号開始要素と協動するように配置される。さらに、信号発生要素は、少なくとも1列の長手方向に互いに配置される複数の機械的に可撓性である要素を含んでもよい。この解決策では、信号発生要素の数が信号開始要素の数よりも多くなり、信号発生要素の列を通過して当該列に接触する際に信号を発生させるのに1つの突起で済む。
【0020】
上述の解決策では、情報は、信号開始要素と協動する信号発生要素によって音および信号の双方が生成され得るという点で、可聴情報および触覚情報を含み得る。
【0021】
パワーパックのさらなる実現可能な解決策によると、パワーパックは、プランジャロッドスリーブの外部に同軸配置されるアクチュエータをさらに含んでもよい。アクチュエータは阻止位置から解放位置に移動可能である。阻止位置から解放位置へのアクチュエータの移動は、長手方向軸に沿って回転可能および/または移動可能であってもよい。
【0022】
本発明のこれらおよび他の局面、ならびに本発明の利点は、以下の発明の詳細な説明から、かつ添付の図面から明らかになるであろう。
【0023】
以下の発明の詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】
図1のパワーパックの起動中の断面図である。
【
図5】パワーパックの第2の実施形態の分解図である。
【
図7】パワーパックの第3の実施形態の分解図である。
【
図8】第3の実施形態に含まれるプランジャロッドスリーブの詳細図である。
【
図9】第3の実施形態に含まれるプランジャロッドスリーブの詳細図である。
【
図11】パワーパックの第4の実施形態の分解図である。
【
図14】パワーパックの第5の実施形態の分解図である。
【
図15】
図14のパワーパックの信号発生メカニズムの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面に示すパワーパック10は、投与量の薬剤を患者またはユーザに送達するように設計された薬剤送達装置に嵌合するように設計される。パワーパック10(
図1および
図2)は、薬剤容器(図示せず)のストッパに作用して投与量の薬剤を放出するように配置される細長いプランジャロッド12を含む。プランジャロッド12の側面には凹部14が設けられている。示される実施形態では、2つの凹部がプランジャロッド12の両側に配置されている。プランジャロッド12の外部に、かつプランジャロッド12と同軸に、プランジャロッドホルダ16が配置されている。プランジャロッドホルダ16は、概して管状の近部18を含む。近部18には、概して径方向に可撓性であるアームの形態の保持要素20が設けられている。アーム20の自由端には、径方向内向きに延在するレッジ22が設けられている。レッジ22は、プランジャロッド12の凹部14に嵌合して、プランジャロッド12を解放可能に保持するように配置される。アーム20の自由端には、径方向外向きに方向付けられた突起24がさらに設けられている。プランジャロッドホルダ16の近部18の内面には、長手方向に延在するレッジ26が設けられている。レッジ26は、プランジャロッド12の外面上の長手方向溝28と相互に作用して、プランジャロッドホルダ16とプランジャロッド12との間の回転ロックを提供するが、それら同士の間の長手方向の移動を可能にするように構成される。さらに、プランジャロッド12には信号開始要素30が設けられている。信号開始要素30は、示される実施形態では数列の楔形の突起として配置される。楔形の突起30は、後述するようにプランジャロッドホルダ16のアーム20の内向きに延在するレッジ22と相互に作用することが意図されている。
【0026】
プランジャロッドホルダ16の遠端には、取付要素32が設けられている。取付要素32は、プランジャロッドホルダ16を薬剤送達装置の好適なハウジングに取付けるように設計される。プランジャロッドホルダ16の遠端には次に、ハウジングに嵌合するエンドキャップ34が設けられてもよい。示される実施形態では圧縮ばねである駆動ばね36(
図3)が、中空のプランジャロッド12の内部の、プランジャロッド12の近端壁40の遠位に方向付けられた表面38とエンドキャップ34の近位に方向付けられた表面42との間に設けられ、プランジャロッドホルダ16に対して固定される。起動中の駆動ばね36の座屈を防止するために、駆動ばね36の内部に案内ロッド
