(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら 、従来の特許文献1の機械特性試験装置においては、機械特性を評価するための試験片に荷重を負荷する場合、油圧ポンプによって加圧された高圧のオイルを油圧シリンダのピストンの上下に交互に供給し、ここで得られた変動荷重がつかみ材を介して試験片に伝えられていた。こうした構成の水素環境下疲労試験機においては、油圧ポンプ、油圧シリンダおよび水素環境容器などの部位が大掛かりとなり、試験装置の構造が非常に複雑で、かつ、高価になっていた。また、油圧によってピストン運動をするロッドと静止した水素環境容器との摺動部では、ガスの密封が難しく水素含有ガスが装置の外部にリークするといった危険性があった。
【0006】
また、 従来の特許文献2の特性試験装置においても、試験片に負荷を与えるためにピストン運動をするロッドと静止した水素環境容器の摺動部で、依然、ガスの密封が難しく水素含有ガスが装置の外部にリークするといった危険性があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてされたものである。その主たる目的は、コンパクトな構造を実現でき、装置外への流体リークを低減できる特性試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る特性試験装置は、流体雰囲気下で試験片の特性又は耐久性を評価する特性試験装置であって、前記試験片を収容する容器と、該容器と収納された前記試験片との間に有する作用空間に流体を供給する流体供給手段と、前記作用空間に供給された流体の圧力を調節する流体圧力調節手段と、該流体圧力調節手段を制御して前記試験片に負荷を与える圧力制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る特性試験装置は、流体雰囲気下で試験片の特性又は耐久性を評価する特性試験装置であって、前記試験片を収容する容器と、該容器と収納された前記試験片との間に有する第一の作用空間に相対して有する第二の作用空間の流体の圧力を調節する第二流体圧力調節手段と、該第二流体圧力調節手段を制御して前記試験片に負荷を与える第二圧力制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明に係る特性試験装置は、請求項1記載の特性試験装置において、前記作用空間に相対して有する第二の作用空間の流体の圧力を調節する第二流体圧力調節手段と、該第二流体圧力調節手段を制御して前記試験片に負荷を与える第二圧力制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
さらにまた、本発明に係る特性試験装置は、請求項1記載の特性試験装置において、前記作用空間の流体とは異なる第二流体を前記作用空間に相対して有する第二の作用空間に供給する第二流体供給手段と、前記第二の作用空間に含まれる前記流体の濃度を分析する濃度分析手段とを備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る特性試験装置は、請求項2記載の特性試験装置において、前記第一の作用空間の流体とは異なる第二流体を前記第二の作用空間に供給する第二流体供給手段と、前記第一の作用空間に含まれる前記第二流体の濃度を分析する濃度分析手段とを備えていることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る特性試験装置は、請求項1から5の何れかに記載の特性試験装置において、前記容器の厚みに設けた少なくとも1本の流路に熱媒体を供給する熱媒体供給手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る特性試験装置によれば、流体の圧力を制御することで容器内に収納された試験片に負荷を与えることができるので、コンパクトな構造を実現でき、装置外への流体リークを低減できるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る特性試験装置によれば、第二流体圧力調節手段を制御することで容器内に収納された試験片に負荷を与えることができるので、コンパクトな構造を実現でき、装置外への流体リークを低減できるという効果を奏する。
【0016】
さらに、本発明に係る特性試験装置によれば、請求項1記載の特性試験装置の奏する効果に加えて、作用空間及び/又は第二の作用空間の内圧を変動させることで、第二の作用空間との差圧によって試験片に曲げ荷重を付加することができるという効果を奏する。
