(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロトン伝導性ポリマーを厚さ15μmのシート形状を有するように成形した場合の、前記厚さ15μmのシート形状の面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が1550ppm/K以下である、請求項1または2に記載の電解質膜。
前記ナノファイバーシートは、ポリエーテルスルホン、ポリベンゾイミダゾール及びポリイミドからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電解質膜。
前記ナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が200ppm/K以下であり、前記プロトン伝導性ポリマーを厚さ15μmのシート形状を有するように成形した場合の、前記厚さ15μmのシート形状の面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が1550ppm/K以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電解質膜。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。本実施形態の複合高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」ともいう。)の一態様は、ナノファイバーシートと、プロトン伝導性ポリマーとを備える電解質膜であって、その電解質膜は、プロトン伝導性ポリマーとナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、かつ、シート形状の面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が300ppm/K以下であり、より好ましくはシート形状の面方向における20℃から150℃の平均線膨張率が350ppm/K以下である。あるいは、本実施形態の電解質膜の別の一態様は、ナノファイバーシートと、プロトン伝導性ポリマーとを備える電解質膜であって、その電解質膜は、プロトン伝導性ポリマーとナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、かつ、プロトン伝導性ポリマーはシート形状を有しており、ナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が250ppm/K以下であり、プロトン伝導性ポリマーを厚さ15μmのシート形状を有するように成形した場合の、その厚さ15μmのシート形状の面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が1550ppm/K以下である。
【0015】
<ナノファイバーシート>
本実施形態のナノファイバーシートは、電解質膜を強化する補強材として機能するものである。本実施形態のナノファイバーシートは空隙率(%)が75%以上95%以下であると好ましく、75%以上90%であるとより好ましく、80%以上88%以下であるとさらに好ましい。また、本実施形態のナノファイバーシートは、プロトン伝導性ポリマーとの複合化前に比べて、すなわち、プロトン伝導性ポリマーと複合化される際に、膜厚が50%以上75%以下の範囲で収縮したものであると好ましい。さらに、本実施形態の電解質膜において、その厚さに対する、ナノファイバーシートの厚さの比率が25%以上60%未満であると好ましい。これらにより、電解質は埋め込み性、すなわちナノファイバーシートの空隙へのプロトン伝導性ポリマーの充填性に更に優れ、膜抵抗がより小さく、かつ、更に高いプロトン伝導性と一層優れた面方向の寸法変化抑制とを実現できる。
【0016】
空隙率が75%以上となると、ナノファイバーシートへのプロトン伝導性ポリマーの埋め込み不良をより抑制できる。一方、空隙率が95%以下である、より好ましく90%以下であることにより、ナノファイバーシートの自立性が向上するため、取扱いが簡便となり、ナノファイバーシートによる補強作用も更に十分になる傾向となる。空隙率は下記のようにして導き出される。まず、40mm×30mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を精密天秤にて測定し、測定した質量及びナノファイバーシートの厚さから膜密度ρ(g/cm
3)を下記式(A)により算出する。そして、得られた膜密度ρ及びナノファイバーシートを構成する材料の真密度ρ
0(g/cm
3)から、下記式(B)により空隙率(%)を求めることができる。
膜密度ρ=M/(4.0×3.0×t) (A)
ここで、Mは切り出したナノファイバーシートの質量(g)を示し、tはナノファイバーシートの厚さ(cm)を示す。
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ
0))×100 (B)
【0017】
ナノファイバーシートの目付は、1.5g/m
2以上4.0g/m
2以下であり、2.0g/m
2以上3.5g/m
2以下であると好ましく、2.5g/m
2以上3.3g/m
2以下であるとより好ましい。目付が1.5g/m
2以上であると、膜の自立性があり、複合化の際に破膜することなく、取扱いが容易でプロセスが安定化する。さらに、単位面積あたりの繊維本数も十分であるので、平面方向における電解質膜の膨潤収縮が抑制される。一方、目付が4.0g/m
2以下であると、ポリマーの充填性により優れ、プロトン伝導性と電解質膜の膨潤収縮の両方を抑制することが可能となる。ナノファイバーシートの目付は、採取可能な任意の最も面積の広い面の面積と質量とを測定し、1m
2当たりの質量に換算した値である。ナノファイバーシートの厚さは下記のようにして導き出す。すなわち、膜厚計(例えば、株式会社ミツトヨ製のABSデジマチックインジケータID−F125(製品名))を用いて、同じナノファーバーシート内における任意の5点で厚さを計測し、その相加平均をナノファイバーシートの厚さとする。
【0018】
ナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーとの複合化前後における厚さの変化、言い換えれば、プロトン伝導性ポリマーと複合化された際の厚さの収縮程度は、電解質膜の断面SEM像を取得することで測定できる。まず、上述のようにしてプロトン伝導性ポリマーとの複合化前のナノファーバーシートの厚さを導き出す。次いで、そのナノファイバーシートを用いて本実施形態の電解質膜を作製する。次に、電解質膜の断面SEM像を取得して、その厚さ方向におけるナノファイバーシートの厚さを、プロトン伝導性ポリマーとのコントラスト差により測定する。この時の前処理は、まず、電解質膜を適当な大きさで切り出し、切り出した試料をエポキシ樹脂で包埋後、クライオ冷却機能付きのウルトラミクロトームにて切削断面を作製する。次に、ルテニウム染色によりナノファイバーシートの部分を染色して、さらにオスミウムコーティングにより検鏡試料を作製する。この前処理により、複合高分子電解質膜中のナノファイバーシートの厚さを容易に測定することができる。
【0019】