44がさらに配置される。
【0027】
アクチュエータの外部に、かつアクチュエータと同軸に、概して管状のアクチュエータ46がある。当該アクチュエータスリーブは、後述するようにパワーパックの起動部材として作用する。アクチュエータ46の内面には、内向きに方向付けられた表面48が設けられている。表面48は、後述するように要素を保持するための阻止要素として機能する。さらに、アクチュエータ46の内面には、長手方向に延在する凹部50が設けられている。実施形態では、2つの凹部50が内面の両側に配置されている。アクチュエータ46の外面には、案内レッジ52がさらに設けられている。案内レッジ52の一部は長手方向に延在しており、他の一部には長手方向軸Lに対して傾斜が設けられている。
【0028】
当該装置は以下のように機能することが意図されている。パワーパック10が電源を投入されて使用可能な状態にある場合、プランジャロッド12が近端からプランジャロッドホルダ16に押込まれて駆動ばね36に張力をかける。そして、プランジャロッドホルダ16のアーム20がプランジャロッド12の凹部14に入ることによって、プランジャロッド12を張力がかけられた状態に保持する。アーム20が曲がってプランジャロッド12の凹部14との係合から外れないようにするために、アクチュエータ46はプランジャロッドホルダ16の外部に配置される。これによって、アクチュエータのアーム20の外向きに方向付けられた突起24がアクチュエータ46の内向きに方向付けられた表面48に当接するため、アームの径方向外向きの移動が防止される(
図3a)。
【0029】
パワーパック10は次に、薬剤容器を収容する好適なハウジングとともに組立てられ、次にこれに薬剤送達部材が設けられる。注射針が患者またはユーザの皮膚を貫通するなど、好ましくは薬剤送達部材が投与量送達部位に配置された後に、パワーパック10を起動する場合は、アクチュエータ46が操作されて起動部材として機能する。これは、アクチュエータ46をプランジャロッドホルダ16に対して回転させることによってなされる。この回転は、ユーザが手動で操作する起動ボタンによって、または、投与量送達部位に接触しており薬剤送達装置およびアクチュエータスリーブに対して遠位に移動する薬剤送達部材ガードによってなど、多くの方法で行なわれ得る。そして、適切な要素がアクチュエータ46の傾斜した案内レッジと協動して、アクチュエータ46の回転を提供する。
【0030】
アクチュエータ46を回転させると、アクチュエータスリーブ46の長手方向凹部50が、外向きに方向付けられた突起24を有するアーム20
と合致するまで動く(
図3b)。これによってアーム20が解放されるので、アーム20が外向きに曲がることができる。これによって、内向きに方向付けられたレッジ22が移動してプランジャロッド12の凹部14との係合から外れる。プランジャロッド12はこうして、駆動ばね36の力によって近位方向に促される。これによって、プランジャロッド12は投与量の薬剤が送達されるように薬剤容器のストッパに作用する。
【0031】
投与量送達シーケンス中にプランジャロッド12が近位方向に移動する際、アーム20の内向きに方向付けられたレッジ22がプランジャロッド12と接触し、プランジャロッド12に沿って摺動する(
図4)。そして、レッジ22が楔形の突起30の列と接触してこれらに沿って移動することによって、ガタガタ鳴る音および振動が、すなわち可聴情報および触覚情報が、投与量送達シーケンス中にユーザにもたらされる。プランジャロッドホルダ16上の長手方向レッジ26がプランジャロッド12上の溝28と協動して、プランジャロッド12が移動中に回転することを防止する。このように防止しなければ、アーム20のレッジ22が移動して突起30の列との係合から外れてしまう危険性がある。
【0032】
示される実施形態では、楔形の突起30の列は、プランジャロッド12の長さの大部分に沿って延在する。しかし、突起30の列は、投与量送達シーケンスが終了しかかっていることのみをユーザ知らせるために、突起30が投与量送達シーケンスの最後のみに、または投与量送達シーケンスの後半のみにアーム20のレッジ22に係合するように配置されてもよいことを理解すべきである。当然のことながら、信号伝達要素は、ユーザへの所望の信号伝達を作り出すための他の形状を有してもよいことを理解すべきである。また、それに続く各突起同士の間の長さ、したがって音または振動の周波数は、信号伝達を変更するために修正されてもよい。この点に関して、周波数を投与量送達シーケンス中に変えてもよく、たとえば投与量送達シーケンスの進行中に周波数を増加させてもよい。