【0017】
さらにまた、本発明に係る特性試験装置によれば、請求項1記載の特性試験装置の奏する効果に加えて、濃度分析手段を備えているので、第二の作用空間に含まれる流体の濃度を分析することで、曲げ荷重によって生じた試験片の損傷度を把握することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係る特性試験装置によれば、請求項2記載の特性試験装置の奏する効果に加えて、濃度分析手段を備えているので、第一の作用空間に含まれる第二流体の濃度を分析することで、曲げ荷重によって生じた試験片の損傷度を把握することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る特性試験装置によれば、請求項1から5の何れかに記載の特性試験装置の奏する効果に加えて、容器の厚みに設けた少なくとも1本の流路に熱媒体を供給することで、容器及び/又は試験片の温度を所定の温度に設定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
(第一の実施例)
図1は、本発明の特性試験装置の第一の実施例を示す概念構成図である。本第一の実施例の特性試験装置1は、平板状試験片2が収容される容器3を備えている。容器3は、平板状試験片2と縦断面略逆凹状の容器上部4とがつくる第一空間5と、平板状試験片2を境にして第一空間5と相対する位置に第一空間5とは離隔されて有する、縦断面略凹状の容器下部6と平板状試験片2の裏面とがつくる第二空間7とを有する。内部に第一空間5と第二空間7を構成する容器3は、容器上部4と容器下部6が開閉可能に設けられて構成されている。そして、容器3は金属製または樹脂製のパッキン8を備えており、このような容器上部4と容器下部6を閉じた際には、容器上部4の下端部と容器下部6の上端部とがパッキン8を介して重ね合される。これにより容器3を密閉することができ、容器3内に密封された第一空間5と第二空間7とを形成することができる。
【0023】
なお、本第一の実施例の容器3は、鉄、ニッケル、クロムの少なくとも1種類を含む金属製である。容器上部4は、下方に開口した有底円筒状、円板状または矩形状であり、容器下部6は、上方に開口した有底円筒状、円板状または矩形状である。
【0024】
また、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一空間5に試験環境を構成するための流体を供給する流体供給手段としてのガスボンベ9と、第一空間5に供給される流体を加圧する第一加圧手段としての圧縮機10とからなる第一流体供給系統11、並びに、第二空間7に流体を供給する第二流体供給手段としてのガスボンベ12と、第二空間7に供給される流体を加圧する第二加圧手段としての圧縮機13とからなる第二流体供給系統14の、少なくとも1つの流体供給系統を備えている。
【0025】
第一流体供給系統11は、容器上部4の第一空間5に接続されている。これにより、ガスボンベ9からのガスが容器上部4の第一空間5へ供給される。また、第二流体供給系統14は、容器下部6の第二空間7に接続されている。これにより、ガスボンベ12からのガスが容器下部6の第二空間7へ供給される。なお、流体供給手段又は第二流体供給手段は、ガスボンベ9,12からのガスを、減圧弁を介して供給する構成であってもよい。
【0026】
圧縮機10,13は、ガスボンベ9,12からのガスを圧縮するものである。第一流体供給系統11を備えている場合には、圧縮機10又は減圧弁の出力側の流体の圧力を検出する圧力センサ23が第一流体供給系統11に設けられている。第二流体供給系統14を備えている場合には、圧縮機13又は減圧弁の出力側の圧力を検出する圧力センサ24が第二流体供給系統14に設けられている。圧縮機10,13は、後述する制御手段の制御により、圧力センサ23,24の検出圧力に基づき調節される。
【0027】
さらに、本第一の実施例の特性試験装置1は、第一空間5からの流体を容器3外に排出する第一流体排出系統15、並びに、第二空間7からの流体を容器3外に排出する第二流体排出系統16の少なくとも1つの流体排出系統を備えている。これら流体排出系統は、いずれも装置内に流体を保持する。
【0028】