本実施形態のナノファイバーシートのプロトン伝導性ポリマーとの複合化前における厚さは、8μm以上28μm以下であると好ましい。その厚さが8μm以上28μm以下であると、特にナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径が100nm以上500nm以下である場合、薄膜(例えば厚さ25μm以下)の電解質膜であっても、プロトン伝導性ポリマーの埋め込み性がより良好になる。その結果、電解質膜の平面方向における寸法変化をより有効かつ確実に抑制することができる。
【0020】
本実施形態のナノファイバーシートは、面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が250ppm/K以下であることが好ましく、200ppm/K以下であることがより好ましく、150ppm/K以下であることが更に好ましく、100ppm/K以下であることがなおも更に好ましく、60ppm/K以下であることが特に好ましい。ナノファイバーシートの平均線膨張率が250ppm/K以下であると、プロトン伝導性ポリマーと複合化した際に120℃の過酷な環境下においてもより優れた耐久性を有し、面方向の寸法変化を更に抑制できる複合高分子電解質膜となる。ナノファイバーシートの20℃から120℃における平均線膨張率の下限値は特に限定はないが、5ppm/K以上であってもよく、10ppm/K以上であってもよく、30ppm/K以上であってもよい。
【0021】
本実施形態のナノファイバーシートは、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン)、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート及び全芳香族ポリエステル樹脂)、アクリル系樹脂(例えばポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸メチル)、ポリアミド系樹脂(例えば6ナイロン、66ナイロン及び芳香族ポリアミド系樹脂)、ポリエーテル系樹脂(例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル及び芳香族ポリエーテルケトン)、ウレタン系樹脂、塩素系樹脂(例えばポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン)、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン及びポリビニリデンフルオライド(PVDF))、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂(PI)、ポリエーテルイミド系樹脂、芳香族ポリエーテルアミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えばポリスルホン及びポリエーテルスルホン(PES))、ポリアゾール系樹脂(例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール及びポリピロール)、セルロース系樹脂、並びにポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0022】
それらの中でも、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる群より選ばれる1種以上を含むナノファイバーシートは平均線膨張率が低いので好ましい。同様の観点から、特に、PES、PBI及びPIからなる群より選ばれる1種以上を含むナノファイバーシートがより好ましい。かかるナノファイバーシートは、耐薬品性及び耐熱性に更に優れ、プロトン伝導性ポリマーと複合化する際に一層安定である。
【0023】
このようなナノファイバーシートは、例えば、静電紡糸法(エレクトロスピニング法)、メルトブロー法、及びスパンボンド法などにより製造することが可能である。これらの中でも、静電紡糸法は、平均繊維径が小さく、実質的に連続した繊維からなり、空隙率の大きな1Mを超える広幅なナノファイバーシートを連続的に生産することも可能であるため、好適に用いられる。ナノファイバーシートを製造する量産用の装置としては、例えば、エルマルコ株式会社製の「Nanospider」(商品名)のNS8S1600U(型式名、ワイヤー電極方式)、株式会社メック社のEDEN(NF−1001S)(製品名、ノズル吐出電極方式)、株式会社フューエンス社のエスプレイヤー量産機(ノズル吐出電極方式)を好適に用いることができる。静電紡糸法の適用が難しいPPSのナノファイバーは、例えば、特開2013−79486号公報を参考にして加工することが可能である。
【0024】
本実施形態の静電紡糸法によるナノファイバーシートの繊維は、上記装置の印加電圧、電極間距離、温度、湿度、紡糸溶液の溶媒種、及び紡糸溶液濃度など複数条件の組み合わせにより、所望のナノファイバー繊維径に加工することができる。本実施形態のナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径は、100nm以上500nm以下であると好ましく、より好ましくは100nm以上350nm以下である。平均繊維径が上記範囲内にあると、特に複合化前のナノファイバーシートの厚さが8μm以上28μm以下である場合、薄膜(例えば厚さ25μm以下)の複合高分子電解質膜であっても、プロトン伝導性ポリマーの埋め込み性が良好となる。その結果、電解質膜の平面方向における寸法変化をより有効かつ確実に抑制することができる。
【0025】
ナノファイバーシートにおける繊維の繊維径は、同等の目付量で比較すると、細径の方がナノファイバー繊維で囲まれる孔径を小さくすることが可能となる。それにより、ナノファイバーが存在しないプロトン伝導性ポリマー単独の領域を少なくすることができるので、電解質膜の平面方向の寸法変化をより抑制することができる。しかしながら、現実には、繊維径が100nm未満になると、生産性が低下しコストアップや加工難易度も高まり、ナノファイバーシート繊維の均一性(繊維径のばらつき、目付、空隙率)の確保が困難になる傾向にある。一方、繊維径が500nmを超えると、繊維同士の重なり合う部位で膜厚収縮が不十分となる傾向にあり、電解質であるプロトン伝導性ポリマーの埋め込み性が低下し、ボイド欠陥の発生が生じやすくなり、膜抵抗が大きくなる傾向にある。また、繊維径が500nmを超えると、ナノファイバー繊維間の孔径(繊維が存在しない空隙部)が大きくなる傾向にあり、プロトン伝導性ポリマーが単独で存在する領域が大きくなる傾向にある。その結果、電解質膜の平面方向の寸法変化を抑制し難くなる傾向にある。
【0026】
本実施形態のナノファイバーシートは、複合化の前に熱処理を施されることが好ましい。その熱処理方法としては、例えば、赤外線ヒーターやオーブンを用いた熱風乾燥による加熱が挙げられる。この熱処理方法によると、ナノファイバーシートの高空隙率を保持したまま、部分的にナノファイバー繊維同士が接触する点において融着させることができる。その結果、ナノファイバーシート表面の毛羽立ちの更なる抑制とシート強度の一層の向上を可能とする。
【0027】
これらのうち、ナノファイバーシートの強度向上は、引っ張り試験による5%伸び時の応力により確認することができる。すなわち、本実施形態のナノファイバーシートの5%伸び時の応力は、75%以上の空隙率を保持した状態で、好ましくは1.5MPa以上であり、より好ましくは2MPa以上であり、さらに好ましくは3MPa以上である。ナノファイバーシートの5%伸び時の応力が1.5MPa以上であると、複合高分子電解質膜として加湿膨潤時の寸法変化の抑制効果及び耐久性が更に向上する傾向にある。また、ナノファイバーシートの熱機械特性に一層優れ、高温下でも熱変形し難くなる。熱機械特性は、熱機械分析(TMA)の応力・歪制御装置で測定できる。一定応力下でナノファイバーシートを加熱昇温させ、その際の変形量で優劣を判断できる。一層高い強度でしかも熱機械特性により優れるナノファイバーシートは、電解質膜への複合化に際し、その電解質膜における含有量を少量にすることが可能となる。その結果、膜抵抗を低減したり、電解質を含浸する際のボイド欠陥の発生を抑制したりすることができる。ナノファイバーシートの5%伸び時の応力は、実施例に記載の方法に準拠して測定される。