【0033】
第2の代替を
図5〜
図6に示す。ここで、信号開始要素は、プランジャロッド12
IIに沿った少なくとも1列の切欠き60を含む。ここで、信号発生要素は、概して径方向に可撓性であり近位に方向付けられているアーム62である。アーム62の自由端には、切欠き60に係合する内向きに方向付けられた突起64が設けられている。信号発生要素62は、概して管状であり細長いプランジャロッドスリーブ66に取付けられるか、またはこれと一体成形される。アーム62の外面はアクチュエータ46
IIと協動して、アームを解放可能に保持し、それによって張力をかけられたプランジャロッド12
IIを解放可能に保持する。さらに、たとえばプランジャロッド12
IIの反対側に2列目の切欠き60
IIが存在していてもよい。これを用いてより頻繁な音の発生を作り出すことができる。一方の列は軸方向に半音ずれている。この解決策では、音が2倍多く現われる。
【0034】
さらに、1列または数列の切欠きとアーム上の突起との相対位置を保証するために、プランジャロッド12
IIには横方向に延在する多数の突起または翼部68が設けられている。当該翼部は、プランジャロッドスリーブ66の長手方向案内スロット70に嵌合する。案内スロット70にはさらに好ましくは、プランジャロッドスリーブ66の近位領域に停止面72が設けられている。これによって、パワーパックの組立時に、張力をかけられたプランジャロッド12
IIがプランジャロッドスリーブ66から飛び出さないことが保証される。
【0035】
さらに、プランジャロッドホルダのアームを、プランジャロッドを保持するためだけでなく、ユーザへの情報を作成するためにも用いることが有利であるとしても、場合によっては、突起の列と接触することによって音および振動を生じさせる別個の要素が存在していてもよい。
【0036】
この変形は、パワーパックの第3の実施形態を示す
図7〜
図10に表示されている。第2の実施形態と同様に、プランジャロッド12
IIIには、プランジャロッド12
IIIの長手方向に数列配置されている多数の切欠き80の形態の多数の信号開始要素が設けられている。示される実施形態では、2列の切欠き80がプランジャロッド12
IIIの両側に配置されている。プランジャロッド12
IIIはプランジャロッドスリーブ82内で摺動するように配置される。さらに、プランジャロッドスリーブ82には、近位に方向付けられたアーム84の形態の、近位に方向付けられた信号発生要素が設けられている(
図8および
図9)。アーム84には、内向きに方向付けられた突起86が設けられている。突起86は、プランジャロッド12
IIIの移動時にプランジャロッド12
IIIの切欠き80と相互に作用して音を作り出す。先の実施形態とは対照的に、プランジャロッドスリーブ82には別個の1組のアーム88が設けられている。アーム88は遠位方向に方向付けられており、概して径方向に可撓性である。アーム88の自由端には、内向きに方向付けられたレッジ90が設けられている。レッジ90は、プランジャロッド12
IIIの切欠き80の列内の一定の切欠き80
Iと相互に作用するように設計される。レッジ90は、
図10に示すように張力をかけられた駆動ばね36でプランジャロッド12
IIIを保持するように配置される。
【0037】
アーム88の外端には突起92が設けられている。突起92はアクチュエータ93と相互に作用する。アクチュエータ93は、示される実施形態では管状体94を有する。管状体94は、薬剤送達装置のハウジング96の内部を摺動可能な、遠位に方向付けられた2本のアーム95を有する。ハウジング96の近端がその延在するアクチュエータ93とともに投与量送達部位に押付けられると、アクチュエータ93が遠位方向に移動し、アーム95の遠端が突起92に作用して、プランジャロッドスリーブ82のアーム88を外向きに移動させてプランジャロッド12
IIIを解放する。さらに、プランジャロッド12
