特許第6868645号(P6868645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868645
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】量子ドットを封入するレオロジー改質剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   C08F2/44 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-559183(P2018-559183)
(86)(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公表番号】特表2019-515114(P2019-515114A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017032311
(87)【国際公開番号】WO2017205079
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2018年11月9日
(31)【優先権主張番号】62/342,280
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヅィフェン・バイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・シー・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】リアン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ヴイ・ギンツブルグ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・イェ・フアン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイ・タッカー
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−194048(JP,A)
【文献】 特開2015−28139(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0272885(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0005932(US,A1)
【文献】 特開2016−81055(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125707(WO,A1)
【文献】 特開平9−40875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー樹脂組成物であって、
(a)量子ドットと、
(b)(i)1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、Rは水素またはメチルであり、RはC−C20脂肪族多環式置換基である、化合物、及び(ii)2つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物であって、
【化2】
式中、Rは水素またはメチルであり、Rは1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有するC−C20脂肪族多環式置換基である、化合物[前記1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物:前記2つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物の重量比が100:1〜1:20である]と、
(c)50,000〜400,000のMを有し、40〜90重量%のスチレン重合単位及び10〜60重量%の非スチレンブロックを含む、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであって、前記非スチレンブロックが15.0〜17.5(J/cm1/2のVan Krevelen溶解度パラメータを有する、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーと、を含む、ポリマー樹脂組成物
【請求項2】
前記(i)1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物のがC−C17架橋多環式置換基であ前記(ii)2つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物のRが1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有するC−C17架橋多環式置換基である、請求項1に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項3】
前記ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが、少なくとも40重量%のスチレン重合単位及びアルケン、ジエン、またはそれらの組み合わせの重合単位を含む炭化水素ポリマーである、請求項2に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項4】
70〜95重量%の前記式(I)の化合物と、1〜20重量%の前記ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーと、0.01〜5重量%の量子ドットと、0.3〜5重量%の硬化剤と、を含む、請求項3に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項5】