【0028】
このナノファイバーシートの平均線膨張率は、熱機械分析(TMA)の応力・歪制御装置により測定することができる。より詳細には、ナノファイバーシートをプローブに装着し、引張モードにて一定荷重のもと一定の昇温速度で加熱昇温し、その際の試料長さの変位(熱膨張)により、平均線膨張率を算出する。本実施形態のナノファイバーシートは、シート形状の面方向(以下、単に「シート面方向」ともいう。)における20℃から120℃の平均線膨張率が好ましくは250ppm/K以下である。ここで、シート形状の面方向とは、流れ方向(MD)及びMDと直交する方向(TD)の両方の方向を指す。この平均線膨張率が250ppm/K以下であると、耐熱性に一層優れ、クリープ変形により強く、寸法変化の抑制に更に好適な電解質の補強材といえる。特に、シート面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が好ましくは250ppm/K以下、より好ましくは200ppm/K以下、更に好ましくは150ppm/K以下、なおも更に好ましくは100ppm/K以下、特に好ましくは60ppm/K以下の場合、120℃を超える極めて過酷な運転環境下においても、耐熱性に一層優れ、クリープ変形により強い、寸法変化の抑制に更に好適な電解質膜の補強材となる。
【0029】
<複合高分子電解質膜>
本実施形態の複合高分子電解質膜は、上記ナノファイバーシートと、高分子電解質であるプロトン伝導性ポリマーとを含む。本実施形態の複合高分子電解質膜の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記ナノファイバーシートに電解質を充填することで複合高分子電解質膜を得ることができる。
図1に本実施形態の複合電解質膜の使用態様の一例を説明するための模式図を示す。
図1に示されるように、本実施形態のナノファイバーシート1は、電極触媒層2、電解質であるプロトン伝導性ポリマー3、ナノファイバーシート1、電解質3、および電極触媒層2の順で積層して構成することができる。
図2は、ナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーが複合化される際の断面模式図である。
図2に示されるように、ナノファイバーシート1はプロトン伝導性ポリマー3と複合化しており、その空孔部にはプロトン伝導性ポリマー3が充填される。
【0030】
この電解質膜の平均線膨張率は、熱機械分析(TMA)の応力・歪制御装置により測定することができる。より詳細には、電解質膜試料をプローブに装着し、引張モードにて一定荷重のもと一定の昇温速度で加熱昇温し、その際の試料長さの変位(熱膨張)により、平均線膨張率を算出する。本実施形態の電解質膜は、プロトン伝導性ポリマーとナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、かつ、シート形状の面方向(以下、単に「シート面方向」ともいう。)における20℃から120℃の平均線膨張率が300ppm/K以下であると好ましい。ここで、シート形状の面方向とは、流れ方向(MD)及びMDと直交する方向(TD)の両方の方向を指す。この平均線膨張率が300ppm/K以下であると、耐熱性に一層優れ、クリープ変形により強く、かつ外部からの負荷によっても更に薄膜化し難いので、寸法変化の抑制により好適な複合体といえる。特に、シート面方向における20℃から150℃の平均線膨張率が400ppm/K以下であると好ましく、より好ましくは350ppm/K以下である。この場合、電解質膜は、120℃を超える極めて過酷な運転環境下においても耐熱性に一層優れ、クリープ変形により強く、外部からの負荷によってもより薄膜化し難いので、寸法変化の抑制に更に好適な複合体となる。同様の観点から、シート面方向における20℃から150℃の平均線膨張率は、更に好ましくは300ppm/K以下であり、なおもより好ましくは250ppm/K以下であり、なおも更に好ましくは150ppm/K以下であり、特に好ましくは100ppm/K以下である。
【0031】
電解質膜の平均線膨張率を上記の範囲内に調整する方法としては、例えば、プロトン伝導性ポリマーの分子構造と分子量を高耐熱性を有するように制御し、その高耐熱性のプロトン伝導性ポリマーとナノファイバーシートとを複合化することが挙げられる。
【0032】
本実施形態において、電解質膜の厚さは、1μm以上300μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上100μm以下、更に好ましくは5μm以上50μm以下、特に好ましくは5μm以上25μm以下である。電解質膜の厚さを上記範囲に調整することにより、水素と酸素との直接反応のような不都合を低減できる。その結果、燃料電池製造時の取り扱いの際や燃料電池運転中に差圧・歪み等が生じても、膜の損傷等が発生し難くなる傾向にある。さらに、電解質膜のイオン透過性をより良好に維持し、電解質膜としての性能をより有効かつ確実に維持する観点からも、厚さを上記範囲に調整することは好ましい。
【0033】
電解質である上記プロトン伝導性ポリマーは特に限定されないが、例えば、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物、及び、分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物にイオン交換基を導入したものが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、化学的安定性に一層優れる観点から、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が好適である。
【0034】
プロトン伝導性ポリマーのイオン交換容量は、0.5ミリ当量/g以上3.0ミリ当量/g以下であると好ましく、0.65ミリ当量/g以上2.0ミリ当量/g以下であるとより好ましく、0.8ミリ当量/g以上1.5ミリ当量/g以下であるとさらに好ましい。イオン交換当量が3.0ミリ当量/g以下であることにより、電解質膜として利用した際に、燃料電池運転中の高温高加湿下における電解質膜の膨潤がより低減される傾向にある。このように膨潤が低減されることにより、電解質膜の強度の低下や、しわが発生して電極から剥離したりするなどの問題、さらには、ガス遮断性が低下する問題を低減できる傾向にある。また、イオン交換容量が0.5ミリ当量/g以上であることにより、得られた電解質膜を備えた燃料電池の発電能力がより向上する傾向にある。
【0035】
イオン交換容量は、以下の方法により求めることができる。すなわち、イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている電解質膜(シート面積でおよそ2cm
2以上20cm