IIIの遠端には、外向きに方向付けられた多数の案内要素98が設けられている。案内要素98は、プランジャロッドスリーブ82の長手方向に延在する溝99に嵌合して、プランジャロッド12
IIIがプランジャロッドスリーブ82に対して回転しないように設計される。
【0038】
図11〜
図13はパワーパックの第4の実施形態を示す。本実施形態では、プランジャロッドスリーブ100には、概して径方向に可撓性である近位に方向付けられた2本のアーム102が設けられている。アーム102の自由端には、内向きに方向付けられた突起104が設けられている(
図13)。突起104は、プランジャロッドスリーブ100の内部を摺動可能なプランジャロッド12
IVの凹部106に嵌合して、駆動ばね36によってプランジャロッド12
IVを張力がかけられた状態に保持する。アーム102は上記と同じ態様でアクチュエータ46
IVと協動する。
【0039】
プランジャロッドスリーブ100には、概して径方向に可撓性である複数の近位に方向付けられたアーム108の形態の信号発生要素がさらに設けられている。アーム108の自由端には、内向きに方向付けられた突起110が設けられている。複数のアーム108は、プランジャロッドスリーブ100の長手方向に互いに数列配置される。示される実施形態では、2列のアーム108が両側に配置されている。信号発生要素の複数のアーム108は、プランジャロッド12
IVの遠位領域上の外向きに方向付けられた突起112の形態である信号開始要素と協動する。突起112は、プランジャロッド12
IVが解放されると、突起112が信号発生要素のアーム108の内向きに方向付けられた突起110と接触することによって、たとえば投与量送達シーケンス中にプランジャロッド12
IVが移動しているという可聴フィードバックを生じさせるように配置される。先の実施形態と同様に、2列以上のアーム108を用いる場合は、一方の列を他方の列に対して半音ずらして配置して、より高周波の音を発生させてもよい。
【0040】
図14〜
図17はパワーパックの第5の実施形態を示す。先の実施形態のいくつかと同様に、概して管状のプランジャロッドスリーブ120には、概して径方向に可撓性である近位に方向付けられたアーム122が設けられている。アーム122の自由端には、内向きに方向付けられた突起124が設けられている。突起124は、概して細長いプランジャロッド12
Vの切欠き126に嵌合して、駆動ばね36でプランジャロッド12
Vを張力がかけられた状態に保持するように設計される。ここでも、アクチュエータ46
Vが上述のようにアームと相互に作用するように配置される。プランジャロッドスリーブ120の近端にはシート128が設けられており、この中に金属クリップ130(
図15)を取付けることができる。金属クリップ130は、内向きに傾斜した脚部134と一体化される2つの円弧形状部132を有するように一定の形状に曲げられ、これは次に、シートに取付けられる平坦部136に変形する。この設計によって、概して長手方向における円弧形状部の屈曲動作が提供される。この意図は、円弧形状部がシリンジまたは同様の薬剤容器の遠端と接触して薬剤容器に対して付勢力を与えることによって、薬剤容器の如何なるガタ付きまたは動きも最小限に抑えることである。また、平坦部136には、内向きに延在して近位に傾斜した舌部138が設けられている。舌部138は信号発生要素を構成する。
【0041】
さらに、プランジャロッド12
Vには、円周方向に延在する複数の楔形の突起140が設けられており、これらは音開始要素である。したがって、投与量送達シーケンスを実行するためにプランジャロッド12
Vが解放されて駆動ばね
36によって近位方向に移動すると、傾斜した舌部138は通過する楔形の突起140と接触し、突起140によって張力的に付勢されて、前の突起を去る際に後の突起にぶつかることによって、進行中のシーケンスのユーザに触覚情報および可聴情報をもたらす。楔形の突起140はプランジャロッド12
Vの全周に位置決めされるため、プランジャロッド12
Vを信号発生要素、すなわち舌部138に対して方向付ける案内要素は不要である。
【0042】
上述の図面に示した実施形態は本発明の非限定的な例に過ぎないと見なされるべきであること、および実施形態は特許請求の範囲内で多くのやり方で修正され得ることを理解すべきである。