前記(i)1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物の前記C−C17架橋多環式置換基がビシクロ[2,2,1]アルカンまたはトリシクロデカン環系を有前記(ii)2つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物のRの前記C−C17架橋多環式置換基がビシクロ[2,2,1]アルカンまたはトリシクロデカン環系を有する、請求項4に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項6】
前記ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが、60,000〜300,000のMを有する、請求項5に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項7】
前記ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが、少なくとも40%のスチレン重合単位ならびにC−Cアルケン及びC−Cジエンからなる群から選択される60重量%以下のモノマー重合単位を有する、請求項6に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項8】
前記C−Cアルケン及びジエンが、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、及びブタジエンからなる群から選択される、請求項7に記載のポリマー樹脂組成物
【請求項9】
前記ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが、70,000〜250,000のMを有する、請求項8に記載のポリマー樹脂組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットを含む多層ポリマー複合体を調製するプロセスにおいて有用なレオロジー改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体量子ドット(QD)は、バルク材料のものとは顕著に異なる光吸収及び発光(光ルミネセンスPLまたはエレクトロルミネセンスEL)挙動を提供する。粒径が減少するにつれて、実効エネルギーバンドギャップ(Eg)または利用可能なエネルギーレベルが増加し、青方偏移したPLスペクトルが生成される。同じ材料内での粒径依存性の量子閉じ込め効果によるこのスペクトル波長可変性は、従来のバルク半導体に優る重要な利点である。それらの固有の光学特性のため、QDは、多くのディスプレイ及び照明用途において大きな関心となっている。大部分のQDは、コア領域内に電子及び正孔対を閉じ込め、いかなる表面荷電状態も阻止するためのより大きなバンドギャップ材料を用いた無機シェルを有する。次いで、外側シェルは有機リガンドによってキャップされて、減少した量子収率(QY)をもたらし得るシェルのトラップ状態を減少させる。有機リガンドは、QDが有機/水性溶媒中に分散するのを助ける。QDを取り囲む典型的な有機リガンドは、非極性溶媒またはモノマー中での高い溶解度を提供する比較的長いアルキル鎖を有する。残念なことに、QDは、光吸収/変換プロセス中に光酸化の影響を非常に受けやすい。また、リガンドが適合性でないとき、水分が同様の影響を与え得る。QDは、典型的には、それらを水及び酸素の悪影響から保護するために、ポリマーマトリックス中に封入される。例えば、US2010/0084629は、封入剤として様々なポリマーを開示している。しかしながら、この参考文献は、本明細書に記載されるポリマー組成物を開示していない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、
(a)量子ドットと、
(b)式(I)の化合物であって、
【0004】
【化1】
【0005】
式中、Rは水素またはメチルであり、RはC−C20脂肪族多環式置換基である化合物と、
(c)50,000〜400,000のMを有し、10〜100重量%のスチレン重合単位及び0〜90重量%の非スチレンブロックを含む、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであって、非スチレンブロックが15.0〜17.5(J/cm1/2のVan Krevelen溶解度パラメータを有する、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーと、を含む、ポリマー樹脂を提供する。
【0006】
本発明は、
(a)量子ドットと、
(b)式(I)の化合物と、
(c)ポリマー臨界分子量Mより大きなMを有し、16.5〜20.0(J/cm1/2のVan Krevelen溶解度パラメータを有する、ホモポリマーまたはランダムコポリマーと、を含む、ポリマー樹脂をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に明記しない限り、百分率は、重量百分率(重量%)であり、温度は、℃である。特に明記しない限り、操作は、室温(20〜25℃)で実行された。沸点は、大気圧(約101kPa)で測定される。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。量子ドットは、当該技術分野において周知であり、例えば、US2012/0113672を参照されたい。数平均分子量Mは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定される。炭化水素ポリマーは、全ポリマーの乾燥重量に基づいた百分率で、水素及び炭素以外の元素を5重量%、好ましくは3重量%、好ましくは1重量%より多く有さないポリマーである。
【0008】