2以下)を、25℃の飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜を、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンである電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式(C)により当量重量EW(g/eq)を求める。
EW=(W/M)−22 (C)
さらに、得られたEWの値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出する。
【0036】
イオン交換基としては、特に限定されないが、例えばスルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、カルボン酸基及びリン酸基が挙げられ、中でもスルホン酸基であることが好ましい。イオン交換基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、及びポリカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
また、化学的安定性に一層優れるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂、パーフルオロカーボンスルホンイミド樹脂、パーフルオロカーボンスルホンアミド樹脂、及びパーフルオロカーボンリン酸樹脂、並びにこれら樹脂のアミン塩及び金属塩が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
パーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、より具体的には、下記式[1]で表される重合体が挙げられる。
−[CF
2CX
1X
2]
a−[CF
2−CF(−O−(CF
2−CF(CF
2X
3))
b−O
c−(CFR
1)
d−(CFR
2)
e−(CF
2)
f−X
4)]
g− [1]
ここで、式中、X
1、X
2及びX
3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R
1及びR
2は、互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X
4はCOOZ、SO
3Z、PO
3Z
2又はPO
3HZを示す。ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアミン類(NH
4、NH
3R
3、NH
2R
3R
4、NHR
3R
4R
5、又はNR
3R
4R
5R
6)を示す。また、R
3、R
4、R
5及びR
6は、各々独立してアルキル基又はアレーン基を示す。
【0040】
これらの中でも、下記式[2]又は式[3]で表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂若しくはその金属塩が好ましい。
−[CF
2CF
2]
a−[CF
2−CF(−O−(CF
2−CF(CF
3))
b−O−(CF
2)
c−SO
3X)]
d− [2]
ここで、式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1を満たす。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
−[CF
2CF
2]
e−[CF
2−CF(−O−(CF
2)
f−SO
3Y)]
g− [3]
ここで、式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1を満たす。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
【0041】
上記パーフルオロカーボン高分子化合物の中でも、上記式[3]で表されるパーフルオロカーボン高分子化合物は、耐熱性に更に優れ、イオン交換基導入量を一層増やすことができるので好ましい。
【0042】
本実施形態において用いられ得るイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式[4]で表される前駆体ポリマーを重合した後、アルカリ加水分解、酸処理等を行って製造することができる。
−[CF
2CX
1X
2]
a−[CF
2−CF(−O−(CF
2−CF(CF
2X
3))
b−O
c−(CFR
1)
d−(CFR
2)
e−(CF
2)
f−X
5)]
g− [4]
ここで、式中、X
1、X
2及びX
3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R
1及びR
2は互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X
5はCOOR
7、COR
8又はSO
2R
8を示す。ここで、R
7は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R
8はハロゲン元素を示す。
【0043】
上記前駆体ポリマーは、特に限定されないが、例えば、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造することができる。
【0044】
ここで、フッ化オレフィン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式[5]で表される化合物が挙げられる。
CF
2=CFZ [5]
ここで、式中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。
【0045】
また、フッ化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
CF
2=CFO(CF
2)
z−SO
2F,
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
z−SO
2F,
CF
2=CF(CF
2)
z−SO
2F,
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
z−(CF
2)
z−SO
2F,
CF
2=CFO(CF
2)
z−CO
2R,
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
z−CO
2R,
CF
2=CF(CF
2)
z−CO
2R,
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
z−(CF
2)
2−CO
2R
ここで、式中、Zは1〜8の整数であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。
【0046】
本実施形態において、プロトン伝導性ポリマーは、プロトン伝導性ポリマー溶液をガラス基材やフィルム基材に塗工し、その後乾燥させて、基材から剥離することによりシート形状を有するものとして得ることができる。プロトン伝導性ポリマーを厚さ15μmのシート形状を有するように成形した場合、このシート形状を有するプロトン伝導性ポリマー(以下、「プロトン伝導ポリマーシート」ともいう)は、面方向における20℃から120℃における平均線膨張率が1550ppm/K以下であることが好ましく、1400ppm/K以下であるとより好ましく、1200ppm/K以下が更に好ましい。プロトン伝導性ポリマーシートの平均線膨張率が1550ppm/K以下であると、ナノファイバーシートと複合化して得られる複合高分子電解質膜が、120℃の過酷な環境下においても一層優れた耐久性を有し、面方向の寸法変化を更に抑制することできる。このプロトン伝導性ポリマーシートの面方向の平均線膨張率は、熱機械分析(TMA)の応力・歪制御装置により測定することができる。より詳細には、プロトン伝導性ポリマーをプローブに装着し、引張モードにて一定荷重のもと一定の昇温速度で加熱昇温し、その際の試料長さの変位(熱膨張)により、平均線膨張率を算出する。プロトン伝導性ポリマーシートの面方向の平均線膨張率の下限値は特に限定はないが、100ppm/K以上であってもよく、300ppm/K以上であってもよい。