第一流体排出系統15を備えている場合には、容器3又は第一流体排出系統15に第一空間5の圧力を検出する圧力計17が設けられており、圧力計17の圧力値に基づき、第一空間5の流体の圧力を調節する流体圧力調節手段としての第一背圧弁18と、その流体圧力を制御する圧力制御手段としての第一アクチュエータ19とを備えている。なお、第一流体排出系統15を備えていない場合には、圧力計17は、容器3に設けられている。
【0029】
また、第二流体排出系統16を備えている場合には、容器3又は第二流体排出系統16に第二空間7の圧力を検出する圧力計20が設けられており、圧力計20の圧力値に基づき、第二空間7の流体の圧力を調節する第二流体圧力調節手段としての第二背圧弁21と、その流体圧力を制御する第二圧力制御手段としての第二アクチュエータ22とを備えている。なお、第二流体排出系統16を備えていない場合には、圧力計20は、容器3に設けられている。
【0030】
第一背圧弁18は、第一流体排出系統15に設けられており、第一空間5に供給された流体の背圧を調節するものである。他方、第二背圧弁21は、第二流体排出系統16に設けられており、第二空間7に供給された流体の背圧を調節するものである。本第一の実施例では、第一背圧弁18は、圧力計17の圧力値に応じてバルブの開度が調整可能な電動式のガス圧調節バルブから構成されている。また、第二背圧弁21は、圧力計20の圧力値に応じてバルブの開度が調整可能な電動式のガス圧調節バルブから構成されている。
【0031】
第一背圧弁18は、後述する制御手段の制御により駆動部としての第一アクチュエータ19を介して開度が調整される。同様にして第二背圧弁21は、第二アクチュエータ22を介して開度が調整される。
【0032】
第一アクチュエータ19と第二アクチュエータ22は、ともにモータ(電動機)を使用したものであり、第一アクチュエータ19は第一背圧弁18を駆動し、第二アクチュエータ22は第二背圧弁21を駆動する。アクチュエータ19,22は、空気圧、電磁(ソレノイド)、圧電素子(ピエゾスタック)等で構成することができるが、本第一の実施例では、ともに電動式である。第一アクチュエータ19と第二アクチュエータ22は、平板状試験片2に関係なく、第一空間5と第二空間7の内圧を保圧する。
【0033】
制御手段は、例えば、中央演算装置(CPU)、記憶手段(RAM及びROM)などからなる制御回路、圧力センサ23,24、圧力計17,20などの入力機器からの入力回路、圧縮機、第一アクチュエータ19、第二アクチュエータ22などの出力機器への出力回路、及び試験実施者の操作入力を受け付ける操作部とそれらを表示する表示部などを備えている。
【0034】
次に、本第一の実施例の特性試験装置1を用いた試験方法について説明する。まず、平板状試験片2を容器下部6の上端部に置き、パッキン8を介して、容器上部4の下端部を重ね合わせて密閉する。これによって、容器下部6の上端部と容器上部4の下端部の重ね合わせ部から流体の漏れがないようにする。
【0035】
平板状試験片2を収容後、ガスボンベ9から第一流体供給系統11を介して容器3の第一空間5へガスが供給される。また、ガスボンベ12から第二流体供給系統14を介して容器3の第二空間7へガスが供給される。第一空間5と第二空間7へ供給されるガスは、それぞれ圧縮機10,13によって圧縮される。この際、圧縮機10,13は、それぞれ圧力センサ23,24から得られる検出圧力を一定に維持するように制御する。ガスボンベ9,12の圧力が高い場合には、圧縮機10,13に換えて、減圧弁を用いることも可能である。
【0036】
試験の際、平板状試験片2は、容器上部4と容器下部6との間に挟み込まれ、第一空間5と第二空間7とが隔離する状態で固定されている。平板状試験片2の上面には第一空間5のガス圧が負荷され、平板状試験片2の下面には第二空間7の圧力が負荷される。
【0037】
そして、制御手段の制御により、圧力計17,20で検出した圧力値に基づき、第一アクチュエータ19の信号を第一背圧弁18に与え、及び/又は第二アクチュエータ22の信号を第二背圧弁21に与えることで、容器3内の第一空間5と第二空間7の圧力を所定の圧力に調節することができる。
【0038】
ここで、特性試験装置1が第一背圧弁18と第一アクチュエータ19を備えており、第二流体排出系統16を備えていない場合には、例えば、圧力計17,20で検出した圧力を基に第一空間5の内圧を保圧し、第一空間5と第二空間7との圧力差の変動によって疲労破壊の試験を行うことができる。
【0039】