Van Krevelen溶解度パラメータは、Bicerano(Prediction of Polymer Properties,3rd edition,Marcel Dekker,New York,2002,Chapter 5)に記載され、いくつかの商業的に関連するポリマーに関して同じ本の表5.2(「δ」)で表にされている。既知のモノマーの化学構造を有する任意のポリマーに関しては、Van Krevelen型溶解度パラメータは、同じ参考文献内に概説されているアルゴリズムを使用して計算され得るか、または、Materials StudioソフトウェアSynthiaモジュール(http://accelrys.com/products/collaborative−science/biovia−materials−studio/polymers−and−classical−simulation−software.html)を使用して計算され得る。ランダムコポリマーに関しては、コポリマーの溶解度パラメータが、そのコモノマーの溶解度パラメータの重量平均として計算され得る。
【0009】
臨界分子量Mcは、Bicerano(Prediction of Polymer Properties,3rd edition,Marcel Dekker,New York,2002,、Chapters 11 and 13)に記載されたように計算される。例えば、ポリスチレン(PS)に関しては、Mc=30kg/mol、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)に関しては、Mc=18kg/molなどである。既知のモノマーの化学構造を有する任意のポリマーに関しては、臨界分子量は、同じ参考文献内に概説されているアルゴリズムを使用して計算され得るか、または、Materials StudioソフトウェアSynthiaモジュール(http://accelrys.com/products/collaborative−science/biovia−materials−studio/polymers−and−classical−simulation−software.html)を使用して計算され得る。
【0010】
本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明の樹脂を使用して作成されたポリマー複合体は、ポリマー複合体の各側面に外層も含む多層アセンブリの一部である。好ましくは、外層は、水分の通過も阻害する酸素バリアである。好ましくは、外層は、ポリマーフィルム、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、またはそれらの組み合わせを含むものを含む。好ましくは、外層は、酸化物または窒化物、好ましくは酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせをさらに含む。好ましくは、酸化物または窒化物は、QD層に面するポリマーフィルムの表面上にコーティングされる。好ましくは、各外層は、25〜150ミクロン(好ましくは50〜100ミクロン)の厚さを有するポリマーフィルム及び10〜100nm(好ましくは30〜70nm)の厚さを有する酸化物/窒化物層を含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、外層は、少なくとも2つのポリマーフィルム層及び/または少なくとも2つの酸化物/窒化物層を含み、異なる層は、異なる組成のものであってもよい。好ましくは、外層は、非常に低い酸素透過率(OTR、<10−1cc/m/日)及び低い水蒸気透過率(WVTR、<10−2g/m/日)を有する。好ましくは、外層におけるポリマーフィルムは、60〜200℃のTg、好ましくは少なくとも90℃、好ましくは少なくとも100℃のTgを有する。
【0011】
好ましくは、本発明のポリマー複合体の厚さは、10〜500ミクロン、好ましくは少なくとも20ミクロン、好ましくは少なくとも30ミクロン、好ましくは少なくとも40ミクロン、好ましくは400ミクロン以下、好ましくは300ミクロン以下、好ましくは200ミクロン以下、好ましくは150ミクロン以下である。好ましくは、各外層の厚さは、20〜100ミクロン、好ましくは25〜75ミクロンである。
【0012】
好ましくは、本発明のポリマー複合体は、モノマー、QD、及び他の任意選択の添加剤を混合することによって調製された樹脂のフリーラジカル重合によって調製される。好ましくは、樹脂は、典型的な方法、例えば、スピンコーティング、スロットダイコーティング、グラビア、インクジェット、及びスプレーコーティングによって、硬化する前に第1の外層上にコーティングされる。好ましくは、硬化は、樹脂を紫外線または熱、好ましくは紫外線、好ましくはUVA範囲に曝すことによって開始される。
【0013】
好ましくは、RはC−C17脂肪族多環式置換基であり、好ましくは、RはC−C15脂肪族多環式置換基である。好ましくは、Rは架橋多環式置換基、好ましくは二環式、三環式、または四環式置換基、好ましくは二環式または三環式置換基である。好ましくは、Rは飽和脂肪族置換基である。Rの好ましい構造は、例えば、アダマンタン、ビシクロ[2,2,1]アルカン、ビシクロ[2,2,2]アルカン、ビシクロ[2,1,1]アルカン、及びトリシクロデカン(例えば、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン)を含み、それらの構造はアルキル、アルコキシ基、ヒドロキシ基、または(メタ)アクリレートエステル(例えば、式(I)の化合物は、少なくとも2つ、好ましくは2つ以下の(メタ)アクリレートエステル置換基を有し得る)で置換され得て、好ましくは、アルキル及びアルコキシ基は1〜6、好ましくは1〜4の炭素原子を有する。トリシクロデカン及びビシクロ[2,2,1]アルカン、とりわけトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、ジメタノールジメタクリレート、及びイソボルニルアクリレートは特に好ましい。1つを超える式(I)の化合物が樹脂中に存在し得る。好ましくは、樹脂は、好ましくはそれぞれ100:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:15の重量比で、1つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物及び2つの(メタ)アクリレートエステル置換基を有する式(I)の化合物を含む。