【0047】
<複合高分子電解質膜の製造方法>
次に、本実施形態の複合高分子電解質膜の製造方法について説明する。本実施形態の複合高分子電解質膜は、ナノファイバーシートと高分子電解質であるプロトン伝導性ポリマーとを複合化すること、例えば、ナノファイバーシートの空隙にプロトン伝導性ポリマーを充填することで得ることができる。
【0048】
ナノファーバーシートとプロトン伝導性ポリマーとを複合化する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述するプロトン伝導性ポリマー溶液をナノファイバーシートに塗工し、あるいはプロトン伝導性ポリマー溶液にナノファイバーシートを含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。より具体的には、例えば、移動している又は静置されている細長いキャスティング基材(シート)上にプロトン伝導性ポリマー溶液の被膜を形成し、その溶液にナノファイバーシートを接触させ、未完成な複合構造体を作製する。この未完成な複合構造体を熱風循環槽中等で乾燥させる。次に乾燥させた未完成な複合構造体の上にプロトン伝導性ポリマー溶液の被膜をさらに形成させることで、電解質膜を作製することができる。プロトン伝導性ポリマー溶液とナノファイバーシートとの接触は、乾燥状態で行われても、未乾燥状態又は湿潤状態で行われてもよい。また、接触させる場合に、ゴムローラーや送風による加圧を行ってもよく、ナノファイバーシートのテンションを制御しながら行ってもよい。さらに、プロトン伝導性ポリマーを含むシートを押し出し成形やキャスト成形等で予め成形しておき、このシートをナノファイバーシートと重ねて熱プレスすることにより複合化してもよい。
【0049】
本実施形態の電解質膜は、上述のように製造された後、さらに熱処理を施されることが好ましい。この熱処理によりプロトン伝導性ポリマーのパーフルオロアルキル骨格の結晶化が進み、その結果、電解質膜の機械的強度が更に安定化され得る。この熱処理の温度は、好ましくは100℃以上230℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下、更に好ましくは140℃以上200℃以下である。熱処理の温度を上記範囲に調整することで、結晶化が十分に進み電解質膜の機械的強度が向上する。また、電解質膜の含水率を適切に保持しつつ、機械強度を一層高く維持する観点からも、上記温度範囲は好適である。熱処理の時間は、熱処理の温度にもよるが、より高耐久性を有する電解質膜を得る観点から、好ましくは5分間〜3時間、より好ましくは10分間〜2時間である。
【0050】
本実施形態に係る電解質膜を製造する際に用いることのできるプロトン伝導性ポリマー溶液は、上記プロトン伝導性ポリマーと溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを含むものである。このプロトン伝導性ポリマー溶液は、そのまま、又はろ過若しくは濃縮等の工程を経た後、ナノファイバーシートとの複合化に用いられる。あるいは、この溶液を単独又は他の電解質溶液と混合して用いることもできる。
【0051】
次いで、プロトン伝導性ポリマー溶液の製造方法について、より詳細に説明する。このプロトン伝導性ポリマー溶液の製造方法は特に限定されず、例えば、プロトン伝導性ポリマーを溶媒に溶解又は分散させた溶液を得た後、必要に応じてその液に添加剤を分散させる。あるいは、まず、プロトン伝導性ポリマーを溶融押出し、延伸等の工程を経ることによりプロトン伝導性ポリマーと添加剤とを混合し、その混合物を溶媒に溶解又は分散させる。このようにしてプロトン伝導性ポリマー溶液が得られる。
【0052】
より具体的には、まず、プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーからなる成形物を塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解する。この加水分解処理により、上記プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーはプロトン伝導性ポリマーに変換される。次に、加水分解処理された上記成形物を温水などで十分に水洗し、その後、成形物に酸処理を施す。酸処理に用いられる酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって、プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーはプロトン化され、プロトン伝導性ポリマー、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が得られる。
【0053】
上述のように酸処理された上記成形物(プロトン伝導性ポリマーを含む成形物)は、上記プロトン伝導性ポリマーを溶解又は懸濁させ得る溶媒(ポリマーとの親和性が良好な溶媒)に溶解又は懸濁される。このような溶媒としては、例えば、水やエタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリンなどのプロトン性有機溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。特に、1種の溶媒を用いる場合、溶媒が水であると好ましい。また、2種以上を組み合わせて用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
【0054】
プロトン伝導性ポリマーを溶媒に溶解又は分散(懸濁)する方法としては、特に限定されない。例えば、上記溶媒中にそのままプロトン伝導性ポリマーを溶解又は分散させてもよい。ただし、大気圧下又はオートクレーブ等で密閉加圧した条件のもとで、0〜250℃の温度範囲でプロトン伝導性ポリマーを溶媒に溶解又は分散するのが好ましい。特に、溶媒として水及びプロトン性有機溶媒を用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合比は、溶解方法、溶解条件、プロトン伝導性ポリマーの種類、総固形分濃度、溶解温度、攪拌速度等に応じて適宜選択できる。ただし、水に対するプロトン性有機溶媒の質量の比は、水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜10であると好ましく、より好ましくは水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜5である。
【0055】
なお、プロトン伝導性ポリマー溶液には、乳濁液、懸濁液、コロイド状液体及びミセル状液体のうち1種又は2種以上が含まれてもよい。ここで、乳濁液は、液体中に液体粒子がコロイド粒子又はそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなすものである。また、懸濁液は、液体中に固体粒子がコロイド粒子又は顕微鏡で見える程度の粒子として分散したものである。さらに、コロイド状液体は、巨大分子が分散した状態のものであり、見せる状液体は、多数の小分子が分子間力で会合してできた親液コロイド分散系である。