また、特性試験装置1が第一流体排出系統15を備えておらず、第二背圧弁21と第二アクチュエータ22を備えている場合には、例えば、圧力計17,20で検出した圧力を基に第二空間7の内圧を保圧し、第一空間5と第二空間7との圧力差の変動によって疲労破壊の試験を行うことができる。
【0040】
さらに、特性試験装置1が第一アクチュエータ19と第二アクチュエータ22の双方を備えている場合には、第一空間5と第二空間7の圧力差の変動によってさらに複雑な試験を行うことができる。例えば、単数又は複数の曲げ荷重モードで平板状試験片2を疲労破壊させる試験を行うことができる。この場合において、アクチュエータ19,22は、空気圧や油圧で構成されていないので、特性試験装置1をコンパクトにすることができる。
【0041】
上述したように、本第一の実施例の特性試験装置1によれば、第一アクチュエータ19及び/又は第二アクチュエータ22を駆動して第一背圧弁18、並び、第二背圧弁21の少なくとも一方を調節することで、第一空間5の流体の圧力と、第二空間7の流体の圧力との間に間欠的・連続的に差を持たせて、平板状試験片2に対して間欠的・連続的に曲げ荷重を負荷することができる。
【0042】
すなわち、油圧ポンプやシリンダなどによって平板状試験片2に負荷を与えるのではなく、雰囲気を形成する第一空間5と第二空間7との差圧によって平板状試験片2に曲げ荷重を負荷することが可能となる。こうした構成にすることで、従来、ピストン運動によって試験片に負荷を与えていたロッドと静止した水素環境容器との間の摺動部を削除することができる。これにより、水素などのガスリークを無視できるまでに低減でき、高い安全性を担保することができる。
【0043】
また、油圧ポンプやシリンダなどの試験片に負荷を与えていた機構が不要となり、非常にコンパクトな試験機を作り出すことが可能となる。
【0044】
本第一の実施例の特性試験装置1において、ガスボンベ9,12の少なくとも一方に水素ガスボンベを用いて、第一空間5、並びに、第二空間7の少なくとも一方を水素ガスで満たすことで、平板状試験片2の水素ガス環境下での特性を評価することが可能となる。
【0045】
このように、流体雰囲気下で平板状試験片2の特性又は耐久性を評価する特性試験装置1であって、平板状試験片2を収容する容器3と、容器3に収納された平板状試験片2との間に有する第一空間5に水素ガスを供給する流体供給手段と、第一空間5に供給された水素ガスの圧力を調節する流体圧力調節手段18と、流体圧力調節手段18を制御して平板状試験片2に負荷を与える圧力制御手段19とを備えている場合には、平板状試験片2の水素ガス環境下での特性を、コンパクトな装置で、かつ、水素ガスの漏出を防止しつつ、評価することができる。
【0046】
図2に、曲げ荷重モードの例を示す。第一アクチュエータ19の信号を受けて第一背圧弁18を作動させ、及び/又は第二アクチュエータ22の信号を受けて第二背圧弁21を作動させることで、台形波25、矩形波26、三角波27などの曲げ荷重モードを平板状試験片2に負荷することができる。
【0047】
なお、本第一の実施例の特性試験装置1において、試験片は平板状としたが、概ね平板状であっても、半球状等であっても、同様に試験片の特性試験を行うことが可能である。
【0048】
また、上記第一の実施例においては、第一空間5へ供給する流体並びに第二空間7へ供給する流体の一例としてガスを挙げたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、試験温度において、液体状態の物質であってもガス状態の物質であってもよい。試験温度で液体状態の物質としては、液水、アルコール、オイルが挙げられる。流体は、これらのいずれであってもよい。試験温度でガス状態の物質としては、水素などの還元性ガス、窒素、アルゴンなどの不活性気体もしくは不活性ガス、ヘリウムなどの希ガス族元素、空気、酸素、水蒸気などが挙げられる。流体は、これらのいずれであってもよい。
【0049】
また、上記第一の実施例においては、容器3は、縦断面略逆凹状の容器上部4と、縦断面略凹状の容器下部6とから構成されるものとしたが、何らこれに限定されるものではない。容器3は、試験片との間に作用空間を有するものであればよい。作用空間は、少なくとも流体の通路を有するものであればよく、例えば、容器3に単数又は複数の凹状の溝を有するものや、燃料電池のセパレータのような構造のものであってもよい。
【0050】