【0014】
好ましくは、ポリマー樹脂は、70〜95重量%、好ましくは少なくとも73重量%、好ましくは少なくとも76重量%、好ましくは少なくとも79重量%、好ましくは93重量%以下、好ましくは91重量%以下、好ましくは89重量%以下の式(I)の化合物(複数可)を含む。
【0015】
好ましくは、本発明のポリマー樹脂は、0.01〜5重量%の量子ドット、好ましくは少なくとも0.03重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、好ましくは4重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2重量%以下の量子ドットを含む。好ましくは、量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
好ましくは、量子ドットの無機部分を取り囲むリガンドは、非極性成分を有する。好ましいリガンドとしては、例えば、トリオクチルホスフィンオキシド、ドデカンチオール、及び脂肪酸塩(例えば、ステアリン酸塩、オレイン酸塩)が挙げられる。
【0017】
好ましくは、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーは、炭化水素ポリマーである。ブロックポリマーまたはグラフトポリマーは、レオロジー改質剤、すなわち、増粘剤としてポリマー樹脂に添加される。好ましくは、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーは、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、好ましくは90重量%以下、好ましくは80重量%以下、好ましくは70重量%以下、好ましくは60重量%以下、好ましくは50重量%以下、好ましくは45重量%以下のスチレンを含む。好ましくは、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、好ましくは85重量%以下、好ましくは80重量%以下、好ましくは75重量%以下、好ましくは60重量%以下、好ましくは50重量%以下、好ましくは45重量%以下の非スチレンブロックを含む。好ましくは、コポリマー中の非スチレンモノマー(非スチレンブロック)は、アルケン、ジエン、(メタ)アクリレート、シロキサン、またはそれらの組み合わせであり、好ましくはアルケン及び/またはジエンである。好ましくは、コポリマー中の非スチレンは、C−Cアルケン及び/またはジエン、好ましくはC−Cアルケン及び/またはジエンの重合単位を含む。好ましくは、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーは、ブロックコポリマーである。好ましくは、C−Cアルケン及び/またはジエンは、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、及びブタジエンから選択される。好ましくは、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーのMは、少なくとも60,000、好ましくは少なくとも70,000、好ましくは少なくとも80,000、好ましくは350,000以下、好ましくは300,000以下、好ましくは250,000以下である。
【0018】
好ましくは、非スチレンブロックは、17.2(J/cm1/2未満、好ましくは17未満、好ましくは16.5未満、好ましくは少なくとも15.5のVan Krevelen溶解度パラメータを有する。
【0019】
好ましくは、ポリマー臨界分子量Mより大きなMを有するホモポリマーまたはランダムコポリマーは、19.5(J/cm1/2以下、好ましくは少なくとも17、好ましくは少なくとも17.5、好ましくは少なくとも18.0のVan Krevelen溶解度パラメータを有する。好ましくは、Mは少なくとも1.5倍のM、好ましくは少なくとも2倍であり、好ましくは20倍以下のM、好ましくは10倍以下である。Mよりも大きなMを有する好ましいポリマーは、例えば、スチレン、アルケン、ジエン、(メタ)アクリレート、シロキサン、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーを含む。ポリスチレンのMは、30,000aである。
【0020】
本発明のポリマー複合体に組み込まれてもよい他の添加剤としては、UV安定剤、酸化防止剤、及び光抽出を改善するための散乱剤が挙げられる。
【0021】
好ましいポリマー複合体についての形態としては、例えば、フィルム、ビーズ、ストリップ、ロッド、立方体、及びプレートが挙げられる。ポリマー複合体は、例えば、ディスプレイ、照明、及び医療用途を含む多くの用途において有用である。好ましいディスプレイ用途としては、公共情報ディスプレイ、標識、テレビ、モニタ、携帯電話、タブレット、ラップトップ、自動車用ダッシュボード、及び時計が挙げられる。
【実施例】
【0022】
実施例のための試料調製
A)液体試料調製
QD樹脂の全ての試料を、不活性環境下で調製した。スチレン系ポリマーを80℃で〜30分間磁気攪拌を使用して混合することによってイソボルニルアクリレート中に溶解した。量子ドット以外の全ての成分をクリンプバイアルに充填した後、バイアルをガス抜きし、3〜5分間2軸遊星式混合機(Thinky ARE−310)を使用して混合した。量子ドットをイソボルニルアクリレート中に事前に分散し、その後他の成分と混合し、その後1時間転動させた。
【0023】
B)フィルム試料調製