【0056】
また、電解質膜の成形方法や用途に応じて、プロトン伝導性ポリマー溶液を、濃縮したり、ろ過したりすることも可能である。濃縮の方法としては特に限定されないが、例えば、プロトン伝導性ポリマー溶液を加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法が挙げられる。プロトン伝導性ポリマー溶液を塗工用溶液として用いる場合、プロトン伝導性ポリマー溶液の固形分率は、粘度の上昇を抑制して取扱い性を更に高める観点、及び、生産性を向上させる観点から、0.5質量%以上50質量%以下であると好ましい。
【0057】
プロトン伝導性ポリマー溶液をろ過する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルターを用いて、加圧ろ過する方法が代表的に挙げられる。上記フィルターには、90%捕集粒子径がプロトン伝導性ポリマー溶液に含まれる固体粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材を用いることが好ましい。この濾材の材質としては、例えば、紙及び金属が挙げられる。特に濾材が紙の場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の10倍〜50倍であることが好ましい。金属製フィルターを用いる場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の50倍〜100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒子径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞してしまうことを抑制したりするのに効果がある。一方、90%捕集粒子径を平均粒子径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
【0058】
本実施形態の電解質膜は、面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が200ppm/K以下のナノファイバーシートと、厚さ15μmのシート形状を有するように成形した場合の、その厚さ15μmのシート形状の面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が1550ppm/K以下のプロトン伝導性ポリマーとを複合化して備えると好ましい。このような電解質膜は、120℃の厳しい電池駆動環境下における化学耐久性と物理耐久性とを、より高いレベルで実現できる。
【0059】
本実施形態の電解質膜は、目付が1.5g/m
2以上4.0g/m
2以下であり、かつ面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が250ppm/K以下であるナノファイバーシートと、厚さ15μmのシート形状を有するように成形した場合の、その厚さ15μmのシート形状の面方向における20℃から120℃の平均線膨張率が1550ppm/K以下であるプロトン伝導性ポリマーとを複合化したシート形状を備える電解質膜であると好ましい。このような電解質膜は、電解質の充填性とシートの平面方向の寸法変化の抑制に更に優れるものである。その結果、この電解質膜は、120℃の厳しい電池駆動環境下において高いプロトン伝導性と優れた化学耐久性と物理耐久性とを、より高いレベルで実現できる。
【0060】
本実施形態の電解質膜は、特に固体高分子形燃料電池における電解質膜として好適に用いられる。本実施形態の電解質膜は、プロトン伝導性ポリマーの埋め込み性に優れボイド欠陥が抑制される。その結果、110℃を超える高温高加湿から高温低加湿下の厳しい燃料電池動作環境においても、面方向の寸法変化を抑制し、低い抵抗をも実現できる固体高分子形燃料電池用の電解質膜として用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
<複合高分子電解質膜のシート面方向における20℃から120℃又は150℃の平均線膨張率>
複合高分子電解質膜をシート形状に加工する際の流れ方向(MD)及びMDと直交する方向(TD)を区別し、複合高分子電解質膜をそれぞれ長さ(すなわちMDに)30mm、幅(すなわちTDに)3mmに切り出して試料を得た。次いで、熱機械的分析装置(TMA/SS610:EXSTAR6000接続ステーション搭載装置、エスアイアイ・ナノテクロジー株式会社製)において、試料チャック間距離20mmで石英プローブへ試料を装着させ、引張りモード、荷重25mN、昇温速度5℃/minの条件にて、20℃から170℃までの変位測定を行った。測定結果から、付属する解析ソフトにより、20℃から120℃の、あるいは20℃から150℃の平均線膨張率(CTE)を算出した。
【0063】
<ナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率>
ナノファイバーシートをシート形状に加工する際の流れ方向(MD)及びMDと直交する方向(TD)を区別し、ナノファイバーシートをそれぞれ長さ(すなわちMDに)30mm、幅(すなわちTDに)3mmに切り出して試料を得た。次いで、熱機械的分析装置(TMA/SS610:EXSTAR6000接続ステーション搭載装置、エスアイアイ・ナノテクロジー株式会社製)において、試料チャック間距離20mmで石英プローブへ試料を装着させ、引張りモード、荷重25mN、昇温速度5℃/minの条件にて、20℃から170℃までの変位測定を行った。測定結果から、付属する解析ソフトにより、20℃から120℃の平均線膨張率(CTE)を算出した。
【0064】
<プロトン伝導性ポリマーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率>
厚さ15μmのプロトン伝導性ポリマーシートを30mm×3mmに切り出して試料を得た。次いで、熱機械的分析装置(TMA/SS610:EXSTAR6000接続ステーション搭載装置、エスアイアイ・ナノテクロジー株式会社製)において、試料チャック間距離20mmで石英プローブへ試料を装着させ、引張りモード、荷重25mN、昇温速度5℃/minの条件にて、20℃から170℃までの変位測定を行った。測定結果から、付属する解析ソフトにより、20℃から120℃の平均線膨張率(CTE)を算出した。
【0065】
<ナノファイバーシートの空隙率>
40mm×30mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を精密天秤にて測定し、測定した質量及びナノファイバーシートの厚さから膜密度ρ(g/cm
3)を下記式(A)により算出した。また、得られた膜密度ρ及びナノファイバーシートを構成する材料の真密度ρ
0(g/cm
3)から、下記式(B)により空隙率(%)を求めた。
ρ=M/(4.0×3.0×t) (A)
ここで、Mは試料の質量(g)を示し、tは試料の厚さ(cm)を示す。
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ
0))×100 (B)
【0066】
<目付の算出>
200mm×150mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を測定し、1m