図1には、流体供給手段9と第一流体排出系統15の双方を備えており、かつ、第二流体供給手段12と第二流体排出系統16の双方を備えている場合の特性試験装置1を図示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、特性試験装置1は、流体供給手段9と第一流体排出系統15とを備えている場合、第二流体供給手段12と第二流体排出系統16とを備えている場合、流体供給手段9と第一流体排出系統15と第二流体供給手段12とを備えている場合、流体供給手段9と第二流体供給手段12と第二流体排出系統16とを備えている場合であってもよい。これらの場合において、第一流体排出系統15又は第二流体排出系統16に背圧弁とアクチュエータとを備えている場合と備えていない場合の組み合わせがあり、少なくとも何れかに一組の背圧弁とアクチュエータの組み合わせを備えているものであればよい。
【0051】
上記第一の実施例では、流体圧力調節手段として第一背圧弁18を用いた場合の実施例を挙げたが、流体圧力調節手段は第一空間5の流体の圧力を調節するものであればよく、何らこれに限定されるものではない。同様にして、第二流体圧力調節手段は、第二空間7の流体の圧力を調節するものであればよく、上記実施例で挙げた第二背圧弁21に何ら限定されるものではない。
【0052】
(第二の実施例)
本第二の実施例の特性試験装置は、試験片の特性を定量化するためのものであり、前述の第一の実施例に限らず、適宜変更可能である。
図3は、第二の実施例の特性試験装置を示す概略構成図である。本第二の実施例の特性試験装置1は、基本的には前記第一の実施例の特性試験装置1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。また、両実施例で共通の事項については、説明を省略する。
【0053】
本第二の実施例の特性試験装置1においては、第一空間5の流体とは組成が異なる第二流体を容器外へ排出させる第二流体排出系統16を有し、第二空間7から容器3外に排出される第二流体に含まれる、第一空間5から第二空間7にリークした流体の濃度を分析する濃度分析計28を備えている。また、濃度分析計28は、測定された濃度の値を記録するデータ収録系29を備えている。ガスボンベ9とガスボンベ12には、組成が異なるガスボンベを使用する。
【0054】
濃度分析計28は、第二流体排出系統16に設けられており、検出器としての金属酸化物半導体式ガスセンサと、サンプルガスを分離させる管であるカラムとを備えている。濃度分析計28は、ガスクロマトグラフィ手法を用いてガス分析を行い、ガス成分がカラムを通過する際の速度の違いを利用し、ガスを分離する。ガス成分の同定は、クロマトグラムにおけるピークの出現時間(保持時間)で行う。カラムを変えれば様々なガス種に対応できる。
【0055】
データ収録系29は、専用ソフトを組み込んだパソコンである。データ収録系29の操作部を操作して、例えば、サンプル名、測定時間、測定温度などを入力し、測定後にデータ収録系29の画面出力部に測定結果が表示される。さらに、測定データは、データ収録系29の記憶部に保存されるので、簡単に管理、検索をすることができる。
【0056】
次に、本第二の実施例の特性試験装置1の動作について説明する。平板状試験片2を容器3に収容後、ガスボンベ9,12から流体供給系統11,14を介して容器3の第一空間5,第二空間7へガスを供給する。この場合、第一空間5の流体と第二空間7の第二流体の種類を違える。例えば、ガスボンベ9として水素ボンベを用い、第一空間5を水素ガスで満たすようにし、ガスボンベ12としてアルゴンボンベを用いて、第二空間7をアルゴンガスで満たすようにする。なお、それら第一空間5,第二空間7へ供給されるガスの圧力が低い場合には、圧縮機10,13によって圧縮する。逆に、ガスボンベ9,12の圧力が高い場合には、圧縮機10,13に換えて減圧弁を用いる。
【0057】
この状態で、第一空間5の流体の圧力を第二空間7の第二流体の圧力よりも高くし、第二空間7から排出される第二流体に含まれる、第一空間5から第二空間7にリークした流体の濃度を濃度分析計28で分析することで、平板状試験片2のガス透過特性、例えば、フィックの法則のガス拡散係数を測定することが可能となる。
【0058】
より具体的には、本第二の実施例の場合、濃度分析計28で第二流体排出系統16中のガスの濃度を分析することで、アルゴン中にリークした水素の濃度を測ることができる。
【0059】
本第二の実施例の特性試験装置1によれば、第一空間5の流体と第二空間7の第二流体の種類を違え、平板状試験片2に静的な曲げ荷重、あるいは、変動的な曲げ荷重を与え、第二空間7から排出される第二流体に含まれる第一空間5から第二空間7にリークした流体の濃度を分析することで、曲げ荷重によって生じた平板状試験片2の損傷度、および損傷の経時変化を連続的に追跡することが可能となる。