2つのi−Component PETバリアフィルムの間に樹脂配合物を積層することによって、全ての試料を調製した。約2mLの樹脂を下部フィルム上に分配し、上部に所望のフィルム厚に基づいてギャップ設定したギャップコーティングバーを適用した。〜400mJ/cmのUVAを用いたFusion UV F300S硬化システムで、試料を硬化した。その後、フィルムを量子収率測定用の約0.2インチ平方の片及び光酸化試験用の1×1インチ平方の片に切った。フリースタンディングフィルムもまた、ガラス上に樹脂配合物をコーティングし、その後、FUSION UV SYSTEMS,INC(DRS−10/12 QNH)での〜400mJ/cmのUVAを用いた硬化によって調製した。その後、フリースタンディングフィルムをガラスから離層し、23℃で3%のO及び97%のNを用いたMocon ox−tranモデル2/21を使用するO透過性試験に使用した。
【0024】
C)特性
粘度をBrookfield DV−II+粘度計によって測定した。樹脂の周波数掃引及び定常流動実験を、20℃でAR G2レオメータを使用して行った。液体及びフィルムの両方の光ルミネセンス量子収率(PLQY)、ピーク発光波長(PWL)、及び発光ピークの半値全幅(FWHM)をHamamatsu C9920−02G積分球で測定した。フィルム厚は、マイクロメータで硬化させたフィルムを測定し、次いで、バリアフィルム厚を差し引くことによって判定した。エッジ侵入を、剥き出しのバックライトユニット上で劣化した1インチ×1インチの試料の画像解析によって判定した。ポリマーの数平均分子量(M)及び多分散度(PDI)を、安定化されたテトラヒドロフランを35℃、1.0mL/分で用いるMixed A PLgel 20um×300mm×7.5mm(X2+ガード)カラムを備えたサイズ排除クロマトグラフィー及び示差屈折率検出器(ポリスチレン標準物質に対する)を使用して判定した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
実施例1(1001配合物):KRATONブロックコポリマー(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロックコポリマー(SEBS))とのフュームドシリカの比較
KRATONブロックコポリマーは、無機フュームドシリカより高いアクリルモノマーの粘度増大を示した。KRATONブロックコポリマー及びいくつかの無機フュームドシリカの両方が、QDとの混和性を示した。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
実施例2(1031配合物)
より低MWのアクリレートオリゴマーとのKRATONの比較
KRATON G1652は、試験されたより低MWのアクリレートオリゴマーより高いQD(より高いQY、より低いピーク波長、及びFWHM)との混和性を示した。
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
実施例3(1104配合物)
異なるMWを有する2つのKRATONブロックコポリマーの比較
同様のスチレン組成物を有するが、より高いMW(トルエン中の溶液粘度及びメルトインデックスによっても示される)を有するKRATON SEBSブロックコポリマーG1650は、アクリレート系QD樹脂のより高い粘度増大を示した。
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】
【表9】
【0037】
実施例4(0421配合物)
異なるKRATONポリマーと単一のモノマーを混合されたスチレンホモポリマーとの比較
KRATONブロックコポリマーは、PLQY、PLmax、及びFWHMによって示されるようなIBOA中のQDと概して混和性がある。
【0038】
【表10】
【0039】
異なるKRATONポリマーとモノマー及び架橋剤ならびに単一の架橋剤の混合物を混合されたスチレンホモポリマーとの比較
12%より高いスチレン組成物を有するKRATONブロックコポリマーは、IBOA:SR−833(1:1)混合物中で可溶性であり、26%より高いスチレン組成物を有するKRATONブロックコポリマーは、SR−833中で可溶性である。
【0040】
【表11】
【0041】
実施例5(0528配合物)
完全な樹脂/フィルム配合物における2つの異なるKRATONブロックコポリマーの比較
より高いMW及びより高いスチレン量を有するKRATON A1535とのKRATON G1652の交換は、60℃及び90RH%で劣化したQDフィルムの同等の樹脂粘度、同等のPLQY、及びより低いエッジ侵入を取得するためのレオロジー改質剤のより低い充填をもたらす。
【0042】
【表12】
【0043】
【表13】
【0044】
【表14】
【0045】
【表15】
【0046】
実施例6
フィルム(バリア特性)における2つの異なるKRATONブロックコポリマーの比較
より高いMW及びより高いスチレン量を有するKRATON A1535とのKRATON G1652の交換は、加速試験でのQDフィルムのより低いエッジ侵入と一致するフィルムのより良いOバリアをもたらす。
【0047】
【表16】
【0048】
【表17】
【0049】
実施例7
樹脂(レオロジー的特性)における2つの異なるKRATONブロックコポリマーの比較
【0050】
【表18】
【0051】
3%のKRATON A1535を有するイソボルニルアクリレートとトリシクロデカンジメタノールジアクリレートの混合物は、単純な高分子流体(The structure and rheology of complex fluids、Oxford、New York、1999、Chapter 1)を示す20℃でのレオロジー的単純性(すなわち、それは、周波数の関数としての複素粘度とせん断速度の関数としてのせん断粘度が重なる「コックスメルツ則」に従う)を呈するが、一方で、10%のKRATON G1652を有するイソボルニルアクリレートとトリシクロデカンジメタノールジアクリレートの混合物は呈さない。レオロジー的単純性を有する単純な高分子流体は、樹脂の粘度制御に好ましい。
【0052】
【表19】
【0053】
【表20】