2当たりの質量に換算して目付を算出した。
【0067】
<ナノファイバーシートの収縮率>
複合高分子電解質膜の厚さ及びその電解質膜におけるナノファイバーシートの厚さZ1(nm)を、後述のようにして測定した。また、複合化前のナノファイバーシートの厚さZ2(nm)を接触式の膜厚計(ミツトヨ製、製品名「ABSデジマチックインジケータID−F125」)を用いて測定した。電解質膜におけるナノファイバーシートの厚さZ1と、複合化前のナノファイバーシートの厚さZ2とから、下記式(D)により収縮率を算出した。なお、ナノファイバーシートの厚さZ2は、同じナノファイバーシート内における任意の5点で空隙を含んだ形態の厚さを計測し、その相加平均とした。
収縮率(%)=(1−(Z1/Z2))×100 (D)
【0068】
<ナノファイバーシートの平均繊維径>
ナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径として、50本の繊維の繊維径の算術平均値を用いた。ここで、「繊維径」は、繊維を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいう。
【0069】
<ナノファイバーシートの5%伸び時応力>
ナノファイバーシートを70mm×10mmの長方形に切り出し試料とした、JIS K−7127に準拠して、ナノファイバーシートの5%伸び時の応力を測定した。測定には、50Nロードセルを備える引っ張り試験機を用いた。試料チャック間距離を50mm、クロスヘッド速度を300mm/minとして、24℃、相対湿度45%RHの環境下で測定した。その結果、後述する実施例1〜10の全てのナノファイバーシートの5%伸び時応力は、3.2MPa以上であった。
【0070】
<プロトン伝導性ポリマーの埋め込み性とボイド欠陥の判定>
ナノファイバーシートへのプロトン伝導性ポリマーの埋め込み性は以下のようにして評価した。ナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーとを含む複合高分子電解質膜から任意に切り出したシートをエポキシ接着剤で包埋し、それをウルトラミクロトームにて加工してシート断面サンプルを得た。その断面をルテニウムにて染色し、オスミウムコート処理により導電性付与を施し、10mmにわたって走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、型式「S−4800」)を用いて、二次電子像を観察した。観察の倍率は2000倍とした。上記のようにして観察した、10mmのプロトン伝導性ポリマーとナノファイバーシートとが複合化された領域において、プロトン伝導性ポリマーが充填されずに空隙(ボイド欠陥)部が存在する領域の割合を、以下の基準により評価した。
A:空隙が0〜2%以下
B:空隙が2%超過5%以下
C:空隙が5%超過100%以下
【0071】
プロトン伝導性ポリマーの埋め込み性は、上記基準において「A」又は「B」であることが好ましく、「A」であれば更に好ましい。ナノファイバーシートの空隙がプロトン伝導性ポリマーで完全に充填されることにより、電解質膜内に絶縁抵抗となる空隙が生じないため、抵抗の低い高性能な複合高分子電解質膜が得られる。
【0072】
<複合高分子電解質膜の厚さ及びその電解質膜中のナノファイバーシートの厚さ>
電解質膜の厚さ及びその電解質膜におけるナノファイバーシートの厚さZ1は、以下のようにして測定した。まず、ナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーとを含む複合高分子電解質膜から任意に切り出したシートをエポキシ接着剤で包埋し、それをウルトラミクロトームにて加工してシート断面サンプルを得た。その断面を、ルテニウムにて染色し、オスミウムコート処理により導電性付与を施し、10mmにわたって走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式「S−4800」)を用いて、二次電子像を観察した。観察の倍率は2000〜3000倍とした。上記のようにして観察した10mmの領域において、シートの厚さを測定すると共に、その厚さ方向におけるナノファイバーシートの厚さを、プロトン伝導性ポリマーとのコントラスト差により測定した。
【0073】
<面内寸法変化率>
120℃で100%RHの条件下における電解質膜の面内寸法変化率を、以下のようにして求めた。まず、電解質膜におよそ15mm×20mmの長方形の枠を記入し、各辺の長さを測定顕微鏡(OLYMPUS製、型式「STM6」)で計測した。次いで、上記電解質膜を高度加速寿命試験装置(HAST製、型式「EHS−211」)内に投入し、120℃で100%RHの環境に2時間曝した後、上記と同様にして長方形の枠の各辺の長さを計測した。高度加速寿命試験装置での加速試験前後での寸法の変化率を、長方形の短辺、長辺それぞれの方向に関して算出し、その平均値をもって電解質膜の寸法変化率とした。
【0074】
<膜厚方向寸法変化率>
120℃で100%RHの条件下における電解質膜の膜厚方向寸法変化率を、以下のようにして求めた。まず、電解質膜における30mm×40mmの範囲の任意の位置9点の厚さを、接触式の膜厚計(ミツトヨ製、製品名「ABSデジマチックインジケータID−F125」)を用いて測定した。次いで、上記電解質膜を高度加速寿命試験装置(HAST製、型式「EHS−211」)内に投入し、120℃で100%RHの環境に2時間曝した後、濡れた状態で速やかに上記と同様にして膜厚を計測した。高度加速寿命試験装置での加速試験前後での膜厚の変化率を算出し、その平均値をもって電解質膜の膜厚方向での寸法変化率とした。
【0075】
[実施例1]
<複合高分子電解質膜の製造>
まず、プロトン伝導性ポリマーの前駆体ポリマーである、テトラフルオロエチレン及びCF
2=CFO(CF
2)
2−SO
2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂の前駆体(加水分解及び酸処理後のイオン交換容量:1.4ミリ当量/g)ペレットを準備した。次に、その前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)とを溶解した水溶液に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、ペレットを60℃の水中に5時間浸漬した。次いで、水中に浸漬した後のペレットを、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を新しいものに代えて、5回繰り返した。そして、塩酸水溶液に繰り返し浸漬させた後のペレットを、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、プロトン伝導性ポリマーであるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(−[CF
2CF
2]−[CF
2−CF(−O−(CF
2)
2−SO
3H)]−;PFSA)を得た。
【0076】
このペレットを、エタノール水溶液(水:エタノール=50.0/50.0(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に収容して密閉し、撹拌翼で攪拌しながら160℃まで昇温して、その温度で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を自然冷却して、固形分濃度5質量%の均一なパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液を得た。これを80℃で減圧濃縮した後、水とエタノールとを用いて希釈し、固形分15.0質量%のエタノール:水=60:40(質量比)の溶液を調整し、溶液1とした。