【0060】
また、本第二の実施例の特性試験装置1によれば、第一空間5の流体と第二空間7の第二流体の種類を違え、第一空間5の流体の圧力を第二空間7の第二流体の圧力よりも高くし、第二空間7から排出される第二流体に含まれる第一空間5から第二空間7にリークした流体の濃度を分析することで、平板状試験片2の流体の透過性、とりわけ、流体の拡散係数を同定することが可能となる。
【0061】
さらに、圧力制御手段としての第一アクチュエータ19の信号を受けて圧力調節手段としての第一背圧弁18を作動させることで、第一空間5の流体の圧力を、
図2に示すような、台形波25、矩形波26、三角波27などの波形状に変動させ、平板状試験片2に、
図2に示すような波形状の曲げ荷重モードを負荷することができる。この場合、第二空間7から排出される第二流体に含まれる、第一空間5から第二空間7にリークした流体の濃度を濃度分析計28で分析することで、変動荷重による平板状試験片2の損傷の経時特性を定量的に把握することができる。さらに、データ収録系29を備えているので、データとして収録することができる。
【0062】
このように、油圧ポンプや油圧シリンダなどによって平板状試験片2に負荷を与えるのではなく、平板状試験片2の雰囲気を形成する第一空間5と第二空間7との差圧によって平板状試験片2に曲げ荷重を負荷することが可能となる。こうした構成にすることで、従来、油圧によるピストン運動によって試験片に負荷を与えていたロッドと静止した水素環境容器との間の摺動部を削除することができるので、水素などのガスリークを無視できるまでに低減することができ、高い安全性を担保することができる。また、油圧ポンプや油圧シリンダなどの試験片に負荷を与えていた機構が不要となり、非常にコンパクトな試験機を作り出すことが可能となる。
【0063】
特に、本第二の実施例の特性試験装置1において、例えば、流体供給手段9に水素ガスボンベを用いて、第一空間5に水素ガスを流通し、第二流体供給手段12にアルゴン・ガスボンベを用いて、第二空間7にアルゴンガスを流通する。この状態で、濃度分析計28を水素ガス分析計として、第一空間5から第二空間7のアルゴンガス中にリークする水素ガスの濃度を測定することで、平板状試験片2の水素ガス透過特性、例えば、水素ガス拡散係数を測定することができる。また、平板状試験片2の変動曲げ荷重下の損傷の経時特性を評価することも可能となる。
【0064】
なお、本第二の実施例の特性試験装置1においては、第一空間5の流体と第二流体は異なる流体であればよく、第一空間5の流体並びに第二流体として、例えば、試験温度において、液体状態の物質であってもガス状態の物質であってもよい。試験温度で液体状態の物質としては、液水、アルコール、オイルであってもよい。試験温度でガス状態の物質としては、水素、窒素、空気、酸素、アルゴン、ヘリウム、水蒸気などであってもよい。
【0065】
また、上記第二の実施例では、濃度分析計28としてガス分析計の一例を挙げたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、濃度分析計28は、液分析計、酸素濃度計、質量分析計、微量濃度ガス分析計、JIS規格の酸素分析計などであってもよい。
【0066】
図3には、流体供給手段9と、第一流体排出系統15と、第二流体供給手段12と、第二流体排出系統16と、第一背圧弁18と、第一アクチュエータ19と、濃度分析計28と、データ収録系29とを備えている場合の特性試験装置1を図示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、特性試験装置1は、流体供給手段9と、第一流体排出系統15と、第二流体供給手段12と、第二流体排出系統16と、第二流体排出系統16に設けられた第二背圧弁と、第二背圧弁を駆動する第二アクチュエータと、第一流体排出系統15に設けられた濃度分析計と、濃度分析計で測定された濃度の値を記録するデータ収録系とを備えているものであってもよい。この場合には、平板状試験片2に静的な曲げ荷重、あるいは、変動的な曲げ荷重を与え、第一空間5から排出される流体に含まれる第二空間7から第一空間5にリークした第二流体の濃度を分析することができる。
【0067】
(第三の実施例)
図4は、第三の実施例の特性試験装置を示す概略構成図である。本第三の実施例の特性試験装置1は、基本的には前記第一の実施例および前記第二の実施例の特性試験装置1と同様であるが、氷点下の低温から高温に亘って、広い温度範囲で平板状試験片2の特性を試験することができる点に特徴を有する。そこで、以下では、第一の実施例および第二の実施例と第三の実施例との異なる点を中心に、とりわけ第二の実施例と第三の実施例との異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。また、両実施例で共通の事項については、説明を省略する。
【0068】
本第三の実施例の特性試験装置1においては、容器上部4と容器下部6の少なくとも一方の厚み内には、熱媒体を流す少なくとも1本の熱媒体流路30が設けられている。熱媒体流路30には、熱媒体供給手段31から熱媒体が供給される。
【0069】
熱媒体供給手段31は、容器3の厚み内に設けられた熱媒体流路30へ熱媒体を供給する手段であり、本第三の実施例では、容器3および平板状試験片2を冷却・加熱する熱媒体を貯留する熱媒体タンク32と、熱媒体タンク32の熱媒体を熱媒体流路30へ供給する熱媒体供給ポンプ33と、熱媒体タンク32から熱媒体供給ポンプ33を介して熱媒体流路30へ供給される熱媒体の供給路34とを備えて構成される。
【0070】
熱媒体タンク32には、内部に貯留された熱媒体を冷却・加熱するシステムが設けられており、これにより熱媒体タンク32に所定温度の熱媒体を貯留することができる。熱媒体供給ポンプ33は、容器3に設けられた温度センサ35の検出温度に基づいて制御される。熱媒体流路30へ供給された熱媒体は、熱媒体流路30の他端部に接続された熱媒体戻し道36を介して、熱媒体タンク32内に戻される。
【0071】
本第三の実施例の特性試験装置1によれば、容器3の厚みに設けた少なくとも1本の熱媒体流路30に熱媒体を供給することで、容器3および平板状試験片2の温度を所定の温度に設定することが可能となる。
【0072】
また、本第三の実施例の特性試験装置1によれば、容器3および平板状試験片2の温度を迅速に変化させつつ試験を行うことができる。たとえば、予め設定しておいた第一設定温度から第二設定温度へ変化、または、第一設定温度と第二設定温度との間を繰り返し変動させつつ行うこともできる。これは、温度センサ35の検出温度に基づき、熱媒体タンク32の温度および熱媒体供給ポンプ33との流量を制御することでなされる。
【0073】
また、本第三の実施例の熱媒体は、例えば、温水、冷水、蒸気、液水と蒸気の二層流であってもよい。また、シリコーン油、ダウサムA、空気、アセトン、液体窒素、液体ヘリウム、二酸化炭素、フロン、アンモニア、アルコールなどでもよい。
【0074】
また、容器3は、上記第一の実施例では、鉄、ニッケル、クロムの少なくとも1種類の元素を含む金属製としたが、鉄よりも熱伝導性に優れた銅製または銅合金製、アルミニウムまたはアルミニウム合金製、カーボン製であってもよい。
【0075】
図4には、流体供給手段9と、第一流体排出系統15と、第二流体供給手段12と、第二流体排出系統16と、第一背圧弁18と、第一アクチュエータ19と、濃度分析計28と、データ収録系29と、熱媒体供給手段31とを備えている場合の特性試験装置1を図示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、特性試験装置1は、流体供給手段9と、第一流体排出系統15と、熱媒体供給手段31とを備えている場合、第二流体供給手段12と、第二流体排出系統16と、熱媒体供給手段31とを備えている場合、流体供給手段9と、第一流体排出系統15と、第二流体供給手段12と、熱媒体供給手段31とを備えている場合、流体供給手段9と、第二流体供給手段12と、第二流体排出系統16と、熱媒体供給手段31とを備えている場合であってもよい。これらの場合において、第一流体排出系統15又は第二流体排出系統16に背圧弁とアクチュエータとを備えている場合と備えていない場合の組み合わせがあり、少なくとも何れかに一組の背圧弁とアクチュエータの組み合わせを備えているものであればよい。
【0076】
上記実施形態から次の技術的思想が把握できる。
(1)第一空間(前記作用空間)の内圧と第二空間(前記第二の作用空間)の内圧との差圧を変動させることで前記流体により少なくとも前記試験片の一方面に負荷を与えることを特徴とする特性試験装置。
【0077】
この(1)の発明によれば、大掛かりで複雑な構造の部位は必要なく、低コストの特性試験装置を提供することができる。