【0077】
上記溶液1を、コーティングダイコーターを用いてポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン300H」)上に連続塗工した。その後、下記表1の実施例1に記載のナノファイバーを、上記のように塗工した溶液1上に配置し、溶液1を含浸させ、風乾させて粗乾燥させた。その後、粗乾燥後の膜を、乾燥機(株式会社エスペック社製、型式「SPH−201M」)にて、120℃の設定で30分間乾燥した。次に、乾燥後の膜の上から溶液1を再度上記と同様にして塗工し、同様に120℃の設定で30分間乾燥した。こうして得られた膜に対して170℃の設定で20分間アニール処理を施し、厚さ16μmの複合高分子電解質膜を得た。得られた複合高分子電解質膜に関して、流れ方向(MD)及びMDに直交する方向(TD)の平均線膨張率、面内寸法変化率、膜厚方向寸法変化率、ナノファイバーシートの収縮率、ボイド欠陥の判定、を評価した。結果を表1に示す。また、実施例1で用いたナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率を評価した結果を表2に示す。さらに、実施例1で用いたナノファイバーシートの表面のSEM写真を
図3に示す。
【0078】
[実施例2]
表1の実施例2に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例3]
表1の実施例3に記載のナノファイバーシートを用いて、アニール処理の条件を150℃で20分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ10μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例4]
表1の実施例4に記載のナノファイバーを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、厚さ10μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[実施例5]
実施例4の複合高分子電解質膜の厚さを15μmに変更した以外は、実施例4と同様の方法で、複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例6]
表1の実施例6に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例5と同様の方法で、複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。また、実施例6の複合高分子電解質膜の断面のSEM写真を
図4に示す。
図4中、符号1で示されるのがナノファイバーシートとプロトン伝導性ポリマーの複合層であり、符号3で示されるのがプロトン伝導性ポリマー層である。また、実施例6で用いたナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率を評価した結果を表2に示す。
【0083】
[実施例7]
アニール処理の条件を160℃で20分間に変更した以外は、実施例6と同様の方法で、複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例8]
表1の実施例8に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例9]
表1の実施例9に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例10]
表1の実施例10に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。また、実施例10で用いたナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率を評価した結果を表2に示す。
【0087】
[比較例1]
ナノファイバーシートを用いない以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例2]
ナノファイバーシートを用いない以外は、実施例2と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
[比較例3]
表1の比較例3に記載のナノファイバーを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの高分子電解質膜を作製し、評価を行った。なお、ナノファイバーシートの材質はポリフッ化ビニリデンであった。結果を表1に示す。また、比較例3で用いたナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率を評価した結果を表2に示す。
【0090】
[比較例4]
表1の比較例4に記載のナノファイバーシート(140℃でカレンダー熱処理が施されている。)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。なお、ナノファイバーシートの材質は、ポリフッ化ビニリデンとポリエーテルスルホンとを7:3の質量比で混紡したものであった。結果を表1に示す。面内及び膜厚方向の寸法変化率は、ボイド欠陥が多いため測定しなかった。
【0091】
[比較例5]
表1の比較例5に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
[比較例6]
表1の比較例6に記載のナノファイバーシート(140℃でカレンダー熱処理が施されている。)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。面内及び膜厚方向の寸法変化率は、ボイド欠陥が多いため測定しなかった。
【0093】
[比較例7]
表1の比較例7に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。なお、ナノファイバーシートの材質はポリアクリロニトリルであった。結果を表1に示す。また、比較例8の複合高分子電解質膜の断面のSEM写真を
図6に示す。20℃から150℃の平均線膨張率は、複合化したナノファイバーが劣化したため測定できなかった。また、比較例7で用いたナノファイバーシートの面方向における20℃から120℃の平均線膨張率を評価した結果を表2に示す。
【0094】
[比較例8]
表1の比較例8に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例4と同様の方法で、厚さ10μmの複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
[比較例9]
比較として、市販されている電解質膜Nafion211(商品名、Dupont製)の20℃から120℃の平均線膨張率、厚さ、並びに面内寸法変化率及び膜厚方向寸法変化率を評価した結果を表1に示す。なお、20℃から150℃の平均線膨張率は、装置の仕様範囲を超えて5mm以上の変形をしたために測定できなかった。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】